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福岡郊外に隠された匠の理想宮・・ 鏝絵美術館探訪記
「鏝絵」・・・「ウナギ絵」じゃありません、これで「こて絵」と読む。「鏝」とは左官屋さんが漆喰を塗るのに使う、あのコテ。したがって「こて絵」とは漆喰を素材にして、こてで描かれたレリーフ様の半立体美術作品である。 こて絵といえばまっさきに名前が挙がるのが、「伊豆の長八」こと入江長八。幕末から明治にかけて活躍した稀代のこて絵師であり、伊豆松崎には石山修武の設計になる『伊豆の長八美術館』があるので、訪れた経験のある方も多かろう。
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いちばん近くて遠い街 釜山逍遙 前編
それまでも急ぎ旅の途中で立ち寄ることはあったけれど、初めてきちんと釜山を体験することができたのは2006年の春だった。芸術新潮誌の韓国特集のために、福岡からフェリーで釜山入り、帰りは飛行機で成田に帰ってくるというルートで、1週間ほど滞在、ひとりでひたすら街を歩き回った。当時使いはじめたばかりのデジカメと、木製の大型カメラを改造した手づくり針穴写真機を背負って。
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南国地獄をあとにして・・・
地獄はおのれの内にある・・のかもしれないが、外にもあるんだな! というわけで先週日曜の深夜、浅草キッド(水道橋博士・玉袋筋太郎)のおふたりと、江口ともみさん(つまみ枝豆夫人でもありますね)という豪華メンバーとともに、タイの地獄寺&特選珍スポットを巡った『別冊アサ秘ジャーナル』、ご覧いただけたでしょうか。深夜とはいえ、あの内容で90分とは・・プロデューサーも賭けに出ましたねえ。あれ全部、2泊3日の弾丸ツアーで撮影しちゃったのだから、テレビってほんとに大変です。
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圏外の街角から:福岡県大牟田市
長らく扉を閉ざしていた『富士』を改装して、ライブスペース『大牟田ふじ』として甦らせたのが、ディレクターを務める竹永省吾さんだ。僕は去年の秋に大牟田を訪れて知り合ったばかりなのだが、こんな寂れた街にライブハウス! という驚き以上に、オープン当初から灰野敬二、渋谷慶一郎、さらには海外からバリバリのハードコア、ノイズ系アーティストを呼んで、地元のバンドとカップリングさせるという無謀というか、東京でもなかなかない先鋭的なブッキングに度肝を抜かれたのだった。
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マイ・フェバリット・オールド・バンコク 1
先月はこのメルマガで、タイの田舎の地獄庭園や個性的なミュージアムをご紹介した。タイ好きな方ならご存じだろうが、いまバンコクは、かつての東京のような激変の最中にある。というわけで古き良き東南アジアの都市風景を形成してきた「バンコクらしいバンコク」がどんどん消えていくいま、ショッピングやグルメやエステはちょっと置いといて、フィフティーズからセヴンティーズあたりの風情を残す、貴重な現存スポットを歩いてみてはいかがだろうか。
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圏外の街角から:神戸市稲荷市場
三ノ宮からJR神戸線の下り電車に乗ると、数分で着いてしまうのが神戸駅。名前が示唆するように、東海道線の終点駅であり、山陽本線の始点駅である神戸駅は、かつて神戸の鉄道網の中心だった。しかし時は過ぎ・・神戸駅を南下したあたりにあった兵庫港から、神戸港に物流の中心が移ったのと同じく、ひとの流れが三ノ宮側に傾いてしまった現在、東京駅や大阪駅のような感覚で神戸駅に初めて降り立つものは、だれしもが「ここが神戸の中心!?」と絶句するはずだ。
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みちのく路の特殊美術喫茶・ブルボン
福島県いわき市・・県内最大の都市であり、東北全体でも仙台に次いで第2の人口を誇っているが、いかんせん知名度の低さはいなめない。先週号の編集後記でも触れたように、去年の大震災では死者310名、家屋の全半壊が数万軒にのぼる甚大な被害を出しながら、石巻などのようにマスコミに取り上げられる機会もほとんどないまま。福島第一、第二原発から30~70キロ圏内にあることで、なかなか観光客も戻ってこない。スパリゾートハワイアンズも、ようやく2月に全面再開したのに。 そのように地味なイメージを払拭できないいわき市ではあるが、珍スポット・ハンターたちには広く知られた名所がある。市内中心部、平(たいら)1丁目交差点近くにある『喫茶ブルボン』だ。
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バンコク猟盤日記
来週はお盆! 夏休み! メルマガに休みはないけど・・・。というわけで、来週はタイで夏休みを過ごそうというひともいるでしょう。羨ましい・・・。 ご飯にショッピングにエステ、いろんな計画を立てているみなさまに、今回はタイのレコード屋めぐりをおすすめする「バンコク猟盤日記」。タイ語が読めなくても、タイの音楽にまったくなじみがなくても、ジャケットを見ているだけでうっとりしてしまう、タイ製アナログ盤の魅力をご紹介しよう。僕がタイに通いはじめたのは、いまから10年ぐらい前。そして2004年から数年間は、年に何回もバンコクに通う「ハマリ状態」に。
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圏外の街角から:鳥取市若桜通り
鳥取駅から県庁に向かって北に真っ直ぐのびる本通り(若桜通りとも)が、鳥取市のメインストリート。その両側と、左右にのびる商店街が、かつては鳥取市の買い物需要を一手に引き受けていた。本通りあたりの街並みは、実は近現代建築史の分野ではよく知られた存在なのだという。鳥取市は太平洋戦争最中の1943年に、死者1210人を出した大地震と、戦後間もない1952年の「鳥取火災」と呼ばれる、市内全世帯の約半数を焼失した大惨事によって、市内中心部の歴史的な街並みをほとんど失ってしまった。
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札幌迷走紀行・前編 ある秘宝館の最後
北海道秘宝館が危ないらしいと聞いたのは、もう数年前のこと。毎日開館していたのが、いつのまにか週末だけになり、動いていた展示物は、メンテナンスがまったくされないために徐々に動きを止めて、そのうちに冬期は閉館、ほかの季節も「基本は週末開館だが、行ってみないとわからない(ウェブサイトもなし)」という状態に陥っていった。館を任されていた女館長さんは、札幌市内のスナックのママも兼ねていて、そっちのほうが忙しくて秘宝館まで手が回らない、という状態でもあった。そしてこの秋。久しぶりに札幌を訪れてみると、「秘宝館が廃墟になってしまっている」という悲しい情報が。
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金いろの夜――別府湯けむりアート紀行
いつまでも若くはいられない。老いた都市から都市へと旅していると、人間の歳のとりかたにいろいろあるように、町の老いかたにもいろいろあるのだと実感する。たとえば温泉町で、僕が知るかぎりいちばん往生際が悪いのは熱海で、いちばんさっぱり枯れているのが別府だ。別府というのはつくづく不思議な町だ。日本有数の温泉地で、観光客も国内外からそうとう訪れているはずなのに、駅前から海に向かって延びるメインストリートは人影まばら。お土産屋は20年も30年も前の品物を平気で並べているし、商店街は見事なまでのシャッター通りと化している。一歩裏道に入れば、住宅と飲食店と風俗店がぐちゃぐちゃに混じり合い、ゾーニングという概念が存在しないかのようだ。
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石巻のグレイトフルデッド
3.11をめぐる報道で、もっとも頻繁に取り上げられた土地のひとつが宮城県石巻だろう。石巻を「いしまき」と読んでしまうひとも、これでいなくなったにちがいない。石巻湾に面し、旧北上川の河口に沿って広がる石巻市が、地震と津波で壊滅的な被害を受けたのはご承知のとおり。宮城県復興庁のデータによれば死者3486人、行方不明者462人、住宅・建物の全半壊は3万3378戸。ひとつの市で、3000人以上が命を落とし、3万もの建物が壊れてしまったことになる・・すぐ北隣に位置する女川原発が無事だったのが、信じられないくらいだ。そして震災から1年9ヶ月がたった現在、石巻がどうなったかといえば、いまだに被害の惨状は生々しいまま。道路や空き地のガレキはさすがに片付けられたけれど、それは集積所に集められただけのことだ。街を歩けばあいかわらず崩れたまま、空き地のままの地所が目立つ。
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ロードサイド台湾1:八卦山南天宮
日本の地方を回りはじめたのは『週刊SPA!』誌で1993年から1998年まで続いた連載『珍日本紀行』がきっかけだった。その連載では正月、ゴールデンウイーク、夏休みなどの連休シーズンにあわせて『珍世界紀行』という特別版を発表していて、それが2004年には『珍世界紀行 ヨーロッパ編』として一冊にまとまり(2009年文庫化・筑摩書房)、同時にSPA!の連載が終わってまもなくの2000年からは『月刊TITLE』誌(文藝春秋・・すでに廃刊)で『珍世界紀行 アメリカ編』が始まって、2007年まで続いたこの連載は2010年に分厚い単行本になった(アスペクト刊)。同時にSPA!誌の海外特別編でいくつか取り上げたアジアの珍名所探訪は、2006年から07年にかけて『月刊パパラッチ』(双葉社刊)の連載に引き継がれたが、こちらもあえなく休刊・・涙。
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高知のデルタ、本山のミシシッピ――藤島晃一・絵と音楽と、女と旅の物語 前編
四国の真ん中をほぼまっすぐ南北に貫いて、高知市と香川県高松市を結ぶ国道32号。高知市内から北に向かい、すぐにのどかな田園地帯に、さらに緑深い山沿いのワインディングロードに入って約1時間。大豊という小さな町から土佐街道に左折し、おどろくほど深い色の吉野川に沿って走って行くと、本山町をすぎたあたりのカーブを曲がったとたん、ものすごくカラフルに塗りこまれた一軒家が視界に飛び込んでくる。かわいらしいシャレコウベの看板脇に書かれている店名は『CAFE MISSY SIPPY』。もちろんアメリカのミシシッピ州と、「ちびちび飲るお姐さん」みたいな英語をかけて、これがアメリカのどこかのカレッジタウンにあればニヤリとするような名前だけど、高知の山中ではちょっと浮いている感じもする。でもとにかく、やっと来れた・・・ここが絵描きで、写真家で、スライドギターの名手でもあるブルースマン・藤島晃一のホームベースなのだ。
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高知のデルタ、本山のミシシッピ――藤島晃一・絵と音楽と、女と旅の物語 後編
先週に続いて高知県本山町からお送りする、絵描きで、写真家で、スライドギターの名手でもあるブルースマン・藤島晃一さんを訪ねる旅。今週の後編では、『CAFE MISSY SIPPY』から道を挟んだ向かいの川沿いにある『Mojoyama Mississippi』で、4月27日に開催されたライブの模様を写真で紹介しながら、稀有なブルースマンの絵と音楽と女の、冒険の旅路をさらに辿ってみよう。高知市内の飲み屋で働くうちに仲良くなったアメリカ人女性にすすめられて、アメリカに渡ることになった藤島さん。彼女のホームグラウンドであるミネアポリスから、高知で帰りを待つ新しい彼女の実家があるオクラホマシティ、さらにはウィスコンシンと巡るうちに、本格的に絵と向かい合う気持ちが固まってきて、「お金貯めて、また絵を描きに戻って来る」ために、とりあえずいちど高知に帰ることになった。
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雄弁な沈黙――戦争を語りつぐ場所・しょうけい館
夢を見ました 倅(せがれ)の夢を 肩をたたいて くれました 骨になっても 母を忘れぬその優しさに その優しさに 月がふるえる 九段坂(『靖国の母』二葉百合子 作詞・横井弘) 九段といえば靖国神社。その靖国神社に今年も「みたままつり」がやってきた。先週末の13日から16日まで。冬の新宿酉の市と並んで、東京都内では「見世物小屋」が出る唯一の夏祭りということで、毎年楽しみにしているマニアの方も多かろう。日本歌手協会の超ベテラン歌手たちによる、能楽堂での「奉納特別公演」というフリーコンサートが、僕にはいちばんの楽しみだ。
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踊る東北御殿――股旅舞踊全国大会・見聞記
海があり、港があり、カモメが飛んで、霧笛が響く・・・船と港が外国に直結する唯一の場所だったころ、日本人のこころを捉えたのが「マドロス」というロマンチシズムだった。マドロス=オランダ語で「船乗り」を意味する言葉が、『憧れのハワイ航路』から『玄海ブルース』、『ひばりのマドロスさん』まで、無数の「マドロス歌謡」を生んで、消えていった。義理と人情の板挟みになりながら、道中合羽と三度笠に憂いを隠し、旅人(たびにん)として流れ流れて・・・「股旅」というキャラクターもまた、戦前から戦後にかけて日本人のこころを激しく揺さぶった、時期もメンタリティもマドロスと奇妙に重なるロマンチシズムのあらわれである。そして股旅は氷川きよしという稀有な歌手によって、この時代に奇跡的に甦ったものの、歌手本人の魅力を超えて「股旅」というロマンが復活したかといえば、そうではない。
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電音三太子、世界を行く!
ものすごくギラギラで、ものすごく大きな被り物をかぶって、ものすごくチープなテクノ・ミュージックに乗って、祭りの爆竹スモークのなかを踊りまくる「電音三太子」。こころある台湾知識人の眉をひそめさせ、祭りに酔う子どもたちを熱狂させる、現代台湾が生んだひとつのカルチャー・アイコンだ。台湾南部・麻豆の地にそびえる珍寺・麻豆代天府を紹介した今年1月16日号のメルマガ後記で、電音三太子を僕はこんなふうに書いた――。
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凍った音楽――東京タワー蝋人形館閉館によせて
今年で開業55周年を迎える東京タワー。5月にはタワー足元にいた南極犬タロ・ジロなど15頭の像を、事もあろうに「東京オリンピックの招致を目指して花壇でシンボルマークをつくるために(新聞報道)」撤去して、抗議が殺到。さらに9月17日にはエレベーターのガラスが鉄板の直撃を受けて割れ、子供が怪我をするという、開業以来初めての深刻な事故が起きて、高さ250メートルにある特別展望台はいまも閉鎖中と冴えない話題が続いている。(中略)そしてなにより3階にあった「東京タワー蝋(ろう)人形館」! 哀愁スポット・マニアで東京タワーを嫌いなひとはいないと思うが、去る9月1日に蝋人形館が43年の歴史に幕を下ろし閉館――というニュースに、ひときわ衝撃を受けた方も多いのではないか。
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ライフ・イズ・ジルバ!――驚愕のスーパースナック探訪記
「またひとつ、大物を見つけちゃいました!」――このメルマガでもたびたび登場してきた広島県福山市・鞆の津ミュージアムで『極限芸術 死刑囚の絵展』などを企画してきた櫛野くんから、興奮気味のメールが飛び込んできたのがいまから2ヶ月ほど前のこと。ちょうど香川県高松でトークの予定があったので、「ま、瀬戸内海の反対側だし」と無理矢理気味に寄り道。福山駅で櫛野くんのクルマに拾ってもらい向かった先は・・・福山市中心部から北上すること約30分、ものすごくのどかな郊外の、そのまた外れにぽつんとたたずむ倉庫・・・じゃなくて「ジルバ」という名前のスナックだった。
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マジカル・ベトナム・ツアー
正月休みを利用してベトナムに行ってきた。南北に細長いベトナム、国土面積から言うと、九州を除いた日本とほぼ同じということで、短い旅行で北から南まで旅するのは難しい。今回は数年ぶりになるサイゴン(ホーチミンシティ)と、世界遺産にもなっている中部の古都ホイアンをさらっとめぐって骨休め・・・と思いきや、やっぱり珍スポットやらアウトサイダーやらを探す日々になってしまい・・・さもしくもあわただしい取材旅行になってしまったのはいつものとおり。というわけで、ビーチだのエステだの、エスニック料理だの可愛い雑貨だのじゃないベトナムはないんか! という好き者のみなさまのために、今回はロードサイダーズ風ベトナム・トラベローグをお届けしよう。
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紅包場――哀愁の歌謡空間を探して
「台北の原宿」として観光客にもおなじみの西門町(シーメンティン)をぶらぶら歩いていると、やたらケバい顔写真を壁一面に貼り込めた店頭に出くわすことがある。「紅包場(ホンバオツァン)」と呼ばれる台湾ならでは、いや台北ならではのユニークな娯楽施設だ。もともと西門町は日本統治時代初期に、浅草のような日本人向け繁華街としてつくられたエリアだった。ランドマークになっている赤レンガの西門紅楼は、当時の商店街だった建物である。それが第二次大戦後、蒋介石の中華民国・南京国民政府軍の台湾上陸とともに、こんどは大陸からやってきたひとびと(いわゆる外省人)のためのエンターテイメント・タウンになった。そこで地元台湾の歌ではなく、中国大陸の流行歌を聴きながら、外省人たちが故郷を懐かしむ場として生まれたのが、紅包場である。
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極彩色のアーバン・パラダイス――台中に虹の村を訪ねて
台湾中部の台中は台北、高雄に続く台湾第3の都市。台北からも高雄からも高速鉄道で1時間足らず、人口百万人規模の大都市でありながら、どこかリラックスした雰囲気が漂い、一説によると台湾人が住みたい都市ナンバーワン。パイナップルケーキ、タピオカティー、泡沫紅茶など、観光客におなじみの台湾フレイバーも台中起源だというし、アジア最大規模の国立台湾美術館も、台北ではなくこちらにある。急ぎの台湾観光では北部の台北、南部の高雄・台南のあいだで飛ばされてしまいがちだが、台中は観光するにも、のんびりするにも最適。おすすめしたい場所はいろいろあるが・・・そのなかでまあ異色と言ったら、『虹爺爺の村』ほどカラフルに異色なスポットもほかにないだろう。
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花咲く男根の森
ソウル市のバスターミナルから、激走する高速バスに揺られること3時間半。ひなびた町の、ひなびたターミナルにバスは到着した。「三陟」と書いてサムチョクと読む。ソウル―プサンを結ぶ高速鉄道エリアから遠く外れた、朝鮮半島東側に位置する江原道(カンウォンド)の小さな町である。(中略)男根彫刻公園・・・これほど、このメルマガにふさわしい場所があるだろうか!(笑)美しい海岸線を見おろすシンナムの丘に、数百本もの大小さまざまな男根がニョキニョキしてるのは、この地に古くから伝わる奇妙な伝説のおかげだ・・・。
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ケチャップとカレー粉の海に溺れて――ベルリン・カリーブルスト食い倒れ旅
まだベルリンが東西に分断されていたあの時代、廃墟のようなクロイツベルクの片隅で、ドラム缶を叩き壊すようなインダストリアル・ミュージックを奏でていたアインシュトゥルツェンデ・ノイバウテン。寒さに凍えながら、ビートに浸っていた黒革の男たち、女たち。深夜の街を、だれもがスーパーのビニール袋にわずかな持ち物を入れて、どこまでも歩いて行くのだったが、そういう夜にからだを温めてくれたオアシスが「インビス」と呼ばれる屋台で、そこではコーラを飲みながら(屋台には酒の販売許可がなかったので)、輪切りにしたソーセージをケチャップとカレー粉をまぜたソースに浸して食べた。「カリーブルスト」との、それが最初の出会いだった。
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ゴミの果てへの旅――村崎百郎館を訪ねて
村崎百郎が亡くなってもうすぐ4年になる。ファンだったという青年に刺殺されたのが2010年7月23日。そして長い準備期間を経て先月末、伊豆高原の『怪しい秘密基地 まぼろし博覧会』内に『村崎百郎館』がようやくオープンした。手がけたのは生前、公私にわたるパートナーだった漫画家の森園みるくと、本メルマガ2013年5月15日号で紹介したユニークな古物商/アーティストであるマンタム、そして多くの友人、ボランティアたちである。2011年の開館以来、珍スポット・ファンにはすでにおなじみとなっている『まぼろし博覧会』。もともとは『伊豆グリーンパーク』という熱帯植物園で、2001年ごろに閉館、放置されていたのを、出版社データハウスの総帥・鵜野義嗣が買い取って、コレクションを展示する場としてオープンさせた巨大施設だ。
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岐阜の小京都にニッポンの安心感を見た!――全日本食品サンプルあーとグランプリin郡上
そろそろ夏休み本番が近づき、準備に余念のないみなさま、いまだノー・アイデアのみなさま、まったく休みの取れないみなさま・・・悲喜こもごもの日々でありましょうか。今週は夏休みに向けた旅特集。しかし北海道だの沖縄だの国内メジャー・デスティネーションの陰で、ほとんど候補に上らないと思われる(失礼!)、中部地区の岐阜県郡上市、関市、愛知県蒲郡市という3地点を取り上げる。こんな夏休み特集、このメルマガだけだろうなあ・・・。それではまず、岐阜県中部の小京都・郡上八幡から。
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パッシングスルー・タウン——ターミナル駅のとなり町 01 小田急線南新宿駅
都心の廃墟には、人里離れた場所の廃墟とは微妙に異なる空気感がある。どろりと粘着質のなにか。だれにも望まれないのではなく、だれからも望まれているのに、ほとんどすべての場合に複雑な権利関係がからんでいるためにーーようするにカネへの執着がからみあって、身動き取れないまま年月を重ねている、欲望の醜いカタマリとしての廃墟。それが僕らのこころをざわつかせる。
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ホノルル旅日記 1:愛と哀しみの理想郷
ワイキキの喧騒を通り過ぎ、ダイヤモンドヘッドを周回する道路に沿って裏側に回ると、そこはブラックポイントと呼ばれるハワイ屈指の超高級住宅街だ。どこにも人影はなく、しかしどこかで見ている監視カメラはたくさんあるにちがいない、曲がりくねった道を辿って海に向かって突き当りまで進む。大きな鉄製のドアがこちらの車のナンバープレートを確認して、音もなく開いた。まるでジャングルに開けたトンネルのように豊かな緑のアプローチを抜けると、そこにシンプルな、落ち着いた白い建物があった。ドリス・デュークの「シャングリ・ラ」だ。テレビで見るような「ハワイの豪邸」とはワケがちがう。かつて「世界一リッチな少女」と呼ばれたドリス・デュークが、この土地に惚れ込み、世界各地で収集した貴重な美術品を持ち込んで住まいにした、ここは桁違いの贅を尽くした、それでいて見事に抑制の効いた、洗練の極みにある空間だ。
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ホノルル旅日記2:ロングスのひとたち
化粧品でも着替えでも、ポテチでもビールでもいい、ハワイで日用品が必要なとき、どこへ行ったら・・・「ABCストアがあるでしょ」と言うのはワイキキから一歩も出ない観光客のしるし。ハワイ人にとっては「ロングスがあるでしょ」となるのが正解だ。ロングス・ドラッグスはハワイ最大のドラッグストア・チェーン。一般薬品に処方せん医薬品、化粧品、袋菓子、下着に文房具、ビール、ワイン・・・生鮮食料品以外すべての日用品を扱っている。そして基本的に24時間営業。日本のコンビニよりもはるかに大きくて、スーパーマーケットとはまたちがう。言ってみればマツキヨを巨大にして、ドンキホーテを薄めたみたいな存在だ。
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パッシングスルー・タウン——ターミナル駅のとなり町 02 東武東上線北池袋駅
急行や準急に駆け込む善男善女を横目に、空席の目立つ普通電車にゆったり着席するはぐれもの、しかしゆったりする間もなく池袋駅を出発してわずか1分! 150円で着いてしまうのが東武東上線・北池袋駅だ。これほど乗り甲斐のない電車旅があろうか。新宿、渋谷と肩を並べる東京屈指のメガタウンでありながら、「トレンディ」という言葉にひとかけらの縁もない池袋。東口に西武、西口に東武という、東京初心者を惑わせる配置。JRに地下鉄に私鉄と全部で8路線が乗り入れ、一日の利用者が250万人以上というカオスそのものの駅構内。『池袋ウエストゲートパーク』から最近の池袋チャイナタウン・マフィア伝説、脱法ハーブ事故まで、「東京一怖い街」というイメージがすっかり定着。新宿ゴールデン街や2丁目のようなカルチャー・ゾーンも皆無。
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新連載:セーヌ川にアングラは流れる――マダム・マキコのパリ悪妻日記(写真・画・文:田中麻記子)
ずっと好きなアーティストに田中麻記子さんがいる。バリバリの現代美術でもなく、伝統的な洋画でもなく、なんともフワフワした、可愛らしさと怖さが混じりあって、そこにあの世感をふりかけたような、不思議な絵を描く不思議な画家だ。麻記子さんはたま~に気が向くとメールをくれたり、一緒に飲んでくれたりしていたけれど、いつのまにか結婚していて、いつのまにか「文化庁派遣在外研修員」なんて肩書で、パリに暮らしていた。そうしてまた、久しぶりに連絡が来たと思ったら、「研修」という言葉が赤面するほどの、スリリングなパリのアンダーワールド・トラベラーになっていた。これから不定期連載でお送りする、マダム・マキコの夜のトラベローグ。どんなに詳しいガイドブックにもぜったい出てこない、パリの深い水底に連れていってくれるはず。で、今夜はどこに?
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緊急報告:レトロスペース・坂会館、存亡の危機!?
レトロスペースが揺れている。北海道屈指のビザール・ロードサイド・アトラクションとして名高い、札幌のレトロスペース・坂会館。珍スポット・ファンはすでにお聞き及びかもしれないが、今月なかばあたりから「レトロスペースが4月末で閉館か!」とTwitterなどで噂が拡散。レトロスペースや母体となる坂ビスケット本社にも、問い合わせが相次いでいるという。『珍日本紀行』の取材で初めてレトロスペースを訪れたのが1999年。もう15年以上のお付き合いになる。館長・坂一敬(さか・かずたか)さんには、ご自身の半生を『巡礼/珍日本超老伝』でも語っていただいた。北海道秘宝館がすでに閉館し、去年は札幌市民の憩いの場・喫茶サンローゼすすきの店も閉店。このうえレトロスペースまでなくなってしまったら、いったい札幌でどこに遊びに行けばいいのだろう。
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みほとけのテーマパーク
いまから10年くらい前、アジアの珍寺めぐりにハマっていた時期があった。もともと『週刊SPA!』で「珍日本紀行」を連載していたころ、夏休みやGWなどにあわせて「珍世界紀行」もやりたくなって、最初はヨーロッパを中心に回っていたのが、次第に東南アジアにも足が向いていったのが発端だった。当時はネット情報がほとんど存在しなかったので、アジアにどんな珍寺があるのか、事前にはまるでわからなかったが、バンコクで雑誌をぱらぱら見ているうちに、地獄庭園の小さな写真が目に留まり、そこからタイの珍寺めぐりが始まって、しだいにベトナム、ラオス、ミャンマー、中国本土、韓国、そして台湾へと足が向いていったのだった。
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圏外の街角から:北海道夕張市
ギリシャの財政危機が連日、ニュースになっている。国が倒産する、ということが現実的にいったいどういう事態を招くのか、いまひとつ実感できないけれど、日本にはその見本というか先達というか、先輩がいる。日本で唯一、「財政再建団体」の指定を受けた破綻都市・夕張だ。札幌に出張した翌日、夕方の飛行機までの空いた時間に、久しぶりに夕張の町を巡ってみた。北海道の玄関口である新千歳空港から夕張までは約40キロ、札幌からは約70キロ。しかし交通の便からして、すでに最悪。札幌から1時間40分ほどかかる直通バスが、一日わずか数本。JRも札幌、新千歳どちらからも直通便がなく、乗り換えが必要。特急を使っても2時間以上かかってしまい、けっきょくレンタカーに頼ることになる。
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ライブ・アット・ニュージンジャーミュージアム
栃木県、というと餃子の宇都宮だったり東照宮の日光だったり、観光スポットはいろいろあるが、宇都宮、小山につぐ第3の都市・栃木市はなんとなく影が薄い。市街中心部には蔵造りの家屋がずらりと並び、なかなか風情もあるのだが・・。そんな栃木市でいま、にわかに注目を集める新観光スポット、それが『岩下の新生姜ミュージアム』。今年6月20日にグランドオープンを迎えたばかりだが、すでにテレビや新聞・雑誌でご覧になったかたも多いのでは。「都築さんにとっては秘宝館みたいなもんでしょ?」とニヤニヤしながら迎えてくれたのが、岩下食品社長兼ミュージアム館長の岩下和了(いわした・かずのり)さん。1966年生まれ、今年49歳の社長さんだ。
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ブルゴーニュのタイムマシン
中世の城、といってもフランスでは珍しくないし、現代に復元された中世の城なんて、さらに珍しくない。でもそれが完全に中世の工法で、当時と同じ素材だけを使用して、もう20年近くもかけて建設中となると、ちょっと話が違ってくる。パリから南下すること200キロ弱。ワインで有名なブルゴーニュ地方でただいま進行中の「ゲドゥロン(Guédelon)」は、中世の城を中世のやりかたで建てる(プロセスを見学する)テーマパークであり、この時代にエコロジーの観点から建築を見直す試みでもある、奇抜にして壮大なプロジェクトだ。
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ホワイトライト・ホワイトヒート ロシア冬紀行1 古都の哀愁蝋人形館
朝9時を過ぎても薄暗い街。凍りつく路面を足早に歩く人たちがいる。さらさらとふりかかる雪は、文字どおりパウダーのように服や靴の表面を滑って消え、すでに店を開けているレストランでは半袖シャツのスタッフがテーブルを整え、ビルの壁の電光表示はいまの気温がマイナス20度だと告げていた。サンクトペテルブルク、1月10日。ロシアではクリスマスにあたるというその週に、成田からモスクワを経て僕は、ここにいる。
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ホワイトライト・ホワイトヒート ロシア冬紀行2 「ロシアのバスティーユ」で豪華版・見世物小屋めぐり
先週に続いてお送りするロシア冬紀行・第2話、今回訪れるのはエルミタージュ美術館とネヴァ川を挟んで向かい合う、ペトロパヴロフスク要塞である。サンクトペテルブルク観光でも重要な場所であるペトロパヴロフスク要塞。どのガイドブックを見てもかならず「バスチョン」と呼ばれる収容所内部や聖堂が解説されているが、しかし! そういう歴史的に重要な施設の周囲を、数々のB級観光スポットというか、ほとんど見世物小屋のノリに近い常設・仮設展示施設がいくつも取り巻いていることは、まったく語られていない。チープな歴史蝋人形館のほかは、ガイドブックどころかウェブサイトでもほとんど記述が見つからないので、今週はこの「知られざるサンクトペテルブルク最重要B級スポット」を徹底紹介する。
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ホワイトライト・ホワイトヒート ロシア冬紀行3 折れた骨の音楽
見たこともない「ビートルズ・ラブソングス」と書かれたアルバムが最前列に陳列してある。片言の英語で店主は「これ、ルーマニアでプレスされたレア盤だから」と教えてくれ、値段も手頃だったので購入。代金を払いながら「ボーン・レコードもある?」と聞くと「ん?」 しかたないので自分の胸のあたりを指さしながら「エックスレイ」と言ってみると、「お~、あるある」とペナペナのソノシートふうの数枚を、奥から引っ張り出してくれた。あぁよかった。これを探しに、真冬のロシアに来たのだから。
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圏外の街角から:広島駅前地下広場
ものすごく久しぶりにお送りする「圏外の街角から」。全国に散らばるシャッター商店街を歩く連載だが、今回はちょっと趣向を変えて広島駅前の地下広場にご案内したい。中国地方最大の都市であ広島市。JR広島駅は北口が新幹線口、在来線が南口となっている。南口駅前は現在、大規模再開発が進行中。まことに味気ない広場になっているが、この一帯はもともと原爆で壊滅的な被害を受けたあと、終戦直後から闇市が出現。しだいにいくつかの市場を形成するようになって、「荒神市場」と呼ばれていた。いまも駅を出て左側に歩いて行くと「愛友市場」という名の、当時の面影をそのまま留めた市場が残っている。
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海辺の町のロウ人形館
南インド・ケララ州のコーチン(コチ)は、アラビア海に面した大都市。観光のメインとなる旧市街フォートコーチンと川を隔てた、新市街にある「ケララ州で2番目に大きいショッピングモール」というオベロンモールの3階に『スニルズ・セレブリティ・ワックス・ミュージアム(Sunil's Celebrity Wax Museum)』があった。旧市街の美しいポルトガル建築や、『地獄の黙示録』気分に浸れるバックウォーター・クルーズとかを取材しとけばいいものを、なぜに南インドまで来てロウ人形館を・・・と思わなくもないが、ロードサイダーズなんだからしょうがないです!
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僕的九州遺産 My private Kyushu
すでに告知などでご存じの方もいらっしゃると思うが、今週土曜日(10月1日)から福岡天神アルティアムで、『僕的九州遺産 My private Kyushu』が開催される。会期は月末まで1ヶ月間あるので、もし機会があればご覧いただきたい。「ここがどこだか、道路でわかる。こんな道はほかのどこにもない」というのはリヴァー・フェニックスの『マイ・プライベート・アイダホ』に出てくる台詞だった。僕のオン・ザ・ロードはあんなふうに痛切でも絶望的でもないけれど、それでも山の中の道を走ったり、海辺の町の路地にたたずんでいるとき、「こんな道はほかのどこにもない」感覚を、九州という大きな島は僕にじわりと染みこませてくれる。
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見世物に魅せられて――見世物大博覧会@国立民族学博物館
大阪モノレールを万博記念公園駅で下車。ずいぶん汚れてしまった太陽の塔を横目で見ながら公園をずずっと奥に進むと、国立民族学博物館の大きな建物が見えてくる。通称「ミンパク」ではいま注目の展覧会『見世物大博覧会』を開催中(11月29日まで)。英語のタイトルが「アメイジング・ショウ・テンツ・イン・ジャパン」とされていることからも明らかなように、この珍しい、そして画期的な展覧会は、ショウ・テント=仮設の小屋で営まれてきた見世物の歴史を、江戸時代から平成の現在まで200年あまりにわたって振り返るという、ある意味、国立博物館らしからぬ(?)企画展だ。
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Y氏とめぐる、福岡マジカルミステリーツアー
おかげさまで好評開催中の『僕的九州遺産』展。これから観に行こうというかたもいらっしゃるかと思う。オープニング翌日の10月2日にはバスツアーも開催されたが、そこでツアーコンダクターとして活躍していただいたのが、通称「Y氏」こと山田孝之さん。本業はウェブ関連の会社を運営しながら、これまで福岡を中心とする九州の「B面」の楽しさを紹介する、最強のガイドとして発信を続けてきた。主戦場であるブログ「Y氏は暇人」で2013年からさまざまな調査の成果を発表するとともに、冊子『福岡のB面』『福岡ふしぎ旅』『福岡レトロ旅』などを次々に刊行。昨年末には単行本『福岡路上遺産』(海鳥社刊)も出版しているので、福岡の書店で見つけたひともいるのでは。今回はY氏にお願いして、これまでブログで紹介されたスポットの中から、これから展覧会に来ていただくみなさまのために「福岡に来たなら、これは行っとかないと!」という場所を選び、特選・福岡B面ガイドとして紹介させていただくことにした。
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圏外の街角から:秋田県能代市
「木都能代」という言葉があるのだという。青森と県境を接する秋田県北部を東から西に流れる米代川(よねしろがわ)の上流で伐採された秋田杉が、かつてはイカダで運ばれて日本海にいたる、その能代市は日本最大の木材集積地だった。いまも川沿いや海岸近くを走ると山積みされた立派な原木が見られるが、それよりも目立つのは風力発電の巨大な風車群。そして「東洋一」とも言われた木都の繁栄は、凄惨なまでのシャッター商店街と化した現在の能代市中心部には、どこにも見つからない・・・・・・。先週号の編集後記にちょこっと書いたように、1泊2日の急ぎ旅で能代に行ってきた。2015年6月24日配信号「雪より出でよ蓮の花」で特集した「蓮の画家」金谷真が、故郷で初めて開いた展覧会「金谷真 蓮画展」の最終日に、なんとか駆け込めたのだった。
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シーガイアと高鍋大師の宮崎を訪ねて
先週号でお伝えした、みやざきアートセンターでの生頼範義展を見た翌日、夕方の飛行機までの数時間、宮崎県内を少しだけ回ってみた。展覧会場で出会った地元新聞の記者さんに「シーガイアのオーシャンドームもいよいよ取り壊しです」と教えられて、それまで思い出すこともほとんどなかったのに、急に見ておきたくなって、レンタカーを探して走り回ってみたのだった。もう忘れてしまったひとも多いだろうか、シーガイアはバブル期の日本で生まれた数々の巨大開発のうちでも、最大級のプロジェクトである。宮崎市のビーチフロントに高層ホテル、国際会議場、ゴルフコースなどを備えた総合リゾートとして1994年に開業。なかでも、すぐ目の前が海なのに全天候型ドームに覆われた人工ビーチで一年中遊べるという「オーシャンドーム」は、ギネスブックにも認定された巨大インドア・アミューズメント施設だった。
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君よ知るや北の国――ラトヴィア・リーガ紀行1
イスタンブールを南の「アジアとヨーロッパの結節点」とするならば、東と南にロシア、北に北欧、西に西欧と隣接するバルト3国は「ロシアとヨーロッパの結節点」と表現できる。この正月はラトヴィアのリーガに行ってきた。北からエストニア、ラトヴィア、リトアニアと並ぶバルト3国のうち、ラトヴィアの首都であるリーガは3国で最大の都市。旧市街はまるごとがユネスコの世界遺産に指定されている観光地としても名高い・・・昼でも零下20度ぐらいになる厳冬期に、わざわざ観光に行くもの好きは多くないけれど。
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君よ知るや北の国――ラトヴィア・リーガ紀行2
先週に続いてお送りする「ロシアとヨーロッパの結節点」ラトヴィア・リーガ旅行記。今週はKGBビルとはまた別種のひんやり感をたっぷり味わえる、医療史博物館にお連れする。ユネスコの世界遺産に指定されている旧市街の一角、クロンヴァルダ公園に面して建つ、1879年につくられた大邸宅を転用した医療史博物館。正式名称を「パウルス・ストゥラディンシュ医療史博物館」という。パウルス・ストゥラディンシュ(Pauls Stradins, 1896-1958)はラトヴィアの著名な医師・医学史研究者であり、医学・公衆衛生教育にも力を尽くした人物である。ソヴィエト連邦の侵略を前に、多くの知識人が西欧に逃れるなかで、ストゥラディンシュは愛国心からラトヴィアに残る道を選んだ。スターリン時代には活動を制限された時期が長かったが、スターリンの死去とともに精力的な活動を再開、終生ラトヴィア医学に貢献する人生を送った。
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ベラミの記憶
「黒いダイヤ」と呼ばれた石炭景気のおかげで、明治初期にはひなびた漁村にすぎなかった若松が、ゴールドラッシュならぬコールラッシュ状態で大繁栄したのも今は昔。昭和30年代に入ってエネルギーが石炭から石油中心にシフトするにつれて、若松も徐々にさびれていって、いまではかなり寂しい景色になってしまった。かつては映画館や芝居小屋がたくさん並んで、九州地方屈指の賑やかな繁華街だったと言われても、なかなか想像しにくい。「若松バンド」と呼ばれる海岸沿いに並ぶ大正建築群から、わずかに当時の繁栄ぶりをしのぶばかりである。『ベラミ』というグランドキャバレーが若松にあった、と聞いたのは去年、福岡で『僕的九州遺産』展を開いたときだった。オープニングに来てくれたお客さんから、「ベラミ山荘、もう行きました?」と聞かれて、知らないと言ったら「ええーっ」と驚かれた。キャバレーのベラミはもうとっくになくなったけれど、当時の従業員寮だった不思議な建物が残っていて、そこを買い取ったひとが「ベラミ山荘」と名づけて公開しているという。「知らないなんて・・・」と呆れられて悔しがっていたら、展覧会の関連企画で開催したバスツアーのなかに、気を利かせたスタッフたちがサプライズとしてベラミ山荘も入れてくれていた。
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ディープ・コリアふたたび 01 下関~関釜フェリー~釜山(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
『深夜特急』『全東洋街道』・・それぞれの時代にそれぞれの決定的な旅の書があった。そしてバブル景気に日本中が踊ろうと腰を浮かせたときに、「踊れなかった者たち」を闇へと誘い込んだ『ディープ・コリア』の刊行から、今年は30年目にあたる。いま行くしかない、という思いに駆られ幻の名盤解放同盟の3名――根本敬・湯浅学・船橋英雄――はふたたび、海を渡り大韓民国へと向かう。これから始まる長い連載は、30年の時を経て変わった韓国と変わらぬ韓国をさまよう、海を越えてつながる時空の巻き戻しと早送りの体験になるはずだ。
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気まぐれドライブ・タイランド 1 カンチャナブリで現在進行形の地獄に墜ちる
タイのお寺の「地獄庭園」にハマったのはいまからちょうど10年ほど前だった。バンコクにアパートも借りて、東京から4x5の大判カメラとフィルムを持ち込んで、3年間ほどタイの田舎を走り回っていた。その埃っぽく楽しい旅で見つけた10数カ所の地獄庭園は、2010年に『HELL 地獄の歩き方・タイランド編』(洋泉社刊)という本にまとまって、それからもテレビ番組の取材などで幾度か「大物」地獄庭園を再訪することはあったけれど、自分のなかでは一区切りついた気分だった。このあいだのゴールデンウィークに久しぶりにタイに行くことになって、バンコクから近い田舎で何日か過ごそうと思い調べてみたら、まだ行ったことのない「珍寺」がいくつもあった。
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気まぐれドライブ・タイランド 3 ナコンパトムの酔狂博物館めぐり
先週紹介したワット・サンプランがあるナコンパトムは、バンコク市内からクルマで1時間ほど、西隣の県になる。タイの伝統文化を観賞するローズガーデンや、ゾウのショーで知られるサンプラン動物園など、団体観光系のスポットが集り、ロウ人形館『ヒューマン・イメジャリー・ミュージアム』、タイの「昭和なつかし館」的な『ハウス・オヴ・ミュージアムス』、『ナショナル・フィルム・アーカイヴ』などがある、見所多いエリアであることも書いた。今週お連れしたいのはそのナコンパトムの、クルマでないとなかなか行きにくい、観光スポットとしてもあまり知られていない、2か所の「酔狂系」(笑)個人ミュージアムであります。『ウッドランド』はその名のとおり、樹木を素材としたさまざまな工芸品を展示する施設・・・というと、よくありがちに聞こえるが、こちらはとにかくその物量とスケールが桁違い。なんでこんなところに?と首を傾げざるを得ない田舎に、ミュージアムとホテルから成る巨大なリゾート施設『ウッドランド・ムアンマイ』として2015年にオープンしたばかり。
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動物王国の「時間よ止まれ!」
薄暗い研究室の棚に並ぶホルマリン漬けの生きものや骨格標本・・・というのがかつての生物学のイメージだったかもしれないが、21世紀のいまはバイオテクノロジーの時代。19世紀的な博物学の香気はもはや過去の遺物となって久しい。各地の大学や病院では時代遅れになった標本類の処分に困って、廃棄処分されてしまうこともあるという。そうした標本類を引き取って展示している博物館があると聞いて、さっそく足を運んでみた。グラント博物館――正式名称をThe Grant Museum of Zoology and Comparative Anatomy=グラント動物学・比較解剖学博物館という、ロンドン大学に付属する研究施設である。
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ウクライナの星の下で
毎朝、目が覚めると枕元のスマホでニュースアプリをチェック、起き出すとテレビをつけてBBCやCNNのニュースを見ずにいられなくて、気がつけば1時間以上経っている……そんな朝がもう2週間ぐらいになる。もちろんウクライナ戦争の状況を調べずにいられないからだ(しかしNHKはどうしてこんなに戦争関連の報道が少ないんだろう)。 ウクライナにはこれまでいちど行ったことがあるだけだが、ロシアには何度も行って、このメルマガにいろいろ書いてきたので、僕がそうとうロシア好きということもわかってもらえているかもしれない。今回の戦争で、もちろんウクライナのひとびとが被っている災厄は言葉に尽くせないし、プーチンやクレムリンにはひとかけらの道理もないけれど、日々激しさを増す言論弾圧のなか、こころを痛めつつ祈ることしかできないロシア人もたくさんいるはず。
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人民公園の休日
成人の日の翌日から、重慶と成都に行ってきた。1週間弱の短い旅行で、そのときはだれもマスクすらしてなかったけれど、帰ってきたらいきなりコロナ・ウィルスのアウトブレイク。こんなことになるとは、だれが想像できたろう……・。「8D都市」と呼ばれるほどの超重層近未来都市・重慶については、以前メルマガでも紹介したが(2019年12月25日号)、訪れるのは10年ぶり。『重慶マニア』(パブリブ刊)にたっぷり紹介された、その近未来感覚を確かめたかったし、記事で吉井忍さんが書いてくれたように、「京都と大阪みたいな永遠のライバル」と言われる、成都との比較にも興味があった。成都は四川省の州都。言わずと知れた四川料理の本場だし、パンダ・ファンの聖地でもある。三国志マニアには蜀の都としておなじみ、劉備玄徳と諸葛孔明の廟があり、古代史好きにはいまから4000~5000年前という、謎の仮面文化・三星堆(さんせいたい)遺跡が発見された地としても、胸躍る場所だろう。
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おもしろうてやがてかなしき済州島紀行1 トケビ公園
ハマってる国ありますか?と聞かれたら、いまは中国と答えるけれど、10年くらい前はそれがタイと韓国だった。1月中旬に重慶と成都に行ったときには、街でマスクをしてるひとなんてだれもいなかったのに、東京に帰ってきたとたん、武漢でのコロナウィルス・アウトブレイク。日程が1週間ずれていたらと思うと冷や汗だったが、実は2月もLCCのセールで格安購入した航空券で、上海の南にある海辺の町・寧波に行く予定を立てていた。なのに、あっという間の事態深刻化。さすがに強行するわけにもいかず、でもすでに旅行気分になっていたので、かわりに行ける「近くて安い」場所を探して成田~済州島~釜山~成田という航空券を購入。このルートでひとり2万2千円、大阪往復より安あがり! 宿泊費だって、かなりいいホテルで一泊1万円ほど。4泊5日で交通宿泊費2人分10万円という格安小旅行を楽しんできた。
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おもしろうてやがてかなしき済州島紀行2 仙女と木こり公園
先週紹介した「お化けの国「トケビ公園」は見事に廃墟化していたが、10年前に較べてむしろパワーアップしていたのが、トケビからクルマで15分ほどの済州島内陸部にある「仙女と木こり公園」。今回調べてみたら開園が2008年だったので、前に訪れたときは開園後間もなくだったことになる。それから10年間にわたって着々、展示が増えていたとは! 韓国人ならだれでも知っている民話が「仙女と木こりの物語」。天から降りてきて、水浴していた天女を見つけた木こりが、羽衣を隠してしまう。天に帰れなくなった仙女は、木こりと結婚、幸せに暮らすが、ある日、天女から「あの羽衣を見せてほしい」とせがまれた木こりが、隠していた羽衣を返すと、仙女は子供を連れて天に帰ってしまったという・・・・・・日本の羽衣伝説といっしょですな。
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ジャクソンハイツ満腹散歩
一時はニューヨーク有数に治安の悪いエリアという不名誉なイメージに甘んじていたジャクソンハイツだったが、戦前の住宅建築群が1993年にアメリカ合衆国国家歴史登録財に指定されたこともあって、2000年代に入るころから人気が復活。マンハッタンに較べればまだ割安な住宅価格も大きいだろうが、バリーによれば「なんたって食事だよ!」とのこと。世界各国のレストランはもちろんのこと、ストリートフードの屋台もバングラデシュ、中近東、ネパール、コロンビア、ギリシャ、エクアドル、タイ、メキシコのタコスまで、あまりによりどりみどりでチョイスに困ってしまう充実ぶりだ。「そんなに気になってるなら」と、今回のニューヨーク出張ではバリーとアーニャが「とっておきのジャクソンハイツ・フードスポット」を教えてくれたので、その貴重な地元情報をみなさんと共有しておきたい。
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25年目の珍日本紀行 群馬編2 どうしたんですか館長さん! ――命と性ミュージアム再訪記
草津と並んで群馬県を代表する温泉地・伊香保。土産物屋や射的場など昔ながらの遊戯施設が並ぶ石段街も有名だが、訪れてみればそのノスタルジックな風情よりも、活気を失った観光地の寂しさのほうを感じてしまうひとが多いだろう。 伊香保近郊には「珍宝館」と「命と性ミュージアム」、2つの秘宝館が現存している。「珍宝館」はテレビなどでもおなじみ、館長の「ちん子さん」によるお下品客いじりトークはパワフルだけど(いまも健在!)、珍宝のほうはたいしたことなかったので『珍日本紀行』には取り上げなかった。もうひとつの「命と性ミュージアム」は2002年開館ということで、こちらは珍日本刊行後に出現したニューフェイス秘宝館。別の雑誌で2007年に取材させてもらい、いまは電子書籍のROADSIDE BOOKS vol.001『秘宝館』で、たくさんの写真を取材記事とともに見ていただくことができる。 初めて「命と性ミュージアム」を訪れたころは、「女神館」呼ばれていたが、久しぶりに再訪できたのは2年ほど前のこと。村上春樹さんと遊びに行ったのだが、これはプライベートな旅行だったので発表はせず。そして今回「まだ健在だといいけど・・・・・・」と願いながら3度目の訪問。「命と性ミュージアム」はちゃんと営業を続けてくれていたけれど、館内は一部、驚愕の変貌を遂げていたので、今週はその「使用前・使用後」を中心に報告したい。
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25年目の珍日本紀行 群馬編4 蛇と紋次郎の上州路
群馬県南部の太田市は高崎、前橋に次ぐ規模で、SUBARUの企業城下町としても知られている。「新田義貞の隠し湯」という太田市内の藪(やぶ)塚温泉郷は、歴史こそ古いものの、現在では旅館が数軒だけ、共同浴場もないという地味な温泉場だ。 藪塚温泉が誇る(というか唯一の)珍スポットとして取り上げたのが、江戸時代の街道町を再現した「三日月村」と、世界の蛇300種、数万匹を集めた「ジャパンスネークセンター」という、隣り合う2つの観光施設。取材で訪れたのは1997年のことだった。
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新連載! Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 01 栃木県
2020年09月09日配信号「群馬編1 アダルト保育園」から、ゆるりとしたペースで始めている新連載「25年目の珍日本紀行」。そのスピンオフ企画として今週から「Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行」をお送りする。 もともとの『珍日本紀行』は1993年2月から98年8月まで、238回にわたって週刊SPA!誌上に連載されたものが、96年にアスペクト社から大判写真集『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』として刊行された。その後もしつこく追加取材し地域別に再編集した342件の路傍の奇跡が、2000年にはちくま文庫で「東日本編」「西日本編」の2冊、計1,200ページ近い増補改訂版・極厚文庫本にまとめらたのだった。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 02 茨城県
ゆう・もあ村は土浦市東城寺に1965(昭和40)年開業。珍スポットとしてそれなりに知られるようになったが、展示物の盗難事件などもあり、2001(平成13)年に閉園。その後、こころない侵入者などの破壊行為もあり、建物はすべて解体された。グーグル・ストリートビューで見ても更地のようである。なおYouTubeには盛業当時のPRビデオが上がっている。貴重な動画、記事とともにじっくり楽しんでいただきたい。
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赤い手拭いマフラーにして、ふたりで行こうよ大銭湯展
BBCの歴史番組でルーシー・ワースリーというものすごくチャーミングな歴史家のファンになってしまい、『暮らしのイギリス史 王侯から庶民まで』という分厚い本を少しずつ読んでいる。中世から現代までのイギリス生活史を楽しく紹介したこの本の「浴室の歴史」という章には、1550年から1750年までの「不潔な二百年」に、イギリスの人々がいかに入浴を不気味なものと思っていたかが描かれていて、その一因は「水が病を、とりわけ人心に恐怖をかきたてる新しい病である梅毒を拡散するという理由から、入浴が疎んじられるようになっていった」のだった。その後18世紀に入浴の習慣が復活するが、家庭に独立した浴室が誕生するのは19世紀になってからだった。 小金井の「江戸東京たてもの園」ではいま、「大銭湯展」と題された銭湯の歴史と現在・未来を俯瞰する展覧会が開かれている。 東京屈指の都立公園である小金井公園のなかにある江戸東京たてもの園は、両国の東京都江戸東京博物館の分館。山の手エリア、下町エリアなどと名づけられた区域に、茅葺き農家から田園調布の優雅な邸宅、商店街の看板建築などが復元されていて、定期的に訪れるというファンも少なくない。
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ラゲージ・タグで旅する昭和 (文:茅野裕城子)
ある日、小説家の茅野裕城子さんが「こんなの出てきたので見せにいく」と、大きな袋を抱えてやってきた。白いビニール袋に「A BATHING APE」とあり一瞬引いたが、中から出てきたのは古びた一冊のスクラップブック。いまでは滅多に見ない大判サイズで、開いてみるとそこには往年の観光ホテルの荷物タグがきれいに貼ってあった。もう、いまどきのホテルは荷物にタグなんか滅多につけてくれないから、コレクション自体が貴重なのはもちろん、きれいにアレンジされた貼り込みかたから、持ち主の思いが数十年の時を経てあふれ出てくる。気楽に旅行にいけなくなって、もう2年。こんな時期にこんなものと出会うことができて、昭和デザインとしても眼福だけど、どこか、どこでもいいから遠くに行きたくてたまらなくなった。 数えてみると500点近くあったタグのすべてを今回お見せすることはできないが、なるべくたくさんのタグを見ていただきながら、50年、60年前の日本、つまり戦争から立ち直り観光という娯楽に夢中になれる余裕を取り戻しつつあった、ひとびとのこころに思いを馳せていただけたらと願う。
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南の島の愛の王国
今年は久しぶりのタイで正月を過ごすことができた。メルマガでは先週号から、11月に行ったパリのミュージアム紀行を始めたばかりだけれど、まだ数回は続く予定だし、タイでは2カ所ほど久しぶりにビザールな観光スポットを訪れることができたので、まずはそっちを先にご案内しようかと!
