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圏外の街角から

日本全国に蔓延する慢性の疫病がある・・・シャッター商店街という名の病だ。かつての賑わいの痕跡を残しながらも、ゆっくりと死んでいくのを待つだけに見えるストリート。廃墟ではないのに、シャッターの内側にはだれかが住んでいるはずなのに。

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福岡郊外に隠された匠の理想宮・・ 鏝絵美術館探訪記

「鏝絵」・・・「ウナギ絵」じゃありません、これで「こて絵」と読む。「鏝」とは左官屋さんが漆喰を塗るのに使う、あのコテ。したがって「こて絵」とは漆喰を素材にして、こてで描かれたレリーフ様の半立体美術作品である。 こて絵といえばまっさきに名前が挙がるのが、「伊豆の長八」こと入江長八。幕末から明治にかけて活躍した稀代のこて絵師であり、伊豆松崎には石山修武の設計になる『伊豆の長八美術館』があるので、訪れた経験のある方も多かろう。

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いちばん近くて遠い街 釜山逍遙 前編

それまでも急ぎ旅の途中で立ち寄ることはあったけれど、初めてきちんと釜山を体験することができたのは2006年の春だった。芸術新潮誌の韓国特集のために、福岡からフェリーで釜山入り、帰りは飛行機で成田に帰ってくるというルートで、1週間ほど滞在、ひとりでひたすら街を歩き回った。当時使いはじめたばかりのデジカメと、木製の大型カメラを改造した手づくり針穴写真機を背負って。

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南国地獄をあとにして・・・

地獄はおのれの内にある・・のかもしれないが、外にもあるんだな! というわけで先週日曜の深夜、浅草キッド(水道橋博士・玉袋筋太郎)のおふたりと、江口ともみさん(つまみ枝豆夫人でもありますね)という豪華メンバーとともに、タイの地獄寺&特選珍スポットを巡った『別冊アサ秘ジャーナル』、ご覧いただけたでしょうか。深夜とはいえ、あの内容で90分とは・・プロデューサーも賭けに出ましたねえ。あれ全部、2泊3日の弾丸ツアーで撮影しちゃったのだから、テレビってほんとに大変です。

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圏外の街角から:福岡県大牟田市

長らく扉を閉ざしていた『富士』を改装して、ライブスペース『大牟田ふじ』として甦らせたのが、ディレクターを務める竹永省吾さんだ。僕は去年の秋に大牟田を訪れて知り合ったばかりなのだが、こんな寂れた街にライブハウス! という驚き以上に、オープン当初から灰野敬二、渋谷慶一郎、さらには海外からバリバリのハードコア、ノイズ系アーティストを呼んで、地元のバンドとカップリングさせるという無謀というか、東京でもなかなかない先鋭的なブッキングに度肝を抜かれたのだった。

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マイ・フェバリット・オールド・バンコク 1

先月はこのメルマガで、タイの田舎の地獄庭園や個性的なミュージアムをご紹介した。タイ好きな方ならご存じだろうが、いまバンコクは、かつての東京のような激変の最中にある。というわけで古き良き東南アジアの都市風景を形成してきた「バンコクらしいバンコク」がどんどん消えていくいま、ショッピングやグルメやエステはちょっと置いといて、フィフティーズからセヴンティーズあたりの風情を残す、貴重な現存スポットを歩いてみてはいかがだろうか。

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圏外の街角から:神戸市稲荷市場

三ノ宮からJR神戸線の下り電車に乗ると、数分で着いてしまうのが神戸駅。名前が示唆するように、東海道線の終点駅であり、山陽本線の始点駅である神戸駅は、かつて神戸の鉄道網の中心だった。しかし時は過ぎ・・神戸駅を南下したあたりにあった兵庫港から、神戸港に物流の中心が移ったのと同じく、ひとの流れが三ノ宮側に傾いてしまった現在、東京駅や大阪駅のような感覚で神戸駅に初めて降り立つものは、だれしもが「ここが神戸の中心!?」と絶句するはずだ。

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みちのく路の特殊美術喫茶・ブルボン

福島県いわき市・・県内最大の都市であり、東北全体でも仙台に次いで第2の人口を誇っているが、いかんせん知名度の低さはいなめない。先週号の編集後記でも触れたように、去年の大震災では死者310名、家屋の全半壊が数万軒にのぼる甚大な被害を出しながら、石巻などのようにマスコミに取り上げられる機会もほとんどないまま。福島第一、第二原発から30~70キロ圏内にあることで、なかなか観光客も戻ってこない。スパリゾートハワイアンズも、ようやく2月に全面再開したのに。 そのように地味なイメージを払拭できないいわき市ではあるが、珍スポット・ハンターたちには広く知られた名所がある。市内中心部、平(たいら)1丁目交差点近くにある『喫茶ブルボン』だ。

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バンコク猟盤日記

来週はお盆! 夏休み! メルマガに休みはないけど・・・。というわけで、来週はタイで夏休みを過ごそうというひともいるでしょう。羨ましい・・・。 ご飯にショッピングにエステ、いろんな計画を立てているみなさまに、今回はタイのレコード屋めぐりをおすすめする「バンコク猟盤日記」。タイ語が読めなくても、タイの音楽にまったくなじみがなくても、ジャケットを見ているだけでうっとりしてしまう、タイ製アナログ盤の魅力をご紹介しよう。僕がタイに通いはじめたのは、いまから10年ぐらい前。そして2004年から数年間は、年に何回もバンコクに通う「ハマリ状態」に。

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圏外の街角から:鳥取市若桜通り

鳥取駅から県庁に向かって北に真っ直ぐのびる本通り(若桜通りとも)が、鳥取市のメインストリート。その両側と、左右にのびる商店街が、かつては鳥取市の買い物需要を一手に引き受けていた。本通りあたりの街並みは、実は近現代建築史の分野ではよく知られた存在なのだという。鳥取市は太平洋戦争最中の1943年に、死者1210人を出した大地震と、戦後間もない1952年の「鳥取火災」と呼ばれる、市内全世帯の約半数を焼失した大惨事によって、市内中心部の歴史的な街並みをほとんど失ってしまった。

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札幌迷走紀行・前編 ある秘宝館の最後

北海道秘宝館が危ないらしいと聞いたのは、もう数年前のこと。毎日開館していたのが、いつのまにか週末だけになり、動いていた展示物は、メンテナンスがまったくされないために徐々に動きを止めて、そのうちに冬期は閉館、ほかの季節も「基本は週末開館だが、行ってみないとわからない(ウェブサイトもなし)」という状態に陥っていった。館を任されていた女館長さんは、札幌市内のスナックのママも兼ねていて、そっちのほうが忙しくて秘宝館まで手が回らない、という状態でもあった。そしてこの秋。久しぶりに札幌を訪れてみると、「秘宝館が廃墟になってしまっている」という悲しい情報が。

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金いろの夜――別府湯けむりアート紀行

いつまでも若くはいられない。老いた都市から都市へと旅していると、人間の歳のとりかたにいろいろあるように、町の老いかたにもいろいろあるのだと実感する。たとえば温泉町で、僕が知るかぎりいちばん往生際が悪いのは熱海で、いちばんさっぱり枯れているのが別府だ。別府というのはつくづく不思議な町だ。日本有数の温泉地で、観光客も国内外からそうとう訪れているはずなのに、駅前から海に向かって延びるメインストリートは人影まばら。お土産屋は20年も30年も前の品物を平気で並べているし、商店街は見事なまでのシャッター通りと化している。一歩裏道に入れば、住宅と飲食店と風俗店がぐちゃぐちゃに混じり合い、ゾーニングという概念が存在しないかのようだ。

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石巻のグレイトフルデッド

3.11をめぐる報道で、もっとも頻繁に取り上げられた土地のひとつが宮城県石巻だろう。石巻を「いしまき」と読んでしまうひとも、これでいなくなったにちがいない。石巻湾に面し、旧北上川の河口に沿って広がる石巻市が、地震と津波で壊滅的な被害を受けたのはご承知のとおり。宮城県復興庁のデータによれば死者3486人、行方不明者462人、住宅・建物の全半壊は3万3378戸。ひとつの市で、3000人以上が命を落とし、3万もの建物が壊れてしまったことになる・・すぐ北隣に位置する女川原発が無事だったのが、信じられないくらいだ。そして震災から1年9ヶ月がたった現在、石巻がどうなったかといえば、いまだに被害の惨状は生々しいまま。道路や空き地のガレキはさすがに片付けられたけれど、それは集積所に集められただけのことだ。街を歩けばあいかわらず崩れたまま、空き地のままの地所が目立つ。

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ロードサイド台湾1:八卦山南天宮

日本の地方を回りはじめたのは『週刊SPA!』誌で1993年から1998年まで続いた連載『珍日本紀行』がきっかけだった。その連載では正月、ゴールデンウイーク、夏休みなどの連休シーズンにあわせて『珍世界紀行』という特別版を発表していて、それが2004年には『珍世界紀行 ヨーロッパ編』として一冊にまとまり(2009年文庫化・筑摩書房)、同時にSPA!の連載が終わってまもなくの2000年からは『月刊TITLE』誌(文藝春秋・・すでに廃刊)で『珍世界紀行 アメリカ編』が始まって、2007年まで続いたこの連載は2010年に分厚い単行本になった(アスペクト刊)。同時にSPA!誌の海外特別編でいくつか取り上げたアジアの珍名所探訪は、2006年から07年にかけて『月刊パパラッチ』(双葉社刊)の連載に引き継がれたが、こちらもあえなく休刊・・涙。

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高知のデルタ、本山のミシシッピ――藤島晃一・絵と音楽と、女と旅の物語 前編

四国の真ん中をほぼまっすぐ南北に貫いて、高知市と香川県高松市を結ぶ国道32号。高知市内から北に向かい、すぐにのどかな田園地帯に、さらに緑深い山沿いのワインディングロードに入って約1時間。大豊という小さな町から土佐街道に左折し、おどろくほど深い色の吉野川に沿って走って行くと、本山町をすぎたあたりのカーブを曲がったとたん、ものすごくカラフルに塗りこまれた一軒家が視界に飛び込んでくる。かわいらしいシャレコウベの看板脇に書かれている店名は『CAFE MISSY SIPPY』。もちろんアメリカのミシシッピ州と、「ちびちび飲るお姐さん」みたいな英語をかけて、これがアメリカのどこかのカレッジタウンにあればニヤリとするような名前だけど、高知の山中ではちょっと浮いている感じもする。でもとにかく、やっと来れた・・・ここが絵描きで、写真家で、スライドギターの名手でもあるブルースマン・藤島晃一のホームベースなのだ。

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高知のデルタ、本山のミシシッピ――藤島晃一・絵と音楽と、女と旅の物語 後編

先週に続いて高知県本山町からお送りする、絵描きで、写真家で、スライドギターの名手でもあるブルースマン・藤島晃一さんを訪ねる旅。今週の後編では、『CAFE MISSY SIPPY』から道を挟んだ向かいの川沿いにある『Mojoyama Mississippi』で、4月27日に開催されたライブの模様を写真で紹介しながら、稀有なブルースマンの絵と音楽と女の、冒険の旅路をさらに辿ってみよう。高知市内の飲み屋で働くうちに仲良くなったアメリカ人女性にすすめられて、アメリカに渡ることになった藤島さん。彼女のホームグラウンドであるミネアポリスから、高知で帰りを待つ新しい彼女の実家があるオクラホマシティ、さらにはウィスコンシンと巡るうちに、本格的に絵と向かい合う気持ちが固まってきて、「お金貯めて、また絵を描きに戻って来る」ために、とりあえずいちど高知に帰ることになった。

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雄弁な沈黙――戦争を語りつぐ場所・しょうけい館

夢を見ました 倅(せがれ)の夢を 肩をたたいて くれました 骨になっても 母を忘れぬその優しさに その優しさに 月がふるえる 九段坂(『靖国の母』二葉百合子 作詞・横井弘) 九段といえば靖国神社。その靖国神社に今年も「みたままつり」がやってきた。先週末の13日から16日まで。冬の新宿酉の市と並んで、東京都内では「見世物小屋」が出る唯一の夏祭りということで、毎年楽しみにしているマニアの方も多かろう。日本歌手協会の超ベテラン歌手たちによる、能楽堂での「奉納特別公演」というフリーコンサートが、僕にはいちばんの楽しみだ。

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踊る東北御殿――股旅舞踊全国大会・見聞記

海があり、港があり、カモメが飛んで、霧笛が響く・・・船と港が外国に直結する唯一の場所だったころ、日本人のこころを捉えたのが「マドロス」というロマンチシズムだった。マドロス=オランダ語で「船乗り」を意味する言葉が、『憧れのハワイ航路』から『玄海ブルース』、『ひばりのマドロスさん』まで、無数の「マドロス歌謡」を生んで、消えていった。義理と人情の板挟みになりながら、道中合羽と三度笠に憂いを隠し、旅人(たびにん)として流れ流れて・・・「股旅」というキャラクターもまた、戦前から戦後にかけて日本人のこころを激しく揺さぶった、時期もメンタリティもマドロスと奇妙に重なるロマンチシズムのあらわれである。そして股旅は氷川きよしという稀有な歌手によって、この時代に奇跡的に甦ったものの、歌手本人の魅力を超えて「股旅」というロマンが復活したかといえば、そうではない。

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電音三太子、世界を行く!

ものすごくギラギラで、ものすごく大きな被り物をかぶって、ものすごくチープなテクノ・ミュージックに乗って、祭りの爆竹スモークのなかを踊りまくる「電音三太子」。こころある台湾知識人の眉をひそめさせ、祭りに酔う子どもたちを熱狂させる、現代台湾が生んだひとつのカルチャー・アイコンだ。台湾南部・麻豆の地にそびえる珍寺・麻豆代天府を紹介した今年1月16日号のメルマガ後記で、電音三太子を僕はこんなふうに書いた――。

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凍った音楽――東京タワー蝋人形館閉館によせて

今年で開業55周年を迎える東京タワー。5月にはタワー足元にいた南極犬タロ・ジロなど15頭の像を、事もあろうに「東京オリンピックの招致を目指して花壇でシンボルマークをつくるために(新聞報道)」撤去して、抗議が殺到。さらに9月17日にはエレベーターのガラスが鉄板の直撃を受けて割れ、子供が怪我をするという、開業以来初めての深刻な事故が起きて、高さ250メートルにある特別展望台はいまも閉鎖中と冴えない話題が続いている。(中略)そしてなにより3階にあった「東京タワー蝋(ろう)人形館」! 哀愁スポット・マニアで東京タワーを嫌いなひとはいないと思うが、去る9月1日に蝋人形館が43年の歴史に幕を下ろし閉館――というニュースに、ひときわ衝撃を受けた方も多いのではないか。

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ライフ・イズ・ジルバ!――驚愕のスーパースナック探訪記

「またひとつ、大物を見つけちゃいました!」――このメルマガでもたびたび登場してきた広島県福山市・鞆の津ミュージアムで『極限芸術 死刑囚の絵展』などを企画してきた櫛野くんから、興奮気味のメールが飛び込んできたのがいまから2ヶ月ほど前のこと。ちょうど香川県高松でトークの予定があったので、「ま、瀬戸内海の反対側だし」と無理矢理気味に寄り道。福山駅で櫛野くんのクルマに拾ってもらい向かった先は・・・福山市中心部から北上すること約30分、ものすごくのどかな郊外の、そのまた外れにぽつんとたたずむ倉庫・・・じゃなくて「ジルバ」という名前のスナックだった。

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マジカル・ベトナム・ツアー

正月休みを利用してベトナムに行ってきた。南北に細長いベトナム、国土面積から言うと、九州を除いた日本とほぼ同じということで、短い旅行で北から南まで旅するのは難しい。今回は数年ぶりになるサイゴン(ホーチミンシティ)と、世界遺産にもなっている中部の古都ホイアンをさらっとめぐって骨休め・・・と思いきや、やっぱり珍スポットやらアウトサイダーやらを探す日々になってしまい・・・さもしくもあわただしい取材旅行になってしまったのはいつものとおり。というわけで、ビーチだのエステだの、エスニック料理だの可愛い雑貨だのじゃないベトナムはないんか! という好き者のみなさまのために、今回はロードサイダーズ風ベトナム・トラベローグをお届けしよう。

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紅包場――哀愁の歌謡空間を探して

「台北の原宿」として観光客にもおなじみの西門町(シーメンティン)をぶらぶら歩いていると、やたらケバい顔写真を壁一面に貼り込めた店頭に出くわすことがある。「紅包場(ホンバオツァン)」と呼ばれる台湾ならでは、いや台北ならではのユニークな娯楽施設だ。もともと西門町は日本統治時代初期に、浅草のような日本人向け繁華街としてつくられたエリアだった。ランドマークになっている赤レンガの西門紅楼は、当時の商店街だった建物である。それが第二次大戦後、蒋介石の中華民国・南京国民政府軍の台湾上陸とともに、こんどは大陸からやってきたひとびと(いわゆる外省人)のためのエンターテイメント・タウンになった。そこで地元台湾の歌ではなく、中国大陸の流行歌を聴きながら、外省人たちが故郷を懐かしむ場として生まれたのが、紅包場である。

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極彩色のアーバン・パラダイス――台中に虹の村を訪ねて

台湾中部の台中は台北、高雄に続く台湾第3の都市。台北からも高雄からも高速鉄道で1時間足らず、人口百万人規模の大都市でありながら、どこかリラックスした雰囲気が漂い、一説によると台湾人が住みたい都市ナンバーワン。パイナップルケーキ、タピオカティー、泡沫紅茶など、観光客におなじみの台湾フレイバーも台中起源だというし、アジア最大規模の国立台湾美術館も、台北ではなくこちらにある。急ぎの台湾観光では北部の台北、南部の高雄・台南のあいだで飛ばされてしまいがちだが、台中は観光するにも、のんびりするにも最適。おすすめしたい場所はいろいろあるが・・・そのなかでまあ異色と言ったら、『虹爺爺の村』ほどカラフルに異色なスポットもほかにないだろう。

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花咲く男根の森

ソウル市のバスターミナルから、激走する高速バスに揺られること3時間半。ひなびた町の、ひなびたターミナルにバスは到着した。「三陟」と書いてサムチョクと読む。ソウル―プサンを結ぶ高速鉄道エリアから遠く外れた、朝鮮半島東側に位置する江原道(カンウォンド)の小さな町である。(中略)男根彫刻公園・・・これほど、このメルマガにふさわしい場所があるだろうか!(笑)美しい海岸線を見おろすシンナムの丘に、数百本もの大小さまざまな男根がニョキニョキしてるのは、この地に古くから伝わる奇妙な伝説のおかげだ・・・。

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ケチャップとカレー粉の海に溺れて――ベルリン・カリーブルスト食い倒れ旅

まだベルリンが東西に分断されていたあの時代、廃墟のようなクロイツベルクの片隅で、ドラム缶を叩き壊すようなインダストリアル・ミュージックを奏でていたアインシュトゥルツェンデ・ノイバウテン。寒さに凍えながら、ビートに浸っていた黒革の男たち、女たち。深夜の街を、だれもがスーパーのビニール袋にわずかな持ち物を入れて、どこまでも歩いて行くのだったが、そういう夜にからだを温めてくれたオアシスが「インビス」と呼ばれる屋台で、そこではコーラを飲みながら(屋台には酒の販売許可がなかったので)、輪切りにしたソーセージをケチャップとカレー粉をまぜたソースに浸して食べた。「カリーブルスト」との、それが最初の出会いだった。

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ゴミの果てへの旅――村崎百郎館を訪ねて

村崎百郎が亡くなってもうすぐ4年になる。ファンだったという青年に刺殺されたのが2010年7月23日。そして長い準備期間を経て先月末、伊豆高原の『怪しい秘密基地 まぼろし博覧会』内に『村崎百郎館』がようやくオープンした。手がけたのは生前、公私にわたるパートナーだった漫画家の森園みるくと、本メルマガ2013年5月15日号で紹介したユニークな古物商/アーティストであるマンタム、そして多くの友人、ボランティアたちである。2011年の開館以来、珍スポット・ファンにはすでにおなじみとなっている『まぼろし博覧会』。もともとは『伊豆グリーンパーク』という熱帯植物園で、2001年ごろに閉館、放置されていたのを、出版社データハウスの総帥・鵜野義嗣が買い取って、コレクションを展示する場としてオープンさせた巨大施設だ。

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岐阜の小京都にニッポンの安心感を見た!――全日本食品サンプルあーとグランプリin郡上

そろそろ夏休み本番が近づき、準備に余念のないみなさま、いまだノー・アイデアのみなさま、まったく休みの取れないみなさま・・・悲喜こもごもの日々でありましょうか。今週は夏休みに向けた旅特集。しかし北海道だの沖縄だの国内メジャー・デスティネーションの陰で、ほとんど候補に上らないと思われる(失礼!)、中部地区の岐阜県郡上市、関市、愛知県蒲郡市という3地点を取り上げる。こんな夏休み特集、このメルマガだけだろうなあ・・・。それではまず、岐阜県中部の小京都・郡上八幡から。

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パッシングスルー・タウン——ターミナル駅のとなり町 01 小田急線南新宿駅

都心の廃墟には、人里離れた場所の廃墟とは微妙に異なる空気感がある。どろりと粘着質のなにか。だれにも望まれないのではなく、だれからも望まれているのに、ほとんどすべての場合に複雑な権利関係がからんでいるためにーーようするにカネへの執着がからみあって、身動き取れないまま年月を重ねている、欲望の醜いカタマリとしての廃墟。それが僕らのこころをざわつかせる。

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ホノルル旅日記 1:愛と哀しみの理想郷

ワイキキの喧騒を通り過ぎ、ダイヤモンドヘッドを周回する道路に沿って裏側に回ると、そこはブラックポイントと呼ばれるハワイ屈指の超高級住宅街だ。どこにも人影はなく、しかしどこかで見ている監視カメラはたくさんあるにちがいない、曲がりくねった道を辿って海に向かって突き当りまで進む。大きな鉄製のドアがこちらの車のナンバープレートを確認して、音もなく開いた。まるでジャングルに開けたトンネルのように豊かな緑のアプローチを抜けると、そこにシンプルな、落ち着いた白い建物があった。ドリス・デュークの「シャングリ・ラ」だ。テレビで見るような「ハワイの豪邸」とはワケがちがう。かつて「世界一リッチな少女」と呼ばれたドリス・デュークが、この土地に惚れ込み、世界各地で収集した貴重な美術品を持ち込んで住まいにした、ここは桁違いの贅を尽くした、それでいて見事に抑制の効いた、洗練の極みにある空間だ。

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ホノルル旅日記2:ロングスのひとたち

化粧品でも着替えでも、ポテチでもビールでもいい、ハワイで日用品が必要なとき、どこへ行ったら・・・「ABCストアがあるでしょ」と言うのはワイキキから一歩も出ない観光客のしるし。ハワイ人にとっては「ロングスがあるでしょ」となるのが正解だ。ロングス・ドラッグスはハワイ最大のドラッグストア・チェーン。一般薬品に処方せん医薬品、化粧品、袋菓子、下着に文房具、ビール、ワイン・・・生鮮食料品以外すべての日用品を扱っている。そして基本的に24時間営業。日本のコンビニよりもはるかに大きくて、スーパーマーケットとはまたちがう。言ってみればマツキヨを巨大にして、ドンキホーテを薄めたみたいな存在だ。

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パッシングスルー・タウン——ターミナル駅のとなり町 02 東武東上線北池袋駅

急行や準急に駆け込む善男善女を横目に、空席の目立つ普通電車にゆったり着席するはぐれもの、しかしゆったりする間もなく池袋駅を出発してわずか1分! 150円で着いてしまうのが東武東上線・北池袋駅だ。これほど乗り甲斐のない電車旅があろうか。新宿、渋谷と肩を並べる東京屈指のメガタウンでありながら、「トレンディ」という言葉にひとかけらの縁もない池袋。東口に西武、西口に東武という、東京初心者を惑わせる配置。JRに地下鉄に私鉄と全部で8路線が乗り入れ、一日の利用者が250万人以上というカオスそのものの駅構内。『池袋ウエストゲートパーク』から最近の池袋チャイナタウン・マフィア伝説、脱法ハーブ事故まで、「東京一怖い街」というイメージがすっかり定着。新宿ゴールデン街や2丁目のようなカルチャー・ゾーンも皆無。

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新連載:セーヌ川にアングラは流れる――マダム・マキコのパリ悪妻日記(写真・画・文:田中麻記子)

ずっと好きなアーティストに田中麻記子さんがいる。バリバリの現代美術でもなく、伝統的な洋画でもなく、なんともフワフワした、可愛らしさと怖さが混じりあって、そこにあの世感をふりかけたような、不思議な絵を描く不思議な画家だ。麻記子さんはたま~に気が向くとメールをくれたり、一緒に飲んでくれたりしていたけれど、いつのまにか結婚していて、いつのまにか「文化庁派遣在外研修員」なんて肩書で、パリに暮らしていた。そうしてまた、久しぶりに連絡が来たと思ったら、「研修」という言葉が赤面するほどの、スリリングなパリのアンダーワールド・トラベラーになっていた。これから不定期連載でお送りする、マダム・マキコの夜のトラベローグ。どんなに詳しいガイドブックにもぜったい出てこない、パリの深い水底に連れていってくれるはず。で、今夜はどこに?

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緊急報告:レトロスペース・坂会館、存亡の危機!?

レトロスペースが揺れている。北海道屈指のビザール・ロードサイド・アトラクションとして名高い、札幌のレトロスペース・坂会館。珍スポット・ファンはすでにお聞き及びかもしれないが、今月なかばあたりから「レトロスペースが4月末で閉館か!」とTwitterなどで噂が拡散。レトロスペースや母体となる坂ビスケット本社にも、問い合わせが相次いでいるという。『珍日本紀行』の取材で初めてレトロスペースを訪れたのが1999年。もう15年以上のお付き合いになる。館長・坂一敬(さか・かずたか)さんには、ご自身の半生を『巡礼/珍日本超老伝』でも語っていただいた。北海道秘宝館がすでに閉館し、去年は札幌市民の憩いの場・喫茶サンローゼすすきの店も閉店。このうえレトロスペースまでなくなってしまったら、いったい札幌でどこに遊びに行けばいいのだろう。

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みほとけのテーマパーク

いまから10年くらい前、アジアの珍寺めぐりにハマっていた時期があった。もともと『週刊SPA!』で「珍日本紀行」を連載していたころ、夏休みやGWなどにあわせて「珍世界紀行」もやりたくなって、最初はヨーロッパを中心に回っていたのが、次第に東南アジアにも足が向いていったのが発端だった。当時はネット情報がほとんど存在しなかったので、アジアにどんな珍寺があるのか、事前にはまるでわからなかったが、バンコクで雑誌をぱらぱら見ているうちに、地獄庭園の小さな写真が目に留まり、そこからタイの珍寺めぐりが始まって、しだいにベトナム、ラオス、ミャンマー、中国本土、韓国、そして台湾へと足が向いていったのだった。

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圏外の街角から:北海道夕張市

ギリシャの財政危機が連日、ニュースになっている。国が倒産する、ということが現実的にいったいどういう事態を招くのか、いまひとつ実感できないけれど、日本にはその見本というか先達というか、先輩がいる。日本で唯一、「財政再建団体」の指定を受けた破綻都市・夕張だ。札幌に出張した翌日、夕方の飛行機までの空いた時間に、久しぶりに夕張の町を巡ってみた。北海道の玄関口である新千歳空港から夕張までは約40キロ、札幌からは約70キロ。しかし交通の便からして、すでに最悪。札幌から1時間40分ほどかかる直通バスが、一日わずか数本。JRも札幌、新千歳どちらからも直通便がなく、乗り換えが必要。特急を使っても2時間以上かかってしまい、けっきょくレンタカーに頼ることになる。

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ライブ・アット・ニュージンジャーミュージアム

栃木県、というと餃子の宇都宮だったり東照宮の日光だったり、観光スポットはいろいろあるが、宇都宮、小山につぐ第3の都市・栃木市はなんとなく影が薄い。市街中心部には蔵造りの家屋がずらりと並び、なかなか風情もあるのだが・・。そんな栃木市でいま、にわかに注目を集める新観光スポット、それが『岩下の新生姜ミュージアム』。今年6月20日にグランドオープンを迎えたばかりだが、すでにテレビや新聞・雑誌でご覧になったかたも多いのでは。「都築さんにとっては秘宝館みたいなもんでしょ?」とニヤニヤしながら迎えてくれたのが、岩下食品社長兼ミュージアム館長の岩下和了(いわした・かずのり)さん。1966年生まれ、今年49歳の社長さんだ。

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ブルゴーニュのタイムマシン

中世の城、といってもフランスでは珍しくないし、現代に復元された中世の城なんて、さらに珍しくない。でもそれが完全に中世の工法で、当時と同じ素材だけを使用して、もう20年近くもかけて建設中となると、ちょっと話が違ってくる。パリから南下すること200キロ弱。ワインで有名なブルゴーニュ地方でただいま進行中の「ゲドゥロン(Guédelon)」は、中世の城を中世のやりかたで建てる(プロセスを見学する)テーマパークであり、この時代にエコロジーの観点から建築を見直す試みでもある、奇抜にして壮大なプロジェクトだ。

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ホワイトライト・ホワイトヒート ロシア冬紀行1 古都の哀愁蝋人形館

朝9時を過ぎても薄暗い街。凍りつく路面を足早に歩く人たちがいる。さらさらとふりかかる雪は、文字どおりパウダーのように服や靴の表面を滑って消え、すでに店を開けているレストランでは半袖シャツのスタッフがテーブルを整え、ビルの壁の電光表示はいまの気温がマイナス20度だと告げていた。サンクトペテルブルク、1月10日。ロシアではクリスマスにあたるというその週に、成田からモスクワを経て僕は、ここにいる。

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ホワイトライト・ホワイトヒート ロシア冬紀行2 「ロシアのバスティーユ」で豪華版・見世物小屋めぐり

先週に続いてお送りするロシア冬紀行・第2話、今回訪れるのはエルミタージュ美術館とネヴァ川を挟んで向かい合う、ペトロパヴロフスク要塞である。サンクトペテルブルク観光でも重要な場所であるペトロパヴロフスク要塞。どのガイドブックを見てもかならず「バスチョン」と呼ばれる収容所内部や聖堂が解説されているが、しかし! そういう歴史的に重要な施設の周囲を、数々のB級観光スポットというか、ほとんど見世物小屋のノリに近い常設・仮設展示施設がいくつも取り巻いていることは、まったく語られていない。チープな歴史蝋人形館のほかは、ガイドブックどころかウェブサイトでもほとんど記述が見つからないので、今週はこの「知られざるサンクトペテルブルク最重要B級スポット」を徹底紹介する。

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ホワイトライト・ホワイトヒート ロシア冬紀行3 折れた骨の音楽

見たこともない「ビートルズ・ラブソングス」と書かれたアルバムが最前列に陳列してある。片言の英語で店主は「これ、ルーマニアでプレスされたレア盤だから」と教えてくれ、値段も手頃だったので購入。代金を払いながら「ボーン・レコードもある?」と聞くと「ん?」 しかたないので自分の胸のあたりを指さしながら「エックスレイ」と言ってみると、「お~、あるある」とペナペナのソノシートふうの数枚を、奥から引っ張り出してくれた。あぁよかった。これを探しに、真冬のロシアに来たのだから。

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圏外の街角から:広島駅前地下広場

ものすごく久しぶりにお送りする「圏外の街角から」。全国に散らばるシャッター商店街を歩く連載だが、今回はちょっと趣向を変えて広島駅前の地下広場にご案内したい。中国地方最大の都市であ広島市。JR広島駅は北口が新幹線口、在来線が南口となっている。南口駅前は現在、大規模再開発が進行中。まことに味気ない広場になっているが、この一帯はもともと原爆で壊滅的な被害を受けたあと、終戦直後から闇市が出現。しだいにいくつかの市場を形成するようになって、「荒神市場」と呼ばれていた。いまも駅を出て左側に歩いて行くと「愛友市場」という名の、当時の面影をそのまま留めた市場が残っている。

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海辺の町のロウ人形館

南インド・ケララ州のコーチン(コチ)は、アラビア海に面した大都市。観光のメインとなる旧市街フォートコーチンと川を隔てた、新市街にある「ケララ州で2番目に大きいショッピングモール」というオベロンモールの3階に『スニルズ・セレブリティ・ワックス・ミュージアム(Sunil's Celebrity Wax Museum)』があった。旧市街の美しいポルトガル建築や、『地獄の黙示録』気分に浸れるバックウォーター・クルーズとかを取材しとけばいいものを、なぜに南インドまで来てロウ人形館を・・・と思わなくもないが、ロードサイダーズなんだからしょうがないです!

