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2016年02月24日 Vol.201

art

月夜の浜の少女時代

本メルマガではおなじみの銀座ヴァニラ画廊で、今週月曜日から『沈黙する聖少女。宮トオル遺作展』が開催中である。「宮トオル」という名前を聞いて、「ああ、あの作家ね」とうなづく美術ファンが、どれくらいいるだろうか。僕も不勉強で、初めて聞く名前だった。イラストレーターから画家に転身し、亡くなるまでずっとひとりの、というか同じ顔の少女を宮トオルは描きつづけた。徳之島という南の島に生まれ育った彼の画面には、奄美大島でだれにも評価されない絵を描きつづけた田中一村の光と闇が見える気もするし、飽くことなく描いた少女の表情には、斎藤真一が描いた瞽女の静謐さが滲み出ているようにも見える。そして宮トオルの絵はだれにも似ていないし、どんなトレンドにも流派にも属していない。そういう、ひとりだけの絵を描いて彼は生き、死に、忘れられた。

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travel

旅する少女歌劇団(文:鵜飼正樹)

鵜飼正樹さんは京都文教大学で教鞭をとりつつ、見世物小屋や大衆演劇の研究を続けている研究者。僕にとっては近代日本大衆文化の師匠であり、本メルマガでも過去に「人間ポンプ」安田里美さんのことを書いてもらったりもした。その広範な研究領域のうちでも、このところ力を注いでいるのが「少女歌劇」。宝塚の成功に刺激されて日本各地に乱立、いつしか忘れ去られてしまった、儚くもユニークな大衆演劇の徒花である。今月28日から奈良の大和郡山で開かれる小さな資料にあわせ、今週は鵜飼さんによる少女歌劇オリエンテーションと、その奥に眠る闇と謎について書いていただいた。

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fashion

捨てられないTシャツ 30

ウィングス/50歳男性(レコード会社勤務)/福島県小名浜出身、父親がゼネコン系の建設会社の社員だったため、原発関係の港湾工事で小名浜・福島・東海村と引っ越しを繰り返す。いちばん長く過ごしたのは福島県。小学校高学年から高校を出るまで、いわき市の近郊だったが、震災の10キロ圏内にあり、いまはもう入れない。小学校のころからカルチャー体質というか。母親が同じ転勤族のお母さんたちと買い物に行くと、子供たちは映画館にぶち込まれていた。都合よく子供向けの映画がやっているわけではないので、『小さな恋のメロディ』から『ベンジー』まで、時間がちょうど合うものはなんでも。

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design

絶滅サイト 02「自作大腸カメラ」~「台湾軽便鉄路」(文:ハマザキカク)

先月からスタートした珍書プロデューサー・ハマザキカクさんによる新連載「絶滅危惧種のウェブサイト」。今回もまた、とてつもないワールドワイドウェブの徒花たちをご紹介いただく。気になるサイトがあったら、ぜひ飛んでみていただきたい。絶滅危惧種たちは、いつまでそこにいてくれるのか、だれにもわからないのだから。

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movie

はぐれAV劇場 11 『男女13人! 地上20メートル空中ファック』(文:大須蔵人)

今年で35年を迎えるアダルトビデオの歴史の中で、その作品の殆どが人々の記憶からも、そして物理的にも消え去ってきたということは、この連載でもたびたびお伝えしてきた。しかし、そんな消尽カルチャーであるAVの中でも、忘れられることなく人々の記憶に残りつづける作品が、少ないながら存在する。例えば、村西とおる監督の『SMぽいの好き』(クリスタル映像、1986)や、代々木忠監督の「チャネリング・ファック」シリーズ(アテナ映像)などがそれに当たるだろう。歴史に残るAVが、だいたい「珍奇」な作品であるということについては、じっくり考えてみるべき問題だと思うが、今回紹介する作品は、これら名作に勝るとも劣らないインパクトと「珍奇」さを備えた、AVにおけるニューウェーブを代表する一作だ。