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極楽ってこんなに派手なの…… アユタヤのウルトラデコラティブ寺院参拝記
バンコクから北に約80キロ。アユタヤは1350年から1767年まで417年間にわたって、アユタヤ王朝の都として栄えてきた古都。壮大な遺跡群が並ぶ歴史公園はユネスコ世界遺産にも登録されている。東京から箱根ぐらいの距離なので、バスやタクシー・チャーター、列車、チャオプラヤ川を遡るクルーズなどさまざまな交通手段があり、日帰り観光で訪れたひとも多いだろう。16世紀初めから西洋諸国やアジアの国々から商人たちが交易で訪れ、日本人商人も最盛期には1000~1500人が日本人町で生活。その統領格が山田長政だった。
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メリーゴーランドから見えるパリ
ふと思い立ってすぐ行けるミュージアムもあれば、ずっと行きたいのに開館日時のタイミングが合わずに行けないままのところがあり、ミュージアムにも相性というものがあるんだなあと時々思う。パリ中心部から少し離れた12区のベルシーにあるミュゼ・デ・ザール・フォラン(Musée des Arts Forains)は、昔から行きたかったミュージアムのひとつであり、今回ようやく訪問がかなった。なにしろ開館が基本的に水、土、日のみで(11月末から12月いっぱいは水曜のみ)、それも1時間半のツアーを予約が必要。勝手な時間に行ってもダメで、3週間前から受け付ける予約もけっこう早く定員になるし、というハードル高いミュージアムなのだ。
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マルセイユ・グラフィティ散歩
先月から「狩猟自然博物館」「移動遊園地博物館」と巡ってきたパリ・ミュージアム紀行。今週はちょっと遠足して南仏マルセイユに移動、街まるごとが美術館みたいなグラフィティ/ストリートアート散歩をしてみたい。 元タバコ工場を使った巨大な複合文化施設ラ・フリッシュで開催された『MANGARO』展を、2014年11月12日号「ヘタウマの現在形」で特集したマルセイユは、TGVでパリから約3時間。南フランス最大の都市でありパリ、リヨンに次いでフランス第3位の規模。紀元前600年に生まれたフランス最古の都市であり、地中海最大の貿易港でもあり、「フレンチ・コネクション2」や「タクシー」など多くの映画の舞台になってきたし、サッカー・ファンにとってはパリ・サンジェルマンと優勝を争う強豪アリンピック・マルセイユでも知られているだろう。
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仁川漫遊記1 高麗人参と秘宝館の島へ!
ようやくコロナが下火になって気軽に海外に行けるようになったから・・・・・・というのはもはや言い訳だったりするが、2月の台湾に続いて3月は韓国に行ってきた。ソウルでも釜山でもない、どこか地味な地方都市に行きたいなあと考えるうち、そういえば仁川(インチョン)はどうだろうと思いついた。ソウルに行くたびに到着するのが主に仁川国際空港だけど、いつもはまっすぐソウルに向かうだけ。東京と成田のような関係? たまには仁川市街に数日間、宿を取ってぶらぶらしてみようと決めた。仁川空港からソウル市街までは直通列車で1時間足らず。わざわざ仁川に泊まる酔狂な観光客は少ないだろうが(実際、仁川空港から仁川市街まではソウルと同じくらい時間がかかる)、意外なおもしろスポットがいくつも見つかったので、これから数回にわたって紹介していきたい。その第1回は漢江の河口にあって海を隔てて北朝鮮と向き合う江華島〔カンファド)の「世界春画博物館」から!
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仁川漫遊記 4 旧日本人街を歩く。
先週は仁川のチャイナタウンを紹介した。公式に認められた韓国唯一のチャイナタウンではあるが、広さはそれほどでもない。そのチャイナタウンの東隣に残されているのが「仁川旧日本人街」。太平洋戦争時には約1万人の日本人が居住していたという。チャイナタウンと旧日本人街の一帯はいま「開港場近代歴史文化タウン」と名づけられ、1世紀以上前の商店、民家などの伝統的建築物が整備、再現されて、歴史散策コースになっている。
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中華街を行ったり来たり 01 チャイナタウンという、もうひとつのバンコク
今年5月、コロナ禍が明けて初めてのバンコクに行ってきた。滞在は2週間。それだけあったらふだんは何都市か回っているところだが、今回はバンコク、それもチャイナタウンだけにへばりついて、連日40度近い猛暑のなかをひたすら歩きまわってきた。 現在のバンコク観光の中心はサイアムからスクンビットにかけての東側エリア。でもチープなお土産ショッピングに屋台飯、フカヒレなど高級中華料理を手ごろな値段で楽しみに、西側のチャイナタウンを訪れたひともたくさんいるだろう。
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中華街を行ったり来たり 02 タイムマシンにおねがい
バンコクの観光客がいちどは訪れるチャイナタウン。メインストリートのヤワラート・ロードができたのが1892年なので、まだ130年ほどの歴史しかないのに東南アジア最大級に成長したチャイナタウン。ショッピングやグルメに熱中するひとがこれだけ大勢いて、でも街のあちこちが再開発に揺れ、伝統的なライフスタイルが消えつつあることには目を向けてもらえないチャイナタウンをめぐるシリーズ。2回目となる今週は「そもそもバンコクのチャイナタウンはどうしてできたのか」、その歴史をおさらいしてみたい。
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中華街を行ったり来たり 03 サムヨート駅からオンアン運河あたり
ロードサイダーズ・ウィークリーを始めた2012年、消えゆくバンコクらしいバンコクを巡り歩く「マイ・フェバリット・オールド・バンコク」という連続記事を掲載した。もともとはそのさらに6年前、バンコク週報という日本語週刊新聞に半年ほど連載した企画を再構成したもので、その冒頭にこんなことを書いた――
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中華街を行ったり来たり 04 チャオプラヤー川べり散歩
先週はバンコク中華街の北端近いサムヨート駅からオンアン運河あたりを行ったり来たりした。今週はチャイナタウンのメインストリートであるヤワラート・ロードの南側、チャオプラヤー川ほとりのソンワット・ロードから、新しい観光スポットとして注目を集めているタラートノーイを行ったり来たりしてみる。
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もうひとつのウズベキスタン 1
8月の終わりから9月にかけて2週間ほど、ウズベキスタンに行ってきた。初めての中央アジア旅行。ソウルに何度も通ううちに、東大門近くの光熈洞という通りにウズベキスタン料理店や商店、旅行会社が並んでいるのを知って、どうして?と思ったのがきっかけだった。 調べてみると日本とウズベキスタンのあいだにはウズベキスタン航空が成田と首都タシケントを結ぶ直行便を運行しているが、週に2便ほどしか飛んでいない。でもソウルとタシケントは大韓航空やアシアナが毎日便を出している。東京からなら羽田から仁川空港を経由してタシケントに向かうほうが簡単だし、運賃も安い。
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もうひとつのウズベキスタン 2 団地という小宇宙
先週はウズベキスタン紀行の初回としてタシケントに残る旧ソ連時代の建築を巡った。その最初にお見せしたホテル・ウズベキスタンがあるティムール広場を取り巻く一角にある、こちらも印象的な建築がウズベキスタン国立歴史博物館(STATE MUSEUM OF HISTORY OF UZBEKISTAN)。開館は1970年。イスラム風の幾何学装飾が全面に施され、モダンでありつつどこかエキゾチックなニュアンスが漂うデザインだ。
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もうひとつのウズベキスタン 4 ウズベキスタン快適旅行案内 vol.2 (文:アーバンのママ)
皆さん、サラーム(ウズベキスタン語でHello!)。 先週に続き、今週もウズベキスタンの旅行案内をお届けします。 さて先週はタシケントに到着してバザール巡りをしていましたが、急に今度はウズベキスタン第二の都市・サマルカンドに向かいます。 2000年以上の歴史を持つサマルカンドは中央アジア最古の都市とも呼ばれていて、シルクロード全盛期の中間地点としてめっちゃ繁栄した場所です(そのあとモンゴル軍の侵攻で廃墟と化してしまう悲しい歴史もあり)。
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もうひとつのウズベキスタン 5 ウズベキスタン快適旅行案内 vol.3 (文:アーバンのママ)
3週に渡ってお届けするウズベキスタン旅行案内も今回が最終回。おまたせしました、最後はウズベク美味いものガイド(すこしソウルの思い出もあり)です、わーい。 さて本文に入る前に、まずはウズベキスタンの食べ物事情から。 ウズベキスタンは前も書いたとおり二重内陸国になるので肉料理が中心。また全人口の95%以上がムスリムという宗教的背景から豚は食べず、その中心は羊と牛で鶏はすこし高級品だそう。 ただしイスラム圏といってもなぜかアルコールはOK。
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地の橋、人の橋[ウクライナ特別編] 03 ありふれた戦禍の日常 | 写真・文:ERIKO(定住旅行家・モデル)
ザポリージャの市内からわずか数十キロの人里離れた土地。雑木林に包まれるようにして、周囲には年季の入ったコテージが点在している。ここに広々とした菜園付きの2階建一軒家がある。リーナさんとバディムさん夫婦が暮らす家。 知らない土地の風景や自然は、そこに暮らす人を通して、やがて身近に、そして心の故郷のような場所になっていく。
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ベジタリアン・フェスティバル参戦記
僕がプーケットを初めて訪れたのが2007年のこと。そのころ夢中になっていたタイの田舎の地獄寺めぐりの最中だった。プーケットと橋でつながる本土側のパンガーにあるワット・タムターパン(Wat Tham Ta Pan)に行ってみたかったのがひとつ。そしてもうひとつの目的がプーケット・タウン全域を会場に開催される世界のマニアに知られた奇祭中の奇祭、ベジタリアン・フェスティバルを体験したかったからだった。 ベジタリアン・フェスティバル=菜食主義者の祭という語感とは正反対の、頬や唇に針や串やいろんなものをぶっ刺して炎天下を行進したり、真っ赤に燃える炭の上を走り抜けたり、中華包丁のような刃物でできたハシゴを登ったり下りたり・・・・・・というハードコアきわまりないフェスティバルである。そこで取材できた記事は『HELL 地獄の歩き方』(洋泉社刊 2010年)に掲載できたので、読んでくれたひともいるだろうか。
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そうだ ベジフェス、行こう。 (文:アーバンのママ)
ウズベキスタンに続き、こんどはタイの南部・プーケットのベジタリアンフェスをいかに快適に楽しむか、お伝えしたいと思います。 先日の都築編集長の記事を読まれて、来年はベジフェス行ってみようかなと計画している奇特な読者の方もいらっしゃることでしょう。そもそもこのお祭りをがっつり堪能する観光客は珍しく、一般的にはビーチサイドでリゾートしながら、旧市街の観光と合わせて怖いもの見たさにちょろっと参加している人たちがほとんど。でも、それじゃ、物足りないですよね? ほぼ1週間続く奇祭のなかで、盛り上がりを見せるのはラスト3日。 是非とも3日間まるまる滞在して、あの非日常な空間を体感してください!
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いにしえのプーケット黄金時代にタイムスリップ! ――コーヒーショップの奥に潜む驚愕のプライベート・コレクション
ベジタリアン・フェスティバルから南タイ料理まで紹介してきたプーケット島シリーズ。最終回の今週は、ベジフェスの舞台となったオールドタウン中心部にある私設博物館「タボーン・ミュージアム」にお連れする。 タウンの目抜き通りであるラッサダー・ロード(Ratsada Road)沿いのタボーン・ミュージアム(Thavorn Museum)はもともと、プーケットで初めての5つ星ホテルとして1961年に開業したタボーン・ホテルの1階部分を使って、ホテルのさまざまなメモラビリアや4代にわたるオーナー家のコレクションを展示した、タイムトンネルのような場所。
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Freestyle China 即興中華 曖昧さに浮かぶ、架空の島 (対談、写真:茅野裕城子、吉井忍)
金門島に行ってきました。小説家の茅野裕城子さん、そしてライターの吉井忍による二人旅です。台湾と中国大陸の間にあるこの場所は、最近の国際ニュースで何かと話題になっているので、耳にしたことがある方も多いと思います。予定を立てないまま金門島に着いてしまいました。茅野さんは台北から、わたし(吉井)は高雄から、それぞれ飛行機で。現地で決まっているのは、宿泊する民宿のみ。観光地図は、金門島の空港にある案内所でもらえました。残りは金門島に着いてから宿の女将さんを交え(というか無理やりお引き留めし)て、プランを組みました。結果、とても楽しい旅になったので、茅野さんとの対談形式でご紹介していきたいと思います。
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Freestyle China 即興中華 台湾「新伝統」タトゥーの彫り師たち (写真・文:吉井忍)
先日立ち寄った高雄市で「台湾タトゥーコンベンション(台湾国際紋身芸術展)」を見てきた。設置されたブース数は全部で500ほど、アジア最大級を謳うだけあり熱気に満ちていた。台湾ならではのタトゥー事情もうかがい知ることができたので、その一端をお伝えしたい。 高雄は台湾南部に位置する港町。コロナ禍前にも一度訪れたことがあり、タトゥー展『TATTOO刺青―身之印』を取材した。(2020年1月22日号『仏タトゥーの巡回展、台湾・高雄へ』)。その際に台湾ではタトゥー関連のイベントが盛んであること、高雄でも大規模な展示が毎年開催されていると聞いていた。 今回の会期は3月1日から3日間。2009年に始まり、今年で12回目を迎える。
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韓国江原道オン・ザ・ロード 1 チョンジョン彫刻公園
先月中旬、5泊6日の韓国旅行に行ってきた。だいたい半年にいちどぐらいのペースで韓国には行っているが、済州島では経験済みだけど本土では初めて、金浦空港でレンタカーを借りてソウルとは反対側の東海岸エリア、北朝鮮と国境を接する江原道(カンウォンド)を巡ってみた。金浦空港→江陸(カンヌン)→三陟(サムチョク)、そして金浦空港に戻る途中のソウルの郊外みたいな水原(スウォン)、最後にレンタカーを返しつつ空港向かいのホテルに泊まって帰国。
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精神病院と巨大石顔彫刻庭園
2週間ほど間が空いてしまった「韓国江原道オン・ザ・ロード」、今週は東海岸の海辺の町・三陟(サムチョク)市郊外にある男根公園=海神堂(ヘシンダン)から一路内陸部にドライブすること約2時間、忠清北道陰城郡にある「ウムソン巨大石顔公園」へお連れする。 韓国のほぼ中央、江原道の南西に隣接する忠清北道(チュンチョンブクト、通称忠北/チュンブク)は、韓国唯一の海と接していない内陸道(なので山梨県と姉妹道県!)。その北部にある陰城(ウムソン)郡の町外れという・・・・・・前回の海神堂公園以上にアクセスのハードルがかなり高い、しかし異常なスケールと迫力の「巨大石顔」がおよそ千体、つまり政治・経済、社会、文化、宗教、芸能、スポーツなどあらゆる分野の世界的な著名人が千人も集結しているという、すさまじい石彫公園、それがこの巨大石顔公園なのだ。
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韓国江原道オン・ザ・ロード 4 チャムソリ蓄音機・エジソン科学博物館
7月から続けてきた「韓国江原道オン・ザ・ロード」、最終回は江陵(カンヌン)市のビーチリゾート・エリアにある「チャムソリ蓄音機・エジソン科学博物館」にお連れする。ソウルから高速鉄道KTXなら1時間半、高速バスでも2時間半ほどで着く江原道の海辺の街・江陵は、手軽なリゾート地として人気。しかしおしゃれカフェが並ぶビーチサイドの裏手にあるミュージアムまで足を伸ばす向学心旺盛な韓国人は、残念ながらあまりいないようだ・・・・・・。 ちょっと見は小さなショッピングモールふうのチャムソリ蓄音機・エジソン科学博物館は、その名のとおり(チャムソリは真・音の意)は蓄音機・映画・エジソンの発明品という3テーマの、およそ5千点とも8千点とも言われる厖大なコレクションを4つ並んだ展示館に詰め込んだ予想外に充実のミュージアム(すべては展示できないので常時展示替え)。
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圏外の街角から
日本全国に蔓延する慢性の疫病がある・・・シャッター商店街という名の病だ。かつての賑わいの痕跡を残しながらも、ゆっくりと死んでいくのを待つだけに見えるストリート。廃墟ではないのに、シャッターの内側にはだれかが住んでいるはずなのに。
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いちばん近くて遠い街 釜山逍遙 後編
昔懐かしいムードのジャングル風呂で、童心に帰って全裸で遊ぶもよし、水着を借りて露天風呂でくつろぐのもよろしいが、忘れてならないのが広いパークのいちばん奥にある「地獄めぐり」。なぜに温泉と地獄がいっしょになってるのか、わかるようでわからないが、とにかくここにはゆるやかな坂道に沿って、地獄のさまざまなシーンが等身大の彫刻で再現されている。
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伝説の生き河童・鯉とりまあしゃん
九州一の河川である筑後川流域の田主丸から吉井あたりは、昔から河童伝説が盛んに伝えられてきた土地。『珍日本紀行』でも田主丸の「カッパ駅」、吉井の「カッパ公園」を紹介しましたが、今回道草していただきたいのは田主丸町内、国道210号線沿いに店を構える『鯉の巣本店』だ。その名のとおり鯉料理とウナギを食べさせるこの店、なぜにわざわざ寄り道する意味があるのかと言えば・・創業者が「鯉とりまあしゃん」と呼ばれる、伝説の人物だから。
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マイ・フェバリット・オールド・バンコク 2
いよいよゴールデンウィークも間近。運良くバンコク行きのチケットを買えたひとにはとっておきの情報を、行けないひとにもせめて旅情のお裾分けを・・というわけで、先週に続いてお送りする古き良き、そしていつなくなってしまうかわからないオールド・バンコクをめぐる旅。今回はバンコクへの旅行者にとって、おそらくいちばんなじみ深いであろうサイアム周辺の超老舗スポット2軒をご紹介する。サイアムあたりはバンコク観光ガイドでも最重要エリアとして扱われているが、今回ご紹介するのは、そういうガイドにはぜったい載らないであろう、でも僕が愛してやまないレトロ・デザイン・スポット。
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街は千の目を持つ:鏡の国の路地裏紀行
江戸時代から明治・大正・昭和の建物が自然なかたちで混在する街並みは、景観保存条例などによって無菌培養のように残された街とはまたちがった、おだやかに時間が止まっている感覚がある。宮崎駿が2005年にこの街の一軒家を2ヶ月間借り切って滞在、そこで育んだ構想が『崖の上のポニョ』に結実したこともよく知られている。
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海景と死者の町
1時間かそこら走って、車窓の左側に大山の雄大な景観が見えてくるころ、JR山陰本線・赤崎駅への曲がり角がある。もともとの名前を赤崎町、2004年からは町村合併で琴浦町と呼ばれるようになった、あっというまに走りすぎてしまうような小さな漁村。どんな観光ガイドブックにも載らないこの地味な町に、これまた観光ガイドには載らない、とびきりの奇景が隠されている。ふつうの観光名所のように、道路標識はない。カーナビにも表示されない。「道の駅・ポート赤崎」を過ぎて、赤崎駅入口の交差点に差し掛かったら、その信号を海側に右折すれば、そこが赤崎の町。そしてさらに海側を走る細い道を見つけたら、それを右に折れてみよう。すると左の海側に・・すぐ見つかるはずだ、巨大な墓地が。
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札幌迷走紀行・後編 郊外聖地――サバービア・ホーリーランドをゆく
札幌市中心部から、国道453号線を一路南下すること約40分、真駒内地区にある広大な国営公園・滝野すずらん丘陵公園に隣接する、これまた広大な滝野霊園。ちくま文庫版の『珍日本紀行・東日本編』のカバーにも登場してもらったし、珍スポットファンにはもはやおなじみの道内最重要ポイントであろう。滝野霊園は総面積約1.8平方キロ。皇居の面積が約1.4平方キロだから、皇居より大きく、約0.5平方キロの東京ディズニーランドにいたっては、なんと3倍以上。むろん日本最大級の霊園だ。しかもそのうち墓所部分は約27万平米、公園緑地が110万平米ということで、霊園のうち四分の三が公園ということになる。そしてその北海道的、としか形容しようのない広大な公園に点在するのが・・・ご存じイースター島のモアイやストーンヘンジなど、あまりに意表を突く巨大石彫群だ。
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圏外の街角から:大洲
かつて松山から宇和島方面に南下するには、宇和島街道と呼ばれる国道56号線を使うのが一般的だった。松山市街を抜け、のどかな田園地帯と山並みを抜けて、伊予吉田あたりのトンネルを抜けると突然、宇和海が目の前に広がる。その景色がすごく好きだった。そして街道沿いに現れ消える内子、大洲といった古い街にクルマを停め、歩き回る時間も。高速道路の松山自動車道が宇和島まで延びてから、すべてが変わってしまった。運転時間は短縮されたけれど、宇和島まで海はひとつも見えないし、わざわざ高速を途中で降りて、街を散策しようというひとだって、ずいぶん減ったにちがいない。高速道路も新幹線も、いざ誘致してみたら街は寂れるばかり・・というのが、いま日本中で起きている「取り返しのつかない勘違い」だ。
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ROADSIDE台湾2:麻豆代天府
先週の彰化・八卦山南天宮に続いて、今週は台湾屈指とだれもが認めるキング・オブ・ビザール・テンプル、麻豆代天府にお連れしよう。台北から新幹線で南下すること1時間半あまり、台南エリアの要所、台南市からクルマで1時間足らずの麻豆(マードウ)は、文旦(ザボン)の産地として名高い、静かな町である。台湾の古寺旧跡は、台北のある北部よりも、早くから中国文明が流入した南部にずっと多く残っている。台南郊外には南鯤鯓代天府という台湾有数の大寺院があるが、麻豆代天府は南昆身に次ぐ規模を誇る、明朝末期建立の古刹だ
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常滑、時間をさかのぼる旅
海上に浮かぶセントレアはともかくとしても、現在の常滑駅から海側の競艇場や市役所があるあたりでさえ、たった数十年前までは海だったという。常滑駅前には今年で廃業という木造3階建ての重厚な「丸久旅館」があって、見せていただいた昔の写真には、部屋からすぐ先の海浜を眺めるお客さんが写っていて、びっくりした。それほど急速に開発が進んだ町でありながら、駅の南東部に広がる旧市街と呼びたくなる常滑の中心部は、小高い丘を取り巻くように、見事なまでに昔ながらのたたずまいが残っている。それも、歴史遺産として「保全」されているのではなく、地元のひとびとがふつうに働き、住み暮らす場として。
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極楽行きのディスコバス
このメルマガや、前身のブログ「ロードサイド・ダイアリーズ」読者のみなさまは、僕がどれだけタイ好きか、よくわかっていただけていると思う。なので「タイに行ったらこんなおもしろいのありました」という報告をもらっても、たいていは驚いたりしないのだが、先日イベントで出会った男性から、「タイのディスコバス、いいですよね~」と話しかけられたときには、久しぶりに驚いたし、悔しかった。(中略)音楽を満載して、とびきりのサウンドシステムと、とびきり過剰なエレクトリック・ドレスアップを施して、田舎のハイウェイに君臨する「走るディスコ」! それはつかのま乗客たちをトリップさせてくれる、極楽行きのマジック・カーペットであるにちがいない。バンコクのおしゃれキッズもまだ知らない、タイの最下層から生まれた最上級のクリエイション。初めてのタイ旅行をきっかけにハマってしまい、タイ語もできないままシーンに飛び込んでしまった渡邉さんのリポートをどうぞ!
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原色の寝室――タイの日式ラブホテルめぐり 2
タイ各地の「日式」ラブホテルをめぐる旅。先週はタイ最北部チェンライの『レッドローズ・ホテル』を紹介したが、今週はチェンマイの『アドヴェンチャー・ホテル』、バンコク郊外の『サイアムソサエティ・ホテル』の2軒にお連れしよう。まずはバンコクに次いで、旅行先としても人気の高いチェンマイ。言うまでもなく、タイ北部最大の都市である。バンコクと異なり、歩いて回れるチェンマイの旧市街はいかにもオールド・タイの風情にあふれているが、アドヴェンチャー・ホテルがあるのは旧市街から外に出た、チェンマイ空港からクルマで5分という大通りの交差点。なのでラブホテルとしてだけでなく、家族連れや団体客などの旅行客にとっても便利なロケーションにある。
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連載:スナックショット 21 京都・兵庫(平田順一)
どうも平田です。京都・大阪・神戸と大都市が近接しながら、それぞれに独自の文化を培ってきた関西地方の街並みは大好きなんですが、コテコテとかベタベタといった形容詞の関西レポートは避けるべく、今回のスナックショットは京都府の中丹地方と兵庫県の播州地方からお送りします。京都府が海に面している事は小学校の社会科で学習するものの、山に囲まれた京都の盆地からは海がイメージできません。一方で古くから海軍の拠点だった舞鶴市を歩いてみると、逆にここが京都の洛中とおなじ自治体にあるのが遠く感じられ、京都共栄銀行や京都北都信用金庫の店舗があるので、あらためてここも京都だったと認識させられます。
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スナックショット 22 岡山(平田順一)
どうも平田です。旅先で酒場の街並みを撮っていると「ちょっとあんた、何を写しているの?」と問いかけられる時があります。またこの一連の行動に対して「そこに何かあるの?」「こういうのが面白いの?」と問われる時もあり、「この雰囲気が良いんですよ」「何があって面白いかは、いろんな町に行って歩いてみないとわからないんですよ」などと答えながら、つくづく説明の下手な自分に嫌気がさすのですが、今回の岡山県は半分が倉敷市水島地区の写真になります。こういう所の写真を撮って伝えたいという気分が顕著に表れているので見てください!
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海辺の村のコンクリ絵巻
台北から新幹線で40分弱、新竹といえばまずビーフンだろう。しかし最近は「台湾のシリコンバレー」と言われるぐらいIT産業が集中していて、いまや台北をスキップして新竹に向かう出張族も多いと聞く。新竹から今度はローカル線に乗り換えて(新幹線とは駅が離れているので注意)、のんびり車窓風景を楽しむこと約30分、新埔(シンプー)という駅にたどり着く。1922(大正11)年にできたこの路線の、当時そのままをとどめているらしい木造建築。眠たげな駅員。駅から外に出ても商店どころか、民家が1軒あるだけ。そして畑の向こうに見え隠れする海(台湾海峡)・・・。「鄙びた」という以外の形容詞が思いつかない新埔駅ではあるが、ここから徒歩わずか数分の距離に、実は台湾屈指のアウトサイダー・コンクリート彫刻庭園『秋茂園』が潜んでいる。
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スナックショット 25 山口(平田順一)
どうも平田です。今回のスナックショットは本州の西の端、山口県で2006年と2007年に行って写真を撮りました。自分は行ったことのない街にどういう酒場があるのかという興味だけで動いており、数多い名所旧跡を素通りするので街の人やほかの旅行者に説明しづらいのですが、まずは現在廃止されている九州行の寝台列車に乗って、夜が明けた柳井市からスタートしました。
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新連載! 高松アンダーグラウンド 1(GABOMI)
瀬戸内芸術祭をめぐるとき、ベースとなるのは高松市だ。しかしそのベースキャンプたる高松市については、意外に情報が少ない。観光地といっても、有名なのは栗林公園や玉藻公園(高松城跡)、四国村くらい。うどん県といっても、朝昼晩3食うどんを食べたいわけじゃないし、だいいちほんとにコアなうどん屋は市内中心部ではなく、むしろ郊外にある。昼間のうちはアートを見てればいいかもしれないけれど、夜や、せっかく来たのだからアート以外のなにかを見たかったら、いったいどこに行けばいいのだろう。
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高松アンダーグラウンド 2:ホテルエンペラー(GABOMI)
連載の2回目がやってきました! 写真家GABOMIです。今回は実用的なディープ情報ですよ。この夏、瀬戸内国際芸術祭だの、うどんだの、出張だの、放浪だの、移住だの、なんだかんだで香川にお越しになるかもしれないロードサイザーズ読者の皆様に、おすすめホテルをご紹介! 先週、高松市中心部、商店街の裏をウロウロしていました。ある建築物の壁画を撮影したくてアングルを探していたのです。壁画の全貌を撮るには下からじゃ無理で、すこし離れた建物の上から撮る必要があった。振り返るとそこに「ホテルエンペラー」。
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高松アンダーグラウンド 3:オーディオいちむら(GABOMI)
どうも写真家GABOMIです。今回の原稿は苦戦です・・・3週間かけ5回取材して、膨れに膨れました。「全部書いていいです」と言ってくれたのでやたらカットもできず・・・もう正直に全部書くしかない! なので覚悟して読んで下さい。出会いは突然に! というか、高松の中心で「あち~」を叫びながら汗ダグで徘徊していた私は、新たなネタを探していた。突如、目に飛び込んできた『オーディオいちむら』と書かれたお店。
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高松アンダーグラウンド:国分寺町リポート1 盆栽(GABOMI)
高松アンダーグラウンドのGABOMIです! おひさしぶりです。9月ごろ高松市の「国分寺町」という町を彷徨い歩いていました。高松の中心部から車で30分、国道沿いの郊外、三方を山に囲まれ、池が三百個もあったりする。まずは地図を頼りに、町の境界線ギリギリを探索して取材していった。隅の隅から攻めちゃおうというわけである。ここでそもそもの話をすると、その翌月の10月19日に都築さんとGABOMIのローカル対談がこの国分寺町で予定されていて、そのためのネタ探しなのであった。とはいえ今までの高松アングラの記事だけでも十分すぎるほど話すネタはあり、わざわざ新たに探す必要は無いといえば無かったけれど、開催場所が国分寺町にある国分寺ホールだし! というそれだけの理由で、国分寺町も取材することにした。
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高松アンダーグラウンド:国分寺町リポート2 山下さん(GABOMI)
どうもGABOMIです(珍しく連投です)。都築さんの国分寺町対談のネタのために、イロイロと町を調べてウロウロしていたころのお話のつづき。「国分寺町はカラオケ天国ですよ!」と、ある町民からの情報を入手した私は、カラオケ文化について取材を開始。カラオケ喫茶、カラオケ教室、カラオケ大会、カラオケ地蔵…などなどを経て、ついに、国分寺町カラオケ文化のルーツを突き止める!それは町外れの山の下にある「山下自動車」の整備工場であった! まさかの工場!
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案山子X 3:堀之内かかし芙蓉まつり(長野)/稲倉棚田かかしまつりコンテスト(長野)(ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。 今回は長野県の「堀之内かかし芙蓉まつり」と「稲倉棚田かかしまつりコンテスト」を紹介します。まずは長野県北安曇郡池田町堀之内地区の「堀之内かかし芙蓉まつり」を紹介します。今年で4回目を迎える「堀之内かかし芙蓉まつり」は、人間そっくりなリアル案山子で「かかし村」を作っている、とてもユニークなお祭りです。
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案山子X 05 コスモス・案山子祭り(岡山)/大草野案山子祭り(佐賀)(ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。は岡山県の「コスモス・案山子祭り」と佐賀県の「大草野案山子祭り」を紹介します。最初に岡山県赤磐市周匝(すさい)の「コスモス・案山子祭り」を紹介します。岡山県赤磐市周匝には、吉井川の堤防沿い2キロ以上に渡って約200万本のコスモスが咲き乱れる「コスモス街道」があります。周匝橋ができた事をきっかけに、地元の方がコスモスを大事に育て続けているのだそうです。毎年コスモスの花が満開になる10月上旬に案山子祭りが開催され、コスモス街道に案山子が立ち並びます。2013年には約40体の案山子が立ち並びました。
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フィールドノオト08 福島県(畠中勝)
大津波、原発事故、放射能問題、またそれらによって引き起こされた新たな災害によって、いまだ被災地の復興は未終息だ。訪れた相馬市で、特に心が苦しくなった光景がいくつかある。ひとつは山積みになった汚染土の袋に囲まれた民家。傍らには一家の洗濯物が干してある。向かいの畑では、家族が食すであろう野菜を大事そうに収穫していくお婆さんの姿があった。津波の被害があった南相馬市では、廃屋に囲まれた馬小屋で、馬の世話をしている男性を発見した。その小屋から数キロ先は海なのだが、海からその小屋まで、見渡す限り、何も残ってはいなかった。あるのは裏返ったままの車や流されてきた漁船、そして家屋の残骸。だが、今は、そこに確かに人がいる。何もかもをなくなってしまった荒野だが、人が、馬が、そこで生きている。そんな彼らの息遣いをフィールド録音として未来に残したいと思った。
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シャンパンコールで夜は更けて
ホストたちの晴れ姿をたっぷり見ていただいたところで、ほんとに偶然だけど、最高のタイミングでTBSラジオにて歌舞伎町ホストの至芸「シャンパンコール」実況録音放送をお知らせ! 来る2月15日(土)夜7~8時、『7 ears in Tokyo』という特別番組が放送されます。どんな番組かといいうと――
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さよなら嬉野観光秘宝館
2014年3月31日、世の中的には『笑っていいとも!』が終わった日だったが、その同じ日に佐賀県の片隅でもうひとつ、ひっそり幕を閉じたものがあった。嬉野観光秘宝館である。『笑っていいとも!』は1982(昭和57)年に開始されたそうだが、嬉野に秘宝館が開館したのは1983(昭和58)年。ほぼ同い年で、あちらは日本最大級の長寿番組だったが、こちらは日本最大級の秘宝館だった。いまから5年前の2009年春、『秘宝館』という写真集を出したとき、あとがきをこんなふうに書いた――
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案山子X 8:菜の花とかかし祭り(兵庫)(ai7n)
今回は兵庫県淡路市久野々の「菜の花とかかし祭り」を紹介します。「菜の花とかかし祭り」が開催される淡路市久野々(くのの)は淡路島の北側に位置し、常隆寺山の高台にある人口60名程の集落です。(中略)「菜の花とかかし祭り」は毎年菜の花の咲く4月上旬に開催され、1000人以上のお客さんが訪れる大きなお祭りです。久野々の人々(実行委員会)が中心となり地域おこしの為に始めたお祭りで、2014年に7回目の開催となりました。4月の第一日曜をはさんだ1週間、地元の方・学校・企業や老人ホーム等の人々が制作した450体程のかかしが菜の花畑の中に展示されました。
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場末の楼閣 ――ソウル風物市場に遊ぶ
先週は三陟(サムチョク)の男根彫刻公園を紹介したが、今週はその帰りに一日遊んだソウルでのお話を。ソウルとはもともと8つの門を持つ城郭都市だったそうだが、そのうち南大門と東大門は観光客にもよく知られた存在だろう。東大門には2007年まで東大門運動場という古びたスタジアムがあって、周囲を屋台がごちゃごちゃと囲んでいた。そのうらぶれた雰囲気が好きで歩き回った日々が懐かしいが、取り壊された東大門運動場の跡地は見るからにクリーンな「東大門歴史文化公園」に生まれ変わり、中心にそびえる未来的な建築「東大門デザインプラザ(DDP)」を設計したのが、いま国立競技場問題で話題のザハ・ハディドだ。東大門運動場にはサッカー場と野球場があったが、取り壊しまでの数年間、駐車場になっていたサッカー場では「風物蚤の市」なる、巨大なフリーマーケットが店開きしていた。
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ツチノコも口裂け女も、みんな岐阜から生まれた!――『奇なるものへの挑戦』@岐阜県博物館
名古屋と郡上八幡のちょうど中間あたりにあるのが関市。「関の孫六」の名を知るひとも多かろう、鎌倉時代に遡る700余年の歴史を持つ、日本どころか世界有数の刃物生産地である。が、しかし! 郡上よりもずっと名古屋に近いにもかかわらず、自動車以外ではかなり不便なアクセス。その不便な関市のさらに町はずれの広大な岐阜百年公園内という、おそらく全国有数のアクセス難易度を誇る県立博物館、それが岐阜県博物館である。ちなみに公共交通機関を使って名古屋から行こうとすると、名古屋駅からJR岐阜駅まで約20分、そこから岐阜バスで小屋名まで38分。さらに徒歩15分で百年公園北口に到着、さらに徒歩7分でようやく博物館に辿り着く。
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案山子X 13:山田かかし祭り(千葉)(写真・文 ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は千葉県いすみ市山田「山田かかし祭り」を紹介します。「山田かかし祭り」は千葉県いすみ市山田地区のお祭りで、今年で7回目の開催となりました。山に囲まれた自然豊かな農村である山田地区ではお米を主に生産しており、鳥よけに使用していたかかしをお祭りのシンボルとしています。いすみ市交流事業の一環として農村部を明るくしようとお祭りを始めたそうで、地域の方に向けて開催されているお祭りです。
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だれもいないミュージアム
現代美術業界で最大の商談会であるアート・バーゼルに呼ばれることは一生ないだろうけど、「CULTURE SCAPES」という毎年ひとつの国をテーマにして展覧会やイベントをしているプロジェクトがバーゼルでは開催されていて、今年は「TOKIO」。文楽あり、和太鼓あり、茶の湯・生花あり、チェルフィッチュや池田亮司という、むしろ海外で活躍が目立つ日本人アーティストあり。そういうなかで、なぜか声がかかって写真展を開くことになった。ウクライナ人のキュレイターが選んだのは、ラブホテルにホストクラブ、着倒れ方丈記、インディーズ演歌歌手・・・と、かなりスイスっぽくない(笑)イメージ。100年前に建てられた銀行を改造し、カフェやシェアオフィス、スタジオとして機能する「mitte」という場所の、広々としたカフェ空間の天井から20枚以上の大きなプリントが、ものすごい違和感とともにぶら下がることになった。
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湯けむり秘宝と西部劇——追想の鬼怒川秘宝殿とウェスタン村
失われた場所といえば、昨年末に閉館となった鬼怒川秘宝殿も、マスコミでやけに大きく取り上げられてびっくりさせられた。それまで秘宝館なんて、見向きもしなかったくせに。ご承知のように、日本に秘宝館が誕生したのは1972年、三重県伊勢市の元祖国際秘宝館だった。いきなり大成功を収めた元祖国際秘宝館に続けと、それから各地に秘宝館が生まれていくのだが、鬼怒川秘宝殿がオープンしたのは1981年のこと。80〜81年は北海道秘宝館、熱海秘宝館、鳥羽SF未来館、元祖国際秘宝館石和館と次々にオープンした、秘宝館ラッシュの時期だった。
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ホノルル旅日記3:ハワイ古寺巡礼
オアフ島ホノルルの東側、ウィンドウォード(風上)と呼ばれるカイルア地区は、ハワイ屈指の美しいビーチやウィンドサーフィンのメッカとしてよく知られている。ホノルルからカイルアに向かってパリ・ハイウェイに乗ると間もなく、車窓左側に立派な三重塔が見えてきて、びっくりするひとも多いはず。ホノルル・メモリアル・パークと呼ばれる霊園に建つ、奈良・南法華寺を模した三重塔だ。ずいぶん前に村上春樹、吉本由美さんと3人で「東京するめクラブ」というユニットを結成し、ちょっと変わった旅行記事をつくっていたことがある。そこで訪れたハワイで、この三重塔を含むホノルルと周辺の寺社仏閣巡りをしたことがあった。あれは2002年だったから、もう13年前! いまもあいかわらず不思議な存在感を漂わせる三重塔を見て、もういちどホノルル古寺巡礼をしてみたくなった。
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圏外の街角から:宮城県白石市
仙台には年に数回は行っているが、東北新幹線でひとつ手前の駅、白石蔵王駅にはいちども降りたことがなかった。東京駅からちょうど2時間。あと15分で仙台に着いてしまう。白石(しろいし)市は宮城蔵王のふもとに広がる、福島県に隣接した宮城県最南端の市。蔵王エリアへの観光拠点であり、いくつか温泉もあるが・・・現在の白石市の人口は約3万5000人。新幹線の白石蔵王駅の利用者は一日数百人という寂しさ。しかも町なかにある東北本線・白石駅までは1時間に1本ほどしかないバスを利用するか、徒歩20分という微妙な距離。温泉場に旅館はいろいろあるけれど、白石の市内には駅前ビジネスホテルがひとつだけ。そしてここでも見事なまでのシャッター商店街が、しなびた血管のように街をくるんでいた。
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ジワジワ来る関西奇行 02 強敵「堺市」にうかつに触れてみる(写真・文 吉村智樹)
「堺市」は大阪府内で人口・面積ともに第2の都市。が、単に2位というだけではなく、1位の大阪市とは趣がまるで異なる独特な文化・産業が存分にあるライバル。いわば「反大阪市都市」。堺市は、一般に「仁徳天皇陵」と呼ばれる大仙陵古墳をはじめ40基にも及ぶ古墳群がひしめく太古の歴史が横たわる街であり、茶の湯の流行の発端の地、キリスト教と南蛮文化が上陸し、南国の樹々がおいしげるエキゾチックタウン、鉄砲の製造を機会として刃物や自転車が作られるようになったという手工業の一大拠点、そして4つもの漁協を持つ漁師町だ。これほどまで際立った特徴があるアイテムを多数抱える市は、大阪の中ではほかにない。有事の際には自治も独立も、さらには敵対することも可能なほどのポテンシャルを秘める。大阪市・大阪府の維新軍がコントロールできない厄介な鬼っ子で、時に大阪市長と堺市長が舌戦を繰り広げることもある。そういう点で堺市は、実に痛快な存在なのだ。
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フィールドノオト36 養蜂箱(録音、写真、文:畠中勝)
まず今回の録音のメインとなった養蜂箱は、取材に協力してくれた植平工業の敷地内にある。鋼の工業製品を製造する会社で、作品の背景にも聴こえるメタルパーカッションのような金属の響きは、その製造過程の音だ。雨を嫌うミツバチは、当然ながら、巣箱の中からは、あまりでてこない。代わりに屋根として設えられたトタンをリズミカルに雨が打つ。雨のリズムとメタルパーカッション。しかし、これだけでは、何を録音するためにここへやってきたのかわからない。祈りつつ、箱の本体へとマイクロフォンを近づけていく。
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バーレスクの歴史遺産を訪ねて
エロチカ・バンブーの記事で触れたように、バーレスクの発祥地であるアメリカには、その歴史を紐解く上でいくつか重要な場所がある。そのうち2ヶ所を『ROADSIDE USA』で訪ねているので、ここに再録しておく。いずれも写真集に収録済みだが、画像など大幅に増やしているので、本をお持ちの方もよかったらご覧いただきたい。ただし、最初に紹介する『エキゾチック・ワールド』は2007年からラスヴェガスにに移転、現在は『バーレスク・ホール・オヴ・フェイム』と名を変えて継続している。バンブーさんが話していたディクシー・エヴァンスは2013年に死去。かつてのヘレンデールの建物は、すでに廃墟になっているという。
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するめクラブ熊本編・写真日記
すでに告知したように、いま発売中の『CREA』誌(文藝春秋刊)の巻頭特集『本とおでかけ』に、『村上春樹 熊本旅行記』が掲載されている。24ページの特別寄稿、すでにお読みいただけたろうか。9月7日には次の号が出てしまうので、古書店で探す羽目にならないよう、ご注意されたし!今回の企画は2004年に単行本が出た『東京するめクラブ』の、11年目の特別リユニオン編として実現したもの。当時は村上さん、吉本由美さん、僕の3人で世界と日本の辺境、ではなくツウがばかにする場所をさまよい、3人で分担して原稿を書いたけれど、今度のリユニオンは村上さんがすべての原稿を執筆、僕が写真、地元在住の吉本さんが案内人、という役割で、のんびり熊本エリアを旅してきたのは、先週の告知でお伝えしたとおり。今回はCREA本誌でお見せできなかった膨大な写真を再構成した、「するめクラブ熊本編・写真日記」をお届けする。
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案山子X 25:気仙沼はるき(長野・大阪)(写真・文 ai7n)
長年住んだ広島を離れ大阪に引越して来て2年が経った。大阪に引越して少し立った頃、『隙ある風景』でおなじみのケイタタさんと知り合い、自分達のアジトだというお店に連れて行ってくれた。それが通天閣すぐ側の新世界市場内にある「イマジネーション ピカスペース」というお店だった。2013年8月にオープンしたこの飲み屋兼遊び場は、池田社長と気仙沼はるきの2人の店主によって切り盛りされている。
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バリ島の音(写真・録音・文:若井響子)
いまからちょうど1年前の2015年1月に、「一人芝居パフォーマー」である若井響子さんによる『アートじゃない生き物vol.1~3』を掲載した。それは東京の日常からひととき飛び出したくて、2014年の6月から9月まで、95日間にわたってイタリアとフランスを旅した彼女の「ポスター壁画ハンティング・トリップ」だった。その若井さんが昨秋こんどはバリ島に滞在して、ポスター壁画ハンティングならぬ、市場から村々を歩きまわってフィールドレコーディングをしてきたという。世界有数の磁場を持つこの島で、魔術的な色彩を帯びる音と、爆発的な西欧文明の侵入によるポップな音がからみあうさまを、眼と耳で同時に味わっていただきたい。
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ホワイトライト・ホワイトヒート ロシア冬紀行4 コイン式タイムマシン
ロシアの冬を駆け足で巡る最終回はロシア版・懐かしゲームセンターにお連れする。パソコンや携帯ゲームには、これまでほとんど興味を持てないままできた。ギャンブルにもハマらなかった(この仕事がすでにギャンブルだし)。でも、往年のアーケードゲーム(家庭用ではなくてゲームセンターの機械)は、その特異な造形美がすごく気になって、「ストリート・デザイン・ファイル」の一冊として『Techno Sculpture ゲームセンター美術館』という本を2001年につくったことがある(もう15年前!)。
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旅する少女歌劇団(文:鵜飼正樹)
鵜飼正樹さんは京都文教大学で教鞭をとりつつ、見世物小屋や大衆演劇の研究を続けている研究者。僕にとっては近代日本大衆文化の師匠であり、本メルマガでも過去に「人間ポンプ」安田里美さんのことを書いてもらったりもした。その広範な研究領域のうちでも、このところ力を注いでいるのが「少女歌劇」。宝塚の成功に刺激されて日本各地に乱立、いつしか忘れ去られてしまった、儚くもユニークな大衆演劇の徒花である。今月28日から奈良の大和郡山で開かれる小さな資料にあわせ、今週は鵜飼さんによる少女歌劇オリエンテーションと、その奥に眠る闇と謎について書いていただいた。
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新連載! さいはて日記帳 vol.01 宗教のさいはて(写真・文:金原みわ)
金原みわは関西の珍スポットマニアのあいだでは知らぬ者のない、有名ハンターである。僕もずいぶん前からファンで、このあいだは大阪ロフトプラスワンで開いたトークイベントにも出演いただいた。みわさんの2つある公式ブログのひとつ「TIN.」には、タイトル脇に「珍スポット/B級スポット/秘宝館/ストリップ/ジャンクション/工場/珍建築/電波住宅/珍寺/珍仏/巨大仏/新興宗教/奇祭/純喫茶/遊郭跡のある方へ」と書かれている。本メルマガ読者で、このどれにも興味がない、という方がいるだろうか!メルマガ連載陣の「案山子家」ai7nさん、「ジワジワくる関西奇行」の吉村智樹さんら関西珍スポ界の重鎮と共に、みわさんにも以前から本メルマガへの寄稿をお願いしていたが、ようやく実現できることになった。不定期ではあるが、これから「さいはて日記帳」の名にふさわしい、身近なさいはてを案内していただく。で、今回はどんなさいはてに!?
