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2014年12月25日 Vol.145
food & drink
酒を聴き、音を飲む—— ナジャの教え 02
地元の人間がさまざまな感情を込めて「尼」と呼び習わす兵庫県尼崎。とびきりのガラの悪さと居心地良さが渾然一体となった、ぬる〜い空気感に包まれたこの地の周縁部・塚口にひっそり店を開く驚異のワインバー・ナジャ。関西一円から東京のワイン通、料理好きまでが通いつめる、しかも旧来の気取ったフランス料理店や高級ワインバーとはまったくテイストのちがうその店の、オーナー/シェフ/ソムリエ/DJが米沢伸介さんだ。独自のセレクションのワイン、料理、そして音楽の三味一体がつくりあげる、これまで経験したことのない至福感。喉と胃と耳の幸福な乱交パーティの、寡黙なマスター・オブ・セレモニーによる『ナジャの教え』。第2夜となる今回は、「大地のエロス、海のエロス、野生のエロス」と題した、真冬の夜の官能あふれるハーモニーをお聞かせする。
design
裸眼の挑戦——若生友見とragan books
この秋に開かれた東京アートブックフェア。ドキドキクラブや公園遊具の木藤富士夫など最近のメルマガで紹介した写真家、アーティストに何人も出会うことができたが、たくさんのブースのなかで、びっくりするほどシャープというか、クレバーなデザインのジンを並べているテーブルがあった。テーマは日本だけど、扱うセンスはむしろ欧米のクールな感性が漂っていて、もしかしたら東京在住の外国人デザイナーなのかも・・・とか思いつつ、店番をしていた若い女の子に尋ねてみたら、「これ、私が作ったんです」と言われてびっくり。それも東京ですらなく「仙台でやってます」というので、「仙台市ならよく行きます、デザイン事務所とか?」と聞くと、「いえ、仙台市じゃなくて七里ヶ浜・・・知らないですよね」。「えーっ、そこでデザインのお仕事を?」「いえ、学習塾で教えながら、これ作ってるんです」と言われて絶句。それが宮城県七里ヶ浜町在住の若きグラフィック・デザイナー、若生友見(わこう・ともみ)さんなのだった。
photography
家の記憶——芦沢武仁の辺境写真紀行 02(写真・文:芦沢武仁)
世界の辺境を旅する写真家・芦沢武仁の短期集中連載・第2話。先々週のインドの旅芸人たちのルポルタージュに続き、今週はルーマニア・マラムレシュの暮らしをご紹介する。ウクライナと国境を接するルーマニア北部のトランシルヴァニア地方マラムレシュは、世界遺産に登録された木造聖堂群で知られる、豊かな伝統に支えられた美しいエリア。時間の止まったような村々を訪ね歩くうちに、人々の暮らしに魅せられた芦沢さんは、2009年から11年まで3度にわたってマラムレシュを訪れることになった・・・。
photography
写ルンです革命
先月紹介して好評を得た、木原悠介によるダクト内部写真。あれがすべて「写ルンです」で撮影されたことを、ご記憶だろうか。1986年に富士フィルムが発売した「写ルンです」は、誕生からもうすぐ30年。デジカメ、携帯全盛期の現在でも富士をはじめ、いくつかのメーカーから「レンズ付きフィルム」として販売されている。いまから30年後のデジカメがどうなってるかなんて、想像できるだろうか。USBもSDカードもそのころにはとうに消滅して、常に新しい媒体に移し続けないかぎり、30年前(つまり現在)の写真は見ることすらできないはずだ。レンズ付きフィルムはまた、世界でいちばんタフなカメラでもある。電池も充電も必要としない。モーターのような駆動系も電子回路も組み込まれていないから、どんな場所でもとにかくシャッターを押せば「写ルンです」。
2014年12月17日 Vol.144
art
生きて痛んで微笑みがえし——小松葉月のパーソナル・アート・ワールド
今年2月26日号で紹介した、川崎市岡本太郎美術館が主催する岡本太郎現代芸術賞。よくある現代美術コンペとは一味違う、コンセプトよりもエモーショナルな感性が評価された作家が多く選ばれていたが、そのなかに特別賞を受賞した小松葉月さんの『果たし状』という大作があった。一見、学校の教室のようなインスタレーション。壁には習字やお絵かきの作品が貼り込まれ、大きな黒板、それに中央に据えられた巨大な台座(玉座?)には、学校用の勉強机と椅子が据えられて、そのありとあらゆる表面に小さなニコニコマークがびっしり描き込まれている。そして机にはセーラー服に防空頭巾をかぶった作家本人が座り、開館時間のあいだじゅうずっと、机上に広げたノートや教科書に、これもびっしり、本人が「ニコちゃん」と呼ぶ、ニコニコマークを描きつづけていた。
lifestyle
ハダカのこころ、ハダカの眼 06 ケンという男(写真・文 牧瀬茜)
