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深沢佳那子
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新連載! 日本性祭紀行1 伊豆稲取の男根祭り・前編〈どんつく祭り〉(写真・文:深沢佳那子)
東京ドームシティ・ギャラリーアーモで4月に開催された「アウトサイド・ジャパン展」で、奇妙な手づくりコラージュ年賀状が飾られた一角を覚えていらっしゃるだろうか。その巨大顔ハメで記念写真を撮ったひともいるはず。あの作者が深沢佳奈子である。展示会場でお話ししてみたら、深沢さんは大学院博士課程で「性器信仰」について研究していて、暇を見つけては日本各地の「男根がフィーチャーされた祭り」を訪ね歩いているという。すごく気になって写真を見せてもらったら、フィールドワークとして興味深いのと同時に、そんなビザールな祭りを屈託なく楽しんでいる地元のひとたちがたくさんのスナップ写真に写っていて、その表情がすごくいい。というわけでいきなりお願いして、深沢さんが歩いている「性器のお祭り」を連載で紹介してもらうことにした。
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日本性祭紀行2 伊豆稲取の男根祭り・後編〈おめんさん〉(写真・文:深沢佳那子)
最後のどんつく祭りが幕を閉じた翌日、2018年6月4日。伊豆稲取の観光協会でどんつく祭りのことを聞いた帰り道、わたしは稲取のオシャレなカフェに立ち寄った。そのカフェの気さくな店員さんと話しているうちにどんつく祭りの話になり、ついでに先ほど聞いたばかりの「夏祭りに出る“本来のおめん”」のことを尋ねてみた。すると、店員さんの口から衝撃的な言葉が飛び出した。「あー、夏祭りのおめんさんね、あんなん今なら準強姦罪だよね」40代の彼女はあっけらかんとそう言う。
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日本性祭紀行3 茨城県の道鏡様祭り(写真・文:深沢佳那子)
男根崇拝の祭りを巡っているという話をするとき、いつも「川崎のかなまら祭りって知ってますか?あんな祭りを巡っています」と説明する。かなまら祭りの知名度たるやすでにほぼ100%に近く、誰もがすぐに「あーあれか!」と言ってくれるから助かっている。メイン神輿のピンクの男根はTwitterやInstagramでもすっかり有名だ。しかし実際のところかなまら祭りのようなSNS映えする男根祭りばかりが男根祭りではない。田舎でひっそりと、やっている人も何だかよくわからずやっている、という男根祭りもあるのだ。茨城県の道鏡様祭りは今まで行った男根祭りの中でも特に地味で、しかし特に奇妙な祭りだった。
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日本性祭紀行4 鹿島神社の「へいさんぼう」(写真・文:深沢佳那子)
男根崇拝の祭りが開催される目的は様々であるが、その中で圧倒的に多いのが「五穀豊穣」を願う祭りである。妊娠によって膨らむ腹を稲穂の実りに重ね合わせ、男根の持つ生殖能力を田畑に授かろうという考えによるものだ。かすみがうら市牛渡地区の鹿島神社では、そういった男根によって豊作を願う御田植え神事「へいさんぼう」が毎年5月5日に行われている。このへいさんぼうは田植えの一連の流れを儀式的になぞることで豊穣を祈る、「田遊び」「御田祭り」「御田植祭」などと呼ばれる祭りのひとつだ。
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日本性祭紀行5 福井県美浜町の八朔祭り(写真・文:深沢佳那子)
八朔、というのは旧暦の8月1日のことを言う。現在では9月1日に当てられることが多く、「八朔祭り」という名の祭りは全国で開催されている。この祭りは主に稲の豊作を祈る豊穣儀礼として、稲刈りの直前であるこの時期に行われるものだ。また台風の多い時期であることから、稲にとって強敵である風よけの祭りとしても機能しているらしい。全国で行われる八朔祭りはそれぞれ様々な特徴を持つが、福井県三方郡美浜町の八朔祭りは「福井一エッチな祭り」という誘い文句で町の観光HPが大々的に宣伝している。一応伝統的な祭りなのにエッチな祭りなどという文言は少々いかがなものか…?とも思うが、なんでも男根を持った天狗が追いかけてくる祭りだという。
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日本性祭紀行6 徳島県牟岐市の姫神祭り(写真・文:深沢佳那子)
男根祭りというとまず思い浮かべるのは神奈川県川崎市の「かなまら祭り」のように大きなご神体を担ぐような祭りではないだろうか。実はああいった大きな男根を担いだり引いたりする祭りというのは、その多くが高度経済成長期以降に始まった観光客向けの祭りである。もちろんその背景には昔から行われてきた性器崇拝という信仰があるものの、大きな「ご神体」は近年作られ祀られるようになったものであることが多い。そんな観光客向けの性器崇拝祭りのひとつである姫神祭りは、徳島県牟岐市で毎年7月最終日曜日に開催される祭りだ。この祭りは昭和43年(1968年)から始まったもので、約3メートルもの高さの直立した男根を「シンボル」として船に乗せ、海上パレードを行うといった特徴を持つ。
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日本性祭紀行7 宮城県石巻市の「名振のおめつき」 (写真・文:深沢佳那子)
「名振のおめつき」は宮城県石巻市雄勝の名振地区で行われる火伏せの祭りだ。火伏せの祭りというのは、つまり火災・火事除けの祭りのことである。このおめつきは1783年にこの地で大きな火災が起きたことをきっかけに始まったものだという。男根崇拝はこれまで紹介してきたように五穀豊穣や子宝祈願の祭りによく見られるものだが、火伏せとの関係もしばしば見られる。特に福島県の南会津地方では火伏せの男根として家を建てるときに屋根裏に木彫りの男根を奉納するという習俗があるという。一般にこれらは男根の持つ呪力によって火災を除けるという信仰であると考えられている。さて、名振のおめつきが開催されるのは毎年1月24日だ。名振地区は石巻市の中でも特に海岸沿いの地域であり、真冬はとてつもない寒風が吹きすさぶ。わたしが初めておめつきを訪れたときも気温はマイナス5℃を記録し、更に雪と強風で体感温度はかつて感じたことがないほどの寒さであった。
