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ROADSIDE RADIO 終了のご挨拶


すでにお伝えしてきたように先週日曜日、インターFM・ROADSIDE RADIOの最終回を放送しました。9月15日、秋葉原グッドマンにおける「初音階段/非常階段」のライブ、最高のシメになりました。

秋葉原グッドマンは渋さ知らズ、アシッド・マザーズ・テンプルの回でもお世話になった、おなじみのライブハウスです。ROADSIDE RADIOは今年4月の放送以来、ちょうど30回のプログラムでしたが、訪れたどのライブハウスも、すごく協力的だったのが強く印象に残ります。

この番組を始めるとき、実はいちばん気にしたのがライブハウス側の対応でした。アーティスト側はいちおう広報活動になるので録音取材を快諾してくれても、ライブハウスとしては取材で入っているわけですから売上げにはならないし、マイクを立てたり写真を撮ったり、お客さんに邪魔になるかもしれないし(なるべく気をつけていましたが)、ひとつもいいことはないはずなのに、逆にこちらに気を遣ってくれて、「このあたりで録ると音がいいですよ」と教えてくれたり、「もし録音がうまく行かなかったら、これ使ってください」と、アーティストには内緒で調整卓からライン録音したCD-Rをそっと渡してくれたり(けっきょく使わないですみましたが)。「いい音楽をひとりでも多くのひとに伝えられるように」というモチベーションのみでつながりあえて、僕としては多くのアーティストと知り合えたのと同じくらい、それはポジティブな体験でした。

前述したようにROADSIDE RADIOは今年4月から7ヶ月間、なんとかいいちども休むことなく続けられました。無償での、シロウトによる現場録音という無茶な依頼に快く応えていただいた(というか、おもしろがってくれた)アーティストのみなさん、そして日曜深夜12時半という、いちばん夜更かししたくない時間帯につきあってくれたリスナーのみなさん、ほんとうにありがとうございました。あらためて深く感謝します。

前に僕もゲストで呼んでもらった根本敬+湯浅学の「ドント・パス・ミー・バイ」が、同じインターFMにて3ヶ月で打ち切りだったので、それには勝てましたが!(笑)、自分では1年ぐらいいけるかな~と思ってたので、力及ばずというか、正直残念です。

突然終了の原因をいろいろ想像してくれた方もいらっしゃるでしょうが、公式な理由は「経費節減」。カネ、ですね。

ROADSIDE RADIOで僕がもらっていたギャラは、月に25万円でした。「けっこうもらってたじゃん」と思われるかもしれませんが、放送は毎月4~5回あるので、一回につき5万円かそこらということになります。

ROADSIDE RADIOの制作スタッフは、僕とディレクターのふたりだけ。ただしディレクターはスタジオワークに専念だったので、僕の役割は――

1)取り上げたいアーティストを選び、連絡先を探して録音取材を依頼する。たいていはアーティスト本人のブログ、Facebook、ツイッター(これがいちばん多かった)などで連絡が取れるのですが、わからない場合はライブに足を運び、楽屋の出待ちとかして(笑)、お願いしたこともありました。

2)ライブ当日、まずリハーサルに行って録音レベルの調整やマイクのセット。メルマガに使う写真撮影など。そして本番での録音。

3)ナレーションを考え、構成台本を書く。

4)天王洲アイルにあるインターFMのスタジオに行って、ナレーションを録音。

5)放送にあわせてツイッターなどで広報、放送時のリツイート。

6)メルマガでのリポート。

毎週、ほぼ2日間をフルに費やす仕事量で5万円ちょっとというのは、そんなにぼったくってないと思うのですが、始めるときに「これはもう、破格の待遇なので!(笑)」と言われたその「月に25万円」が、インターFMではどうしても出せなくなったということです。大丈夫なのか!? なので、11月からは同じ時間に、とりあえず他の番組の再放送を流すそうです・・・嘆息。どうせスポンサーのつかない深夜って、いちばん実験ができる時間帯なのにね。