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さいはて日記帳 vol.03 夢のさいはて(写真・文:金原みわ)
はじめに断りを入れておこうと思う。わたしは何か書きものをする最初に「良い感じの落とし所」を考える。「良い感じ」というのが自分でもズルいと思うのだが、その方が書いてても読んでても圧倒的に後味が良いと思うからだ。でも残念なことに、どうやっても落とし所が分からない出来事に遭遇することもある。世の中、そんなに後味が良いものばかりではないのだ。ここは静岡県、全国有数の温泉地である熱海だ。ここを訪れている目的は他でもない。ストリップ劇場「熱海銀座劇場」が営業をしているという話を知ったからである。
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昼下がりのインディアン・コーヒーハウス
インドを旅するひとの多くが抱く不安、それが「腹具合」であることは、インド通にも異論がないだろう。体温以上の気温のなか、ふだん食べ慣れないスパイシーなインド料理を毎日食べていれば、どんなに丈夫な胃腸でも疲れが溜まるはず。ディスカバリーチャンネルで世界中の庶民の料理を食べ歩く人気番組『アンソニー世界を喰らう』を、もう10年以上も続けているシェフ兼作家のアンソニー・ボーデインによれば、「スタッフのなかでいちばん食あたりになりやすいのは、屋台料理や地元料理におじけづくタイプ、そういうやつに限ってホテルの朝食バイキングで腹を壊す」らしい。ま、そうは言っても、ベテラン旅人ですら「下痢の洗礼」をいちども受けずに長期間、インドを旅することは難しいはず。数日間のパック旅行ならともかく、ある程度の期間インドを旅する場合、否応なくヘビーローテーションすることになる店がある。それが「インディアン・コーヒーハウス」だ。
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[新連載]Back in the ROADSIDE USA 01 Mütter Museum / Insectarium, Philadelphia
世界がいま壊れはじめてる、と思わない(思えない)ひとはどれくらいいるのだろうか。ひとを救うはずの宗教が殺し合うことを教え、日々の暮らしを豊かにするはずの原子力が何万人もを故郷から追い出し、世界の80人の大富豪が、残りの地球の全人口の半分にあたる35億人と等しい冨を所有するほどに貧富の差は拡大し、僕らは「飢饉できょうも子供が死んでいきます」というメッセージをテレビで見ながら、食べ過ぎのゲップを吐いている。そうやって世界のあちこちがほころびかけているなかで、とりわけアメリカ合衆国の壊れかたにはこころが痛むし、恐ろしくもある。ご承知のかたもいらっしゃるだろうが、2010年に『ROADSIDE USA』という本を出した。25センチ角の大判で528ページ、厚さにして4センチ! 値段も1万2000円(税別)という・・売れるはずもない巨大写真集だった。
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ジワジワ来る関西奇行 09 高砂市の「ロリータ包丁」と「ゴスロリ包丁」(写真・文 吉村智樹)
Twitterを始めて、およそ6年になる。6年もやっていると、ときどき「バズ」る。「バズ」は怖い。自分でも手に負えないほど、ひとつのツイートが広く拡散し、ネット上にノーコントロールな絨毯爆撃をおっぱじめるのだ。Twitterには「炎上」と「バズ」がある。視覚的には似ているが、このふたつの現象は非なるものだ。「炎上」は怒りやからかいの矢がどんどんこちらへ向かってくる状態。対して「バズ」は、自分のツイートが壊れた散弾銃となって連射がやまず、無数の弾が広く広く、遠く遠くへ撃たれ続ける感覚におちいる。これまで何度かバズったが、今年3月にツイートしたこれは拡散の勢いもすさまじく、とりわけ忘れられないものとなった。それが「ロリータ包丁」と「ゴスロリ包丁」。
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案山子X 33:平野がんばる祭(高知)(写真・文 ai7n)
今回は高知県高岡郡佐川町の平野がんばる祭を紹介します。高知県の中西部に位置する高岡郡佐川町。米どころである佐川町の平野地区は昔から水害が多い地域なのですが、みんなで元気を出して共に頑張ろう、地域を盛り上げようという気持を込めて、毎年10月に「平野がんばる祭」が開催されています。2015年に9回目を迎えたこのお祭りですが、祭のシンボルである巨大かかしと等身大のかかし、過去に制作したかかしの写真も展示されており、かかしの数は少ないながらもとても見応えがありました。
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『中国遊園地大図鑑』発刊を祝して!
元旦に送らせていただいた購読者限定プレゼント『DOMMUNE スナック芸術丸・ゆきゆきてユーロビート』、ご覧いただけたろうか。12月19日の21時から24時過ぎまで生配信した番組の直前、19時から2時間にわたって配信されたのが『中国遊園地大図鑑』。ユーロビート特集と一緒に再配信されたので、こちらも見た、というひとが少なからずいらっしゃるのでは。本来、こっちのほうが「スナック芸術丸」向きだったかもですが・・・。『中国遊園地大図鑑』は日本各地と中国の珍スポット・ハンターである関上武司(せきがみ・たけし)さんによる新刊。
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Back in the ROADSIDE USA 27 Elvis Is Alive Museum, Wright City, MO
地図を見ると、アメリカ合衆国の真ん中近くに位置しているミズーリ州。別名「ハートランド」と呼ばれる所以だ。ちなみにアメリカの人口の約半分が、ミズーリ州を中心とした半径800km内に住んでいるという。ミズーリ州は東と西の端に、セントルイスとカンザスシティという2大都市を擁し、そのあいだは広大な自然というか、非常にスカスカな大空間が横たわっている。つまりミズーリを旅しようというものはたいがい、セントルイスとカンザスシティを真横に結ぶインターステート70号線を軸に、ときたま脇にそれたりしながらドライブするということになる。スカスカなようでいて、しかしあふれんばかりのロードサイド・アトラクションが隠れるミズーリは、珍スポット・ハンターにとっては外せない重要ステートでもある。
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Back in the ROADSIDE USA 27 Laclede's Landing Wax Museum, St. Louis, MO
「セントルイスロウ人形館」とも呼ばれるラクリーズ・ランディングのロウ人形館、建物自体は1885年の歴史的建造物と由緒正しいが、内部はかなりなB級感覚満載。人形はロンドンで作られ、髪の毛はイタリア、ガラスの義眼はドイツからとうたっているが、とにかくあまりにもチープな出来で、かえって懐かしい場末感を醸し出している。ひとりひとりが似てないのはもちろん、たとえばサルバドール・ダリとハワード・ヒューズとか、人形同士の組み合わせもすごい。キリストの最後の晩餐は、メキシコの風景だし、月に降り立ったアームストロング船長は、なんと宇宙服の頭部がなく、しかも靴はスキーブーツ、手袋もスキー用というファンキーなスタイリング。汚れたガラスと安っぽい壁紙で仕切られた部屋に立つ人形たちは、もの悲しさを通り越したシュールな表情が感じられる。
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圏外の街角から:キャバレーと路地裏迷宮の若松
先週末から福岡ギャラリー・ルーモで開催中の『キャバレー・ベラミの記憶展』にもなんとか間に合い、会場でUSB版を販売中だ。昨秋、福岡アルティアムで『僕的九州遺産』展を開き、関連イベントとして企画されたバスツアーで僕はかつてのベラミ従業員寮=「ベラミ山荘」を訪れ、そこで電子書籍に収録した写真コレクションに出会ったのだったが、会場に遊びに来てくれたのが木村勝見さん。もともと日劇ダンシングチームのメンバーで、九州に移住してからは奥様の樽見タツ子さんと共に「ザ・インパルス」というユニットを結成。日本全国のキャバレーやホテル、クラブのステージに立ち、ベラミでもよく踊っていたのだという。
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ディープ・コリアふたたび 03 木浦(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
大韓の鉄道には改札がない。改札的な入口はあるが切符をチェックする駅員はほとんどいない。切符の自動販売機はない(地下鉄はある)。切符は窓口と対面して買う。座席はコンピュータで管理されている。希望の列車を告げて、空きがあればそこに座る。それだけのこと。希望列車の座席が埋っていると窓口の切符売が相談に乗ってくれる。ただそれだけのことで、日本でも長距離はそうやって買うことが多いわけだが、しかし改札チェックは必ずある。そのため切符が発行される。しかし大韓鉄道には切符がない。そのかわりにあるのは、レシートである。コンピュータ管理だから入口チェックなんていらない。だから切符も改札機もいらない。嘘乗車するようなやつはすぐわかるのだコンピュータで。そもそもそういう輩は列車に乗ろうと考えないものだ。鉄道乗車性善説もそこには投影されている。
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ディープ・コリアふたたび 04 木浦~大田(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
カセットテープは、もちろんメインの売りだなにはもうない。木浦の商店街ではなく市場のはずれの電気製品とその他を商う小さな店のその中のすみっこに売れ残りとして数本があった。そこではいわゆるポンチャック・ディスコやメドレー歌謡(トロット)のたぐいはCD(ほとんどが2枚組)とDVDで売られていた。どこの街でも全般的にCD屋(旧レコード屋)がそもそもほとんど見当たらない。かつて買っていた店のあたりを探しても消えていた。釜山では、洋楽も扱っている比較的大きめの一軒に行き当たったのみで、あとはポンチャックの屋台が一つ、チャガルチ市場近くにでてたくらい。地方商店街には一軒や二軒あったものだがそれもない。光州には新しい大型書店の一隅にCD売り場があったのみ。木浦も駅近くにあった店など跡かたもなく、その市場の店しか見なかった。CDは売れない、というけれど、たしかにそうだし、日本だって、チェーン店以外で新譜を商う独立したCDレコード屋は数えるほどしかない。
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気まぐれドライブ・タイランド 2 ナコンパトムの龍城地獄
バンコク市内からクルマで1時間ほどの郊外ナコンパトムは、タイの伝統文化を観賞するローズガーデンや、ゾウのショーで知られるサンプラン動物園など、団体観光系のスポットが集まるエリアだ。バンコクからほぼ真西の隣県であり、インドシナ半島のうちで、インドからの僧によって最初に仏教がもたらされた伝来の地であるそうで、市内中心部には全高120.45メートルという世界一高い仏塔プラ・パトム・チェディがあったり、それほど知られていないが珍スポット系では重要なロウ人形館『ヒューマン・イメジャリー・ミュージアム』、タイの「昭和なつかし館」的な『ハウス・オヴ・ミュージアムス』、それに国立のフィルムセンターである『ナショナル・フィルム・アーカイヴ』などは本メルマガでも2012年3月28日号でまとめて紹介した。先週紹介したワット・スラ・ロン・ウアがあるカンチャナブリとバンコクのあいだに挟まれたナコンパトムには、珍寺ファンに広く知られた『ワット・サンプラン(Wat Samphran)』がある。多くのブログや佐藤健寿さんの『奇界遺産』でも取り上げているので、すでに訪れたかたもいらっしゃるのではないか。
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ディープ・コリアふたたび 05 大田~博多(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
老人ディスコは大韓全土にあり、雑居ビルやバス・ターミナル周辺などで、地域老人壮年男女の憩いや発展の場となっている。しかしそこに身を置き続けるには、老人たちと同様の、負の同調性というようなものを身につけていなければならない。それを道々痛感しながら我々はかつての大田万博会場へと向かった。そこは現在巨大な公園になっている。モニュメントである宇宙的な尖塔はそのまま立っている。人が大量に行きかっていた塔周辺の地には、ただ風が吹いているだけだった。そして誰もいなくなった。万国博覧会の、そこはただひたすらその跡地でしかなかった。広く誰もいない公園には、いくつかの建物が遺されていた。コンベンション・センターのようなもの、国際交流で国が得た品々を展示している(宝物殿というか見本市というか)建物、体育館のような建物その他が大きな駐車場とともにあった。
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新連載! フランスわき道より道 見聞録 01 パリでバードウォッチング(写真・文:中山亜弓)
「ZINE」なんて言葉ができるずっと前から、日本のアンダーグラウンド/自費出版を支えてきた中野ブロードウェイのタコシェ。その創設者のひとりであり、現在も店長をつとめる中山亜弓さんは、実は大のフランス通。それも母国ですらあまり知られていない若手作家や、パリ以外の地方で活動するアーティストたちを発掘し、同時に日本の若手作家をフランスでデビューさせるお手伝いをしたりと、フランスと日本の「アングラ架け橋」として長く活躍してきた。その中山さんが、連続テロに襲われて不幸な状況にあるフランスを「いまこそ行かないと!」と応援する不定期新連載。これからいろんな場所と、いろんな人間を僕らに教えてくれます。で、その第1回は、なんとパリの街なかで楽しむバードウォッチング!
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フランスわき道より道 見聞録 02 アトリエ訪問(写真・文:中山亜弓)
今回のフランス行きの目的は、アーティスト石川次郎さんのパリでの展覧会の設営やオープニングに立ち会うことで、展示に合わせてなんと漫画短編集『C'est comme ça』も現地で発行されました。発行元のEditions Matièreは、横山裕一や、トイポップパンクバンドDragibusでシンセサイザーを担当していたこともあるLéo Quievreuxなど、グラフィックとコミックの間にまたがる作品を一貫して出版しています。そもそも編集者のロラン・ブリュエルが、INALCO(国立東洋言語文化研究所)で日本語を専攻したパートナー、セリーヌの日本留学中、自身も映像関係の仕事に就いて日本に滞在し、横山裕一と出会ったことが、出版をはじめるきっかけになったといいます。
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ディープ・コリアふたたび 06 成田~釜山(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
黒の中に群青が混在している空の下の先に光の列がいく筋もある。だんだんその光が大きくなってきて、船の明りであることがわかる。光の渦はない。バラバラにともっている街頭は暗い。オレンジ色の光は以前よりも減っている。きっとあちらこちらがLEDに変えられているのだろう。さぞかしLEDを手にしたときは誇らしい気分で胸を張って電球を手にしたのにちがいない。確かに20年前でさえ、今よりずっと暗かった。イメージは暗い空だった。今はグレーや青みもある。街灯の数だって増えている。頑張ってそのひとつひとつが光っている。きっと日本にはない、世界のどこのものよりもよく光る電球が活躍しているにちがいない。
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ディープ・コリアふたたび 07 釜山~全州(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
暑かった。6月中旬だが、真夏のような陽射しだった。しかし大韓民国は湿度が低いので暑さが体にまとわりつかない。少し助かる。古くて小さくて傾いているモーテルや旅館、その近くにはナイトクラブなども多数ある。何をするでもなく、酒飲んで歌ってうまくいけば店の女の子を連れ出してまぐわったり、出前してもらったりする一帯が駅から2分のところにかたまってある。その背後には20階建ての高級マンションがニョキニョキと伸びている。駅には隣接していない。それはどこの町でも同様だ。
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ディープ・コリアふたたび 08 全州~南原(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
鮮やかな朝とは? 美しい朝やけとかさわやかな風とか美しい妻の作ってくれた朝食とか朝露が光っているくさはらとか、雲がゆるやかに動く山々とか、そのようなものが身近な朝ということなのか。想像しては見る。鮮やかとはスカっと晴れ渡った朝のたとえば10月や5月の空というものかもしれない。ベイビー・ワシントンの69年の作品に「ブレックファースト・イン・ベッド」があるが、考えようによってはこれも情交の果ての朝食だったらきっと鮮やかかもしれない。キャット・スティーヴンスの「モーニング・ハズ・ブロークン」は確かに爽やかで、鮮やかといえないこともないメロディとサウンドであるしソフトな歌い口も大韓民国人には良好だろう。しかしそれらがはたして朝の鮮やかな半島でいかように感じられているのか。何度も何百時間もその土地に足を踏み入れ立ってみてもイメージはぼやけている。鮮やか、という言葉に思い至るものといえば、不備やピンぼけや歪美がまっさきに浮かぶ。それらの鮮烈さは天下一品だ。有無をいわせない反論の余地などない揺るぎない堂々としている。人類はここに学ばねばならない。アイロニーや比喩ではない。心底そう思っている。
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牧瀬茜ストリップ巡業追っかけ旅日記(写真:多田裕美子 文:多田裕美子、牧瀬茜)
メルマガではもうおなじみ浅草・山谷のオフィシャル・フォトグラファー、多田裕美子さん。最近はストリップにハマってて、こちらも以前メルマガで連載してもらった牧瀬茜さんのおっかけをしているという。こないだは松山の道後温泉までついてっちゃったというので、「追っかけ旅日記」を書いてくれるようお願いした。女が女を追いかける、情熱のトラベローグ。写真と文に、牧瀬さん自身による文章も加えてお届けする。
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石川次郎のフランス侵略日記 02(画・文:石川次郎 構成:中山亜弓)
フランス移住も視野に入れ、巡回展FRANCE INVASIONのために、アラフィフではじめての1人海外旅行でフランス再上陸を果たした石川次郎。展示のコーディネイトに奔走したモンペリエのルノ(Reno)のアパルトマンに居候しながら、ギャラリーLa Jetée(ラ・ジュテ)での展示開催に漕ぎ着けたのが前回までのお話。今回は、翌月にパリでの展示を控え、制作を続けながら、ルノの友人や地元のアーティストたちと交流する一方で、恋や婚活に邁進。が、一段落して1人になったとき、ふと、肌で感じる日仏文化の違いや、孤独について日記に綴るようにーー。なぜか蛭子さん風になってしまった登場人物(フランス人)たちの似顔絵とともにお送りします!!!!!
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案山子X 41:かかしの里(愛媛)(写真・文 ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は愛媛県大洲市蔵川のかかしの里を紹介します。大洲市は愛媛県の南部に位置する街で、大洲城を中心に城下町として発展しました。今でも武家屋敷やなまこ壁の土蔵など、江戸~明治時代の面影を残す町並みが残っており「伊予の小京都」と呼ばれています。大洲城の最寄駅であるJR伊予大洲駅から15キロほどの山間に、「かかしの里」として有名な蔵川地区があります。
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石川次郎のフランス侵略日記 06(最終回)Back to Japan編(画・文:石川次郎 構成:中山亜弓)
次郎の寄書い日記もいよいよ最終回! フランス4都市巡回展を終えて日本に帰ってきたものの、8時間の時差のせいで眠れぬ夜に、寂しさをおぼえてウィスキーを飲んでは吼え、マドンナたちを思い出しては「もしも」を夢想する日々…。前回、触れずにいた空白の2日間に展開した渾身のジュテーム作戦に続いて、ラストを飾る衝撃の?告白をお送りします。
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プノンペン・ダイアリー1――ロケンロール、カンボジア!
この正月はプノンペンだった。東南アジアにはずいぶん通ってきたけれど、カンボジアだけはなぜか縁がなく、今回が初めて。カンボジア観光というと、まずはアンコールワットがあるシェムリアップ、それからクメール・ルージュの時代に100万人が虐殺されたという、負の歴史を刻むキリングフィールドというのが定番だが、今回はそのどちらでもなく、プノンペン市街の昼と夜をひたすらうろついて、観光名所とは無縁のカンボジアをかじってきた。今週からその収穫をご披露する。先週はミャンマーの歌謡曲を村上巨樹さんに教えていただいたばかりだが、まず今週はカンボジアのロックンロールを!
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プノンペン・街角オペラ座の怪人たち
このメールマガジンを始めてしばらく、購読者数がなかなか増えなくて苦しんでいたころ、こころの支えになってくれた電子出版雑誌がある。クーロン黒沢さんの『SIX SAMANA』(シックス・サマナ)だ。アジアのアンダーグラウンドなエネルギーに魅せられたひとにとって、クーロン黒沢という名前は長く、ひとつの指標になってきた。1990年代からコピーゲームソフトなど「裏電脳系」の著作をスタートに、東南アジアにうごめく奇々怪々な人間模様を描いてきた黒沢さん。出版社の自主規制リミッターの向こう側にあるリアリティを表現するプラットフォームとして2013年にスタートさせたのが、Amazon・Kindleストアから配信される『SIX SAMANA』である。第1号の特集が『海外移住促進月間』、そして『電子出版で海外豪遊生活』『日本に殺されるな!』『お布施で暮らそう』『アジアのブラック企業列伝』・・・と続く特集タイトルを並べるだけで、その特異なキャラクターがおわかりいただけるかと思う。ちなみに現在発売中の第31号の特集は『貧乏への道 全ての道は貧困に通ず』・・・いきなり読んでみたくなりませんか!
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Freestyle China 即興中華 「僕が最後の砦なんだ」――中国唯一のセックス・ミュージアム「武漢達臨性学博物館」(文:吉井忍)
先週号の編集後記に書いたように、6月の終わりに中国湖北省・武漢でのトークに招かれて、中国内陸部屈指のメガシティを堪能してきた。すでに全日空が成田直行便を就航させているほど、日本企業にとっても重要な都市である武漢は、赤壁など三国志ゆかりの名所旧跡を擁する観光地でもあり、また北京、上海に次いで大学の数が多いというカレッジタウンの面もあって、トークにも学生たちがたくさん来てくれた。しかしまあ・・・三国志の話をロードサイダーズでしても場違いだし・・・と思っていたら、なんと「中国唯一のセックスミュージアム」があるという重要情報を入手! 本メルマガで「Freestyle China 即興中国」を連載中で、トークのお手伝いもしていただいた吉井忍さんに館長インタビューをお願いした。おそらく日本のメディアでは初紹介になるはず。いかにも中国らしい陶磁器から最新のチャイニーズ・ラブドールまで、幅広いコレクションを誌上でお楽しみいただきたい!
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Freestyle China 即興中華 くだらなさというたからもの――「中国抗日ドラマ」の魔界を訪ねて(文:吉井忍)
数ヶ月前、中国から訪れた出版関係の方を東京の書店にご案内した。教養がありお金持ち、ワインをこよなく愛し、有名ブランドの服をさりげなく着こなすこの紳士が「これはいい!」と喜んで数冊買い込んだのが『中国抗日ドラマ読本』(以下、『読本』)だった。その場でページをめくりながら「中国では、こういう視点が欠けているんだよねぇ」と感心しきり。税関で没収されるのではとこちらは気をもんだが、何事もなく帰国され、友人たちに手土産として配られたそうだ。同書の副題は『意図せざる反日・愛国コメディ』。抗日ドラマとは、「日本に抗う」という名前の通り日中戦争(中国語では「抗日戦争」)時代に中国を侵略した旧日本軍(つまり敵役)と、それに対する中国の庶民や共産党側を描くドラマを指す。とは言っても、史実を無視し、現実離れしたトンデモストーリーに当局も怒り心頭。「英雄烈士保護法」(2018年5月施行)などで歯止めをかけようとしているほどだ。
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Northern Lights 2018 vol.1 シゲチャンランド再訪
短い夏休みにどこか遠くへ行きたくなって飛行機を探したら、お盆休みの真っ只中に北海道行きのフライトが空いていた。羽田から女満別空港に飛んで、たった3泊だけど北海道を西から東に走り、新千歳空港から帰るフライト&レンタカーのパックを楽天で予約。ずっと昔、「珍日本紀行」などの取材で訪れた場所が、いまどうなっているのかが最近気になって、よく足を運ぶようになった。先日、文藝春秋の巻頭グラビアで「もうなくなってしまった珍日本スポット」のような特集を掲載した。そのリストアップの段階で、予想以上にたくさんの珍スポットが消滅していることに驚いたのだが、逆に立派な観光名所に格上げされて盛り上がっている場所もある。今回もいくつか行ってみたい場所があり、その訪問記をこれから数回にわたってお届けする。地震で大きな被害を受けた北海道に、ひとりでも多くのひとが訪れてくれることを願いつつ。
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Northern Lights 2018 vol.2 アイスパビリオンはいまもマイナス41度だった!
北海道の真ん中に近い旭川市から、東にドライブすること約1時間。大雪山、層雲峡温泉で名高い上川町の『北海道アイスパビリオン』を訪れたのは1994年、ほとんど四半世紀前のことだった。開館が1991年というから、当時はまだ目新しい観光スポットだった。あれから20年以上経った2018年猛暑の夏、アイスパビリオンはなんとほとんど当時のままのスタイルで、営業を続けていた・・・氷壁600平米、氷量1000トンという氷柱群は、もしかしたらより分厚くなっているかもしれない。
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Northern Lights 2018 vol.3 カナディアンワールド~北の京芦別、バブル遺産の旅
空知地方の芦別はかつて北海道の石炭産業を代表する「炭都」だった。三井、三菱など5つの炭鉱を抱え、星形の市章は「黒ダイヤ」(石炭)を表している。しかし90年代にはすべて閉山。最盛期には人口7万5千を数えたというが、いまは1万4千人弱。夕張をはじめとする炭鉱町と同じ斜陽の道を辿ってきたわけだが、復活の起爆剤として芦別駅から10キロほどの緑深い山中に『カナディアンワールド』が突如登場したのは1990年、バブルの絶頂期だった。事業者となった「星の降る里芦別」は芦別市や、計画を描いた東急エージェンシーなどによる第三セクター。総事業費52億円という大規模プロジェクトだった。カナディアンワールドと言っても、芦別のカナダが再現したのはバンクーバーやトロントじゃなくて、プリンスエドワード島。日本人の女子ならばいちどは行ってみたい(たぶん)、あの『赤毛のアン』の故郷である。
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Freestyle China 即興中華 ラブドールと作る世界観・中国の愛好家たち(写真:コンテスト参加者のみなさま 文:吉井忍)
少し前に武漢でセックスミュージアムを取材させていただいた際、様々な展示物の中で特に印象的だったのが入り口近くに置かれていたラブドールだった。確かに、これも「文化」であり後世への遺産となるものだなと気づいた次第。この時に都築編集長より中国ラブドール業界のオモシロ事例をご教示いただき、いつか書いてみたいとぼんやり思っていた折、今度は中国で初のラブドール写真コンテストがあると聞いて興味炸裂! さっそく主催側に連絡してみたところ、とても好意的に対応していただいた。今回はこの写真コンテスト「娃娃撮影大賽」を中心に、中国のラブドール愛好家たちが繰り広げるストーリーの数々をご紹介したいと思う。
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ディープ・コリアふたたび 21 道高温泉~ソウル(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
タイム・ホテルの裏通りには小さいながら繁盛しているカルビ屋などもあり、それなりに新しい道高のもうひとつの顔(といっても極狭い)になりつつあるのかもしれないが、もともと静かでぼーっとした温泉村なのだから夜は地味である。コーヒー屋は、それでも新築の中型~大型の間ぐらいの店があった。そこは1階がコーヒー屋で上の数階が歌飲食店という作りだったが、店に客はいなかった。夏休みのピークともなればもっと人は増えるのだろうか。浴場だけでなく、大プールもできたことだし、パラダイス・スパのおこぼれで皆なんとかなるのだろう。と思いつつ、たとえば28年前の道高温泉と現在の道高温泉は確かに流れの中でひとつの場所であるのだろうが、我々にはそれが、2018年の現状に立ってみて納得がいくようでいかないようでやはりしっくりこない。かつての道高温泉は一度終わった、といわれたほうが気持ちは多少静まる。
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香港版・海辺の人形墓場
香港の中心部が香港島と九龍半島のふたつにわかれているのはご存じのとおり。香港島の上環(Sheung Wan)からバスに乗って、険しい坂を上り下りすること30分ほど。香港島南西部の華富邨(Wah Fu Estate)という巨大団地でバスは終点になる。華富邨は1968年から70年代末にかけて造成された、当時の香港では有数の規模の公営団地群。最盛期には5万人あまりが暮らし、各種商店に公共施設、市場まで揃った「シティ・ウィズイン・ア・シティ」だった。現在では人口も半分弱、頼んだUberの運転手さんによれば「ここはひとり暮らしのお年寄りばっかりが住んでる寂しいところですよ~、私も20数年香港にいて、初めて来ました!」と感慨深げだった。
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慈雲閣――香港スピリチュアル・トリップ
世界屈指の観光都市であるにもかかわらず、珍スポットという面では意外に物件が乏しいのが香港。名高いタイガーバームガーデンは2000年に閉鎖、伝説の九龍城砦も1993~94年に取り壊され、いまは公園になっている。そんななかで珍寺マニアによく取り上げられているのが、九龍半島サイドにある「慈雲閣」。尖沙咀(チムシャーツイ)から一路北上、九龍城砦跡の公園あたりを過ぎて、約1時間の路線バス旅で慈雲山麓の慈雲閣に到着する。なかなか険しい山腹と、いかにも香港らしい高層マンション群に挟まれた慈雲閣は、道路に面した門から延々と階段を上り、神像が並ぶ中2階の見晴らし台「古国神廊」を経て2階に至る。オープンテラスからは九龍の市街が一望。そして大小さまざまの祈りの場が設けられ、奥には3階に続く階段を兼ねた、18層の地獄が展開する「地獄めぐり」ジオラマ。そして今度は3階から降りていく途中の中3階的なフロアに、おびただしい骨壺が壁面を埋め尽くす納骨堂があるという動線だ。
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Freestyle China 即興中華 中国のスカリフィケーション・アーティスト、蛇肌の小愛(写真:都築響一、小愛/文:吉井忍)
先月末に渋谷ロフト9で伊豆のまぼろし博覧会・館主セーラちゃんを囲むイベントに参加したとき、身体改造をめぐる取材で知られるケロッピー前田くんが、異形の友人ふたりを連れてきてくれた。ひとりはテレビ番組「クレイジー・ジャーニー」にも登場したツノ男ラス・フォックス、そしてもうひとりが最近再始動した雑誌『バースト・ジェネレーション』で見た、全身にウロコのような筋彫りを施した美女。それが北京から来日中という「小愛」さんだった。さっそく取材をお願い、後日スタジオで写真を撮らせていただき、連載「即興中国」の吉井忍さんにインタビューしてもらった記事をお届けする。世界が憧れる刺青聖地の日本が「入れ墨したひとが温泉入っていいのか」なんて下らない議論にあけくれているうちに、身体改造という究極のボディアート最前線はこんなふうに進化しているのだった。
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香港団地宇宙
ニューヨーク以上に「窓からいろんな人生が覗ける場所」があるとしたら、それは香港だろう。異常なまでの高層ビルや住宅が、異常なまでに肩を寄せ合いひしめくさまを、他人はどう思うか分からないが、僕にとってそれはなにより楽しく興奮させられる光景だ。窓の外に美しい自然が広がる場所よりも、はるかに。世界で1、2を争う人口過密な都市である香港は、ありとあらゆる生態の世界有数に過密なコレクションでもあるのだし。『TOKYO STYLE』みたいな『HONG KONG STYLE』ができたらなあと思ったこともあったけれど、それは僕の役割ではないだろう。街をぶらぶら、ホテルの部屋でだらだらしながら向かいのビルの窓の中を覗いているだけで僕は楽しいが、香港のふつうの暮らしって、いったいどんな感じだろう。そう思っていたら、『メイホーハウス生活館』(Heritage of Mei Ho House)という「香港の団地の暮らし博物館」があるのを知った。
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圏外の街角から:キャバレーとシャッターと河童の街・八代
先月、熊本市現代美術館で開催中の大竹伸朗『ビル景』展を見に行った折り、一日早めに熊本入りして八代に泊まってきた。久しぶりにキャバレー白馬の健在ぶりを確かめつつ、こちらも久しぶりの不定期連載「圏外の街角から」で、八代のシャッター商店街を歩きまわってみたかったから。熊本空港でレンタカーを借りて、夕方八代のビジネスホテル着。午後8時の開店を待ちながら近所の居酒屋で腹をこしらえ、久しぶりのキャバレー白馬に入店。がらんとした店内のソファに腰を落ち着けると、ちょっと宮崎美子似の妙齢着物美人が「いらっしゃいませ~」と隣に座ってくれた。おしぼりでサッパリして、水割りを作ってもらってグビリ。あ~、落ち着く。
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新連載! 日本性祭紀行1 伊豆稲取の男根祭り・前編〈どんつく祭り〉(写真・文:深沢佳那子)
東京ドームシティ・ギャラリーアーモで4月に開催された「アウトサイド・ジャパン展」で、奇妙な手づくりコラージュ年賀状が飾られた一角を覚えていらっしゃるだろうか。その巨大顔ハメで記念写真を撮ったひともいるはず。あの作者が深沢佳奈子である。展示会場でお話ししてみたら、深沢さんは大学院博士課程で「性器信仰」について研究していて、暇を見つけては日本各地の「男根がフィーチャーされた祭り」を訪ね歩いているという。すごく気になって写真を見せてもらったら、フィールドワークとして興味深いのと同時に、そんなビザールな祭りを屈託なく楽しんでいる地元のひとたちがたくさんのスナップ写真に写っていて、その表情がすごくいい。というわけでいきなりお願いして、深沢さんが歩いている「性器のお祭り」を連載で紹介してもらうことにした。
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ロウ人形に教わる「魔都」上海
上海に初めて、たとえば3泊4日とかで旅行しようとする。旅行ガイドやウェブサイトを見て行きたい場所をチェックして・・・・・・いきなり途方に暮れるひとが少なくないはずだ。歴史的な観光名所はもちろん、メジャー・サイズのミュージアムも年々増えるいっぽうなので、いったいどこをどう回ったらいいのか、選択に困ってしまう。そういう新たな観光スポットの影で、昔から姿を変えずに残っている場所もある。僕は初めて訪れる都市でロウ人形館を探すのが好きなのだが、上海にもおなじみマダム・タッソーがある。でも、もう一カ所、いまから10年以上も前に上海で見つけたロウ人形の館が、まだそのまま残っていると聞いて、今回もつい再訪してしまった。
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すぐそこにいる幻想生物たち
平日の昼下がり、ふだんなら静かなはずの国立民族学博物館が、やけに賑わっていた。それも、いつもよりもずっと若くて、博物館よりむしろ秋葉原や大阪日本橋にいそうな子たちが、展示に食いついている。8月末から始まっている特別展『驚異と怪異――想像界の生きものたち』が気になっていて、やっと来れたのだった。タイトルどおりこの特別展は「人間の想像のなかの生きものたち」を世界中に求めた特別展。日本を含むアジア、中近東、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカ大陸・・・・・・世界各地の人間たちが思い描いた不思議な生きものたちと、それらを通して見えてくる人間の想像力の豊かさやバラエティ、文明をまたいだ共通点などを、約630点に及ぶ資料で探るユニークなプロジェクトなのだ。
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圏外の街角から:今治の昼と夜と
地方でトーク・イベントに呼ばれるとき、前後の日にどこか別の場所に立ち寄ってみることがよくある。11月初めに愛媛の松山でトークがあり、いつもだったら松山から南下して宇和島方面に遊びに行くところ、反対方面の予讃線に乗って今治で1泊してみることにした。今治・・・・・・どんなイメージが湧くだろう。まず「いまばり」って読めるだろうか。あとは造船、タオル、焼鳥(鉄板にへらで押しつけて焼くスタイル、今治のソウルフードらしい)? 松山市に次ぐ愛媛県2番目の都市であり、四国全体でも各県の県庁所在地に次ぐ5番目に大きい市である今治は人口約16万人。四国の陸地と、伯方島、大島、大三島など瀬戸内海の島嶼部で構成されている。
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中国快適旅行案内 (写真・文:スナック・アーバンのママ)
1月のはじめに、10日間ほど中国を旅行してきた。とくに計画もなく上海イン・アウトの航空券だけ買って(中国東方航空で4万円少しだった)、あとはGoogle Mapを見ながら計画をたてて、上海→重慶→成都→西安→上海と鉄道と飛行機で移動しながら、たまに誰かが合流したりひとりになったりを繰り返す、なんだかちょっと学生時代のような懐かしい旅になった。都市間の移動は飛行機や鉄道が発達しているからとても快適で、電子マネー決済のおかげでお金のやり取りも簡単、困ったときには翻訳アプリで会話することもできる。そういうコミュニケーションのハードルが下がったおかげで、中国を旅するハードルもぐっと下がったんじゃないだろうか。いま、世界ではコロナウイルスが猛威をふるっていて、しばらくのあいだ中国を訪れることはできないけれど、わたしたちにできる一番のことは、いつか安心して中国に行ける日が来たら(なるべく早くそうなってほしい!)、たくさん旅して、めいっぱい楽しむことだと思っています。その日のために、今回の中国旅行での役立ちアプリや、ホテル・交通情報など、気楽に旅する方法をちょっとだけ書かせていただければと思います~。中国、大好きだよ!
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赤線酒場×ヤミ市酒場 ~盛り場のROADSIDERS~ 第8回 福島県・白河市 (文・写真:渡辺豪+フリート横田)
福島県白河市に「親不孝橋」なる橋があると小耳に挟んだ二人。色街のメインストリートは「親不孝通り」、その街区に入る手前の橋は「親不孝橋」といつしか呼ばれることが多い。心は松尾芭蕉。矢も楯もたまらず、みちのくの関、白河に降り立った。みちのくの入口、白河。当地にも遊廓が存在したが、設置年は不明。奥州街道沿いの飯盛旅籠で売笑を営んでいた飯盛女が近代以降、当地に移転してきたものと思われる。明治後期の文献によれば、親不孝橋の袂には石造の大門があり、東京の吾妻橋を彷彿とさせる景観だったという。
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おもしろうてやがてかなしき済州島紀行3 世界性文化博物館
韓国西南端の海上に浮かぶ済州島は、朝鮮戦争が終結して世情が安定したころから、韓国人カップルの新婚旅行先として人気ナンバー・ワンになった。1989年に海外旅行が全面自由化されるまで、韓国人にとって海外への新婚旅行は高嶺の花だったし、気候が温暖で距離も手近、島民性も穏やかな済州島は、かっこうのハネムーン・スポットだったのだ。そのへんの事情は、日本の宮崎とよく似ている。海を渡る旅、という意味ではいちおう「海外」だし。統計によれば1970年ごろから1995年まで、済州島は新婚旅行市場の占有率第1位の座にあり、96年にはじめて海外旅行に1位を奪われたものの、97年の経済危機によって、ふたたび新婚さんたちは済州島に戻ってきて、いまだに国内の新婚旅行先としては不動の人気を誇るらしい。
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おもしろうてやがてかなしき済州島紀行4 健康と性博物館
沖縄本島よりひとまわり大きいくらいの島なのに、なんと3つもセックス・ミュージアムがある済州島。先週はワールドカップ・サッカースタジアム内という意表を突いたロケーションにある「世界性文化博物館」を紹介したが、今週お連れするのは「健康と性博物館」。英語名も「ザ・ミュージアム・オブ・セックス&ヘルス」、来週紹介予定の「ラブランド」に続いて2006年3月に開館した、すでに14年の歴史を誇るセックス・ミュージアムである。「性を正しく理解すれば、健康的で素晴らしい性生活が実現できる」というコンセプトのもと、オトナなら知っておくべき性の知識が各フロアにたっぷり展示されているわけだが……済州島初体験から10年ぶりに再訪して、実はいちばん驚いたのがこのミュージアム。いろいろ意識高くなった現在、セックス・ミュージアムの類いは衰退気味と思いきや、ここは以前より格段にパワーアップして盛業中なのだった!