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2016年02月17日 Vol.200

art

皮膚という衣装のために――八島良子の映像をめぐって

先週、東京六本木の国立新美術館では「文化庁メディア芸術祭」受賞作品展が開催されていた(2月3~14日)。1997年の設立以来、今年が19回目になるメディア芸術祭は、その名のとおり文化庁が主催する「アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門において優れた作品を顕彰するとともに、受賞作品の鑑賞機会を提供するメディア芸術の総合フェスティバル」(公式サイトより)。国内最大級のアート・デザイン系コンペであることは間違いない。しかし今年の芸術祭アート部門で、審査委員会推薦作品に選ばれながら、展示されなかった作品があった。八島良子の映像インスタレーション『Limitations』である。

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fashion

ツギハギの光と影

本メルマガではもうおなじみの神戸ファッション美術館で、1月末から『BOROの美学――野良着と現代ファッション』と題された展覧会が開催中だ(4月10日まで)。「BORO」で関西、となれば『大阪で生まれた女』・・・ではもちろんなくて、「襤褸(ぼろ)」=文字どおりボロボロになった端切れなどを繋ぎ重ねて衣服や実用の布類に仕立てた、貧しい人間たちの生活の知恵であり、サバイバル・デザインである。

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fashion

捨てられないTシャツ 29

ヘインズV/43歳男性(ウェブ制作会社経営)/石川県出身。戦中生まれの父親はもともと金沢の大学病院に勤務していたが、安保闘争で学生側に立ったため、目をつけられ居づらくなり、地方の病院を転々とすることに。ゆえに生まれは舞鶴、その次は富山と、毎年のように引っ越しを繰り返す。ようやく破門が解かれ石川県に戻れたが、金沢ではなく七尾市の、できたばかりの小さな病院に勤務することになった。七尾に引っ越したのは3歳のとき。真面目なキリスト教徒の園長がやっている、小さな幼稚園に通ったあと、地元の公立小学校に進学。本が好きで、性格も理屈っぽかったらしい。

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travel

案山子X 29:宮地岳のかかし村(熊本)(写真・文 ai7n)

こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は熊本県天草市宮地岳町のかかし村を紹介します。熊本県宇土半島の南西にある、上島・下島を主島とした110余の島々である天草諸島。天草四郎の故郷であり、キリシタンとゆかりの深い島としても知られています。天草市下島の中央に位置する宮地岳町(みやじだけ)では、毎年春になるとのどかな田舎の風景の中に、人間そっくりのかかし達が立ち並ぶ「かかし村」が出現します。2015年は「祭」「運動会」「昔の農作業の風景」をテーマに、230体のかかしが立ち並びました。年々来場者が増え続け、初日の開村式(かかしまつり)には2500人以上が来場、期間中にトータル2万人以上が訪れる人気スポットとなっています。

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2016年02月10日 Vol.199

photography

自撮りのおんな

「セルフィー」という英語すら普通に通用する時代になって、世にはさまざまな自撮り写真があふれているが、先週出会った「自撮り写真家」田岡まきえには、ひさびさに興奮させられた(いろんな意味で)。トークに来てくれた田岡さんは慎ましやかで可愛らしい奥様、という雰囲気を漂わせていたが、抱えていたポートフォリオを見せてもらうと、そこにはスケスケ・セーラー服やホタテビキニ!を着用したり、なにも着用していなかったりする田岡さんが、手にカメラのリモコンを持った「自撮り熟女グラビアモデル」になっているのだった。田岡まきえは1966年大阪生まれ。今週ちょうど50歳になったところだという。

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travel

ホワイトライト・ホワイトヒート ロシア冬紀行4 コイン式タイムマシン

ロシアの冬を駆け足で巡る最終回はロシア版・懐かしゲームセンターにお連れする。パソコンや携帯ゲームには、これまでほとんど興味を持てないままできた。ギャンブルにもハマらなかった(この仕事がすでにギャンブルだし)。でも、往年のアーケードゲーム(家庭用ではなくてゲームセンターの機械)は、その特異な造形美がすごく気になって、「ストリート・デザイン・ファイル」の一冊として『Techno Sculpture ゲームセンター美術館』という本を2001年につくったことがある(もう15年前!)。