僕をこんなふうに育ててくれたのは、AMラジオの深夜放送でした。中学校時代、布団に潜ってイヤホン(いまみたいなのじゃない、丸っこいモノラルのやつ)を耳に押し込んで、必死に安物ラジオのチューニングを合わせて聴いていたオールナイトニッポンやセイヤング。新しい音楽もぜんぶそれで覚えたし、そこにはパーソナリティとリスナーがいっしょになってつくった、学校とも遊び仲間とも、もちろん家族ともちがう、最高に楽しくて刺激的なコミュニケーション空間がありました。振り返ってみれば、僕にとってはラジオのほうが、どんなテレビ番組よりもはるかに重要なメディアだったと思います。

かつてラジオはなによりもまずドキュメンタリー、そしてドラマを提供してくれるメディアでした。それがいまや新曲とか新譜とか来日アーティストとか、ようするに音楽商品を売るための宣伝の場所となってしまって、こころを痛めているオールド・リスナーもたくさんいると思います。だって最近、「エアチェックしたい!」(すでに死語)と思ったラジオ番組って、どれくらいありました?

インターFMの執行役員になったピーター・バラカンさんと、担当ディレクターのおふたりが、うちまで来て「ぜひ」と頼んでくれたとき、メルマガに加えて毎週ラジオ番組なんて・・・と、かなり躊躇したのも事実です。頼んだほうはこんな「出張ライブ録音」ではなく、ふつうにCDかけておしゃべりする番組を考えていたのでしょうが、僕としてはこの機会に少しでも、失われたドキュメンタリー性をラジオによみがえらせ、みんながほんとうに聴いている音楽が生まれる場の空気を届けたいと願って、手探りの状態でスタートしたのでした。

そんな無邪気な思いが、インターFMの経営者たちに伝わらなかったのは悔しいかぎりですが、この7ヶ月で録音テクニックとか、無音シャッター撮影とかは上達したので! これからはメルマガをプラットフォームにどんどん「リアル・ミュージック」を配信していこうと思ってます。すでに先週、その第1回として倉地久美夫さんのライブをお送りしましたが、チェックしていただけたでしょうか。

考えてみればメルマガで配信するほうが、1時間という放送枠に縛られることも、煩わしい放送コードを気にすることもないし(たいして気にしてなかったですが)、東京ローカルのインターFMとちがって全国、全世界で好きな時間に聴いてもらえるので、むしろベターなスタイルなのかも。そういう意味では、「インターFMさん、番組打ち切ってくれてありがとう!」と言いたい(笑)。

これから毎週とはいかないまでも、なるべく頻繁に新たな録音音源、また過去にラジオで流したものも、アーティストの許可がとれたものから「ノーカット完全版」をアップしていきたので、応援よろしくお願いします。

そしてどこかのライブハウスでも、またお会いできますように!

都築響一

ROADSIDE RADIO 全放送リスト:

4月7日 田我流
4月14日 イースタンユース
4月21日 爆音クラシック
4月28日 ギャーテーズ
5月5日 三上寛
5月12日 三上寛カラオケライブ
5月19日 チプルソ
5月28日 藤島晃一
6月2日 渋さ知らズ・前半
6月9日 渋さ知らズ・後半
6月16日 倉地久美夫
6月23日 フィールドレコーディング・コレクション
6月30日 アーティスツチョイス・コレクション
7月7日 こだま和文
7月14日 コラアゲンはいごうまん
7月21日 FREEDOMMUNE
7月28日 友川カズキ・前半
8月4日 友川カズキ・後半
8月11日 ちあきなおみ・前半
8月18日 ちあきなおみ・後半
8月25日 早川義夫
9月1日 藤圭子
9月8日 B.I.G. JOE
9月15日 ユンボ+北村大沢楽隊
9月22日 EGO-WRAPPIN'
9月29日 コージー大内+W.C. カラス
10月6日 アシッド・マザーズ・テンプル
10月13日 あらかじめ決められた恋人たちへ
10月20日 渋谷毅
10月27日 初音階段/非常階段

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)

ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。

本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。

旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。

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ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)

稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。

1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!

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ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)

プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。

これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。

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ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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