昭和47年。カンカンとランランが上野動物園にやってきた年に、ケンはこの世に生を受けた。生まれた場所は鹿児島だと聞いている。ケンが2歳の時に両親が離婚、彼は7つ年上の兄とともに和歌山の養護施設に預けられた。施設に連れて行かれた日のことはぼんやりと覚えている。父親の運転する緑色の車に母親と兄と自分と4人で乗っていたこと、そして、施設の入り口で車を降りて外で待っているときにバナナを食べたこと。両親とはそれっきりだ。どんな顔をしたどんな人間だったのか今も知らない。
lifestyle
かなりピンボケ 06 ぶらりピンパブ、ローカル線の旅 中央線特急・石和温泉編(写真・文 比嘉健二)
フィリピンパブはほぼ日本全国にある。こういうと信じられないというのが、まっとうな常識人だ。ところが実際は、北海道の網走から沖縄の東大東島まで、くまなく全国に存在している。ではなぜ、多くの人間に意外だと思われるのか。ひとつには「関心がない」ため。その存在に目がいかないからだろう。ピンボケのおやじ達は普通の人間が気がつかない「その存在」を発見する、ある種の「特技」を身につける。答えは店の名前(ボラカイだとか、マニラクイーンだとか)、そしてさりげなく店の外に掲げられるフィリピンの国旗。このふたつを遥か500メートル先から察知できる、「負の能力」が身につくのだ。そしてもうひとつ、フィリピンパブの存在する地域が比較的男の歓楽街、もしくはなぜこんなとこにっていう過疎に存在しているから、そこに足を踏み込まない限りわからないのだ。
travel
フィールドノオト30 豫園老街(写真・録音・文 畠中勝)
上海の旧市街を歩いていると、遠くから近未来的なタワーが霞んで目に入る。遠近感が崩れるほどの大きさだ。その手前ではっきり見えるのが、再開発のために取り壊されたビルや家屋。あるビルの谷間では、膨大な瓦礫が手つかずに広がっていた。トラックが出入りする様子はない。横たわるビルの屍の上を子どもたちが元気に掛けていった。遊び場になっているのだろう。昭和30年代の東京もまた、こうした静かな工事現場が子どもたちの好奇心をくすぐっていた。藤子不二雄作品の背景で、主人公たちがよく集まる『空き地』もそれだ。
2014年12月10日 Vol.143
photography
からだとからだと写真の関係
(前略)偏狭なこころの病気がこの国の一部をむしばみつつあるいっぽうで、いまアート・ワールドでは若い中国人アーティストたちの勢いが止まらない。現代美術の最前線でもそうだし、写真の世界でもそれは同じだ。以前にもちょっと触れた東京のアートブック・フェアで、刺青にボディピアスばりばりの女性がひとりで座っているブースがあった。聞けば台湾からの参加だという彼女が、ずらりと並べたアート・ジンのなかで、これはすごいですよと教えてくれたのが、『SON AND BITCH』と題された箱入りの写真集だった。中を開いてみると、日本のアートっぽい写真どころではないハードコアなポートレートが満載。そして作者の任航(Ren Hang=レン・ハン)はここ数年、世界各地のグループ展でその作品をよく目にする、注目の若手写真家なのだった。
photography
曲芸のタブロー——芦沢武仁の辺境写真紀行 01
自主運営ギャラリーは東京では、僕の遊び場である四谷3丁目〜新宿2丁目あたりに密集しているので、よく足を運ぶけれど、このメルマガを始めるようになってから、意外な発見があるのは、むしろメーカー・ギャラリーのほうが多かったりもする。富士山、高山植物、蒸気機関車、子供、祭り・・・あいかわらずのカメラおやじネタも多いが、ときに目を見張る高純度の作品が隠れていたりもする。年配の常連客ばかりに独占させておくには惜しすぎる、貴重な出会いが待っていたりもする。今年の9月3日号では渡辺眸の写真展『1968 新宿』を紹介したが、同じ新宿ニコンサロンでこの9月末から10月中旬にかけて開かれたのが芦沢武仁(あしざわ・たけひと)による『曲芸のタブロー』だった。
lifestyle
かなりピンボケ 05 涙のバースディ編(写真・文 比嘉健二)
ただでさえ客層の高齢化に拍車がかかり、店も客も瀕死のピンパブだが、未だにひとつだけ盛り上がるイベントがある。それがフィリピーナの誕生日を祝う「バースディイベント」なのだ。なんだ、ホステスの誕生日を祝うイベントならキャバクラだってひけをとらない、というのがごく平均的な意見だろう。このコーナーで再三語っているように、すべてが滑稽な空間であるフィリピンパブでは、残念ながら(?)それがキャバの比ではない。バースディイベントがなぜかくも特異で滑稽な空間であるかということを説明する前に、まずフィリピーナがいかに「誕生日」というものに人生のウエイトをかけているかを、解説する必要があるだろう。
movie
地上波で秘宝館が見られる日