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おもしろうてやがてかなしき済州島紀行5 ラブランド
済州島セックス・ミュージアム行脚の最後を飾るのは「ラブランド」。これまで紹介した「世界性文化博物館」「健康と性博物館」は島の南西部、リゾートの西帰浦(ソギポ)エリアにあったが、ラブランドは北部の空港から南に向かう丘陵地帯にあって、空港からタクシーでも15~20分ほどという便利なアクセスだ。しかもお隣は済州道立美術館という立派な現代美術館、目の前は「見た目上り坂なのに実は下り坂」という観光名所、通称「トッケビ道路」。こんなロケーションにセックス・ミュージアムとは! 済州島セックス・ミュージアムの元祖とも言える、そのラブランドは2002年から2年間の準備期間をかけて、2004年11月16日にオープン。すでに15年以上の歴史を誇っている。コンセプトは――「生命の神秘を表現するアート・テーマパーク」。ソウルの美術大学・弘益大学校の卒業生たちが中心となって制作した作品約100点が、サッカー・フィールド2つぶんという広大な敷地にずらりと並び、おまけに2つの室内展示館まで備えるという、やたら大規模な「性をテーマにした野外彫刻公園」なのだ。
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Back in the ROADSIDE USA 110 Maryhill Museum of Art, Goldendale, WA
ものすごく久しぶりのロードサイドUSA。もう連載終わったと思ってたひとも多いでしょうが、終わってないです! 昔のフィルムをスキャンするのをサボってただけ!涙 新型コロナウィルス感染防止のために、世界中でさまざまなビッグイベントがオンライン化してますが、パリコレも史上初の「デジタル・コレクション」になったのは、けっこうニュースで取り上げられたのでご存じのかたもいるかと。その皮切りとなる2020-21秋冬オートクチュールで、ディオールが発表した短編映画のような映像が、いろんな意味で話題になってます。 イタリアの映画監督マッテオ・ガローネによる、めっちゃ耽美な映像と、人形サイズの完璧なオートクチュール・ドレスによるビジュアル・ファンタジーに酔うひとあり。映像はきれいだけど、登場するのが全員白人なのが、いまどき神経を疑うという批判するひとあり。いろんな反応を報じたニュースのなかで、今作のヒントとなったのが「第二次大戦中に人形に服を着せた展覧会があった」という簡単な説明が見うけられます。でも、これはちょっと端折りすぎ!というわけで今週紹介したいのがアメリカ・ワシントン州の奥深くに眠るパリコレ人形ドレス・コレクション。
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日本性祭紀行10 新潟県魚沼市の「しねり弁天たたき地蔵祭り」 (写真・文:深沢佳那子)
「しねり弁天たたき地蔵祭り」という奇妙な名前の祭りが新潟県魚沼市小出町にある。 しねり弁天の「しねり」とはこの地域の言葉で「つねる」という意味で、なんでも女性の尻をつねる祭りらしい・・・・・・という噂が耳に入った。このご時世にあって女の尻をしねるとは、他の性器崇拝の祭りと比較してもかなり攻めに攻めた祭りである。女である私は「しねられる方」なので、少々気乗りしないながらも魚沼へと足を運んだ。 祭りが行われる弁天堂の近くに立つ看板にはその由来がこのように書いてある。
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切り裂きジャックの街で
殺した人間の数から言えばもっと残忍なシリアルキラーはたくさんいるが、それでも「切り裂きジャック」が世界でいちばん有名なシリアルキラーであり続けていることは間違いないだろう(切り裂きジャックの犯行と公式に認められている被害者は5人)。冒頭に引用した仁賀克雄さんなど、切り裂きジャックの研究に生涯を捧げてきた「リッパロロジスト」(ジャック・ザ・リッパー Jack The Ripperから)による研究書は、犯行から150年近く経った現在でも数多く発表されている。 ヴィクトリア女王が君臨していた1888(明治21)年のロンドン。わずか3ヶ月足らずのうちに5件の凄惨な殺人事件を犯し、身を翻すように消え去り、いまだに正体不明の切り裂きジャック。凶行のホームグラウンドだったロンドン東部ホワイトチャペル地区に、その名も「ジャック・ザ・リッパー・ミュージアム」というおどろおどろしい観光展示施設がオープンしたのは2015年の夏だった。
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圏外の街角から:高崎中央銀座
群馬県立近代美術館がある高崎市までは、新幹線なら東京から1時間足らず、特急でも1時間半ほど。充分日帰り圏内だが、せっかく来たからには駅でだるまのお土産買っておしまい、ではもったいない。高崎の街なかを散策して、ワビサビ旅情をたっぷり味わっていただきたい。群馬県内最大の人口を擁する中核市でありながら、これほど寂れた商店街や飲み屋街が中心部にそのまま残る高崎市。さみしい場所が好きな一部マニアにとっては、かなり楽しめる場所かと・・・・・・。 高崎中央銀座は高崎駅の西側、徒歩20分ほどにある「高崎の銀座」・・・・・・だった。1969(昭和44)年に完成した県内初の屋根付きアーケードとして、当時は県内一の賑わいを見せていたが、しだいに駅前の大型商業ビルにお客さんを取られ、2014年には大雪でアーケードの一部が崩落という不運も重なり、いまやレトロと言えばレトロな、典型的シャッター商店街となってしまった。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 03 埼玉県
日本の伝統美を残すため、彫った彫刻600体 神秘珍々ニコニコ園―― ウィキペディアにすら項目がある神秘珍々ニコニコ園は、関東地方の珍スポットでも大物として知られ、ネットでも数多くの訪問記がアップされているほか、テレビ番組でも取り上げられていた。高坂駅前の不動産屋の社長である橋本保久氏がニコニコ園の園長でもあり、一時は東松山遊園地という手作り遊園地も開いていたという。 2004(平成16)年、園長の高齢化により閉園(2006年に他界された)。ヨドコウ物置が迷路のように並ぶ園内は、「展覧会開けなかったら、自分で物置買って田んぼに置けばいいんだよな。美術館や画廊のせいとかにしてないで」と、大いに勇気を与えてくれたものだったが。 グーグルストリートビューで見ると、ニコニコ園の跡地にはいま、太陽光発電パネルが並んでいた。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 04 千葉県
バブルの象徴とも言える「ふるさと創生事業」は、1988年から89年にかけて、各地の市区町村に「地域振興のために1億円を交付する」という、竹下内閣による究極の交付金ばらまき事業。このおかげで日本各地に珍名所が続々誕生したわけだが、房総半島のローズマリー公園もそのひとつ。なぜローズマリーかといえば、道の駅がある旧・安房郡丸山町が地中海と同じ緯度に位置することから、「風車とローズマリーの里」が構想され、1991年(平成3年)に「ローズマリー公園」として開園したのだった。 園内に「シェイクスピア・カントリー・パーク」が誕生したのは1997(平成9)年4月23日のこと。1564年4月23日に生まれ、1616年4月23日に亡くなったウィリアム・シェイクスピアににちなんでだった。
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ParadiseLost 二度と行けない珍日本紀行 15 愛知県4
お料理と地獄の関係は?――東海地方屈指のB級スポットとしてマニアの熱い支持を得てきた、愛知県蒲郡市・三谷(みや)温泉の延命山大聖寺大秘殿。残念ながら2014年9月に閉山してしまった。跡地は現在、廃墟化している模様。グロテスクな地下洞窟めぐりが人気だった大聖寺大秘殿。同系列というか兄貴分の豊田市・岩戸山観世音寺風天洞に展示物の多くが移設されたそうなので、風天洞のほうはいっそうパワフルなアウトサイダー臭を放っていると思われる。
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新連載! レバノン紀行 青い海とデストピア 1(写真・画・文:アツコ・バルー)
今年2月24日号でピエール・バルーの素晴らしいメモワール「ル・ポレンの頃 花粉は飛び続ける」を書いてくれたアツコ・バルーさん。打ち合わせをしているときに「去年レバノンに行って、すごく楽しかった!」という話を聞いてびっくり。レバノンって……そう、あの日産元会長が自家用ジェットで逃亡したレバノン。去年8月4日に首都ベイルートの港でとてつもない爆発事故が起きて、207人もの死者を出した、あのレバノン。しかもアツコさんが訪れたのは事故からわずか3ヶ月後! しかもいま住んでいるロンドンが再ロックダウンに突入する直前! いろいろきわどい旅だったにちがいないので、さっそくお願いして旅行記を書いていただくことにした。これから4回にわたっての短期集中連載。どこにも行けない、いまこのとき、しかも緊急事態宣言中の東京で、こんなトラベローグを読める幸福と羨望! ウズウズしながら一緒に誌上旅を楽しむべし!
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レバノン紀行 青い海とデストピア 2 (写真・画・文:アツコ・バルー)
何日か暮らすうちに、同じベイルートの街でも通り一本違うと風景ががらりと変わるのに気がつく。住まいのある「柘榴の目」の町では角ごとにキリスト教の聖人が祀ってある。しかもかなり派手な飾り方で、時にはクラブまがいのミラーボールがついていたり、スピーカーから讃美歌が流れる仕組みのものもある。ここは古いキリスト教の宗派、マロナイト派の区域なのだ。 ところが大通りを渡ると、どかーんとモスクが建っていて、角ごとに今度は宗教指導者と戦死したヒーローたちの馬鹿でかい写真が看板になっている。それらに混じって背広姿の政治家たちも至る所で看板になっている。それぞれの宗派を母体に持つ政治家たちである、写真の下には○○○さんのお陰で道路が舗装されました、とか書いてある。国会議員は公僕でしょうに、特にお礼されることでもないのでは?と思うのは大間違い。後援会の人たちは様々に口利きをしてもらったお礼に看板を作って讃えるのだという。
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レバノン紀行 青い海とデストピア 3 (写真・画・文:アツコ・バルー)
11月1日にレバノンに着いてから毎日車で街を回る。ロックダウン中なのでしまっている店も多いが、食料関係の店は開いているから結構楽しい。学校も閉まっているので子供たちはどうしているのだろう。姿はあまり見えない。 レバノンで運動をしたければ私立のスポーツクラブはある。素敵なプールもマリンスポーツもなんでもできる。よい教育を受けることもできるし、宗教の縛りがない自由な思想を持っている家族もたくさんいる。しかしそれは余裕のある人たちである。彼等だけが思想の自由と移動の自由を持っている。それ以外の人たちは国家ではなく宗教団体の厳しい規律に従い、そこから抜け出すことは大変難しい。幼児婚、処女信仰、宗教差別、さまざまな弊害に苦しむ。そんな社会でなんとか個人の幸せを見いだして生きていくしかないのである。
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レバノン紀行 青い海とデストピア 4 (写真・画・文:アツコ・バルー)
戒厳令がまだ夜8時までだったとき、山岳地帯に遊びに連れてもらったことがある。 ベイルートから20キロメートルほど内陸に向かって、レバノン―シリア国際高速道路を走る。ところが高速道路とは名ばかりで、信号こそないものの、道の両脇には商店が並び、車は自由に停まって買い物をしたり、原付に家族4人で乗ってお父さんは膝の間に子供をひとり挟み、後ろのお母さんは片手でもうひとりの子供をつかみ、もう片手で旦那の耳に携帯電話を当てながらすごいスピードで車に切りこんできたり。中には反対方向から突っ込んでくるキチガイもいたりで、怖いったらありゃしない。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 24 兵庫1
人形たちの極甘世界一周メドレー――数世代の関西人に親しまれてきた宝塚ファミリーランドが閉園したのは2003年のこと。もう20年近く前になるが、いまもあのアットホームな雰囲気を懐かしむひとが少なくない。ファミリーランドが開園したのは明治44(1911)年、なんと90年以上の歴史を誇る遊園地だった。なかでもメイン・アトラクションのひとつ「大人形館・ファンタジーワールド」というライドものにすっかり魅せられて、1998年に『週刊SPA!』で連載中だった「珍日本紀行」で取材しただけでは気持ちが収まらず、2003年にはデザイン誌『アイデア』の連載「デザイン豚よ木に登れ」でもふたたび取材。このときは担当者のかたにもじっくりインタビューできたので(『現代美術場外乱闘』洋泉社刊、2009年に収録)、そちらのテキストをたっぷりの写真とともにご覧いただく。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 26 長野2 金と宝石と美術品、信州のノイシュバンシュタイン城と人は呼ぶ
松本市から長野市へとクルマで移動するには、長野自動車道を使えば1時間半足らずの道のりだが、きょうはJR篠ノ井線に沿うように下道を走ってみる。松本市内から北上してしばらく、山道へと入り込んでいくと、かつて四賀村(しがむら)と呼ばれた集落に至る(2005年に松本市に編入)。ここに来たのは四半世紀ぶり……居酒屋チェーン「養老乃瀧」創業者・木下藤吉郎(本名・矢満田富勝=やまんだ・とみかつ)氏が建立した宮殿「信州ゴールデンキャッスル」を取材に来たのだった。
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Freestyle China 即興中華 儚い「いんちき」を記録したい 『どえらいモン大図鑑』著者インタビュー (写真:いんちき番長、パブリブ提供 / 文:吉井忍)
先日、中央線沿線にある「いんちき番長」氏(以下、敬称略)のご自宅を訪問する機会があった。出版社パブリブの人気シリーズ『いんちきおもちゃ大図鑑』(全3巻)で知られるおもちゃ研究家のお宅は、期待通り世界各国から収集されたおもちゃであふれていて、一足踏み込んだだけで並々ならぬエネルギーが感じられる。 いんちき番長の最新刊は『どえらいモン大図鑑』。“青い猫型ロボット”からインスパイアされたおもちゃ(=「どえらいモン」)計373種をまとめたものだ。台湾版が翻訳出版されるなど海外でも話題となった『いんちきおもちゃ大図鑑』のスピンオフ企画で、おもちゃ屋さんやぬいぐるみ屋、フィギュア屋、文房具屋、家電屋、時計屋などあらゆる場所に広がる「どえらいモン」を網羅する。 これらの膨大なサンプルが採取された場所の多くは中華圏とのこと、いんちき番長がどのようにしてパチモンを集めてきたのか、まずはそのきっかけからお話を伺った。
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新連載! 地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 (写真・文:椋橋彩香)
ロードサイダーズのみなさまならご存じのかたも多いと思われる地獄研究家!の椋橋彩香(くらはし・あやか)。タイ全土の(ど)田舎に隠れる仏教寺院の地獄庭園をひたすら巡り歩き、その成り立ちや思想の背景をアカデミックに追求し続ける、日本唯一どころか本国タイでも希少な研究者である。2019年04月17日号の「Neverland Diner 二度と行けないあの店で では、そんなフィールドワークの旅で巡り会った深夜屋台の思い出を『深夜の路地で、立ち食いサラダバー』に書いてもらったりもした。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 #02 ワット・サムパシウ (写真・文:椋橋彩香)
2016年8月21日 ワット・パイローンウアでの調査を終えると、我々(私・弟さん・娘さん)は次の目的地、ワット・サムパシウへと向かった。 ワット・サムパシウは、ワット・パイローンウアと同じくスパンブリー県内にあり、ちょっと変わった壁画が有名だ。大学院の夏休みに行なっているこの調査では、立体像のある寺院(これを「地獄寺」と称している)だけでなく、地獄が描かれた壁画のある寺院も対象としている。 さっそくお堂に入ると、こんな感じで隙間なく描き込まれた壁画が視界いっぱいに飛び込んでくる。ちなみに仏像の後壁には仏教の宇宙図が描かれていて、その下部にお目当ての地獄絵がある。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 #07 ワット・ドゥシダラームウォラウィハーン วัดดุสิดารามวรวิหาร (写真・文:椋橋彩香)
2016年8月25日 昨日託しておいたアンケート調査用紙を回収しに、ふたたびワット・パークボーへ。 かなり不安であったが、昨日のおじさんはちゃんとアンケート調査を書いておいてくれた。これでひと安心。ワット・パークボーをあとにする。 この日のメインは、バンコクにあるワット・ドゥシダラームウォラウィハーン。 本堂にある壁画が描かれたのは18~19世紀で、この調査時点では最古の現存作品である。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 #08 ワット・ムアン วัดม่วง (写真・文:椋橋彩香)
2016年8月27日 コンビニで朝ごはんのカノムパン・サンカヤーバイトゥーイ(パンダンリーフを使用した甘~い緑のカスタードクリームのせ食パン)とラブリ~すぎる飴を得て、いざバンコクへ出発。 BTSアヌッサワリー駅でロットゥー(乗り合いバン)へ乗車し、バンコクから北上すること約3時間。アーントーン県にある有名寺院、ワット・ムアンへ到着した。 ここは、私にとって特別な地獄寺だ。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 #09 ワット・ガイ วัดไก่ (写真・文:椋橋彩香)
2016年8月27日(続き) ワット・ムアンでの調査を終え、次なる目的地であるワット・ガイへ向かう。 が、寺院からの交通手段がなかった。 仕方なくまわりの人たちに相談すると、全身真っ黒に日焼けして胸に大きなタトゥーの入ったいかついおじいさんが、親切にも停留所まで連れて行ってくれることになった。ありがたい。 おじいさんのおかげで、バイクの前方に取り付けられた荷台に乗るという新しい移動手段を得た。
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僕的パリ・ミュゼ紀行 1 狩猟自然博物館
昨年11月にパリ・アルサンピエール美術館で取材した「HEY! LE DESSIN 絵画とは素であり描であり」を2週にわたってお伝えした(11月9/16日号)。そのとき写真を撮って回った「僕的パリ・ミュゼ紀行」を早く掲載したかったのに、国内の美術館で開催中の展覧会を優先しているうちに2023年になってしまった……これから数回にわたって、気の向くままに巡ったお気に入りミュージアム散歩にお付き合いいただきたい。 パリ3区、4区にまたがるマレ地区は、もともと中世の時代にフランス王が王宮を移転させたことから貴族たちがこぞって本邸を構えるようになった。のちに貴族や富裕層がフォーブール・サンジェルマン地区に移動していくと、19世紀からマレはユダヤ人居住区となり、第二次大戦のナチスによる迫害を挟んで労働者階級の街となる。豪壮な邸宅の多くが姿を消していくのを危惧したシャルル・ド・ゴール政権時代の文化大臣アンドレ・マルローの指揮によって歴史的地域・建築の保存地区となったマレが、いまではパリ屈指の観光エリアであり、オシャレスポットとなっているわけだ。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 #12 ワット・タースンタクシナーラーム วัดท่าซุงทักษิณาราม (写真・文:椋橋彩香)
2016年8月29日(続き) ワット・バーンノムコーで出会ったおじさんに車で送ってもらい、同じくアユタヤー県内にあるワット・タースンタクシナーラームへ到着した。 今回は幸いにも車で連れて行ってもらえたが、この寺院は道路沿いにあったので、公共交通機関ではおそらく行くことができないだろうと思った。 ワット・タースンタクシナーラームには、仏像や僧像が並んでいるお堂の一角に地獄をあらわした浮彫がある。
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タイ、ついでの美味いもの紀行 (写真・文:アーバンのママ)
みなさん、あけましておめでとうございます! アーバンのママです。 コロナ渦で予約とキャンセルを繰り返してきたタイへの航空券ですが、ようやく1年越しで渡航することができました、めっちゃ嬉しい~。 今回の取材先もいつもどおり、たどり着くのにまあまあ労力を使いますが、なにがあっても美味しいものを食べたい星のもとに生まれたため、取材のアテンドより時間をかけ取材地周辺の美味しい店を探し出してしまいました(宿命)。 普通の旅では物足りない読者の皆様がいつか訪れる際に、すこしでもお役に立てば幸いです♡
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プルーストの部屋で
「狩猟自然博物館」「移動遊園地博物館」と巡ってきたパリ・ミュージアム紀行。今回取り上げる「カルナヴァレ パリ歴史博物館」。数あるパリのミュゼでもかなりのメジャーどころなので、ご存じのかたも多いはず。しかし改修工事で2016年から4年間も閉館していて、2021年になってようやく、というかコロナ禍の規制緩和を祝うようなタイミングで再開した。世界で最初の、都市をテーマにした専門ミュージアムでもある名高いカルナヴァレをここで紹介するのは、前掲の神戸ファッション美術館でプルーストの時代のパリ・モード展示があったから。カルナヴァレはマルセル・プルーストの遺品、家具類が見られる場所としても知られているのだ。
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坂の上の月の街 ――水道局山タルトンネ博物館訪問記
仁川東海岸の「水道局山」と呼ばれていた松林の丘には、20世紀初期の日本統治時代から貧しい人々が、無許可で掘っ立て小屋を建てて住み始めた貧民街があった(水道局山という呼称は、日本統治時代にここに配水池がつくられたことから)。そのスラムが朝鮮戦争で故郷を失った避難民や、産業化で農村部を離れた労働者たちでどんどん増殖していき、仁川でも最大級のタルトンネになっていく。最終的には水道局山の斜面約5万5千坪(東京ドーム3つ以上)におよそ3千世帯がひしめきあい暮らすようになった。 ソウルオリンピック(1988年)、日韓ワールドカップ(2002年)あたりから集中的な再開発が全土で行われ、タルトンネは高層住宅に姿を変えていく。水道局山のタルトンネも1998年から仁川市によって再開発が開始されるが、住民への補償をめぐって交渉が紛糾。最終的に水道局山に記念公園を造成し、タルトンネ時代の暮らしを保存する博物館を建設することで市と住民側が合意することになった。こうして2005年に誕生したのが「水道局山タルトンネ博物館」である。
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仁川漫遊記3 ジャジャンミョン(炸醬麵)でお願いします!
韓国ドラマや映画を観ていると、やたらジャジャンミョン(炸醬麵)を食べる場面が出てくる。家でつくるのではなく、出前を取って。それか『パラサイト 半地下の家族』に出てきた、インスタントのジャジャンミョン(チャパゲティ)とラーメン(ノグリ)をあわせた「チャパグリ」みたいな即席麺でちゃちゃっと。 2006年には韓国政府がジャジャンミョンを「韓国伝統文化の象徴100」に選んだそうだが、国民食ジャジャンミョンが生まれたのが実は仁川。市内のチャイナタウンには「ジャジャンミョン博物館」まである!と知り、これは行かねばと訪問してきた。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 # 19 ワット・パーバーンジャーン วัดป่าบ้านจาน (写真・文:椋橋彩香)
2016年9月9日(続き) この日は#18 ワット・トゥンセンティーのあと、時間があったのでもう1か所追加で調査へ向かう。タイの地獄めぐりはなかなか思うように進まないことも多いので、数は稼げる時に稼いでおきたい。 ワット・トゥンセンティーからそのままタクシーに乗り、コーンケーン県から隣県マハーサーラカームへ入る。目的地はワット・パーバーンジャーンという名の寺院。県をまたぐとはいえ、県境にある寺院なので30分くらいで到着した。
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新連載! 地の橋、人の橋――イラン定住旅行記 / 写真・文:ERIKO(定住旅行家・モデル)
コロナ禍が始まってしばらく経ったころだろうか。ERIKOという女性から連絡をもらった。「世界のさまざまな国に旅して旅行記を書いてます、あとモデルもやってます」と言われ、一瞬「職業・旅人」のひとを思い出して微妙な気持ちになったりしたが、実際にお会いしてみると定住旅行とは「ホテルを予約して泊まることも、限られた時間で精力的に取材先を走り回ることもせず、さまざまな手段で泊めてもらえる一般家庭を探し、前もって言葉も学ぶ。ひとつの国に数ヶ月間滞在してリアルな暮らしを体験する」という意味なのだった。そんなことを「家」として続けているひとがいるなんて! ひとつの国に長く滞在するだけの旅人だったらいくらでもいるけれど、ERIKOさんの旅のスタイルはこころざしの高さと、エネルギーの強度がぜんぜんちがう。そして訪れてきた国や都市の数もぜんぜんちがう。
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地の橋、人の橋 ――イラン定住旅行記 02 ショジャエ家の人びと 写真・文:ERIKO(定住旅行家・モデル)
初めてイランを訪れた2018年は、国内3箇所に滞在した。首都のテヘラン、ゾロアスター教発祥地のヤズド、イラク国境近くのホラマバード。山、砂漠、森、乾燥、暑さ、湿気と土地によって多様な顔を見せるこの国を体感して、どこまでも深いイランを覗き込んだ気がした。 滞在した期間は、ちょうど春の3月~4月にかけての2ヶ月。3月後半はテヘランに滞在し、イランのお正月「ノールーズ」を迎えた。標高1,500m地点にあるテヘランは、冬の寒さを引きずりながらも春の声が聞こえはじめていた。 ノールーズはテヘラン市内に暮らすショジャエイ家と過ごすことになった。彼らの家はバナックという地区にあり、東京でいうオフィスがひしめく品川のようなエリアだ。入り口は高く厚い門に閉ざされていて、外からは家があるのかすらわからない。ショジャエイ家を紹介してくれた日本に暮らすイラン人のアミンに連れられて敷地に入ると、大きな池を携えた立派な一軒家があった。
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新連載! スリープウォーキング・チャイナ
2、3年前、たぶんだれかから教えてもらって「無常くん(副書記)@mujo_kun」というTwitterアカウントをフォローするようになった。そこにはワケのわからない、しかしエネルギーだけは溢れまくった中国発のTikTok動画が張られていた。政治や経済ばかりの、それもおもにネガティブな中国情報とはまったく異質の、見たことのない、でも明らかに「いまそこで起きている」リアルが満ちていた。なんなんだろう、このひと! ロードサイダーズで「中国珍奇遊園地紀行」を長く連載してくれている(もう33回!)関上武司さんが無常くんと知り合いとわかって聞いてみると、無常くんは札幌在住の中国文化研究者とのこと。
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地の橋、人の橋 ――イラン定住旅行記 03 「木曜日」 写真・文:ERIKO(定住旅行家・モデル)
2018年の春にイランのお正月を体験してから4年経った2022年12月、再びテヘランの地に降り立った。冬のテヘランは肌の水分がすぐ奪われるほどカラカラで、街から見える周囲の山々は雪に覆われていた。空港にはショジャエイ家で働くお手伝いのアリさんが迎えにきてくれていた。増えた白髪から少しの歳月と、その間にあった苦労が見え隠れした。 ショジャエイ家は前と変わらない佇まいで、オフィス街バナック地区にあった。呼び鈴を鳴らすと、高校生くらいの年齢の若い女の子が、はしゃいで出迎えてくれた。以前会ったことがあるどうか。私の記憶を混乱させるほどフレンドリーに接してくる。私の頬に3回キスをすると、荷物を抱えて「さあ入って」と目で合図した。
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中華街を行ったり来たり 05 川を渡った郊外でアンティーク・ハンティング
2000年代の初めごろだからもう15年以上前、バンコクで歌謡曲のLPレコードや古い映画ポスターを探すのに夢中になっていた時期があった。そのときに「郊外のお寺の境内に巨大なジャンク骨董ビルがある」と聞いて行ってみると、それは確かにそのとおりで、6階建てぐらいの建物にウッディな大型家具からテレビや冷蔵庫といった電気製品、バケツみたいな日用品まで溢れかえっていた。その「骨董寺」のことは長く忘れていたが、今回チャイナタウンの情報を探しているうちに、あの寺がまだ現存することを知って、チャイナタウン探索の合間に行ってみることに。今週は息抜きにちょこっとチャイナタウンを離れて郊外(といってもクルマで1時間足らず)のワット・スアン・ケオ骨董センター(勝手に命名)に遠足してみよう。
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スリープウォーキング・チャイナ 02 エブリデイフィーバー、広場舞の研究 / 写真・文:無常くん(副書記)
2023年7月23日、新生活の準備に追われながら、つかの間の休息日を得たわたしは、本連載のネタを探すため、廈門の街に繰り出しました。 まずは得意分野の民間信仰に狙いを定め、お廟めぐりをしてみます。じりじりと照りつける太陽。汗だくになりながらとぼとぼ歩いていると、程なくしてわたしの脳裏にこんな思いがかすめはじめました。 (あ、あれ? 面白くない……あんまり面白くないぞ、中国!)
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レバノンの青い空の下、カラシニコフのリズムに乗って街は踊る 前編 | 写真・画・文:アツコ・バルー(画家、サラヴァ・レーベル代表、元ギャラリー店主)
2023年9月17日、4度目のレバノン滞在がはじまった。ところが丁度1ヶ月過ぎたところで、ガザでハマスが突然の突撃をおっ始めた。対するイスラエルの爆撃。日を追うごとに悪夢がどす黒くなってきた。8日間様子を見ていたが結局10月15日にパリに引き上げた。これはその間に起こったこと感じた事をつらつらと書き、描いたもの。戦争と関係ないことも書いてあります。私は政治の専門家ではないので、レバノンで感じたこと見聞きしたことだけを綴りました。旅日記のようなものです。
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レバノンの青い空の下、カラシニコフのリズムに乗って街は踊る 後編 | 写真・画・文:アツコ・バルー(画家、サラヴァ・レーベル代表、元ギャラリー店主)
前回お話ししたのは私と彫刻の友人スヘルがせっかく1年かけて用意した二人展を直前でキャンセルしたという話だった。主催者が約束を平気で破ったことに対する抗議行動として展覧会を拒否したのだった。しかしせっかく描き溜めてきた作品を見せないのはなんとも悔しい。かといって自腹で会場を借りるというのも納得が行かない。そこで私は名案を思い付いた。スヘルのアトリエはベイルートの中心から遠くないし大きさも200平米ほどある。そこでオープンスタジオをやっちまおう、と考えたのだ。しかし今のところ、彼が50年間のイギリス生活で作り溜めた作品が、木箱に入って3年前に国に戻った時に運送会社が置いていったままである。その上に埃が積もり、かなり陰気な状態。少しだけ残された空間ではセメントの袋やら拾ってきた木材やらで足の踏み場もない。かろうじて私が絵を描く台だけ作ってもらっていた。この際に大掃除したらどうか、一石二鳥である。
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ウズベキスタン自動車ショー歌
20代後半から30代にかけての数年間、ちょっと目にはソ連(当時の)製の官用車に見えなくもない三菱デボネアに乗っていた。これまで何台か乗り継いだ中で、いまだにあれがいちばん好きなクルマなので、ロシアはもちろん元共産圏の国でソ連時代の旧車が走ってるのを見ているだけでうれしくなってしまう。ウズベキスタンでもソ連時代の代表的な大衆車ラーダ(ジグリとも呼ばれる)がまだまだ現役で、いい状態のを見つけるとつい写真を撮ってみたり。欲しいな~。
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地の橋、人の橋[ウクライナ特別編] 01 前線ザポリージャへ 写真・文:ERIKO(定住旅行家・モデル)
イラン定住旅行記を連載してくれているERIKOさんから、少し前にウクライナに行ってきますという連絡をいただいた。世間の眼はすっかりパレスチナのほうに向いてしまっているけれど、ウクライナの戦争だって変わることなく継続中だ。そんな場所に足を踏み入れる「定住旅行家」って・・・・・・。巷にあふれる戦争ジャーナリストとはまったく異なる視点から見たウクライナの日常を教えてくれる気がして、すぐに執筆をお願いした。これから月にいちどのペースで数回にわたって、ウクライナからの報告をお読みいただく。もちろんイラン定住旅行記も並行して続けていただくので、あわせてお楽しみに!
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地の橋、人の橋[ウクライナ特別編] 02 違和感の先にあるもの 写真・文:ERIKO(定住旅行家・モデル)
突然だが、皆さんは違和感を感じる人に出会ったことはあるだろうか。悪い人でも自分にとってマイナスになるわけでもない。だけどなんだかしっくりこないという人である。 これまでに掴み所のない、なんだか底が見えない不思議さを直感的に感じる人に出会ったことはあって、そういった雰囲気を持つ人たちとは積極的な関係を持とうとしなかった。よくわからないからだ。しかし、違和感というのは自分の行動思考範囲とは違う場所へ導いてくれるものかもしれないと思ったのが、今回のウクライナ経験である。 ウクライナへ誘ってくれた東昇(あずま のぼる)さんはまさに違和感の人だった。
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地の橋、人の橋――イラン定住旅行記 08「ペルシャを見にいく シラーズ女子3人旅」 | 写真・文:ERIKO(定住旅行家・モデル)
イランへ来たら押さえておいたほうがいい場所はいくつもある。アルボルズ山脈を望む首都テヘラン、「世界の半分」と言われたイスファハーン、ゾロアスター教の遺産が残るヤズド、イスラム教の聖地マシュハド。自然のレジャーも豊富な選択に溢れている。カスピ海に面したヒルカニア森林へ行けば緑に生い茂ったジャングルが堪能でき、イラク国境のホラマバードでは名滝が巡り、ペルシャ湾の真珠と呼ばれるキーシュ島では海水浴を楽しめる。国内には27の世界遺産があるが、予備軍を含めると100件以上になるという。限られた滞在時間の中で、どこへ行くかを決めるのはかなり難しい。なんといってもこれだけ多様性に溢れていると、訪れる場所によってイランのイメージは偏ったものになってしまいそうだから。
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新連載! ユーラシア後ろ歩き (写真・文:多田麻美)
中国で17年、ロシアに6年。その間、文化関係を専門とする物書きとして、無数の旅をし、さまざまな人々と出会い、それを文章に記してきた。まだ北京に住んでいたある日、ロシアの画家で思想家でもあったニコライ・レーリヒの存在を知った。それから時は流れ、先日たまたま彼の生涯を追ってみると、彼がおよそ100年前に探検したロシア、モンゴル、ウイグル、チベットなどの土地が、自分のかつて旅行でたどったルートとかなり重なることに気づいた。それは偶然のはずだったが、まったくの偶然とも思われなかった。そんな不思議な発見に導かれて始まったのが、この『ユーラシア後ろ歩き』である。
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ユーラシア後ろ歩き 2 ウランバートルでの悪夢 (写真・文:多田麻美)
普段の私は好奇心の塊で、トランジットであれ、不時着であれ、その他の理由でたまたま転がりこんだ場所であれ、暇さえあれば、あれこれ見に行かずにはいられない。だが今回ばかりは、無理だった。せっかくのウランバートル滞在にもかかわらず、私はひどい風邪をひいてしまい、ほとんど外に出られなかったからだ。3日の滞在期間、外に出たのはただの1回。 これまで、私の旅行中の健康運はわりと良い方で、昔、インドでお腹をひどく壊した時だって、外に出られなかったのは丸一日程度だった。私は事前に体調を整えておけなかった不覚を悔いた。
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地の橋、人の橋――イラン定住旅行記 09「イラン人、女性という生きかた」 | 写真・文:ERIKO(定住旅行家・モデル)
テヘランで滞在させてもらっているショジャエイ家は、ママンの息子のキアラシ、長女のゴリ、次女のフーリがそれぞれ世帯を持ち、ベルギーに暮らすゴリ家族以外は、ママンの家から徒歩圏内の距離に暮らしている。週末に当たる木曜はお墓参り、金曜は揃って食事、出張などで家を不在にするときはママンが孫を預かったりと、何かにつけてほぼ毎日のように誰かがママンの家に来て顔を合わせている。 40代前半のフーリは私と年齢も近い。抱擁すると私にすっぽり包まれてしまう小柄な彼女は、陶器のような白い肌、横顔の美しさが際立つくっきりとした顔の輪郭、吸い込まれそうな大きな瞳をしている。瞬きをするたびに伸びるラクダのように長いまつ毛にいつもついつい目をやってしまう。
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地の橋、人の橋[ウクライナ特別編] 08(最終回) 仕事、友情、恋愛、ときどき戦争 写真・文:ERIKO(定住旅行家・モデル)
キーウで滞在している、知人のイリーナが提供してくれたマンションは都心部へのアクセスも良く、セキュリティも万全で言うことはなかった。ただ一つ、早朝にけたたましく鳴る空襲警報以外は。 「ウーウー」決まって朝4時頃に大音量の警報が響く。心臓がドンと鳴って飛び起き、窓には近づいてはいけないと言われていたが、恐る恐る外の様子を窓越しに見る。まだ真っ暗なのに、犬の散歩をしている人、ランニングしている人の姿が見える。みんな寝ているのか部屋の明かりは一つも見えない。みんなにはこの警報が聞こえていないのか。今回も大丈夫なのか、いや油断してはいけない。ミサイルが落ちるのは空襲警報が止んでからと聞いていたから、しばらくTelegramなどでミサイルの最新情報を片手に、バスルームなど壁が厚い場所に身を置く。数十分して何もなければベッドに戻るが、交感神経が優位になってすぐに寝つけない、そんな日が続いた。 数日経ったころ、知人の東さんが紹介してくれたエカテリーナという女性と連絡をとった。
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韓国江原道オン・ザ・ロード 2 海神堂公園
韓国東海岸、北朝鮮と国境を接する江原道をめぐる旅。先月の江陸(カンヌン)にある「チョンジョン彫刻公園」(という名前の男根ドライブイン)に続いてご案内するのは、江陸から海沿いに50キロほど南下した三陟(サムチョク)市郊外にある海神堂(ヘシンダン)公園。そう、知ってる人は知っている、名高い「男根公園」だ。
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Freestyle China 即興中華 北朝鮮と烧烤とナイナイミャオ (写真・文:吉井忍)
せっかく中国のビザを取ったのに、まだ全然使えていない。もったいないので航空券が高くなる前に行ってこようと、サイトをのぞいてみた。羽田発の北京行きが思いのほか安く、即購入する。ただ、気になったのは北京の気温。私が調べた日にはちょうど高温警報が発令されていた。しかもホテル代がコロナ後に高くなり始め、お気に入りだったエコノミーホテルでさえ素泊まり400元くらいになっている(1元は約20円)。もっと北へ行こうと思った。 どうせ行くならそれなりの距離がある場所がいい。寝台列車で行けば一泊分の宿泊費が浮く。
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鬼と田我流――ヒップホップの最注目新譜2枚登場!
いままでに『夜露死苦現代詩2.0』に登場してくれた、ふたりの素晴らしいラッパーの新譜が、立て続けに発売されます。ひとりめは田我流。山梨県一宮をベースに地道な活動を続けてきましたが、昨年になって映画『サウダーヂ』の主役をつとめ、一気にその名(と読み方)を全国に知らしめました。 そしてもうひとりが「鬼」。そう、あの名曲『小名浜』で全国のワルたちをむせび泣かせた、福島県小名浜出身のラッパー。無頼と抒情が交錯するその世界観は、なんだか立原あゆみの『本気!』や『仁義』の世界に通じるものがあります。
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海と魚とゴミの天国・走島
諸般の事情から展覧会では作品タイトルが『ゴミ福山産』とされたが、淀テクのおふたりによれば、走島は「ものすごくきれいな海と浜とゴミがあって、ナンバープレートのない原チャリや軽トラが爆走する島です!」という、たいへんにおもしろそうな島だったので、翌朝鞆の浦港からフェリーに乗って、半日観光を楽しんできた。今回はその「離島ちい散歩」をお送りする。
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連載:スナックショット 02 北海道 前編(平田順一)
どうも前回都築編集長からご紹介賜っております、得体の知れないノイズフォークシンガーの平田です。今回は夏の北海道、次から徐々に南へ進んでいこうかと思います。新幹線と高速道路が延びて地方空港の整備がすすんでも、気候と地理的条件は簡単に変えられないもので、炎天下の東京にいると、夏の北海道が天国のように眩しくみえる。2006年8月、求職中だった私は都内でJRに乗っていて、44000円で5日間北海道のJR乗り放題「ぐるり北海道フリー切符」のポスターを発見。金銭的にはやや苦しいが、応募中の仕事が進展していないので、盆休みをずらした夏の北海道に行くチャンスである。
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連載:スナックショット 04 青森(平田順一)
どうも流浪のノイズフォークシンガー平田です。 2010年に開通した新幹線で、東京から3時間10分で着くようになった青森市ですが、ちょっとスピードと時間が実際の距離感覚に追いつかないというか、便利なのは良いですが小奇麗になりすぎて、演歌の似合いそうなスナックが急に淘汰されるんじゃないかとも思います。その新幹線の開通前、2007年と2009年に歩いた青森県下の記録です。
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連載:スナックショット 05 秋田(平田順一)
どうもスナック昼の部担当の平田です。先日、岡本太郎美術館で開催されている写真展『記憶の島――岡本太郎と宮本常一が撮った日本』に行ってきました。思わず惹きつけられずにはいられない強い眼光の岡本太郎に対して、風景と人々に溶け込むような宮本常一の柔和な眼差しが印象的でした。写真を撮る以前に、あの視線とスタンスを心掛けたいと思いつつ、今回は2002~2007年に敢行したスナックショット秋田篇です。
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連載:スナックショット 06 岩手(平田順一)
スナックショットの旅行に出るまえに鉄道時刻表と、中学の社会科で使っていた地図帳を参照している。中学の地図帳は30年も前で情報は古いが見慣れている。最近の地図を使うと市町村合併が進みすぎて、古くからの中心市街の見当がつきづらい。また県庁所在地やそれに準ずる規模の都市には確実ににぎやかな歓楽街があるが、人口が5万人くらいの都市だとあるところもないところもある。これも最近の市町村合併で、人口の多さを基準にできなくっているので、30年間の地図を参考にするとわかりやすい。
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連載:スナックショット 07 山形・宮城(平田順一)
どうもROADSIDERSの箸休め、平田です。折しも「せんだいマチナカアート2012」が開催、杜のみやこに都築編集長のROADSIDE SENDAIがやってきますよ! 北から順番に連載をすすめて今回は山形県と宮城県です。前回の岩手編におなじく能天気に写真を撮っているだけの自分が恥ずかしくもあり、それでもまだ探訪したいという思いもあります。庄内から置賜、仙北から仙南へとかなり広範に及びますがよろしく!
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連載:スナックショット 08 福島・栃木(平田順一)
どうも街の遊撃手、平田です。前回の山形・宮城篇から南へ下って、今回は福島県と栃木県です。 会津地方と郡山、宇都宮と小山が去年の3・11以降の写真で、それ以外は2004年から2007年の撮影、少々画像が荒くなっております。広い福島県のごく一部と、栃木県のごく一部で、まだまだ精進が足りませんがよろしくお付き合いください!
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スナックショット 10 群馬 (平田順一)
どうもほろ酔いセットで泥酔する男、平田です。今回のスナックショットは群馬県、歴代総理大臣にネギにこんにゃく、ボウイやバクチクといった80’Sロックバンドの産地としても知られています(かなり興味が偏っていますが)。上州のかかあ天下とからっ風はスナックにとっての追い風なのか、酒場を探して路地をうろついても、実に良い雰囲気を醸し出しているところが多く興味は尽きません。さて実際に群馬県を探訪しようとすると、交通アクセスは県庁所在地の前橋市よりも高崎市が格段に優れており、駅前も賑わっているしだるま弁当など駅弁の種類も豊富にある。
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[新連載]畸人研究学会報告 01
知ってるひとは知っている、畸人研究学会。黒崎犀彦・今柊ニ・海老名ベテルギウス則雄の3名により、1995年から手づくりミニコミ『畸人研究』を主な舞台に、日本全国の輝ける畸人たちを発掘・紹介しつづけてきた、市井の偉大なフィールドワーカーである。僕自身も彼らのリサーチにこれまでどれほど助けられ、勇気づけられてきたかわからない。畸人研究学会はこれまで『定本・畸人研究』や『畸人さんといっしょ』、『しみったれ家族 平成新貧乏の正体』など、数冊の単行本を発表しているが、『畸人研究』誌のほうは、しばらくお休みになっていた。で、そのあいだにも倦まず続けられている発掘作業を紹介すべく、これから不定期の連載というかたちで、本メルマガにて出張版・畸人研究をリリースしていただくことになった。今回はその第1弾、海老名ベテルギウス則雄さんによる、青森紀行をお送りする。
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タコス食ってゴスになろう!
