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2014年11月26日 Vol.141

photography

東京のマルコビッチの穴

不思議な写真を見た。息づまる、というより、ほんとうに息が詰まるような狭苦しい空間が、ずっと先まで伸びていて、それはどこに続くのか、それともどこにも着かないのか・・・。見るものすべてを閉所恐怖症に追い込むような、それでいて難解なSF映画のように異様な美しさが滲み出るそれは、ビルの内部を走るダクトの内部を撮影したものだという。木原悠介は1977(昭和52)年生まれ、36歳の新しい写真家だ。中野区新井薬師の、潰れた写真屋を改造した「スタジオ35分」という小さなギャラリーで、今年8月末から9月初めの9日間だけ開かれた『DUST FOCUS』が、人生初めての個展だった。

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lifestyle

瞬間芸の彼方に——ドキドキクラブと写真のテロル

いまから1年かもう少し前、たしか中野のタコシェで見つけたのが、『非エロ本』といういかにも自主制作らしいペラペラの作品集だった。ペラペラなのに、発行者が六本木のおしゃれな写真画廊のゼン・フォトギャラリーだったのにも驚いたが、雑誌から引き破いたセクシー・グラビア写真に落書きという、あまりに子供っぽい、あまりにパンクで、あまりにスカムな、そしてへなへなと笑い出さずにいられない、ローファイなクオリティにすっかりやられたのだった。今年9月、東京アートブックフェアにそのドキドキクラブが出店すると聞いて会いに出かけたら、「クラブ」と名乗ってはいても実はひとりで、それもすごくシャイな青年で、作品とのギャップにまた驚かされた。

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art

老遊女 05 デッドボールで没収試合! 前編(文:中山美里 写真:谷口雅彦)

『デッドボール』という有名な風俗店がある。『地雷! レベルの低さ日本一』が店のキャッチコピー。地雷…つまり、デブ、ブス、ババアばかりが集まった風俗店なのである。この店の存在を知ったのは、3年以上前のこと。夜の世界でこまごまとした仕事をしている知人から取材をしないかと教えられたのだが、当時、ちょうどアダルト業界のことをある程度自由に書かせてもらえる連載が一気に2つなくなってしまったところで、書ける媒体がなかった。取材したい気持ちは山々だったのだが、その希望は叶えられなかった。そのため、教えられたホームページを見るだけだったのだが、一度見始めたら非常に癖になるのだ。なぜなら「この人たち、本当に風俗嬢なんだろうか?」という面々がずらり。

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lifestyle

日展という魔界

やっぱりいまだに泰西名画が強いんだな〜、としみじみ思うが、そういうなかでいまだに別格、最強クラス、しかし現代美術ファンにも、欧米古典美術ファンにもほとんど見向きもされない「日本最大の公募美術展」がある——そう、日展だ。去年10月30日に朝日新聞がスクープした、書道部門での入選事前配分という不正行為に端を発した日展スキャンダル報道を、興味深く読んだかたもいるだろう。一般的にはほとんど話題に上ることのない、過去の遺物的な印象しかない展覧会が、いまだにそれほど力を持っていたというか、パワーゲームの舞台になっていたことに、驚いたひとも多いのではないか。

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2014年11月19日 Vol.140

fashion

ベイビーたちのマッド・ティーパーティ

『下妻物語』でフィーチャーされたロリータ・ファッション・ブランドが「ベイビー・ザ・スターズ・シャイン・ブライト」。いまは亡き『流行通信』の連載『着倒れ方丈記』で取材させてもらったのも2004年だったので、あれからやっぱり10年。そのあいだにベイビーは全国各地に20数店舗を展開、パリ店、サンフランシスコ店に続いて、今年はニューヨークにも店舗をオープンさせている。世間的に話題に上ることは少なくなっても、世界的なレベルでは「ゴスロリ・ネバー・ダイ!」なのだ。そのベイビーが10月19日、新装なった東京ステーションホテルで「お茶会」を開催した。参加費用1万7000円(ただしフルコースの食事にたくさんのお土産つき)、120名の席が予約開始10分間で完売。このお茶会に出席するために、外国から来日したファンもいたという。