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僕的九州遺産 My private Kyushu

すでに告知などでご存じの方もいらっしゃると思うが、今週土曜日(10月1日)から福岡天神アルティアムで、『僕的九州遺産 My private Kyushu』が開催される。会期は月末まで1ヶ月間あるので、もし機会があればご覧いただきたい。「ここがどこだか、道路でわかる。こんな道はほかのどこにもない」というのはリヴァー・フェニックスの『マイ・プライベート・アイダホ』に出てくる台詞だった。僕のオン・ザ・ロードはあんなふうに痛切でも絶望的でもないけれど、それでも山の中の道を走ったり、海辺の町の路地にたたずんでいるとき、「こんな道はほかのどこにもない」感覚を、九州という大きな島は僕にじわりと染みこませてくれる。

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見世物に魅せられて――見世物大博覧会@国立民族学博物館

大阪モノレールを万博記念公園駅で下車。ずいぶん汚れてしまった太陽の塔を横目で見ながら公園をずずっと奥に進むと、国立民族学博物館の大きな建物が見えてくる。通称「ミンパク」ではいま注目の展覧会『見世物大博覧会』を開催中(11月29日まで)。英語のタイトルが「アメイジング・ショウ・テンツ・イン・ジャパン」とされていることからも明らかなように、この珍しい、そして画期的な展覧会は、ショウ・テント=仮設の小屋で営まれてきた見世物の歴史を、江戸時代から平成の現在まで200年あまりにわたって振り返るという、ある意味、国立博物館らしからぬ(?)企画展だ。

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Y氏とめぐる、福岡マジカルミステリーツアー

おかげさまで好評開催中の『僕的九州遺産』展。これから観に行こうというかたもいらっしゃるかと思う。オープニング翌日の10月2日にはバスツアーも開催されたが、そこでツアーコンダクターとして活躍していただいたのが、通称「Y氏」こと山田孝之さん。本業はウェブ関連の会社を運営しながら、これまで福岡を中心とする九州の「B面」の楽しさを紹介する、最強のガイドとして発信を続けてきた。主戦場であるブログ「Y氏は暇人」で2013年からさまざまな調査の成果を発表するとともに、冊子『福岡のB面』『福岡ふしぎ旅』『福岡レトロ旅』などを次々に刊行。昨年末には単行本『福岡路上遺産』(海鳥社刊)も出版しているので、福岡の書店で見つけたひともいるのでは。今回はY氏にお願いして、これまでブログで紹介されたスポットの中から、これから展覧会に来ていただくみなさまのために「福岡に来たなら、これは行っとかないと!」という場所を選び、特選・福岡B面ガイドとして紹介させていただくことにした。

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シーガイアと高鍋大師の宮崎を訪ねて

先週号でお伝えした、みやざきアートセンターでの生頼範義展を見た翌日、夕方の飛行機までの数時間、宮崎県内を少しだけ回ってみた。展覧会場で出会った地元新聞の記者さんに「シーガイアのオーシャンドームもいよいよ取り壊しです」と教えられて、それまで思い出すこともほとんどなかったのに、急に見ておきたくなって、レンタカーを探して走り回ってみたのだった。もう忘れてしまったひとも多いだろうか、シーガイアはバブル期の日本で生まれた数々の巨大開発のうちでも、最大級のプロジェクトである。宮崎市のビーチフロントに高層ホテル、国際会議場、ゴルフコースなどを備えた総合リゾートとして1994年に開業。なかでも、すぐ目の前が海なのに全天候型ドームに覆われた人工ビーチで一年中遊べるという「オーシャンドーム」は、ギネスブックにも認定された巨大インドア・アミューズメント施設だった。

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君よ知るや北の国――ラトヴィア・リーガ紀行1

イスタンブールを南の「アジアとヨーロッパの結節点」とするならば、東と南にロシア、北に北欧、西に西欧と隣接するバルト3国は「ロシアとヨーロッパの結節点」と表現できる。この正月はラトヴィアのリーガに行ってきた。北からエストニア、ラトヴィア、リトアニアと並ぶバルト3国のうち、ラトヴィアの首都であるリーガは3国で最大の都市。旧市街はまるごとがユネスコの世界遺産に指定されている観光地としても名高い・・・昼でも零下20度ぐらいになる厳冬期に、わざわざ観光に行くもの好きは多くないけれど。

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君よ知るや北の国――ラトヴィア・リーガ紀行2

先週に続いてお送りする「ロシアとヨーロッパの結節点」ラトヴィア・リーガ旅行記。今週はKGBビルとはまた別種のひんやり感をたっぷり味わえる、医療史博物館にお連れする。ユネスコの世界遺産に指定されている旧市街の一角、クロンヴァルダ公園に面して建つ、1879年につくられた大邸宅を転用した医療史博物館。正式名称を「パウルス・ストゥラディンシュ医療史博物館」という。パウルス・ストゥラディンシュ(Pauls Stradins, 1896-1958)はラトヴィアの著名な医師・医学史研究者であり、医学・公衆衛生教育にも力を尽くした人物である。ソヴィエト連邦の侵略を前に、多くの知識人が西欧に逃れるなかで、ストゥラディンシュは愛国心からラトヴィアに残る道を選んだ。スターリン時代には活動を制限された時期が長かったが、スターリンの死去とともに精力的な活動を再開、終生ラトヴィア医学に貢献する人生を送った。

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ベラミの記憶

「黒いダイヤ」と呼ばれた石炭景気のおかげで、明治初期にはひなびた漁村にすぎなかった若松が、ゴールドラッシュならぬコールラッシュ状態で大繁栄したのも今は昔。昭和30年代に入ってエネルギーが石炭から石油中心にシフトするにつれて、若松も徐々にさびれていって、いまではかなり寂しい景色になってしまった。かつては映画館や芝居小屋がたくさん並んで、九州地方屈指の賑やかな繁華街だったと言われても、なかなか想像しにくい。「若松バンド」と呼ばれる海岸沿いに並ぶ大正建築群から、わずかに当時の繁栄ぶりをしのぶばかりである。『ベラミ』というグランドキャバレーが若松にあった、と聞いたのは去年、福岡で『僕的九州遺産』展を開いたときだった。オープニングに来てくれたお客さんから、「ベラミ山荘、もう行きました?」と聞かれて、知らないと言ったら「ええーっ」と驚かれた。キャバレーのベラミはもうとっくになくなったけれど、当時の従業員寮だった不思議な建物が残っていて、そこを買い取ったひとが「ベラミ山荘」と名づけて公開しているという。「知らないなんて・・・」と呆れられて悔しがっていたら、展覧会の関連企画で開催したバスツアーのなかに、気を利かせたスタッフたちがサプライズとしてベラミ山荘も入れてくれていた。

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ディープ・コリアふたたび 01 下関~関釜フェリー~釜山(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)

『深夜特急』『全東洋街道』・・それぞれの時代にそれぞれの決定的な旅の書があった。そしてバブル景気に日本中が踊ろうと腰を浮かせたときに、「踊れなかった者たち」を闇へと誘い込んだ『ディープ・コリア』の刊行から、今年は30年目にあたる。いま行くしかない、という思いに駆られ幻の名盤解放同盟の3名――根本敬・湯浅学・船橋英雄――はふたたび、海を渡り大韓民国へと向かう。これから始まる長い連載は、30年の時を経て変わった韓国と変わらぬ韓国をさまよう、海を越えてつながる時空の巻き戻しと早送りの体験になるはずだ。

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気まぐれドライブ・タイランド 1 カンチャナブリで現在進行形の地獄に墜ちる

タイのお寺の「地獄庭園」にハマったのはいまからちょうど10年ほど前だった。バンコクにアパートも借りて、東京から4x5の大判カメラとフィルムを持ち込んで、3年間ほどタイの田舎を走り回っていた。その埃っぽく楽しい旅で見つけた10数カ所の地獄庭園は、2010年に『HELL 地獄の歩き方・タイランド編』(洋泉社刊)という本にまとまって、それからもテレビ番組の取材などで幾度か「大物」地獄庭園を再訪することはあったけれど、自分のなかでは一区切りついた気分だった。このあいだのゴールデンウィークに久しぶりにタイに行くことになって、バンコクから近い田舎で何日か過ごそうと思い調べてみたら、まだ行ったことのない「珍寺」がいくつもあった。

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気まぐれドライブ・タイランド 3 ナコンパトムの酔狂博物館めぐり

先週紹介したワット・サンプランがあるナコンパトムは、バンコク市内からクルマで1時間ほど、西隣の県になる。タイの伝統文化を観賞するローズガーデンや、ゾウのショーで知られるサンプラン動物園など、団体観光系のスポットが集り、ロウ人形館『ヒューマン・イメジャリー・ミュージアム』、タイの「昭和なつかし館」的な『ハウス・オヴ・ミュージアムス』、『ナショナル・フィルム・アーカイヴ』などがある、見所多いエリアであることも書いた。今週お連れしたいのはそのナコンパトムの、クルマでないとなかなか行きにくい、観光スポットとしてもあまり知られていない、2か所の「酔狂系」(笑)個人ミュージアムであります。『ウッドランド』はその名のとおり、樹木を素材としたさまざまな工芸品を展示する施設・・・というと、よくありがちに聞こえるが、こちらはとにかくその物量とスケールが桁違い。なんでこんなところに?と首を傾げざるを得ない田舎に、ミュージアムとホテルから成る巨大なリゾート施設『ウッドランド・ムアンマイ』として2015年にオープンしたばかり。

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いちばん近くて遠い街 釜山逍遙 後編

昔懐かしいムードのジャングル風呂で、童心に帰って全裸で遊ぶもよし、水着を借りて露天風呂でくつろぐのもよろしいが、忘れてならないのが広いパークのいちばん奥にある「地獄めぐり」。なぜに温泉と地獄がいっしょになってるのか、わかるようでわからないが、とにかくここにはゆるやかな坂道に沿って、地獄のさまざまなシーンが等身大の彫刻で再現されている。

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伝説の生き河童・鯉とりまあしゃん

九州一の河川である筑後川流域の田主丸から吉井あたりは、昔から河童伝説が盛んに伝えられてきた土地。『珍日本紀行』でも田主丸の「カッパ駅」、吉井の「カッパ公園」を紹介しましたが、今回道草していただきたいのは田主丸町内、国道210号線沿いに店を構える『鯉の巣本店』だ。その名のとおり鯉料理とウナギを食べさせるこの店、なぜにわざわざ寄り道する意味があるのかと言えば・・創業者が「鯉とりまあしゃん」と呼ばれる、伝説の人物だから。

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マイ・フェバリット・オールド・バンコク 2

いよいよゴールデンウィークも間近。運良くバンコク行きのチケットを買えたひとにはとっておきの情報を、行けないひとにもせめて旅情のお裾分けを・・というわけで、先週に続いてお送りする古き良き、そしていつなくなってしまうかわからないオールド・バンコクをめぐる旅。今回はバンコクへの旅行者にとって、おそらくいちばんなじみ深いであろうサイアム周辺の超老舗スポット2軒をご紹介する。サイアムあたりはバンコク観光ガイドでも最重要エリアとして扱われているが、今回ご紹介するのは、そういうガイドにはぜったい載らないであろう、でも僕が愛してやまないレトロ・デザイン・スポット。

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街は千の目を持つ:鏡の国の路地裏紀行

江戸時代から明治・大正・昭和の建物が自然なかたちで混在する街並みは、景観保存条例などによって無菌培養のように残された街とはまたちがった、おだやかに時間が止まっている感覚がある。宮崎駿が2005年にこの街の一軒家を2ヶ月間借り切って滞在、そこで育んだ構想が『崖の上のポニョ』に結実したこともよく知られている。

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海景と死者の町

1時間かそこら走って、車窓の左側に大山の雄大な景観が見えてくるころ、JR山陰本線・赤崎駅への曲がり角がある。もともとの名前を赤崎町、2004年からは町村合併で琴浦町と呼ばれるようになった、あっというまに走りすぎてしまうような小さな漁村。どんな観光ガイドブックにも載らないこの地味な町に、これまた観光ガイドには載らない、とびきりの奇景が隠されている。ふつうの観光名所のように、道路標識はない。カーナビにも表示されない。「道の駅・ポート赤崎」を過ぎて、赤崎駅入口の交差点に差し掛かったら、その信号を海側に右折すれば、そこが赤崎の町。そしてさらに海側を走る細い道を見つけたら、それを右に折れてみよう。すると左の海側に・・すぐ見つかるはずだ、巨大な墓地が。

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札幌迷走紀行・後編 郊外聖地――サバービア・ホーリーランドをゆく

札幌市中心部から、国道453号線を一路南下すること約40分、真駒内地区にある広大な国営公園・滝野すずらん丘陵公園に隣接する、これまた広大な滝野霊園。ちくま文庫版の『珍日本紀行・東日本編』のカバーにも登場してもらったし、珍スポットファンにはもはやおなじみの道内最重要ポイントであろう。滝野霊園は総面積約1.8平方キロ。皇居の面積が約1.4平方キロだから、皇居より大きく、約0.5平方キロの東京ディズニーランドにいたっては、なんと3倍以上。むろん日本最大級の霊園だ。しかもそのうち墓所部分は約27万平米、公園緑地が110万平米ということで、霊園のうち四分の三が公園ということになる。そしてその北海道的、としか形容しようのない広大な公園に点在するのが・・・ご存じイースター島のモアイやストーンヘンジなど、あまりに意表を突く巨大石彫群だ。

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圏外の街角から:大洲

かつて松山から宇和島方面に南下するには、宇和島街道と呼ばれる国道56号線を使うのが一般的だった。松山市街を抜け、のどかな田園地帯と山並みを抜けて、伊予吉田あたりのトンネルを抜けると突然、宇和海が目の前に広がる。その景色がすごく好きだった。そして街道沿いに現れ消える内子、大洲といった古い街にクルマを停め、歩き回る時間も。高速道路の松山自動車道が宇和島まで延びてから、すべてが変わってしまった。運転時間は短縮されたけれど、宇和島まで海はひとつも見えないし、わざわざ高速を途中で降りて、街を散策しようというひとだって、ずいぶん減ったにちがいない。高速道路も新幹線も、いざ誘致してみたら街は寂れるばかり・・というのが、いま日本中で起きている「取り返しのつかない勘違い」だ。

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ROADSIDE台湾2:麻豆代天府

先週の彰化・八卦山南天宮に続いて、今週は台湾屈指とだれもが認めるキング・オブ・ビザール・テンプル、麻豆代天府にお連れしよう。台北から新幹線で南下すること1時間半あまり、台南エリアの要所、台南市からクルマで1時間足らずの麻豆(マードウ)は、文旦(ザボン)の産地として名高い、静かな町である。台湾の古寺旧跡は、台北のある北部よりも、早くから中国文明が流入した南部にずっと多く残っている。台南郊外には南鯤鯓代天府という台湾有数の大寺院があるが、麻豆代天府は南昆身に次ぐ規模を誇る、明朝末期建立の古刹だ

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常滑、時間をさかのぼる旅

海上に浮かぶセントレアはともかくとしても、現在の常滑駅から海側の競艇場や市役所があるあたりでさえ、たった数十年前までは海だったという。常滑駅前には今年で廃業という木造3階建ての重厚な「丸久旅館」があって、見せていただいた昔の写真には、部屋からすぐ先の海浜を眺めるお客さんが写っていて、びっくりした。それほど急速に開発が進んだ町でありながら、駅の南東部に広がる旧市街と呼びたくなる常滑の中心部は、小高い丘を取り巻くように、見事なまでに昔ながらのたたずまいが残っている。それも、歴史遺産として「保全」されているのではなく、地元のひとびとがふつうに働き、住み暮らす場として。

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極楽行きのディスコバス

このメルマガや、前身のブログ「ロードサイド・ダイアリーズ」読者のみなさまは、僕がどれだけタイ好きか、よくわかっていただけていると思う。なので「タイに行ったらこんなおもしろいのありました」という報告をもらっても、たいていは驚いたりしないのだが、先日イベントで出会った男性から、「タイのディスコバス、いいですよね~」と話しかけられたときには、久しぶりに驚いたし、悔しかった。(中略)音楽を満載して、とびきりのサウンドシステムと、とびきり過剰なエレクトリック・ドレスアップを施して、田舎のハイウェイに君臨する「走るディスコ」! それはつかのま乗客たちをトリップさせてくれる、極楽行きのマジック・カーペットであるにちがいない。バンコクのおしゃれキッズもまだ知らない、タイの最下層から生まれた最上級のクリエイション。初めてのタイ旅行をきっかけにハマってしまい、タイ語もできないままシーンに飛び込んでしまった渡邉さんのリポートをどうぞ!

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原色の寝室――タイの日式ラブホテルめぐり 2

タイ各地の「日式」ラブホテルをめぐる旅。先週はタイ最北部チェンライの『レッドローズ・ホテル』を紹介したが、今週はチェンマイの『アドヴェンチャー・ホテル』、バンコク郊外の『サイアムソサエティ・ホテル』の2軒にお連れしよう。まずはバンコクに次いで、旅行先としても人気の高いチェンマイ。言うまでもなく、タイ北部最大の都市である。バンコクと異なり、歩いて回れるチェンマイの旧市街はいかにもオールド・タイの風情にあふれているが、アドヴェンチャー・ホテルがあるのは旧市街から外に出た、チェンマイ空港からクルマで5分という大通りの交差点。なのでラブホテルとしてだけでなく、家族連れや団体客などの旅行客にとっても便利なロケーションにある。

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連載:スナックショット 21 京都・兵庫(平田順一)

どうも平田です。京都・大阪・神戸と大都市が近接しながら、それぞれに独自の文化を培ってきた関西地方の街並みは大好きなんですが、コテコテとかベタベタといった形容詞の関西レポートは避けるべく、今回のスナックショットは京都府の中丹地方と兵庫県の播州地方からお送りします。京都府が海に面している事は小学校の社会科で学習するものの、山に囲まれた京都の盆地からは海がイメージできません。一方で古くから海軍の拠点だった舞鶴市を歩いてみると、逆にここが京都の洛中とおなじ自治体にあるのが遠く感じられ、京都共栄銀行や京都北都信用金庫の店舗があるので、あらためてここも京都だったと認識させられます。

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スナックショット 22 岡山(平田順一)

どうも平田です。旅先で酒場の街並みを撮っていると「ちょっとあんた、何を写しているの?」と問いかけられる時があります。またこの一連の行動に対して「そこに何かあるの?」「こういうのが面白いの?」と問われる時もあり、「この雰囲気が良いんですよ」「何があって面白いかは、いろんな町に行って歩いてみないとわからないんですよ」などと答えながら、つくづく説明の下手な自分に嫌気がさすのですが、今回の岡山県は半分が倉敷市水島地区の写真になります。こういう所の写真を撮って伝えたいという気分が顕著に表れているので見てください!

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海辺の村のコンクリ絵巻

台北から新幹線で40分弱、新竹といえばまずビーフンだろう。しかし最近は「台湾のシリコンバレー」と言われるぐらいIT産業が集中していて、いまや台北をスキップして新竹に向かう出張族も多いと聞く。新竹から今度はローカル線に乗り換えて(新幹線とは駅が離れているので注意)、のんびり車窓風景を楽しむこと約30分、新埔(シンプー)という駅にたどり着く。1922(大正11)年にできたこの路線の、当時そのままをとどめているらしい木造建築。眠たげな駅員。駅から外に出ても商店どころか、民家が1軒あるだけ。そして畑の向こうに見え隠れする海(台湾海峡)・・・。「鄙びた」という以外の形容詞が思いつかない新埔駅ではあるが、ここから徒歩わずか数分の距離に、実は台湾屈指のアウトサイダー・コンクリート彫刻庭園『秋茂園』が潜んでいる。

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スナックショット 25 山口(平田順一)

どうも平田です。今回のスナックショットは本州の西の端、山口県で2006年と2007年に行って写真を撮りました。自分は行ったことのない街にどういう酒場があるのかという興味だけで動いており、数多い名所旧跡を素通りするので街の人やほかの旅行者に説明しづらいのですが、まずは現在廃止されている九州行の寝台列車に乗って、夜が明けた柳井市からスタートしました。

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新連載! 高松アンダーグラウンド 1(GABOMI)

瀬戸内芸術祭をめぐるとき、ベースとなるのは高松市だ。しかしそのベースキャンプたる高松市については、意外に情報が少ない。観光地といっても、有名なのは栗林公園や玉藻公園(高松城跡)、四国村くらい。うどん県といっても、朝昼晩3食うどんを食べたいわけじゃないし、だいいちほんとにコアなうどん屋は市内中心部ではなく、むしろ郊外にある。昼間のうちはアートを見てればいいかもしれないけれど、夜や、せっかく来たのだからアート以外のなにかを見たかったら、いったいどこに行けばいいのだろう。

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高松アンダーグラウンド 2:ホテルエンペラー(GABOMI)

連載の2回目がやってきました! 写真家GABOMIです。今回は実用的なディープ情報ですよ。この夏、瀬戸内国際芸術祭だの、うどんだの、出張だの、放浪だの、移住だの、なんだかんだで香川にお越しになるかもしれないロードサイザーズ読者の皆様に、おすすめホテルをご紹介! 先週、高松市中心部、商店街の裏をウロウロしていました。ある建築物の壁画を撮影したくてアングルを探していたのです。壁画の全貌を撮るには下からじゃ無理で、すこし離れた建物の上から撮る必要があった。振り返るとそこに「ホテルエンペラー」。

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高松アンダーグラウンド 3:オーディオいちむら(GABOMI)

どうも写真家GABOMIです。今回の原稿は苦戦です・・・3週間かけ5回取材して、膨れに膨れました。「全部書いていいです」と言ってくれたのでやたらカットもできず・・・もう正直に全部書くしかない! なので覚悟して読んで下さい。出会いは突然に! というか、高松の中心で「あち~」を叫びながら汗ダグで徘徊していた私は、新たなネタを探していた。突如、目に飛び込んできた『オーディオいちむら』と書かれたお店。

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高松アンダーグラウンド:国分寺町リポート1 盆栽(GABOMI)

高松アンダーグラウンドのGABOMIです! おひさしぶりです。9月ごろ高松市の「国分寺町」という町を彷徨い歩いていました。高松の中心部から車で30分、国道沿いの郊外、三方を山に囲まれ、池が三百個もあったりする。まずは地図を頼りに、町の境界線ギリギリを探索して取材していった。隅の隅から攻めちゃおうというわけである。ここでそもそもの話をすると、その翌月の10月19日に都築さんとGABOMIのローカル対談がこの国分寺町で予定されていて、そのためのネタ探しなのであった。とはいえ今までの高松アングラの記事だけでも十分すぎるほど話すネタはあり、わざわざ新たに探す必要は無いといえば無かったけれど、開催場所が国分寺町にある国分寺ホールだし! というそれだけの理由で、国分寺町も取材することにした。

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高松アンダーグラウンド:国分寺町リポート2 山下さん(GABOMI)

どうもGABOMIです(珍しく連投です)。都築さんの国分寺町対談のネタのために、イロイロと町を調べてウロウロしていたころのお話のつづき。「国分寺町はカラオケ天国ですよ!」と、ある町民からの情報を入手した私は、カラオケ文化について取材を開始。カラオケ喫茶、カラオケ教室、カラオケ大会、カラオケ地蔵…などなどを経て、ついに、国分寺町カラオケ文化のルーツを突き止める!それは町外れの山の下にある「山下自動車」の整備工場であった! まさかの工場!

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案山子X 3:堀之内かかし芙蓉まつり(長野)/稲倉棚田かかしまつりコンテスト(長野)(ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。 今回は長野県の「堀之内かかし芙蓉まつり」と「稲倉棚田かかしまつりコンテスト」を紹介します。まずは長野県北安曇郡池田町堀之内地区の「堀之内かかし芙蓉まつり」を紹介します。今年で4回目を迎える「堀之内かかし芙蓉まつり」は、人間そっくりなリアル案山子で「かかし村」を作っている、とてもユニークなお祭りです。

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案山子X 05 コスモス・案山子祭り(岡山)/大草野案山子祭り(佐賀)(ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。は岡山県の「コスモス・案山子祭り」と佐賀県の「大草野案山子祭り」を紹介します。最初に岡山県赤磐市周匝(すさい)の「コスモス・案山子祭り」を紹介します。岡山県赤磐市周匝には、吉井川の堤防沿い2キロ以上に渡って約200万本のコスモスが咲き乱れる「コスモス街道」があります。周匝橋ができた事をきっかけに、地元の方がコスモスを大事に育て続けているのだそうです。毎年コスモスの花が満開になる10月上旬に案山子祭りが開催され、コスモス街道に案山子が立ち並びます。2013年には約40体の案山子が立ち並びました。

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フィールドノオト08 福島県(畠中勝)

大津波、原発事故、放射能問題、またそれらによって引き起こされた新たな災害によって、いまだ被災地の復興は未終息だ。訪れた相馬市で、特に心が苦しくなった光景がいくつかある。ひとつは山積みになった汚染土の袋に囲まれた民家。傍らには一家の洗濯物が干してある。向かいの畑では、家族が食すであろう野菜を大事そうに収穫していくお婆さんの姿があった。津波の被害があった南相馬市では、廃屋に囲まれた馬小屋で、馬の世話をしている男性を発見した。その小屋から数キロ先は海なのだが、海からその小屋まで、見渡す限り、何も残ってはいなかった。あるのは裏返ったままの車や流されてきた漁船、そして家屋の残骸。だが、今は、そこに確かに人がいる。何もかもをなくなってしまった荒野だが、人が、馬が、そこで生きている。そんな彼らの息遣いをフィールド録音として未来に残したいと思った。

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シャンパンコールで夜は更けて

ホストたちの晴れ姿をたっぷり見ていただいたところで、ほんとに偶然だけど、最高のタイミングでTBSラジオにて歌舞伎町ホストの至芸「シャンパンコール」実況録音放送をお知らせ! 来る2月15日(土)夜7~8時、『7 ears in Tokyo』という特別番組が放送されます。どんな番組かといいうと――

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さよなら嬉野観光秘宝館

2014年3月31日、世の中的には『笑っていいとも!』が終わった日だったが、その同じ日に佐賀県の片隅でもうひとつ、ひっそり幕を閉じたものがあった。嬉野観光秘宝館である。『笑っていいとも!』は1982(昭和57)年に開始されたそうだが、嬉野に秘宝館が開館したのは1983(昭和58)年。ほぼ同い年で、あちらは日本最大級の長寿番組だったが、こちらは日本最大級の秘宝館だった。いまから5年前の2009年春、『秘宝館』という写真集を出したとき、あとがきをこんなふうに書いた――

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案山子X 8:菜の花とかかし祭り(兵庫)(ai7n)

今回は兵庫県淡路市久野々の「菜の花とかかし祭り」を紹介します。「菜の花とかかし祭り」が開催される淡路市久野々(くのの)は淡路島の北側に位置し、常隆寺山の高台にある人口60名程の集落です。(中略)「菜の花とかかし祭り」は毎年菜の花の咲く4月上旬に開催され、1000人以上のお客さんが訪れる大きなお祭りです。久野々の人々(実行委員会)が中心となり地域おこしの為に始めたお祭りで、2014年に7回目の開催となりました。4月の第一日曜をはさんだ1週間、地元の方・学校・企業や老人ホーム等の人々が制作した450体程のかかしが菜の花畑の中に展示されました。

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場末の楼閣  ――ソウル風物市場に遊ぶ

先週は三陟(サムチョク)の男根彫刻公園を紹介したが、今週はその帰りに一日遊んだソウルでのお話を。ソウルとはもともと8つの門を持つ城郭都市だったそうだが、そのうち南大門と東大門は観光客にもよく知られた存在だろう。東大門には2007年まで東大門運動場という古びたスタジアムがあって、周囲を屋台がごちゃごちゃと囲んでいた。そのうらぶれた雰囲気が好きで歩き回った日々が懐かしいが、取り壊された東大門運動場の跡地は見るからにクリーンな「東大門歴史文化公園」に生まれ変わり、中心にそびえる未来的な建築「東大門デザインプラザ(DDP)」を設計したのが、いま国立競技場問題で話題のザハ・ハディドだ。東大門運動場にはサッカー場と野球場があったが、取り壊しまでの数年間、駐車場になっていたサッカー場では「風物蚤の市」なる、巨大なフリーマーケットが店開きしていた。

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ツチノコも口裂け女も、みんな岐阜から生まれた!――『奇なるものへの挑戦』@岐阜県博物館

名古屋と郡上八幡のちょうど中間あたりにあるのが関市。「関の孫六」の名を知るひとも多かろう、鎌倉時代に遡る700余年の歴史を持つ、日本どころか世界有数の刃物生産地である。が、しかし! 郡上よりもずっと名古屋に近いにもかかわらず、自動車以外ではかなり不便なアクセス。その不便な関市のさらに町はずれの広大な岐阜百年公園内という、おそらく全国有数のアクセス難易度を誇る県立博物館、それが岐阜県博物館である。ちなみに公共交通機関を使って名古屋から行こうとすると、名古屋駅からJR岐阜駅まで約20分、そこから岐阜バスで小屋名まで38分。さらに徒歩15分で百年公園北口に到着、さらに徒歩7分でようやく博物館に辿り着く。

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案山子X 13:山田かかし祭り(千葉)(写真・文 ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は千葉県いすみ市山田「山田かかし祭り」を紹介します。「山田かかし祭り」は千葉県いすみ市山田地区のお祭りで、今年で7回目の開催となりました。山に囲まれた自然豊かな農村である山田地区ではお米を主に生産しており、鳥よけに使用していたかかしをお祭りのシンボルとしています。いすみ市交流事業の一環として農村部を明るくしようとお祭りを始めたそうで、地域の方に向けて開催されているお祭りです。

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だれもいないミュージアム

現代美術業界で最大の商談会であるアート・バーゼルに呼ばれることは一生ないだろうけど、「CULTURE SCAPES」という毎年ひとつの国をテーマにして展覧会やイベントをしているプロジェクトがバーゼルでは開催されていて、今年は「TOKIO」。文楽あり、和太鼓あり、茶の湯・生花あり、チェルフィッチュや池田亮司という、むしろ海外で活躍が目立つ日本人アーティストあり。そういうなかで、なぜか声がかかって写真展を開くことになった。ウクライナ人のキュレイターが選んだのは、ラブホテルにホストクラブ、着倒れ方丈記、インディーズ演歌歌手・・・と、かなりスイスっぽくない(笑)イメージ。100年前に建てられた銀行を改造し、カフェやシェアオフィス、スタジオとして機能する「mitte」という場所の、広々としたカフェ空間の天井から20枚以上の大きなプリントが、ものすごい違和感とともにぶら下がることになった。

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湯けむり秘宝と西部劇——追想の鬼怒川秘宝殿とウェスタン村