先々週のメルマガではメキシコシティのゾンビ・ウォークを紹介した。今週はゾンビと並んでメキシコシティのヤングに人気(?)の「メキシカン・ゴス・ストリート」をご案内しよう。太陽サンサンのメキシコと、黒革にモヒカンに化粧のゴスはあまり相性いいように思えないが、こちらメキシコシティのダウンタウンの一角、「エル・チョポ」(El Chopo)と呼びならわされるエリアは、毎週土曜日になるとゴス&ヘヴィメタル関連のフリーマーケットが立ち並び、「メタルの竹下通り」的な様相を呈する。
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畸人研究学会報告 02 大飢饉という極限状態と表現(海老名ベテルギウス則雄)
東北旅行の楽しみの一つがグルメであることはいうまでもない。今回私は野辺地の自転車オブジェ以外に八戸、そして盛岡を廻ったが、どのガイドブックを見ても八戸、盛岡ともにグルメ情報満載である。まず今年2012年のB-1グランプリを獲得したのは八戸せんべい汁だし、また八戸は日本有数の漁港であり、有名な朝市を始め美味しい魚介類が食べられる店が目白押しである。一方盛岡もわんこそば、盛岡冷麺、じゃじゃ麺などの麺類や前沢牛など、やはり美味しそうなお店情報いっぱいだ!だいたい東北は米どころであり酒どころでもある。観光ガイドブックの誘惑に素直に従った旅行をすれば体重が数キロ増えて帰宅すること請け合いである。
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スナックショット 12 長野1
メリークリスマス! どうも平田です。今回のスナックショットは長野県ですが、ひとえに長野県といっても東西南北に広く、幾つもの山々に阻まれて地域ごとに文化も異なるのでまず今回は東信地方、ほかの地域は次回以降にご紹介する予定です。長野県東部、東信地方の中核となるのは上田市で、ここから盆地を西に10キロ向かったところに信州の鎌倉と称される古刹安楽寺と別所温泉があり、上田電鉄のローカル電車が結んでいる。沿線にある青木という集落が東急グループの創始者である五島慶太の出身地で、この上田電鉄も東急グループ傘下にある。
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スナックショット 16 千葉・埼玉(平田順一)
今夜すべてのバーで・・・どうも平田です。今回も欲望渦巻く首都・東京の周縁からお送りします。ここ数年、格安航空会社が参入して新規路線を就航されるたびに話題を呼んでいますが、多少アクセスが改善されても縮まらないのが新東京国際空港・成田への距離と交通費。格安チケットを入手したところで、まず成田へ行くこと自体が小旅行です。もともとが明治神宮に次ぐ初詣客を誇る成田山新勝寺の門前町で、京成電鉄もこの参拝客輸送を目的に敷設されたものでした。今風に解釈すればパワースポットへのアクセス路線か? 参道には老舗の鰻屋、和菓子屋、土産物店、すこし路地に入ると老舗の酒場も散見されます。
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連載:スナックショット 17 静岡(平田順一)
旅ぃゆけぇばー、駿河のぉ国にぃ、茶のぉ香り、どうも平田です。今回のスナックショットは浜松市・静岡市と政令指定都市が2つありながら新幹線のぞみの停まらない静岡県の、新幹線の駅もない街を中心に各駅停車でお送りします。関東と関西の中間に位置して海と山に恵まれ気候も温暖、商工業ともにバランスが良く新商品のテスト販売地域として知られる静岡県ですが、少し前まではコンビニの新規出店が厳しく住民騒動になったりしました。自分の関心でいえば静岡県のパチンコ店の条例で投機性の高い一発台が禁じられており、古い一般台が多く残るパチンコ店の佇まいが印象に残っています。
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畸人研究学会報告 04 夢の王国の荒々しさと優しさ、そして郷愁 (海老名ベテルギウス則雄)
兵庫県の三田市で醤油鯛の取材を終えた後、私は次にどこへ行ってみようかと考えてしまった。お恥ずかしながら今回の取材で訪れるまで、三田市はただ漠然と大阪とか神戸の近くだと思っていて、どのあたりにあるのかをきちんと把握していなかった。しかし実際に行ってみると宝塚の先で、結構大阪や神戸から距離がある。取材後は大阪か神戸あたりに行ってみようと考えていた私に迷いが生まれた。そこで近くに面白そうな場所が無いか、醤油鯛の取材をした後の沢田さんに聞いてみることにした。「そうですね、確かに三田って結構兵庫の奥なんですよね。ここまで来たら大阪や神戸に行くのも良いですが、反対側の日本海側に向かうのも面白いと思いますよ。近くには丹波篠山なんかもありますし」。
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連載:スナックショット 18 愛知、三重、岐阜(平田順一)
いらんモノはコメ兵へ売ろう!どうも平田です。1993年公開の「ミスター・ベースボール」は野球に大して興味のない自分にも面白い映画で、何度かテレビ放映もされました。トム・セレックが演じる元メジャーリーガーの助っ人外人が、カルチャーギャップに悩みながらもチームメイトや監督から友情と信頼を得るという痛快なスポーツコメディであり、ユニバーサルピクチャーズ配給の洋画なのに舞台となるのは名古屋、つまり中日ドラゴンズの助っ人選手です。言葉も風習もわからない島国に連れてこられて、名古屋というローカルな環境で戸惑いつつも、東京の人気球団に対抗心を燃やすというひねった設定にリアリティーがありました。今回のスナックショットはその名古屋にも対抗心を燃やしているかもしれない、愛知・岐阜・三重の周縁部からお送りします。
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原色の寝室――タイの日式ラブホテルめぐり 1
渡邊智昭さんのディスコバスの写真を見ていて思い出したのが、ラブホテルのこと。日本に限らず世界中に「おもにセックスのためのホテル」は存在するが、それらはあくまで「カップル向けのロマンティックな宿泊施設」であったり、「娼婦と短時間過ごすためのヤリ部屋」だったりする。そのように味気ない限定目的空間を、これほどまでの特殊な美的空間デザインに昇華させたのは、日本が世界に誇るべき美意識だと思うのだが・・・あるんですねえ、タイにも。実は日本そっくりのラブホテルが。明らかに日本のラブホの影響にあるというかモロ・コピーでありながら、「家族やお友達とのパーティにも」などとうたってあるところがまたタイらしい、南国的快楽空間。数年前に3ヶ所の存在を確認、取材も済ませていたが未発表のままだったので、今回のディスコバスにあわせて2週間にわたってご紹介します。今週はまず、チェンライのレッドローズ・ホテルから。
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スナックショット 23 鳥取(平田順一)
どうも平田です。今回のスナックショットは日本で一番人口が少ない鳥取県です。ROADSIDERS' weeklyでは昨年8/15配信号(vol.31・圏外の街角から)で取り上げられました。鳥取は距離もさることながら、なにか用事があるとか近くへ寄ったついでとか、そういった要素も派生しづらい縁の遠さがあります。県全体の人口(60万人弱)も東京の江戸川区や足立区と同じくらい、面積や密度を比べると酷ですが国会議員の定数問題ではないので純粋に鳥取県内のスナックのある風景を追ってまいります。
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連載:スナックショット 24 鳥取、島根(平田順一)
どうも平田です。今回のスナックショットは前回に続いて鳥取県の西、境港市と島根県松江市・出雲市のスナックを巡ります。妖怪の町から神話の町まで、よろしくお付き合い願います。県庁所在地の鳥取市よりも交通の便が良くて賑やかな米子駅、この0番線ホームに境港行のディーゼルカーが停まっている。これが水木しげる先生が描くラッピング塗装の「鬼太郎列車」であり、終点の境港駅からは水木しげるロードを経て、水木しげる記念館に通じている。
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畸人研究学会報告 05 不夢不無曼荼羅は田園の中 芸術家東山嘉事の夢世界(海老名ベテルギウス則雄)
皆さんは東山嘉事(ひがしやま・かじ1934-2006)という芸術家をご存知だろうか? 私は神戸市内の山あいにある知的障害者施設で生活しながら、段ボールに赤鉛筆で独特の絵画を描き続けてきたアウトサイダーアーティストの小幡正雄さんを発掘した人物として、その名を知っていた。今年の初め、兵庫県篠山市で出会った大杉幸生さん(2013年3月13日配信号)から、「東山嘉事さんは私の師匠に当たる人物で、ひとことでは言い表せない大変な芸術家だった」という話を聞いた。そして今回、大杉さんの紹介で、東山嘉事さんのアトリエであった建物の見学をさせていただけることになった。
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連載:スナックショット 26 香川・愛媛(平田順一)
どうも平田です。今回のスナックショットは四国に渡って、大竹伸朗ファンには馴染み深い香川県と愛媛県です。高松は古くから国鉄の宇高連絡船を介した四国の玄関口で、深夜とも早朝ともつかない時間帯にも列車と連絡船の発着があり、神戸・大阪とのフェリーも終夜発着していたので一地方都市とはいえ侮れない、不夜城の輝きがあります。
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スナックショット 27 徳島・高知(平田順一)
どうも平田です。今回も遍路さながらに四国のスナックを巡りますので、よろしくお付き合い願います。最近新潮社から出た大竹伸朗さんのエッセイ集「ビ」を読んでいますが、伝統と権威を誇る美術展と宇和島のカラオケスナックを俎上に並べて美意識を考察する「スナック『日展』」の一文は、スナック街に惹かれて写真を撮っている自分の、うまく説明できない思いが文章化されているみたいで嬉しかったです。2001年夏、自分は信号メーカーの技術部で働いており、社内には全国の鉄道会社に納品した信号設備の資料があったのですが、仕事とは直接関係のないケーブルカーやロープウェイが趣味的に面白くて、これを追い求めて旅に出てはコンパクトカメラで記録していました。
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新連載! 案山子X(ai7n)
2010年に広島市現代美術館で、『HEAVEN 都築響一とめぐる、社会の窓から見た未ニッポン』という展覧会を開いたときのこと。ギャラリートークかなにかの折に、すご~く内気そうな女の子が、「あの・・・こんなの作ってるんです」と、おずおずと一冊の小冊子を僕に差し出した。『広島非日常ガイドブック』と小さく表紙に書かれたその冊子は、純喫茶伴天連から豊栄ヘソまつりまで、広島周辺の裏スポットをたったひとりで探索・記録し続けた、すばらしい努力の結晶だった。それまで美術館のスタッフにいくら聞いても、ロクな珍名所に出会わなかった僕にとって、それは天啓ともいうべき授かりものだった。
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スナックショット 31 宮崎(平田順一)
どうも平田です。全国のスナック街の写真を撮って歩いてる人間です、と紹介されたり自分で話したりすることがあり、ここの地方はスナックの写真は撮りましたか? と関心を持たれることがあって嬉しいのですが、行っていない地方については返答に窮することになります。今回取り上げます宮崎県は昨年の連載開始時には未踏の場所で、宮崎をどげんかせんといかん! と今年2月に奮起して行ってきました。大都市圏以外でのタレント首長の誕生で、驚きをもって迎えられた東国原知事の就任が2007年1月。
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スナックショット 32 鹿児島、熊本、大牟田(平田順一)
どうも平田です。いままで北海道から九州までスナック街を巡って写真を公開してきましたが、いくつか抜けているところがあります。和歌山や奈良ではまとまった数の写真が撮れず、東京・京都・大阪など大都会のスナックはあえて避けてきました。歓楽街として知られすぎていることと、たとえば銀座や歌舞伎町で雰囲気のあるスナックの写真を撮ったら、半径500メートルくらいで完結してしまいそうで、好奇心が広がっていかないと思ったからです。中州、すすきの、仙台の国分町なども同様の理由で敬遠していたのですが、旅先は解放感があり好奇心も湧きます。今回は有名といえば有名、ローカルといえばローカルな鹿児島の天文館、熊本の下通、福岡県大牟田市の記録です。
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スナックショット 最終回 沖縄(平田順一)
どうも平田です。最終回となります今回は沖縄本島のスナック街を巡ります。かつては独立した貿易国であり、つねに近隣諸国の政治と経済に翻弄される沖縄。基地問題や高い失業率や経済格差などなど、複雑な県民感情を抱えつつも美しい自然環境や個性的な文化から本土の沖縄フリーク、「沖縄病」と呼ばれる移住者を大量に呼び寄せることになります。スナックという切り口から沖縄を見ると、やはり米軍や基地関係者のガス抜きという一面を少なからず意識しますが、強い直射日光や台風に耐えて存在する看板や建物自体が魅力的に映りました。
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フィールドノオト 03 新宿(畠中勝)
音を残そうと考えた時、それは楽器で作り上げる音楽だったり、自然豊かな場所での川のせせらぎの収録などを思い出す。今回は僕の身の回りの音だけを集めてみた。日々暮らし慣れ親しんでいる新宿のフィールドレコーディングだ。多国籍で無国籍なカラーがミックスする街の風貌もさることながら、新宿はいろんな音が絡み合う場所だと感じたからだ。
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フィールドノオト04 岩手県~青森県(畠中勝)
「あまちゃん」で沸く久慈に通りかかった。町は見事に人の活気であふれていた。その後、十和田湖へ。どちらも本来の目的地ではなかったのだが、車窓から眺めた三陸海岸に、この数年、震災以降の個人的な想いが巡った。
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フィールドノオト05 恐山(畠中勝)
恐山へいってきた。下北駅からの道中、地元のタクシー運転手が話をしてくれた。「霊場には小さな石がたくさん積んであるんだけんども、それは地元の人間が先祖代々ひとつひとつ毎年積んできた石なんですよ。その石の山は台風が来ても地震がきても崩れたことがない。本当に不思議ですよね」。この霊場が持つ信仰を鵜呑みにするには僕自身まだまだ学が足りない。しかし多くの人を引き寄せてきたこの山自体の奇妙な“磁場”に一層興味を惹かれていった。
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案山子X 4:円野町かかし祭り(山梨)/長崎のかかし祭り(山梨)(ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今年最後となる4回目は、山梨県の「円野町かかし祭り」と「長崎のかかし祭り」を紹介します。最初に山梨県韮崎市円野町下円井の「円野町かかし祭り」を紹介します。「円野町かかし祭り」は今年で20回目を迎えたお祭りで、8月12日~9月8日の4週間に渡って開催されました。つぶら野会館付近の市道円野5号線沿い約200メートルに115体(24タイトル)の案山子が展示され、案山子の人気投票も開催されていました。町おこしとして始まり、現在は町民が気楽に楽しみながら地域の主張を発信するお祭りとなっているそうです。
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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 11 外国人(ケイタタ)
今回のテーマは「外国人」。ぼくもよく海外を旅するので、外国人には親切にしてあげたいと思うもの。でも、やっぱり、見てておもしろいことが多々あるのです。そんなときついついカメラを向けてしまう。ぼくがどこかの国の路地で不様な姿を晒してたら撮っていいから許してね。それではお楽しみください。
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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 12 冬(ケイタタ)
大阪でも珍しく雪が積もりました。いやあ、寒いです。というわけで今回のテーマは「冬」です。寒い風景が多いので、体を温かくしてご覧ください。
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フィールドノオト11 福岡県飯塚市(畠中勝)
昭和10年、父、敏雪は、5人兄弟の長男として、炭鉱で賑わっていた飯塚で生を受ける。村の名は「氷屋」と呼ばれていた。地元の名山である三郡山の山裾の一端で、まれに夏でも凍えるほどの寒さを感じることからこの地名が付けられたと聞く。小学校を出るやいなや炭鉱で働き始めた父。終戦とともに鉱山が閉鎖されると、その後は長距離トラックの運転手として定年を迎えた。実母の葬式にも顔を出さないほどの働き者で、勤めていた会社から皆勤賞をもらうほどだった。僕はその父と実は長年会ってはいないのだが、小学生時代の「うちの家族」といった作文以来、改めて父を書こうと、良いところをあげるなら、ひとつだけ思い出すことがある。それは父の風貌である。
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案山子X 7:上津川かかしむら かかし祭り(大分)(ai7n)
今回は大分県佐伯市本匠大字上津川地区で開催される「上津川かかしむら かかし祭り」を紹介します。大分県の南東端に位置する佐伯市(さいきし)は九州の中で最大の面積を持つ地域で、海側にはリアス式海岸地帯が広がり内陸部には深い山々が連なる、豊かな自然に恵まれた地域です。「上津川かかしむら かかし祭り」の会場がある本匠大字上津川地区は佐伯市の中心から北西に位置し、上津川に沿って点在する小さな集落の中の一つでかかし祭りが開催されます。毎年10月中旬の稲刈が終わった頃から40日ほどかかしの展示をされるそうで、3回目を迎える2013年には約250体のかかしが田畑や民家等に立ち並びました。
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フィールドノオト12 佐賀県 嬉野観光秘宝館(畠中勝)
昭和のアミューズメント施設に興味がある。温泉街にある秘宝館もそのひとつだ。子どもの頃はできなかったが、箱型の受付小屋にいるオバサマに入館料を支払い、館内へとおずおず足を踏み入れる。すると瞬く間に、これまで経験しなかった、もしくは体験することもないであろう、すごいエロが待っていた。
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フィールドノオト15 京都2(畠中勝)
猟師、増山賢一氏による鹿猟二日目。猟でもパートナーを務める氏の奥さんとともに、今回は子どもたちも山へやってきた。もちろん猟をするわけではない。麓で猟犬の世話をアシストする心強い味方なのだ。猟を終え、獲物を捕らえた父のもとに子どもたちが駆け寄ってきた。子どもたちは生まれた頃から、父の獲った肉を食べ、それらの肉が好物にもなっている。成功を喜び合う親子。
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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 18 プレイする人(ケイタタ)
今号のテーマは「プレイする人」。プレイといえどいろんなプレイがあるけれども、これはゲームをプレイする人です。それではご覧くださいませ。
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フィールドノオト16 伊豆熱海(畠中勝)
熱海へは数年ぶりにやってきた。夜明けに新宿を出発、そして今は10時過ぎ。今回は秘宝館の取材のためでデートでもなんでもないが、成り行き上、車内には自分を含め男が三人いる。徹夜の仕事だったことから、我々はとりあえず喫煙休憩を兼ね、僕の行きつけである日帰り温泉宿へ向かった。閑散とした熱海の中心街、そのさらに外れにあるこの宿は、より人気も少なく休憩所は無料で広々。入浴料も安いことから昔から定宿に指定している。湯に浸かりながらゆったり予定を考え、休憩所にあがってくると、ちょうど老人たちが一杯やりながら会話をしていた。というより江戸っ子らしき人物が一方的に喋っている。畳部屋に響くその声は妙な清涼感があった。
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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 19 春(ケイタタ)
商店街ポスター展の記事、ちょっとマジメすぎたかも・・・熱が入りすぎてついつい長くなってしまいました。今回はケイタタに戻りまして「隙ある風景 ROADSIDERS’ remix」今回のテーマは「春」。さくらは春らしいのだけれども、以前の書いたものだからさくら以外の春の風景を。どうぞリラックスしてお楽しみください。
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フィールドノオト17『思い出の抜け道』(新宿)(畠中勝)
歌舞伎町の暗がりに無数に伸びる裏路地。その中のひとつに四畳半にも満たないバラック屋台やスナックが立ち並んだ通りがある。かつて中国人マフィアによる青龍刀事件でも知られたこの一帯は、数年前までは誰もが気軽に足を踏み入れることはできないような空気感があったが、その後、石原都知事が行った歌舞伎町浄化作戦によって、今ではカフェ風の店が増え、近隣のゴールデン街と同様、観光客も安心して入れるようになった。そんな知る人ぞ知る新宿の裏通りで、古くから赤提灯を灯してきたのがスナック『竹千代』。若い頃は、銀座の高級スナック店に勤務、ミスコンへも出場経験があるという女装ママ、竹千代さんが営んでいる。現在66歳。とてもそんな年齢には見えない美貌の持ち主だが、彼女がいうのできっとそうなのだろう。そして彼女の店を渾身にサポートをしているのが、今回、歌を披露してくれた将(まさる)さんだ。
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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 21 モノ(ケイタタ)
今回のテーマは『モノ』です。人だけでなくただのモノでも人の手が加わるとやはりそこには隙が生じる。そんな人の手で隙ができてしまったモノたちをどうぞご覧ください。
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案山子X 11:筑前町ど~んとかがし祭(福岡)/道の駅うきは かかしコンクール(福岡)(ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は福岡県朝倉郡筑前町の「筑前町ど~んとかがし祭」と、福岡県うきは市浮羽町「道の駅うきは かかしコンクール」を紹介します。「筑前町ど~んとかがし祭」が開催される筑前町は福岡県の中南部にあり、福岡市の南東約25km、久留米市の北東約20kmの場所に位置します。2005年に旧三輪町と旧夜須町の合併により筑前町が誕生し、旧三輪町の"どんと祭り"と旧夜須町の"かがし祭り"がひとつになった一大イベントが、この「ど~んとかがし祭り」です。会場である安の里公園はコスモスの名所として知られ、公園の周りに100万本のコスモスが咲き乱れる中祭りが開催されました。
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フィールドノオト 20 旧野首教会(畠中勝)
野崎島の旧野首教会へやってきた目的に、音楽的な視点での環境音の収録があった。音楽は教会という建築物のイメージを形成する要素のひとつでもある。実際、僕は大久保にあるプロテスタントの教会に通っている。日本で一般的にイメージされるキリスト教会の通り、ここにはパイプオルガンが備わっている。ミサで演奏されるオルガンは礼拝堂に大きく響き渡り、室内にある全てのものと共鳴する。まるで教会そのものが楽器であるかのように。ちなみに音楽と呼ばれるものの基礎を築きあげたオルガニスト、J.S.Bachもこの一派から誕生している。つまり音楽と教会は密接な関係にあり、カラオケ通いのない人でも、礼拝堂に足を踏み入れるということは、毎度ここで声を出して歌う必要がある。
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私のアタマは貝の殻・・・――復活! 竹島ファンタジー館
郡上八幡、関と岐阜の要注目イベントふたつを紹介してきたが、県外からの多くの訪問者にとって、旅の起点は名古屋になると思われる。名古屋にはもちろん夜を含めて重点スポットが数多いが、今回はあえて尾張名古屋を素通り、一路南下して三河蒲郡に足を伸ばしていただきたい。長らく珍スポット・マニアたちに愛されながら、2010年秋から長期休館していた蒲郡ファンタジー館が、なんと「竹島ファンタジー館」となって再開、この8月2日にグランドオープンを迎えたのだ。ちなみに竹島とは、蒲郡の本土と橋で結ばれた、三河湾に浮かぶ小さな島。島全体が国の天然記念物であり、対岸の竹島水族館とともに、渋好みツーリストに親しまれてきた観光地である。
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畸人研究学会報告 06 日本の精神医療草分けの地、京都岩倉と城守保養所資料館(写真・文 海老名ベテルギウス則雄)
日本一の観光地として、国の内外から連日多くの観光客が押し寄せる街、京都。本当どこへ行っても旅行ガイドを片手に京都観光を楽しむ人々でごった返している。しかし、京都市内でも観光客の姿をあまり見かけない場所もある。洛北の岩倉はそんな観光客の影が薄い地の一つである。第一、京都の岩倉と言われても、いったいどのあたりにあるのかわからないという人も多いだろう。かくいう私も今回の岩倉旅行に行く前までは、“京都市内の北の方”という漠然とした知識しかなかった。そんな影の薄い岩倉であるが、精神医療の関係者ならば誰でも知っている。
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案山子X 14:遠野特集(岩手)(写真・文 ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は岩手県遠野市の特集という事で「雨風祭り&かかし祭り」「蓮池の丘」「りんご屋」「遠野のかかし」を紹介します。かかしではない物もあるのですが、あまりにも素晴らしかったので一緒に紹介させてもらいます。 遠野市は岩手県の内陸部に位置する四方を山に囲まれた盆地で、昔ながらの日本の風景が数多く残っている街です。遠野出身の小説家・佐々木喜善によって語られ柳田國男が1910年に発表した「遠野物語」の元となった街が遠野で、河童、座敷童子、死者や神等に関する数多くの民話があります。民話のふるさととして、昔の遠野の人々の生活文化を後世に伝承する施設が多く存在しています。
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案山子X 15:かかしの郷(徳島)(ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は徳島県三好市東祖谷菅生名頃の「かかしの郷」を紹介します。徳島県三好市東祖谷は高知県と接した雄大な自然に恵まれた山間の地域で、日本百名山の一つである剣山(つるぎさん)や、平家一族が架設したと伝わる奥祖谷二重かずら橋などがあります。奥祖谷二重かずら橋から3キロ程、標高約900メートルの場所にある名頃地区には「かかしの郷」と呼ばれる人間そっくりのかかしが住む村があり、様々なメディアで紹介され多くの観光客が訪れています。かかしの郷は綾野月美さんが作った1体のかかしから始まりました。
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案山子X 16:あったかビレッジかかし祭り(秋田)(文、写真:ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は秋田県にかほ市樋目野の「あったかビレッジかかし祭り」を紹介します。にかほ市は秋田県南西部に位置している街で、秋田市からは海沿いの国道7号線を走り約67キロ。西側には日本海があり、東側には東北第2の高さを誇る「鳥海山」があります。鳥海山は海岸からそびえるように立ち上がる独立峰で、標高2236メートルの活火山です。にかほ市の海岸沿いを走るJR羽越本線金浦駅から約3キロの場所に、「あったかビレッジかかし祭り」の会場である樋目野があります。大規模なかかし祭りの場合、様々なサイトで正確な情報が出ているので事前に詳細を知る事ができ迷う事無く現地に到着できるのですが、田舎で開催されるかかし祭りや少人数で開催されるかかし祭りの場合、正確な住所や問い合わせ先がわからない事があります。この「あったかビレッジかかし祭り」もネットでの情報が少なく、大体の住所と開催時期を頼りに現地に行ってみました。
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アートじゃない生き物 vol.1(写真・文:若井響子)
ヨーロッパの街を歩いていて、何重にも貼り重ねられた壁のポスターに惹かれたひとはきっと少なくないだろう。若井響子さんもそのひとりだった。若井さんは「一人芝居」をずっと続けているパフォーマーだ。このメルマガで連載してくれている畠中勝さんが営む、新宿ゴールデン街のバー『ナイチンゲール』で僕は彼女と出会い、「iPhoneで撮ったんです」という壁の写真を見せてもらってるうちに、すっかり場末の旅情みたいな懐かしい気分を掻き立てられて、メルマガで紹介させてもらうことにした。東京の日常からひととき飛び出したくて、2014年の6月から9月まで、95日間にわたってイタリアとフランスを旅した彼女の「ポスター壁画ハンティング・トリップ」。これから3回の旅日記にお付き合いいただきたい。
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フィールドノオト31 余市(写真・録音・文 畠中勝)
上海から帰国後、札幌に向かった。北海道へは知床の流氷の録音をして以来だから、約二年ぶりだ。道内の街らしい街を訪れることも今回が初めてになる。噂通り、大阪や名古屋のような都会だった。ただ他の都市と大きく異なることもある。自然環境による影響の大きさだろうか。底冷えする11月の札幌。真冬の京都にいるような骨身に沁みる寒さを思い出す。遠くで見える山々にはすでに白い雪が冠掛かり、都市にいながら大自然の風情だ。とはいえ、やはり都会的な札幌。電車の車内で話している人は見かけないし、駅周辺でも話しながら歩いている人を見ない。随分とスマートな印象も受ける。
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アートじゃない生き物 vol.3(写真・文:若井響子)
ローマからパリへ:毎日歩き通しで疲れはピークを越えていた。そしていつもおなかが空いていた。この頃の主食は、スーパーで買った果物とヨーグルトだった。あとはジェラートばかり食べていた。90日間のイタリア滞在が終わり、フランスへ移動。パリ→リヨンへの合計5日間の旅である。フランス語も一切わからない。非常に不安であった。安い便なので、デンマークのコペンハーゲンを経由するというとんでもない遠回りで、夕方ローマを発ち、コペンハーゲン空港でうとうとしながら一晩を過ごし、翌朝パリ行きに乗ったのだった。
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新連載 ジワジワ来る関西奇行 01 誰も知らない大阪 「寝屋川市」という開かれた秘境 (写真・文 吉村智樹)
もしも「ロードサイド関西」というような本をつくるとしたら、このひと以上の適任者はいないはずの吉村智樹さん。本メルマガ読者なら自然と(笑)、吉村さんファンも多いのでは(体型も似てるし!)。いまは京都在住の吉村さんだが、以前に東京・高円寺に住んでいたころからの知り合いで、いつかなにか一緒にできたらな〜と思っていたのが、ようやく実現。今月から月いちどのペースで、「ジワジワ来る関西」について書いていただくことになった。このメルマガでも最近は関西についての記事が多くなっているけれど、いまだにみんなが知ってる気になっていて、実はぜんぜん知らない(知ろうとしない)関西という謎に、これから毎月お連れする。
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案山子X 19:かかしの里(青森)、鳥羽の素晴らしい作品達(三重)(写真・文:ai7n)
今回は青森県西津軽郡鰺ヶ沢町中村町の「かかしの里」と、三重県鳥羽で出会った素晴らしい作品を紹介します。鰺ヶ沢町(あじがさわまち)は青森県の西部に位置する日本海に面した町で、標高1,000m級の山々が連なる世界遺産の白神山地や、ブサかわ犬として有名になった秋田犬のわさおがいる七里長浜きくや商店等があります。鰺ヶ沢町から岩木山に向かう県道3号線沿いにある中村町では、毎年8月上旬〜9月中旬にかけて「かかしの里」が作られ道路沿いにかかしが立ち並びます。毎週日曜日には「かかし茶屋」が開かれ、地元の新鮮な野菜等を販売するそうです。13回目の開催となる2014年には、35体の大小様々なかかしが中村町ののどかな風景の中に立ち並びました。
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ニセモノの本気――大ニセモノ博覧会@歴史民俗博物館
東京から成田空港に向かってすぐ手前にある千葉県佐倉市。ミュージアム好きには国立歴史民俗博物館とDIC川村美術館という、ふたつのビッグ・ミュージアムがあることでおなじみ。その歴史民博ではいま『大ニセモノ博覧会―贋造と模倣の文化史―』という、かなり野心的な展覧会を、わりとひっそり開催中だ。「ニセモノ」とか「パクリ」とか言うと、最近では自動的に中国を連想してしまうひとが多いだろうが、ちょっと前までパクリと買いまくりにかけては元祖エコノミック・アニマル=日本人の代名詞だったことを忘れてはならない・・・というような歴史エピソードはともかく、真似ること、コピーすることは、かならずしも「やっちゃいけない悪いこと」で済まされるわけでもない。音楽にしろ美術にしろ、映画にしろ建築にしろ、つねに模倣はオリジナリティの重要な源泉であった。模倣によって磨かれた技術は数限りないし、模倣によって発見された真実もたくさんある。今回の展覧会ではそうした「本物」と「ニセモノ」のあいだのからみ合いから生まれてきた文化を、膨大な館蔵品を中心によって紐解いてみようというもの。考古学から古美術、骨董、見世物まで、時代もジュラ紀から現代まで!と思いきり幅広い展開。
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案山子X 20:中田かかし祭(富山)(写真・文 ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は富山県高岡市の中田かかし祭を紹介します。中田のかかしの特徴は、頭部が発泡スチロールや紙粘土、身体はワラで作っている事です。ただ単純にワラを使って作っているのではなく、細かく編み込んで髪の毛にしたり、芯に巻き付けて手足になったり、細い指の様々な動きもワラで表現しています。服や小道具や動物等様々な物にもワラが使用されています。中田は農業が盛んな地域なのでワラを入手しやすく、かかしといえば米、米といえばワラのイメージがある為、このようにワラを使用してかかしを作る事になったそうです。
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案山子X 21:共和かかし祭(北海道)(ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は北海道岩内郡共和町の共和かかし祭を紹介します。小樽から約55キロの場所にある北海道岩内郡共和町は、道央に位置する美しい田園風景が広がる自然豊かな町です。古くから稲作など農業が盛んな町で、農作物の成長を見守る「かかし」が町のシンボルです。共和町の憩いの広場で毎年8月下旬に開催されるのが「共和かかし祭」。2014年に34回目の開催となり、115体の個性的なかかしが立ち並びました。
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フィールドノオト 34 軍国酒場 1(録音・文・写真:畠中勝)
音楽を楽しむことを目的とした酒場は、今では本当に何でもある。数え切れないほどの音楽ジャンルがあるように、音楽酒場もそれと同じく、設えられた内装や演出が多様にある。たいていは店のコンセプトやオーナーの趣味にそったポスターが貼りたくられ、演出終了というのをよく見かける。しかし中には想像もつかないほどの厚みでポスターが重ね貼りされていたり、歴史が練り上げられたり、結果として、趣の原型を留めていないほど、異様な進化を遂げた空間もある。もはや演出を超えたそういった空間は、リスニング環境が整っただけの音楽酒場がもつコンサバティブな目的を遥かに逸脱しているので、音楽というものに内包される不可思議さ、音楽に寄りそいながら漂う、匂いのようなものまでをも焚きあげている。
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案山子X 22 石羽古碑街道かかしまつり(宮城)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は宮城県伊具郡丸森町の石羽古碑街道かかしまつりを紹介します。丸森町は宮城県の最南端に位置した自然豊かな町で、福島県と隣接しています。かかし祭の最寄り駅である阿武隈急行線・丸森駅迄は、仙台駅から電車で約1時間、福島駅から約50分です。丸森駅から県道45号線を8キロ程走ると山間に国民宿舎あぶくま荘が見えてきます。あぶくま荘裏手の石倉地区や上滝地区の道沿いには多くの古い石碑が点在する「石羽古碑街道」があり、かかし祭実行委員会の方がこの石碑や風土をいかしたイベントができないかと考えついたのが「石羽古碑街道かかしまつり」でした。2014年9月に訪れた時には1.5キロ程の石羽古碑街道沿いに152体のかかしが展示されていました。その後かかしの数はどんどん増えていき、10月上旬には200体を越える数になったそうです。
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ジワジワ来る関西奇行 04 交野市(かたのし)で「ハンドパワー」の凄さを知る(写真・文 吉村智樹)
交野市と書いて「かたのし」と読む。大阪人でなければ、いやヘタすれば同じ大阪人ですらその読み方がわからない難読地名。さらに地名の読み方だけではなく、住んでいらっしゃる方には申し訳ないが、交野市に関する知識を、ほとんどの大阪人は持っていない。先日、僕はTwitterで「ただいま都築響一さんのメールマガジンROADSIDERS' weeklyの取材で交野市に来ています」とツイートした。すると、きっと読者の方からだと思うが「交野市!? あそこ、芋掘り以外になんかあるんですか?」とリプライされた。この方はまだ「芋掘り」という情報を持っているだけ、交野市に関してはツウだ。調べたわけではないが、同じ大阪在住者でも、「交野市に行ったことがある」「位置や、なにがあるかを把握できている」という人はとても少ないのではないか。
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キャバレー白馬と八代亜紀の夜
前記事の「するめクラブ熊本編・写真日記」で触れたように、八代(やつしろ)には『キャバレー白馬』という由緒正しきグランドキャバレーが、いまも生き延びている。シャッター商店街が続く八代中心部の一角に、こんな昭和遺産が現存していたとは。『商店建築』誌の連載取材で『キャバレー白馬』を初めて訪れたのは2009年のことだった。そして今年2015年、「するめ旅」の途中で寄ってみた八代で、まだ白馬がいまもそのままあるのを、この目で確かめることができた。キャバレー白馬はまた、地元出身の大歌手・八代亜紀を生んだ場所でもある。以前『アサヒ芸能』誌でインタビューした記事から、そのストーリーを引用してみよう。
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案山子X 28 24時間ソフトボール大会(福岡)(写真・文 ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は福岡県飯塚市鯰田の「24時間ソフトボール大会」を紹介します。福岡県のほぼ中央に位置し、かつて長崎街道の宿場町、炭坑の町として栄えた飯塚市。飯塚市鯰田にあるJR浦田駅近くの田んぼで毎年11月1日から1ヶ月間、子どものかかし達によるユニークなソフトボール大会が開催されます。2014年にまとめサイト等で話題になったのでご存知の方も多いかもしれません。
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ジワジワ来る関西奇行 05 ビューンと飛んでく「新長田」駅前(写真・文 吉村智樹)
ジワジワ来る関西奇行、今回、訪れた場所は兵庫県神戸市長田区の「新長田」駅周辺。JR神戸線と山陽本線、神戸市営地下鉄西神・山手線と海岸線が乗り入れしたひじょうにアクセスしやすいハブ駅で、改札を出て南側には長大な商店街もあり、とても住みやすそう。にもかかわらず同じ関西人でも「新長田? 名前は知っているけれど行ったことがない」という人はけっこう多い。神戸の人気エリア「三ノ宮・元町」と「須磨」のあいだに位置しているため路線図では頻繁に目にする有名な駅なのだが、ステーションビルの大きさや街の規模に反比例してなぜか普通列車しか停車しないゆえ、車窓から眺めるだけのスルー駅になってしまっている。
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越前浜で昭和歌謡にむせび泣く!
上原木呂さんが住む新潟県・旧巻町からちょっと走れば、そこは日本海に面した越前浜。海水浴場にスイカ栽培、それにワイン通のみなさまには最近、カーブドッチなどの国産ワイナリーが続々誕生中のエリアとしても知られている。が・・・ワインやスパは楽しんでも、越前浜の一画にある『遠藤実記念館・実唱館』で、過ぎし日の歌謡曲に浸ろうという趣味人は残念ながら多くない。その名のとおり、「実唱館」は昭和の偉大な作曲家・遠藤実の業績を広く知ってもらおうと、1994(平成6)年にオープンした施設。貴重な資料や映像を通して、遠藤実が体現した昭和の歌謡世界をタイムトンネルのように振り返ることができる。
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案山子X 34 豊野主基田の案山子まつり、天空のかかし祭り(岡山)(写真・文:ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は岡山県加賀郡吉備中央町豊野主基田の案山子まつりと、岡山県高梁市備中町平川の天空のかかし祭りを紹介します。豊野主基田の案山子まつり――加賀郡吉備中央町は、岡山県の中央部に位置する農業が盛んな自然豊かな地域です。吉備中央町の豊野地区には、天皇が即位した時に献上する米を作っていたという円形状の水田「主基田(すきでん)」が残っています。地域活性化と主基田の保存活動の一環として地元の小学校の児童が稲刈りや田植えに参加しており、秋の収穫の時期に合わせて毎年案山子まつりが開催されています。
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Back in the ROADSIDE USA 16 Greyhound Bus Museum, Hibbing, MN
カナダに接するアメリカ中西部の要所・ミネソタ州。ミシシッピ川を挟んで隣り合うミネアポリスとセントポールをあわせて「ツインシティーズ」と呼ぶが、そこはプリンスやボブ・ディランを生んだ土地でもあった。アメリカ最大のショッピングモールである「モール・オブ・アメリカ」も、ツインシティーズ郊外のブルーミントンにある。アメリカを旅する節約家、というか貧乏旅行者には欠かすことのできない交通手段といえば、今も昔もグレイハウンド。全米のすみずみに路線網を張りめぐらすバス会社だが、そのグレイハウンドの発祥地がここ、ミネソタ北東部のヒビングという町である。
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案山子X 35:青木地区かかし祭(鹿児島)(写真・文 ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は鹿児島県出水市野田町青木地区のかかし祭を紹介します。出水市ツル観察センターから7キロ程の場所にある野田町青木地区では、毎年9月に地元の方によるかかし祭が開催されています。青木地区は水田農業地帯であり、平成10年に大型農業機械を地域で共同購入した記念事業としてかかし祭が始まりました。水田にかかしを復活させる目的と、地域住民の交流活動の一環として毎年開催されています。地元の新鮮な野菜や果物等を販売する「青木の茶屋」近くの田んぼの中に農道があり、約700メートルにわたりかかしが展示されていました。100戸程の住民の方が廃材等を利用してかかしを作り、2015年は48体のかかしが立ち並びました。
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Back in the ROADSIDE USA 21 The US Border Patrol Museum, El Paso, TX
「まあほんとに大統領になったら、意外におとなしく振る舞うのでは」という一部の期待もむなしく、就任するやいなやTPP離脱に国境の壁に入国禁止令と、矢継ぎ早にトンデモ政策をぶちかますトランプ大統領。いよいよアメリカは未体験ゾーンへと突入しつつあるようですが、今週はある意味キャッチーなテキサス州エルパソの『アメリカ国境警備隊博物館』にお連れする。「ビッグ」という形容詞がこれほど似合う土地はないと思うが、テキサスは広さ670万平方キロ。日本の国土全部の1.8倍もある。州内に時差があるほどで、緯度を見ると茨城から沖縄あたりまでをカバー。気候も北と南ではずいぶんちがう。
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Back in the ROADSIDE USA 22 The Orange Show, Flower Man and Art Car museum, Houston, TX
先週に続いてテキサスの、こんどは屈指の大都市ヒューストンから3つのアウトサイダー・アート・スポットをまとめてお送りする。テキサス州最大、全米でも4番目の規模を誇るメガシティであり、アメリカ南部の中枢として、多くの巨大企業が本社を置く。スポーツ、アートでも有名だし、NASAがあることでも知られ・・・というふうに、いくらでもメジャーな特徴を挙げていくことはできるのだが、いっぽうでまたアウトサイダー・アートや珍スポットにおいても全米屈指の充実ぶりという点は、あまり知られていない。今週はアメリカ版「郵便配達夫シュヴァルの理想宮」と言うベき『オレンジ・ショー』を中心に、もうひとつのヒューストンの魅力をお伝えしたい。
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Back in the ROADSIDE USA 24 KKK Museum & Redneck Shop, Laurens, SC
先週はオハイオ州ウィルバーフォースのアフロ・アメリカン・ミュージアムを紹介したが、今週はサウスカロライナ州ローレンスという小さな町にある『クー・クルックス・クラン・ミュージアム&レッドネック・ショップ』。クー・クルックス・クラン・ミュージアム=KKKについては説明の必要がないだろうが、レッドネックとは南部の強い日差しの下、農場などで働く白人の赤く日焼けした首筋、という意味でつけられた、保守的な白人貧困層を指す言葉。ようするに人種差別の象徴でもあるKKKとレッドネックをあわせたミュージアム兼ショップで、ロードサイドUSAの取材にあたっていろいろ調べていたときに探し当て、でもいちおう21世紀のアメリカでそんなの存在できるんだろうかと半信半疑で行ってみたら、ほんとに営業中でびっくりした覚えがある。
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Back in the ROADSIDE USA 26 Weeki Wachee City of Mermaids, Weeki Wachee, FL
タンパから2時間ほどのウィキーワチーには、『シティ・オブ・マーメイド』なる、一種のプール遊園地がある。ま、大きなプールのまわりにちょとした遊戯施設やピクニック・エリアがあるだけの田舎遊園地だが、ここでは全米唯一となった「人魚の水中バレー」が見られるのだ。かつては日本でも南紀白浜や、東京の読売ランドでもやっていた水中バレーだが、いまではたぶん、世界でここシティ・オブ・マーメイドだけだろう。『シティ・オブ・マーメイド』の生みの親はニュートン・ペリー。第二次大戦中は海軍であのネイビー・シールズの潜水教官を務めたあと、当時は「人間よりワニのほうが多かった」ウィキーワチーにやってきた。ゴミだらけの水中をきれいにして、圧縮空気をホースで送って水中で呼吸しながらパフォーマンスするテクニックを磨き、美少女たちを集めて特訓。1947年10月13日に『シティ・オブ・マーメイド』を開園したのだった。
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Back in the ROADSIDE USA 28 Carhenge, Alliance, NE
ネブラスカからワイオミング、ダコタにわたる中西部一帯は、古くからバッドランズと呼びならわされる、痩せ枯れて貧しい地域だった。いまでもそのネガティブなイメージは、基本的に変わっていない。ネブラスカは、「観光」という言葉からもっとも遠い土地だ。ほぼ長方形のネブラスカの、西端の小都市スコッツブラフから80キロほど離れたアライアンス郊外にあるのが『カーヘンジ』。読んで字のごとく、イギリスの誇るストーンヘンジを、なんとクルマで再現してしまった、きわめてアメリカ的かつ20世紀的なモニュメントである。人家ひとつない平原に、にょきにょきと生えた鋼鉄の木。白くペイントされたその塊は、バッドランズへの象徴的な道標のようでもある。
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Back in the ROADSIDE USA 29 Precious Moments Chapel, Carthage, MO
どこの家(実家)にもかならずひとつはあって、ひとり暮らしを始めるときにぜったい持っていきたくない、もらっても困るバッドテイストの象徴というべきものはといえば・・・日本なら鮭を抱いた熊の木彫りとか、赤べことか? これがアメリカだと「プレシャス・モーメンツ人形」になる。赤ちゃん顔に、なぜか涙目=ティアドロップ・アイをした陶器の人形は、アメリカにおける「ザ・実家」アイテムの代表格だ。
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Back in the ROADSIDE USA 30 Glore Psychiatric Museum, St. Joseph, MO
先週に続いてミズーリ州から。カンザスシティから71号線を、プレシャスモーメンツ・パークとは反対に北上すると、1時間足らずで着くのがセントジョセフ。ポニー・エキスプレス(郵便馬車)の本拠地が残るなど、西部開拓の基地となった地域であり、歴史的建造物も数多い。セントジョセフ病院の一角にある博物館は、3フロアにわたる立派なもの。もともとミズーリ州精神衛生局で41年間勤め上げた、ジョージ・グロアという人間が独力で集めたコレクションである。中味も無味乾燥な専門資料ではなく、中世から現代にいたるまで、人間が精神病とどのように向かい合ってきたかを示す、非常に興味深い展示となっている。
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ディープ・コリアふたたび 02 釜山~光州(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
南の玄関口といわれる駅のすぐ前のアイスクリーム屋のそのまたすぐ裏が性臭漂うチャイナタウン(かつてのロシア人街)であるが、夜とはいえ外国人女性の戸口呼び込みの4つや5つはあるものの、通行人そのものが極めて少ない。だから客はさらに少ない。中華とボルシチとシシカバブがメニューに揃っている店をのぞいても店員すら見えない。釜山に人々は少なくないが、色に呆けているやつの絶対数は極端に減った。それとも別天地で盛り上がっているのだろうか。淋しい盛り場は哀愁よりも虚しさにあふれている。「ニホンジン? チャイニーズ?」と声をあげる女たちは寒中水泳の後のようなかっこうをしている。店の奥からもれてくる音楽はユーロ系のハウスのようなもの。
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Back in the ROADSIDE USA 34 Vent Haven Museum, Fort Michell, KY
ケンタッキー州の、隣接するオハイオ州の大都市シンシナティからほど近い、フォート・ミッチェルの静かな住宅街にある一軒家。ヴェント・ヘイヴン・ミュージアムという控えめな立て札が目印だ。ヴェントとはヴェントリロキスト(ventriloquist)の略。難しそうだけど、日本語でいえば腹話術師。ヴェント・ヘイヴンは世界唯一の腹話術博物館である。母屋裏のコテージのような平屋の鍵をキュレイターに開けてもらい、一歩足を踏み入れると、そこには腹話術の人形が壁を埋めるようにずらりと並び、不気味なまでに壮観。その数およそ600体に達し、現在でも増え続けているそうで、もちろんコレクションとしても世界最大だ。
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爆安の彼岸――ABS屋で68円宇宙遊泳
本メルマガでおなじみ「八潮秘宝館」を見学に行ったとき、館主の兵頭喜貴くんが教えてくれたのがゑびすや商店/ABS卸売りセンター、通称「ABS屋」だった。足立区辰沼に本社・本店を構え、葛飾、江戸川、三郷、市川など東京外縁部に8店舗を展開するABS卸売りセンターは、百円ショップならぬ「68円ショップ」という驚異の低価格で、地元住民の日常生活を支え、テレビ番組にもしばしば取り上げられているので、ご存じの方もいるのでは。「ABS屋と水元公園があるから、このあたりに引っ越したようなもんですよ」という兵頭くんは、不覚にもABS屋を知らなかった僕を、「秘宝館の前にまずは」と、わざわざ見学に連れて行ってくれた。今週は八潮秘宝館館主・兵頭喜貴みずからが案内する、これもまた東京屈指の秘境であるABS屋探検記をお送りする。
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Back in the ROADSIDE USA 39 O.K. Corral, Tombstone, AZ
砂漠、それとも西部劇? アリゾナという単語から、どんなイメージがふくらむだろうか。西はカリフォルニア、東はニューメキシコと州境を接し、南に行けばすぐメキシコ、北東部にはネヴァダとの州境を越えてラスヴェガスがあり、北部にはグランドキャニオンというアメリカ随一の観光名所を擁する、しかしなんとなく印象の薄い州がアリゾナである。西部劇の舞台として名高いトゥーソンやトゥームストーンがあるように、アリゾナは西部開拓時代の、いわば晴れ舞台であった。カウボーイがいて、酒場があって、着飾った売春婦がいて、撃ち合いがあって・・アメリカ人にとってもアリゾナは、ドラマとノスタルジーに彩られた特別な土地だ。西部劇でおなじみの『OK牧場の決闘』も、アリゾナにはちゃんと実在する。それもトゥームストーン=墓石、という名前を冠した町に。
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Back in the ROADSIDE USA 42 Babyland General Hospital, Cleveland, GA
ミシシッピ河の東側でいちばん大きなジョージア州(南北600km、東西400km以上!)は、「気候、風土、産業、歴史等多くの類似点を有する」鹿児島と姉妹県州だそう。似てるだろうか・・・。州都アトランタから北におよそ100キロ、クリーヴランドという小さな町にあるのが『ベイビーランド・ジェネラル・ホスピタル』だ。日本ではちっとも受けなかったが、アメリカではずっと前から根強い人気を誇っている人形に、「キャベッジ・パッチ・ドール」というのがある。その名のとおりキャベッジ・パッチ=キャベツ畑から生まれたというふれこみの、かわいいというかちょっと不気味な人形だ。ちなみにアメリカでは子供に「わたし、どこから生まれたの?」と聞かれると、親がよく「キャベツ畑からよ」と言って聞かせるのだという。
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案山子X 38 鬼木棚田まつり(長崎)(写真・文 ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は長崎県東彼杵郡波佐見町鬼木郷の鬼木棚田まつりを紹介します。長崎県の中央部に位置する波佐見町は、長崎県内で唯一海に面していない町です。400年の伝統をもつ陶磁器の波佐見焼の産地であり、オシャレで使いやすい日用食器として近年注目されています。波佐見町には日本の棚田百選に選ばれた「鬼木の棚田」があります。毎年9月に「鬼木棚田まつり」が開催されており、棚田の美しい景観とユニークなかかしを見ようと多くの人が訪れます。2000年に棚田百選に認定された事をきっかけにこの祭が始まったのですが、その時はかかしの展示は無く枝豆の収穫イベント等が行われただけでした。翌年2001年に、祭に来る人に喜んでもらおうと住民の方が5体程のかかしを製作して棚田に展示したのが始まりで、その後かかしはどんどん増えていきました。今では100体以上のかかしが展示され、かかしを目当てに訪れる人も増えてきました。
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フランスわき道より道 見聞録 04 石川次郎さんを追って(写真・文:中山亜弓)
フランス行きの大きな目的のひとつは、3年前からお手伝いしていた漫画家・石川次郎さんのフランス巡回展『France Invasion』(2017年4月5日号参照)の様子を観ることでした。次郎さんはスマホもパソコンも持っていなかったので、長年、次郎さんのジンの販売をしてきたタコシェが、フランスの主催者や編集者との連絡の取り次ぎを行っていたのです。2014年に南フランスで開催され、50人以上の日本の作家を紹介したMangaro、Heta-Uma展(2014年11月12日号参照)の際に、参加者のひとりとして現地に渡った次郎さんは、設営スタッフのひとりルノ・ルプラ=トルティや、キューレーターで出版芸術集団ル・デルニエ・クリLe Dernier Criのアート・ディレクター、パキート・ボリノらと”文通”で交流を深める間、ルノの奔走によりフランスでの展示と出版の企画が具体化してゆきました。
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新連載! 石川次郎のフランス侵略日記 01(画・文:石川次郎 構成:中山亜弓)
今年6月末から8月初めにかけて短期連載した中野タコシェ・中山亜弓さんによる『フランスわき道より道 見聞録』でお伝えしたように、異端のアーティスト/漫画家・石川次郎がこの春からフランスで巡回展を開催、大きな反響を得た。次郎さんは旅のあいだずっと、詳細な日記をつけていて、それはまたひとつのアートワークでもあり、旅に慣れない中年男の愉快な冒険譚でもあった。これから隔週で全6回、手書きの日記を読み込んだ中山さんの構成による「石川次郎のフランス侵略日記」をお届けする。長いキャリアで熱烈なファンを持ちつつも、いまや日本よりもフランスのほうでリアルタイムの注目を集めはじめ、本人も日本を捨ててフランス移住を真剣に考えつつあるという石川次郎のマジックカーペット・ライド。じっくりお付き合いいただきたい!