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art

われらの内なるサドへ——オルセー・サド展へのイントロダクション

SMといえば長く秘められた欲望であったはずだが、いつごろから「わたし、ドMなの」なんて、日常会話でさらっと言われちゃう時代になったのだろう。「SM=サディズム/マゾヒズム」という概念を生み出したといってもいいサド侯爵(マルキ・ド・サド)の、今年は没後200周年にあたる。サドは1740年にパリで生まれ、1814年にパリ郊外のシャラントン精神病院で亡くなった——「我が名が世人の記憶から永遠に消し去られることを望む」という有名な遺言とともに。サドの生きた18世紀後半はフランス革命、アメリカ独立戦争、そして産業革命が進行した激動の時代だった。そうした時代に、人生の3分の1を監獄や精神病院に幽閉されながら書き残された数々の傑作は、後の世に計り知れない影響を与えたわけだが、その没後200周年にあたっていま、パリのオルセー美術館で大規模なサド展『サド——太陽を攻撃する』が開催中である(2015年1月25日まで)。

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photography

陽性のエロティシズム・フォトグラフィ

11月のパリといえば、「パリ写真月間」の季節でもある。ひと月でおよそ100もの写真関連展示が開かれるというが、とりわけ毎年グランパレで開催される『パリ・フォト』(今年は11月13〜16日)の期間には、世界中から写真関係者、キュレイター、ギャラリストが集う。その週にあわせて多くの展覧会が集中するが、ルーブル地下のカルーセル・デュ・ルーブルで開かれた「フォトフィーヴァー・パリ 2014」に出展した作家のひとりが、フレデリック・フォントノワ。1963年パリに生まれ、いまもパリで制作を続ける、写真とビデオにまたがる映像作家である。少し前から作品を紹介する機会を待っていたのだが、オルセーの『サド』展と奇妙にリンクする部分もあり、今回続けて、飛幡祐規さんにインタビューをお願いして掲載することにした。

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travel

フィールドノオト28 上海 浦西(写真・録音・文 畠中勝)

おぼろげな中国がある。その大国は遥か昔から日本という島国に影響を与えてきた。しかし、到来したはずの文化を消化してきた日本人にとって、今となると謎の多い国のひとつが中国となり、あちら側としてもそういった謎を日本に抱いているのかもしれない。江戸時代、日本はオランダとの貿易が盛んだった。アメリカとの交流はいうまでもない。この国は、中国のみならず、諸外国の様々な文化を自国に吸収していく中で、独自に価値観を、再発見し、改良し、新たなものとして育んでいった。もはや元来あった本質とはほど遠いものも少なくない。そこが日本人のおもしろいところであり、説明しがたい独創性でもある。

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2014年11月12日 Vol.139

art

ヘタウマの現在形

パリについでフランス第2の座をリヨンと争う重要な都市であり、地中海で最大の貿易港でもあるマルセイユ。告知でお伝えしてきたように、そのマルセイユと、同じ南仏のセットの2会場で『MANGARO』『HETA-UMA』と名づけられた、日本のサブカルチャーをまとめる、というよりもリミックスする重要な展覧会が開催中だ。フランスに日本の漫画好きが多いことはよく知られているが、この展覧会の舞台にパリではなく、かつて日本人にとって「初めてのヨーロッパ」だったマルセイユが選ばれたことも、出展作家のひとりである根本敬の言う「因果」のひとめぐりだろうか。

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art

老ファイターの城

『MANGARO』『HETA-UMA』展の準備中、マルセイユに滞在していた僕に、デルニエ・クリのスタッフたちがひとつプレゼントを用意していてくれた。「キョーイチはきっとこういうのが好きだろう」と、この地方でもっとも有名なアウトサイダー・アーティストの家に連れて行ってくれたのだ。マルセイユ市街から車で1時間足らず、オーバーニュという小さな町の、そのまた外れの小さな村に、ただ一軒だけ、とてつもなくカラフルで過剰な装飾に覆われた家がある。村の交差点に面して、見落としようのない外観・・・それがダニエル・ジャキ(Danielle Jacqui)の住む家だった。