失われた場所といえば、昨年末に閉館となった鬼怒川秘宝殿も、マスコミでやけに大きく取り上げられてびっくりさせられた。それまで秘宝館なんて、見向きもしなかったくせに。ご承知のように、日本に秘宝館が誕生したのは1972年、三重県伊勢市の元祖国際秘宝館だった。いきなり大成功を収めた元祖国際秘宝館に続けと、それから各地に秘宝館が生まれていくのだが、鬼怒川秘宝殿がオープンしたのは1981年のこと。80〜81年は北海道秘宝館、熱海秘宝館、鳥羽SF未来館、元祖国際秘宝館石和館と次々にオープンした、秘宝館ラッシュの時期だった。

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ホノルル旅日記3:ハワイ古寺巡礼

オアフ島ホノルルの東側、ウィンドウォード(風上)と呼ばれるカイルア地区は、ハワイ屈指の美しいビーチやウィンドサーフィンのメッカとしてよく知られている。ホノルルからカイルアに向かってパリ・ハイウェイに乗ると間もなく、車窓左側に立派な三重塔が見えてきて、びっくりするひとも多いはず。ホノルル・メモリアル・パークと呼ばれる霊園に建つ、奈良・南法華寺を模した三重塔だ。ずいぶん前に村上春樹、吉本由美さんと3人で「東京するめクラブ」というユニットを結成し、ちょっと変わった旅行記事をつくっていたことがある。そこで訪れたハワイで、この三重塔を含むホノルルと周辺の寺社仏閣巡りをしたことがあった。あれは2002年だったから、もう13年前! いまもあいかわらず不思議な存在感を漂わせる三重塔を見て、もういちどホノルル古寺巡礼をしてみたくなった。

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圏外の街角から:宮城県白石市

仙台には年に数回は行っているが、東北新幹線でひとつ手前の駅、白石蔵王駅にはいちども降りたことがなかった。東京駅からちょうど2時間。あと15分で仙台に着いてしまう。白石(しろいし)市は宮城蔵王のふもとに広がる、福島県に隣接した宮城県最南端の市。蔵王エリアへの観光拠点であり、いくつか温泉もあるが・・・現在の白石市の人口は約3万5000人。新幹線の白石蔵王駅の利用者は一日数百人という寂しさ。しかも町なかにある東北本線・白石駅までは1時間に1本ほどしかないバスを利用するか、徒歩20分という微妙な距離。温泉場に旅館はいろいろあるけれど、白石の市内には駅前ビジネスホテルがひとつだけ。そしてここでも見事なまでのシャッター商店街が、しなびた血管のように街をくるんでいた。

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ジワジワ来る関西奇行 02  強敵「堺市」にうかつに触れてみる(写真・文 吉村智樹)

「堺市」は大阪府内で人口・面積ともに第2の都市。が、単に2位というだけではなく、1位の大阪市とは趣がまるで異なる独特な文化・産業が存分にあるライバル。いわば「反大阪市都市」。堺市は、一般に「仁徳天皇陵」と呼ばれる大仙陵古墳をはじめ40基にも及ぶ古墳群がひしめく太古の歴史が横たわる街であり、茶の湯の流行の発端の地、キリスト教と南蛮文化が上陸し、南国の樹々がおいしげるエキゾチックタウン、鉄砲の製造を機会として刃物や自転車が作られるようになったという手工業の一大拠点、そして4つもの漁協を持つ漁師町だ。これほどまで際立った特徴があるアイテムを多数抱える市は、大阪の中ではほかにない。有事の際には自治も独立も、さらには敵対することも可能なほどのポテンシャルを秘める。大阪市・大阪府の維新軍がコントロールできない厄介な鬼っ子で、時に大阪市長と堺市長が舌戦を繰り広げることもある。そういう点で堺市は、実に痛快な存在なのだ。

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フィールドノオト36 養蜂箱(録音、写真、文:畠中勝)

まず今回の録音のメインとなった養蜂箱は、取材に協力してくれた植平工業の敷地内にある。鋼の工業製品を製造する会社で、作品の背景にも聴こえるメタルパーカッションのような金属の響きは、その製造過程の音だ。雨を嫌うミツバチは、当然ながら、巣箱の中からは、あまりでてこない。代わりに屋根として設えられたトタンをリズミカルに雨が打つ。雨のリズムとメタルパーカッション。しかし、これだけでは、何を録音するためにここへやってきたのかわからない。祈りつつ、箱の本体へとマイクロフォンを近づけていく。

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バーレスクの歴史遺産を訪ねて

エロチカ・バンブーの記事で触れたように、バーレスクの発祥地であるアメリカには、その歴史を紐解く上でいくつか重要な場所がある。そのうち2ヶ所を『ROADSIDE USA』で訪ねているので、ここに再録しておく。いずれも写真集に収録済みだが、画像など大幅に増やしているので、本をお持ちの方もよかったらご覧いただきたい。ただし、最初に紹介する『エキゾチック・ワールド』は2007年からラスヴェガスにに移転、現在は『バーレスク・ホール・オヴ・フェイム』と名を変えて継続している。バンブーさんが話していたディクシー・エヴァンスは2013年に死去。かつてのヘレンデールの建物は、すでに廃墟になっているという。

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するめクラブ熊本編・写真日記

すでに告知したように、いま発売中の『CREA』誌(文藝春秋刊)の巻頭特集『本とおでかけ』に、『村上春樹 熊本旅行記』が掲載されている。24ページの特別寄稿、すでにお読みいただけたろうか。9月7日には次の号が出てしまうので、古書店で探す羽目にならないよう、ご注意されたし!今回の企画は2004年に単行本が出た『東京するめクラブ』の、11年目の特別リユニオン編として実現したもの。当時は村上さん、吉本由美さん、僕の3人で世界と日本の辺境、ではなくツウがばかにする場所をさまよい、3人で分担して原稿を書いたけれど、今度のリユニオンは村上さんがすべての原稿を執筆、僕が写真、地元在住の吉本さんが案内人、という役割で、のんびり熊本エリアを旅してきたのは、先週の告知でお伝えしたとおり。今回はCREA本誌でお見せできなかった膨大な写真を再構成した、「するめクラブ熊本編・写真日記」をお届けする。

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案山子X 25:気仙沼はるき(長野・大阪)(写真・文 ai7n)

長年住んだ広島を離れ大阪に引越して来て2年が経った。大阪に引越して少し立った頃、『隙ある風景』でおなじみのケイタタさんと知り合い、自分達のアジトだというお店に連れて行ってくれた。それが通天閣すぐ側の新世界市場内にある「イマジネーション ピカスペース」というお店だった。2013年8月にオープンしたこの飲み屋兼遊び場は、池田社長と気仙沼はるきの2人の店主によって切り盛りされている。

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バリ島の音(写真・録音・文:若井響子)

いまからちょうど1年前の2015年1月に、「一人芝居パフォーマー」である若井響子さんによる『アートじゃない生き物vol.1~3』を掲載した。それは東京の日常からひととき飛び出したくて、2014年の6月から9月まで、95日間にわたってイタリアとフランスを旅した彼女の「ポスター壁画ハンティング・トリップ」だった。その若井さんが昨秋こんどはバリ島に滞在して、ポスター壁画ハンティングならぬ、市場から村々を歩きまわってフィールドレコーディングをしてきたという。世界有数の磁場を持つこの島で、魔術的な色彩を帯びる音と、爆発的な西欧文明の侵入によるポップな音がからみあうさまを、眼と耳で同時に味わっていただきたい。

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ホワイトライト・ホワイトヒート ロシア冬紀行4 コイン式タイムマシン

ロシアの冬を駆け足で巡る最終回はロシア版・懐かしゲームセンターにお連れする。パソコンや携帯ゲームには、これまでほとんど興味を持てないままできた。ギャンブルにもハマらなかった(この仕事がすでにギャンブルだし)。でも、往年のアーケードゲーム(家庭用ではなくてゲームセンターの機械)は、その特異な造形美がすごく気になって、「ストリート・デザイン・ファイル」の一冊として『Techno Sculpture ゲームセンター美術館』という本を2001年につくったことがある(もう15年前!)。

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旅する少女歌劇団(文:鵜飼正樹)

鵜飼正樹さんは京都文教大学で教鞭をとりつつ、見世物小屋や大衆演劇の研究を続けている研究者。僕にとっては近代日本大衆文化の師匠であり、本メルマガでも過去に「人間ポンプ」安田里美さんのことを書いてもらったりもした。その広範な研究領域のうちでも、このところ力を注いでいるのが「少女歌劇」。宝塚の成功に刺激されて日本各地に乱立、いつしか忘れ去られてしまった、儚くもユニークな大衆演劇の徒花である。今月28日から奈良の大和郡山で開かれる小さな資料にあわせ、今週は鵜飼さんによる少女歌劇オリエンテーションと、その奥に眠る闇と謎について書いていただいた。

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新連載! さいはて日記帳 vol.01 宗教のさいはて(写真・文:金原みわ)

金原みわは関西の珍スポットマニアのあいだでは知らぬ者のない、有名ハンターである。僕もずいぶん前からファンで、このあいだは大阪ロフトプラスワンで開いたトークイベントにも出演いただいた。みわさんの2つある公式ブログのひとつ「TIN.」には、タイトル脇に「珍スポット/B級スポット/秘宝館/ストリップ/ジャンクション/工場/珍建築/電波住宅/珍寺/珍仏/巨大仏/新興宗教/奇祭/純喫茶/遊郭跡のある方へ」と書かれている。本メルマガ読者で、このどれにも興味がない、という方がいるだろうか!メルマガ連載陣の「案山子家」ai7nさん、「ジワジワくる関西奇行」の吉村智樹さんら関西珍スポ界の重鎮と共に、みわさんにも以前から本メルマガへの寄稿をお願いしていたが、ようやく実現できることになった。不定期ではあるが、これから「さいはて日記帳」の名にふさわしい、身近なさいはてを案内していただく。で、今回はどんなさいはてに!?

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さいはて日記帳 vol.03 夢のさいはて(写真・文:金原みわ)

はじめに断りを入れておこうと思う。わたしは何か書きものをする最初に「良い感じの落とし所」を考える。「良い感じ」というのが自分でもズルいと思うのだが、その方が書いてても読んでても圧倒的に後味が良いと思うからだ。でも残念なことに、どうやっても落とし所が分からない出来事に遭遇することもある。世の中、そんなに後味が良いものばかりではないのだ。ここは静岡県、全国有数の温泉地である熱海だ。ここを訪れている目的は他でもない。ストリップ劇場「熱海銀座劇場」が営業をしているという話を知ったからである。

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昼下がりのインディアン・コーヒーハウス

インドを旅するひとの多くが抱く不安、それが「腹具合」であることは、インド通にも異論がないだろう。体温以上の気温のなか、ふだん食べ慣れないスパイシーなインド料理を毎日食べていれば、どんなに丈夫な胃腸でも疲れが溜まるはず。ディスカバリーチャンネルで世界中の庶民の料理を食べ歩く人気番組『アンソニー世界を喰らう』を、もう10年以上も続けているシェフ兼作家のアンソニー・ボーデインによれば、「スタッフのなかでいちばん食あたりになりやすいのは、屋台料理や地元料理におじけづくタイプ、そういうやつに限ってホテルの朝食バイキングで腹を壊す」らしい。ま、そうは言っても、ベテラン旅人ですら「下痢の洗礼」をいちども受けずに長期間、インドを旅することは難しいはず。数日間のパック旅行ならともかく、ある程度の期間インドを旅する場合、否応なくヘビーローテーションすることになる店がある。それが「インディアン・コーヒーハウス」だ。

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[新連載]Back in the ROADSIDE USA 01 Mütter Museum / Insectarium, Philadelphia

世界がいま壊れはじめてる、と思わない(思えない)ひとはどれくらいいるのだろうか。ひとを救うはずの宗教が殺し合うことを教え、日々の暮らしを豊かにするはずの原子力が何万人もを故郷から追い出し、世界の80人の大富豪が、残りの地球の全人口の半分にあたる35億人と等しい冨を所有するほどに貧富の差は拡大し、僕らは「飢饉できょうも子供が死んでいきます」というメッセージをテレビで見ながら、食べ過ぎのゲップを吐いている。そうやって世界のあちこちがほころびかけているなかで、とりわけアメリカ合衆国の壊れかたにはこころが痛むし、恐ろしくもある。ご承知のかたもいらっしゃるだろうが、2010年に『ROADSIDE USA』という本を出した。25センチ角の大判で528ページ、厚さにして4センチ! 値段も1万2000円(税別)という・・売れるはずもない巨大写真集だった。

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ジワジワ来る関西奇行 09 高砂市の「ロリータ包丁」と「ゴスロリ包丁」(写真・文 吉村智樹)

Twitterを始めて、およそ6年になる。6年もやっていると、ときどき「バズ」る。「バズ」は怖い。自分でも手に負えないほど、ひとつのツイートが広く拡散し、ネット上にノーコントロールな絨毯爆撃をおっぱじめるのだ。Twitterには「炎上」と「バズ」がある。視覚的には似ているが、このふたつの現象は非なるものだ。「炎上」は怒りやからかいの矢がどんどんこちらへ向かってくる状態。対して「バズ」は、自分のツイートが壊れた散弾銃となって連射がやまず、無数の弾が広く広く、遠く遠くへ撃たれ続ける感覚におちいる。これまで何度かバズったが、今年3月にツイートしたこれは拡散の勢いもすさまじく、とりわけ忘れられないものとなった。それが「ロリータ包丁」と「ゴスロリ包丁」。

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案山子X 33:平野がんばる祭(高知)(写真・文 ai7n)

今回は高知県高岡郡佐川町の平野がんばる祭を紹介します。高知県の中西部に位置する高岡郡佐川町。米どころである佐川町の平野地区は昔から水害が多い地域なのですが、みんなで元気を出して共に頑張ろう、地域を盛り上げようという気持を込めて、毎年10月に「平野がんばる祭」が開催されています。2015年に9回目を迎えたこのお祭りですが、祭のシンボルである巨大かかしと等身大のかかし、過去に制作したかかしの写真も展示されており、かかしの数は少ないながらもとても見応えがありました。

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『中国遊園地大図鑑』発刊を祝して!

元旦に送らせていただいた購読者限定プレゼント『DOMMUNE スナック芸術丸・ゆきゆきてユーロビート』、ご覧いただけたろうか。12月19日の21時から24時過ぎまで生配信した番組の直前、19時から2時間にわたって配信されたのが『中国遊園地大図鑑』。ユーロビート特集と一緒に再配信されたので、こちらも見た、というひとが少なからずいらっしゃるのでは。本来、こっちのほうが「スナック芸術丸」向きだったかもですが・・・。『中国遊園地大図鑑』は日本各地と中国の珍スポット・ハンターである関上武司(せきがみ・たけし)さんによる新刊。

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Back in the ROADSIDE USA 27 Elvis Is Alive Museum, Wright City, MO

地図を見ると、アメリカ合衆国の真ん中近くに位置しているミズーリ州。別名「ハートランド」と呼ばれる所以だ。ちなみにアメリカの人口の約半分が、ミズーリ州を中心とした半径800km内に住んでいるという。ミズーリ州は東と西の端に、セントルイスとカンザスシティという2大都市を擁し、そのあいだは広大な自然というか、非常にスカスカな大空間が横たわっている。つまりミズーリを旅しようというものはたいがい、セントルイスとカンザスシティを真横に結ぶインターステート70号線を軸に、ときたま脇にそれたりしながらドライブするということになる。スカスカなようでいて、しかしあふれんばかりのロードサイド・アトラクションが隠れるミズーリは、珍スポット・ハンターにとっては外せない重要ステートでもある。

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Back in the ROADSIDE USA 27 Laclede's Landing Wax Museum, St. Louis, MO

「セントルイスロウ人形館」とも呼ばれるラクリーズ・ランディングのロウ人形館、建物自体は1885年の歴史的建造物と由緒正しいが、内部はかなりなB級感覚満載。人形はロンドンで作られ、髪の毛はイタリア、ガラスの義眼はドイツからとうたっているが、とにかくあまりにもチープな出来で、かえって懐かしい場末感を醸し出している。ひとりひとりが似てないのはもちろん、たとえばサルバドール・ダリとハワード・ヒューズとか、人形同士の組み合わせもすごい。キリストの最後の晩餐は、メキシコの風景だし、月に降り立ったアームストロング船長は、なんと宇宙服の頭部がなく、しかも靴はスキーブーツ、手袋もスキー用というファンキーなスタイリング。汚れたガラスと安っぽい壁紙で仕切られた部屋に立つ人形たちは、もの悲しさを通り越したシュールな表情が感じられる。

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圏外の街角から:キャバレーと路地裏迷宮の若松

先週末から福岡ギャラリー・ルーモで開催中の『キャバレー・ベラミの記憶展』にもなんとか間に合い、会場でUSB版を販売中だ。昨秋、福岡アルティアムで『僕的九州遺産』展を開き、関連イベントとして企画されたバスツアーで僕はかつてのベラミ従業員寮=「ベラミ山荘」を訪れ、そこで電子書籍に収録した写真コレクションに出会ったのだったが、会場に遊びに来てくれたのが木村勝見さん。もともと日劇ダンシングチームのメンバーで、九州に移住してからは奥様の樽見タツ子さんと共に「ザ・インパルス」というユニットを結成。日本全国のキャバレーやホテル、クラブのステージに立ち、ベラミでもよく踊っていたのだという。

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ディープ・コリアふたたび 03 木浦(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)

大韓の鉄道には改札がない。改札的な入口はあるが切符をチェックする駅員はほとんどいない。切符の自動販売機はない(地下鉄はある)。切符は窓口と対面して買う。座席はコンピュータで管理されている。希望の列車を告げて、空きがあればそこに座る。それだけのこと。希望列車の座席が埋っていると窓口の切符売が相談に乗ってくれる。ただそれだけのことで、日本でも長距離はそうやって買うことが多いわけだが、しかし改札チェックは必ずある。そのため切符が発行される。しかし大韓鉄道には切符がない。そのかわりにあるのは、レシートである。コンピュータ管理だから入口チェックなんていらない。だから切符も改札機もいらない。嘘乗車するようなやつはすぐわかるのだコンピュータで。そもそもそういう輩は列車に乗ろうと考えないものだ。鉄道乗車性善説もそこには投影されている。

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ディープ・コリアふたたび 04 木浦~大田(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)

カセットテープは、もちろんメインの売りだなにはもうない。木浦の商店街ではなく市場のはずれの電気製品とその他を商う小さな店のその中のすみっこに売れ残りとして数本があった。そこではいわゆるポンチャック・ディスコやメドレー歌謡(トロット)のたぐいはCD(ほとんどが2枚組)とDVDで売られていた。どこの街でも全般的にCD屋(旧レコード屋)がそもそもほとんど見当たらない。かつて買っていた店のあたりを探しても消えていた。釜山では、洋楽も扱っている比較的大きめの一軒に行き当たったのみで、あとはポンチャックの屋台が一つ、チャガルチ市場近くにでてたくらい。地方商店街には一軒や二軒あったものだがそれもない。光州には新しい大型書店の一隅にCD売り場があったのみ。木浦も駅近くにあった店など跡かたもなく、その市場の店しか見なかった。CDは売れない、というけれど、たしかにそうだし、日本だって、チェーン店以外で新譜を商う独立したCDレコード屋は数えるほどしかない。

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気まぐれドライブ・タイランド 2 ナコンパトムの龍城地獄

バンコク市内からクルマで1時間ほどの郊外ナコンパトムは、タイの伝統文化を観賞するローズガーデンや、ゾウのショーで知られるサンプラン動物園など、団体観光系のスポットが集まるエリアだ。バンコクからほぼ真西の隣県であり、インドシナ半島のうちで、インドからの僧によって最初に仏教がもたらされた伝来の地であるそうで、市内中心部には全高120.45メートルという世界一高い仏塔プラ・パトム・チェディがあったり、それほど知られていないが珍スポット系では重要なロウ人形館『ヒューマン・イメジャリー・ミュージアム』、タイの「昭和なつかし館」的な『ハウス・オヴ・ミュージアムス』、それに国立のフィルムセンターである『ナショナル・フィルム・アーカイヴ』などは本メルマガでも2012年3月28日号でまとめて紹介した。先週紹介したワット・スラ・ロン・ウアがあるカンチャナブリとバンコクのあいだに挟まれたナコンパトムには、珍寺ファンに広く知られた『ワット・サンプラン(Wat Samphran)』がある。多くのブログや佐藤健寿さんの『奇界遺産』でも取り上げているので、すでに訪れたかたもいらっしゃるのではないか。

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ディープ・コリアふたたび 05 大田~博多(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)

老人ディスコは大韓全土にあり、雑居ビルやバス・ターミナル周辺などで、地域老人壮年男女の憩いや発展の場となっている。しかしそこに身を置き続けるには、老人たちと同様の、負の同調性というようなものを身につけていなければならない。それを道々痛感しながら我々はかつての大田万博会場へと向かった。そこは現在巨大な公園になっている。モニュメントである宇宙的な尖塔はそのまま立っている。人が大量に行きかっていた塔周辺の地には、ただ風が吹いているだけだった。そして誰もいなくなった。万国博覧会の、そこはただひたすらその跡地でしかなかった。広く誰もいない公園には、いくつかの建物が遺されていた。コンベンション・センターのようなもの、国際交流で国が得た品々を展示している(宝物殿というか見本市というか)建物、体育館のような建物その他が大きな駐車場とともにあった。

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新連載! フランスわき道より道 見聞録 01 パリでバードウォッチング(写真・文:中山亜弓)

「ZINE」なんて言葉ができるずっと前から、日本のアンダーグラウンド/自費出版を支えてきた中野ブロードウェイのタコシェ。その創設者のひとりであり、現在も店長をつとめる中山亜弓さんは、実は大のフランス通。それも母国ですらあまり知られていない若手作家や、パリ以外の地方で活動するアーティストたちを発掘し、同時に日本の若手作家をフランスでデビューさせるお手伝いをしたりと、フランスと日本の「アングラ架け橋」として長く活躍してきた。その中山さんが、連続テロに襲われて不幸な状況にあるフランスを「いまこそ行かないと!」と応援する不定期新連載。これからいろんな場所と、いろんな人間を僕らに教えてくれます。で、その第1回は、なんとパリの街なかで楽しむバードウォッチング!

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フランスわき道より道 見聞録 02 アトリエ訪問(写真・文:中山亜弓)

今回のフランス行きの目的は、アーティスト石川次郎さんのパリでの展覧会の設営やオープニングに立ち会うことで、展示に合わせてなんと漫画短編集『C'est comme ça』も現地で発行されました。発行元のEditions Matièreは、横山裕一や、トイポップパンクバンドDragibusでシンセサイザーを担当していたこともあるLéo Quievreuxなど、グラフィックとコミックの間にまたがる作品を一貫して出版しています。そもそも編集者のロラン・ブリュエルが、INALCO(国立東洋言語文化研究所)で日本語を専攻したパートナー、セリーヌの日本留学中、自身も映像関係の仕事に就いて日本に滞在し、横山裕一と出会ったことが、出版をはじめるきっかけになったといいます。

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ディープ・コリアふたたび 06 成田~釜山(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)

黒の中に群青が混在している空の下の先に光の列がいく筋もある。だんだんその光が大きくなってきて、船の明りであることがわかる。光の渦はない。バラバラにともっている街頭は暗い。オレンジ色の光は以前よりも減っている。きっとあちらこちらがLEDに変えられているのだろう。さぞかしLEDを手にしたときは誇らしい気分で胸を張って電球を手にしたのにちがいない。確かに20年前でさえ、今よりずっと暗かった。イメージは暗い空だった。今はグレーや青みもある。街灯の数だって増えている。頑張ってそのひとつひとつが光っている。きっと日本にはない、世界のどこのものよりもよく光る電球が活躍しているにちがいない。

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ディープ・コリアふたたび 07 釜山~全州(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)

暑かった。6月中旬だが、真夏のような陽射しだった。しかし大韓民国は湿度が低いので暑さが体にまとわりつかない。少し助かる。古くて小さくて傾いているモーテルや旅館、その近くにはナイトクラブなども多数ある。何をするでもなく、酒飲んで歌ってうまくいけば店の女の子を連れ出してまぐわったり、出前してもらったりする一帯が駅から2分のところにかたまってある。その背後には20階建ての高級マンションがニョキニョキと伸びている。駅には隣接していない。それはどこの町でも同様だ。

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ディープ・コリアふたたび 08 全州~南原(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)

鮮やかな朝とは? 美しい朝やけとかさわやかな風とか美しい妻の作ってくれた朝食とか朝露が光っているくさはらとか、雲がゆるやかに動く山々とか、そのようなものが身近な朝ということなのか。想像しては見る。鮮やかとはスカっと晴れ渡った朝のたとえば10月や5月の空というものかもしれない。ベイビー・ワシントンの69年の作品に「ブレックファースト・イン・ベッド」があるが、考えようによってはこれも情交の果ての朝食だったらきっと鮮やかかもしれない。キャット・スティーヴンスの「モーニング・ハズ・ブロークン」は確かに爽やかで、鮮やかといえないこともないメロディとサウンドであるしソフトな歌い口も大韓民国人には良好だろう。しかしそれらがはたして朝の鮮やかな半島でいかように感じられているのか。何度も何百時間もその土地に足を踏み入れ立ってみてもイメージはぼやけている。鮮やか、という言葉に思い至るものといえば、不備やピンぼけや歪美がまっさきに浮かぶ。それらの鮮烈さは天下一品だ。有無をいわせない反論の余地などない揺るぎない堂々としている。人類はここに学ばねばならない。アイロニーや比喩ではない。心底そう思っている。

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牧瀬茜ストリップ巡業追っかけ旅日記(写真:多田裕美子 文:多田裕美子、牧瀬茜)

メルマガではもうおなじみ浅草・山谷のオフィシャル・フォトグラファー、多田裕美子さん。最近はストリップにハマってて、こちらも以前メルマガで連載してもらった牧瀬茜さんのおっかけをしているという。こないだは松山の道後温泉までついてっちゃったというので、「追っかけ旅日記」を書いてくれるようお願いした。女が女を追いかける、情熱のトラベローグ。写真と文に、牧瀬さん自身による文章も加えてお届けする。

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石川次郎のフランス侵略日記 02(画・文:石川次郎 構成:中山亜弓)

フランス移住も視野に入れ、巡回展FRANCE INVASIONのために、アラフィフではじめての1人海外旅行でフランス再上陸を果たした石川次郎。展示のコーディネイトに奔走したモンペリエのルノ(Reno)のアパルトマンに居候しながら、ギャラリーLa Jetée(ラ・ジュテ)での展示開催に漕ぎ着けたのが前回までのお話。今回は、翌月にパリでの展示を控え、制作を続けながら、ルノの友人や地元のアーティストたちと交流する一方で、恋や婚活に邁進。が、一段落して1人になったとき、ふと、肌で感じる日仏文化の違いや、孤独について日記に綴るようにーー。なぜか蛭子さん風になってしまった登場人物(フランス人)たちの似顔絵とともにお送りします!!!!!

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案山子X 41:かかしの里(愛媛)(写真・文 ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は愛媛県大洲市蔵川のかかしの里を紹介します。大洲市は愛媛県の南部に位置する街で、大洲城を中心に城下町として発展しました。今でも武家屋敷やなまこ壁の土蔵など、江戸~明治時代の面影を残す町並みが残っており「伊予の小京都」と呼ばれています。大洲城の最寄駅であるJR伊予大洲駅から15キロほどの山間に、「かかしの里」として有名な蔵川地区があります。

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石川次郎のフランス侵略日記 06(最終回)Back to Japan編(画・文:石川次郎 構成:中山亜弓)

次郎の寄書い日記もいよいよ最終回! フランス4都市巡回展を終えて日本に帰ってきたものの、8時間の時差のせいで眠れぬ夜に、寂しさをおぼえてウィスキーを飲んでは吼え、マドンナたちを思い出しては「もしも」を夢想する日々…。前回、触れずにいた空白の2日間に展開した渾身のジュテーム作戦に続いて、ラストを飾る衝撃の?告白をお送りします。

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鬼と田我流――ヒップホップの最注目新譜2枚登場!

いままでに『夜露死苦現代詩2.0』に登場してくれた、ふたりの素晴らしいラッパーの新譜が、立て続けに発売されます。ひとりめは田我流。山梨県一宮をベースに地道な活動を続けてきましたが、昨年になって映画『サウダーヂ』の主役をつとめ、一気にその名(と読み方)を全国に知らしめました。 そしてもうひとりが「鬼」。そう、あの名曲『小名浜』で全国のワルたちをむせび泣かせた、福島県小名浜出身のラッパー。無頼と抒情が交錯するその世界観は、なんだか立原あゆみの『本気!』や『仁義』の世界に通じるものがあります。

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海と魚とゴミの天国・走島

諸般の事情から展覧会では作品タイトルが『ゴミ福山産』とされたが、淀テクのおふたりによれば、走島は「ものすごくきれいな海と浜とゴミがあって、ナンバープレートのない原チャリや軽トラが爆走する島です!」という、たいへんにおもしろそうな島だったので、翌朝鞆の浦港からフェリーに乗って、半日観光を楽しんできた。今回はその「離島ちい散歩」をお送りする。

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連載:スナックショット 02 北海道 前編(平田順一)

どうも前回都築編集長からご紹介賜っております、得体の知れないノイズフォークシンガーの平田です。今回は夏の北海道、次から徐々に南へ進んでいこうかと思います。新幹線と高速道路が延びて地方空港の整備がすすんでも、気候と地理的条件は簡単に変えられないもので、炎天下の東京にいると、夏の北海道が天国のように眩しくみえる。2006年8月、求職中だった私は都内でJRに乗っていて、44000円で5日間北海道のJR乗り放題「ぐるり北海道フリー切符」のポスターを発見。金銭的にはやや苦しいが、応募中の仕事が進展していないので、盆休みをずらした夏の北海道に行くチャンスである。

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連載:スナックショット 04 青森(平田順一)

どうも流浪のノイズフォークシンガー平田です。 2010年に開通した新幹線で、東京から3時間10分で着くようになった青森市ですが、ちょっとスピードと時間が実際の距離感覚に追いつかないというか、便利なのは良いですが小奇麗になりすぎて、演歌の似合いそうなスナックが急に淘汰されるんじゃないかとも思います。その新幹線の開通前、2007年と2009年に歩いた青森県下の記録です。

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連載:スナックショット 05 秋田(平田順一)

どうもスナック昼の部担当の平田です。先日、岡本太郎美術館で開催されている写真展『記憶の島――岡本太郎と宮本常一が撮った日本』に行ってきました。思わず惹きつけられずにはいられない強い眼光の岡本太郎に対して、風景と人々に溶け込むような宮本常一の柔和な眼差しが印象的でした。写真を撮る以前に、あの視線とスタンスを心掛けたいと思いつつ、今回は2002~2007年に敢行したスナックショット秋田篇です。

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連載:スナックショット 06 岩手(平田順一)

スナックショットの旅行に出るまえに鉄道時刻表と、中学の社会科で使っていた地図帳を参照している。中学の地図帳は30年も前で情報は古いが見慣れている。最近の地図を使うと市町村合併が進みすぎて、古くからの中心市街の見当がつきづらい。また県庁所在地やそれに準ずる規模の都市には確実ににぎやかな歓楽街があるが、人口が5万人くらいの都市だとあるところもないところもある。これも最近の市町村合併で、人口の多さを基準にできなくっているので、30年間の地図を参考にするとわかりやすい。

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連載:スナックショット 07 山形・宮城(平田順一)

どうもROADSIDERSの箸休め、平田です。折しも「せんだいマチナカアート2012」が開催、杜のみやこに都築編集長のROADSIDE SENDAIがやってきますよ! 北から順番に連載をすすめて今回は山形県と宮城県です。前回の岩手編におなじく能天気に写真を撮っているだけの自分が恥ずかしくもあり、それでもまだ探訪したいという思いもあります。庄内から置賜、仙北から仙南へとかなり広範に及びますがよろしく!