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fashion

捨てられないTシャツ 28

モスクワ地下鉄マップ/41歳男性(映像作家)/幼少期から現在に至るまで、特に目立たない、明るすぎず暗すぎず、いたって平凡な男子。欲がないとよく言われる。自分では自己顕示欲が強いほうだと思っているが、まわりに個性の強い面々が多いため、彼らに比べたら弱いらしい。中学校時代に通っていた塾で、ひとりの先生(当時ICUの男子大学生、画家、詩人、のちに主夫、やくざ、現在は肉体労働)と仲よくなり、音楽、芸術、その他もろもろ文化や思想をプライベートで教示してもらう。

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art

アウトサイダー・キュレーター日記 11 田中拓治(写真・文:櫛野展正)

正直、こんなに寒いとは思ってもみなかった。人生で初めて訪れた北海道。「札幌時計台」や「旭山動物園」など名だたる観光名所をすっ飛ばしてやってきたのは、札幌市営地下鉄南北線の幌平橋駅。そこからビュウビュウと寒風の吹きすさぶ中、鼻水を垂らしながら向かった住宅はゴウゴウガラガラと大きな音を立てていた。風が通り抜けると、家の周囲を囲むように設置された色鮮やかな玩具が回りだす。これは、この家に住む田中拓治さんがつくったオブジェだ。昭和14年生まれの田中さんは現在76歳。十勝の河西郡芽室町で8人兄弟の4番目として生まれた。

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2016年02月03日 Vol.198

travel

ホワイトライト・ホワイトヒート ロシア冬紀行3 折れた骨の音楽

見たこともない「ビートルズ・ラブソングス」と書かれたアルバムが最前列に陳列してある。片言の英語で店主は「これ、ルーマニアでプレスされたレア盤だから」と教えてくれ、値段も手頃だったので購入。代金を払いながら「ボーン・レコードもある?」と聞くと「ん?」 しかたないので自分の胸のあたりを指さしながら「エックスレイ」と言ってみると、「お~、あるある」とペナペナのソノシートふうの数枚を、奥から引っ張り出してくれた。あぁよかった。これを探しに、真冬のロシアに来たのだから。

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fashion

捨てられないTシャツ 27

豚/34歳男性(設計事務所社長)/3人兄弟の末っ子として神戸市に生まれる。やりたいと言ったことはとりあえずやらせてくれる家風で、小学生のころからやたら習い事をしていた。英会話、ピアノ、声楽、公文、習字、サッカー、学習塾・・・、放課後はほとんど予定が入っていたから、宿題の日記には「毎日忙しい」と書いていた。ピアノだけいちばん長く中2まで続いたが、他は中1のとき、阪神大震災をきっかけにほとんど辞める(震災の思い出は、みんなが喜ぶと思って、小学校に来ていた自衛隊の避難所用のお風呂に、家から入浴剤を持って行って勝手に入れたら、こっぴどく怒られたこと)。

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travel

ジワジワ来る関西奇行 05 ビューンと飛んでく「新長田」駅前(写真・文 吉村智樹)

ジワジワ来る関西奇行、今回、訪れた場所は兵庫県神戸市長田区の「新長田」駅周辺。JR神戸線と山陽本線、神戸市営地下鉄西神・山手線と海岸線が乗り入れしたひじょうにアクセスしやすいハブ駅で、改札を出て南側には長大な商店街もあり、とても住みやすそう。にもかかわらず同じ関西人でも「新長田? 名前は知っているけれど行ったことがない」という人はけっこう多い。神戸の人気エリア「三ノ宮・元町」と「須磨」のあいだに位置しているため路線図では頻繁に目にする有名な駅なのだが、ステーションビルの大きさや街の規模に反比例してなぜか普通列車しか停車しないゆえ、車窓から眺めるだけのスルー駅になってしまっている。

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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