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ディープ・コリアふたたび 09 南原~順天(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
なくなってしまった町の中で、かつて訪れた、かもしれない場所を探すというのは多次元空間物SFではありふれたことだ。それもディープ・コリアだったのね。と思いつつ乾いた初夏の遅い午後の南原を歩いている。『プリズナーNO.6』を連想しないでもないが、とりあえず西の方向へ向かっている。東方には観光公園のようなものがある、とファンシーな観光地図に出ていた。新しいお寺でもできたのかな? という佇まいの木造新築レトロモダンというか朝鮮時代劇のセットそのものの建物が、我々の行く手に出現した。樹木は植えられてさほど時を経ていない。こんなものでもありがたく思う観光客が手を合わせに来るのだろうなあ、と思ってよく見ると、似たような建物で小型化したやつが奥にいくつも点在している。おやおや? お寺じゃないのねここらは。コテージ・ホテルだったのだ。こいつがずいぶんな広さだった。
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案山子X 40:夢コスモス園創作かかしコンテスト(京都)(写真・文 ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は京都府亀岡市夢コスモス園の創作かかしコンテストを紹介します。亀岡市は京都府の中西部に位置し、京都市や宇治市に次ぐ人口を有する都市です。戦国時代に明智光秀が丹波亀山城と城下町を築いた場所です。JR亀岡駅から3キロほどの場所にある夢コスモス園は、約4haの面積に20品種約800万本のコスモスが咲く関西有数の規模を誇るコスモス園です。コスモス園がオープンする時に、イベントをやって盛り上げていこうと創作かかしコンテストが始まりました。毎年9月下旬から10月下旬頃までの開園中に創作かかしコンテストが開催され、コスモスだけでなくかかしを楽しみに多くの人が訪れています。
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ディープ・コリアふたたび 10 順天~釜山(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
駅前はちょっとした公園になっていてベンチだの植え込みだの、陽陰用のひさしだのがあり、老人だけではなく若者やおばさんおじさんも、くつろいでいる。順天周辺の地図はないか、と駅中に旅行案内所があったので訪ねてみた。「韓国全図はありませんか?」以前は観光公社のロビーなどに普通に置いてあった。むしろその地方の地図のほうがめずらしいものだった。というより、地域の地図の配布はほとんどなかった。それらが作られていたのは、ソウルと釜山、慶州ぐらいのものだ。さらに、我々は、大韓の様々な土地へ赴いたが、地図を求めたことはなかった。探しもしなければ使う気もなかった。端から地図といえば大韓全図しか頭になかった。あれだけあれば十分だった。だから再訪の旅にあたってもそれを使おうと考えていた。それが当然のことだと思っていたのだが、何故かどこへ行っても見当たらないのだった。
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魔都は踊る――上海ダンスホール事情(写真・文:吉井忍)
2014年に写真家・任航(レン・ハン)をインタビューしてくれた北京在住の吉井忍さん。現在も日本と中国を行ったり来たりしながら、さまざまな取材を続けている。先日、久しぶりにお会いしたら「北京も上海も、いまはダンスがすごくて!」と言うので、クラブカルチャーの話かと思いきや、年配層の社交ダンス・シーンが熱いのだと。そういえば朝から公園で踊ってるひとたちとか、いるよなあ。運動になるだけでなく、異性と触れあうことでホルモンバランス改善にも効果的と言われ、我が国でも中高年層に人気が高まりつつあるけれど、日本よりはるかに盛り上がっているという上海のダンス・シーンを覗いてきてもらった。素敵な異性との触れあい、あったんでしょうか!
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石川次郎のフランス侵略日記 04 次郎、ボルドーへ(画・文:石川次郎 構成:中山亜弓)
パリでの個展のオープニングも盛況のうちに終えた次郎は、巡回展のコーディネィターでもあるルノとともに、彼のアパルトマンのあるモンペリエに戻った。そこで、大好きなクロエさんがいるボルドーでも展示ができることにり、再会に胸が高鳴るーーー 大事な事だから「後日書く」と記されたまま、肝心な部分には触れずに、蛭子さん風の似顔絵とともにお送りする寄書、奇日記、いよいよ後半に突入です!
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石川次郎のフランス侵略日記 05 マルセイユ編(画・文:石川次郎 構成:中山亜弓)
フランス滞在も残すところあとわずか。最後の個展開催地で、思い出の地マルセイユに3年ぶりに次郎が舞い戻る!! 編集者でアートディレクターである恩人、ル・デルニエ・クリのパキート・ボリノは、次郎へのサプライズプレゼントとして作品集を制作する一方で、「(ヘルニアでも)手加減せずに俺が鍛え直してやる!」と手ぐすねひいて待っていた。しかし、次郎にとって仕事は二の次、人間活動第一! またもや新たな恋に身を焦がすのであった…。
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Back in the ROADSIDE USA 58 The Forevertron, Prairie du Sac, WI
日本で言えば三重県のように「一般的には地味なイメージだがアウトサイダー/珍スポット的には重要地域」というのが、アメリカでは「人間より牛の数のほうが多い」ウィスコンシン州にあたる。これまで3回にわたってウィスコンシンの物件を紹介してきたが、今週お連れする『ザ・フォーエヴァートロン』と、来週お見せしたい『ハウス・オン・ザ・ロック』が、実は僕が訪れたすべてのアメリカ珍スポットで、いちばんのお気に入り物件だ。
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新連載! ROADSIDE CHINA――中国珍奇遊園地紀行 01 湖北省(写真・文:関上武司)
今年1月11日配信号で紹介した『中国遊園地大図鑑』の著者・関上武司。いまも会社員生活の休みをフル活用して、中国各地の味わい深い遊園地を撮影に走り回っているという。直に会って旅のエピソードを聞いていると、メディアが報道する「野蛮で危険な大国」とはまったく別物の、リアルでフレンドリーな暮らしが見えてくる。とても書籍には収まりきらない発見や出会いの旅日記を、これから毎月書いてもらうことにした。第1回は中国の真ん中にある湖北省から!
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ディープ・コリアふたたび 11 ソウル~清州(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
日本で大韓民国の話をするとき全羅南道から入る人はほとんどいない。一極集中しているのは日本人の認識も同様であると、ずいぶん長い間感じてきたが、21世紀に入ってそれはより強くなったんちゃう? と思うのだがそもそも他の国に対する場合も似たりよったりなのだろうとは思えるくらいに我々も年をとってはいる。しかしまあそのなんだなあ、この『ディープ・コリア』観光30周年記念再訪の旅(以下デコ30)も3回目にしてソウルに足を踏み入れることになった。
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地図にない街 釜ヶ崎 Vol.2 釜ヶ崎の食(文章:水野阿修羅 写真:ケイタタ)
今回のテーマは「釜ヶ崎の食」。もう、精神的にも物理的にもお腹いっぱいになりすぎて吐きそうになるかもしれません。体調がよろしい時にお読みください。それでは行ってみましょう。Google Mapのおまけつきです。
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Back in the ROADSIDE USA 64 Field of Dreams Movie Site, Dyersville, IA
アイオワを舞台にした映画のなかでも、よく知られているのが『フィールド・オブ・ドリームス』。ご存じケヴィン・コスナー扮する農夫が、もはやこの世にいない名野球選手の声を聞き、トウモロコシ畑をつぶして野球場を作るという、希代の名作というか怪作だ。「フィールド・オブ・ドリームス・ムービーサイト」は映画のロケ地がそのまま整備された観光スポット。映画に出てきたとおり、見渡すかぎりのトウモロコシ畑のあいだを走っていくと、突然、野球のダイヤモンドが出現。当然だが、あまりにも映画そのままなので、ちょっと感動。
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本当に住みやすい街とは――深圳建築ビエンナーレ散歩(写真・文:吉井忍)
新大久保や池袋に広がる外国人エリアを歩いていて、ふと懐かしい気分になることがある。雑多でバイタリティあふれる空気や、密度の高い建築群、知らない者同士がとても薄い連帯感でつながっている感覚。何かに似ていると思っていたが、昨年(2017年)12月に中国南部の大都市・深圳でスタートした建築関連のビエンナーレを訪れて、「ああ、コレか!」と気づいた。この建築展の正式名称は「深港城市/建築双城双年展(BI-CITY BIENNALE OF URBANISM/ARCHITECTURE)」、略してUABB。今回のテーマは「都市共生」、つまり出身地やお金のあるなしにかかわらず、皆に住みやすい街づくりを探るということだ。
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プノンペン・ナイトクルージング(写真・文:スナック・アーバンのママ)
こんにちわ、アーバンのママです! 毎年恒例、Roadsiders’ Weeklyの新年取材、ことしはカンボジアのプノンペンでした。先週は都築編集長による、頭にも耳にも刺激的なカンボジアン・ロックの世界でしたが、今週はわたしがただ呑んだくれたプノンペンのある夜のお話です。メルマガ史上、最ゆる記事になる予感しかしませんが、酒の肴にお付き合いください。
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ROADSIDE PHUNOM PENH 2 夜の子ども遊園地
東京にお台場があり、シンガポールにセントーサがあるように、プノンペンには川沿いにダイヤモンドアイランド(コーピッチ)と名づけられた開発エリアがある。高層ホテルや投資用コンドミニアム、商業施設が整然と立ち並び、3つの橋でつながる本土側にもイオンモールのカンボジア1号店や、プノンペン唯一のカジノホテル・ナーガワールドがあり、まるでカンボジアっぽくないというか、旅情を味わえる地域ではない。しかしそこは東南アジア。日中は無機質なビル群がそびえたつだけのダイヤモンドアイランドも、陽が沈み涼風の訪れとともに庶民がスクーター2ケツ3ケツ4ケツで集まりはじめ、地べたにゴザを敷いて宴会開始。さらにスクーターの群れについて奥へと進むと、突然ギラギラの電飾と、けたたましいダンスミュージックがあふれだす。『Koh Pich Kid Playground』と呼ばれる、その名のとおりの「子ども遊園地」だ。
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ディープ・コリアふたたび 15 江陵~安木(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
安らかな眠りから目覚めるということは、大韓民国を旅行していて、一度もない。安らかな気分になりたいと思って大韓に来たことも一度もないのだから、当然だと思う。朝目が覚めた瞬間、ここはどこだろう、とまず思う生活を続けてきた。反射的にそう思ってしまうのは大韓旅行の日々が多かったからかもしれない、とふと考えた朝だった。ポンチャック・テレビを見るでもなく、ぼんやりニュース番組をながめて顔を洗って歯を磨いてすぐに、ヤリテババアストリートどん突きのモーテルを出る。出てすぐとなりの日向に三毛猫がいた。耳が大きい。顔の左半分が黒い。美猫だ。つながれている。大きな道路が近いからだろうか。猫を繋いで犬を放し飼いというのが大韓の旧スタイルだが、猫は機嫌よくごろんごろんカラダをロールさせている。
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Back in the ROADSIDE USA 73 DEA Museum, PentagonCity, VA
ワシントンDCからポトマック河を隔てヴァージニア州側にそびえるペンタゴン。廊下の総延長が227キロ、毎日2万5000人が働く、いまもって世界最大のオフィスビルだ。ペンタゴンの周囲には関連政府施設や住宅、ショッピング・エリアからなるペンタゴンシティが広がっているが、そうしたビルのひとつに本部を置くのがDEA(ドラッグ・エンフォースメント・エージェンシー)、すなわち麻薬取締局。空港並みに厳しい警備の入口を抜けると、1階にあるのが1999年にオープンしたDEAミュージアム。アメリカと麻薬の歴史をひもとく、非常に珍しい資料館である。
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Back in the ROADSIDE USA 74 Mummers Museum, Philadelphia, PA
フィラデルフィアの正月を彩る『ママー』。へんな名前だが、ニューオリンズのマルディグラのように、あるいはリオのカーニバルのように、絢爛豪華な衣裳で着飾った人々がフィラデルフィアの中心街を元日に練り歩く、アメリカでもっとも古い歴史を誇るお祭りだ。ニューオリンズのように気候はよくないというか、フィラデルフィアの冬はものすごく寒いのだが、雪にも雨にもめげることなく、毎年1万5000人にものぼる参加者たちが参加するというのだから、なかなかシリアスなお祭りである。
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案山子X 47:かがしコンテスト(福井)(写真・文 上迫愛)
こんにちは。上迫愛です。今回は福井県坂井市のかがしコンテストを紹介します。坂井市は福井県の北部に位置する街です。西側が日本海に面しており、断崖絶壁の景色で知られる景勝地・東尋坊や、古風な様式で建てられた天守がある丸岡城など、全国的に有名な観光地を擁しています。今年の2月に記録的な大雪で被害が出た為、ニュースで坂井市の名前を聞いた事がある方もいるかと思います。坂井市坂井町では毎年8月初旬に「さかい夏祭り」が開催されます。坂井町は周囲を田んぼに囲まれた米どころで、平成元年に町のPRと市民のふれあいを目的とした夏祭りが始まりました。夏祭りのメインイベントである「かがしコンテスト」も同時期に始まり、2016年で28回目を迎えました。
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新連載! 赤線酒場×ヤミ市酒場 ~盛り場のROADSIDERS~ 第1回 洲崎と辰巳新道の回(文・写真:渡辺豪+フリート横田)
終戦後間もなくして全国の都市部で咲き乱れ、そして消えていった戦後の徒花、「赤線」と「ヤミ市」、売春街とブラックマーケット──。扱う商品は違えど、いずれも金と欲の坩堝となった。放射された熱気に当てられ、火照った身体を持て余した男たちの乾いた喉を潤おすため、赤線とヤミ市至近の位置には、いつも“酒場”が形成された。2020オリンピックを控えて、戦後から70余年を経た東京の街は、大きく表情を変えようとしている。かつて赤線だった街、ヤミ市だった街の建物が取り壊され、往時を知る世代も鬼籍に入りつつある平成最後の今、見聞できる残された時間は決して長くない。酒場には、過去の記憶が閉じ込められている。遊廓家・渡辺豪と路地徘徊家・フリート横田が、かつての赤線とヤミ市で呑み、過去から湧いてきた言の葉の海に身を沈める。記念すべき当連載の第一回は、帝都2大遊廓の一つ「洲崎」と、露店商たちが肩寄せ合った飲み屋街「辰巳新道」。
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Back in the ROADSIDE USA 85 St Louis Cemetry No.1/St. Roch Chapel, New Orleans, LA
別名を「シティ・オヴ・ザ・デッド」というくらい、ニューオリンズと死とは切り離せない関係にある。市内に点在するたくさんの墓地は、また強力な観光スポットでもあるのだ。フレンチ・クオーターのすぐ外側にあるセントルイス・セメタリーNo.1は、1789年に開園したニューオリンズ最古の墓地。もちろん現在も稼働中である。いわゆる「墓」という概念からかけ離れた、一種の建築と呼べるスタイルとサイズの墓が、迷路のように折り重なり、見え隠れするさまは、まさに「死者の街」。映画『イージーライダー』の、墓地でトリップする場面もここで撮影された。ちなみに墓地のすぐ脇は、19世紀末から20世紀初頭にかけて全米に悪名をとどろかせた、巨大な合法売春地帯ストーリーヴィルである。
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案山子X 49:あさか野柴宮 案山子祭り(福島)(写真・文 上迫愛)
こんにちは。上迫愛です。今回は福島県郡山市安積町柴宮の「あさか野柴宮 案山子祭り」を紹介します。郡山市は福島県の中央部に位置し、東北地方で仙台市、いわき市に次いで人口の多い街です。東北新幹線や東北・磐越自動車道が通り、交通の利便性が良い事から、経済の要所として発展を続けています。郡山駅から6キロ程の場所にある安積町柴宮地区では、毎年9月から1ヶ月間「あさか野柴宮案山子祭り」が開催されています。2016年に10回目を迎え、柴宮小学校近くの田んぼの中にあるあぜ道(案山子ロード)に100体程の案山子が展示されました。
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Freestyle China 即興中華 “素人”上等!中国のアウトサイダーアート(作品写真提供:劉亦嫄 文:吉井忍)
「素人芸術」という文字から、皆さんはどんなものを思い浮かべるだろうか。普通、“素人(しろうと)”といえば「未熟で経験が浅い」とか「必要な技能や知識をもっていない」人をイメージするが、中国語の“素人(スウレン)”には「素朴で飾り気がなく、自然体の人」、「ある文化や教育制度の影響を受けずにいる独立した存在」という意味合いがある。今夏、798芸術区(北京市)でアウトサイダー・アート展「素人芸術節/ Almost Art Project」の代表を務めた劉亦嫄(リュウ・イーユエン。以下、英語名のサミーで表記)さんによると、アウトサイダー・アートを指す「素人芸術」という呼び方は、まず台湾で使われ始めたようだ。貧しい漁村で暮らし、50歳を過ぎてから絵を描き始めた洪通(ホン・トン、1920-1987)氏の色彩豊かな作品はその代表的存在で、70年代から台湾で大人気だった。
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ディープ・コリアふたたび 16 羽田~ソウル(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
0泊2日はめずらしくない羽田からのソウル・ツアーであるが、便利というのは結果的に場を乱したりするものではないか、と老婆心も生まれる。行きたい人が行きたいように行けばいいに決まっている。現在は安い航空チケットがばかすか取れる状況なので、朝思い立って昼過ぎにはソウルにいることも可能らしい。旅客機に対する認識もずいぶん変わったと思う。鉄道の新幹線ぐらいの気安さで近隣の外国に行ける感覚になっているのかもしれない。30数年前にパンナムでソウルを行き来したとき、機内食がサンドウィッチ4個入りの箱一つだったことにちょっとショックを受けた。たかが2時間のフライトなんだからこれぐらいで十分だろう、といわんばかりのあしらいぶりの軽さが堂々としていた。キャビン・アテンダントも圧倒的におばさんだった。若いお姉さんがニコニコ対応してくれるのだとばかり思っていたら大まちがいだと強く教えられた。
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Freestyle China 即興中華 「普通の人の話に救われたんです」(音声データ:故事FM提供 文:吉井忍)
中国ではひと昔前まで『知音』や『故事会』という薄い雜誌がよく売れていた。いずれも隔週刊で読み切り、定価は5元(1元は約16円)。1985年創刊の『知音』は、感情のもつれですごいことになってしまった人間関係やスキャンダルなど「実話」的コンテンツが多く、若い女の子たちが座席で読み回しているのを列車でよく見かけた。『故事会』(1963年創刊)は、いわば読み切りショートストーリー集。日常生活でのホロリとするいい話や、日本人とはツボが異なるチャイニーズジョークが満載で、一時期は760万部という驚異の発行部数を叩き出したこともある伝説の雑誌だ。質の悪い紙に印刷された文字と、ラフなイラストで作られた紙面から立ち上るストーリーにはねっとりした現実味があり、読んだ後はなんとなくお隣に住むおばさんの顔などを思い浮かべたりしていた。中国で人気だというネットラジオ番組「故事FM」を聞いて、久しぶりにこれらの雑誌を思い出した。近所にいそうな、ごく普通の人たち自身が語る経験談を録音した番組で、アップルのPodcast、中国のオンライン・ミュージック・ プラットフォーム「網易雲音楽」、WeChat(微信)や蜻蜓FM(ネットラジオのプラットフォーム)で週3回配信。2017年6月にスタートした新しい番組ながらも順調に視聴者を増やし、現在の登録リスナー数は総計30万近くにのぼる。
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Freestyle China 即興中華 楽しんだもん勝ち! 成都のタトゥー展(写真:子弾、吉井忍 文:吉井忍)
パンダと三国志で知られる中国・四川省は、昔から美人の産地としても有名だが、今でも省都・成都市を歩いていると、ふとすれ違う女の子のかわいさに「えっ!」となることがある。男性も負けず劣らず、何より人当たりがいい。四川の男は気立てがよく料理も掃除もできて奥さんを大事にする一方、女は美人で気が強い、というのが中国における大方の見方らしい。尻に敷かれるタイプと男を尻に敷くタイプ。よくできていると思う。ちなみに、四川省は中国でも特に地元人同士のカップルが多いらしい。さて、そんな四川の若者たちを眺めていて気がついたのが、タトゥーを入れている人の多さだ。季節が夏だったこともあり、腕や肩に入れられた絵柄がよく見えて、なんともカッコよかった。さらにタトゥー展もあると聞いて行ってみたらすごい熱気だったので、それをみなさんにぜひお伝えしたい。
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Northern Lights 2018 vol.4 ホッキ貝とロックンロールの苫小牧
太平洋に面した苫小牧は札幌、旭川、函館に次ぐ北海道内で4番目に大きな市。ウトナイ湖など自然観光資源に恵まれて、新千歳空港から札幌には車で1時間かかるところ、苫小牧は30分ほどと実はアクセスもいい。首都圏からのフェリーが着くのも苫小牧港だ。苫小牧の港近くには道の駅ならぬ「海の駅 ぷらっとみなと市場」が観光客を集め、大通りを挟んだ港側には苫小牧で一番人気の「マルトマ食堂」もある。市場のほうは海産物の直売や海鮮丼などを出す屋台食堂が並ぶ、よくあるタイプの観光市場だが、駐車場の端っこにある「ほっき貝資料館」は、ほとんどの観光客に無視されているものの、実はかなりのクセモノ系手づくりミュージアム。地味な外観の内部には、驚きのアウトサイダー環境が構築されている。
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Back in the ROADSIDE USA 89 Town Hall, Fremont, New Hampshire
というわけで久しぶりのロードサイドUSAは、かつて取材でアメリカ中の田舎を回っていたときに、本来の取材の寄り道として、僕が好きなアメリカ音楽の聖地を見てみたうちの一箇所、シャグズの生まれ故郷をご紹介! ニューハンプシャー州フリモント。人口3000人かそこらの小さな町ですが、ここはフランク・ザッパをして「ビートルズよりすごい!」と言わしめたザ・シャグズの生まれ故郷であります。1968年、父のオースティン・ウィギンの勧めに従ってドロシー(ヴォーカル、リードギター)、ベティ(ヴォーカル、リズムギター)、ヘレン(ドラムス)、そしてのちにレイチェル(ベース)も加わったウィギン4姉妹によって結成された、「ロック界のアウトサイダー・アート」とでも表現したい、最重要バンド。
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赤線酒場×ヤミ市酒場 ~盛り場のROADSIDERS~ 第3回 神奈川県横須賀市(文・写真:渡辺豪+フリート横田)
第3回に訪れた地は、戦前は日本海軍の拠点、戦後は米軍、自衛隊の基地の街としてにぎわった軍都・横須賀。軍隊あるところ必ず歓楽街あり。今回のゲストはそんなテーマにふさわしいノンフィクション作家にご登場いただいた。「黄金町マリア」等の著作で知られる、八木澤高明氏。いま日本全国の「軍都と色町」をテーマに聞き取りを進める氏は、横須賀の酒場で、何を語るのか? 今回降り立ったのは神奈川県横須賀市。JR横須賀駅の眼前に拡がる港湾には、米軍横須賀基地に寄港する駆逐艦や空母が停泊し、ドブ板通りなど、アメリカナイズされた街が今も多くの観光客を引き寄せている。横須賀の発展は幕末に建設された横須賀製鉄所から始まり、明治17年には横須賀鎮守府が設置、昭和に入ると帝国海軍の一大拠点となった。現在は、アメリカ軍や自衛隊が駐留し、横須賀は関東を代表する「軍都」でもある。今回のゲストはノンフィクション作家・写真家の八木澤高明氏。八木澤氏は軍都と遊廓の繋がりに関心を寄せているという。
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案山子X 51:由利高原鉄道かかし列車(秋田)、へのへのもへじ卓球場(秋田)(写真・文 上迫愛)
こんにちは。上迫愛です。今回は秋田県の由利高原鉄道かかし列車と、へのへのもへじ卓球場を紹介します。まずは秋田県由利高原鉄道の「かかし列車」を紹介します。由利高原鉄道は羽後本荘駅と矢島駅を結ぶ鳥海山ろく線を運営する、第三セクターの鉄道です。標高2236メートルの鳥海山の麓を走り、車窓から自然豊かな美しい風景を堪能する事ができます。毎年秋になると鳥海山ろく線沿いの駅舎や田畑にかかしが展示され、列車に乗りながらかかしを見る事ができます。昔は沿線の田畑にかかしが立っており、秋の風物詩といえばかかしという事で、かかし列車の企画が始まったそうです。2016年に6回目を迎え、沿線の地域の方や愛好家の方が作った65体のかかしが展示されました。
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Back in the ROADSIDE USA 93 The Awakening, Hains Point, Wahington DC
ワシントンDC、言わずと知れたアメリカ合衆国の首都だ。正式名称は「ワシントン、ディストリクト・オヴ・コロンビア」。合衆国50州のどれにも属さない、特別区としてアメリカ政治の中枢機能を担っている。総面積が175平方キロ。ちなみに東京23区の総面積が約616平方キロだから、その3分の1以下という小さな町である。アメリカ社会の持つ両極端のすべてが、この狭いエリアには詰まっている。ホワイトハウス、連邦議会といったスーパーパワーが集結し、スミソニアンという世界最大の巨大博物館群が誇らしげにそびえるいっぽうで、DCはまたアメリカでもっとも治安の悪い町のひとつでもある。億万長者と極貧の民が、美しい街並みと荒れ果てた廃墟のブロックが、世界中の権力者とオノボリさん観光客が入り混じり、完璧な縮図をかたちづくっているのだ。
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Back in the ROADSIDE USA 94 Ahlgrim Funeral Services, Palatine, IL
日本ではパターゴルフというほうが一般的だろうか。アメリカ人はあのミニチュア・ゴルフが大好きで、家族連れや若いカップルが、わいわい騒ぎながらコースを回ってる光景を各地で見かける。もちろん高級な娯楽ではないから、デザインもいい加減でチープなのがほとんどで、それが逆にポップな空間を生み出している例も多い。いつかアメリカ中のおもしろミニチュア・ゴルフコースを撮影して回りたいというのが僕の夢のひとつなのだが、シカゴ郊外のパラティンにあるこのコースは、中でもかなりユニークなもののひとつだろう。なにしろ場所がすごい。フューネラル・パーラー、つまり葬儀所の地下にあるのだ。
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Freestyle China 即興中華 緊縛する私たち:写真家・許曉薇(シュウ・ショウウェイ)(写真:許曉薇 文:吉井忍)
今世紀に入ったばかりの数年間、台北にいた。「治安がいい」、「人が優しい」、「食べ物が安くて美味しい」人気の街で楽しい日々を送っていたはずなのだが、なぜか思い出せるのは、あっけらかんとした人々の裏側に性が迷走する細切れの風景ばかりだ。最初に滞在した宿の近くにあった二二八和平公園(ハッテン公園として有名)、日本のプロレス試合と『ギルガメッシュNIGHT』を流しつづけるケーブルテレビ局「Zチャンネル」(ブレイク当時の飯島愛さんとTバック!)、最高学府である台湾大学にほど近いLGBT向けの「晶晶書店」(ゲイコミュニティを描写した小説『孽子』※とはここで出会った)、街角の本屋にさりげなく置かれたレインボーグッズ、裏通りの壁に貼られた「ベトナムに行ってお嫁さんを買おうツアー」のポスター、そして1年以上住んでいた汚いホテルで夜な夜な聞こえてくるフィリピン人女性の喘ぎ声。
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Back in the ROADSIDE USA 97 Wyoming Frontier Prison, Rawlins, WY
先週日曜日、渋谷ユーロスペースで開催中の死刑映画週間で、スイス人監督アン・フレデリック・ヴィドマンによるアメリカ死刑囚のドキュメンタリー『FREE MEN』上映後にトークをさせていただき、そのなかで例としてワイオミング州ローレンスのフロンティア・プリズンを少しだけ紹介した。せっかくなので今週のロードサイドUSAはそのプリズンと、すぐそばの地味な資料館「カーボンカウンティ・ミュージアム」――これが一見、人畜無害なようでいて、実はおぞましいコレクションあり!――にじっくりお連れしたい。
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案山子X 53:やぶ塚かかし祭り(群馬)(写真・文 上迫愛)
こんにちは。上迫愛です。今回は群馬県太田市藪塚町のやぶ塚かかし祭りを紹介します。太田市は群馬県の南東部に位置する、自動車製造を中心とした工業都市です。人口約22万人で、群馬県内で高崎市、前橋市についで3番目に多い人口です。かかし祭りが開催される藪塚は太田市の北部にあり、豊かな自然や広大な田畑が残る町です。肝臓の働きを活発にさせるという藪塚温泉があり、祭の会場である三島神社公園の近くには「やぶ塚温泉郷」という小さな温泉街があります。2016年10月に「第33回 やぶ塚かかし祭り」を訪れました。
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パーフェクト・セレクトショップ・イン・台湾(写真・文:スナック・アーバンのママ)
暇さえあればどこかに行きたいと思っているのだけど、じゃあ、旅先で何をするかというと、ここ数年は東南アジアに多いアルミのベコベコの食器、ホーローやメラミンで作られた屋台食器、特に最近はメイドインチャイナと書かれた古い家庭用食器を探しあるいている。なんだそれは・・・、というわけで写真に撮ってみました、こういうやつです! たまんないなあ。しかし大問題。そもそもアルミ・ホーロー・メラミンは永遠に壊れない(割れない)エターナル素材なんだということに業者がようやく気づき(遅い笑!)、「だからみんな買い換えないんだ!」と最近では生産も減少してガラス製品に変わっているそう・・・シクシク。そして世の中からどんどん必要されなくなった愛しい食器たちは、都市部のスーパーではなかなか見つからない孤高の存在に・・・シクシク。だからわたしは、わざわざ数時間をかけて郊外の超ローカルな日用品店まで出かけ、奇跡的に品揃えがよかったら爆買いするしかないという状況におかれております(涙)。もし同好の士がいたら情報交換したいです、連絡ください!!
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Freestyle China 即興中華 始まりと究極が見える街・西川口(文・写真:吉井忍)
「西川口」がチャイナタウンのようになっていると聞いて、昨年からたびたび訪れていた。埼玉県川口市北西部にある、JR西川口駅周辺のことだ。かつての風俗街の印象を一新する勢いで多くの中華料理店が出現し、テレビや雑誌でも何度も紹介されているので、もう行ったよという方も多いと思う。この場所について書いてみようと考えたのは、店主さんたちの話がとても面白かったからだ。「中国人オンリー」で、「中国化」がすごい街と言われているものの、では一体どんな「中国人」がどんな気持ちでこの街に住み、店を構え、異国での人生を歩んでいるのか。今回は普段は店の奥にいるご主人たちが、仕事の合間を縫って教えてくれたストーリーを少しご紹介したいと思う。
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日本性祭紀行3 茨城県の道鏡様祭り(写真・文:深沢佳那子)
男根崇拝の祭りを巡っているという話をするとき、いつも「川崎のかなまら祭りって知ってますか?あんな祭りを巡っています」と説明する。かなまら祭りの知名度たるやすでにほぼ100%に近く、誰もがすぐに「あーあれか!」と言ってくれるから助かっている。メイン神輿のピンクの男根はTwitterやInstagramでもすっかり有名だ。しかし実際のところかなまら祭りのようなSNS映えする男根祭りばかりが男根祭りではない。田舎でひっそりと、やっている人も何だかよくわからずやっている、という男根祭りもあるのだ。茨城県の道鏡様祭りは今まで行った男根祭りの中でも特に地味で、しかし特に奇妙な祭りだった。
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赤線酒場×ヤミ市酒場 ~盛り場のROADSIDERS~ 第7回 秋田県・湯沢市(文・写真:渡辺豪+フリート横田)
今回目指すは秋田県湯沢市。東京上野駅から秋田新幹線で北上。大曲駅で在来線・奥羽本線に乗り換えて、南へ転進すること3時間。目的地の湯沢で旅装を解く前に、一つ手前の中核都市である横手に降り立った。横田「渡辺さん、秋田県のヤミ市は大きなものだと秋田駅前にあったようですが、県南部のこのあたりでは、特にそういった規模のものは聞きません。」渡辺「この辺りはむしろ物資の供給地だったので、ヤミ市はなかったと地元の人に聞いて腹落ちしたことがあります。一方、遊廓は相当賑やかなものがあったようで、現在の歓楽街、中央町がかつての遊廓・馬口労町です。もともと宿場町や地域の集散地として商取引の盛んな街でしたが、明治38年に奥羽本線の開通が、遊廓の発展を後押ししたようで、7軒の妓楼と40名以上の遊女がいたようです。」
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案山子X 59:常総ふるさとまつり かかしコンテスト(茨城)(写真・文:上田愛)
こんにちは。上田愛です(上迫愛から名前が変わりました)。今回は茨城県常総市新石下の「常総ふるさとまつり かかしコンテスト」を紹介します。常総市は茨城県の南西部に位置し、市の中央に一級河川の鬼怒川が流れています。住宅地と水田地帯が広がる新石下地区では、毎年11月上旬に「常総ふるさとまつり かかしコンテスト」が開催されています。コンテストの期間中は、石下庁舎周辺に多くのかかしが立ち並びます。かかしを作り展示する事で、地域交流をはかる事を目的に開催しているそうです。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 15 寧夏回族自治区(写真・文:関上武司)
好久不見了!(中国語でお久しぶりです!)軟体トラベラーの関上武司です。今回は2016年の盆休みに寧夏回族自治区へ訪問したレポートになります。2016年8月13日。この日は青海省西寧市から甘粛省蘭州市へ移動して遊園地の撮影をし、寧夏回族自治区銀川市まで列車で移動する予定だったのが、自分自身のいい加減な性格のおかげで列車の切符を入手できず、急遽、バスで向かうことになりました。蘭州市から銀川市へのルートは基本的に荒れた大地が広がっているという印象です。バスの車内で『ドラゴン×マッハ!』(原題:殺破狼2)という中国と香港の合作アクション映画が上映されていて、ダブル主演の中国のウー・ジンとタイのトニー・ジャーの超絶アクションにしびれていました。
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案山子X 60:羅漢の里もみじまつり・かがしコンテスト(兵庫)(写真・文:上田愛)
こんにちは。上田愛です。今回は兵庫県相生市矢野町の「羅漢の里もみじまつり・かがしコンテスト」を紹介します。兵庫県の南西部に位置する相生市。南は海岸部に面しており、北は自然豊かな山間部が広がる南北に長い地域です。ペーロン競漕や海上花火大会で盛り上がる初夏のイベント「相生ペーロン祭」や、相生名物のかきを楽しめる冬のイベント「相生かきまつり」が有名です。秋の一大イベントとして、毎年11月の2週目に開催されるのが「羅漢の里もみじまつり・かがしコンテスト」。矢野町瓜生の羅漢の里にある800mの沿道に、約1000体のかかしが立ち並びます。
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日本性祭紀行6 徳島県牟岐市の姫神祭り(写真・文:深沢佳那子)
男根祭りというとまず思い浮かべるのは神奈川県川崎市の「かなまら祭り」のように大きなご神体を担ぐような祭りではないだろうか。実はああいった大きな男根を担いだり引いたりする祭りというのは、その多くが高度経済成長期以降に始まった観光客向けの祭りである。もちろんその背景には昔から行われてきた性器崇拝という信仰があるものの、大きな「ご神体」は近年作られ祀られるようになったものであることが多い。そんな観光客向けの性器崇拝祭りのひとつである姫神祭りは、徳島県牟岐市で毎年7月最終日曜日に開催される祭りだ。この祭りは昭和43年(1968年)から始まったもので、約3メートルもの高さの直立した男根を「シンボル」として船に乗せ、海上パレードを行うといった特徴を持つ。
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Freestyle China 即興中華 人気沸騰の中国8D都市――『重慶マニア』著者・近堂彰一氏インタビュー(写真:近堂彰一 文:吉井忍)
中国内陸部の大都市・重慶について、日本人が中国に先駆けて取材した書籍『重慶マニア』がこのたび出版された。版元は、昨年『中国抗日ドラマ読本』(著者:岩田宇伯氏)を出して日本のみならず、中国の読者をも唖然とさせた合同会社パブリブ(東京都、代表:ハマザキカク氏)。たぶん今、中国当局が一番気にしている日本の出版社ではないだろうか。パブリブさんは『重慶マニア』を「地方都市マニア」シリーズ第一弾と位置付けておられるらしいので、これからもどんどんほかの都市と人々の実態が明るみに引きずり出されること思われる。さて、さっそく『重慶マニア』を開いてみると、ただの工業都市だと思っていた重慶が、なんだかものすごい独自の発展を遂げていることが分かる。今月発売されたばかりの本書は、18万文字超に加え、ほぼ全てのページに画像ぎっちりというかなりのボリューム。都築編集長のご紹介により著者の近堂彰一氏にお話をうかがうことができたので、重慶でしか見られない風景の数々も交えてみなさんにご紹介したい。
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Freestyle China 即興中華 仏タトゥーの巡回展、台湾・高雄へ (文・写真:吉井忍)
台湾南部の高雄市で大規模なタトゥー展『TATTOO刺青―身之印』が開催中だ。高雄市立美術館とフランスのケ・ブランリ美術館による初コラボレーションによるもので、人類に長く寄り添ってきたタトゥーを俯瞰的に見渡しつつ、台湾のローカルな内容も加えた作品200点を展示している。台湾といえば、毎年いくつかの国際タトゥーコンベンションが開かれているし、現地のタトゥー・アーティストのレベルも相当高いとか。ならば中国大陸とはまた違った発見があるはず!そんな期待を抱きつつ、高雄へ向かった。
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ショッピングセンターに隠された恐怖の館・生命奥秘博物館
三国志をはじめとする歴史名所旧跡にあふれ、パンダ・ファンの聖地であり、四川料理のふるさとでもある成都。その中心となるのが巨大な天府広場だ。地下鉄網のハブ駅であり、成都博物館と四川科学技術館に囲まれて、いつも地元民と観光客で賑わっている。 広場の地下はこれまた巨大なショッピング街になっていて、棒になった足を休められる場所を探しさまよっていたら、なんだかグロテスクな輪切り(というか縦割り)のマンボウが、通路にどーんと展示されていた。脇に立っていたお姉さんからパンフレットをもらうと、「生命奥秘博物館」と書いてある。なにこれ・・・・・・。 マンボウを通り過ぎた先、ドラえもんショップの隣に大々的に展開していたのが生命奥秘博物館だった。入口の左手には立ち上がったシロクマの半分は毛皮、もう半分は皮を剥いだ内蔵露出標本が、「本物ですから触らないで」という注意書きとともに飾られているが、反対側はパンダの縫いぐるみが山積みになっている。「奥秘」かどうかはともかく、「奥謎」施設であることは確か。
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Freestyle China 即興中華 愛を誓ったその後は 写真家・劉貞伶インタビュー(写真:劉貞伶 文:吉井忍)
「写真を撮る」ことの特別感がだいぶ薄らいでいる現在だが、例えば結婚写真は一生に一度(できれば)のチャンス、なるべくちゃんと撮って残しておきたいと思うのが人情だろう。台湾や中国大陸などの中華圏では「婚紗照」(※)と呼ばれる前撮りが盛んで、化粧に衣装、背景やポーズに日本とは桁違いの気合いを入れて撮る。撮った後は大きく引き伸ばし、結婚式当日にはウェルカムボードのように利用、個々の写真はアルバムにまとめて自分たち用だけでなく双方の両親にもプレゼント、さらにブロマイドのようなカードにして来賓に配る。引き伸ばした写真は結婚式の後も仕舞い込んだりはせず、新居の寝室やリビングの壁に掛けてお客さんや友人、子どもたちにも堂々と見てもらう。
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まだまだ知らないバンコク・ガイド 1 (写真・文:スナック・アーバンのママ)
なんども遊びに行っているバンコクだけど、知らない場所がまだいっぱい。今回から2回にわけて、今年のお正月のとある日に訪れた、なかなかガイドブックに乗らないおすすめ観光地を3箇所ご紹介します。最初は、テレビ番組「クレイジージャーニー」で取り上げられたこともありご存知の方も多いかもしれないけれど、数年前に都築編集長から聞いてずっと気になってた飛行機の墓場こと「Airplane Graveyard」です。ボーイング747を始め、廃棄された飛行機の残骸が置き去られた場所らしくて、いろいろ映えなスポットとしても世界中の旅行者から人気だとか。き・・・気になるじゃないかー!
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まだまだ知らないバンコク・ガイド 2(写真・文:スナック・アーバンのママ)
Airplane Graveyardを出てGrabで車を呼んで、とりあえずMBKまで移動。次に向かったのはBTSラチャテウィー駅の近くにあるGraffiti Parkとも呼ばれるチャームラー公園だ。この公園を中心とした一帯にバンコクのグラフィティが集中的に集まっていると聞いてがぜん興味を惹かれた。ラチャテウィー駅はサイアムの隣という便利な場所。大通り沿いにはいつも満席なジェー・ゴーイをはじめ数軒のローカルなイサーン料理屋が夜中までやっている。余談ですが、バンコクではメニューにないお酒の持ち込みOKなお店も多くて(ビールなどお店にあるお酒は注文してたっぷり呑んでくださいね!)、イサーン料理は意外とチャミスルが合うので激しくおすすめします。それから駅の下にはココウォークというフードコートがあって待ち合わせにも使える!
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まだまだ知らないバンコク・ガイド 3(写真・文:スナック・アーバンのママ)
Airplane Graveyardからラチャテウィーのグラフィティ・ストリートとすっかり満喫。でも、まだ時間は14時ぐらい。ってことは、もう1ヶ所、行けそうな気がする! ということで向かったのは、懐かしい再現が充実しているとネットで見かけた「バーン・バンケーン」です。バーン・バンケーンはサイアム周辺からGrabで30分弱。2017年にオープンしたユニークなスポットで、カフェにレトロなコカ・コーラミュージアム、タイのクラシックな高床式住居、ラマ9世のコレクションミュージアム、それから古い学校や商店を再現したお目当ての再現スポットなどが入っている。もともとオーナーのSompong Pisankitvanich氏はヴィンテージグッズの熱心な収集家で、ショッピングモールやコンビニの出現する前、1960年代のリアルな生活を再現したいとこの場所を作り上げた。
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おもしろうてやがてかなしき済州島紀行6 ミニランド+小人国
真冬の2月に撮影した写真と一緒に、10年前の写真を見返していたら、せっかく取材したのにこれまでほとんど発表する機会がなかった珍スポットがいくつも出てきた。なのでもう少しのあいだ、昔の写真で申し訳ないけれど、お付き合いいただきたい。すでに閉園・閉館してしまった場所もあるけれど、大半はいまもかわらず営業中。それどころか10年前よりパワーアップしているスポットもあるようなので! また韓国に行けるようになったら、最速の再訪を願いつつ・・・・・・。というわけで済州島オマケ誌上旅行の第1回は、島内に2つもある大規模ミニワールド!