今月いっぱいで鬼怒川秘宝殿が閉館し、ついに現役の秘宝館が熱海ひとつだけになってしまうこともあって、にわかにいろんなメディアで秘宝館の話題が見受けられる・・・遅いよ! とはいえ、ついに地上波でも(深夜枠とはいえ)秘宝館のドキュメンタリーが、それも1時間番組で放映されると聞くと、ちょっと感慨深いものもある。秘宝館と同じくらい、いまや絶滅危惧種になってしまった民放の硬派ドキュメンタリー番組のなかで、貴重な生き残り組であるフジテレビの「NONFIX」。水曜深夜2時半〜3時半(26:30〜27:30)という、ラッパーのライブみたいな時間帯ではあるものの、シリアスからサブカルまで、だれもが起きてる時間には決して放映されない種類のプログラムで、ファンのかたもけっこういらっしゃるのではないか。
2014年12月03日 Vol.142
photography
夜のコンクリート・ジャングル
公園の遊具にこころ惹かれるオトナはけっこういる。「タコ公園」とか「クジラ公園」とか、遊具の名前で通称される公園も少なくない。平日の午後、あるいは深夜に酔って帰る道すがら、ふと目にする、ひと気のない公園にうずくまるコンクリートの巨大な物体。かすかな哀愁と不気味さを漂わせながら、ただそこにあるなにか。それをずっと撮り続けているのが木藤富士夫(きとう・ふじお)だ。木藤さんの写真を最初に見たのは、けっこう前だったと思うが、それは絶滅危惧種となりつつあるデパートなどの屋上遊園地を撮影したシリーズだった。小さな自費出版の写真集に収められたそれらは、よくある廃墟写真とはちがって、まだ営業中なのにもかかわらず、ごく近い将来の廃園を予感させるような諦観が漂っていた。単なる昭和ノスタルジーとはひと味違う、明るいディストピアのようなニュアンスが画面に滲んでいた。
lifestyle
新連載! エノさんの「ドイツ落語」01(文:榎本五郎)
今年10月15日号から3週にわたって配信、多くの読者を驚かせたハンブルク・レーパーバーンの寿司屋「KAMPAI」。1965年というから東京オリンピックの翌年、いまからほぼ半世紀前にリュックひとつ担いで、シベリア鉄道でヨーロッパに渡り、波瀾万丈の年月の末に「ヨーロッパの歌舞伎町」レーパーバーンで、10人かそこらで満席の小さな小さな寿司屋を営んでいるのが名物大将・榎本五郎=通称「エノさん」だ。「エノさん一代記」を書いてくれたドイツ在住ジャーナリスト・坪井由美子さんの文章にあったように、エノさんの店には『ドイツ落語』と題された、手製本の文集が置いてある。ご本人によれば「ドイツで出会ったひとたちを主人公にした落語のようなもの」というこの一冊、僕も読ませてもらったけれど、もうとにかくおもしろい! びっくりもして、ホロリともする! でも「出版の予定なんかありません」というから、ハンブルクのKAMPAIに足を運んで、エノさんに気に入られないと、読むことすらできない。もったいなさすぎ!・・・というわけで無理やりお願いして、『ドイツ落語』全30編のなかから数話を、本メルマガで掲載させていただくことになった。
travel
案山子X 16:あったかビレッジかかし祭り(秋田)(文、写真:ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は秋田県にかほ市樋目野の「あったかビレッジかかし祭り」を紹介します。にかほ市は秋田県南西部に位置している街で、秋田市からは海沿いの国道7号線を走り約67キロ。西側には日本海があり、東側には東北第2の高さを誇る「鳥海山」があります。鳥海山は海岸からそびえるように立ち上がる独立峰で、標高2236メートルの活火山です。にかほ市の海岸沿いを走るJR羽越本線金浦駅から約3キロの場所に、「あったかビレッジかかし祭り」の会場である樋目野があります。大規模なかかし祭りの場合、様々なサイトで正確な情報が出ているので事前に詳細を知る事ができ迷う事無く現地に到着できるのですが、田舎で開催されるかかし祭りや少人数で開催されるかかし祭りの場合、正確な住所や問い合わせ先がわからない事があります。この「あったかビレッジかかし祭り」もネットでの情報が少なく、大体の住所と開催時期を頼りに現地に行ってみました。
lifestyle
老遊女 06 デッドボールで没収試合! 後編(文:中山美里 写真:谷口雅彦)
『地雷! レベルの低さ日本一』がキャッチコピーの風俗店、『デッドボール』の後編、いきます! ちなみに地雷とは、前回説明したが、ここでもう一度おさらい。デブ、ブス、ババアという、当たったら痛い風俗嬢のこと。そもそもは、写真の加工技術が進化してパネマジ(パネルマジック)全盛の昨今、風俗嬢は実際に会ってみないと、本物の容姿がどの程度なのか分からなくなっている。そのため、「やってきたら爆弾女だった…」なんてことはざら。実際にプレイがスタートしたら、性格の問題で満足できないというレベルではなく、苦痛な時間を味わされたという残念なときもある。そんな容姿や性格が地獄な女性のことを、ネットや風俗愛好家たちの間では地雷と呼んでいるのである。さて、そんな痛い風俗嬢ばかりのデッドボール…。インタビューを受けてくれたのは、オビスポさん、65歳である。名前の由来は巨人と日本ハムに在籍していたウィルフィン・オビスポ選手である。