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連載:スナックショット 08 福島・栃木(平田順一)

どうも街の遊撃手、平田です。前回の山形・宮城篇から南へ下って、今回は福島県と栃木県です。 会津地方と郡山、宇都宮と小山が去年の3・11以降の写真で、それ以外は2004年から2007年の撮影、少々画像が荒くなっております。広い福島県のごく一部と、栃木県のごく一部で、まだまだ精進が足りませんがよろしくお付き合いください!

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スナックショット 10 群馬 (平田順一)

どうもほろ酔いセットで泥酔する男、平田です。今回のスナックショットは群馬県、歴代総理大臣にネギにこんにゃく、ボウイやバクチクといった80’Sロックバンドの産地としても知られています(かなり興味が偏っていますが)。上州のかかあ天下とからっ風はスナックにとっての追い風なのか、酒場を探して路地をうろついても、実に良い雰囲気を醸し出しているところが多く興味は尽きません。さて実際に群馬県を探訪しようとすると、交通アクセスは県庁所在地の前橋市よりも高崎市が格段に優れており、駅前も賑わっているしだるま弁当など駅弁の種類も豊富にある。

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[新連載]畸人研究学会報告 01

知ってるひとは知っている、畸人研究学会。黒崎犀彦・今柊ニ・海老名ベテルギウス則雄の3名により、1995年から手づくりミニコミ『畸人研究』を主な舞台に、日本全国の輝ける畸人たちを発掘・紹介しつづけてきた、市井の偉大なフィールドワーカーである。僕自身も彼らのリサーチにこれまでどれほど助けられ、勇気づけられてきたかわからない。畸人研究学会はこれまで『定本・畸人研究』や『畸人さんといっしょ』、『しみったれ家族 平成新貧乏の正体』など、数冊の単行本を発表しているが、『畸人研究』誌のほうは、しばらくお休みになっていた。で、そのあいだにも倦まず続けられている発掘作業を紹介すべく、これから不定期の連載というかたちで、本メルマガにて出張版・畸人研究をリリースしていただくことになった。今回はその第1弾、海老名ベテルギウス則雄さんによる、青森紀行をお送りする。

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タコス食ってゴスになろう!

先々週のメルマガではメキシコシティのゾンビ・ウォークを紹介した。今週はゾンビと並んでメキシコシティのヤングに人気(?)の「メキシカン・ゴス・ストリート」をご案内しよう。太陽サンサンのメキシコと、黒革にモヒカンに化粧のゴスはあまり相性いいように思えないが、こちらメキシコシティのダウンタウンの一角、「エル・チョポ」(El Chopo)と呼びならわされるエリアは、毎週土曜日になるとゴス&ヘヴィメタル関連のフリーマーケットが立ち並び、「メタルの竹下通り」的な様相を呈する。

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畸人研究学会報告 02 大飢饉という極限状態と表現(海老名ベテルギウス則雄)

東北旅行の楽しみの一つがグルメであることはいうまでもない。今回私は野辺地の自転車オブジェ以外に八戸、そして盛岡を廻ったが、どのガイドブックを見ても八戸、盛岡ともにグルメ情報満載である。まず今年2012年のB-1グランプリを獲得したのは八戸せんべい汁だし、また八戸は日本有数の漁港であり、有名な朝市を始め美味しい魚介類が食べられる店が目白押しである。一方盛岡もわんこそば、盛岡冷麺、じゃじゃ麺などの麺類や前沢牛など、やはり美味しそうなお店情報いっぱいだ!だいたい東北は米どころであり酒どころでもある。観光ガイドブックの誘惑に素直に従った旅行をすれば体重が数キロ増えて帰宅すること請け合いである。

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スナックショット 12 長野1

メリークリスマス! どうも平田です。今回のスナックショットは長野県ですが、ひとえに長野県といっても東西南北に広く、幾つもの山々に阻まれて地域ごとに文化も異なるのでまず今回は東信地方、ほかの地域は次回以降にご紹介する予定です。長野県東部、東信地方の中核となるのは上田市で、ここから盆地を西に10キロ向かったところに信州の鎌倉と称される古刹安楽寺と別所温泉があり、上田電鉄のローカル電車が結んでいる。沿線にある青木という集落が東急グループの創始者である五島慶太の出身地で、この上田電鉄も東急グループ傘下にある。

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スナックショット 16 千葉・埼玉(平田順一)

今夜すべてのバーで・・・どうも平田です。今回も欲望渦巻く首都・東京の周縁からお送りします。ここ数年、格安航空会社が参入して新規路線を就航されるたびに話題を呼んでいますが、多少アクセスが改善されても縮まらないのが新東京国際空港・成田への距離と交通費。格安チケットを入手したところで、まず成田へ行くこと自体が小旅行です。もともとが明治神宮に次ぐ初詣客を誇る成田山新勝寺の門前町で、京成電鉄もこの参拝客輸送を目的に敷設されたものでした。今風に解釈すればパワースポットへのアクセス路線か? 参道には老舗の鰻屋、和菓子屋、土産物店、すこし路地に入ると老舗の酒場も散見されます。

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連載:スナックショット 17 静岡(平田順一)

旅ぃゆけぇばー、駿河のぉ国にぃ、茶のぉ香り、どうも平田です。今回のスナックショットは浜松市・静岡市と政令指定都市が2つありながら新幹線のぞみの停まらない静岡県の、新幹線の駅もない街を中心に各駅停車でお送りします。関東と関西の中間に位置して海と山に恵まれ気候も温暖、商工業ともにバランスが良く新商品のテスト販売地域として知られる静岡県ですが、少し前まではコンビニの新規出店が厳しく住民騒動になったりしました。自分の関心でいえば静岡県のパチンコ店の条例で投機性の高い一発台が禁じられており、古い一般台が多く残るパチンコ店の佇まいが印象に残っています。

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畸人研究学会報告 04 夢の王国の荒々しさと優しさ、そして郷愁 (海老名ベテルギウス則雄)

兵庫県の三田市で醤油鯛の取材を終えた後、私は次にどこへ行ってみようかと考えてしまった。お恥ずかしながら今回の取材で訪れるまで、三田市はただ漠然と大阪とか神戸の近くだと思っていて、どのあたりにあるのかをきちんと把握していなかった。しかし実際に行ってみると宝塚の先で、結構大阪や神戸から距離がある。取材後は大阪か神戸あたりに行ってみようと考えていた私に迷いが生まれた。そこで近くに面白そうな場所が無いか、醤油鯛の取材をした後の沢田さんに聞いてみることにした。「そうですね、確かに三田って結構兵庫の奥なんですよね。ここまで来たら大阪や神戸に行くのも良いですが、反対側の日本海側に向かうのも面白いと思いますよ。近くには丹波篠山なんかもありますし」。

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連載:スナックショット 18 愛知、三重、岐阜(平田順一)

いらんモノはコメ兵へ売ろう!どうも平田です。1993年公開の「ミスター・ベースボール」は野球に大して興味のない自分にも面白い映画で、何度かテレビ放映もされました。トム・セレックが演じる元メジャーリーガーの助っ人外人が、カルチャーギャップに悩みながらもチームメイトや監督から友情と信頼を得るという痛快なスポーツコメディであり、ユニバーサルピクチャーズ配給の洋画なのに舞台となるのは名古屋、つまり中日ドラゴンズの助っ人選手です。言葉も風習もわからない島国に連れてこられて、名古屋というローカルな環境で戸惑いつつも、東京の人気球団に対抗心を燃やすというひねった設定にリアリティーがありました。今回のスナックショットはその名古屋にも対抗心を燃やしているかもしれない、愛知・岐阜・三重の周縁部からお送りします。

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原色の寝室――タイの日式ラブホテルめぐり 1

渡邊智昭さんのディスコバスの写真を見ていて思い出したのが、ラブホテルのこと。日本に限らず世界中に「おもにセックスのためのホテル」は存在するが、それらはあくまで「カップル向けのロマンティックな宿泊施設」であったり、「娼婦と短時間過ごすためのヤリ部屋」だったりする。そのように味気ない限定目的空間を、これほどまでの特殊な美的空間デザインに昇華させたのは、日本が世界に誇るべき美意識だと思うのだが・・・あるんですねえ、タイにも。実は日本そっくりのラブホテルが。明らかに日本のラブホの影響にあるというかモロ・コピーでありながら、「家族やお友達とのパーティにも」などとうたってあるところがまたタイらしい、南国的快楽空間。数年前に3ヶ所の存在を確認、取材も済ませていたが未発表のままだったので、今回のディスコバスにあわせて2週間にわたってご紹介します。今週はまず、チェンライのレッドローズ・ホテルから。

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スナックショット 23 鳥取(平田順一)

どうも平田です。今回のスナックショットは日本で一番人口が少ない鳥取県です。ROADSIDERS' weeklyでは昨年8/15配信号(vol.31・圏外の街角から)で取り上げられました。鳥取は距離もさることながら、なにか用事があるとか近くへ寄ったついでとか、そういった要素も派生しづらい縁の遠さがあります。県全体の人口(60万人弱)も東京の江戸川区や足立区と同じくらい、面積や密度を比べると酷ですが国会議員の定数問題ではないので純粋に鳥取県内のスナックのある風景を追ってまいります。

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連載:スナックショット 24 鳥取、島根(平田順一)

どうも平田です。今回のスナックショットは前回に続いて鳥取県の西、境港市と島根県松江市・出雲市のスナックを巡ります。妖怪の町から神話の町まで、よろしくお付き合い願います。県庁所在地の鳥取市よりも交通の便が良くて賑やかな米子駅、この0番線ホームに境港行のディーゼルカーが停まっている。これが水木しげる先生が描くラッピング塗装の「鬼太郎列車」であり、終点の境港駅からは水木しげるロードを経て、水木しげる記念館に通じている。

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畸人研究学会報告 05 不夢不無曼荼羅は田園の中 芸術家東山嘉事の夢世界(海老名ベテルギウス則雄)

皆さんは東山嘉事(ひがしやま・かじ1934-2006)という芸術家をご存知だろうか? 私は神戸市内の山あいにある知的障害者施設で生活しながら、段ボールに赤鉛筆で独特の絵画を描き続けてきたアウトサイダーアーティストの小幡正雄さんを発掘した人物として、その名を知っていた。今年の初め、兵庫県篠山市で出会った大杉幸生さん(2013年3月13日配信号)から、「東山嘉事さんは私の師匠に当たる人物で、ひとことでは言い表せない大変な芸術家だった」という話を聞いた。そして今回、大杉さんの紹介で、東山嘉事さんのアトリエであった建物の見学をさせていただけることになった。

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連載:スナックショット 26 香川・愛媛(平田順一)

どうも平田です。今回のスナックショットは四国に渡って、大竹伸朗ファンには馴染み深い香川県と愛媛県です。高松は古くから国鉄の宇高連絡船を介した四国の玄関口で、深夜とも早朝ともつかない時間帯にも列車と連絡船の発着があり、神戸・大阪とのフェリーも終夜発着していたので一地方都市とはいえ侮れない、不夜城の輝きがあります。

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スナックショット 27 徳島・高知(平田順一)

どうも平田です。今回も遍路さながらに四国のスナックを巡りますので、よろしくお付き合い願います。最近新潮社から出た大竹伸朗さんのエッセイ集「ビ」を読んでいますが、伝統と権威を誇る美術展と宇和島のカラオケスナックを俎上に並べて美意識を考察する「スナック『日展』」の一文は、スナック街に惹かれて写真を撮っている自分の、うまく説明できない思いが文章化されているみたいで嬉しかったです。2001年夏、自分は信号メーカーの技術部で働いており、社内には全国の鉄道会社に納品した信号設備の資料があったのですが、仕事とは直接関係のないケーブルカーやロープウェイが趣味的に面白くて、これを追い求めて旅に出てはコンパクトカメラで記録していました。

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新連載! 案山子X(ai7n)

2010年に広島市現代美術館で、『HEAVEN 都築響一とめぐる、社会の窓から見た未ニッポン』という展覧会を開いたときのこと。ギャラリートークかなにかの折に、すご~く内気そうな女の子が、「あの・・・こんなの作ってるんです」と、おずおずと一冊の小冊子を僕に差し出した。『広島非日常ガイドブック』と小さく表紙に書かれたその冊子は、純喫茶伴天連から豊栄ヘソまつりまで、広島周辺の裏スポットをたったひとりで探索・記録し続けた、すばらしい努力の結晶だった。それまで美術館のスタッフにいくら聞いても、ロクな珍名所に出会わなかった僕にとって、それは天啓ともいうべき授かりものだった。

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スナックショット 31 宮崎(平田順一)

どうも平田です。全国のスナック街の写真を撮って歩いてる人間です、と紹介されたり自分で話したりすることがあり、ここの地方はスナックの写真は撮りましたか? と関心を持たれることがあって嬉しいのですが、行っていない地方については返答に窮することになります。今回取り上げます宮崎県は昨年の連載開始時には未踏の場所で、宮崎をどげんかせんといかん! と今年2月に奮起して行ってきました。大都市圏以外でのタレント首長の誕生で、驚きをもって迎えられた東国原知事の就任が2007年1月。

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スナックショット 32 鹿児島、熊本、大牟田(平田順一)

どうも平田です。いままで北海道から九州までスナック街を巡って写真を公開してきましたが、いくつか抜けているところがあります。和歌山や奈良ではまとまった数の写真が撮れず、東京・京都・大阪など大都会のスナックはあえて避けてきました。歓楽街として知られすぎていることと、たとえば銀座や歌舞伎町で雰囲気のあるスナックの写真を撮ったら、半径500メートルくらいで完結してしまいそうで、好奇心が広がっていかないと思ったからです。中州、すすきの、仙台の国分町なども同様の理由で敬遠していたのですが、旅先は解放感があり好奇心も湧きます。今回は有名といえば有名、ローカルといえばローカルな鹿児島の天文館、熊本の下通、福岡県大牟田市の記録です。

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スナックショット 最終回 沖縄(平田順一)

どうも平田です。最終回となります今回は沖縄本島のスナック街を巡ります。かつては独立した貿易国であり、つねに近隣諸国の政治と経済に翻弄される沖縄。基地問題や高い失業率や経済格差などなど、複雑な県民感情を抱えつつも美しい自然環境や個性的な文化から本土の沖縄フリーク、「沖縄病」と呼ばれる移住者を大量に呼び寄せることになります。スナックという切り口から沖縄を見ると、やはり米軍や基地関係者のガス抜きという一面を少なからず意識しますが、強い直射日光や台風に耐えて存在する看板や建物自体が魅力的に映りました。

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フィールドノオト 03 新宿(畠中勝)

音を残そうと考えた時、それは楽器で作り上げる音楽だったり、自然豊かな場所での川のせせらぎの収録などを思い出す。今回は僕の身の回りの音だけを集めてみた。日々暮らし慣れ親しんでいる新宿のフィールドレコーディングだ。多国籍で無国籍なカラーがミックスする街の風貌もさることながら、新宿はいろんな音が絡み合う場所だと感じたからだ。

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フィールドノオト04  岩手県~青森県(畠中勝)

「あまちゃん」で沸く久慈に通りかかった。町は見事に人の活気であふれていた。その後、十和田湖へ。どちらも本来の目的地ではなかったのだが、車窓から眺めた三陸海岸に、この数年、震災以降の個人的な想いが巡った。

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フィールドノオト05 恐山(畠中勝)

恐山へいってきた。下北駅からの道中、地元のタクシー運転手が話をしてくれた。「霊場には小さな石がたくさん積んであるんだけんども、それは地元の人間が先祖代々ひとつひとつ毎年積んできた石なんですよ。その石の山は台風が来ても地震がきても崩れたことがない。本当に不思議ですよね」。この霊場が持つ信仰を鵜呑みにするには僕自身まだまだ学が足りない。しかし多くの人を引き寄せてきたこの山自体の奇妙な“磁場”に一層興味を惹かれていった。

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案山子X 4:円野町かかし祭り(山梨)/長崎のかかし祭り(山梨)(ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今年最後となる4回目は、山梨県の「円野町かかし祭り」と「長崎のかかし祭り」を紹介します。最初に山梨県韮崎市円野町下円井の「円野町かかし祭り」を紹介します。「円野町かかし祭り」は今年で20回目を迎えたお祭りで、8月12日~9月8日の4週間に渡って開催されました。つぶら野会館付近の市道円野5号線沿い約200メートルに115体(24タイトル)の案山子が展示され、案山子の人気投票も開催されていました。町おこしとして始まり、現在は町民が気楽に楽しみながら地域の主張を発信するお祭りとなっているそうです。

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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 11 外国人(ケイタタ)

今回のテーマは「外国人」。ぼくもよく海外を旅するので、外国人には親切にしてあげたいと思うもの。でも、やっぱり、見てておもしろいことが多々あるのです。そんなときついついカメラを向けてしまう。ぼくがどこかの国の路地で不様な姿を晒してたら撮っていいから許してね。それではお楽しみください。

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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 12 冬(ケイタタ)

大阪でも珍しく雪が積もりました。いやあ、寒いです。というわけで今回のテーマは「冬」です。寒い風景が多いので、体を温かくしてご覧ください。

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フィールドノオト11 福岡県飯塚市(畠中勝)

昭和10年、父、敏雪は、5人兄弟の長男として、炭鉱で賑わっていた飯塚で生を受ける。村の名は「氷屋」と呼ばれていた。地元の名山である三郡山の山裾の一端で、まれに夏でも凍えるほどの寒さを感じることからこの地名が付けられたと聞く。小学校を出るやいなや炭鉱で働き始めた父。終戦とともに鉱山が閉鎖されると、その後は長距離トラックの運転手として定年を迎えた。実母の葬式にも顔を出さないほどの働き者で、勤めていた会社から皆勤賞をもらうほどだった。僕はその父と実は長年会ってはいないのだが、小学生時代の「うちの家族」といった作文以来、改めて父を書こうと、良いところをあげるなら、ひとつだけ思い出すことがある。それは父の風貌である。

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案山子X 7:上津川かかしむら かかし祭り(大分)(ai7n)

今回は大分県佐伯市本匠大字上津川地区で開催される「上津川かかしむら かかし祭り」を紹介します。大分県の南東端に位置する佐伯市(さいきし)は九州の中で最大の面積を持つ地域で、海側にはリアス式海岸地帯が広がり内陸部には深い山々が連なる、豊かな自然に恵まれた地域です。「上津川かかしむら かかし祭り」の会場がある本匠大字上津川地区は佐伯市の中心から北西に位置し、上津川に沿って点在する小さな集落の中の一つでかかし祭りが開催されます。毎年10月中旬の稲刈が終わった頃から40日ほどかかしの展示をされるそうで、3回目を迎える2013年には約250体のかかしが田畑や民家等に立ち並びました。

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フィールドノオト12 佐賀県 嬉野観光秘宝館(畠中勝)

昭和のアミューズメント施設に興味がある。温泉街にある秘宝館もそのひとつだ。子どもの頃はできなかったが、箱型の受付小屋にいるオバサマに入館料を支払い、館内へとおずおず足を踏み入れる。すると瞬く間に、これまで経験しなかった、もしくは体験することもないであろう、すごいエロが待っていた。

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フィールドノオト15 京都2(畠中勝)

猟師、増山賢一氏による鹿猟二日目。猟でもパートナーを務める氏の奥さんとともに、今回は子どもたちも山へやってきた。もちろん猟をするわけではない。麓で猟犬の世話をアシストする心強い味方なのだ。猟を終え、獲物を捕らえた父のもとに子どもたちが駆け寄ってきた。子どもたちは生まれた頃から、父の獲った肉を食べ、それらの肉が好物にもなっている。成功を喜び合う親子。

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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 18 プレイする人(ケイタタ)

今号のテーマは「プレイする人」。プレイといえどいろんなプレイがあるけれども、これはゲームをプレイする人です。それではご覧くださいませ。

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フィールドノオト16 伊豆熱海(畠中勝)

熱海へは数年ぶりにやってきた。夜明けに新宿を出発、そして今は10時過ぎ。今回は秘宝館の取材のためでデートでもなんでもないが、成り行き上、車内には自分を含め男が三人いる。徹夜の仕事だったことから、我々はとりあえず喫煙休憩を兼ね、僕の行きつけである日帰り温泉宿へ向かった。閑散とした熱海の中心街、そのさらに外れにあるこの宿は、より人気も少なく休憩所は無料で広々。入浴料も安いことから昔から定宿に指定している。湯に浸かりながらゆったり予定を考え、休憩所にあがってくると、ちょうど老人たちが一杯やりながら会話をしていた。というより江戸っ子らしき人物が一方的に喋っている。畳部屋に響くその声は妙な清涼感があった。

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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 19 春(ケイタタ)

商店街ポスター展の記事、ちょっとマジメすぎたかも・・・熱が入りすぎてついつい長くなってしまいました。今回はケイタタに戻りまして「隙ある風景 ROADSIDERS’ remix」今回のテーマは「春」。さくらは春らしいのだけれども、以前の書いたものだからさくら以外の春の風景を。どうぞリラックスしてお楽しみください。

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フィールドノオト17『思い出の抜け道』(新宿)(畠中勝)

歌舞伎町の暗がりに無数に伸びる裏路地。その中のひとつに四畳半にも満たないバラック屋台やスナックが立ち並んだ通りがある。かつて中国人マフィアによる青龍刀事件でも知られたこの一帯は、数年前までは誰もが気軽に足を踏み入れることはできないような空気感があったが、その後、石原都知事が行った歌舞伎町浄化作戦によって、今ではカフェ風の店が増え、近隣のゴールデン街と同様、観光客も安心して入れるようになった。そんな知る人ぞ知る新宿の裏通りで、古くから赤提灯を灯してきたのがスナック『竹千代』。若い頃は、銀座の高級スナック店に勤務、ミスコンへも出場経験があるという女装ママ、竹千代さんが営んでいる。現在66歳。とてもそんな年齢には見えない美貌の持ち主だが、彼女がいうのできっとそうなのだろう。そして彼女の店を渾身にサポートをしているのが、今回、歌を披露してくれた将(まさる)さんだ。

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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 21 モノ(ケイタタ)

今回のテーマは『モノ』です。人だけでなくただのモノでも人の手が加わるとやはりそこには隙が生じる。そんな人の手で隙ができてしまったモノたちをどうぞご覧ください。

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案山子X 11:筑前町ど~んとかがし祭(福岡)/道の駅うきは かかしコンクール(福岡)(ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は福岡県朝倉郡筑前町の「筑前町ど~んとかがし祭」と、福岡県うきは市浮羽町「道の駅うきは かかしコンクール」を紹介します。「筑前町ど~んとかがし祭」が開催される筑前町は福岡県の中南部にあり、福岡市の南東約25km、久留米市の北東約20kmの場所に位置します。2005年に旧三輪町と旧夜須町の合併により筑前町が誕生し、旧三輪町の"どんと祭り"と旧夜須町の"かがし祭り"がひとつになった一大イベントが、この「ど~んとかがし祭り」です。会場である安の里公園はコスモスの名所として知られ、公園の周りに100万本のコスモスが咲き乱れる中祭りが開催されました。

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フィールドノオト 20 旧野首教会(畠中勝)

野崎島の旧野首教会へやってきた目的に、音楽的な視点での環境音の収録があった。音楽は教会という建築物のイメージを形成する要素のひとつでもある。実際、僕は大久保にあるプロテスタントの教会に通っている。日本で一般的にイメージされるキリスト教会の通り、ここにはパイプオルガンが備わっている。ミサで演奏されるオルガンは礼拝堂に大きく響き渡り、室内にある全てのものと共鳴する。まるで教会そのものが楽器であるかのように。ちなみに音楽と呼ばれるものの基礎を築きあげたオルガニスト、J.S.Bachもこの一派から誕生している。つまり音楽と教会は密接な関係にあり、カラオケ通いのない人でも、礼拝堂に足を踏み入れるということは、毎度ここで声を出して歌う必要がある。

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私のアタマは貝の殻・・・――復活! 竹島ファンタジー館

郡上八幡、関と岐阜の要注目イベントふたつを紹介してきたが、県外からの多くの訪問者にとって、旅の起点は名古屋になると思われる。名古屋にはもちろん夜を含めて重点スポットが数多いが、今回はあえて尾張名古屋を素通り、一路南下して三河蒲郡に足を伸ばしていただきたい。長らく珍スポット・マニアたちに愛されながら、2010年秋から長期休館していた蒲郡ファンタジー館が、なんと「竹島ファンタジー館」となって再開、この8月2日にグランドオープンを迎えたのだ。ちなみに竹島とは、蒲郡の本土と橋で結ばれた、三河湾に浮かぶ小さな島。島全体が国の天然記念物であり、対岸の竹島水族館とともに、渋好みツーリストに親しまれてきた観光地である。

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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 24 寝てる人(ケイタタ)

今号は『寝てる人 夏』。夏は外で寝てる人が多いよい季節。200枚近くどばっといってみましょ。

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畸人研究学会報告 06 日本の精神医療草分けの地、京都岩倉と城守保養所資料館(写真・文 海老名ベテルギウス則雄)

日本一の観光地として、国の内外から連日多くの観光客が押し寄せる街、京都。本当どこへ行っても旅行ガイドを片手に京都観光を楽しむ人々でごった返している。しかし、京都市内でも観光客の姿をあまり見かけない場所もある。洛北の岩倉はそんな観光客の影が薄い地の一つである。第一、京都の岩倉と言われても、いったいどのあたりにあるのかわからないという人も多いだろう。かくいう私も今回の岩倉旅行に行く前までは、“京都市内の北の方”という漠然とした知識しかなかった。そんな影の薄い岩倉であるが、精神医療の関係者ならば誰でも知っている。

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案山子X 14:遠野特集(岩手)(写真・文 ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は岩手県遠野市の特集という事で「雨風祭り&かかし祭り」「蓮池の丘」「りんご屋」「遠野のかかし」を紹介します。かかしではない物もあるのですが、あまりにも素晴らしかったので一緒に紹介させてもらいます。 遠野市は岩手県の内陸部に位置する四方を山に囲まれた盆地で、昔ながらの日本の風景が数多く残っている街です。遠野出身の小説家・佐々木喜善によって語られ柳田國男が1910年に発表した「遠野物語」の元となった街が遠野で、河童、座敷童子、死者や神等に関する数多くの民話があります。民話のふるさととして、昔の遠野の人々の生活文化を後世に伝承する施設が多く存在しています。

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案山子X 15:かかしの郷(徳島)(ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は徳島県三好市東祖谷菅生名頃の「かかしの郷」を紹介します。徳島県三好市東祖谷は高知県と接した雄大な自然に恵まれた山間の地域で、日本百名山の一つである剣山(つるぎさん)や、平家一族が架設したと伝わる奥祖谷二重かずら橋などがあります。奥祖谷二重かずら橋から3キロ程、標高約900メートルの場所にある名頃地区には「かかしの郷」と呼ばれる人間そっくりのかかしが住む村があり、様々なメディアで紹介され多くの観光客が訪れています。かかしの郷は綾野月美さんが作った1体のかかしから始まりました。

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案山子X 16:あったかビレッジかかし祭り(秋田)(文、写真:ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は秋田県にかほ市樋目野の「あったかビレッジかかし祭り」を紹介します。にかほ市は秋田県南西部に位置している街で、秋田市からは海沿いの国道7号線を走り約67キロ。西側には日本海があり、東側には東北第2の高さを誇る「鳥海山」があります。鳥海山は海岸からそびえるように立ち上がる独立峰で、標高2236メートルの活火山です。にかほ市の海岸沿いを走るJR羽越本線金浦駅から約3キロの場所に、「あったかビレッジかかし祭り」の会場である樋目野があります。大規模なかかし祭りの場合、様々なサイトで正確な情報が出ているので事前に詳細を知る事ができ迷う事無く現地に到着できるのですが、田舎で開催されるかかし祭りや少人数で開催されるかかし祭りの場合、正確な住所や問い合わせ先がわからない事があります。この「あったかビレッジかかし祭り」もネットでの情報が少なく、大体の住所と開催時期を頼りに現地に行ってみました。

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アートじゃない生き物 vol.1(写真・文:若井響子)

ヨーロッパの街を歩いていて、何重にも貼り重ねられた壁のポスターに惹かれたひとはきっと少なくないだろう。若井響子さんもそのひとりだった。若井さんは「一人芝居」をずっと続けているパフォーマーだ。このメルマガで連載してくれている畠中勝さんが営む、新宿ゴールデン街のバー『ナイチンゲール』で僕は彼女と出会い、「iPhoneで撮ったんです」という壁の写真を見せてもらってるうちに、すっかり場末の旅情みたいな懐かしい気分を掻き立てられて、メルマガで紹介させてもらうことにした。東京の日常からひととき飛び出したくて、2014年の6月から9月まで、95日間にわたってイタリアとフランスを旅した彼女の「ポスター壁画ハンティング・トリップ」。これから3回の旅日記にお付き合いいただきたい。

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フィールドノオト31 余市(写真・録音・文 畠中勝)

上海から帰国後、札幌に向かった。北海道へは知床の流氷の録音をして以来だから、約二年ぶりだ。道内の街らしい街を訪れることも今回が初めてになる。噂通り、大阪や名古屋のような都会だった。ただ他の都市と大きく異なることもある。自然環境による影響の大きさだろうか。底冷えする11月の札幌。真冬の京都にいるような骨身に沁みる寒さを思い出す。遠くで見える山々にはすでに白い雪が冠掛かり、都市にいながら大自然の風情だ。とはいえ、やはり都会的な札幌。電車の車内で話している人は見かけないし、駅周辺でも話しながら歩いている人を見ない。随分とスマートな印象も受ける。

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アートじゃない生き物 vol.3(写真・文:若井響子)

ローマからパリへ:毎日歩き通しで疲れはピークを越えていた。そしていつもおなかが空いていた。この頃の主食は、スーパーで買った果物とヨーグルトだった。あとはジェラートばかり食べていた。90日間のイタリア滞在が終わり、フランスへ移動。パリ→リヨンへの合計5日間の旅である。フランス語も一切わからない。非常に不安であった。安い便なので、デンマークのコペンハーゲンを経由するというとんでもない遠回りで、夕方ローマを発ち、コペンハーゲン空港でうとうとしながら一晩を過ごし、翌朝パリ行きに乗ったのだった。

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新連載 ジワジワ来る関西奇行 01 誰も知らない大阪 「寝屋川市」という開かれた秘境 (写真・文 吉村智樹)

もしも「ロードサイド関西」というような本をつくるとしたら、このひと以上の適任者はいないはずの吉村智樹さん。本メルマガ読者なら自然と(笑)、吉村さんファンも多いのでは(体型も似てるし!)。いまは京都在住の吉村さんだが、以前に東京・高円寺に住んでいたころからの知り合いで、いつかなにか一緒にできたらな〜と思っていたのが、ようやく実現。今月から月いちどのペースで、「ジワジワ来る関西」について書いていただくことになった。このメルマガでも最近は関西についての記事が多くなっているけれど、いまだにみんなが知ってる気になっていて、実はぜんぜん知らない(知ろうとしない)関西という謎に、これから毎月お連れする。

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案山子X 19:かかしの里(青森)、鳥羽の素晴らしい作品達(三重)(写真・文:ai7n)

今回は青森県西津軽郡鰺ヶ沢町中村町の「かかしの里」と、三重県鳥羽で出会った素晴らしい作品を紹介します。鰺ヶ沢町(あじがさわまち)は青森県の西部に位置する日本海に面した町で、標高1,000m級の山々が連なる世界遺産の白神山地や、ブサかわ犬として有名になった秋田犬のわさおがいる七里長浜きくや商店等があります。鰺ヶ沢町から岩木山に向かう県道3号線沿いにある中村町では、毎年8月上旬〜9月中旬にかけて「かかしの里」が作られ道路沿いにかかしが立ち並びます。毎週日曜日には「かかし茶屋」が開かれ、地元の新鮮な野菜等を販売するそうです。13回目の開催となる2014年には、35体の大小様々なかかしが中村町ののどかな風景の中に立ち並びました。