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 16 安徽省(写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)軟体トラベラーの関上武司です。今回は安徽省合肥市の蝋人形館や蕪湖市のテーマパークについて紹介したいと思います。2013年12月31日。この日は江蘇省から安徽省の合肥市へ高速鉄道で移動。当時の合肥駅前は地下鉄工事中で騒然としていましたが、現在は地下鉄が運行されており、市内の移動は便利になっているとのこと。合肥駅から現地のおっちゃんが運転するバイクタクシーで市中心部の包公園へ行ってみることにしました。おっちゃんは「合肥は温暖でいい所だよ」と自慢しており、大みそかにも関わらず、それほど寒さを感じなかったのが印象的でした。
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freestyle China 即興中華 “老百姓”ワールドにようこそ:中国のZINE『吃的ReallyWant』 (写真提供:大瓜/文:吉井忍)
一年ほど前、広州にあるギャラリーでふと目に止まったZINEがあった。写真がてんこ盛りの小冊子、『吃的ReallyWant(ツーダ・リアリィウォント)』だ。タクシー運転手が愛用するレストラン、北京に住む大家族にまつわる食べ物の思い出、無数のゴミ箱の記録、そして魚料理“松鼠桂魚”のバリエーション研究。次にいつ中国へ行くことができるのか全く見通せない今、このZINEをめくっていると、遠くなってしまった宝物を見ている気分になったりもする。 どれも決して「映える」写真ではないし、レイアウトもちょっと見づらい。でも、読み込むと内容はとびきり面白くて、実はキレキレのセンスで日常を切り取っていることがうかがえる。素材がどれも庶民の生活に根ざしているので、背伸びせずに共感できるのもいい。中国のZINEにはびっくりするほど高いものもあるが、こちらはかなりお手頃で、ギャラリーでの販売価格も25元(約400円)ぐらいだった。作り手は北京在住の女性二人組、今回はそのうちの一人、大瓜(ダーグワ)さんにWechat通話で取材させていただいた。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 18 浙江省中編 (写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)。拙作『中国遊園地大図鑑』シリーズのパブリブ社から『デスメタルチャイナ』が出版され、メタルはほぼ聴いていなかったのに、校正に駆り出された軟体トラベラーの関上武司DEATH! 52万字の超大作の長かった校正の副作用として、本邦のBABYMETAL(『デスメタルチャイナ』でも中国人バンドメンバーにかなり注目されているようです)を聴くようになってしまいました。今回は浙江省中編ということで、杭州郊外のフェイク・パリ再訪や世界最大の撮影スタジオである横店影視城などを紹介します。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 19 浙江省後編 (写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)。盆休みは新型コロナの影響で中国に渡航できず、体力維持目的で自宅付近のウォーキングと近所のワンコとの交流に勤しんでいた軟体トラベラーの関上武司です。今回は浙江省後編ということで、サンリオ公認の杭州ハローキティ楽園などのレポートをお届けします。 2017年1月2日。この日は江西省南昌市から高速鉄道で杭州東站へ夜遅くに到着。宿探しが面倒になって、駅構内のインフォメーションに外国人が宿泊可能はホテルを尋ねてみました。
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25年目の珍日本紀行 群馬編3 渋川の巨大寺院に台湾を懐かしむ
群馬県のほぼ中央、前橋と沼田に挟まれた渋川市。伊香保温泉の玄関口でもある渋川の郊外、渋川総合公園と県道を挟んで向かい合うのが、2018年に開山したという巨大な寺院・佛光山法水寺である。渋川市外から赤城山をのぞむ標高700メートルの地に、約20ヘクタール=東京ドーム4個分の敷地を得て、総工費約50億円の巨費を投じて建立されたという、日本離れしたスケールの法水寺。それもそのはず、こちらは台湾・高雄に総本山を置く佛光山の、日本における総本山なのだった。 全世界に信者300万人を数えるという台湾有数の巨大寺院・佛光山については、2015年06月17日 配信号「みほとけのテーマパーク」で詳しく紹介した。これまで何度か訪れたおり、日本にも支部があるとは聞いていたが、渋川の佛光山法水寺は、東京、山梨、大阪の寺院や道場をまとめる日本総本山として、2014年から4年の歳月をかけて完成したのだった。
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25年目の珍日本紀行 群馬編5 ロックハート城と夢のつづき
今回の群馬めぐりで、実はいちばん驚いたのが沼田市のロックハート城だった。最初に訪れた1997年には、まあバブルの落とし子みたいなもんだし、いつまで持つことやら・・・・・とか思っていたのが、23年後のいま再訪してみたら、なんと健在!どころか、かなりのパワーアップで大賑わい! ほんとうにびっくりしました。先週のジャパンスネークセンターもそうだったし、群馬の若者って行くとこないのか・・・・・・すいません。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 21 四川省後編 (写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)。例年なら、寒い時期には三重県の木曽岬温泉で熱すぎるお湯と歌謡ショーを休日に堪能していたのですが、残念ながら閉鎖されてしまい、未練たらたらの軟体トラベラーの関上武司です。今回は成都の街並みと四川大地震の跡地などを訪問したレポートをお届けします。 2012年8月13日。前回紹介した国色天郷楽園の凄まじさに圧倒され、フラフラの状態でタクシーに乗り、成都市街に戻ります。タクシーの車内から成都の地下鉄4号線の工事現場の看板を撮影。2017年の時点で成都市の人口は1400万人以上と東京都よりも多く、地下鉄の建造は必須だったと言えます。現在は私の地元愛知県の名古屋市よりも地下鉄網が充実していてビビります。
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ParadiseLost 二度と行けない珍日本紀行 08 静岡県4
イノシシって、実はかわいくておいしいんです――1970年に開園した、実は老舗観光スポットだった伊豆天城の「いのしし村」。その名のとおり、イノシシに特化した特殊なテーマパークだった。ウィキペディアによれば最盛期の1985年に年間40万人近くの来園者を集めたそうだが、徐々に人気を失い2002年末にいちど閉園。その後別会社で再起を図るが、2008年に完全閉園ということになった。公式ウェブサイトもすでに存在しないが、なん園長とスタッフによるブログがいまもウェブ上に残っている(というか放置されている)。いつ消滅してしまうかわからないので、興味あるかたはダウンロード保存しておくべし! 現在、いのしし村の跡地は特別養護老人ホームとなっている。いのししから老人へ……。
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ParadiseLost 二度と行けない珍日本紀行 10 山梨県2
涙と笑いの「トリック・アート」鑑賞体験――石和温泉郷の町なかにあるワイナリー「モンデ酒造」が、工場見学のおまけとして(?)開いたのがトリック・アート美術館の「モルヘス美術館」だった。ちなみにモンデ酒造は2020年で創業68年という山梨ワインの老舗であり、観光ワイナリーである。モンデという名前は、公式サイトによれば「フランス語で「世界」、ラテン語で「宇宙」という意味で、世界または宇宙規模のワイン・洋酒を造る精神が社名となったもの」だそう! トリック・アートの第一人者である剣重和宗の手になるモルヘス美術館が開館したのは1992年、剣重氏の長いトリック・アート歴のうちでも最初期の作品だった(トリック・アート美術館の最初は91年開館の東京江戸川区JAIB美術館)。
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ParadiseLost 二度と行けない珍日本紀行 11 長野県
ふと見れば天井は畳だった――意外に珍スポットの少ない、しかも消滅してしまった珍スポットはさらに少ない長野県。松本市の名物喫茶店「さかさレスト とんちん館」は、その奇異なデザインとは裏腹に、ふつうの喫茶店として近隣住民には愛用・常用されていたと聞くが、21世紀に入って間もなく閉店。建物も取り壊され、跡地には小さなアパートが建っているそうだ・・・・・・。
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ParadiseLost 二度と行けない珍日本紀行 13 愛知県2
天照大神から福沢諭吉まで、大和の巨星が名古屋にキラめく――幼児が大好きなお菓子「タマゴボーロ」や「麦ふぁ~」で知られる竹田製菓(現社名・竹田本社株式会社)。その名物創業者であり、「日本一の個人大投資家」(130社以上の大株主)としてマスコミにもしばしば登場していた竹田和平が、本社の一角に開設したのが、「いまの日本の礎となった百人の大人物を竹田氏が選出、特大の純金レリーフ・コインに刻んで展示する」という「純金歴史人物館」だった。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 25 新疆ウイグル自治区前編 (写真・文:関上武司)
大家好(中国語で皆さん、こんにちは!)。コロナ禍の影響もあってか遠出する気分にもなれず、2015年の夏に訪問したエキゾチックな新疆ウイグル自治区のことを思い出してこの記事を書いてみました。 新疆ウイグル自治区といえば、現地の少数民族の弾圧が欧米各国も非難されており、それに対して中華人民共和国駐大阪総領事館の職員が「欧米各国は口が嫌だと言っても、体は正直なものだ。欧米各国の中傷は新疆貿易に影響はなくうんぬん」といったツイートをし、後に削除。お堅いイメージのお役所がエロゲーに出てくるような発言をしてびっくりですが、今回の記事の伏線です。とは言っても、我が国における外国人技能実習制度も問題だらけなので、未だに中国政府から人権侵害だと批判されないのも不思議なのではありますが…。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 28 貴州省前編 (写真・文:関上武司)
大家好(中国語で皆さん、こんにちは!)。当連載を始める前に、都築編集長にお願いしていたことは「スキャンしたフィルムカメラの写真を使っていいでしょうか?」ということでした。連載28回目にして中国留学中、貴州省の山村で滞在していた写真で記事にします、今回は遊園地も動画もありません! 1999年の9月から2000年の7月にかけて、私は北京に留学し、中国語の学習をしていました。2000年の1月末から約1か月、学校が休みだったので、中国国内で一人旅をすることに。当時はお金もデジカメもなく、スマホや高速鉄道も存在しておりません。しかし、今よりも物価が安く、体力も時間もあったのが懐かしく思います。 2000年2月1日。貴州省貴陽市から雲南省昆明市へ寝台列車の硬臥(ハードシート)で向かう途中、近くの座席の周さん姉妹と仲良くなるのでした。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 30 河南省前編 (写真・文:関上武司)
大家好(中国語で皆さん、こんにちは!)。先日、所持していたパスポートの期限が切れたものの、更新する気になれない関上です。コロナの影響もあって、今年も海外で撮影するのは絶望的です(涙)。今回は河南省の珍遊園地や世界最大の大仏へ参拝しようと試みたところ、失敗したレポートになります。 2014年8月15日。日本では終戦記念日ですが、中国では日本軍が投降した日と扱われているにも関わらず、山西省の抗日テーマパークの八路軍文化園や遊撃戦体験園で撮影を楽しんでいました。拙作『中国遊園地大図鑑 北部編』で紹介しているので、ご興味があればご覧ください。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 #03 ワット・プラローイ วัดพระลอย (写真・文:椋橋彩香)
2016年8月21日(続き) 地獄寺調査第1日目、最後はワット・プラローイという寺院へ向かう。 その前に、お昼ごはん。 これはグアイジャップという名前の料理で、お米でできたシート状のくるくる麺が入っている。八角の香る中華っぽい味のスープに、具材は豚の血を固めたやつとか、内臓系のお肉とかそんな感じ。濃~いスープはくるくる麺と相性抜群だ。 無事に腹ごしらえを済ませ、いよいよワット・プラローイへ。 大きな男女の像が並ぶ地獄エリアの入口は、なぜか小さな動物園になっていた。檻の中では孔雀や猪などが飼育されていて、そのせいかハエが多く身体にまとわりついてやまない。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 #休獄日~マヒドン大学 มหาวิทยาลัยมหิดล (写真・文:椋橋彩香)
2016年8月23日 この日は休獄日(地獄寺へ行かない日)。 ゆっくり起きて、朝ごはんにガパオを作ってもらった。 タイ人の友達によれば、ガパオは「何も考えないごはん」らしい。献立を考えるのがめんどうな時や、とりあえず何か食べたい時に食べる、それくらいポピュラーなメニューということである。 日本でもそうだけれど、ガパオは店や作る人によってぜんぜん味が違う。だから、これが正解というものはないんじゃないかなと思う。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 #10 ワット・プートウドム วัดพืชอุดม (写真・文:椋橋彩香)
2016年8月28日 記念すべき調査10か所目の地獄寺は、パトゥムターニー県にあるワット・プートウドム。 ここには昨年も訪れていて、この日はSNSで出会った友人と一緒に行くことになっていた。まずはバンコクからランシット行きのロットゥーに乗車。その後、ランシットからタクシーで数十分。400バーツ近くもかかってしまったが、無事到着。 ワット・プートウドムは、1956年制作とタイの地獄寺のなかで最も古い地獄寺だ。 それに加えて、他に類を見ない屋内型の地獄寺でもある。薄暗い空間の雰囲気も相まって、日本の人にも人気があるようだ(と勝手に思っている)。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 #11 ワット・バーンノムコー วัดบางนมโค (写真・文:椋橋彩香)
2016年8月29日 この日向かったのはアユタヤーにある寺院、ワット・バーンノムコー。 バンコクからアユタヤー行きのロットゥーに乗車したが、なかなか目的地にたどり着くことができず、何度か乗り継ぎようやく寺院の前で下車した。 まずは境内にあるお堂へ。このお堂は#8ワット・ムアンのように全体が鏡張りで美しく、参拝客は途絶えることがなかった。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 #休獄日~バンコク กรุงเทพมหานคร (写真・文:椋橋彩香)
2016年8月30日 この日は休獄日(地獄寺へ行かない日)。 先日会ったシラパコーン大学の友達が「今度、地獄の授業があるからおいでよ!」と誘ってくれたので、バンコクにあるキャンパスへ向かった。 おそるおそる教室に入り、初めて大学の授業にもぐる。 シラパコーン大学は美術大学なので、地獄の授業とは主に地獄絵やその典拠となる『三界経(さんがいきょう)』についての内容だった。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 #13 ワット・セーンスック วัดแสนสุข (写真・文:椋橋彩香)
2016年8月31日 前号で夜のバンコクを堪能した知人たちと、この日は朝から2泊3日の小旅行へ。 いわゆる珍スポットめぐりと島でのバカンスを楽しむため、バンコクから南下して、有名リゾート地・パタヤへ向かう。 途中、チョンブリー県のバンセーという海辺の街にある地獄寺、ワット・セーンスックへ寄る。 私が地獄寺を研究していることを知っている知人たちがぜひ行きたいとのことで、調査もかねて旅程に組み込んでもらったのだ。 ワット・セーンスックは、バンコクから2時間ほどで行くことができるうえ規模も大きいため、多くの人が訪れている有名な地獄寺である。地獄エリアがつくられたのは1963年頃と、#10ワット・プートウドムに次いで2番目に古い。地獄寺の先駆けともいえる寺院だ。
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韓国、うっかり美味しいもの紀行 後編 (写真・文:アーバンのママ)
ヨロブン、アンニョンハセヨ~! アーバンのママです。 韓国、うっかり美味しいもの紀行の後編をお届け致します! さてその前に……。 皆さん、2002年に放映され一世を風靡した『冬のソナタ』はもちろんご存知だと思うのですが、実際に見たことある方はどのくらいおられますか? かくいうわたしも、冬ソナ未体験……。しかしあるとき、これだけ韓国好きで冬ソナ見てないってヤバくない?と気づき、2022年には友人たちと月に一度集まり「初ソナ(初めて冬ソナを見る会)」を決行しました。
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Freestyle China 即興中華 写真の辺境:台湾写真家・彭一航 (写真:彭一航 / 文:吉井忍)
暗闇の中に佇むライオン、鳥、犬の群れや龍。台北市在住の写真家・彭一航(ポン・イーハン)さんが撮るこれらの「生き物」は、よく見ればすぐにニセモノだと分かるのだが、それでも息づかいまで聞こえてきそうで、しかもちょっと怖い。そう伝えると彭さんは頷いて、それは「ラブドールとかでよくある“恐怖谷”のようなもの」だと言った。日本語では「不気味の谷現象」、リアルな再現がある一線を越えると、私たちは不気味さや嫌悪感、恐怖などのネガティブな感情を抱くようになる。その臨界点に似たようなものを、彭さんはこの『幽霊公園/The Ghost Park』(2017-2022)において作り出そうとしたしたのだ。 少し前に、台湾から戻られた都築編集長から現地の写真家の方々をご紹介いただいた。何回かに分けて取材記事をお送りしたいと考えている。今回はその第一弾として彭一航さんにお話を伺った。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 特別編 無常くんとの中華地獄ナイトと珍接待 (写真・文:関上武司)
2023年7月に無常くんこと大谷亨さんが『中国の死神』という書籍を出版することになりました。おめでとうございます! 無常くんについては都築編集長がステキなインタビュー記事で紹介しているはずですが、先日、中国での就労前の無常くんとイベントを開催、サプライズだらけの珍接待をしたので報告したいと思います。 現在、無常くんのツイッターのアカウントのプロフィールは無常党党員募集中(フォロー=入党とみなすっ)!!と書かれています。私は彼がツイッターを始めた2020年の時点で相互フォローをしていたので、最古参の無常党党員ということになります。
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地の橋、人の橋 ――イラン定住旅行記 04 「家という特別な場所」| 写真・文:ERIKO(定住旅行家・モデル)
自分が滞在している家族のことは案外、外の人との関わりや、その国そのものを知ることでだんだんと輪郭を帯びてくるように理解していくことがある。テヘランの家族、ショジャエイ家のときもそうだった。 この家族はおばあちゃん世代から子どもたち、孫も男女問わず高学歴。ママンの3人の子どもの一人、長女のゴリさん家族は現在、娘の大学進学を理由にベルギーに拠点を移して生活している。次女のフーリさん家族も、つい数ヶ月前まで子ども教育のためカナダに住んでいたが、旦那の仕事の関係でイランに戻ってきたばかり。長男のキアラシもトルコに別宅を所有しており、月に3、4回は往来している。知り合った頃は気がつかなかったが、この家族はこの国において富裕層に属していることがだんだんとわかってきた。
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スリープウォーキング・チャイナ 03 お盆フェスの聖と俗(前編)──施餓鬼から乳首ペロペロまで | 写真・文:無常くん(副書記)
本連載でもたびたび自己紹介してきた通り、わたしは中国の民間信仰を研究する(素人)民俗学者です。一口に民間信仰といっても様々ですが、特にわたしが関心を寄せるのは、「お化け」に関連する(陽に対する)陰の信仰。そんなゲゲゲな性癖をもつ私にとって、旧暦7月は一年の中でも特別な月となります。 台湾ファンの方などはよくご存じかもしれませんが、中華圏の暦(こよみ)において旧暦7月は俗に「鬼月(きげつ)」と呼ばれ、お化け(=餓鬼)が街中に跋扈するたいへん怖ろしい月と考えられています。
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地の橋、人の橋 ――イラン定住旅行記 05 「歴史は繰り返す」 | 写真・文:ERIKO(定住旅行家・モデル)
2022年12月から翌年の3月にかけて、ペルシャ語習得の目的で滞在したイランの首都テヘランは、1979年の革命以降、最も激しい反政府デモが続いていた。大学の授業もオンラインか、家庭教師のように先生がやってきてくれるスタイルだったので、自ら街などへ繰り出す機会もほとんどなかった。加えて滞在が始まってすぐの頃、在テヘラン日本大使館職員の女性がひったくりにあったという情報が入り、不用意に街中を歩かない方がいいというアドバイスも受けたりした。初めてこの地に来た2018年は、女性が夜道を一人で歩けるほど平和だったのに、昼夜街を行く現地の人の数すら少なく、なんとなく街全体が重たい雰囲気に包まれていた。
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もうひとつのウズベキスタン3 ウズベキスタン快適旅行案内 vol.1 (文:アーバンのママ)
この夏、本当はイギリスに行こうと思っていた。ロンドンで車を借りて北にむかってひた走る夢の旅行、あーんコレしかないでしょと思って航空券をチェックしたら直前なのも相まって往復50万?! 夢が秒で夢で終わる瞬間・・・・・・涙。 気持ちを入れ替え予算内で行ける場所を地図で探してみると、急に浮上したのが、はい、ウズベキスタンです。個人的にはソウル・中央アジア村のルーツに思いを馳せていたこともあって、これしかないと速攻で航空券をおさえた。なにせ初めてのウズベキスタン、通貨も移動方法も言葉もゼロからのスタート、ヤダ、これは楽しみが・・・・・・すぎる!
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スリープウォーキング・チャイナ 04 お盆フェスの聖と俗(後編)──施餓鬼から乳首ペロペロまで | 写真・文:無常くん(副書記)
旧暦7月15日は、年に一度のお盆の日。まだ前夜祭というのに、このエネルギー。夜が深まるほどに、熱狂は高まっていく。いったい何時まで続くのだろう。旅の疲れもあって大味な見世物に胃もたれを感じ始めたわたしは、やや後ろ髪を引かれながら早めに宿へと戻ることを決めたのだった。深夜におっぱじまる、ある極秘演目を見逃したことも知らずに……(その事実に気づくのは本祭の夜!)。
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スリープウォーキング・チャイナ 06 授業が終れば骨董市へ──中国ガラクタ購買録 | 写真・文:無常くん(副書記)
日常的にフィールドワークに取り組める環境を求め、中国の大学に就職した。しかし、現実はそう甘くはなく、カフカ的不条理な謎業務に追われ、なかなか思うように調査に出かけられない状況が続いている。 仮に日本にいるならばまだ諦めはつくものの、中国にいるのに、目と鼻の先に取材対象が転がっているのに、陰気なデスクワークのせいで部屋から一歩も出られない日々が続くと、「俺はこんな書類を書くために中国に来たんじゃねえやい!」と、頭を掻きむしりながら絶叫したくなるのだった。 しかし、そんな欲求不満な日々にも、「中国に来てよかった!」と思える瞬間は、むろんないわけではない。例えば、木曜の骨董市なんかは、その筆頭にあげるべき心のオアシスとなっている。
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地の橋、人の橋[ウクライナ特別編] 04 戦わない男たちの戦い | 写真・文:ERIKO(定住旅行家・モデル)
現在、ウクライナにいる男性は2通りに分けられるかもしれない。戦地へ行く人と、行かない人。 ウクライナ南東部、ザポリージャ州。その郊外のダーチャ(セカンドハウス)ではリーナさんとバディムさん夫婦が暮らしている。50代半ばのバディムさんは、その後者にあたる人。 まだ朝が明けきれてないころ、4WDのトヨタに乗って私とバディムさんは農場へ向かった。およそ40分間の通勤。助手席から見える景色は、栄養がつまった黒土の大地と盛りがすぎて刈り取られるのを待つひまわりの列。バディムさんは決して無口ではないが、話したいことがあるとき以外は特に口を開かない人だ。早朝という時間も二人をさらに黙らせた。とはいえ、会話のなさが心地悪さを感じるわけでは決してない。浅黒い肌に年季の入った顔の皺が労働者を感じさせる一方で、キリッとした面持ちは経営者としての責任が滲み出ている。運転する彼の横顔は、まっすぐ一本に伸びる農場の道を見据えている。車内には80年代の陽気な洋楽が流れていた。
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地の橋、人の橋――イラン定住旅行記(最終回) 10「イランの中のアルメニア」 | 写真・文:ERIKO(定住旅行家・モデル)
今回でイランの連載も最終回。イランで定住旅行した体験にことばを与えていったこの数ヶ月で、その経験が新しい意味を持って、自分に何か問いかけるような感覚を覚えました。大きな物語にイメージが包まれがちな人びとの小さな生活、暮らすことで見えてくる人びとの心の拠り所。皆さんがこれまで持っていたイメージのイランに、少しでも新しい視座が加えられたら本望です。
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地の橋、人の橋[ウクライナ特別編] 05 スナイパーの家 写真・文:ERIKO(定住旅行家・モデル)
戦争には国民一人一人の戦いかたがある。ウクライナにいるとつぶさにそれを感じる。誰もが積極的にボランティアに参加し時間と能力を寄与する。多額の寄付をする人も多く、貯金がなくなるほどの寄付はしないようにと政府が注意を促すこともあるほど。 「スラーバウクライーニ!」(ウクライナに栄光あれ!)、それに答える「ゲローエム・スラーバ!」(英雄たちに栄光あれ!)は彼らの挨拶として交わされる。青と黄色のウクライナカラーの洋服やアイテムを身につける。前線で戦う兵士たちのことを想い、士気を上げるための絶え間ない努力を惜しまない。人びとの日常の生活の中にある、戦いを忘れない姿勢は、ウクライナの国全体に希望的明るさを漂わせている。
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ユーラシア後ろ歩き 7 人生が語られたカシュガルの夜 (文:多田麻美 / 写真提供:張全)
嫌いではない。むしろ自慢したくなるほど理想的な相手なのだが、結婚して家庭を築くとなると、ちょっとばかり気が重い。 そんな王さんの心境は、結婚以上にやりたいことが山ほどあった当時の私には、別世界の出来事に思えた。だが、自由なようで自由でなく、すべて完璧なはずなのに何か物足りないというのは、きっと独特のつらさなのだろうと、自分なりに想像してみた。 生粋の西北人王さんと、東北出身の西北人との、腹を割った会話は続いた。 きっと店主も王さんも、誰かと心行くまで話したい気分だったのだろう。人にはなぜか、見知らぬ人にあれこれと打ち明け話をしたくなる時がある。
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地の橋、人の橋[ウクライナ特別編] 07 戦地へ戻った女 写真・文:ERIKO(定住旅行家・モデル)
ウクライナでの最終滞在地、首都キーウに来た。戦争がはじまる前は「キエフ」とロシア語発音で呼ばれていたが、現在はウクライナ語で「キーウ」と呼ばれるようになった。はじめの頃は違和感があってついついキエフと言う癖が抜けなかったが、それが懐かしく感じるほど今では定着してしまった。 広くて、潤沢。これがキーウへ来たときの印象だった。たっぷりとした水を湛えたドニプロ川、街の半分以上を覆う緑地がそう思わせたのかもしれない。街を歩けば、歴史の匂いがして、ここが1000年以上も前から、文化、政治、芸術の中心だったことに納得する。都市としての機能を果たしながらも、健康的な街をわたしはすっかり気に入った。
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スリープウォーキング・チャイナ 09 大黒天の逆輸入(後編) ──中国で流行する大黒さま信仰を追って 写真・文:無常くん(副書記)
近年、中国の民間信仰の現場に、ある珍現象が生じている。その名も、大黒天の逆輸入。打ち出の小槌を握り、福袋を担いだ、あの日本オリジナルの大黒天が、今中国で着実に信奉者を増やしつつあるという。なぜ、中国の人々は「大黒さま」を好んで拝むのか──その原因とは?その実態とは? これらの謎を解明すべく、私は得意のTikTok民俗学を駆使し、フィールドワークに乗りだした。その結果、中国の大黒さま信仰は、日本発「香港経由」であるという有力な仮説が浮上した。また、それは香港経由でありながら、大陸各地で独自の発展を遂げているという状況が、普寧(プーニン)のとあるシャーマンへのインタビューから明らかとなりつつある。 以上が前編の要約となるが、今回お届けする後編では、上記シャーマンが具体的にどのような大黒さま信仰を展開しているのか、実際に私が参加した「大黒天降臨祭」の様子とともにレポートすることとしたい。
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江原道、美味しいもの記録 (写真・文:アーバンのママ)
アンニョン~、お久しぶりのアーバンのママです。 今年三度目の渡韓では、ついに「レンタカーde韓国横断」という新たなツールを手に入れ、ソウルから江原道をぐるっとひとまわりしてきました。韓国のひとびと運転の荒さはぴかいちですが、高速道路やバイパスがどこに行くにもつながっていて、マジ車中心だなと実感かつ便利~! 今回訪れたのは、江原道からは江陸、束草、三陟。それぞれの都市には数日滞在して美味しいものもたくさん食べてきたので、いつの日か皆さんの旅のお役に立てるようにまるっとご紹介させてください!
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ユーラシア後ろ歩き 17 火と水の世界 (文・写真:多田麻美)
バイカル湖の湖岸を手が届きそうなほど低く羽ばたく鳥たち。その何かを語りかけるかのような飛び方は、火を使った儀式に引き寄せられたようにも、バイカル湖の底知れぬ深さがもつ引力から逃れられずにいるようにも見えた。 だが、もちろんいずれも錯覚に違いなかった。やがて雪がちらつき始めると、私は彼らが低く飛んでいたのは低気圧のせいだろう、と思い直した。 それにしても、まだ8月なのに雪とは。空中を氷の粒が舞う様子は、火の儀式の後だけに、余計ドラマチックに感じられた。
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新連載:スナックショット(平田順一)
もうずいぶん前に、平田順一という青年と知り合った。彼は工場で働く日々を過ごしながら、お菓子のブリキ缶などを並べて叩きながら自作の歌を歌うノイズ・フォークみたいな音楽活動を続け、さらには休みを利用して地方のスナック街を歩き回り、看板などを撮影しているという。後日、その写真アルバムを見せてもらったら、フットワークがすごいし、なにより視点がおもしろい。それに、僕が撮影したスナックとずいぶんかぶってる!
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連載:スナックショット 03 北海道 後編(平田順一)
北海道には過去3回行っている。1回目は1990年で札幌と函館に行ったが、これは団体旅行のため自由行動皆無である。2回目は1998年で、この時も5日間乗り放題の「北海道フリー切符」を使用して稚内・網走・根室まで行ったが、JRの乗車距離を稼ぐあまり全部車中泊となってしまった。3回目は2003年で、往復千歳空港・札幌市内泊の格安ツアーパックを利用している。今回は4回目だが、過去3回は函館と札幌以外、ほとんど街を歩いていない。これを補完する意味で、徹底して街を歩くつもりで来ており実際に初日で7都市を歩いた。旭川のホテルでゆっくり考えようと思ったが、ビール3缶飲んだら眠ってしまった。
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スナックショット 09 茨城(平田順一)
今回のスナックショットは茨城篇、茨城といえば全国的には梅の水戸偕楽園が有名ですが、アートの好きな人には水戸芸術館の意欲的な企画展が知れ渡っていると思います。だいぶ前にエレキギターの父、寺内タケシ氏が全国の高校を回って高校生を相手に「60年ギターを弾いてひとつだけわかった、ギターは弾かなきゃ音が出ない」と語っているのをテレビで見て感銘を受けたのですが、この言葉を思い出して「とにかく歩かなきゃ出会えない、撮らなきゃ写らない」と今年の秋に茨城の写真を撮ってまわりました。今年行けなかった日立市のほかに、雰囲気が良いので数年前の写真を選んだところもありますが、現在進行形のスナックショットをご覧ください!
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テキーラ飲んでゾンビになろう!
10月10日配信の038号で、東京のゾンビ・シーンをお送りしましたが、11月3日にはメキシコシティで恒例の「ゾンビ・ウォーク」が開催されたというニュースが到来。写真を送ってくれた友人のアーティスト、モーリシー・ゴムリッキ君によれば(ワルシャワ生まれ、メキシコシティ在住のアーティスト)、これはメキシコシティの革命記念塔からソカロ広場までを練り歩く、というかゾンビ・ウォークする人気イベントで、なんと去年は参加者9806名! で、ギネスの公式世界記録に認定されたそう。当日はだいたい朝10時ごろから広場にひとが集まりはじめ、記念写真撮りあって遊んだり、だれでも無料でやってもらえるゾンビ・メイクを試したりしているうちに雰囲気が盛り上がり、午後3時ごろからウォークの開始。スタートまでのだらだら感が、メキシコっぽい!
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連載:スナックショット 11 新潟(平田順一)
どうも下町のナポレオン、平田です。北海道から東北を経て関東地方の連載を続けましたが、今回は紅葉前線に逆行して新潟篇です。ひとむかし前は「チャッラーン! 越後生まれのこんぺーでえーす!」とNTV系「笑点」の挨拶で怪気炎を上げる林家こん平師匠、そのまえはコンピューター付ブルドーザー田中角栄氏の姿が良くも悪くも越後を印象付けるものとして記憶に残ってますが、こっちは坂口安吾のように、酒場の壁やネオンサインに美を求めて歩き回りました!
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スナックショット 14 長野3+山梨(平田順一)
どうもオッサンの面を被ったカメラ女子、平田です。今回も地域ごとに撮った写真をまとめていく過程で、ここもあそこも外せないと選択に迷いました。というわけでもう1回長野県から中信地方・諏訪・伊那、中央本線と国道20号に沿って山梨県からお送りします。古くから日本海側と太平洋側を繋ぐ街道の交錯するところで、伝統的な宿場町・門前町の風情を留めつつ、街角や店の背後に上高地や八ヶ岳の山々を望む2004年から2011年にかけての記録ですが、撮影時期の新旧にかかわらず現況がどうなっているか気になります。
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スナックショット 15 神奈川(平田順一)
どうもスナック馬鹿一代、平田です。好きなトラベルエッセイの本はいくつもあってたびたび読み返しているんですが、全国各地・世界各国を旅した人の本でも、東京やその周辺について触れた文章が少なからず存在しています。わざわざ遠くへ行かなくても、東京周辺にも面白い場所はいっぱいあるよ、といった文面を追ってみると、日常の観察眼が優れているからトラベルエッセイも面白いのか、逆に旅先での体験が日常にフィードバックして東京周辺も面白くなるのか? 多分その両方の要因が混ざっているとは思いますが、足元がしっかり据わっていて、なおかつどこでも好奇心をもち続けるのは、トラベル関係なしに通常のエッセイでも成立するなと気付きました。
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畸人研究学会報告 03 奇書居くべし、醤油鯛の濃厚な世界
昨年末、新宿にあるミニコミ専門書店の模索舎で、私は奇妙な本を見つけた。『醤油鯛』と題されたその本は、よくお弁当についている、醤油が入った鯛をかたどったプラスチック製の小さな入れものについて研究した書物であった。『よくお弁当についている醤油入れのことだよな、それにしてもこんなものまで研究している人がいるんだ』と思い、本を手にとってみて驚いた。醤油鯛の本の中身はこれまで蒐集された醤油鯛を6科21属76種に分類するなど、様々な醤油を入れる魚型のプラスチック製容器の“生物図鑑”のような構成になっていたのだ。例えばナミショウユダイ科コガシラショウユダイ属薩摩醤油鯛などという、分類名がつけられている。
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連載:スナックショット 20 滋賀(平田順一)
どうも平田です。今回のスナックショットは古戦場や史跡の多い滋賀県、自分の拙い写真にも歴史の重さが滲み出ているはずです。2010年まで上野から高崎線・上越線経由で金沢へ向かう夜行列車が出ており、これをよく利用して出かけていました。「東京発金沢行」の切符ではなく、金沢→福井→米原→東京と帰ってくる「東京発東京行」の切符をJRの窓口で作成すると、乗車券・急行券などを合わせて2万円くらい、新幹線で名古屋まで往復するのと同額ですが、名古屋に行くなら夜行列車で金沢を経由しても、滋賀・岐阜・愛知・静岡には途中下車ができ、米原から切符を買い足せば京都へも安く行けて、振れ幅が大きい旅行になります。かような経緯で前回の石川・福井篇や愛知・岐阜篇と同じ時期に、上野発の夜行列車で滋賀にも行きました。
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連載:スナックショット 28 佐賀+佐世保(平田順一)
どうも平田です。北から南へ東から西へスナック街を記録して、今回から九州を巡ります。九州といえば福岡・中洲の繁華街、南に向かえばヤシの繁るマリンリゾート、西に向かえば異国の玄関口として機能した長崎の情緒ある街並み、さらには阿蘇や別府の雄大な火山や温泉をイメージしますが、今回はどれにも該当しない佐賀県と長崎県佐世保市を練り歩きます。「キサン、何ばしょっとね?」「スナックショットば、しょっとです・・・」というわけでよろしくおつきあい願います!
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スナックショット 29 長崎(平田順一)
どうも平田です。今回のスナックショットは長崎県。長崎はご存知のように江戸末期まで国内に唯一開かれていた異国文化の街ですが、長崎県内は入り組んだ海岸線に合わせるように、複雑な歴史をはらんだ街が点在しています。壱岐・対馬・平戸・五島列島のスナック事情までは及びませんが、前回の佐賀~佐世保から連続して長崎県内のスナック街を巡ってまいります。
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スナックショット 30 大分(平田順一)
どうも平田です。自分はもともと路面電車やローカル私鉄を追い求めて沿線の街を歩いており、全国のスナック街を巡る以前に九州では長崎・熊本・鹿児島の路面電車に乗って土地の風物に触れていたのですが、今回のスナックショットで取り上げる大分県は路面電車も私鉄もなく、特に行く目的もないだろうなあと看過していました。ところが2005年に河出書房新社から出た小林キユウ著「路地裏温泉へ行こう!」を読んで別府へ行きたくなり、スタンプラリーのように別府の共同浴場を巡って歩くうちに、日本一の湧出量を誇る温泉から大量の観光客を受け入れる歓楽街を生み、さらにはお色気スポットや珍スポットも生み出した温泉街の懐にはまっていきます。
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高松アンダーグラウンド 4:彫師・高松彫藤(GABOMI)
ある朝、サササとサラダをつくってくれた、「簡単でごめんよ」。彫藤(ほりふじ)さんはひとり暮らし。だいたい6時起き。愛犬の散歩で2時間しっかり歩いた後、仏壇の水を替え、一昨年この世を去った奥様に手を合わせる。「もう5~6年前にタバコはやめたんや」と言いながら、煙たそうに火をつけ仏壇にタバコをあげた。ヘビースモーカーだった奥様へお線香代わりらしい。奥様が好きだった胡蝶蘭の横で、わたしも手を合わせた。その間、彼はテキパキ朝食をつくる。
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新連載! フィールドノオト
2011年の震災のすぐあとぐらいに、これも常連の大竹伸朗さんから「油絵の具と録音機をもらったんです、それで自分にとっては、写真を撮るのと、音を録るのが同じ気がして」、ドキュメンタリーとして身近なモノ音のレコーディングを開始。大竹さんとは2012年にサウンドユニット「2」を結成して、インスタレーション作品の音響に制作協力するようになり、同時に自分でも各地に旅してはカメラとマイクでの記録を始めました。
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案山子X 02 古山のかかし祭り(栃木)/上下かかしまつり(広島)(by ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は、栃木県下野市の「古山のかかし祭り」と、案山子X第1回で紹介した「上下かかしまつり」の今年の模様を紹介します。まずは栃木県下野市下古山の「古山のかかし祭り」を紹介します。栃木県下野市(しもつけし)は栃木県の中南部に位置し、かんぴょうの生産日本一の街です。かんぴょうフェスティバルが開催されたり、「カンピくん」というかんぴょうをモチーフにしたマスコットキャラクターもいます。
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フィールドノオト06 茨城県(畠中勝)
レンタカーを走らせること40時間、1泊2日の東北取材の旅。肉体的にはこたえたが生涯忘れない旅ともなった。道中、茨城県を通過。とても美しい沼を発見した。鏡のような空色の水面には存在感たっぷりの元うなぎ店が映りこむ。その姿はまるで沼を守り続けてきた巨神のように静かに朽ち果てていた。こういった美しい場所と荒廃したものが混ざり合って生まれた新風景には、ビジュアル的な表現だけに収まりきれない、ただならぬ気配を感じさせられる。実際のところそれが音なのか匂いなのかは分からないが、不明なその何かを日本の原風景として音としても記録することにした。
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フィールドノオト07 福島県(畠中勝)
転々と寄り道を重ね、車を走らせること15時間。ようやく目的地である福島県に到着した。その晩、郡山の酒場で居合わせたお客さんの明るい話は印象的だった。「津波でいろんなものが流されてしまって、牛とか犬とか野生化してたって知ってるでしょ。飼われていたダチョウもそうなの。野良ダチョウ。牛、犬は分かるけど、いきなり目の前にダチョウが飛び出てくると、ホントびっくりするんだから」。そりゃそうだ。郡山は食事もおいしく楽しい人でいっぱいだった。その後、訪れた直接的な被災地とは何もかもが違って見えるほどに。
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フィールドノオト09 石川県~福井県(畠中勝)
病気をしても簡単には通院できない職業柄、年に数度、湯治へは行くことにしている。北陸地方を訪れたのはこの正月が初めてだ。普段、あらゆる行為が監視カメラで記録される大きな繁華街に住んでいるせいか、人気のない地域や場所に足を踏み入れると、とても開放的な気分になる。しかし一方で、記録されていない自分が、何かを必死になって記録している行為そのものは滑稽にも思える。
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案山子X 6:嘉瀬かかしまつり(佐賀)(ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は佐賀県の「嘉瀬かかしまつり」を紹介します。毎年秋に佐賀県佐賀市嘉瀬町の嘉瀬川防災ステーションで「嘉瀬かかしまつり」は開催されます。2013年に4回目の開催となり、会場には100体以上のかかしが立ち並びました。嘉瀬町では毎年秋に「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」が開催され、その期間に合わせてかかし祭りも開催されます。バルーンフェスタは嘉瀬川河川敷をメイン会場に開催される熱気球の競技大会で、大会期間中の来場者数は80万人を超える巨大フェスティバルです。地元で開催されているバルーンフェスタを盛り上げようと、嘉瀬町の住民が中心となってかかし祭りが始まりました。
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フィールドノオト10 新宿(畠中勝)
昨年の暮れから元旦にかけての新宿の音景。通りの店や町の催しは大して代わり栄えはしないが、新宿という場所柄、「そこにいる人」の入れ替えは多いように思う。キャッチの若者やオジサン、飲み屋の女の子、居酒屋前にたむろう学生、いつも決まった場所にいたようなそうでないような浮浪者たち、朝帰りのサラリーマン、そして、そんないろんな中のひとりでもある僕自身。みんなどこからやってきてどこへいくのだろう。通りすがりに録音した音源も二度ない風景画のように思えてくる。
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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 13 2014年2月(ケイタタ)
今回は原稿のスタイルを改めました。理由は正直に言います、ネタが少なくなってきたからです。今まで12回、テーマを変えてお送りしてきましたが、ネタのストックがなくなってきたのです。このままでは1年も経たずに連載終了となってしまう! そうなる前に手をうちました。えっ、ネタないのなら連載やめろ? そこをなんとかお願いします。というわけで、今回は「2月」の隙ある風景です。去ったばかりの2月をいつも自身のブログで書いているスタイルでも書いてみました。ぜひともご覧くださいませ。
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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 15 寝てる人 春(ケイタタ)
暖かくなってきましたね。寝てる人を多く見かけるようになってきましたね、というわけで今週は『寝てる人 春』。消費税8%アップとともに枚数も8%アップ!? 100枚ならぬ108枚のてんこ盛りでございます。
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フィールドノオト13 静岡県・熱海秘宝館(畠中勝)
「熱海秘宝館」は昭和55年から続く数少ない秘宝館のひとつ。収録日は全展示室に客がいるほど館内は賑わっていた。しかも来客しているのは20代と思しき女性たちばかり。これには少し驚かされた。世の中で性に対する様々な認知や許容が広がる中、古来、“秘宝”と呼ばれてきた“聖なる異物”にも、女性たちの高い関心が広まっているようだ。
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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 16 桜(ケイタタ)
さあ、旬のものをいきましょう。今週のテーマは『桜』です。この時期、ぼくは「花見」ではなく「花見見」で忙しい。つまり、花見をしている人を見るのである。桜の下の人間は隙だらけ。みなさんがこれを読む頃には大阪はすでに葉桜ですが、散りゆく桜を忍んでまいりましょう。
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フィールドノオト14 京都1(畠中勝)
日本からオオカミが絶滅し100余年。山に住むヒトの敵はその後、大繁殖した鹿、猿、猪となった。増えすぎたのはヒトなのか、それともそれら動物たちなのか。とはいえ、この地域住民を苦しめる畑荒らしの犯人を駆除すべく、京都の山中で長年猟をやってこられた猟師、増山賢一氏に同行させていただき、鹿猟の全貌を見学させてもらった。
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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 17 子ども(ケイタタ)
今週号のテーマは『子ども』。そうです、もうすぐ子どもの日。疲れた大人が見せる隙とは違った、元気があり余る故に現れる子どもの隙をぜひご覧ください。
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案山子X 9:やまくにかかしワールド(大分)前編(ai7n)
2013年秋に7回目を迎えた「やまくにかかしワールド」という名称のかかし祭りは、大分県中津市山国町で開催されています。10月27日から約1ヶ月間、山国町の観光スポットや道の駅等16ヶ所の会場に、それぞれテーマの決まったかかしが展示されました。16ヶ所の会場は広範囲に散らばっており、撮影しながら原付で急いで見て回ったのですが全ての会場を回るのに5時間位かかりました。街中いたる所にいるかかしはざっと数えただけでも1200体以上!「かかしワールド」の名前に相応しい、国内最大級のかかし祭りです。
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案山子X 10:やまくにかかしワールド(大分) 後編(ai7n)
2013年に大分県中津市山国町で開催された国内最大級のかかし祭り「やまくにかかしワールド」の後編をお送りします。今回は9~16までのポケット村、コアわらべ村、あかとんぼ広場、やすらぎ村、駅の直販村、犬王丸パーク、つや姫村、中摩殿の8ヶ所のかかしを紹介します。
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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 20 会話(ケイタタ)
今号のテーマは「会話」。会話自体がおもしろかったもの、会話の関係性がおもしろかったものを集めました。長い会話も中にはあるのですが、なかなか奇妙なのでぜひともおつきあいください。それではいってみましょう。
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フィールドノオト 18 佐世保(畠中勝)
修学旅行や家族旅行で何度か連れられてきた長崎。大人になって来るのはこれが初めてだ。滞在中はいろんな場面で地元の方々に親切にしてもらった。貿易史で重要な役割を果たした長崎港。その国際的な文化交流の歴史は、やってくる観光客たちに対しての寛容さを生み出し、住民たちの心に余裕を育んだのかもしれない。とにかく魅力的な街だった。ところで、この旅は五島列島にある離島が目的地になっている。本数の少ないフェリーを乗り継ぐ必要があるため、まずは佐世保に滞在した。離島での収録音は、次回に続き、まずはいくつか収録した佐世保のフィールドレコーディングを紹介したいと思う。佐世保駅前に横切る35号線を登り、その路地裏を散策。偶然、通りかかった幼稚園や市場近くの神社、佐世保港、旅の帰りに立ち寄った小値賀島ののどかな漁村などだ。
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フィールドノオト 19 野崎島(畠中勝)
長崎に広がる東シナ海。ここには大小合わせ1000近くもの島々があり、有人島はわずか73島。江戸中期に幕府の弾圧から逃れてきたキリシタンの村や教会が、今もひっそりと点在する。これらの島は当時からの信仰の聖地であったため、現在でもこの海域を行き交いするフェリーのデッキでは、島に向かって合掌する人々の姿が見られる。産業化していく四国の島々とは対照的に、ここでは地域の文化的理由で手つかずの島も多いようだ。中には廃村した島もある。そこでは、野生の動植物が群生し、放棄された家屋も、もはや自然に還るかのように草木や苔に飲まれ始めていた。
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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 22 フランス 前編(ケイタタ)
今号のテーマは『フランス』。仕事に休みをくっつけて2週間ほどフランスに行ってきました。何分、フランスはじめてなもので超どメジャーなところばかり行っております。都築さんのようにあまり知られていない所を紹介できればいいんですけど、まあお許しください。沢山あるので2回に分けてお送りします。
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案山子X 12:本城案山子まつり(大分)(ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は大分県日田市天瀬町本城の「本城案山子まつり」を紹介します。天ヶ瀬温泉から5キロ程の場所にある山間の小さな集落が案山子祭りの会場です。毎年彼岸花が咲く頃に開催されており、地元の農産物の販売や案山子の総選挙が開催される日もあるそうです。合楽川沿いに咲く約10万本の彼岸花を見ながら案山子祭りを楽しむ事ができるそうなのですが、私が行った時は時期が悪かったようで彼岸花が咲いておらず残念でした。
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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 23 フランス 後編(ケイタタ)
前回に続き、今回もフランス篇です。前回同様長いのですがおつきあいくださいませ。それではいってみましょう。Aller!隙アレ!