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travel

案山子X 15:かかしの郷(徳島)(ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は徳島県三好市東祖谷菅生名頃の「かかしの郷」を紹介します。徳島県三好市東祖谷は高知県と接した雄大な自然に恵まれた山間の地域で、日本百名山の一つである剣山(つるぎさん)や、平家一族が架設したと伝わる奥祖谷二重かずら橋などがあります。奥祖谷二重かずら橋から3キロ程、標高約900メートルの場所にある名頃地区には「かかしの郷」と呼ばれる人間そっくりのかかしが住む村があり、様々なメディアで紹介され多くの観光客が訪れています。かかしの郷は綾野月美さんが作った1体のかかしから始まりました。

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2014年11月05日 Vol.138

art

電気画帖13 ロンドン・コーリング・アゲイン(画・文:大竹伸朗 写真:大竹伸朗/大竹彩子)

先月の告知でお伝えしてきたように、いまロンドンのパラソル・ユニットで大竹伸朗個展『Shinro Ohtake』が開催中だ(12月12日まで)。今週のロードサイダーズ・ウィークリーでは作家本人に連載中の「電気画帖」特別版として、写真と絵と文章によるロンドン滞在記を制作してもらった。このあとの展覧会リポートとあわせてお読みいただけたら幸いである。

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art

ちり積もらせ宇宙となす——大竹伸朗展@パラソル・ユニット

日本語を話すときはどうとでもつくろえるけれど、外国語を話すときって、そのひとの人柄がすごく出るような気がする。僕はよく「日本語も英語も同じように話してる」と言われて、それは流暢とかではぜんぜんなく、だらだらと抑揚なく言葉を垂れ流しているというだけのこと。大竹くんの英語は、いつもちょっと考えながら、短いセンテンスがブツッブツッと積み重なっていく感じで、それがなんだかスクラップブックや大きなキャンバスにいろんなブツを次から次へと貼り重ねていく感じにすごく似ていて、ひとりで納得したりするのだが、そんな変なことを考えているは僕だけだろう。すでにお読みいただいているように、いまロンドンのパラソル・ユニットで大竹伸朗展が開催中だ。

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lifestyle

レーパーバーンで『カンパイ』3(文:坪井由美子 写真:坪井由美子、都築響一)

「ヨーロッパの歌舞伎町」ハンブルク・レーパーバーンで、酔っぱらいドイツ人相手に店を開く名物寿司屋「KAMPAI」。こころ優しき大将・榎本五郎(通称「エノさん」)のドイツ人生劇場、ついに大団円! お待たせしました!

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lifestyle

ハダカのこころ、ハダカの眼 05 踊り子という選択(写真・文 牧瀬茜)

ストリップとは何ぞや……。戦後、額縁ショーから始まった日本のストリップは、時代の流れの中で多様化し、変容してきました。時代の流れとはいっても需要だけがストリップの変遷を決めてきたわけではなく、そこには常に警察とストリップ屋とのいたちごっこが絡んでいたそうです。法の目を掻い潜りながら行きつくところまで行きつき、後を追かけるように張り巡らされてきた規制の網の中で窒息しそうになりながらも生き抜いてきた過程そのものが日本のストリップ文化なのかもしれません。

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photography

リリックとしてのポートレート——石川竜一写真展のために

絵や写真を見てくれ、と訪ねてきてくれるひとはずいぶんいる。いい、悪いなんて決められないし、大したアドバイスもできない。「がんばって続けてください」ぐらいしか言えることはないけれど、ただひとつ確かなのは「ものすごくたくさん持ってくるひとに、おもしろくないのはない」という経験則だ。ある日、沖縄から来たという青年が戸口に立っていた。すらっとした長身、端正な顔立ち。赤い革ジャンにシベリアに行くみたいな帽子を被って、露出計付きのいかついハッセルブラッドを首から下げて、ものすごく大きなリュックを背負っている。招き入れると席につくまもなく、テーブルにどさどさと分厚いポートフォリオを積み上げて、「見てください」とつぶやき、あとは黙ってこっちをじっと見ていた。

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travel

フィールドノオト27 東京の動物(写真・録音・文 畠中勝)

2011年7月。都内では「今年はまだ蝉が鳴かないね」と、放射能による危険を危惧する話が飛び交った。その後、本格的な夏が到来。例年のように鳴き始める蝉がいたるところで見られるようになり、ほっと胸をなでおろしたり、「何だかいつもと鳴き声が違うのでは」と耳を疑ったり、新たに巡ってきた疑惑的な季節を受け入れた想いがある。

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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