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ニセモノの本気――大ニセモノ博覧会@歴史民俗博物館

東京から成田空港に向かってすぐ手前にある千葉県佐倉市。ミュージアム好きには国立歴史民俗博物館とDIC川村美術館という、ふたつのビッグ・ミュージアムがあることでおなじみ。その歴史民博ではいま『大ニセモノ博覧会―贋造と模倣の文化史―』という、かなり野心的な展覧会を、わりとひっそり開催中だ。「ニセモノ」とか「パクリ」とか言うと、最近では自動的に中国を連想してしまうひとが多いだろうが、ちょっと前までパクリと買いまくりにかけては元祖エコノミック・アニマル=日本人の代名詞だったことを忘れてはならない・・・というような歴史エピソードはともかく、真似ること、コピーすることは、かならずしも「やっちゃいけない悪いこと」で済まされるわけでもない。音楽にしろ美術にしろ、映画にしろ建築にしろ、つねに模倣はオリジナリティの重要な源泉であった。模倣によって磨かれた技術は数限りないし、模倣によって発見された真実もたくさんある。今回の展覧会ではそうした「本物」と「ニセモノ」のあいだのからみ合いから生まれてきた文化を、膨大な館蔵品を中心によって紐解いてみようというもの。考古学から古美術、骨董、見世物まで、時代もジュラ紀から現代まで!と思いきり幅広い展開。

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案山子X 20:中田かかし祭(富山)(写真・文 ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は富山県高岡市の中田かかし祭を紹介します。中田のかかしの特徴は、頭部が発泡スチロールや紙粘土、身体はワラで作っている事です。ただ単純にワラを使って作っているのではなく、細かく編み込んで髪の毛にしたり、芯に巻き付けて手足になったり、細い指の様々な動きもワラで表現しています。服や小道具や動物等様々な物にもワラが使用されています。中田は農業が盛んな地域なのでワラを入手しやすく、かかしといえば米、米といえばワラのイメージがある為、このようにワラを使用してかかしを作る事になったそうです。

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案山子X 21:共和かかし祭(北海道)(ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は北海道岩内郡共和町の共和かかし祭を紹介します。小樽から約55キロの場所にある北海道岩内郡共和町は、道央に位置する美しい田園風景が広がる自然豊かな町です。古くから稲作など農業が盛んな町で、農作物の成長を見守る「かかし」が町のシンボルです。共和町の憩いの広場で毎年8月下旬に開催されるのが「共和かかし祭」。2014年に34回目の開催となり、115体の個性的なかかしが立ち並びました。

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フィールドノオト 34  軍国酒場 1(録音・文・写真:畠中勝)

音楽を楽しむことを目的とした酒場は、今では本当に何でもある。数え切れないほどの音楽ジャンルがあるように、音楽酒場もそれと同じく、設えられた内装や演出が多様にある。たいていは店のコンセプトやオーナーの趣味にそったポスターが貼りたくられ、演出終了というのをよく見かける。しかし中には想像もつかないほどの厚みでポスターが重ね貼りされていたり、歴史が練り上げられたり、結果として、趣の原型を留めていないほど、異様な進化を遂げた空間もある。もはや演出を超えたそういった空間は、リスニング環境が整っただけの音楽酒場がもつコンサバティブな目的を遥かに逸脱しているので、音楽というものに内包される不可思議さ、音楽に寄りそいながら漂う、匂いのようなものまでをも焚きあげている。

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案山子X 22 石羽古碑街道かかしまつり(宮城)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は宮城県伊具郡丸森町の石羽古碑街道かかしまつりを紹介します。丸森町は宮城県の最南端に位置した自然豊かな町で、福島県と隣接しています。かかし祭の最寄り駅である阿武隈急行線・丸森駅迄は、仙台駅から電車で約1時間、福島駅から約50分です。丸森駅から県道45号線を8キロ程走ると山間に国民宿舎あぶくま荘が見えてきます。あぶくま荘裏手の石倉地区や上滝地区の道沿いには多くの古い石碑が点在する「石羽古碑街道」があり、かかし祭実行委員会の方がこの石碑や風土をいかしたイベントができないかと考えついたのが「石羽古碑街道かかしまつり」でした。2014年9月に訪れた時には1.5キロ程の石羽古碑街道沿いに152体のかかしが展示されていました。その後かかしの数はどんどん増えていき、10月上旬には200体を越える数になったそうです。

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ジワジワ来る関西奇行 04 交野市(かたのし)で「ハンドパワー」の凄さを知る(写真・文 吉村智樹)

交野市と書いて「かたのし」と読む。大阪人でなければ、いやヘタすれば同じ大阪人ですらその読み方がわからない難読地名。さらに地名の読み方だけではなく、住んでいらっしゃる方には申し訳ないが、交野市に関する知識を、ほとんどの大阪人は持っていない。先日、僕はTwitterで「ただいま都築響一さんのメールマガジンROADSIDERS' weeklyの取材で交野市に来ています」とツイートした。すると、きっと読者の方からだと思うが「交野市!? あそこ、芋掘り以外になんかあるんですか?」とリプライされた。この方はまだ「芋掘り」という情報を持っているだけ、交野市に関してはツウだ。調べたわけではないが、同じ大阪在住者でも、「交野市に行ったことがある」「位置や、なにがあるかを把握できている」という人はとても少ないのではないか。

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キャバレー白馬と八代亜紀の夜

前記事の「するめクラブ熊本編・写真日記」で触れたように、八代(やつしろ)には『キャバレー白馬』という由緒正しきグランドキャバレーが、いまも生き延びている。シャッター商店街が続く八代中心部の一角に、こんな昭和遺産が現存していたとは。『商店建築』誌の連載取材で『キャバレー白馬』を初めて訪れたのは2009年のことだった。そして今年2015年、「するめ旅」の途中で寄ってみた八代で、まだ白馬がいまもそのままあるのを、この目で確かめることができた。キャバレー白馬はまた、地元出身の大歌手・八代亜紀を生んだ場所でもある。以前『アサヒ芸能』誌でインタビューした記事から、そのストーリーを引用してみよう。

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案山子X 28 24時間ソフトボール大会(福岡)(写真・文 ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は福岡県飯塚市鯰田の「24時間ソフトボール大会」を紹介します。福岡県のほぼ中央に位置し、かつて長崎街道の宿場町、炭坑の町として栄えた飯塚市。飯塚市鯰田にあるJR浦田駅近くの田んぼで毎年11月1日から1ヶ月間、子どものかかし達によるユニークなソフトボール大会が開催されます。2014年にまとめサイト等で話題になったのでご存知の方も多いかもしれません。

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ジワジワ来る関西奇行 05 ビューンと飛んでく「新長田」駅前(写真・文 吉村智樹)

ジワジワ来る関西奇行、今回、訪れた場所は兵庫県神戸市長田区の「新長田」駅周辺。JR神戸線と山陽本線、神戸市営地下鉄西神・山手線と海岸線が乗り入れしたひじょうにアクセスしやすいハブ駅で、改札を出て南側には長大な商店街もあり、とても住みやすそう。にもかかわらず同じ関西人でも「新長田? 名前は知っているけれど行ったことがない」という人はけっこう多い。神戸の人気エリア「三ノ宮・元町」と「須磨」のあいだに位置しているため路線図では頻繁に目にする有名な駅なのだが、ステーションビルの大きさや街の規模に反比例してなぜか普通列車しか停車しないゆえ、車窓から眺めるだけのスルー駅になってしまっている。

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越前浜で昭和歌謡にむせび泣く!

上原木呂さんが住む新潟県・旧巻町からちょっと走れば、そこは日本海に面した越前浜。海水浴場にスイカ栽培、それにワイン通のみなさまには最近、カーブドッチなどの国産ワイナリーが続々誕生中のエリアとしても知られている。が・・・ワインやスパは楽しんでも、越前浜の一画にある『遠藤実記念館・実唱館』で、過ぎし日の歌謡曲に浸ろうという趣味人は残念ながら多くない。その名のとおり、「実唱館」は昭和の偉大な作曲家・遠藤実の業績を広く知ってもらおうと、1994(平成6)年にオープンした施設。貴重な資料や映像を通して、遠藤実が体現した昭和の歌謡世界をタイムトンネルのように振り返ることができる。

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案山子X 34 豊野主基田の案山子まつり、天空のかかし祭り(岡山)(写真・文:ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は岡山県加賀郡吉備中央町豊野主基田の案山子まつりと、岡山県高梁市備中町平川の天空のかかし祭りを紹介します。豊野主基田の案山子まつり――加賀郡吉備中央町は、岡山県の中央部に位置する農業が盛んな自然豊かな地域です。吉備中央町の豊野地区には、天皇が即位した時に献上する米を作っていたという円形状の水田「主基田(すきでん)」が残っています。地域活性化と主基田の保存活動の一環として地元の小学校の児童が稲刈りや田植えに参加しており、秋の収穫の時期に合わせて毎年案山子まつりが開催されています。

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Back in the ROADSIDE USA 16 Greyhound Bus Museum, Hibbing, MN

カナダに接するアメリカ中西部の要所・ミネソタ州。ミシシッピ川を挟んで隣り合うミネアポリスとセントポールをあわせて「ツインシティーズ」と呼ぶが、そこはプリンスやボブ・ディランを生んだ土地でもあった。アメリカ最大のショッピングモールである「モール・オブ・アメリカ」も、ツインシティーズ郊外のブルーミントンにある。アメリカを旅する節約家、というか貧乏旅行者には欠かすことのできない交通手段といえば、今も昔もグレイハウンド。全米のすみずみに路線網を張りめぐらすバス会社だが、そのグレイハウンドの発祥地がここ、ミネソタ北東部のヒビングという町である。

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案山子X 35:青木地区かかし祭(鹿児島)(写真・文 ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は鹿児島県出水市野田町青木地区のかかし祭を紹介します。出水市ツル観察センターから7キロ程の場所にある野田町青木地区では、毎年9月に地元の方によるかかし祭が開催されています。青木地区は水田農業地帯であり、平成10年に大型農業機械を地域で共同購入した記念事業としてかかし祭が始まりました。水田にかかしを復活させる目的と、地域住民の交流活動の一環として毎年開催されています。地元の新鮮な野菜や果物等を販売する「青木の茶屋」近くの田んぼの中に農道があり、約700メートルにわたりかかしが展示されていました。100戸程の住民の方が廃材等を利用してかかしを作り、2015年は48体のかかしが立ち並びました。

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Back in the ROADSIDE USA 21 The US Border Patrol Museum, El Paso, TX

「まあほんとに大統領になったら、意外におとなしく振る舞うのでは」という一部の期待もむなしく、就任するやいなやTPP離脱に国境の壁に入国禁止令と、矢継ぎ早にトンデモ政策をぶちかますトランプ大統領。いよいよアメリカは未体験ゾーンへと突入しつつあるようですが、今週はある意味キャッチーなテキサス州エルパソの『アメリカ国境警備隊博物館』にお連れする。「ビッグ」という形容詞がこれほど似合う土地はないと思うが、テキサスは広さ670万平方キロ。日本の国土全部の1.8倍もある。州内に時差があるほどで、緯度を見ると茨城から沖縄あたりまでをカバー。気候も北と南ではずいぶんちがう。

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Back in the ROADSIDE USA 22 The Orange Show, Flower Man and Art Car museum, Houston, TX

先週に続いてテキサスの、こんどは屈指の大都市ヒューストンから3つのアウトサイダー・アート・スポットをまとめてお送りする。テキサス州最大、全米でも4番目の規模を誇るメガシティであり、アメリカ南部の中枢として、多くの巨大企業が本社を置く。スポーツ、アートでも有名だし、NASAがあることでも知られ・・・というふうに、いくらでもメジャーな特徴を挙げていくことはできるのだが、いっぽうでまたアウトサイダー・アートや珍スポットにおいても全米屈指の充実ぶりという点は、あまり知られていない。今週はアメリカ版「郵便配達夫シュヴァルの理想宮」と言うベき『オレンジ・ショー』を中心に、もうひとつのヒューストンの魅力をお伝えしたい。

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Back in the ROADSIDE USA 24 KKK Museum & Redneck Shop, Laurens, SC

先週はオハイオ州ウィルバーフォースのアフロ・アメリカン・ミュージアムを紹介したが、今週はサウスカロライナ州ローレンスという小さな町にある『クー・クルックス・クラン・ミュージアム&レッドネック・ショップ』。クー・クルックス・クラン・ミュージアム=KKKについては説明の必要がないだろうが、レッドネックとは南部の強い日差しの下、農場などで働く白人の赤く日焼けした首筋、という意味でつけられた、保守的な白人貧困層を指す言葉。ようするに人種差別の象徴でもあるKKKとレッドネックをあわせたミュージアム兼ショップで、ロードサイドUSAの取材にあたっていろいろ調べていたときに探し当て、でもいちおう21世紀のアメリカでそんなの存在できるんだろうかと半信半疑で行ってみたら、ほんとに営業中でびっくりした覚えがある。

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Back in the ROADSIDE USA 26 Weeki Wachee City of Mermaids, Weeki Wachee, FL

タンパから2時間ほどのウィキーワチーには、『シティ・オブ・マーメイド』なる、一種のプール遊園地がある。ま、大きなプールのまわりにちょとした遊戯施設やピクニック・エリアがあるだけの田舎遊園地だが、ここでは全米唯一となった「人魚の水中バレー」が見られるのだ。かつては日本でも南紀白浜や、東京の読売ランドでもやっていた水中バレーだが、いまではたぶん、世界でここシティ・オブ・マーメイドだけだろう。『シティ・オブ・マーメイド』の生みの親はニュートン・ペリー。第二次大戦中は海軍であのネイビー・シールズの潜水教官を務めたあと、当時は「人間よりワニのほうが多かった」ウィキーワチーにやってきた。ゴミだらけの水中をきれいにして、圧縮空気をホースで送って水中で呼吸しながらパフォーマンスするテクニックを磨き、美少女たちを集めて特訓。1947年10月13日に『シティ・オブ・マーメイド』を開園したのだった。

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Back in the ROADSIDE USA 28 Carhenge, Alliance, NE

ネブラスカからワイオミング、ダコタにわたる中西部一帯は、古くからバッドランズと呼びならわされる、痩せ枯れて貧しい地域だった。いまでもそのネガティブなイメージは、基本的に変わっていない。ネブラスカは、「観光」という言葉からもっとも遠い土地だ。ほぼ長方形のネブラスカの、西端の小都市スコッツブラフから80キロほど離れたアライアンス郊外にあるのが『カーヘンジ』。読んで字のごとく、イギリスの誇るストーンヘンジを、なんとクルマで再現してしまった、きわめてアメリカ的かつ20世紀的なモニュメントである。人家ひとつない平原に、にょきにょきと生えた鋼鉄の木。白くペイントされたその塊は、バッドランズへの象徴的な道標のようでもある。

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Back in the ROADSIDE USA 29 Precious Moments Chapel, Carthage, MO

どこの家(実家)にもかならずひとつはあって、ひとり暮らしを始めるときにぜったい持っていきたくない、もらっても困るバッドテイストの象徴というべきものはといえば・・・日本なら鮭を抱いた熊の木彫りとか、赤べことか? これがアメリカだと「プレシャス・モーメンツ人形」になる。赤ちゃん顔に、なぜか涙目=ティアドロップ・アイをした陶器の人形は、アメリカにおける「ザ・実家」アイテムの代表格だ。

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Back in the ROADSIDE USA 30 Glore Psychiatric Museum, St. Joseph, MO

先週に続いてミズーリ州から。カンザスシティから71号線を、プレシャスモーメンツ・パークとは反対に北上すると、1時間足らずで着くのがセントジョセフ。ポニー・エキスプレス(郵便馬車)の本拠地が残るなど、西部開拓の基地となった地域であり、歴史的建造物も数多い。セントジョセフ病院の一角にある博物館は、3フロアにわたる立派なもの。もともとミズーリ州精神衛生局で41年間勤め上げた、ジョージ・グロアという人間が独力で集めたコレクションである。中味も無味乾燥な専門資料ではなく、中世から現代にいたるまで、人間が精神病とどのように向かい合ってきたかを示す、非常に興味深い展示となっている。

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ディープ・コリアふたたび 02 釜山~光州(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)

南の玄関口といわれる駅のすぐ前のアイスクリーム屋のそのまたすぐ裏が性臭漂うチャイナタウン(かつてのロシア人街)であるが、夜とはいえ外国人女性の戸口呼び込みの4つや5つはあるものの、通行人そのものが極めて少ない。だから客はさらに少ない。中華とボルシチとシシカバブがメニューに揃っている店をのぞいても店員すら見えない。釜山に人々は少なくないが、色に呆けているやつの絶対数は極端に減った。それとも別天地で盛り上がっているのだろうか。淋しい盛り場は哀愁よりも虚しさにあふれている。「ニホンジン? チャイニーズ?」と声をあげる女たちは寒中水泳の後のようなかっこうをしている。店の奥からもれてくる音楽はユーロ系のハウスのようなもの。

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Back in the ROADSIDE USA 34 Vent Haven Museum, Fort Michell, KY

ケンタッキー州の、隣接するオハイオ州の大都市シンシナティからほど近い、フォート・ミッチェルの静かな住宅街にある一軒家。ヴェント・ヘイヴン・ミュージアムという控えめな立て札が目印だ。ヴェントとはヴェントリロキスト(ventriloquist)の略。難しそうだけど、日本語でいえば腹話術師。ヴェント・ヘイヴンは世界唯一の腹話術博物館である。母屋裏のコテージのような平屋の鍵をキュレイターに開けてもらい、一歩足を踏み入れると、そこには腹話術の人形が壁を埋めるようにずらりと並び、不気味なまでに壮観。その数およそ600体に達し、現在でも増え続けているそうで、もちろんコレクションとしても世界最大だ。

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爆安の彼岸――ABS屋で68円宇宙遊泳

本メルマガでおなじみ「八潮秘宝館」を見学に行ったとき、館主の兵頭喜貴くんが教えてくれたのがゑびすや商店/ABS卸売りセンター、通称「ABS屋」だった。足立区辰沼に本社・本店を構え、葛飾、江戸川、三郷、市川など東京外縁部に8店舗を展開するABS卸売りセンターは、百円ショップならぬ「68円ショップ」という驚異の低価格で、地元住民の日常生活を支え、テレビ番組にもしばしば取り上げられているので、ご存じの方もいるのでは。「ABS屋と水元公園があるから、このあたりに引っ越したようなもんですよ」という兵頭くんは、不覚にもABS屋を知らなかった僕を、「秘宝館の前にまずは」と、わざわざ見学に連れて行ってくれた。今週は八潮秘宝館館主・兵頭喜貴みずからが案内する、これもまた東京屈指の秘境であるABS屋探検記をお送りする。

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Back in the ROADSIDE USA 39 O.K. Corral, Tombstone, AZ

砂漠、それとも西部劇? アリゾナという単語から、どんなイメージがふくらむだろうか。西はカリフォルニア、東はニューメキシコと州境を接し、南に行けばすぐメキシコ、北東部にはネヴァダとの州境を越えてラスヴェガスがあり、北部にはグランドキャニオンというアメリカ随一の観光名所を擁する、しかしなんとなく印象の薄い州がアリゾナである。西部劇の舞台として名高いトゥーソンやトゥームストーンがあるように、アリゾナは西部開拓時代の、いわば晴れ舞台であった。カウボーイがいて、酒場があって、着飾った売春婦がいて、撃ち合いがあって・・アメリカ人にとってもアリゾナは、ドラマとノスタルジーに彩られた特別な土地だ。西部劇でおなじみの『OK牧場の決闘』も、アリゾナにはちゃんと実在する。それもトゥームストーン=墓石、という名前を冠した町に。

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Back in the ROADSIDE USA 42 Babyland General Hospital, Cleveland, GA

ミシシッピ河の東側でいちばん大きなジョージア州(南北600km、東西400km以上!)は、「気候、風土、産業、歴史等多くの類似点を有する」鹿児島と姉妹県州だそう。似てるだろうか・・・。州都アトランタから北におよそ100キロ、クリーヴランドという小さな町にあるのが『ベイビーランド・ジェネラル・ホスピタル』だ。日本ではちっとも受けなかったが、アメリカではずっと前から根強い人気を誇っている人形に、「キャベッジ・パッチ・ドール」というのがある。その名のとおりキャベッジ・パッチ=キャベツ畑から生まれたというふれこみの、かわいいというかちょっと不気味な人形だ。ちなみにアメリカでは子供に「わたし、どこから生まれたの?」と聞かれると、親がよく「キャベツ畑からよ」と言って聞かせるのだという。

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案山子X 38 鬼木棚田まつり(長崎)(写真・文 ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は長崎県東彼杵郡波佐見町鬼木郷の鬼木棚田まつりを紹介します。長崎県の中央部に位置する波佐見町は、長崎県内で唯一海に面していない町です。400年の伝統をもつ陶磁器の波佐見焼の産地であり、オシャレで使いやすい日用食器として近年注目されています。波佐見町には日本の棚田百選に選ばれた「鬼木の棚田」があります。毎年9月に「鬼木棚田まつり」が開催されており、棚田の美しい景観とユニークなかかしを見ようと多くの人が訪れます。2000年に棚田百選に認定された事をきっかけにこの祭が始まったのですが、その時はかかしの展示は無く枝豆の収穫イベント等が行われただけでした。翌年2001年に、祭に来る人に喜んでもらおうと住民の方が5体程のかかしを製作して棚田に展示したのが始まりで、その後かかしはどんどん増えていきました。今では100体以上のかかしが展示され、かかしを目当てに訪れる人も増えてきました。

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フランスわき道より道 見聞録 04 石川次郎さんを追って(写真・文:中山亜弓)

フランス行きの大きな目的のひとつは、3年前からお手伝いしていた漫画家・石川次郎さんのフランス巡回展『France Invasion』(2017年4月5日号参照)の様子を観ることでした。次郎さんはスマホもパソコンも持っていなかったので、長年、次郎さんのジンの販売をしてきたタコシェが、フランスの主催者や編集者との連絡の取り次ぎを行っていたのです。2014年に南フランスで開催され、50人以上の日本の作家を紹介したMangaro、Heta-Uma展(2014年11月12日号参照)の際に、参加者のひとりとして現地に渡った次郎さんは、設営スタッフのひとりルノ・ルプラ=トルティや、キューレーターで出版芸術集団ル・デルニエ・クリLe Dernier Criのアート・ディレクター、パキート・ボリノらと”文通”で交流を深める間、ルノの奔走によりフランスでの展示と出版の企画が具体化してゆきました。

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新連載! 石川次郎のフランス侵略日記 01(画・文:石川次郎 構成:中山亜弓)

今年6月末から8月初めにかけて短期連載した中野タコシェ・中山亜弓さんによる『フランスわき道より道 見聞録』でお伝えしたように、異端のアーティスト/漫画家・石川次郎がこの春からフランスで巡回展を開催、大きな反響を得た。次郎さんは旅のあいだずっと、詳細な日記をつけていて、それはまたひとつのアートワークでもあり、旅に慣れない中年男の愉快な冒険譚でもあった。これから隔週で全6回、手書きの日記を読み込んだ中山さんの構成による「石川次郎のフランス侵略日記」をお届けする。長いキャリアで熱烈なファンを持ちつつも、いまや日本よりもフランスのほうでリアルタイムの注目を集めはじめ、本人も日本を捨ててフランス移住を真剣に考えつつあるという石川次郎のマジックカーペット・ライド。じっくりお付き合いいただきたい!

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ディープ・コリアふたたび 09 南原~順天(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)

なくなってしまった町の中で、かつて訪れた、かもしれない場所を探すというのは多次元空間物SFではありふれたことだ。それもディープ・コリアだったのね。と思いつつ乾いた初夏の遅い午後の南原を歩いている。『プリズナーNO.6』を連想しないでもないが、とりあえず西の方向へ向かっている。東方には観光公園のようなものがある、とファンシーな観光地図に出ていた。新しいお寺でもできたのかな? という佇まいの木造新築レトロモダンというか朝鮮時代劇のセットそのものの建物が、我々の行く手に出現した。樹木は植えられてさほど時を経ていない。こんなものでもありがたく思う観光客が手を合わせに来るのだろうなあ、と思ってよく見ると、似たような建物で小型化したやつが奥にいくつも点在している。おやおや? お寺じゃないのねここらは。コテージ・ホテルだったのだ。こいつがずいぶんな広さだった。

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案山子X 40:夢コスモス園創作かかしコンテスト(京都)(写真・文 ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は京都府亀岡市夢コスモス園の創作かかしコンテストを紹介します。亀岡市は京都府の中西部に位置し、京都市や宇治市に次ぐ人口を有する都市です。戦国時代に明智光秀が丹波亀山城と城下町を築いた場所です。JR亀岡駅から3キロほどの場所にある夢コスモス園は、約4haの面積に20品種約800万本のコスモスが咲く関西有数の規模を誇るコスモス園です。コスモス園がオープンする時に、イベントをやって盛り上げていこうと創作かかしコンテストが始まりました。毎年9月下旬から10月下旬頃までの開園中に創作かかしコンテストが開催され、コスモスだけでなくかかしを楽しみに多くの人が訪れています。

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ディープ・コリアふたたび 10 順天~釜山(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)

駅前はちょっとした公園になっていてベンチだの植え込みだの、陽陰用のひさしだのがあり、老人だけではなく若者やおばさんおじさんも、くつろいでいる。順天周辺の地図はないか、と駅中に旅行案内所があったので訪ねてみた。「韓国全図はありませんか?」以前は観光公社のロビーなどに普通に置いてあった。むしろその地方の地図のほうがめずらしいものだった。というより、地域の地図の配布はほとんどなかった。それらが作られていたのは、ソウルと釜山、慶州ぐらいのものだ。さらに、我々は、大韓の様々な土地へ赴いたが、地図を求めたことはなかった。探しもしなければ使う気もなかった。端から地図といえば大韓全図しか頭になかった。あれだけあれば十分だった。だから再訪の旅にあたってもそれを使おうと考えていた。それが当然のことだと思っていたのだが、何故かどこへ行っても見当たらないのだった。

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魔都は踊る――上海ダンスホール事情(写真・文:吉井忍)

2014年に写真家・任航(レン・ハン)をインタビューしてくれた北京在住の吉井忍さん。現在も日本と中国を行ったり来たりしながら、さまざまな取材を続けている。先日、久しぶりにお会いしたら「北京も上海も、いまはダンスがすごくて!」と言うので、クラブカルチャーの話かと思いきや、年配層の社交ダンス・シーンが熱いのだと。そういえば朝から公園で踊ってるひとたちとか、いるよなあ。運動になるだけでなく、異性と触れあうことでホルモンバランス改善にも効果的と言われ、我が国でも中高年層に人気が高まりつつあるけれど、日本よりはるかに盛り上がっているという上海のダンス・シーンを覗いてきてもらった。素敵な異性との触れあい、あったんでしょうか!

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石川次郎のフランス侵略日記 04 次郎、ボルドーへ(画・文:石川次郎 構成:中山亜弓)

パリでの個展のオープニングも盛況のうちに終えた次郎は、巡回展のコーディネィターでもあるルノとともに、彼のアパルトマンのあるモンペリエに戻った。そこで、大好きなクロエさんがいるボルドーでも展示ができることにり、再会に胸が高鳴るーーー 大事な事だから「後日書く」と記されたまま、肝心な部分には触れずに、蛭子さん風の似顔絵とともにお送りする寄書、奇日記、いよいよ後半に突入です!

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石川次郎のフランス侵略日記 05 マルセイユ編(画・文:石川次郎 構成:中山亜弓)

フランス滞在も残すところあとわずか。最後の個展開催地で、思い出の地マルセイユに3年ぶりに次郎が舞い戻る!! 編集者でアートディレクターである恩人、ル・デルニエ・クリのパキート・ボリノは、次郎へのサプライズプレゼントとして作品集を制作する一方で、「(ヘルニアでも)手加減せずに俺が鍛え直してやる!」と手ぐすねひいて待っていた。しかし、次郎にとって仕事は二の次、人間活動第一! またもや新たな恋に身を焦がすのであった…。

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Back in the ROADSIDE USA 58 The Forevertron, Prairie du Sac, WI

日本で言えば三重県のように「一般的には地味なイメージだがアウトサイダー/珍スポット的には重要地域」というのが、アメリカでは「人間より牛の数のほうが多い」ウィスコンシン州にあたる。これまで3回にわたってウィスコンシンの物件を紹介してきたが、今週お連れする『ザ・フォーエヴァートロン』と、来週お見せしたい『ハウス・オン・ザ・ロック』が、実は僕が訪れたすべてのアメリカ珍スポットで、いちばんのお気に入り物件だ。

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新連載! ROADSIDE CHINA――中国珍奇遊園地紀行 01 湖北省(写真・文:関上武司)

今年1月11日配信号で紹介した『中国遊園地大図鑑』の著者・関上武司。いまも会社員生活の休みをフル活用して、中国各地の味わい深い遊園地を撮影に走り回っているという。直に会って旅のエピソードを聞いていると、メディアが報道する「野蛮で危険な大国」とはまったく別物の、リアルでフレンドリーな暮らしが見えてくる。とても書籍には収まりきらない発見や出会いの旅日記を、これから毎月書いてもらうことにした。第1回は中国の真ん中にある湖北省から!

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新連載:スナックショット(平田順一)

もうずいぶん前に、平田順一という青年と知り合った。彼は工場で働く日々を過ごしながら、お菓子のブリキ缶などを並べて叩きながら自作の歌を歌うノイズ・フォークみたいな音楽活動を続け、さらには休みを利用して地方のスナック街を歩き回り、看板などを撮影しているという。後日、その写真アルバムを見せてもらったら、フットワークがすごいし、なにより視点がおもしろい。それに、僕が撮影したスナックとずいぶんかぶってる!

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連載:スナックショット 03 北海道 後編(平田順一)

北海道には過去3回行っている。1回目は1990年で札幌と函館に行ったが、これは団体旅行のため自由行動皆無である。2回目は1998年で、この時も5日間乗り放題の「北海道フリー切符」を使用して稚内・網走・根室まで行ったが、JRの乗車距離を稼ぐあまり全部車中泊となってしまった。3回目は2003年で、往復千歳空港・札幌市内泊の格安ツアーパックを利用している。今回は4回目だが、過去3回は函館と札幌以外、ほとんど街を歩いていない。これを補完する意味で、徹底して街を歩くつもりで来ており実際に初日で7都市を歩いた。旭川のホテルでゆっくり考えようと思ったが、ビール3缶飲んだら眠ってしまった。

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スナックショット 09 茨城(平田順一)

今回のスナックショットは茨城篇、茨城といえば全国的には梅の水戸偕楽園が有名ですが、アートの好きな人には水戸芸術館の意欲的な企画展が知れ渡っていると思います。だいぶ前にエレキギターの父、寺内タケシ氏が全国の高校を回って高校生を相手に「60年ギターを弾いてひとつだけわかった、ギターは弾かなきゃ音が出ない」と語っているのをテレビで見て感銘を受けたのですが、この言葉を思い出して「とにかく歩かなきゃ出会えない、撮らなきゃ写らない」と今年の秋に茨城の写真を撮ってまわりました。今年行けなかった日立市のほかに、雰囲気が良いので数年前の写真を選んだところもありますが、現在進行形のスナックショットをご覧ください!

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テキーラ飲んでゾンビになろう!