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日本性祭紀行8 三重県美杉町の「牛蒡祭り」 (写真・文:深沢佳那子)
牛蒡祭りは三重県の美杉町という山間部で行われている祭りで、「牛蒡祭り」と書いて「ゴンボ祭り」と読む。その名の通り主役は牛蒡であり、祭り当日は山椒味と唐辛子味の味噌で和えられた牛蒡が神前に供えられるのと同時に大量に頒布され、それを求めて多くの人が訪れる。なんでも牛蒡は精力がつく野菜だからという理由らしいが、その祭りの歴史は古く1598年より伝わるという。更に三重県の無形民俗文化財にも指定されており、その民俗学的価値は折り紙付きだ。そんな由緒正しい牛蒡の祭りであるゴンボ祭りだが、噂によると祭りのクライマックスになぜか男根と女陰を模した神輿が出るらしい。牛蒡と性器の関連性について探るべく、車で7時間以上かけて美杉町へ行くこととした。
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日本性祭紀行9 新潟県長岡市の「ほだれ祭り」(写真・文:深沢佳那子)
新潟県長岡市(かつての栃尾市)下来伝地区で毎年三月第二日曜日に開催されるほだれ祭りでは、長さ2.2m、重さ600kgという数ある男根祭りの中でも特大級の男根神輿が担がれるという。そしてその上には初嫁さん、つまり新婚のお嫁さんが乗ることができる。夫婦円満や子宝を願う新婚の女性が参加することの出来る男根祭りは全国にいくつかあるが、今回はその中でも特に華やかなこの祭りを紹介しよう。現在は長岡市となったこの下来伝(しもらいでん)であるが、地元の多くの人はかつての地名「栃尾」を呼称としている。祭りが行われる広場には祠があり、そこに祀られるご神体が前述の巨大男根だ。
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日本性祭紀行10 新潟県魚沼市の「しねり弁天たたき地蔵祭り」 (写真・文:深沢佳那子)
「しねり弁天たたき地蔵祭り」という奇妙な名前の祭りが新潟県魚沼市小出町にある。 しねり弁天の「しねり」とはこの地域の言葉で「つねる」という意味で、なんでも女性の尻をつねる祭りらしい・・・・・・という噂が耳に入った。このご時世にあって女の尻をしねるとは、他の性器崇拝の祭りと比較してもかなり攻めに攻めた祭りである。女である私は「しねられる方」なので、少々気乗りしないながらも魚沼へと足を運んだ。 祭りが行われる弁天堂の近くに立つ看板にはその由来がこのように書いてある。
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BOOKS
ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)
ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。
本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。
旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。
ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)
稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。
1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!
ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)
プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。
これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。
ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)
書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい
電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。
ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)
伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!
かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。
ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)
――ラブホの夢は夜ひらく
新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!
ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)
――秘宝よ永遠に
1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!
捨てられないTシャツ
70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。
圏外編集者
編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。
ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014
こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。
独居老人スタイル
あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。
ヒップホップの詩人たち
いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。
東京右半分
2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!