travel
フィールドノオト29 上海〜蘇州(録音、文、写真 畠中勝)
上海に外灘(ワイタン)という地区がある。名の由来は『外国人の河岸』と聞く。ゆるやかに上海を縦断する黄浦江、その西岸約1キロばかりの街のことだ。租界時代に作られた西洋式高層建築物は今もその姿を留めており、まるで欧州にある都市のひとつを、地表ごと運んできたかのような奇妙な世界観だ。ゴシック様式の大聖堂を始め、各国のメガバンク、軒並みには、レストラン、ホテル、ファッションブランドの旗艦店。『外国人の河岸』と呼ばれるように、ここだけを見ると、もはや中国文化はまるで感じられないアミューズメント感がある。杭州にパリに似せた広廈天都城という街があるが、活気を別とするならそれに近い印象だ。一軒のラウンジバーへ入ったが、欧米人、インド人、アラブ系の客で賑わい、知的な印象の中国人の店員以外には、黄色人種はほとんど見られなかった。
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ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。
本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。
旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。
ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)
稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。
1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!
ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)
プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。
これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。
ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)
書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい
電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。
ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)
伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!
かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。
ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)
――ラブホの夢は夜ひらく
新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!
ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)
――秘宝よ永遠に
1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!
捨てられないTシャツ
70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。
圏外編集者
編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。
ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014
こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。
独居老人スタイル
あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。
ヒップホップの詩人たち
いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。
東京右半分
2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!