10月10日配信の038号で、東京のゾンビ・シーンをお送りしましたが、11月3日にはメキシコシティで恒例の「ゾンビ・ウォーク」が開催されたというニュースが到来。写真を送ってくれた友人のアーティスト、モーリシー・ゴムリッキ君によれば(ワルシャワ生まれ、メキシコシティ在住のアーティスト)、これはメキシコシティの革命記念塔からソカロ広場までを練り歩く、というかゾンビ・ウォークする人気イベントで、なんと去年は参加者9806名! で、ギネスの公式世界記録に認定されたそう。当日はだいたい朝10時ごろから広場にひとが集まりはじめ、記念写真撮りあって遊んだり、だれでも無料でやってもらえるゾンビ・メイクを試したりしているうちに雰囲気が盛り上がり、午後3時ごろからウォークの開始。スタートまでのだらだら感が、メキシコっぽい!

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連載:スナックショット 11 新潟(平田順一)

どうも下町のナポレオン、平田です。北海道から東北を経て関東地方の連載を続けましたが、今回は紅葉前線に逆行して新潟篇です。ひとむかし前は「チャッラーン! 越後生まれのこんぺーでえーす!」とNTV系「笑点」の挨拶で怪気炎を上げる林家こん平師匠、そのまえはコンピューター付ブルドーザー田中角栄氏の姿が良くも悪くも越後を印象付けるものとして記憶に残ってますが、こっちは坂口安吾のように、酒場の壁やネオンサインに美を求めて歩き回りました!

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スナックショット 14 長野3+山梨(平田順一)

どうもオッサンの面を被ったカメラ女子、平田です。今回も地域ごとに撮った写真をまとめていく過程で、ここもあそこも外せないと選択に迷いました。というわけでもう1回長野県から中信地方・諏訪・伊那、中央本線と国道20号に沿って山梨県からお送りします。古くから日本海側と太平洋側を繋ぐ街道の交錯するところで、伝統的な宿場町・門前町の風情を留めつつ、街角や店の背後に上高地や八ヶ岳の山々を望む2004年から2011年にかけての記録ですが、撮影時期の新旧にかかわらず現況がどうなっているか気になります。

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スナックショット 15 神奈川(平田順一)

どうもスナック馬鹿一代、平田です。好きなトラベルエッセイの本はいくつもあってたびたび読み返しているんですが、全国各地・世界各国を旅した人の本でも、東京やその周辺について触れた文章が少なからず存在しています。わざわざ遠くへ行かなくても、東京周辺にも面白い場所はいっぱいあるよ、といった文面を追ってみると、日常の観察眼が優れているからトラベルエッセイも面白いのか、逆に旅先での体験が日常にフィードバックして東京周辺も面白くなるのか? 多分その両方の要因が混ざっているとは思いますが、足元がしっかり据わっていて、なおかつどこでも好奇心をもち続けるのは、トラベル関係なしに通常のエッセイでも成立するなと気付きました。

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畸人研究学会報告 03 奇書居くべし、醤油鯛の濃厚な世界

昨年末、新宿にあるミニコミ専門書店の模索舎で、私は奇妙な本を見つけた。『醤油鯛』と題されたその本は、よくお弁当についている、醤油が入った鯛をかたどったプラスチック製の小さな入れものについて研究した書物であった。『よくお弁当についている醤油入れのことだよな、それにしてもこんなものまで研究している人がいるんだ』と思い、本を手にとってみて驚いた。醤油鯛の本の中身はこれまで蒐集された醤油鯛を6科21属76種に分類するなど、様々な醤油を入れる魚型のプラスチック製容器の“生物図鑑”のような構成になっていたのだ。例えばナミショウユダイ科コガシラショウユダイ属薩摩醤油鯛などという、分類名がつけられている。

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連載:スナックショット 20 滋賀(平田順一)

どうも平田です。今回のスナックショットは古戦場や史跡の多い滋賀県、自分の拙い写真にも歴史の重さが滲み出ているはずです。2010年まで上野から高崎線・上越線経由で金沢へ向かう夜行列車が出ており、これをよく利用して出かけていました。「東京発金沢行」の切符ではなく、金沢→福井→米原→東京と帰ってくる「東京発東京行」の切符をJRの窓口で作成すると、乗車券・急行券などを合わせて2万円くらい、新幹線で名古屋まで往復するのと同額ですが、名古屋に行くなら夜行列車で金沢を経由しても、滋賀・岐阜・愛知・静岡には途中下車ができ、米原から切符を買い足せば京都へも安く行けて、振れ幅が大きい旅行になります。かような経緯で前回の石川・福井篇や愛知・岐阜篇と同じ時期に、上野発の夜行列車で滋賀にも行きました。

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連載:スナックショット 28 佐賀+佐世保(平田順一)

どうも平田です。北から南へ東から西へスナック街を記録して、今回から九州を巡ります。九州といえば福岡・中洲の繁華街、南に向かえばヤシの繁るマリンリゾート、西に向かえば異国の玄関口として機能した長崎の情緒ある街並み、さらには阿蘇や別府の雄大な火山や温泉をイメージしますが、今回はどれにも該当しない佐賀県と長崎県佐世保市を練り歩きます。「キサン、何ばしょっとね?」「スナックショットば、しょっとです・・・」というわけでよろしくおつきあい願います!

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スナックショット 29 長崎(平田順一)

どうも平田です。今回のスナックショットは長崎県。長崎はご存知のように江戸末期まで国内に唯一開かれていた異国文化の街ですが、長崎県内は入り組んだ海岸線に合わせるように、複雑な歴史をはらんだ街が点在しています。壱岐・対馬・平戸・五島列島のスナック事情までは及びませんが、前回の佐賀~佐世保から連続して長崎県内のスナック街を巡ってまいります。

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スナックショット 30 大分(平田順一)

どうも平田です。自分はもともと路面電車やローカル私鉄を追い求めて沿線の街を歩いており、全国のスナック街を巡る以前に九州では長崎・熊本・鹿児島の路面電車に乗って土地の風物に触れていたのですが、今回のスナックショットで取り上げる大分県は路面電車も私鉄もなく、特に行く目的もないだろうなあと看過していました。ところが2005年に河出書房新社から出た小林キユウ著「路地裏温泉へ行こう!」を読んで別府へ行きたくなり、スタンプラリーのように別府の共同浴場を巡って歩くうちに、日本一の湧出量を誇る温泉から大量の観光客を受け入れる歓楽街を生み、さらにはお色気スポットや珍スポットも生み出した温泉街の懐にはまっていきます。

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高松アンダーグラウンド 4:彫師・高松彫藤(GABOMI)

ある朝、サササとサラダをつくってくれた、「簡単でごめんよ」。彫藤(ほりふじ)さんはひとり暮らし。だいたい6時起き。愛犬の散歩で2時間しっかり歩いた後、仏壇の水を替え、一昨年この世を去った奥様に手を合わせる。「もう5~6年前にタバコはやめたんや」と言いながら、煙たそうに火をつけ仏壇にタバコをあげた。ヘビースモーカーだった奥様へお線香代わりらしい。奥様が好きだった胡蝶蘭の横で、わたしも手を合わせた。その間、彼はテキパキ朝食をつくる。

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新連載! フィールドノオト

2011年の震災のすぐあとぐらいに、これも常連の大竹伸朗さんから「油絵の具と録音機をもらったんです、それで自分にとっては、写真を撮るのと、音を録るのが同じ気がして」、ドキュメンタリーとして身近なモノ音のレコーディングを開始。大竹さんとは2012年にサウンドユニット「2」を結成して、インスタレーション作品の音響に制作協力するようになり、同時に自分でも各地に旅してはカメラとマイクでの記録を始めました。

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案山子X 02 古山のかかし祭り(栃木)/上下かかしまつり(広島)(by ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は、栃木県下野市の「古山のかかし祭り」と、案山子X第1回で紹介した「上下かかしまつり」の今年の模様を紹介します。まずは栃木県下野市下古山の「古山のかかし祭り」を紹介します。栃木県下野市(しもつけし)は栃木県の中南部に位置し、かんぴょうの生産日本一の街です。かんぴょうフェスティバルが開催されたり、「カンピくん」というかんぴょうをモチーフにしたマスコットキャラクターもいます。

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フィールドノオト06 茨城県(畠中勝)

レンタカーを走らせること40時間、1泊2日の東北取材の旅。肉体的にはこたえたが生涯忘れない旅ともなった。道中、茨城県を通過。とても美しい沼を発見した。鏡のような空色の水面には存在感たっぷりの元うなぎ店が映りこむ。その姿はまるで沼を守り続けてきた巨神のように静かに朽ち果てていた。こういった美しい場所と荒廃したものが混ざり合って生まれた新風景には、ビジュアル的な表現だけに収まりきれない、ただならぬ気配を感じさせられる。実際のところそれが音なのか匂いなのかは分からないが、不明なその何かを日本の原風景として音としても記録することにした。

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フィールドノオト07 福島県(畠中勝)

転々と寄り道を重ね、車を走らせること15時間。ようやく目的地である福島県に到着した。その晩、郡山の酒場で居合わせたお客さんの明るい話は印象的だった。「津波でいろんなものが流されてしまって、牛とか犬とか野生化してたって知ってるでしょ。飼われていたダチョウもそうなの。野良ダチョウ。牛、犬は分かるけど、いきなり目の前にダチョウが飛び出てくると、ホントびっくりするんだから」。そりゃそうだ。郡山は食事もおいしく楽しい人でいっぱいだった。その後、訪れた直接的な被災地とは何もかもが違って見えるほどに。

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フィールドノオト09 石川県~福井県(畠中勝)

病気をしても簡単には通院できない職業柄、年に数度、湯治へは行くことにしている。北陸地方を訪れたのはこの正月が初めてだ。普段、あらゆる行為が監視カメラで記録される大きな繁華街に住んでいるせいか、人気のない地域や場所に足を踏み入れると、とても開放的な気分になる。しかし一方で、記録されていない自分が、何かを必死になって記録している行為そのものは滑稽にも思える。

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案山子X 6:嘉瀬かかしまつり(佐賀)(ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は佐賀県の「嘉瀬かかしまつり」を紹介します。毎年秋に佐賀県佐賀市嘉瀬町の嘉瀬川防災ステーションで「嘉瀬かかしまつり」は開催されます。2013年に4回目の開催となり、会場には100体以上のかかしが立ち並びました。嘉瀬町では毎年秋に「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」が開催され、その期間に合わせてかかし祭りも開催されます。バルーンフェスタは嘉瀬川河川敷をメイン会場に開催される熱気球の競技大会で、大会期間中の来場者数は80万人を超える巨大フェスティバルです。地元で開催されているバルーンフェスタを盛り上げようと、嘉瀬町の住民が中心となってかかし祭りが始まりました。

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フィールドノオト10 新宿(畠中勝)

昨年の暮れから元旦にかけての新宿の音景。通りの店や町の催しは大して代わり栄えはしないが、新宿という場所柄、「そこにいる人」の入れ替えは多いように思う。キャッチの若者やオジサン、飲み屋の女の子、居酒屋前にたむろう学生、いつも決まった場所にいたようなそうでないような浮浪者たち、朝帰りのサラリーマン、そして、そんないろんな中のひとりでもある僕自身。みんなどこからやってきてどこへいくのだろう。通りすがりに録音した音源も二度ない風景画のように思えてくる。

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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 13 2014年2月(ケイタタ)

今回は原稿のスタイルを改めました。理由は正直に言います、ネタが少なくなってきたからです。今まで12回、テーマを変えてお送りしてきましたが、ネタのストックがなくなってきたのです。このままでは1年も経たずに連載終了となってしまう! そうなる前に手をうちました。えっ、ネタないのなら連載やめろ? そこをなんとかお願いします。というわけで、今回は「2月」の隙ある風景です。去ったばかりの2月をいつも自身のブログで書いているスタイルでも書いてみました。ぜひともご覧くださいませ。

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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 15 寝てる人 春(ケイタタ)

暖かくなってきましたね。寝てる人を多く見かけるようになってきましたね、というわけで今週は『寝てる人 春』。消費税8%アップとともに枚数も8%アップ!? 100枚ならぬ108枚のてんこ盛りでございます。

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フィールドノオト13 静岡県・熱海秘宝館(畠中勝)

「熱海秘宝館」は昭和55年から続く数少ない秘宝館のひとつ。収録日は全展示室に客がいるほど館内は賑わっていた。しかも来客しているのは20代と思しき女性たちばかり。これには少し驚かされた。世の中で性に対する様々な認知や許容が広がる中、古来、“秘宝”と呼ばれてきた“聖なる異物”にも、女性たちの高い関心が広まっているようだ。

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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 16 桜(ケイタタ)

さあ、旬のものをいきましょう。今週のテーマは『桜』です。この時期、ぼくは「花見」ではなく「花見見」で忙しい。つまり、花見をしている人を見るのである。桜の下の人間は隙だらけ。みなさんがこれを読む頃には大阪はすでに葉桜ですが、散りゆく桜を忍んでまいりましょう。

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フィールドノオト14 京都1(畠中勝)

日本からオオカミが絶滅し100余年。山に住むヒトの敵はその後、大繁殖した鹿、猿、猪となった。増えすぎたのはヒトなのか、それともそれら動物たちなのか。とはいえ、この地域住民を苦しめる畑荒らしの犯人を駆除すべく、京都の山中で長年猟をやってこられた猟師、増山賢一氏に同行させていただき、鹿猟の全貌を見学させてもらった。

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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 17 子ども(ケイタタ)

今週号のテーマは『子ども』。そうです、もうすぐ子どもの日。疲れた大人が見せる隙とは違った、元気があり余る故に現れる子どもの隙をぜひご覧ください。

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案山子X 9:やまくにかかしワールド(大分)前編(ai7n)

2013年秋に7回目を迎えた「やまくにかかしワールド」という名称のかかし祭りは、大分県中津市山国町で開催されています。10月27日から約1ヶ月間、山国町の観光スポットや道の駅等16ヶ所の会場に、それぞれテーマの決まったかかしが展示されました。16ヶ所の会場は広範囲に散らばっており、撮影しながら原付で急いで見て回ったのですが全ての会場を回るのに5時間位かかりました。街中いたる所にいるかかしはざっと数えただけでも1200体以上!「かかしワールド」の名前に相応しい、国内最大級のかかし祭りです。

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案山子X 10:やまくにかかしワールド(大分) 後編(ai7n)

2013年に大分県中津市山国町で開催された国内最大級のかかし祭り「やまくにかかしワールド」の後編をお送りします。今回は9~16までのポケット村、コアわらべ村、あかとんぼ広場、やすらぎ村、駅の直販村、犬王丸パーク、つや姫村、中摩殿の8ヶ所のかかしを紹介します。

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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 20 会話(ケイタタ)

今号のテーマは「会話」。会話自体がおもしろかったもの、会話の関係性がおもしろかったものを集めました。長い会話も中にはあるのですが、なかなか奇妙なのでぜひともおつきあいください。それではいってみましょう。

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フィールドノオト 18 佐世保(畠中勝)

修学旅行や家族旅行で何度か連れられてきた長崎。大人になって来るのはこれが初めてだ。滞在中はいろんな場面で地元の方々に親切にしてもらった。貿易史で重要な役割を果たした長崎港。その国際的な文化交流の歴史は、やってくる観光客たちに対しての寛容さを生み出し、住民たちの心に余裕を育んだのかもしれない。とにかく魅力的な街だった。ところで、この旅は五島列島にある離島が目的地になっている。本数の少ないフェリーを乗り継ぐ必要があるため、まずは佐世保に滞在した。離島での収録音は、次回に続き、まずはいくつか収録した佐世保のフィールドレコーディングを紹介したいと思う。佐世保駅前に横切る35号線を登り、その路地裏を散策。偶然、通りかかった幼稚園や市場近くの神社、佐世保港、旅の帰りに立ち寄った小値賀島ののどかな漁村などだ。

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フィールドノオト 19 野崎島(畠中勝)

長崎に広がる東シナ海。ここには大小合わせ1000近くもの島々があり、有人島はわずか73島。江戸中期に幕府の弾圧から逃れてきたキリシタンの村や教会が、今もひっそりと点在する。これらの島は当時からの信仰の聖地であったため、現在でもこの海域を行き交いするフェリーのデッキでは、島に向かって合掌する人々の姿が見られる。産業化していく四国の島々とは対照的に、ここでは地域の文化的理由で手つかずの島も多いようだ。中には廃村した島もある。そこでは、野生の動植物が群生し、放棄された家屋も、もはや自然に還るかのように草木や苔に飲まれ始めていた。

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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 22 フランス 前編(ケイタタ)

今号のテーマは『フランス』。仕事に休みをくっつけて2週間ほどフランスに行ってきました。何分、フランスはじめてなもので超どメジャーなところばかり行っております。都築さんのようにあまり知られていない所を紹介できればいいんですけど、まあお許しください。沢山あるので2回に分けてお送りします。

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案山子X 12:本城案山子まつり(大分)(ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は大分県日田市天瀬町本城の「本城案山子まつり」を紹介します。天ヶ瀬温泉から5キロ程の場所にある山間の小さな集落が案山子祭りの会場です。毎年彼岸花が咲く頃に開催されており、地元の農産物の販売や案山子の総選挙が開催される日もあるそうです。合楽川沿いに咲く約10万本の彼岸花を見ながら案山子祭りを楽しむ事ができるそうなのですが、私が行った時は時期が悪かったようで彼岸花が咲いておらず残念でした。

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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 23 フランス 後編(ケイタタ)

前回に続き、今回もフランス篇です。前回同様長いのですがおつきあいくださいませ。それではいってみましょう。Aller!隙アレ!

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フィールドノオト22 大阪(畠中勝)

10代の頃、大阪、京都、兵庫を、転々としていたことがある。懐かしの三都物語だ。阪急梅田駅から、河原町駅、三宮駅といった、各都市へと向かう紅い電車からは、いずれも淀川が見え、今でも大阪といえば、車窓から眺めていた景色を思い返す。住んでいた当時は、梅田にある巨大なヨドバシカメラもまだ空き地でしかなく、今となっては梅田の変わり様に何度も迷走させらている。だから、僕自身、ノスタルジックな大阪遊びが、何の変化もない淀川という、屈託のない川端を散歩することに変わった。

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フィールドノオト23 身延(写真・録音・文 畠中勝)

山野一というガロ系漫画家の自宅に通っていたことがある。他界した“ねこぢる”の元夫だ。町田にある彼のアパート、その一室には、旧型で大型のテレビが置かれており、焼酎を飲みながら、一緒にギャンブル代わりの『桃太郎電鉄』をよくやっていた。テレビの脇には“ねこぢる”の仏壇。各種ゲーム機のコントローラーやソフトが山積みで、見方によってはもはや仏壇も家具のひとつというか、棚に近い印象があった。夏場、いつものようにそこに宿泊し、昼食に彼の好物である冷麦を食った後、麦茶を飲みながら、他愛もない山野一の会話を聞いていた。

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フィールドノオト24 富士河口湖町(写真・録音・文 畠中勝)

富士山麓、本栖湖から望む富士山の姿は、千円札の裏側に描かれていることで有名だ。キャンプ地としても知られ、夏場は多くの家族連れが避暑のためやってくる。しかし都会の喧騒から逃れた場所にあるにも関わらず、花見同様、ここもスペース確保は最重要課題だ。青木ヶ原樹海はその湖周辺に広がる原始林。フィクション番組などの影響で、今や自殺スポットとして知られているが、実際、携帯電話の電波も入り、珍しい野鳥の声も聴こえるので、そんなに寂しい場所でもなかったりする。

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フィールドノオト25 新宿(写真・録音・文 畠中勝)

この夏、自宅を引っ越した。以前のアパートから500メートルほど先。かなりの近距離だ。こうした移住を新宿区内で何度も繰り返している。そして新宿は、僕にとって、今では人生で一番長い時間を過ごす街となった。ベランダからいつも眺めるビルやマンションの果てしない光景。朝な夕な、そんな街の姿を眺めながら、思い返すことがある。10年ほど前、ダイビングを楽しむため、フィジーの西に浮かぶ孤島、マタマノア島に訪れたことがある。歩いて1時間ほどで周ることのできるその島は、豊かなバリアリーフで知られている。海底探索の他にこれといって目的もなし、上陸当日にさっそく浜辺から泳いで海へ入っていった。キノコ畑のように広がるサイケデリックな珊瑚礁。これら極彩色の珊瑚たちは光合成を必要とするため、海面から光の届くおよそ20m付近の深さに多くが生息しているという。

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フィールドノオト26 文京区(写真・録音・文 畠中勝)

共同印刷の城下町として文京区には数多くの小さな町工場がある。もちろんそのほとんどは出版関連の工場で、印刷、製本、加工などを生業としている。初めてここへやってきたのは四年前。『(有)サナダ紙工』という印刷所のすぐ裏手には家賃数万円という、都内有数の破格な古いアパートが埋もれており、演劇に精を出す友人はかつてここを寝座にしていた。しかし朝な夕な、印刷所から発せられる時計仕掛けのような機械音を、引っ越し当初はおもしろがりもしていたが、長らく暮らすうち、睡眠不足に落ち入り、発狂を予見、ついに別のアパートへ移ることにした。そんな話を聞いて、面白半分、ここを訪ねてきたのだと思う。

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フィールドノオト28 上海 浦西(写真・録音・文 畠中勝)

おぼろげな中国がある。その大国は遥か昔から日本という島国に影響を与えてきた。しかし、到来したはずの文化を消化してきた日本人にとって、今となると謎の多い国のひとつが中国となり、あちら側としてもそういった謎を日本に抱いているのかもしれない。江戸時代、日本はオランダとの貿易が盛んだった。アメリカとの交流はいうまでもない。この国は、中国のみならず、諸外国の様々な文化を自国に吸収していく中で、独自に価値観を、再発見し、改良し、新たなものとして育んでいった。もはや元来あった本質とはほど遠いものも少なくない。そこが日本人のおもしろいところであり、説明しがたい独創性でもある。

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フィールドノオト30 豫園老街(写真・録音・文 畠中勝)

上海の旧市街を歩いていると、遠くから近未来的なタワーが霞んで目に入る。遠近感が崩れるほどの大きさだ。その手前ではっきり見えるのが、再開発のために取り壊されたビルや家屋。あるビルの谷間では、膨大な瓦礫が手つかずに広がっていた。トラックが出入りする様子はない。横たわるビルの屍の上を子どもたちが元気に掛けていった。遊び場になっているのだろう。昭和30年代の東京もまた、こうした静かな工事現場が子どもたちの好奇心をくすぐっていた。藤子不二雄作品の背景で、主人公たちがよく集まる『空き地』もそれだ。

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アートじゃない生き物 vol.2(写真・文:若井響子)

東京の日常からひととき飛び出したくて訪れたイタリアで、壁のポスターや落書きが生み出す「アートじゃない生き物」に魅せられた若井さん。短期集中連載の2回めは、クレモナからローマにいたる道中と、その収穫!

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案山子X 18:かかしロード280(青森)(写真・文:ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は青森県青森市の「かかしロード280」を紹介します。国道280号線という青森県青森市から北海道函館市を結ぶ一般国道があります。青森市羽白周辺の国道280号線沿いで、毎年9月に1ヶ月間に渡って「かかしロード280」というかかし祭りが開催されます。2014年9月初旬に撮影に行ったのですが、国道沿いには地元の方や小中学生が制作したかかしが立ち並び、黄色のかかし祭りの幟がいくつも立てられていました。国道沿いにかかしが立っているだけではなく、小学生が書いたかかし俳句の展示や、このお祭りの為に制作された棟方志功の巨大かかしねぶた等青森らしいかかしもあり見応えがありました。

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ホノルル旅日記4:なにはともあれジェリーズに

ハワイには長年にわたるヒッピー文化が根づいていて、それはコミューンというかたちを取ったり、サーフィンと融け合ったり、音楽に反映されたり、現代のハワイアン・カルチャーに静かに浸透している気がする。そういうレイドバックした雰囲気が漂う場所が、ハワイの中でも僕の大好きなところ。今回ご紹介する『Jelly’s』はハワイに行くたびにかならず寄ってしまう、いちばん大切な店のひとつだ。ガイドブックには、めったに紹介されていないと思うけど。『Jelly’s』はユーズド・レコード、CD、DVD、ブック、コミックの専門店。ホノルルのはずれとパールシティの2店舗を、オアフ島に持っている。

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フィールドオノト 32 小泉牧場(写真・録音・文 畠中勝)

飼ってるペットに話しかけている人をよく見かける。猟師だとバカ息子を叱る親父風だし、女性であれば赤ちゃん言葉になる。動物にどこまで言葉が通じているのか分からないが、感覚機能の優れた生き物である以上、思ったより言葉以上の何かを感じとっているのかもしれない。震災の当時も、そんな動物たちが予知できない地震や、目に見えない放射能に対してどういった反応をするのか興味があった。だから、動物園や牧場に何度も足を運んでいた。練馬区にある小泉牧場もその折にやってきた。しかし、今回は動物の生態を探るというより、単純にこの牧場のサウンドスケープを記録するためだ。

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フィールドノオト 33 女風呂(文・畠中勝)

瞑想しながらゆったり湯船に浸かる人もいるだろうし、本を読みながら、音楽を聴きながら、スマートフォンが身近な現代では、ジップロックに入れたスマートフォンで、廃人さながらゲームに没頭する人もいる。中には半身浴をしながら、うどんやカレーを食べることが生活習慣化している人もいるようだ。いずれにせよ、パーソナルスペースとしてのバスタイムは、日本人にとって、とても重要であることに違いはない。 今回、知人の女性たちにレコーダーを渡し、彼女たちの神秘的なバスタイムを録音していただいた。そして、それらの音源を編集し、独創的な女風呂の世界を構成した。

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ジワジワ来る関西奇行 03 ナイト・オブ・ザ・リビング堺東(写真・文 吉村智樹)

これといった景勝地もなく、知名度に反して観光収入の少なさが問題視され続けた大阪市が、たとえなんらかの誤解であってもそれでツーリストが増えたなら喜ばしいことだ。しかし「ミナミ=大阪の原風景」と呼ぶにふさわしい時代はもう終わったと認めざるを得ないだろう。いまのミナミは、大阪らしい街、ではなく、訪れた人たちのために商人たちが大阪キャラを演じるナニワーランドへと姿を変えた。ゆえに、かつて上田正樹と有山淳司が名盤『ぼちぼちいこか』で歌った「梅田からナンバまで」「なつかしの道頓堀」のようなエレジーでブルージーな街を期待してやってくると、期待はずれで肩を落とすことになるやもしれない。「あやしくて、チープで、いなたくてB級で、でもどこか憎めないあの頃の大阪ムードを味わいたい。でもミナミは残念ながら想像していた街ではなくなっていた」。そんな方には、ミナミからさらに南へ、南海「難波」駅から高野線に乗って12分の「堺東」駅で下車することをお勧めする。そこにはガラパゴス諸島のように生態系が温存された大阪がある。

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フィールドノオト35 軍国酒場 2(録音・写真・文:畠中勝)

『軍国酒場』へやってくると、陽子さんは店の奥でタライを配備していた。こちらにまだ気付いていない。店の扉は古い民家によくある引き戸なので、どうしてもガラガラ音が鳴り響く。しかし彼女の耳は、雨漏りから発せられる、もっと小さなしずくの音を拾うことに集中しているようだった。ミツバチが花を飛んでまわるように、タライをせっせとあちこち運ぶ、彼女の様子をしばらく眺めることにする。しばらくするとこちらに気付き、ハッとした顔で「一名入隊!!」と陽子さん。この店で、「いらっしゃい」という意味だ。昨夜もここへ飲みに来たが、微笑んでいる彼女をみていると、こちらも自然に顔がほころび、改めて、入隊した喜びがわく。

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案山子X 23:かみのやま温泉全国かかし祭(山形)(写真・文 ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は山形県上山市のかみのやま温泉全国かかし祭を紹介します。上山市は山形県の南東部に位置した街で、江戸時代には上山藩の城下町や羽州街道の宿場町として栄えました。現在は温泉地「かみのやま温泉」として有名です。かかし祭の会場である上山市民公園は、山形新幹線かみのやま温泉駅から約1キロ程の場所にあります。毎年9月下旬に1週間に渡ってお祭りが開催され、2014年に訪れた際には500体以上のかかしが展示されていました。2013年にはかみのやま温泉 開湯555年を記念して555体のかかしが展示されたそうです。上山明新館高等学校の前身である農業高校の学生が、学校行事で田んぼや畑にかかしを立てたのがかかし祭の始まり。

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エロパイプのけむり(写真・文:{さや鼻})

UFOおじさん景山八郎から神霊歌手・青樹亜依、宇川直宏まで異常なミックスのグループ展『スピリチュアルからこんにちは』にあわせて、7月19日に福山・鞆の津ミュージアムでトークをやらせてもらった。ずいぶんたくさんのかたに参加していただき感謝感激だったが、トークから少したってそのうちのひとりから、「あのあと尾道に寄って、おもしろいおっちゃんと遭遇しました!」と報告をいただいた。レポートの主である{さや鼻}さんは大阪在住。Facebookのメッセージに続いて更新されたブログを読ませてもらうと、めちゃくちゃおもしろい! 鞆の津ミュージアムのスタッフに見せると、「隣町みたいなものなのに、全然知らなかった!」と唖然。

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新連載! 地図にない街 釜ヶ崎 Vol.1 「あいりんセンター」(文:水野阿修羅 写真:日下慶太)

お久しぶりです。ケイタタこと日下慶太です。新連載始まりました。前の連載(『隙ある風景 ROADSIDERS’ remix』)が終ってなんだか1年近くが経ってしまいました。「新連載を始めねば、始めねば」というプレッシャーからようやく開放されて、この文章を書いている気分はサイコー! 今回の連載のテーマは「釜ヶ崎」。文章が水野阿修羅さん、写真がぼくです。阿修羅さんとの出会いは「釜ヶ崎ツアー」であった。毎年お盆の時期に行われる釜ヶ崎夏祭りにあわせて特別に釜ヶ崎のツアーが催されるのだ。阿修羅さんはもう釜ヶ崎には30年以上住んでいる。釜ヶ崎の生き字引だ。

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案山子X 27 東村町かかし祭り(広島)(写真・文:ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は広島県福山市の東村町かかし祭りを紹介します。広島県の東端に位置し、広島市の次に大きな都市である福山市。 福山市の西南に位置する東村町では毎年12月の第1日曜日に、とてもユニークで歴史のある「東村町かかし祭り」が開催されています。1946年(昭和21年)に始まったこのお祭りは2014年に69回目を迎えました。終戦直後ですさんでいる人々の心を和らげようと企画され、農作物を守るかかしへの感謝の気持と豊作を祈願する気持を込めて祭が始まりました。現在では地域のコミュニケーションの役割も担っており、子どもからお年寄りまでかかし作りや祭を通して交流を持てる場になっています。

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セーヌ川にアングラは流れる――マダム・マキコのパリ悪妻日記 vol.02 乱れ寿司の夜(写真・画・文:田中麻記子)

連載開始が今年3月18日、今回が2回めという超不定期!、でもどうしても読みたかった『セーヌ川にアングラは流れる』を、久しぶりにお届けする。パリ在住の田中麻記子さんはバリバリの現代美術でもなく、伝統的な洋画でもなく、なんともフワフワした、可愛らしさと怖さが混じりあって、そこにあの世感をふりかけたような、不思議な絵を描く不思議な画家だ。その麻記子さんの「夜のトラベローグ」。どんなに詳しいガイドブックにもぜったい出てこない、パリの深い水底を見せてくれる。で、今夜はどこに?

