food & drink

Neverland Diner 二度と行けないあの店で 17『珈琲家族を忘れない』髙城晶平(音楽家)

この15年ほどで、僕の地元である吉祥寺の街はだいぶ様変わりした。バウスシアターがなくなってラウンドワンやドンキホーテが建った吉祥寺なんて、かつての自分には想像もできなかっただろう。居酒屋やバーにおける変遷も特筆すべきことだろうけど、普段あまり酒を飲まない僕にとっては、とりわけ古い喫茶店の減少のほうを強く実感している。老舗だった『ボア』や『エコー』『ドナテロ』はなくなり、父が学生時代にアルバイトし...

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LATEST ISSUE
最新号 2025年07月09日 Vol.652

travel

北欧の日陰から 06  エストニア・タリンのダーク・ツーリズム

これまで1ヶ月かけて巡ってきたフィンランド辺境紀行「北欧の日陰から」。先週は首都ヘルシンキでゲイ・アートの先駆者トム・オブ・フィンランドの足跡を辿ってみた。今週からはヘルシンキからフェリーに乗って、フィンランド湾を渡ってエストニアに行ってみる。バルト海に面し、北はフィンランド、東隣はロシア、南と西はポーランド、ベラルーシに囲まれてリトアニア、ラトビア、エストニアと並ぶバルト3国。エストニアはその北端の国だ。

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design

デザインの世間体 043  ヒゲを剃る天使たち (写真・文:若生友見)

前回、前々回とこの連載では生成AIを利用した謎多きジャンル・開運動画をご紹介してきました。YouTubeでそんな動画ばかりをチェックしていると、関連動画がおすすめに上がってきます(開運動画と関連動画の字面は似すぎていますね)。 今回はそんな開運動画と近接した特殊ジャンルをご紹介します。 私のYouTubeにおすすめとして舞い降りたのはこの動画でした。

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lifestyle

バンカラ女銘々伝 第31回  階段を上る女太閤 竹内寿恵 (文:平山亜佐子)

嘘をつかないことと、人に恩を受けないことという「長野県の教育方針」に染まった竹内寿恵は、正義感が強く負けず嫌い。そんな性格のおかげか、実業家として成功し「女太閤」の異名もとった。「私は自分でこの道と決めたら……その代わり道を決めるまでは非常に研究するんですが、決めた以上何がどうあろうと、どんな事故があろうとバク進するんです。バク進すると仕方がないからみんなついてくる」。 寿恵は1904(明治37)年1月4日、白馬山麓のふもと、長野県北安曇郡北城村にて横沢菊次郎とたにの間に生まれた。四人兄姉の末っ子で上の3人とは年が離れていたのでほとんど一人っ子のようにして育った。

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travel

ユーラシア後ろ歩き 35  深まる洞窟の謎 (文・写真:多田麻美)

ブラーツク、アンガラ川、流星号、バイカル湖の渡し舟、バイカル湖岸鉄道、セヴェロバイカリスク、クラスノヤルスク、バム鉄道、成田、コロナ禍、スーパームーン、北京、シベリア抑留、クラスノヤルスク……記憶がヒュルヒュルヒュルッと巻き戻り、私はふたたび東へと向かう、夏のシベリア鉄道に乗っていた。 ユーラシア大陸の真ん中あたりを過ぎた列車は、イルクーツク州の方角へと向かっている。 私はもう一度、ユーラシア大陸の真ん中へと思いを馳せた。地球のへそがバイカル湖だとしたら、ユーラシア大陸のへそはどこがいい?

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art

暗黒絵日記 のり子の夢は夜ひらく  90話 招待券 (画・文:新開のり子)

ヴァイオリンの演奏会に行った時のこと。 以前習っていたピアノ教室の先生からもらったヴァイオリンの演奏会の招待券、初めて貰えたことに感激したもののクラッシックに詳しいわけではないので少し戸惑ってしまいました。 普段行かない所なので、演奏会が近づくたびに緊張が走ります。 演奏会の前に、バッチリメイクの練習に、とっておきのワンピースを選び、大切にしまっていたお気に入りのハイヒールを押入れから引っ張りだしました。 靴を履くとまるで「シンデレラ」にでもなったような気分です。

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photography

妄想ホテル room:0052  野球と恋 (写真・文:フクサコアヤコ)

夏になると思い出す音がある。 蒸し暑い風に乗って、部屋の中に入り込んでくる虫の声、扇風機の規則的な音。 夕飯の残り香が漂うリビングには、テレビから流れるプロ野球ナイター中継の音が重なっていた。それは、私にとって“昭和の夏”の象徴とも言える音の風景だ。 小学生の頃、そんな音が聞こえてくると宿題もそこそこに私はテレビの前に駆け寄った。 好きな球団が勝てば嬉しい、負けると悔しい。プロ野球は単なる娯楽ではなく、自分の感情を素直に託せる場所でもあった。 ヒーローのように活躍する選手を見て、自分も何かがんばれる気がしたし、ひいきの球団とともに長いシーズンを一緒に走っている感覚が心地よかった。 プロ野球には、そんなふうに人生の一部になってしまうような不思議な力がある。 今回紹介するモデル・石川陽波さんも、そんなプロ野球に魅せられた一人だ。

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lifestyle

蒲田リハビリ日記 第30回  都築響一さんを訪ねて大道芸術館@東京・向島 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

都築響一さん主筆“ROADSIDERS' weekly”内「蒲田リハビリ日記」においては、第21回以降が特にえげつない! とエロ本時代の先輩・同僚間でのみ内輪受けしている。回を追うごとに過激化してゆくのが以前からの俺のパターンだったが、15年以上も署名原稿を書いていなかったのにもかかわらず、実情は、いっさい何も変わっていないのだろう。不定期連載「蒲田リハビリ日記」も丸5年を迎え(2020年07月08日 配信号から連載スタート)、いよいよ第30回である。今回は満を持して、ついにラスボス・都築響一さんの興された東京・向島の大道芸術館を訪ねることにした。

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AFTER HOURS
編集後記 : 今週も最後までお付き合いありがとうございました。

「北欧の日陰から」で先週はゲイ・アートの先駆者、トム・オブ・フィンランドの足跡をヘルシンキで辿りましたが、今週からは海を渡ってエストニア編。こちらも、ものすごく変わった場所にお連れします。 記事では入れられませんでしたが、エストニアの首都タリンには普通に魅力的な場所も当然ながらたくさんあって、僕が気に入ったのは鉄道脇の倉庫街だったエリアを再開発した「テリスキヴィ・クリエイティブ・シティ」と呼ばれる最先端おしゃれスポット。そのなかに写真美術館フォトグラフィスカ(Fotografiska)があったので、覗いてみました。

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)

ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。

本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。

旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。

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ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)

稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。

1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!

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ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)

プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。

これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。

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ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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