オリンピック・デザイン・バトル
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書きたい!という思いと、いろいろめんどくさいな~という躊躇で迷っていた新国立競技場問題について、今週は書かせていただく。ツイッターやFacebookのおびただしい書き込みからも察せられるように、この問題については賛成・反対、いろいろな考えのひとがいるだろう。あくまでも僕個人の心情、というていどに受け取っていただけたらうれしい。 |
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ザハ・ハディドはイラク・バグダード生まれ。父親は有名な政治家だったが、サダム・フセイン時代になってイギリスに脱出。ロンドンの建築学校AAスクールで学んだあと、レム・コールハースの設計事務所勤務を経て独立している。 |
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世界の建築家のうちで、もっとも先鋭的なデザイナーとして僕はザハ・ハディドを尊敬してきたし、だからというわけではないが、今回の騒動に関してはずっと違和感、というかムズムズする気持ち悪さを感じてきた。 |
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ここで新国立競技場をめぐる問題の、タイムラインを整理しておこう。 |
1925年 崩御した明治天皇を称える目的で、明治神宮とともに神宮外苑が完成。聖徳記念絵画館を中心に運動場などの施設が整備された。 |
都市の再開発についてネガディブな記事ばかり書いてきた僕が、ザハ案に反対しないのを意外に思われる方もいらっしゃるかもしれない。 |
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僕は東京都千代田区で生まれ、もう50年以上を過ごしてきた。神宮外苑には自転車で10分かそこらの距離で、子供のころからの遊び場でもあったから、地域住民の端っこに加えてもらう資格はあると思う。その僕が抱く違和感とは―― |
1)神宮外苑や周辺にはこれまでも景観をぶち壊すおしゃれカフェとか、NTT docomoのタワーをはじめとする高層建築が林立してきたのに、これまで批判なんて聞いたことがなかった。 |
とまあ頭を整理してみたけれど、ここで声を大にしたいのは3)と4)。ザハ案がいいか、悪いかは結局、住民(この場合は東京都民)の総意で決めるべき問題だろうから、議論が活発になるのは歓迎すべきこと。 |
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建築関係のグラフィック・デザインを多く手がけているデザイナーに、古平正義さんがいる。今年のヴェネツィア建築ビエンナーレでも、日本館の素晴らしく美しいポスターを手がけている。 |
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久しぶりに古平さんと飲んでいたら、新国立競技場の話になって、すごく共鳴できるところがあったので、「シラフでもう一回話そう!」と場を変えて対談。その模様を誌上再現してみたので、少々長いけれど、外野からのヒネクレ中年談義、よかったらお付き合いいただけますよう――。 |
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都築 なんか最近「上から目線の正論」というか、「わかりやすい正義」みたいなのが多いでしょ。環境破壊しないでとか、もったいない精神で改修案でいきましょうとか、憩いの森を壊すなとか。そういうことで気分を盛り上げている部分が多すぎると思っていたところに、古平さんの考えを聞いて、我が意を得たりと思ったんです。ザハ案がいいとか悪いとかではなくて、態度がおかしいんじゃないかと。 |
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古平 そう、落ちたひとが。これは単純に職業人としてのルールに思いっきり反していて、もし自分がいる業界で同じようなことがあったら、とんでもない話ですよね。さらにそんな事しておいて、JSCの説明会に呼ばれたら「公開説明会を行うのが義務」とか、もっともらしいこと言って欠席してるんですよ。自分は反則しながら正論を振りかざすという・・・無茶苦茶です。 |
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古平 ほんとうにそうですよ。そこも気持ち悪いんですよね。あの森が昔から、縄文時代からあるんだったらわかるけど(笑)。 |
貴職は現国立競技場に隣接する東京都体育館をご覧になったと思います。1980年代初期に私が同体育館を設計した際、私は都内でも有数の厳しい規制上の制約のもとで、その難題をきちんと処理しました。 |
あまりに子どもっぽすぎ。でも僕、あの手紙がよかったと思うのは、さすがにやってることも内容もひどすぎるから、あれを前の論文のように持ち上げてるひとって少ないんですよ。ザハ案をけなして自分を持ち上げてるから。だからあまり拡散していない(笑)。 |
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古平 大学に行って建築の学生と話したりすると、相当頭でっかち的なところがありますよね。そういう人種になっていくのか、そういうひとが建築家になるのか。 |
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都築 主催者側も、あまりになにも言わないよね。選んでおいて援護しないのはおかしい。世界のビッグプロジェクトで国際コンペが行われるときって、かならず反対意見はあって、でもちゃんとコンペ側がきちんと反論する。住民投票で中止になったりするケースも含めて、そうやって決まっていくものだと思うのに、それがないっていうのが、すごく変で。伊東さんや槇さんの案がいいか悪いかっていうよりも、単純な話、男として格好悪い(笑)。ふつう、言いたくても言えないでしょう? |
「このエッセイの冒頭で述べているように、我々は東京体育館を現在の場所につくるのに大変苦労しました。したがってこのコンペでは、あまり敷地も広くないところでその10倍の施設をつくることは完全なミスマッチだと直感的に感じました。それが不参加の第一の理由です。そしてまた、このコンペの規約書を見た時に、これは何だと思ったのです。そこにはいくつかの国際的な建築賞を貰った建築家には一種の特典が与えられています。なぜ著名建築家だけにか。日本発の国際コンペであったので、私のような疑問をもった建築家は世界中に多数いたのではないでしょうか。国際コンペに参加することは多くの建築家にとって夢であり、ロマンなのです。シドニー・オペラハウスもポンピドゥー・センターも、当時無名に近かった建築家たちがつくった20世紀建築の代表作です。我々はそのロマンの燈火を大事に守っていきたいと思います。」 |
都築 それなら最初からコンペに出ればいいのに。「ロマンの燈火」って・・・。 |
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古平 しかもスケール的にはある程度の収容をしなきゃいけないっていう条件だったら、環境破壊って絶対に出てきますよね。それを言い出したらなにもつくれない。大きすぎるっていうのも変な話。それを建築家が言っているのが気持ち悪いでしょ。 |
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古平 ふつうの市民のブログに、反対している10人ぐらいで散策してみたっていうのが書いてあって。「日本青年館もなくなってしまうのですね。ここでキャンディーズ見ました」「あ、こんなところに緑が!」って、知らなかったんじゃん(笑)。ふつうに歩いているレベルで、そんなに広大な緑の印象ってないでしょ。 |
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古平 僕も建築家の本って何冊もつくっていますけど、彼らは本を作品と同じように、すごく大事にするんですね。デザイナーとしてそれに関わると、きついときとかあるんですよ。グラフィックデザイナーとしては本の仕事は安い仕事だから・・・(笑)。そういう眼で今回の騒動を見ると、業界内での政治的なパフォーマンスという面も感じたりする。 |
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これから人口減少に向かう日本、東京の市場が 8 万人の観衆を安定供給し得ないことは明らかである。 |
都築 槇さんが提言のなかで、8万人のスタジアムなんか、オリンピックのあとは埋まらない、みたいに言ってるでしょう。フジロック行ってから言えっていう。 |
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BOOKS
ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)
ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。
本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。
旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。
ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)
稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。
1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!
ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)
プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。
これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。
ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)
書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい
電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。
ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)
伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!
かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。
ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)
――ラブホの夢は夜ひらく
新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!
ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)
――秘宝よ永遠に
1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!
捨てられないTシャツ
70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。
圏外編集者
編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。
ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014
こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。
独居老人スタイル
あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。
ヒップホップの詩人たち
いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。
東京右半分
2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!