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フィールド・オブ・案山子ドリームス

11月に福岡に行ったとき、案山子による「24時間ソフトボール大会」があると聞いて、僕も見学に駆けつけた。車を出してくれた友人夫婦と3人で興奮して写真を撮っていると、ひとりの中年男性がぶらぶら歩いてきて、おもむろにiPadを出すと撮影開始。話しかけてみると「今朝テレビでやってたから見に来た」という近在の方で、「ここもいいけど、こっから30分ぐらい行ったところに、もっとすごいのがあるから」と親切に教えてくれた。

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案山子X 29:宮地岳のかかし村(熊本)(写真・文 ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は熊本県天草市宮地岳町のかかし村を紹介します。熊本県宇土半島の南西にある、上島・下島を主島とした110余の島々である天草諸島。天草四郎の故郷であり、キリシタンとゆかりの深い島としても知られています。天草市下島の中央に位置する宮地岳町(みやじだけ)では、毎年春になるとのどかな田舎の風景の中に、人間そっくりのかかし達が立ち並ぶ「かかし村」が出現します。2015年は「祭」「運動会」「昔の農作業の風景」をテーマに、230体のかかしが立ち並びました。年々来場者が増え続け、初日の開村式(かかしまつり)には2500人以上が来場、期間中にトータル2万人以上が訪れる人気スポットとなっています。

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さいはて日記帳 vol.02 水のさいはて(写真・文:金原みわ)

先月から始まった金原みわの好評新連載『さいはて日記帳』。今回は淀川の川縁で出会った人間模様を書いてくれました。ホームレス、路上生活者・・・その言い方はさまざまですが、好奇心で近づくのを差別と取る人もいるでしょう。ですが、これから読んでもらう記事はむしろその対極にある、最良のリスペクトであると思います。「一瞬で消えて行く邂逅を残したい」という金原さんの思いに応え、ここに掲載させていただきます。

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社会主義の亡霊に出会う旅(写真・文:茅野裕城子)

「旅する小説家」というより、「小説を書く旅人」といったほうが当たってるかもしれない茅野裕城子さん。古い友人なのだけれど、1990年代は北京に長く住んでいたし、ニューヨークやハワイにいたこともあったし、この数年は顔を合わせるたびにクリミア半島のタタール人の街を訪ねたとか、青海省からチベット鉄道でラサまで行ってきたとか、新疆ウィグルのカシュガルから帰ってきたばかりとか、羨ましすぎる旅の話ばかり聞かされて、「なら書いてよ」となったのが今回のキルギス紀行。いっぷう変わったトラベルでもあり、タイムトラベルでもある中央アジアの小さな国で過ごした日々。ほかのどの場所ともちがう、その空気感を楽しんでいただけたら幸いである。

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ジワジワ来る関西奇行 08 スター・ウオーズ オオワダの覚醒(写真・文 吉村智樹)

「御寿司 美奈吉」と染め抜かれたシンプルな暖簾。こていで飾らない造りの店構え。一見して「ご近所にあるとうれしい、普通の、おいしい寿司がいただけるお店」というイメージ。もちろんその印象は間違いではない。僕はこれまで2度、こちらで握りとネギトロの細巻きをいただいたが、口のなかでしゃりがほろっとやさしくほどける食感がたまらない、確かな技術と庶民性を兼ね備えた、ほっとする味のお寿司だった。とはいえこの連載で、おいしいという理由だけでお店を紹介するはずがない。実はこの「美奈吉」は、決して派手な外観ではなく、目立つ場所に立地していないにもかかわらず、全国から注文が相継ぐ穴場の人気店なのだ。その理由は、おいしさだけではなく、お寿司でデコレーションケーキをつくってくれるから。

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Back in the ROADSIDE USA 02 The Heidelberg Project, Detroit

先週号から始まった、僕らにとっていちばん近くて遠い国でもあるアメリカを見直すために、『ROADSIDE USA』の特選物件を、本には載せられなかった写真を大幅に加えて紹介し直す新連載。2回目の今週はミシガン州デトロイトから。自動車産業の不振から長く不況に苦しみ、おかげでドナルド・トランプ候補への支持者が増えてもいる「モーターシティ」(「モータウン」のレーベル名もここから由来)。その荒廃した住宅街に花開く、原色のアウトサイダー・アート環境にお連れする! アメリカの大都市では、ダウンタウンの裏側にいつも貧困層の住宅街が広がっている。崩れかけた家屋と、雑草だらけの空き地と、錆びついた車と、なにをするでもなくたむろする黒人の男たちだけが目につくアーバン・ゲットーである。GMやフォードの高層ビルがそびえるデトロイトのダウンタウンの東側、荒れ果てた住宅街のただ中に、鮮やかな色彩とオブジェの堆積が異様なパワーを放射する、わずか1ブロックの別天地がある。名高いハイデルバーグ・プロジェクトだ。

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さいはて日記帳 vol.04 夢の国のつくりかた(写真・文:金原みわ)

公式ではないキャラクター。ニセモン・パチモンと呼ばれる、非公式キャラクターが好きだ。街に溢れるニセモノ達は、街のおじさん&おばさんの独自のフィルターを通ることで、なんとも言えない愛しい味わいを持つようになる。そのギラギラと光る歪みをみていると、誰でもアマチュアアーティストになり得る才能を持っているのでは、とさえ思ってしまう。勿論、苦労してオリジナルを産み出した製作者にとってはたまったもんじゃないかもしれない。けれども、ニセモノができるということは人気が出ているということであり、広く認知されているという証拠でもある。対象が愛されているからこその二次創作。悪意がなく商業的に使用されないのであれば、誰が何を描いたって良いではないか、と時に思ったりする。そんなニセモノキャラクターの中でも、今回はずっと前から気になっていた場所を訪れていた。詳細は書かないが、その作品は、広島県のとある河川敷に存在している。

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Back in the ROADSIDE USA 11 BibleWalk, Mansfield

オハイオ中部の田舎町マンスフィールドのお話。1970年代の初めごろ、リチャード・ダイアモンド牧師と妻のアルウィルダは、地元の人々に「ヒッピー教会」と揶揄される小さな教会を切り盛りしていた。ジョージア州アトランタに旅行したときのこと、ふたりはなんの気なしにロウ人形館に立ち寄ってみた。歴代大統領や有名人のロウ人形を眺めていると、最後にイエス・キリストが昇天する場面が登場した。気がついてみればふたりの目からは涙がこぼれ、自然に跪いているのだった。「神の偉業を讃えるロウ人形館を作りなさい」と、ダイアモンド牧師と妻のこころに、そのとき神が語りかけてきたのだった。

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Back in the ROADSIDE USA 15 Cowboy Boots Fenceposts, Miles City, MT

ニューヨークやシリコンバレーの新興億万長者のあいだでは、モンタナやワイオミングに牧場を持つのが流行になっているらしい。日本で言えば沖縄の海を見おろす高台に家を持つ、みたいな感じ? 規模こそ違え、行かないけど自慢できるところはいっしょだ。さほどモンタナからワイオミングにかけてのカウボーイ・カントリーは、アメリカ人にとって特別の感情を喚起させる土地である。ラテン語の「山の多い」という意味から生まれたモンタナは、大きさがほぼ日本と同じなのに、人口わずか90万人。全米でも4番目に広い州であり、別名を「ビッグスカイ・カントリー」というように、大自然にものすごく恵まれたステートだ。映画『モンタナの風に吹かれて』や『リバー・ランズ・スルー・イット』で、その美しい風景を堪能した方も多かろう。

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Back in the ROADSIDE USA 17 Harold's New York Deli, Edison, NJ

クラブ文化が花盛りだったころ、ニューヨークでは「ブリッジ&トンネル・ピープル」なんて言葉が流行った。週末だけ、おめかししてトンネルや橋を渡ってニューヨークに遊びに来てる「お洒落を気取った田舎者」の意味で、そんな差別用語に長いこと苦しめられてきたのがニュージャージーだ。ニューヨークのとなりにありながら、東京人が言う「チバラキ」的なイモ扱いに耐えてきたニュージャージー。アメリカ全州の中で、面積が46番目なのに人口は9番目。つまり全米でいちばん人口密度が高いところだし、ニックネームは「ガーデンステート」なのに、どこへ行っても目につくのは工場と安普請の建て売り住宅と高速道路ばかり(ほんとはけっこう自然にも恵まれてるんですが)。

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Back in the ROADSIDE USA 20 Porter Sculpture Park, Montrose, SD

メディカル・ミュージアムがあるスーフォールズから西へ40キロほど、見渡すかぎり牧草地が広がる州間高速90号線を走っていると、突然あらわれる巨大な獣の頭部。高さ20mあまり、鉄板を溶接したその作品の重量は25トンにおよぶという。急いで次の出口で高速を降り、空に伸びた角を目印に砂利道を走っていくと、ポーター・スカルプチャー・パークの入口が見えてきた。「美術を習ったことはない」という独学の彫刻家ウェイン・ポーターが、独力で築き上げたこのユニークな彫刻公園。入場料を徴収する小屋から出てきた作家本人が、広い野原をいっしょに歩きながら、緑の上に点々と散らばる作品をひとつずつ解説してくれる。

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Back in the ROADSIDE USA 23 The National Afro-American Museum and Cultural Center, Wilberforce, OH

いちおう人種差別というものはなくなっているはずのアメリカで、このところの警察と黒人との衝突に見られるような、そしてトランプ大統領が火に油を注いでいるような、隠されてきた人種差別の根深さに驚いたひとも多いのではないだろうか。オハイオ周南西部の小さな町ウィルバーフォースは、アメリカの奴隷解放史に重要な位置を占める場所で、1856年にはすでにウィルバーフォース大学という、プロテスタント系の黒人教育のための大学が開校している。コールマン・ホーキンス、ベン・ウェブスター、べニー・カーターなど、幾多のジャズ・ミュージシャンを生んでいることでも有名だが、構内に誕生したアフロ・アメリカン・ミュージアムは、奴隷貿易時代から現在にいたるアメリカ黒人の歴史を俯瞰できる、珍しい展示研究機関である。

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『中国遊園地大図鑑・中部編』、早くもリリース!

今年1月11日配信号で紹介したばかりの、珍スポ・ハンター関上武司さんによる中国遊園地大図鑑 北部編』。それから2ヶ月弱でもう、新刊『中部編』が発売されてしまった。前回書いたように、ふだんは「中小企業のサラリーマン」として働きながら、休みだけを使って取材に駆け巡る日々。この正月も「香港、マカオ、広東省、貴州省、湖南省、湖北省、江西省、浙江省、江蘇省、上海市を9日間で巡るという、かつてない超ハードな日程」をこなしたそうだが、さっそくその成果がまとまったということでもある。

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Back in the ROADSIDE USA 31 Salvation Mountain, Niland, CA

始めるときにはまるで全体像がつかめていなかったのが、最初に劇的な「出会い」があって、それからの取材の広がりをいきなり確信する、そういうキックスタート的な出会いがずいぶんあった。『TOKYO STYLE』のときはそれが美大生兄弟が住む木造アパートだったし、『珍日本紀行』のときは三重県鳥羽の秘宝館だった。そして『ROADSIDE USA』ではカリフォルニア・モハベ砂漠の片隅にある「サルべーション・マウンテン」で、その出会いが8年近くにおよぶアメリカ合衆国50州をめぐる旅の原動力になったのだった。こんなふうに生きている人間がいるのに、自分もやらないでどうする、という。今週は僕にとってアメリカでいちばん大切な場所のひとつ、サルべーション・マウンテンにお連れする。

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案山子X 36:山田のかかし村まつり(宮崎)(写真・文 ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。 今回は宮崎県都城市山田町の山田のかかし村まつりを紹介します。宮崎市と鹿児島市のほぼ中央に位置する都城市は、宮崎県内第2の人口を擁する主要都市です。温暖な気候と雄大な自然に恵まれており農業や畜産が盛んです。都城市の中心市街地から12キロ程の場所にある山田町は、町のシンボルがかかしです。多くの人に自然豊かで農業が盛んな山田町を知ってもらおうと「かかし村構想」が立ち上がり、童謡「案山子」の「山田の中の 一本足の案山子」という歌詞から着想を得て、田畑を守るかかしを町のシンボルとして町おこしを始めました。かかし村構想の一環として、毎年9月頃に町の中心部にある一堂ヶ丘公園で「山田のかかし村まつり」が開催されます。出店や催し物も多く、夜になると花火も打ち上げられる大きなお祭りで、市内外から約1万人が訪れます。お祭りの一大イベントであるかかしフェスティバルは2015年で23回目を迎えました。

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Back in the ROADSIDE USA 36 Big Easel, Goodland, KS

ヴィンセント・ヴァン・ゴッホがアルルで7枚の『ひまわり』を描いたのは1888年から1889年のこと。そのうち1枚は第2次大戦の芦屋市大空襲で焼けてしまったが、現存する6枚のうち1枚が西新宿の損保ジャパン東郷青児美術館にあることはよく知られている……が、画面が約10×7mという巨大な『ひまわり』がカンザス州にあることは、あまり知られていない。カナダ生まれのアーティスト、キャメロン・クロス(Cameron Cross)が「ビッグ・イーゼル」と呼ばれるシリーズの制作を始めたのは1998年のこと。

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Back in the ROADSIDE USA 37 Museum of Funeral History, Houston, TX

テキサス州ヒューストンのダウンタウンから北に20数キロ、国際空港を過ぎた少し先の新興住宅地に立派な建物を構えるのが『ナショナル・ミュージアム・オヴ・フューネラル・ヒストリー』。葬儀に携わる人材を育成する学校が運営する、おそらくアメリカ随一の葬儀博物館だ。広々とした館内には開拓時代から現代に至るまでの、アメリカ文化における死の受容のありかたをめぐる、非常に興味深い展示が常設されている。馬が引いていたころから、アラスカで使われていたソリ、会葬者が棺といっしょに乗れるバスなど、さまざまなスタイルの霊柩車(日本のもちゃんとある)。

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案山子X 37:山田の里かかし祭り(鹿児島)(写真・文 ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は鹿児島県姶良市の山田の里かかし祭りを紹介します。姶良市は鹿児島県の中心に位置しており、鹿児島市と隣接しベッドタウンとして発展しています。JR姶良駅から10キロ程の場所にある姶良市下名周辺の山田地区では毎年9月にかかし祭りが開催されており、2015年に22回目を迎えました。山田の里かかし祭りは平成6年にスタートしました。当時の局長さんが、童謡「案山子」の「山田の中の 一本足の案山子」という歌詞から発想を得て、町の過疎が進行して人口が減っていく中かかしを作って人口を増やしてみようと思い立ったのが始まりです。かかし祭りは地域の交流の場であり、町の活性化をはかり外部から多くの人に来てほしいという気持が込められています。

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Back in the ROADSIDE USA 40 Grotto of the Redemption, West Bend, IA

グロットとはふつう、人工的に作られた洞窟を指す。よくヨーロッパの古い教会や王宮庭園、聖地などで見かけるが、アイオワ州中部の小さな町、ウェストベンドの住宅街のただ中に、世界最大のグロットがあるとは驚きだ。しばしば「世界で八番目の不思議」とも称される(ほんとか!?)グロット・オブ・ザ・リデンプション=「贖罪の洞窟」は、コンクリートの土台に水晶やらメノウやら、ありとあらゆる宝石・貴石を埋め込んで作られた、壮麗かつビザールな巨大建造物。住宅地の一区画を丸々占めるその威容は、年間10万人以上が見学に訪れるというのも納得の迫力だ。もちろん一カ所に集められた宝石・貴石の量としても世界最大で、その価値だけで時価400万ドル以上になるという。

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フランスわき道より道 見聞録 03 ピエール・ラ・ポリスの展示を観にエクスへ寄り道(写真・文:中山亜弓)

ピエール・ラ・ポリス(Pierre La Police)は、レジデンツやバンクシーのように生年月日も本名も不祥のフランスのアーティストで、現代美術、コミック、アニメ、挿絵…と幾つものジャンルにまたがり活動をしていますが、いずれの作品も、念入りな不条理に満ちています。公式サイトによれば、1980年代の終わりから100部に満たない自主制作のコピー本を、パリの書店Un Regard Moderneで販売し、作品を発表しはじめており、30年ほどのキャリアを持つ作家であることがわかります。その活動初期、89/90年に、ピエール・ラ・ポリスがコピー誌で発表した3人のヒーローもの『フォンゴーとテミステクル兄弟』(Fongor et des frères Thémistecle)のコミックは現在も進行中の物語で、紙の書籍のみならず、iPhoneやiPadで見る電子書籍にも対応した1ページ1コマ形式で描かれた最新シリーズ『地獄の実務家』(LES PRATICIENS DE L’INFERNAL)の第2巻が今年の3月に刊行されたのに合わせて、南フランスのエクス=アン=プロヴァンス(略称エクス)でシリーズの原画展が開催されました。

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Back in the ROADSIDE USA 45 Neon Museum and Boneyard, Las Vegas, NV

訪れる観光客が年間3000万人以上、ホテルの部屋数12万室以上、大きさで競うなら世界の巨大ホテル・ベスト20のうち18までがラスヴェガスに集中している。たった60年かそこらの歴史で、世界に類のない欲望都市に成長したラスヴェガスの建築様式を象徴しているのが、ネオンであることに異論を挟む人はいないだろう。超高層ビルがニューヨークの建築を象徴するように、ラスヴェガスはネオンの街なのである。いや、あったというべきだろうか。近年の激しい巨大ホテル・ラッシュで、古きよきラスヴェガスを輝かせてきたカジノ・ホテルや飲食店のネオンは次々に姿を消していっている。地球上の、ほかのどこにも見ることのできない、そんな見事な光の芸術をなんとか救おうと、非営利団体として設立されたのがネオン・ミュージアムだ。

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Back in the ROADSIDE USA 46 The Dumas Brothel, Butte, MT

ドイツよりも広く、ほぼ日本と同じ面積なのに、わずか100万人ほどの人口というモンタナ。アラスカ、テキサス、カリフォルニアに続く、4番目に大きな州である。人口は44番目だけど・・・。19世紀末に全米最大の銀の採掘地となり、1930年代には銅の最大の産地となったビュートは、モンタナでもっともカラフルな歴史に彩られた町だ。アイルランド人、ポーランド人、イタリア人、スラブ人、中国人・・世界中から一攫千金を夢見てやってきた男たちのために、ビュートには無数の酒場と、当時全米最大の規模を誇る赤線地帯も擁していた。

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Back in the ROADSIDE USA 47 American Police Hall of Fame and Museum, Miami, FL

全米でいちばん、もしかしたら世界でいちばん変人が集まる場所、それがフロリダである。泥棒、変質者、 神秘主義者、サーカスの芸人、UFO信者、アウトサイダー・アーティスト、引退したフリークス、サーファー、宇宙飛行士、単なる老人と、下半身のお楽しみへの期待で爆発しそうな大学生・・・だれもが太陽と海と、ワニの住む湿地帯へと押し寄せる。そうして20世紀のはじめに、わずか人口900人の漁村だったマイアミは、いまや全米屈指の大都市となった。マイアミは美しく、危険な都市ということになっている。

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Back in the ROADSIDE USA 48 Potter's Wax Museum, St. Augustine, FL

アメリカ最大のカーレース「デイトナ500」と、春休み(スプリングブレイク)に全米からお楽しみを求めてやってくる大学生たちで有名なデイトナ・ビーチから、大西洋岸を州間高速1号線に沿って北上すると、セント・オーガスティンという町があらわれる。アメリカ人以外にはあまり知られていないが、1513年にスペイン人ポンス・デ・レオンが上陸したこの場所は、アメリカ合衆国史上もっとも古い居留地であり、町全体が歴史観光地となっている。スペイン時代の城郭や要塞などまっとうな史跡も多いが、そこはフロリダ。ビザール・スポットにも事欠かない。メインストリート(と言っても3、4ブロックのエリアだが)にある『ポターズ・ワックス・ミュージアム』は1949年開館、ウソかマコトか「アメリカ最古のロウ人形館」を自称する。

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Back in the ROADSIDE USA 49 South of the Border, Dillon, SC

まちがいなくサウスキャロライナでいちばん有名で、いちばんキッチュな観光名所。ニューヨークやシカゴなどの寒い地域から、常夏のフロリダへ向かう人々が利用する州間高速95号線。ノースキャロライナの州境を越えたとたんに、高さ70メートルはあろうかという巨大なタワーが目に入る。原色にぎらぎら光るソンブレロを被ったこの「南部のエッフェル塔」が見えたら、そこがもう『サウス・オブ・ザ・ボーダー=SOB』だ。ガソリンスタンド、レストラン、お土産屋、遊園地、モーテル、ゲームセンター・・・とにかく、ないものはないというSOBは、楽しく気楽で醜い、いわば究極のサービスエリアであり、ロング・ドライブの貴重なオアシス。

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Back in the ROADSIDE USA 51 Magic Forest, Lake George, NY

いちどマンハッタンを離れ、高層ビルなど影も形もない、自然にあふれた「田舎としてのニューヨーク・ステート」を巡ってみると、そこには世界の流行の発信地として君臨するニューヨークとはまったく正反対の、キッチュでのどかな風景がだらだらと広がっている。こういう、ゆる~いニューヨークも、またいい。マンハッタンから州間高速87号線を北上していくルート沿いで、もっとも有名な観光地は、4時間ほどのドライブで着くレイク・ジョージ。東京から富士五湖へという感じだろうか。湖のまわりには瀟洒な別荘と、下品なお土産屋や安普請モーテル群が入り混じって、なかなか楽しい雰囲気。ロウ人形館もあれば、いまだ全米で唯一、興業を続ける「馬のダイビング」がウリの遊園地『マジック・フォレスト』もあったりする。

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石川次郎のフランス侵略日記 03 Jiro、パリ侵略!!(画・文:石川次郎 構成:中山亜弓)

アラフィフにして巡回展のためにフランスに渡った石川次郎が、モンペリエでの展示を終えて、いよいよパリを目指します。すでに読者はお気づきかと思いますが、英語もフランス語も覚束ない無名のアーティストが1人で、どのようにフランスのオルタナティブアートの世界に斬り込んでゆくのか…現地のギャラリーやアーティストたちとどのような交渉や交流をしたのか…といった情報は一切出てきません。これは、日本に絶望し、フランス移住を夢見る1アーティストの独り言、内なる旅の記録です。蛭子さん風似顔絵とともにお届けします。

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Back in the ROADSIDE USA 57 Museum of Woodcarving, Shell Lake, WI

ウィスコンシン州北部、その名のとおりシェル湖に面した人口1,000人ちょっとの小さな町がシェルレイク。そのハイウェイ63号線沿いに、倉庫のような外観をさらすミュージアムが『ミュージアム・オブ・ウッドカーヴィング』。地元の教師だったジョセフ・バータが独力で作り上げた、「ひとりの手による世界最大の木彫コレクション」である。建築材としてポピュラーなツーバイフォーの角材をつなぎ合わせた塊から彫りだされた、等身大の木彫作品が100余体、さらにミニチュア版が400体。「ひとりの手で彫り出された世界最大の木彫コレクション」だという。

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おら青森さ来ただ――吉幾三コレクションミュージアム

津軽半島の根元に広がる五所川原市。太宰治の故郷・金木で有名だし、津軽三味線の祖・秋元仁太郎も金木出身。大阪城を模した自邸を建て、出ては落ちてもめげずに挑戦を繰り返した泡沫候補の星・羽柴誠三秀吉も金木出身。そしてもうひとり、忘れてならない五所川原の有名人が吉幾三である。五所川原駅の西側に広がる旧市街はいま再開発の真っ最中。真新しいビルとシャッター商店街が入り交じる荒涼とした風情だ。中心部にそびえる巨大な建物が『立佞武多(たちねぷた)の館』。五所川原の夏祭りを象徴する、高さ最大20メートルという巨大な山車を収めた観光施設で、そのすぐそばで寄り添うように営業中なのが『吉幾三コレクションミュージアム(Y.C.M)』。ちなみに五所川原立佞武多のテーマ曲も、吉幾三によるものだ。

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Back in the ROADSIDE USA 59 The House on the Rock, Spring Green, WI

ウィスコンシン州スプリンググリーンは、フランク・ロイド・ライトのアトリエ、タリエセンがあることで、建築ファンにはよく知られた土地である。地元で不動産業を営むかたわら建築デザインも手がけていたアレックス・ジョーダンは、友人らとともにタリエセンにライトをたずね、自分のデザインを見せたが、ライトの「あんたには才能がない」という非情な一言とともに、図面をつき返されてしまう。恥をかかされ、復讐を誓ったアレックスは、タリエセンを見下ろす小高い丘を手に入れ、ライトの建築に対する壮大なパロディ建築を建てようと決心した。その遺志を継いだ息子ジョーダン・ジュニアが1940年代はじめから本格的な建設に着手し、59年に一般公開されたのが「ハウス・オン・ザ・ロック」。しかしハウスは単なるパロディにとどまることなく、ジュニアの手で思いがけないスケールへと増殖していった。

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フィールドノオト 02 女木島(by 畠中勝)

大竹伸朗作品『女根』に音響を設置するため女木島へやってきた。自然環境が豊かな島で多くの植物が密生する。中でも島の所々でみられる巨大な椰子は、植物園でもお目にかかれないほどの存在感があった。『女根』を取り巻く環境を知るため、空き時間を見つけては、周辺を探索していった。

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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 14 撮る人(ケイタタ)

9日の日曜日は大阪オフ会でした。いやあ、濃かったです。翌日、もうへろへろで有給休暇とってしまいましたもの。とはいえ読者の方々の生な感想をいただき元気になりました。「ネタ切れにもめげずがんばってね」とのありがたいエール。というわけで、がんばっていきましょう。今回は『撮る人』です。

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フィールドノオト21 あきる野市(畠中勝)

都心から一時間ほど電車を乗り継ぐと、都内有数の水田地帯、秋留台地へたどり着く。田園風景は地方に浮かべるイメージのひとつだが、実際は、地方においても都市化の影に、こういった風景も珍しくなっている。田舎っぽい田舎、日本らしい日本、そういったイメージは、この国では歴史とともに様変わりしていく。水田は横田基地に近いため、低空飛行していく軍用機を五分おきに見た。静寂な夜の田んぼに地鳴りのように轟く重低音は、自然愛好家が聴き惚れる、心安らぐサウンドイメージとはほど遠いものがあるだろう。囀るものを掻き消す風景、異質なものによって作られていく未知の風景。これらはまぎれもない今の日本の風景であり、サウンドスケープでもある。

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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 25(最終回)BEST 100(写真・文 ケイタタ)

今号は「BEST100」。今までの締めくくりとしてのテーマを選びました。連載が始まってちょうど1年。なんとかがんばってきたのですが、しばらく充電させてもらいます。まあ、ネタ切れですよ、ネタ切れ! もともと1年を目標で原稿を書いていました。目標が達成できたので満足です。またネタが集まれば投稿させていただきたいです。しかし! 『隙ある風景』ではない、また新たな切り口の新連載も準備中です。というわけでちょいとお待ちくださいね。それでは行ってみましょう『隙ある風景 BEST 100』

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フィールドノオト29 上海〜蘇州(録音、文、写真 畠中勝)

上海に外灘(ワイタン)という地区がある。名の由来は『外国人の河岸』と聞く。ゆるやかに上海を縦断する黄浦江、その西岸約1キロばかりの街のことだ。租界時代に作られた西洋式高層建築物は今もその姿を留めており、まるで欧州にある都市のひとつを、地表ごと運んできたかのような奇妙な世界観だ。ゴシック様式の大聖堂を始め、各国のメガバンク、軒並みには、レストラン、ホテル、ファッションブランドの旗艦店。『外国人の河岸』と呼ばれるように、ここだけを見ると、もはや中国文化はまるで感じられないアミューズメント感がある。杭州にパリに似せた広廈天都城という街があるが、活気を別とするならそれに近い印象だ。一軒のラウンジバーへ入ったが、欧米人、インド人、アラブ系の客で賑わい、知的な印象の中国人の店員以外には、黄色人種はほとんど見られなかった。

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案山子X 17:信政卓雄さん、君田かかしまつり、城田貞夫さん(広島)(写真・文:ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。 今回は広島県3本立てで、信政卓雄さんのかかし、君田かかしまつり、城田貞夫さんのかかしを紹介します。案山子家を名乗るようになっていろんな方からかかしについての情報をいただくのですが、一番情報を提供してくれるのが広島の実家に住む両親だったりします。今回も「三次をドライブしてたらかかしがいた。天気の良い日にかかしが立っているらしいよ。」と教えてくれたので、2014年10月の晴れた日に見に行ってきました。

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フィールドノオト37 大久保~下落合(録音・写真・文 畠中勝)

6月は肌寒い日が続いた。おかげで二日酔いの頭は、はっきりし、耳や目も冴えた。いつものようにアパート近くの公園でくつろいでいると、心地よい虫の羽音がすんなり耳に入ってくる。普段、スピーカーからばかり音を耳に入れているので、定位の広い自然環境の音像には心底ほっとさせられる。静かな公園ではあるが、やはりここはTOKYO、新宿。夜空に星がみえることは少ない。それでも晴れていれば、ひとつくらいは星をみつけることができる。じっくり眺めると、瞬いていることまで分かる。リズミカルな虫の羽音と星の瞬きは、どんな因果か、原始的なシンクロナイズがある。

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案山子X 24:中新田かかしまつり(神奈川)(写真・文 ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は神奈川県海老名市中新田の「中新田かかしまつり」を紹介します。JR海老名駅隣の厚木駅から徒歩5分ほどの場所に中新田コミュニティセンターという建物があり、その近くの田んぼで毎年9月に「中新田かかしまつり」が開催されています。1993年に始まったこのお祭りは、地域活性化と住民の親睦を深める為に中新田営農組合が中心となり始まりました。最初は有志でかかし作りを始めたのですが、回数を重ねて行くうちに参加者が増えていき、思い出作りにと地元の小学生や幼稚園児もかかし作りに参加する事になりました。2014年に訪れた際には田んぼの中のあぜ道に約50体のかかしが展示されていました。

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タナベ昭和館のこと

羽田から松山行きの飛行機に乗って、空港からバスでJR松山駅へ。そこから特急宇和海に乗って1時間ちょっと過ぎたころ、トンネルを抜けた先にいきなり海が広がる。また宇和島に来れたな、としみじみ思う。大竹伸朗くんのアトリエがあるので、宇和島には1年か2年にいちどは訪れるが、全国的に宇和島はどれくらい知られているのだろうか。「フェリーで行くんですか?」と、宇和島を島だと思ってるひとにも、これまでずいぶん会ってきた。人口9万人近い宇和島には「伊達十万石の城下町」というキャッチフレーズがついているが、例によって駅前商店街の疲弊ははなはだしい。

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案山子X 26:山田のかかしコンテスト(高知)(写真・文 ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は高知県香美市土佐山田町の山田のかかしコンテストを紹介します。香美市土佐山田町は高知県の中東部に位置し、伝統工芸品・土佐打刃物発祥の地として知られています。毎年10月中旬の土日に「刃物まつり」が開催され、土佐打刃物の展示即売会、無料刃物研ぎ、伝統工芸士による鍛造体験教室等が行なわれています。様々な出店やイベントも開催され、多くの来場者で賑わっています。この刃物まつりのイベントとして開催されているのが「山田のかかしコンテスト」。2014年に24回目を迎えました。土佐打刃物は包丁やナイフだけではなく農業に使う鎌や鍬等も作っている事から、農業のシンボルでもあるかかしのコンテストを開催する事になったそうです。

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ジワジワ来る関西奇行 06 高槻オール・ザット・ジャズ!(写真・文 吉村智樹)

東京にお住いの方が、もしなんらかの事情で大阪へ転居しなければならなくなったならば、僕は高槻市からスタートしてみることをお勧めする。というのも高槻市街は、関東の「住みたい街ランキング」で例年トップに輝く人気の「吉祥寺」にひじょうによく似ているからだ。東京の人が、良くも悪くも濃厚で香辛料たっぷりな大阪市内でいきなり暮らし始めてしまうと、ハマれば病みつきだが、そうでなければアレルギーを引き起こす可能性がある。そうならぬためにも吉祥寺に似た高槻市街でじょじょに身体を大阪に慣らし(これを“阪身浴”という)、次第にディープ&キッチュな大阪市内へと駒を進めてゆくのがよいかと思う。

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案山子X 31:深川かかしコンクール(東京)(写真・文:ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。いつも自然豊かな場所に佇む田舎のかかしばかりを紹介していますが、今回は都市のかかしを紹介します。今回ご紹介するのは、東京都江東区三好にある深川資料館通り商店街で毎年開催されている「深川かかしコンクール」。2015年に18回目を迎えました。東京メトロもしくは都営地下鉄の清澄白河駅から徒歩3分ほどの場所にある深川資料館通り商店街。現代美術館へと続く800メートル程の道中に約100店の店舗があります。近くには深川江戸資料館、清澄庭園、東京都現代美術館等があり、昔ながらの商店が多く残る街です。

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ジワジワ来る関西奇行 07 伝統工芸の街・京都西陣で出会った歌う畳職人(写真・文:吉村智樹)

再婚を機に大阪から京都へ移り住んで4年になる。しかし、いまだに僕は京都についてなにも知らない。ある日、僕はキッチンのダイニングテーブルで、ぱらぱらと週刊誌のページをめくっていた。ページがちょうど藤原紀香と片岡愛之助の入籍を伝える記事に留まったところで、妻がこう言った。妻「藤原紀香ってむかし、『西陣織会館』の着物ショーのバイトをやっとったんやで」

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案山子X 32 伊平屋かかし祭り(沖縄)(写真・文:ai7n)

今回紹介するのは沖縄県島尻郡伊平屋村のかかし祭りです。沖縄県の最北端に位置する有人の離島である伊平屋村。沖縄本島から約41km離れた場所にあり、田名、前泊、我喜屋、島尻、野甫の5つの集落からなる島です。古くからの伝統行事や伝説が数多く残り、エメラルドグリーンの海に囲まれた自然豊かな島です。伊平屋村はサトウキビ、米、もずくの生産が盛んで、沖縄では石垣島についで2番目の米の産地です。30~40年前は田んぼの中に種をまいて苗を育てており、苗が育つ迄害鳥に荒らされないように人やかかしが田んぼを見守っていました。かかし祭は毎年4月下旬から5月下旬に開催。2016年に5回目を迎え、210体のかかしが田名地区の田んぼや道路沿いに立ち並びました。

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Back in the ROADSIDE USA 03 Dinosaur Gardens, Ossineke

『Dinosaur Gardens(ダイナソー・ガーデンズ』=その名のとおり「恐竜庭園」。実はアメリカ各地で恐竜は昔から人気者で、たくさんの恐竜庭園がある。博物館が監修した学術的に信頼できるものから、正確さより楽しさのほうが先に立つインディーズ系まで、もうさまざま。僕としては当然ながら、インディーズ系のほうに興味が惹かれるわけで、東海岸から西海岸までオススメの「恐竜環境」がいろいろあるけれど、こちらオシネクの恐竜庭園も、その渋~いたたずまいでかなりの好感度。しかもこちらの恐竜庭園は、ポール・ドンケというひとりの恐竜好きが、1930年代から60年代までかかって造りあげた、生粋のインディーズ・ダイナソー・パークなのだ。

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Back in the ROADSIDE USA 03 Amargosa Opera House, Death Valley Junction

ネヴァダ州ラスヴェガスから北上すること約3時間、州境からほんの10キロかそこらカリフォルニアに入った荒野に、デスヴァレー・ジャンクションがある。住人はいまや20人以下、その独特な景観で名高いデスヴァレーへの入口にあたる、信号もない小さな集落だ。1980年代までは電話局も手差し交換機で、外部からはまず局に電話して、つないでもらわないとならなかったという。夏には気温50度を記録し、冬は雪が積もることも珍しくない過酷な気候の中を走っていくと、ジャンクションという名のとおり、373号線と190号線がまじわる交差点のすぐそばに、平屋建ての地味なモーテルが見つかるだろう。コの字型をした建物の北端に、ほかより少しだけ大ぶりな一角がある。近づいてみると、強い日差しに照らされた白壁に、「アマルゴサ・オペラハウス」と書かれている。オペラハウス! デスヴァレーに? アマルゴサ・オペラハウスは、たぶん世界でいちばん奇抜な場所にある、奇妙な、そして美しい誕生秘話に彩られた手作りのオペラハウスだ。

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Back in the ROADSIDE USA 05 Bible Walk, Morgantown

ジョン・デンヴァー最大のヒット『カントリー・ロード』の歌い出しは、「オーモスト・ヘヴン ウェストヴァージニア」だった。ウェストヴァージニアは州の8割が森林という、アメリカでも有数の自然に恵まれた州だ。愛称だって「マウンテン・ステート」だし。州丸ごとがアパラチア山脈に沿ったかたちになっているので、よく言えば美しく起伏に富んでいて、物流の厳しさから産業が発達しにくかった側面もある。ワシントンDCの西側に位置し、歴史的にはもともとヴァージニア州の一部だったのだが、南北戦争の際に合衆国から離脱を宣言して南軍側に加わったヴァージニアに反対した州西部の郡が、まとまって新しい州を作ったのがウェストヴァージニア。なのでおとなりヴァージニアとは、いまでも微妙に温度差があるような気もする。

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Back in the ROADSIDE USA 06 Mel Gould's Sculpture Garden, Cheyenne

ネイティブアメリカンの言葉で「大平原」を意味するというワイオミング。アメリカでいちばん人口の少ない州で、鳥取県とほぼ同じなのだとか・・・。ロッキー山脈に抱かれた雄大な風景は、イエローストーンやグランドティトンといった国立公園でも有名だ。そろそろ夕方、きょう泊まるモーテルを探しながら、州都シャイアンからネブラスカに抜ける州間高速80号線を走っていると、北側に突然現れた奇妙な屋外彫刻群。巨大な風車が名物の強風に勢いよく回っている横では、スプリング製の台座に乗った人形がぶらんぶらん揺れている。思わず次の出口で高速を降りて、脇道を戻ってみると「ビジターズ・ウェルカム」の心強いサイン。ほっとしてクルマを乗り入れると、いきなり元気いい犬3匹に飛びかかられ、そのあとから自家製ゴルフカートみたいな乗物にまたがったおやじが出てきた。

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Back in the ROADSIDE USA 08 Shenandoah Caverns, Shenandoah

「ヴァージニアで唯一エレベーターで降りていけて、階段の昇り降りがいらない」のが売りというシェナンドー・キャヴァーンズは、1922年から公開されている観光洞窟として老舗中の老舗である。そのシェナンドー洞窟の持主であるハーグローヴ社の本業が、実はパレード用のフロート製作。アメリカ人は、もしかしたら世界でいちばんパレード好きな人種かもしれないと思うのだが、野球チームの優勝パレード、フットボールのパレード、政党の大会のパレード、大統領就任式のパレード・・・ディズニーランドで毎日見られるようなパレードが、なにかにつけてはきょうもアメリカのどこかのメインストリートで、にぎやかに繰り広げられてるわけだ。パレードの華であるフロートは、日本語では山車となるんだろうが、そこはアメリカだけにサイズがスーパー。ひとつのフロートが、大きいもので長さ30m以上。だいたいどれも25mプールぐらいはあると言ったら、そのボリューム感を想像していただけるだろうか。

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Back in the ROADSIDE USA 09 The Buckhorn Saloon & Museum, San Antonio

州としてもアメリカ有数の大物、B級珍名所の数でもアメリカ有数であるのがテキサス。とにかく大きくて、たくさんあるのが大好きというお国柄なのはご存じのとおり。テキサス随一の観光名所、名高いアラモの戦いの舞台となった砦があるサンアントニオのダウンタウンに、なんともキッチュで楽しい寄り道スポットがある。『ザ・バックホーン・サルーン&ミュージアム』は創業1881年という、サンアントニオきっての歴史を誇る「居酒屋兼博物館」。アルバート・フリードリックなる人物が最初に年に店を開いたのだが、客集めのために「仕留めたシカの角を持ってきたら、ビールかウィスキーが1杯タダ!」と宣伝したところ、あれよというまにものすごい量の角が集まってしまった。

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Back in the ROADSIDE USA 10 Bedrock City, Custer

アメリカの地図のやや左上、つまり中北部にどっしり控えるノース&サウスダコタ両州。ノースダコタはアメリカにおける「ど田舎」の代名詞的存在だが、南半分のサウスダコタのほうは東端のスーフォールズ、西端のラピッドシティを中心に、けっこう見所が少なくない。それでも州の面積が全米で17番目なのに、人口は46番目と、すばらしくスカスカな土地ではあるのだが。ラピッドシティ周辺の西側には、全米屈指の観光スポットであるマウントラシュモア(あの大統領4人の顔が、岩山に彫ってあるやつ)をはじめ、バッドランズ国立公園など有名どころがひしめいてる。「白人の聖地」であるマウントラシュモアをいだく町カスターには、「ベッドロック・シティ」という楽しいレクリエーション・パークがある。名前でわかってしまうひともいるかと思うが、ここはあの『原始家族フリントストーン』をテーマにした観光スポットであり、キャンプ場でもある。

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Back in the ROADSIDE USA 12 UFO Museum & Research Center, Roswell

アラスカ、テキサス、カリフォルニア、モンタナに次いで全米5番目の広さを誇るニューメキシコは、北のコロラドから、リオグランデ河を挟んで南のメキシコまで、大ざっぱに言えば北から南に向かってなだらかに下っていく長方形の州。4000mを越える高山から砂漠まで、たいへん変化に富む自然が楽しめる。サンタフェやタオスで、土着のアドービ(土煉瓦)を使った建築を観賞したり、プエブロ、ナバホ、アパッチ族などの生活に触れたり、アウトドア・スポーツに挑戦したりと、いろんな遊び方があるわけだが、観光地だからこそ、ヘンなロードサイド・アトラクションも選り取りみどり。中でも「UFOで町おこし」をはかるロズウェルは、マニアにとっては聖地とも言える存在だ。

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Back in the ROADSIDE USA 13 The Oasis Bordello Museum, Wallace

東海岸のボストンから西海岸のシアトルまでをノンストップで結ぶ、90号線という州間高速道路がある。1990年代初めまで、このスーパーハイウェイにたったひとつだけ信号があった。アイダホ州ウォレスという鉱山町に。いまでこそ時代に取り残されてしまったような小さな町だが、ウォレスはかつて世界最大の銀山を擁する、活気に満ちた鉱山町だった。人口1万人以上、もちろんそのほとんどがヤマで働く男たちで、最盛期には男対女の割合が200対1に達したという。そこで、売春宿の登場となる。町の一角にかつては5軒の売春宿が並び、華やかなネオンサインを競っていたが、当然ながらいまは存在しない。とはいえ最後まで営業を続けていた『オアシス・ルーム』がその扉を閉じたのは、意外にも1988年のこと。つい最近ではないか。

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Back in the ROADSIDE USA 14 The Enchanted Highway, Regent, ND

ダコタ・・「ど田舎」の代名詞のように使われる単語である。アメリカの地図を広げてみてほしい。真ん中からちょっと西側の、いちばん北にあるふたつの大きな四角。それがノース・ダコタとサウス・ダコタだ。1889年にノースとサウスに分かれたダコタ。ノースのほうは日本の約半分という広い土地に、たった65万人しか住んでいない。200万頭いるという牛のほうが、ずっと多いくらい。そういう、はっきり言って見所の多くないノース・ダコタで、いまや特選名所となっているのが『エンチャンテッド・ハイウェイ』。日本語にすれば「魅惑の道」という感じだろうか。どこまでも広がる草原を突っ切って走る舗装路の、数キロおきに現れる巨大な彫刻群。それは馬にまたがるルーズベルト大統領であったり、ブリキの家族であったり、バッタであったり、モチーフはさまざまだが、どれも共通しているのはとてつもないサイズだということ。

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Back in the ROADSIDE USA 16 The Last Train to Nowhere, Solomon, AK

ようやく東京も本格的な冬模様なので、というわけではないけれど、今週と来週の2回は北の大地アラスカからお送りします!――ベーリング海に突き出たスワード半島にあるノーム。冬の最低気温がマイナス50度を超すこともあるという、準北極圏の小さな町だ。1893年、偶然ノームにたどり着いた3人のスウェーデン人によって金鉱が発見され、ノームはアラスカ屈指のゴールドラッシュの舞台になった。ジョン・ウェインの『アラスカ魂』にそのありさまが描かれているが、最盛期には人口が2万人にまでふくれあがり、酒場だけで100軒を越えていた。1911年までに採掘された金の量は、総額6000万ドルに達するという。

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Back in the ROADSIDE USA 16 Samovar Café, Nikolaevsk, AK

先週に続いてのアラスカは、奥地に隠れたロシア村。今年3月の連載『旅のあはれ』でも少しだけ触れたけれど、たくさんの写真とともにもういちどお楽しみいただきたい。ロシアの皇帝からアメリカがアラスカを購入したのが1867年。当時は「巨大な保冷庫を買っただけ」とバカにされたが、金鉱が発見されて結果的に史上最高のバーゲンセールとなったのはご存知のとおり。アラスカはたった150年ほど前までロシアの一部だったのだ。深い森の中にロシア人たちの隠れ里があると聞いて、行ってみることにした。アンカレッジから約370キロ、キーナイ半島の突端にあるホーマーという港町から、さらに20キロほど離れたニコラエフスク。「ロシアン・ヴィレッジ」と呼ばれるこの村は、ロシア正教徒のうちでも厳格な、いわば原理主義的な一派であるオールドビリーバーが移り住む場所である。

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ジワジワ来る関西奇行 10 奈良県吉野へ。尼僧アイドル「愛$菩薩」(あいどるぼさつ)に会いに行く(写真・文 吉村智樹)

今回は関西を拠点に活躍する、ひとりの異色アイドルを紹介したい。異色アイドルといっても、昨今よく採りあげられる「地下アイドル」とは違う。地下アイドルという言葉になぞらえるなら、彼女はむしろ正反対な、極楽のありかを歌う“天上アイドル”と言えるだろう。緑豊かな奈良県吉野の山あいに二十三代に渡って受け継がれる由緒あるお寺「西迎院」。こちらの女性副住職である中村祐華さん(34歳)には、実はもうひとつの顔がある。彼女は25歳で「愛$菩薩」(あいどるぼさつ)の名でデビューし活躍する本邦唯一の“現役尼僧アイドル”なのだ。

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Back in the ROADSIDE USA 18 Sioux Empire Medical Museum, Sioux Falls, SD

1803年ジェファーソン大統領は、欧州戦争での戦費調達に苦しんでいたナポレオンから、ミシシッピ河以西、ロッキー山脈にいたる134万平方キロの広大な植民地を、わずか1500万ドルで買い取った。世に名高い「ルイジアナ購入」である。これによってアメリカ合衆国の領土は一挙に倍増したわけだが、同時に「未知の地」だった内陸部を探査し、東と西海岸をつなぐルートを早急に確立する必要に迫られることになった。

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Back in the ROADSIDE USA 19 George S. Eccles Dinosaur Garden, Ogden, UT

迫害を受けたモルモン教徒たちが苦難の道程を経て、ユタ州に移民してきたのは1847年のこと。日本では江戸末期、黒船が現れる直前という時代で、それから現在まで、たった170年ほどしか経っていない。純白の大地が見渡すかぎり広がるグレート・ソルトレイクの奇観から、パークシティに代表される全米最良のスキーリゾート、南部の広大な国立公園群まで、これほどバラエティに富んだ自然を抱く州は、他に例を見ないだろう。農業、鉱業、それに航空・軍需産業が伝統的に盛んだったユタ州だが、いまや観光ビジネスがトップに躍り出る勢い。アメリカ屈指の人気観光スポットなのだ。

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Back in the ROADSIDE USA 25 Myrtle Beach National Wax Museum, Myrtle Beach, SC

先週のKKKミュージアムに続いて、サウスカロライナ州きってのビザール観光スポットをもうひとつご紹介。マートルビーチの『ナショナル・ワックス・ミュージアム』であります。サウスカロライナ最大、というより北部の大都市からフロリダにかけての東海岸で最大のビーチリゾートであるマートルビーチは、フロリダ州デイトナビーチと並んで、アメリカの大学生のスプリングブレイク(春休み)でも有名。スプリングブレイクはただの春休みではなくて、とにかく酒とナンパに明け暮れるクレイジー・バケーションとして映画などでもおなじみ。数十キロに及ぶ砂浜の海岸線に面して、ずらりとホテルやコンドミニアムが並ぶさまは、イーストコーストの熱海というか。ワイキキを10倍大きくして、100倍下品にした感じといえば、雰囲気がわかってもらえるだろうか。

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Back in the ROADSIDE USA 32 Sanfilippo Cress Funeral Service, Madison, WI

ウィスコンシンと聞いて「あー、あそこね」と、明確なイメージが浮かぶ人は少ないだろう。チーズの生産高が全米一位という酪農州で、ビールやソーセージも有名だし、アメリカン・フットボールではグリーンベイ・パッカーズがNFLのトップチームなのだが・・・。しかし! ウィスコンシンは実のところ、珍観光名所においては質・量ともに全米有数の豊富さを誇る、超実力州だ。なにしろウィスコンシンはエド・ゲインとジェフリー・ダーマーという、アメリカ最強の連続殺人鬼を生んだ州だし、自分の名前を「エルヴィス・プレスリー」にかえた人間がふたりもいる州でもある。1972年からずっと毎日、ビッグマックを食い続けている男がいる州でもある(すでに1万5000個を突破―2001年現在)。ハーレー・ダヴィッドソンとヘアー・ドライヤーを生み、マスタードとハンバーガーと天使と蜂蜜とチーズの殿堂がある州でもある。

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Back in the ROADSIDE USA 33 Cermak Plaza, Berwyn, IL

ミシガン湖を吹き抜ける強風から「ウインディシティ」の別名を持つシカゴについては、いくつでも記事ができそうだが、アート方面でよく知られているのが、全米三大美術館に数えられるシカゴ美術館・・もそうだけど、ここで紹介したいのが、シカゴ郊外のバーウィンにある、いささかくたびれた感じのショッピングモール。ショッピングモールと現代美術というのはかなり奇妙な組み合わせに聞こえるが、サーマック・プラザはおそらくシカゴでいちばん有名な屋外インスタレーション・アートが観賞できる現代美術ギャラリーでもある。

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Back in the ROADSIDE USA 38 Cadillac Ranch, Amarillo, TX

おそらくテキサスでいちばん有名な観光名所である『キャデラック・ランチ』は、かつてのルート66に並行して走るインターステート・ハイウェイ40号線の脇に、西を向いて陽を浴びている。地元の億万長者であり、現代美術のパトロンとしても名高いスタンリー・マーシュ3世が、サンフランシスコのアーティスト・グループ、アント・ファームをアマリロに招いたのが1974年のこと。所有する広大な麦畑を見せたところ、「風にそよぐ麦穂を見ているうちに、まずフィン(ひれ)が思い浮かんだ。たなびく麦の海にジャンプするイルカのひれを。それから自動車のフィンに連想が広がった」。

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Back in the ROADSIDE USA 41 Unclaimed Baggage Center, Scottsboro, AL

唐突だけど、ハードディスクがいつかはクラッシュするように、空港で預けた荷物はいつかなくなる日が来る・・・。飛行機は無事に着陸したけれど、いくら待っても荷物が出てこない・・ロスト・バゲッジの恐怖は、旅行慣れした人ならいちどは経験する悪夢だ。ほとんどの場合は当日か翌日に見つかるけれど、中には持主不明のまま空港の片隅に取り残される、哀れな荷物もある。そんなスーツケースやもろもろの携行品が、最後にたどり着くのがここ、アラバマ州北東部の小さな町スコッツボロにあるアンクレイムド・バゲッジ・センター(UBC)だ。

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Back in the ROADSIDE USA 44 Witch Dungeon Museum, Salem, MA

東京がニューヨークなら、京都にあたるのがボストン。アメリカでもっとも古い都市を有するのがマサチューセッツ州だ。ボストンから北に約1時間、セイラムは大西洋に面する古都。『緋文字』で有名なナサニエル・ホーソンの出身地でもあるが、セイラムの名を全米に知らしめているのが『セイラム魔女裁判』である。イギリスからの移民が1626年に開いたセイラムは、アメリカで最も古い歴史を誇る町のひとつ。セイラムといえばもっと有名なのがセイラム魔女裁判と呼ばれる、1692年に起こった奇怪な事件。当時セイラムに暮らしていた女の子たちがある日突然、集団ヒステリーを起こした。のたうちまわり、絶叫し、四つん這いになって走り回りながら、少女は自分たちが魔女に取り憑かれていると主張し、魔女の名前を次々と口にするようになる。それはいずれも少女たちの身近にいる村人であった。そして13ヶ月にわたる裁判という名の魔女狩りで、156人が投獄され、19人と2匹の犬(!)が縛り首となり、ひとりが拷問のため圧死した。という、アメリカ史上に残る暗黒の出来事だ。

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案山子X 39 春日川沿いのかかし(香川)、望月かかし祭り(大分)(写真・文 ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は香川県高松市池田町春日川沿いのかかしと、大分県臼杵市望月地区のかかし祭りを紹介します。時々両親がテレビや新聞で得たかかし情報を提供してくれる事があるのですが、実家に帰った時に「NHKの火野正平さんの自転車の番組にかかしが出てたよ」と教えてくれました。手がかりは両親の記憶だけなのですが、父親がこの辺ではないか?と目星をつけてくれたのが高松市池田町でした。池田町は高松市街地から14キロほどの場所にあり、住宅地と田んぼに囲まれた穏やかな町です。現地の人に聞いたりしながら到着したのが、この春日川沿いに設置してあるかかしです。

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Back in the ROADSIDE USA 50 Museum of York County, York, SC

ノースキャロライナ州境に近い、ヨークという小さな町。3分もあれば通りすぎてしまうサイズの、なんの変哲もないカントリータウンだが、町はずれにあるヨーク郡の博物館に、実は世界でも有数のアフリカ哺乳類コレクションが眠っている。地元のサファリ愛好家が、何度もアフリカに通っては撃ち殺した動物たちが、みんな剥製になって地味な博物館を埋め尽くしているさまは壮観。キリン、アフリカゾウ、ライオン・・・とにかく数えきれない剥製動物たちが、ガラス玉の眼をきらりと光らせながら、薄暗い照明の中にたたずんでいる。書き割りジオラマの平板さとあいまって、見ようによってはかなり現代美術的でもあり。杉本博司さんに撮影してほしい・・・。

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Back in the ROADSIDE USA 54 Big is beautiful

今週のロードサイドUSA再訪はちょっと趣向を変えて、アメリカの路傍に「でかいもの」を探してみた。9月20日号ではサウスキャロライナ・ギャフニーの「ピーチョイド」=桃型給水塔を紹介した。巨大人間、巨大生物、巨大記念碑・・・ハイウェイを降りて町に乗り入れるとき、まず目に入るのが「巨大なるなにか」であることがよくある。それは町のランドマークであったり、商業施設の広告塔であったり、モチーフも目的もさまざまだが、共通しているのは事物が極端に拡大されることから生まれる、シュールな存在感だ。今回お目にかけるのは、7年間に及んだアメリカ裏街道の旅路で見つけた「無駄にでかいもの」の、ほんの一部にすぎない。

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Back in the ROADSIDE USA 55 Don Q Inn, Dodgeville, WI

アメリカにも「ハネムーン用」と名づけられたラブホテルがある。「テーマホテル」と呼ぶこともある。日本のラブホのようにポピュラーな存在でも、あからさまでもないが、考えることはやっぱり同じ。ウィスコンシン州ドッジヴィルのハイウェイそばにある『ドンQイン』は、ホテルの前に置かれた目印がわりの巨大な飛行機と、全室異なるオモシロ・インテリアで一部のマニアに知られた存在だ。

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Back in the ROADSIDE USA 56 F.A.S.T. Corporation, Sparta, WI

ウィスコンシン州スパルタという力強そうな町のはずれにある、小さな工場。ここはファイバーグラスで巨大な人形や動物を作る技術で、全米最大のシェアを誇る会社だ。F.A.S.T.は「ファイバーグラス・アニマルズ・シェイプス&トレイドマークス」の略。工場前の広い芝生には、出荷を待つ製品が並べられていて、ロードサイド・ミュージアムの趣。裏の敷地には、成型に使われてすでに用済みになった型が打ち捨てられているのだが、これまた独特な雰囲気である。胴体が半分に割られたゾウとか、頭だけの巨人とか、なんだか滅亡した古代ローマの遺跡の現代版とでもいうべき、不思議な無常感が草原にただよって物悲しい。そして見方によっては、かなり現代美術っぽくもある。

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案山子X 42 古中尾地区のかかし祭り(熊本)(写真・文 ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は熊本県葦北郡津奈木町津奈木古中尾地区のかかし祭りを紹介します。葦北郡津奈木町は熊本県の南部に位置し、温暖な気候を利用した甘夏みかんやデコポンの栽培が盛んな地域です。 八代海に面した海側ではタイやフグ等の養殖も行われています。 肥薩おれんじ鉄道の津奈木駅から約3kmの場所にある古中尾地区で、毎年9月上旬〜下旬にかけてかかし祭りが開催されています。 2000年に活性化協議会が何か地域おこしをしようと考えていた時に、田んぼに立っていた雀おどしのかかしを見て、かかし祭をする事を思いついたそうです。 最初は20体程しかいなかったかかしですが、年々増えていき、現在は80~90体ほど展示されています。

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フィールドノオト27 東京の動物(写真・録音・文 畠中勝)

2011年7月。都内では「今年はまだ蝉が鳴かないね」と、放射能による危険を危惧する話が飛び交った。その後、本格的な夏が到来。例年のように鳴き始める蝉がいたるところで見られるようになり、ほっと胸をなでおろしたり、「何だかいつもと鳴き声が違うのでは」と耳を疑ったり、新たに巡ってきた疑惑的な季節を受け入れた想いがある。

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案山子X 30:平田のかかし(広島)、君田かかしまつり2015(広島)(写真・文 ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は広島県三次市吉舎町の平田のかかしを紹介します。広島県の北部に位置する三次市吉舎町は、人口約5000人の自然豊かでのどかな町です。この町に「平田のかかし」と呼ばれるかかしスポットがあります。かかしがいる吉舎町平田地区は、現在住人が7名の山に囲まれた小さな集落です。最寄り駅であるJR備後安田駅から山の方に向かって2キロ程歩くと、かかしが出迎えてくれます。

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Back in the ROADSIDE USA 04 Goldwell Open Air Museum, Rhyolite

ラスヴェガスから北上すること約200キロ、有名なデスヴァレーの玄関口にあたる374号線から奥に入ったあたりに、ライオライトというゴーストタウンがある(ライオライトとは流紋岩の意)。ライオライトの町に入る砂利道をそろそろ進んでいくと、入口前の荒地に不思議な物体があるのに驚かない人はいないだろう。『ゴーストバスターズ』に出てきそうな、シーツを被ったお化けのような『最後の晩餐』、ピンクのボディがなまめかしい、巨大なレゴを重ねたふうの女体(身長8m近い)、そしてやはり巨大な鉄製の男と、脇にはかわいいペンギン・・・。

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Back in the ROADSIDE USA 43 Cross Garden, Prattville, GA

アラバマの2大都市モンゴメリーとバーミングハムを結ぶ、州間高速65号線に面した小さな町プラットヴィル。町はずれの丘に『クロス・ガーデン』と呼ばれるアウトサイダー・アート空間がある。今年で74歳になるW・C・ライスが1976年以来ずっと書き続け、作り続けてきた数百の十字架と、洗濯機やエアコンの廃品を使った「メッセージ・ボード」が、剥き出しの地面に林立する、なんとも過激な「作品」だ。「ユー・ウィル・ダイ!」「ヘル・イズ・ホット・ホット・ホット!」などと、素晴らしく簡潔な言葉が大地に、頭上に踊るさまは立体の現代詩のよう。

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Back in the ROADSIDE USA 52 Pinball Hall of Fame, Las Vegas, NV

今週号を書いているいま月曜の午後、点けっぱなしのテレビからラスヴェガス銃乱射事件のニュースが流れてきた。アメリカでいちばん好きな場所のひとつで、こんなにも残虐な事件が・・・。これまでこの連載ではラスヴェガス・エリアでネオン・ミュージアムや、砂漠の彫刻庭園ゴールドウェルを紹介してきた。今週は別の州のスポットを取り上げるつもりだったけれど、喪に服すラスヴェガスに哀悼の意を表して、これもラスヴェガスらしいストレンジ・ミュージアムをご覧いただきたい。紅白歌合戦の美川憲一のような奇抜すぎる衣裳とパフォーマンスで一世を風靡し、キッチュ好きのあいだでは名高い「ミスター・ラスヴェガス」とでも呼ぶべきリベラーチェのミュージアムは、ヴェガスの意外な名所である。カジノ・ホテル街を離れた住宅街であるエリアに足を伸ばし、リベラーチェ・ミュージアムを訪れる観光客は少なくないが、そのそばのショッピング・センターの一角にある『ピンボール・ホール・オヴ・フェイム』にまで足を伸ばそうという物好きはそれほど多くない。

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Back in the ROADSIDE USA 53 Enchanted Castle Studios/Natural Bridge, VA

18世紀、19世紀にはヨーロッパ人にとって、新大陸の2大名勝といえばナイアガラ瀑布とナチュラルブリッジという時代があったという。そんな老舗観光地ではあるが、ナチュラルブリッジも近年はもっと派手な後発観光地にすっかり客を取られ、寂れるいっぽうというありがちな末路を辿っていた。そこに登場したのが若きエンターテイナー兼ファイバーグラス・アーティストという珍しい肩書きを持つ男、マーク・クラインである。高校を卒業後、職も住処もなくうろついていたところをファイバーグラス工房に拾われたのが縁で、この世界に入ったというクラインは、ナチュラルブリッジに『エンチャンテッド・キャッスル』と名づけた工房を開き、アメリカ各地の遊園地やミニゴルフ場、その他さまざまな顧客のために怪獣に猛獣、ドラキュラからスーパーマンまで、ありとあらゆる立体作品をファイバーグラスで作ってきた。工房は一般に公開され、だれでも制作のプロセスを見学できるようになっていた。

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Back in the ROADSIDE USA 07 Rock City Gardens, Lookout Mountain

テネシー州南東部、ジョージア州境に近いチャタヌガ。19世紀から南部の主要工業都市だったこの都市は、名前こそエキゾチックだが、1970年あたりには全米でもっとも大気汚染のひどい都市という、ありがたくないお墨付きをもらうほどに汚れきっていた。ダウンタウンでは、昼間でも自動車のヘッドライトをつけないとならない日が年間150日以上。呼吸器系の病気発症率はアメリカ平均の3倍以上だったというから、事態は非常に深刻だったのだ。それから30年あまり、現在のチャタヌガは美しく再開発された模範都市として、全米から観光客を集めている。チャタヌガといえばグレン・ミラーの『チャタヌガ・チューチュー』を思い出す人が多いだろうが、実はチャタヌガでいちばん、というよりテネシーでいちばん、というより南部一帯でいちばんの観光名所として全米にその名を轟かせてきたのが、ルックアウト・マウンテンにある『ロック・シティ』。音楽じゃなくて岩のほうのロックです。

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Back in the ROADSIDE USA 35 Gene Cockerel’s Yard Art, Canadian, TX

ルート66上に位置するテキサス州マクリーン。人口2000人ほどの小さな町のはずれにジーン・コクレルと彼の家族が住む家がある。庭にはイエス・キリストやバッファローや宇宙人や、ダラスカウボーイズのチアガールが立っている。ジーン・コクレルが「コンクリートの彫刻」を作りはじめたのは7、8年前のこと。「毎日ハンティングやフィッシングにでかけるわけにもいかないんで」、なんとなくコンクリートで作りはじめたのが、いまでは20体以上。さらにハイウェイ沿いの丘の上には、巨大な恐竜まで設置されている。いずれも素朴なタッチと表情が楽しい。

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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