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フィールドノオト22 大阪(畠中勝)
10代の頃、大阪、京都、兵庫を、転々としていたことがある。懐かしの三都物語だ。阪急梅田駅から、河原町駅、三宮駅といった、各都市へと向かう紅い電車からは、いずれも淀川が見え、今でも大阪といえば、車窓から眺めていた景色を思い返す。住んでいた当時は、梅田にある巨大なヨドバシカメラもまだ空き地でしかなく、今となっては梅田の変わり様に何度も迷走させらている。だから、僕自身、ノスタルジックな大阪遊びが、何の変化もない淀川という、屈託のない川端を散歩することに変わった。
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フィールドノオト23 身延(写真・録音・文 畠中勝)
山野一というガロ系漫画家の自宅に通っていたことがある。他界した“ねこぢる”の元夫だ。町田にある彼のアパート、その一室には、旧型で大型のテレビが置かれており、焼酎を飲みながら、一緒にギャンブル代わりの『桃太郎電鉄』をよくやっていた。テレビの脇には“ねこぢる”の仏壇。各種ゲーム機のコントローラーやソフトが山積みで、見方によってはもはや仏壇も家具のひとつというか、棚に近い印象があった。夏場、いつものようにそこに宿泊し、昼食に彼の好物である冷麦を食った後、麦茶を飲みながら、他愛もない山野一の会話を聞いていた。
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フィールドノオト24 富士河口湖町(写真・録音・文 畠中勝)
富士山麓、本栖湖から望む富士山の姿は、千円札の裏側に描かれていることで有名だ。キャンプ地としても知られ、夏場は多くの家族連れが避暑のためやってくる。しかし都会の喧騒から逃れた場所にあるにも関わらず、花見同様、ここもスペース確保は最重要課題だ。青木ヶ原樹海はその湖周辺に広がる原始林。フィクション番組などの影響で、今や自殺スポットとして知られているが、実際、携帯電話の電波も入り、珍しい野鳥の声も聴こえるので、そんなに寂しい場所でもなかったりする。
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フィールドノオト25 新宿(写真・録音・文 畠中勝)
この夏、自宅を引っ越した。以前のアパートから500メートルほど先。かなりの近距離だ。こうした移住を新宿区内で何度も繰り返している。そして新宿は、僕にとって、今では人生で一番長い時間を過ごす街となった。ベランダからいつも眺めるビルやマンションの果てしない光景。朝な夕な、そんな街の姿を眺めながら、思い返すことがある。10年ほど前、ダイビングを楽しむため、フィジーの西に浮かぶ孤島、マタマノア島に訪れたことがある。歩いて1時間ほどで周ることのできるその島は、豊かなバリアリーフで知られている。海底探索の他にこれといって目的もなし、上陸当日にさっそく浜辺から泳いで海へ入っていった。キノコ畑のように広がるサイケデリックな珊瑚礁。これら極彩色の珊瑚たちは光合成を必要とするため、海面から光の届くおよそ20m付近の深さに多くが生息しているという。
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フィールドノオト26 文京区(写真・録音・文 畠中勝)
共同印刷の城下町として文京区には数多くの小さな町工場がある。もちろんそのほとんどは出版関連の工場で、印刷、製本、加工などを生業としている。初めてここへやってきたのは四年前。『(有)サナダ紙工』という印刷所のすぐ裏手には家賃数万円という、都内有数の破格な古いアパートが埋もれており、演劇に精を出す友人はかつてここを寝座にしていた。しかし朝な夕な、印刷所から発せられる時計仕掛けのような機械音を、引っ越し当初はおもしろがりもしていたが、長らく暮らすうち、睡眠不足に落ち入り、発狂を予見、ついに別のアパートへ移ることにした。そんな話を聞いて、面白半分、ここを訪ねてきたのだと思う。
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フィールドノオト28 上海 浦西(写真・録音・文 畠中勝)
おぼろげな中国がある。その大国は遥か昔から日本という島国に影響を与えてきた。しかし、到来したはずの文化を消化してきた日本人にとって、今となると謎の多い国のひとつが中国となり、あちら側としてもそういった謎を日本に抱いているのかもしれない。江戸時代、日本はオランダとの貿易が盛んだった。アメリカとの交流はいうまでもない。この国は、中国のみならず、諸外国の様々な文化を自国に吸収していく中で、独自に価値観を、再発見し、改良し、新たなものとして育んでいった。もはや元来あった本質とはほど遠いものも少なくない。そこが日本人のおもしろいところであり、説明しがたい独創性でもある。
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フィールドノオト30 豫園老街(写真・録音・文 畠中勝)
上海の旧市街を歩いていると、遠くから近未来的なタワーが霞んで目に入る。遠近感が崩れるほどの大きさだ。その手前ではっきり見えるのが、再開発のために取り壊されたビルや家屋。あるビルの谷間では、膨大な瓦礫が手つかずに広がっていた。トラックが出入りする様子はない。横たわるビルの屍の上を子どもたちが元気に掛けていった。遊び場になっているのだろう。昭和30年代の東京もまた、こうした静かな工事現場が子どもたちの好奇心をくすぐっていた。藤子不二雄作品の背景で、主人公たちがよく集まる『空き地』もそれだ。
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アートじゃない生き物 vol.2(写真・文:若井響子)
東京の日常からひととき飛び出したくて訪れたイタリアで、壁のポスターや落書きが生み出す「アートじゃない生き物」に魅せられた若井さん。短期集中連載の2回めは、クレモナからローマにいたる道中と、その収穫!
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案山子X 18:かかしロード280(青森)(写真・文:ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は青森県青森市の「かかしロード280」を紹介します。国道280号線という青森県青森市から北海道函館市を結ぶ一般国道があります。青森市羽白周辺の国道280号線沿いで、毎年9月に1ヶ月間に渡って「かかしロード280」というかかし祭りが開催されます。2014年9月初旬に撮影に行ったのですが、国道沿いには地元の方や小中学生が制作したかかしが立ち並び、黄色のかかし祭りの幟がいくつも立てられていました。国道沿いにかかしが立っているだけではなく、小学生が書いたかかし俳句の展示や、このお祭りの為に制作された棟方志功の巨大かかしねぶた等青森らしいかかしもあり見応えがありました。
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ホノルル旅日記4:なにはともあれジェリーズに
ハワイには長年にわたるヒッピー文化が根づいていて、それはコミューンというかたちを取ったり、サーフィンと融け合ったり、音楽に反映されたり、現代のハワイアン・カルチャーに静かに浸透している気がする。そういうレイドバックした雰囲気が漂う場所が、ハワイの中でも僕の大好きなところ。今回ご紹介する『Jelly’s』はハワイに行くたびにかならず寄ってしまう、いちばん大切な店のひとつだ。ガイドブックには、めったに紹介されていないと思うけど。『Jelly’s』はユーズド・レコード、CD、DVD、ブック、コミックの専門店。ホノルルのはずれとパールシティの2店舗を、オアフ島に持っている。
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フィールドオノト 32 小泉牧場(写真・録音・文 畠中勝)
飼ってるペットに話しかけている人をよく見かける。猟師だとバカ息子を叱る親父風だし、女性であれば赤ちゃん言葉になる。動物にどこまで言葉が通じているのか分からないが、感覚機能の優れた生き物である以上、思ったより言葉以上の何かを感じとっているのかもしれない。震災の当時も、そんな動物たちが予知できない地震や、目に見えない放射能に対してどういった反応をするのか興味があった。だから、動物園や牧場に何度も足を運んでいた。練馬区にある小泉牧場もその折にやってきた。しかし、今回は動物の生態を探るというより、単純にこの牧場のサウンドスケープを記録するためだ。
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フィールドノオト 33 女風呂(文・畠中勝)
瞑想しながらゆったり湯船に浸かる人もいるだろうし、本を読みながら、音楽を聴きながら、スマートフォンが身近な現代では、ジップロックに入れたスマートフォンで、廃人さながらゲームに没頭する人もいる。中には半身浴をしながら、うどんやカレーを食べることが生活習慣化している人もいるようだ。いずれにせよ、パーソナルスペースとしてのバスタイムは、日本人にとって、とても重要であることに違いはない。 今回、知人の女性たちにレコーダーを渡し、彼女たちの神秘的なバスタイムを録音していただいた。そして、それらの音源を編集し、独創的な女風呂の世界を構成した。
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ジワジワ来る関西奇行 03 ナイト・オブ・ザ・リビング堺東(写真・文 吉村智樹)
これといった景勝地もなく、知名度に反して観光収入の少なさが問題視され続けた大阪市が、たとえなんらかの誤解であってもそれでツーリストが増えたなら喜ばしいことだ。しかし「ミナミ=大阪の原風景」と呼ぶにふさわしい時代はもう終わったと認めざるを得ないだろう。いまのミナミは、大阪らしい街、ではなく、訪れた人たちのために商人たちが大阪キャラを演じるナニワーランドへと姿を変えた。ゆえに、かつて上田正樹と有山淳司が名盤『ぼちぼちいこか』で歌った「梅田からナンバまで」「なつかしの道頓堀」のようなエレジーでブルージーな街を期待してやってくると、期待はずれで肩を落とすことになるやもしれない。「あやしくて、チープで、いなたくてB級で、でもどこか憎めないあの頃の大阪ムードを味わいたい。でもミナミは残念ながら想像していた街ではなくなっていた」。そんな方には、ミナミからさらに南へ、南海「難波」駅から高野線に乗って12分の「堺東」駅で下車することをお勧めする。そこにはガラパゴス諸島のように生態系が温存された大阪がある。
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フィールドノオト35 軍国酒場 2(録音・写真・文:畠中勝)
『軍国酒場』へやってくると、陽子さんは店の奥でタライを配備していた。こちらにまだ気付いていない。店の扉は古い民家によくある引き戸なので、どうしてもガラガラ音が鳴り響く。しかし彼女の耳は、雨漏りから発せられる、もっと小さなしずくの音を拾うことに集中しているようだった。ミツバチが花を飛んでまわるように、タライをせっせとあちこち運ぶ、彼女の様子をしばらく眺めることにする。しばらくするとこちらに気付き、ハッとした顔で「一名入隊!!」と陽子さん。この店で、「いらっしゃい」という意味だ。昨夜もここへ飲みに来たが、微笑んでいる彼女をみていると、こちらも自然に顔がほころび、改めて、入隊した喜びがわく。
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案山子X 23:かみのやま温泉全国かかし祭(山形)(写真・文 ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は山形県上山市のかみのやま温泉全国かかし祭を紹介します。上山市は山形県の南東部に位置した街で、江戸時代には上山藩の城下町や羽州街道の宿場町として栄えました。現在は温泉地「かみのやま温泉」として有名です。かかし祭の会場である上山市民公園は、山形新幹線かみのやま温泉駅から約1キロ程の場所にあります。毎年9月下旬に1週間に渡ってお祭りが開催され、2014年に訪れた際には500体以上のかかしが展示されていました。2013年にはかみのやま温泉 開湯555年を記念して555体のかかしが展示されたそうです。上山明新館高等学校の前身である農業高校の学生が、学校行事で田んぼや畑にかかしを立てたのがかかし祭の始まり。
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エロパイプのけむり(写真・文:{さや鼻})
UFOおじさん景山八郎から神霊歌手・青樹亜依、宇川直宏まで異常なミックスのグループ展『スピリチュアルからこんにちは』にあわせて、7月19日に福山・鞆の津ミュージアムでトークをやらせてもらった。ずいぶんたくさんのかたに参加していただき感謝感激だったが、トークから少したってそのうちのひとりから、「あのあと尾道に寄って、おもしろいおっちゃんと遭遇しました!」と報告をいただいた。レポートの主である{さや鼻}さんは大阪在住。Facebookのメッセージに続いて更新されたブログを読ませてもらうと、めちゃくちゃおもしろい! 鞆の津ミュージアムのスタッフに見せると、「隣町みたいなものなのに、全然知らなかった!」と唖然。
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新連載! 地図にない街 釜ヶ崎 Vol.1 「あいりんセンター」(文:水野阿修羅 写真:日下慶太)
お久しぶりです。ケイタタこと日下慶太です。新連載始まりました。前の連載(『隙ある風景 ROADSIDERS’ remix』)が終ってなんだか1年近くが経ってしまいました。「新連載を始めねば、始めねば」というプレッシャーからようやく開放されて、この文章を書いている気分はサイコー! 今回の連載のテーマは「釜ヶ崎」。文章が水野阿修羅さん、写真がぼくです。阿修羅さんとの出会いは「釜ヶ崎ツアー」であった。毎年お盆の時期に行われる釜ヶ崎夏祭りにあわせて特別に釜ヶ崎のツアーが催されるのだ。阿修羅さんはもう釜ヶ崎には30年以上住んでいる。釜ヶ崎の生き字引だ。
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案山子X 27 東村町かかし祭り(広島)(写真・文:ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は広島県福山市の東村町かかし祭りを紹介します。広島県の東端に位置し、広島市の次に大きな都市である福山市。 福山市の西南に位置する東村町では毎年12月の第1日曜日に、とてもユニークで歴史のある「東村町かかし祭り」が開催されています。1946年(昭和21年)に始まったこのお祭りは2014年に69回目を迎えました。終戦直後ですさんでいる人々の心を和らげようと企画され、農作物を守るかかしへの感謝の気持と豊作を祈願する気持を込めて祭が始まりました。現在では地域のコミュニケーションの役割も担っており、子どもからお年寄りまでかかし作りや祭を通して交流を持てる場になっています。
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セーヌ川にアングラは流れる――マダム・マキコのパリ悪妻日記 vol.02 乱れ寿司の夜(写真・画・文:田中麻記子)
連載開始が今年3月18日、今回が2回めという超不定期!、でもどうしても読みたかった『セーヌ川にアングラは流れる』を、久しぶりにお届けする。パリ在住の田中麻記子さんはバリバリの現代美術でもなく、伝統的な洋画でもなく、なんともフワフワした、可愛らしさと怖さが混じりあって、そこにあの世感をふりかけたような、不思議な絵を描く不思議な画家だ。その麻記子さんの「夜のトラベローグ」。どんなに詳しいガイドブックにもぜったい出てこない、パリの深い水底を見せてくれる。で、今夜はどこに?
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フィールド・オブ・案山子ドリームス
11月に福岡に行ったとき、案山子による「24時間ソフトボール大会」があると聞いて、僕も見学に駆けつけた。車を出してくれた友人夫婦と3人で興奮して写真を撮っていると、ひとりの中年男性がぶらぶら歩いてきて、おもむろにiPadを出すと撮影開始。話しかけてみると「今朝テレビでやってたから見に来た」という近在の方で、「ここもいいけど、こっから30分ぐらい行ったところに、もっとすごいのがあるから」と親切に教えてくれた。
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案山子X 29:宮地岳のかかし村(熊本)(写真・文 ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は熊本県天草市宮地岳町のかかし村を紹介します。熊本県宇土半島の南西にある、上島・下島を主島とした110余の島々である天草諸島。天草四郎の故郷であり、キリシタンとゆかりの深い島としても知られています。天草市下島の中央に位置する宮地岳町(みやじだけ)では、毎年春になるとのどかな田舎の風景の中に、人間そっくりのかかし達が立ち並ぶ「かかし村」が出現します。2015年は「祭」「運動会」「昔の農作業の風景」をテーマに、230体のかかしが立ち並びました。年々来場者が増え続け、初日の開村式(かかしまつり)には2500人以上が来場、期間中にトータル2万人以上が訪れる人気スポットとなっています。
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さいはて日記帳 vol.02 水のさいはて(写真・文:金原みわ)
先月から始まった金原みわの好評新連載『さいはて日記帳』。今回は淀川の川縁で出会った人間模様を書いてくれました。ホームレス、路上生活者・・・その言い方はさまざまですが、好奇心で近づくのを差別と取る人もいるでしょう。ですが、これから読んでもらう記事はむしろその対極にある、最良のリスペクトであると思います。「一瞬で消えて行く邂逅を残したい」という金原さんの思いに応え、ここに掲載させていただきます。
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社会主義の亡霊に出会う旅(写真・文:茅野裕城子)
「旅する小説家」というより、「小説を書く旅人」といったほうが当たってるかもしれない茅野裕城子さん。古い友人なのだけれど、1990年代は北京に長く住んでいたし、ニューヨークやハワイにいたこともあったし、この数年は顔を合わせるたびにクリミア半島のタタール人の街を訪ねたとか、青海省からチベット鉄道でラサまで行ってきたとか、新疆ウィグルのカシュガルから帰ってきたばかりとか、羨ましすぎる旅の話ばかり聞かされて、「なら書いてよ」となったのが今回のキルギス紀行。いっぷう変わったトラベルでもあり、タイムトラベルでもある中央アジアの小さな国で過ごした日々。ほかのどの場所ともちがう、その空気感を楽しんでいただけたら幸いである。
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ジワジワ来る関西奇行 08 スター・ウオーズ オオワダの覚醒(写真・文 吉村智樹)
「御寿司 美奈吉」と染め抜かれたシンプルな暖簾。こていで飾らない造りの店構え。一見して「ご近所にあるとうれしい、普通の、おいしい寿司がいただけるお店」というイメージ。もちろんその印象は間違いではない。僕はこれまで2度、こちらで握りとネギトロの細巻きをいただいたが、口のなかでしゃりがほろっとやさしくほどける食感がたまらない、確かな技術と庶民性を兼ね備えた、ほっとする味のお寿司だった。とはいえこの連載で、おいしいという理由だけでお店を紹介するはずがない。実はこの「美奈吉」は、決して派手な外観ではなく、目立つ場所に立地していないにもかかわらず、全国から注文が相継ぐ穴場の人気店なのだ。その理由は、おいしさだけではなく、お寿司でデコレーションケーキをつくってくれるから。
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Back in the ROADSIDE USA 02 The Heidelberg Project, Detroit
先週号から始まった、僕らにとっていちばん近くて遠い国でもあるアメリカを見直すために、『ROADSIDE USA』の特選物件を、本には載せられなかった写真を大幅に加えて紹介し直す新連載。2回目の今週はミシガン州デトロイトから。自動車産業の不振から長く不況に苦しみ、おかげでドナルド・トランプ候補への支持者が増えてもいる「モーターシティ」(「モータウン」のレーベル名もここから由来)。その荒廃した住宅街に花開く、原色のアウトサイダー・アート環境にお連れする! アメリカの大都市では、ダウンタウンの裏側にいつも貧困層の住宅街が広がっている。崩れかけた家屋と、雑草だらけの空き地と、錆びついた車と、なにをするでもなくたむろする黒人の男たちだけが目につくアーバン・ゲットーである。GMやフォードの高層ビルがそびえるデトロイトのダウンタウンの東側、荒れ果てた住宅街のただ中に、鮮やかな色彩とオブジェの堆積が異様なパワーを放射する、わずか1ブロックの別天地がある。名高いハイデルバーグ・プロジェクトだ。
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さいはて日記帳 vol.04 夢の国のつくりかた(写真・文:金原みわ)
公式ではないキャラクター。ニセモン・パチモンと呼ばれる、非公式キャラクターが好きだ。街に溢れるニセモノ達は、街のおじさん&おばさんの独自のフィルターを通ることで、なんとも言えない愛しい味わいを持つようになる。そのギラギラと光る歪みをみていると、誰でもアマチュアアーティストになり得る才能を持っているのでは、とさえ思ってしまう。勿論、苦労してオリジナルを産み出した製作者にとってはたまったもんじゃないかもしれない。けれども、ニセモノができるということは人気が出ているということであり、広く認知されているという証拠でもある。対象が愛されているからこその二次創作。悪意がなく商業的に使用されないのであれば、誰が何を描いたって良いではないか、と時に思ったりする。そんなニセモノキャラクターの中でも、今回はずっと前から気になっていた場所を訪れていた。詳細は書かないが、その作品は、広島県のとある河川敷に存在している。
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Back in the ROADSIDE USA 11 BibleWalk, Mansfield
オハイオ中部の田舎町マンスフィールドのお話。1970年代の初めごろ、リチャード・ダイアモンド牧師と妻のアルウィルダは、地元の人々に「ヒッピー教会」と揶揄される小さな教会を切り盛りしていた。ジョージア州アトランタに旅行したときのこと、ふたりはなんの気なしにロウ人形館に立ち寄ってみた。歴代大統領や有名人のロウ人形を眺めていると、最後にイエス・キリストが昇天する場面が登場した。気がついてみればふたりの目からは涙がこぼれ、自然に跪いているのだった。「神の偉業を讃えるロウ人形館を作りなさい」と、ダイアモンド牧師と妻のこころに、そのとき神が語りかけてきたのだった。
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Back in the ROADSIDE USA 15 Cowboy Boots Fenceposts, Miles City, MT
ニューヨークやシリコンバレーの新興億万長者のあいだでは、モンタナやワイオミングに牧場を持つのが流行になっているらしい。日本で言えば沖縄の海を見おろす高台に家を持つ、みたいな感じ? 規模こそ違え、行かないけど自慢できるところはいっしょだ。さほどモンタナからワイオミングにかけてのカウボーイ・カントリーは、アメリカ人にとって特別の感情を喚起させる土地である。ラテン語の「山の多い」という意味から生まれたモンタナは、大きさがほぼ日本と同じなのに、人口わずか90万人。全米でも4番目に広い州であり、別名を「ビッグスカイ・カントリー」というように、大自然にものすごく恵まれたステートだ。映画『モンタナの風に吹かれて』や『リバー・ランズ・スルー・イット』で、その美しい風景を堪能した方も多かろう。
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Back in the ROADSIDE USA 17 Harold's New York Deli, Edison, NJ
クラブ文化が花盛りだったころ、ニューヨークでは「ブリッジ&トンネル・ピープル」なんて言葉が流行った。週末だけ、おめかししてトンネルや橋を渡ってニューヨークに遊びに来てる「お洒落を気取った田舎者」の意味で、そんな差別用語に長いこと苦しめられてきたのがニュージャージーだ。ニューヨークのとなりにありながら、東京人が言う「チバラキ」的なイモ扱いに耐えてきたニュージャージー。アメリカ全州の中で、面積が46番目なのに人口は9番目。つまり全米でいちばん人口密度が高いところだし、ニックネームは「ガーデンステート」なのに、どこへ行っても目につくのは工場と安普請の建て売り住宅と高速道路ばかり(ほんとはけっこう自然にも恵まれてるんですが)。
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Back in the ROADSIDE USA 20 Porter Sculpture Park, Montrose, SD
メディカル・ミュージアムがあるスーフォールズから西へ40キロほど、見渡すかぎり牧草地が広がる州間高速90号線を走っていると、突然あらわれる巨大な獣の頭部。高さ20mあまり、鉄板を溶接したその作品の重量は25トンにおよぶという。急いで次の出口で高速を降り、空に伸びた角を目印に砂利道を走っていくと、ポーター・スカルプチャー・パークの入口が見えてきた。「美術を習ったことはない」という独学の彫刻家ウェイン・ポーターが、独力で築き上げたこのユニークな彫刻公園。入場料を徴収する小屋から出てきた作家本人が、広い野原をいっしょに歩きながら、緑の上に点々と散らばる作品をひとつずつ解説してくれる。
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Back in the ROADSIDE USA 23 The National Afro-American Museum and Cultural Center, Wilberforce, OH
いちおう人種差別というものはなくなっているはずのアメリカで、このところの警察と黒人との衝突に見られるような、そしてトランプ大統領が火に油を注いでいるような、隠されてきた人種差別の根深さに驚いたひとも多いのではないだろうか。オハイオ周南西部の小さな町ウィルバーフォースは、アメリカの奴隷解放史に重要な位置を占める場所で、1856年にはすでにウィルバーフォース大学という、プロテスタント系の黒人教育のための大学が開校している。コールマン・ホーキンス、ベン・ウェブスター、べニー・カーターなど、幾多のジャズ・ミュージシャンを生んでいることでも有名だが、構内に誕生したアフロ・アメリカン・ミュージアムは、奴隷貿易時代から現在にいたるアメリカ黒人の歴史を俯瞰できる、珍しい展示研究機関である。
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『中国遊園地大図鑑・中部編』、早くもリリース!
今年1月11日配信号で紹介したばかりの、珍スポ・ハンター関上武司さんによる中国遊園地大図鑑 北部編』。それから2ヶ月弱でもう、新刊『中部編』が発売されてしまった。前回書いたように、ふだんは「中小企業のサラリーマン」として働きながら、休みだけを使って取材に駆け巡る日々。この正月も「香港、マカオ、広東省、貴州省、湖南省、湖北省、江西省、浙江省、江蘇省、上海市を9日間で巡るという、かつてない超ハードな日程」をこなしたそうだが、さっそくその成果がまとまったということでもある。
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Back in the ROADSIDE USA 31 Salvation Mountain, Niland, CA
始めるときにはまるで全体像がつかめていなかったのが、最初に劇的な「出会い」があって、それからの取材の広がりをいきなり確信する、そういうキックスタート的な出会いがずいぶんあった。『TOKYO STYLE』のときはそれが美大生兄弟が住む木造アパートだったし、『珍日本紀行』のときは三重県鳥羽の秘宝館だった。そして『ROADSIDE USA』ではカリフォルニア・モハベ砂漠の片隅にある「サルべーション・マウンテン」で、その出会いが8年近くにおよぶアメリカ合衆国50州をめぐる旅の原動力になったのだった。こんなふうに生きている人間がいるのに、自分もやらないでどうする、という。今週は僕にとってアメリカでいちばん大切な場所のひとつ、サルべーション・マウンテンにお連れする。
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案山子X 36:山田のかかし村まつり(宮崎)(写真・文 ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。 今回は宮崎県都城市山田町の山田のかかし村まつりを紹介します。宮崎市と鹿児島市のほぼ中央に位置する都城市は、宮崎県内第2の人口を擁する主要都市です。温暖な気候と雄大な自然に恵まれており農業や畜産が盛んです。都城市の中心市街地から12キロ程の場所にある山田町は、町のシンボルがかかしです。多くの人に自然豊かで農業が盛んな山田町を知ってもらおうと「かかし村構想」が立ち上がり、童謡「案山子」の「山田の中の 一本足の案山子」という歌詞から着想を得て、田畑を守るかかしを町のシンボルとして町おこしを始めました。かかし村構想の一環として、毎年9月頃に町の中心部にある一堂ヶ丘公園で「山田のかかし村まつり」が開催されます。出店や催し物も多く、夜になると花火も打ち上げられる大きなお祭りで、市内外から約1万人が訪れます。お祭りの一大イベントであるかかしフェスティバルは2015年で23回目を迎えました。
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Back in the ROADSIDE USA 36 Big Easel, Goodland, KS
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホがアルルで7枚の『ひまわり』を描いたのは1888年から1889年のこと。そのうち1枚は第2次大戦の芦屋市大空襲で焼けてしまったが、現存する6枚のうち1枚が西新宿の損保ジャパン東郷青児美術館にあることはよく知られている……が、画面が約10×7mという巨大な『ひまわり』がカンザス州にあることは、あまり知られていない。カナダ生まれのアーティスト、キャメロン・クロス(Cameron Cross)が「ビッグ・イーゼル」と呼ばれるシリーズの制作を始めたのは1998年のこと。
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Back in the ROADSIDE USA 37 Museum of Funeral History, Houston, TX
テキサス州ヒューストンのダウンタウンから北に20数キロ、国際空港を過ぎた少し先の新興住宅地に立派な建物を構えるのが『ナショナル・ミュージアム・オヴ・フューネラル・ヒストリー』。葬儀に携わる人材を育成する学校が運営する、おそらくアメリカ随一の葬儀博物館だ。広々とした館内には開拓時代から現代に至るまでの、アメリカ文化における死の受容のありかたをめぐる、非常に興味深い展示が常設されている。馬が引いていたころから、アラスカで使われていたソリ、会葬者が棺といっしょに乗れるバスなど、さまざまなスタイルの霊柩車(日本のもちゃんとある)。
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案山子X 37:山田の里かかし祭り(鹿児島)(写真・文 ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は鹿児島県姶良市の山田の里かかし祭りを紹介します。姶良市は鹿児島県の中心に位置しており、鹿児島市と隣接しベッドタウンとして発展しています。JR姶良駅から10キロ程の場所にある姶良市下名周辺の山田地区では毎年9月にかかし祭りが開催されており、2015年に22回目を迎えました。山田の里かかし祭りは平成6年にスタートしました。当時の局長さんが、童謡「案山子」の「山田の中の 一本足の案山子」という歌詞から発想を得て、町の過疎が進行して人口が減っていく中かかしを作って人口を増やしてみようと思い立ったのが始まりです。かかし祭りは地域の交流の場であり、町の活性化をはかり外部から多くの人に来てほしいという気持が込められています。
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Back in the ROADSIDE USA 40 Grotto of the Redemption, West Bend, IA
グロットとはふつう、人工的に作られた洞窟を指す。よくヨーロッパの古い教会や王宮庭園、聖地などで見かけるが、アイオワ州中部の小さな町、ウェストベンドの住宅街のただ中に、世界最大のグロットがあるとは驚きだ。しばしば「世界で八番目の不思議」とも称される(ほんとか!?)グロット・オブ・ザ・リデンプション=「贖罪の洞窟」は、コンクリートの土台に水晶やらメノウやら、ありとあらゆる宝石・貴石を埋め込んで作られた、壮麗かつビザールな巨大建造物。住宅地の一区画を丸々占めるその威容は、年間10万人以上が見学に訪れるというのも納得の迫力だ。もちろん一カ所に集められた宝石・貴石の量としても世界最大で、その価値だけで時価400万ドル以上になるという。
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フランスわき道より道 見聞録 03 ピエール・ラ・ポリスの展示を観にエクスへ寄り道(写真・文:中山亜弓)
ピエール・ラ・ポリス(Pierre La Police)は、レジデンツやバンクシーのように生年月日も本名も不祥のフランスのアーティストで、現代美術、コミック、アニメ、挿絵…と幾つものジャンルにまたがり活動をしていますが、いずれの作品も、念入りな不条理に満ちています。公式サイトによれば、1980年代の終わりから100部に満たない自主制作のコピー本を、パリの書店Un Regard Moderneで販売し、作品を発表しはじめており、30年ほどのキャリアを持つ作家であることがわかります。その活動初期、89/90年に、ピエール・ラ・ポリスがコピー誌で発表した3人のヒーローもの『フォンゴーとテミステクル兄弟』(Fongor et des frères Thémistecle)のコミックは現在も進行中の物語で、紙の書籍のみならず、iPhoneやiPadで見る電子書籍にも対応した1ページ1コマ形式で描かれた最新シリーズ『地獄の実務家』(LES PRATICIENS DE L’INFERNAL)の第2巻が今年の3月に刊行されたのに合わせて、南フランスのエクス=アン=プロヴァンス(略称エクス)でシリーズの原画展が開催されました。
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Back in the ROADSIDE USA 45 Neon Museum and Boneyard, Las Vegas, NV
訪れる観光客が年間3000万人以上、ホテルの部屋数12万室以上、大きさで競うなら世界の巨大ホテル・ベスト20のうち18までがラスヴェガスに集中している。たった60年かそこらの歴史で、世界に類のない欲望都市に成長したラスヴェガスの建築様式を象徴しているのが、ネオンであることに異論を挟む人はいないだろう。超高層ビルがニューヨークの建築を象徴するように、ラスヴェガスはネオンの街なのである。いや、あったというべきだろうか。近年の激しい巨大ホテル・ラッシュで、古きよきラスヴェガスを輝かせてきたカジノ・ホテルや飲食店のネオンは次々に姿を消していっている。地球上の、ほかのどこにも見ることのできない、そんな見事な光の芸術をなんとか救おうと、非営利団体として設立されたのがネオン・ミュージアムだ。
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Back in the ROADSIDE USA 46 The Dumas Brothel, Butte, MT
ドイツよりも広く、ほぼ日本と同じ面積なのに、わずか100万人ほどの人口というモンタナ。アラスカ、テキサス、カリフォルニアに続く、4番目に大きな州である。人口は44番目だけど・・・。19世紀末に全米最大の銀の採掘地となり、1930年代には銅の最大の産地となったビュートは、モンタナでもっともカラフルな歴史に彩られた町だ。アイルランド人、ポーランド人、イタリア人、スラブ人、中国人・・世界中から一攫千金を夢見てやってきた男たちのために、ビュートには無数の酒場と、当時全米最大の規模を誇る赤線地帯も擁していた。
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Back in the ROADSIDE USA 47 American Police Hall of Fame and Museum, Miami, FL
全米でいちばん、もしかしたら世界でいちばん変人が集まる場所、それがフロリダである。泥棒、変質者、 神秘主義者、サーカスの芸人、UFO信者、アウトサイダー・アーティスト、引退したフリークス、サーファー、宇宙飛行士、単なる老人と、下半身のお楽しみへの期待で爆発しそうな大学生・・・だれもが太陽と海と、ワニの住む湿地帯へと押し寄せる。そうして20世紀のはじめに、わずか人口900人の漁村だったマイアミは、いまや全米屈指の大都市となった。マイアミは美しく、危険な都市ということになっている。
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Back in the ROADSIDE USA 48 Potter's Wax Museum, St. Augustine, FL
アメリカ最大のカーレース「デイトナ500」と、春休み(スプリングブレイク)に全米からお楽しみを求めてやってくる大学生たちで有名なデイトナ・ビーチから、大西洋岸を州間高速1号線に沿って北上すると、セント・オーガスティンという町があらわれる。アメリカ人以外にはあまり知られていないが、1513年にスペイン人ポンス・デ・レオンが上陸したこの場所は、アメリカ合衆国史上もっとも古い居留地であり、町全体が歴史観光地となっている。スペイン時代の城郭や要塞などまっとうな史跡も多いが、そこはフロリダ。ビザール・スポットにも事欠かない。メインストリート(と言っても3、4ブロックのエリアだが)にある『ポターズ・ワックス・ミュージアム』は1949年開館、ウソかマコトか「アメリカ最古のロウ人形館」を自称する。
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Back in the ROADSIDE USA 49 South of the Border, Dillon, SC
まちがいなくサウスキャロライナでいちばん有名で、いちばんキッチュな観光名所。ニューヨークやシカゴなどの寒い地域から、常夏のフロリダへ向かう人々が利用する州間高速95号線。ノースキャロライナの州境を越えたとたんに、高さ70メートルはあろうかという巨大なタワーが目に入る。原色にぎらぎら光るソンブレロを被ったこの「南部のエッフェル塔」が見えたら、そこがもう『サウス・オブ・ザ・ボーダー=SOB』だ。ガソリンスタンド、レストラン、お土産屋、遊園地、モーテル、ゲームセンター・・・とにかく、ないものはないというSOBは、楽しく気楽で醜い、いわば究極のサービスエリアであり、ロング・ドライブの貴重なオアシス。
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Back in the ROADSIDE USA 51 Magic Forest, Lake George, NY
いちどマンハッタンを離れ、高層ビルなど影も形もない、自然にあふれた「田舎としてのニューヨーク・ステート」を巡ってみると、そこには世界の流行の発信地として君臨するニューヨークとはまったく正反対の、キッチュでのどかな風景がだらだらと広がっている。こういう、ゆる~いニューヨークも、またいい。マンハッタンから州間高速87号線を北上していくルート沿いで、もっとも有名な観光地は、4時間ほどのドライブで着くレイク・ジョージ。東京から富士五湖へという感じだろうか。湖のまわりには瀟洒な別荘と、下品なお土産屋や安普請モーテル群が入り混じって、なかなか楽しい雰囲気。ロウ人形館もあれば、いまだ全米で唯一、興業を続ける「馬のダイビング」がウリの遊園地『マジック・フォレスト』もあったりする。
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石川次郎のフランス侵略日記 03 Jiro、パリ侵略!!(画・文:石川次郎 構成:中山亜弓)
アラフィフにして巡回展のためにフランスに渡った石川次郎が、モンペリエでの展示を終えて、いよいよパリを目指します。すでに読者はお気づきかと思いますが、英語もフランス語も覚束ない無名のアーティストが1人で、どのようにフランスのオルタナティブアートの世界に斬り込んでゆくのか…現地のギャラリーやアーティストたちとどのような交渉や交流をしたのか…といった情報は一切出てきません。これは、日本に絶望し、フランス移住を夢見る1アーティストの独り言、内なる旅の記録です。蛭子さん風似顔絵とともにお届けします。
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Back in the ROADSIDE USA 57 Museum of Woodcarving, Shell Lake, WI
ウィスコンシン州北部、その名のとおりシェル湖に面した人口1,000人ちょっとの小さな町がシェルレイク。そのハイウェイ63号線沿いに、倉庫のような外観をさらすミュージアムが『ミュージアム・オブ・ウッドカーヴィング』。地元の教師だったジョセフ・バータが独力で作り上げた、「ひとりの手による世界最大の木彫コレクション」である。建築材としてポピュラーなツーバイフォーの角材をつなぎ合わせた塊から彫りだされた、等身大の木彫作品が100余体、さらにミニチュア版が400体。「ひとりの手で彫り出された世界最大の木彫コレクション」だという。
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おら青森さ来ただ――吉幾三コレクションミュージアム
津軽半島の根元に広がる五所川原市。太宰治の故郷・金木で有名だし、津軽三味線の祖・秋元仁太郎も金木出身。大阪城を模した自邸を建て、出ては落ちてもめげずに挑戦を繰り返した泡沫候補の星・羽柴誠三秀吉も金木出身。そしてもうひとり、忘れてならない五所川原の有名人が吉幾三である。五所川原駅の西側に広がる旧市街はいま再開発の真っ最中。真新しいビルとシャッター商店街が入り交じる荒涼とした風情だ。中心部にそびえる巨大な建物が『立佞武多(たちねぷた)の館』。五所川原の夏祭りを象徴する、高さ最大20メートルという巨大な山車を収めた観光施設で、そのすぐそばで寄り添うように営業中なのが『吉幾三コレクションミュージアム(Y.C.M)』。ちなみに五所川原立佞武多のテーマ曲も、吉幾三によるものだ。
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Back in the ROADSIDE USA 59 The House on the Rock, Spring Green, WI
ウィスコンシン州スプリンググリーンは、フランク・ロイド・ライトのアトリエ、タリエセンがあることで、建築ファンにはよく知られた土地である。地元で不動産業を営むかたわら建築デザインも手がけていたアレックス・ジョーダンは、友人らとともにタリエセンにライトをたずね、自分のデザインを見せたが、ライトの「あんたには才能がない」という非情な一言とともに、図面をつき返されてしまう。恥をかかされ、復讐を誓ったアレックスは、タリエセンを見下ろす小高い丘を手に入れ、ライトの建築に対する壮大なパロディ建築を建てようと決心した。その遺志を継いだ息子ジョーダン・ジュニアが1940年代はじめから本格的な建設に着手し、59年に一般公開されたのが「ハウス・オン・ザ・ロック」。しかしハウスは単なるパロディにとどまることなく、ジュニアの手で思いがけないスケールへと増殖していった。
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Back in the ROADSIDE USA 60 Wild Mountain Man, Hancock, Maine
メイン州の海沿いにのびるハイウェイ1号線を北上している最中、道端にカラフルな木彫りの彫刻が並べられているのが目についた。クルマを停めてみたが、彩色を施した完成品と、削りかけの材木が屋外にごちゃごちゃ置いてあるだけ。だれも出てこないので、次のスポットに向かったものの、なんだか気にかかって、その日の午後にハイウェイを引き返して、もういちど寄ってみることにした。置きっぱなしの彫刻を目印にクルマを近づけると、今度はブーンと軽快なチェーンソーの音がしている。見れば、極太の材木を相手に、ヒゲもじゃの男がひとり、木くずだらけになって電気ノコを振り回している。
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Back in the ROADSIDE USA 61 The Wilhelm Reich Museum, Rangeley, Maine
先週はチェーンソーの彫刻家レイ “マウンテンマン”マーフィーを紹介したメイン州。ロブスターとLLビーンの本店で知られる州でもある。北と東の州境をカナダに接するメイン州は、アラスカをのぞいてアメリカ合衆国最北部に位置し、アメリカでいちばん早く朝日が昇る地。なにしろ土地の90パーセントが森林であり、その緑のじゅうたんに彩りを添える湖の数が6000以上。どこまでも続く海のような緑の森を飛行機から眺めていると、アメリカのような現代文明の中心である国の中に、こんなにも広大な人跡未踏の地がいまだに残っていようとはと呆然となる。懐の深い自然と、いまだ根強く残るフロンティア・スピリットに惹かれるのか、メイン州にはいっぷうかわった住人が数多く生息している。海の民、森の狩人、元ヒッピーのコミューン、哲学者、そして自然の恵みを作品につくりかえるアーティストたち。その先達とも言える存在がウィルヘルム・ライヒだ。
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案山子X 43:かかし制作記、第45回上下かかし祭(広島)(写真・文 ai7n)
日本で大韓民国の話をするとき全羅南道から入る人はほとんどいない。一極集中しているのは日本人の認識も同様であると、ずいぶん長い間感じてきたが、21世紀に入ってそれはより強くなったんちゃう? と思うのだがそもそも他の国に対する場合も似たりよったりなのだろうとは思えるくらいに我々も年をとってはいる。しかしまあそのなんだなあ、この『ディープ・コリア』観光30周年記念再訪の旅(以下デコ30)も3回目にしてソウルに足を踏み入れることになった。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 02 海南省(写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!) 軟体トラベラーの関上武司です。寒い日が続きますので、今回は冬でも暖かい海南省のお話をしたいと思います。海南省はもともと広東省に属していた島でしたが、1988年に省に格上げされました。中国の最南部の省でもあり、ベトナムとも近く、省内の三亜市は『中国のハワイ』といわれるほど冬でも温暖です。昔は流刑地でしたが、最近は中国の大気汚染もひどくなってきている影響で「肺をきれいにする旅(洗肺游)」の旅行先として、新鮮な空気を求める中国人旅行客が大勢訪問します。
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Back in the ROADSIDE USA 65 The Shanti, Gunder, IA
見渡すかぎりのトウモロコシ畑と牧草地の中に埋もれてしまいそうな町、グンダー。現在の人口が32人、町というより集落だが、この町のただひとつの四つ角に面した小さな食堂に、アイオワはもとよりアメリカ中、さらにはヨーロッパやロシア、アフリカからも訪れる人たちがいる。彼らのお目当ては、食堂の名物「グンダーバーガー」。ようするに巨大なハンバーガーだが、なにしろ肉の量が1ポンド(約450グラム)。ちなみにマクドナルドのハンバーガーの肉が45グラムだから、だいたい10個分ということになる。これにオニオンだの、ポテトだのが小山のようについて、値段がたったの5ドルとちょっと。しかも地元産の素材だけを使用したバーガーは、大きいだけじゃなくて最高に美味なのです。
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ディープ・コリアふたたび 13 水安堡温泉~東海(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
大韓の温泉で我々がこれまでに行ったところはそのほとんどが日本の温泉に比べると、そっけなかった。温泉であることをやたら主張しないところが多かった。そこのところは年月を経てもさほど変わっていないようだ。お風呂に一日に何度もつかるというような人は、大韓には似合わないと我々は思う。銭湯にも何度か行ったが、そこらへんは日本とさほどマナーに違いはなかった。ああ、そういえばソウルの大型浴場で何度も何度もからだを洗う青年がいたが、そういう人は日本にももちろんいますね。そいつをちょっとおもしろいな、と思ったのはほとんど湯船に入らなかったからだ。洗って湯で流すと離れたところでボーとしていて何分かするとまた洗い場に来て泡立ててゴシゴシやる、その繰り返し。最終的に湯につかったかどうかは未確認。そういうやつ。
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Back in the ROADSIDE USA 67 Field of Corn, Dublin / Longaberger Headquarter and Homestead, Newark and Dresden, OH
オハイオ州コロンバス市街の北側、瀟洒な住宅街と企業の本社が入り交じるダブリンの一角に、なにやら白い柱がにょきにょき立ち並んでいる。車を停めて近寄ってみると、柱に見えたのは白いセメントで作られた巨大なトウモロコシだった。ダブリン市が「アート・イン・パブリック・プレイセス」と名づけた芸術振興活動の一貫として、地元のアーティスト、マルコム・コクランが1994年に制作したものだという。全部で109本ある、ほぼ等身大(実物大ではなく)のトウモロコシ。ツブツブまでちゃんと作ってあって、なんだかおいしそうに見えてくる。
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プノンペンは70点が美味しい(写真・文:スナック・アーバンのママ)
音楽や映画や小説と同じように、料理もその国をあらわす文化のひとつだから、やっぱり歴史や思想と強い関係にあると思う。だから悲劇により長く時間が止められてしまった国は、どうしても遅れをとってしまう。でもそういう国の、70点ぐらいの料理がわたしは大好きだ。そこには下町の大衆酒場とか、近所の洋食店みたいな、その街に溶け込めるような居心地のよさがあったりする。せっかくの旅で70点の料理なんて食べたくないかもしれないけど、たまにはガイドブックを捨てて、少しだけ美味しさのレベルを下げてみてほしい。ちなみにプノンペン、物価イメージはバンコクの半額。特に買うものもないから、どれだけ呑んでも、ぜんぜんお金が減らない最高の街です。
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Back in the ROADSIDE USA 69 Call of the Wild, Gaylord, MI
ミシガン州北部の小さな町、ゲイロード。人口4000人足らずだが、ゴルフやスキーのリゾートとして知られ、街なかの建物はチロル風に統一されていたりする。ゲイロード郊外に1965年から続く観光教育施設(?)が『コール・オブ・ザ・ワイルド』。アメリカ文学史に残る名作、ジャック・ロンドンによる『荒野の呼び声』をそのまま館名に使った剥製動物ミュージアムだ。カール&ハティ・ジョンソン夫妻によってつくられた『コール・オブ・ザ・ワイルド』は、北アメリカに生息する動物たちを剥製にして、リアリスティックな背景の中に配置。まるで額縁ショーを見るように、ジオラマよろしく熊やら狐やら、その他もろもろの動物たちが、ここには150体以上も揃っている。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 04 雲南省(写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)軟体トラベラーの関上武司です。現在の中国は56の民族で構成されている多民族国家で、今回紹介する雲南省には非常に多くの少数民族が生活し、雲南省にしかいない少数民族も15種類ほどいます。2016年1月1日。広西チワン族自治区の南寧市から寝台列車で移動して元旦早朝、雲南省昆明市に到着。新年最初の食事は昆明駅前の屋台で軽食をほおばり、3泊する宿を探すことにしました。昆明は2回目の訪問で、以前宿泊した昆湖飯店に向かいました。予約なしで宿泊しようとしたところ、フロントのスタッフに「3日間満室で宿泊できません」と無慈悲な一言…。昆湖飯店のすぐ近くに温泉があるのでどうしても宿泊したかったのですが、予約をしなかったこちらに問題があるのでしょう。
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案山子X 45:小西節雄さんのかかし(滋賀)(写真・文 ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は滋賀県東近江市山上町の小西節雄さんのかかしを紹介します。東近江市は滋賀県の南東部に位置し、西は琵琶湖、東は三重県との境にそびえる鈴鹿山脈に面しています。伝統や歴史的な町並みが多く残された街で、300年以上の歴史を持つ約700キロの巨大凧をあげる「近江八日市の大凧揚げ習俗」や、約650年前に開山された紅葉の名所「永源寺」、白壁の蔵屋敷や商人屋敷の町並みが残る「五個荘金堂町」などが有名です。永源寺から3.4キロほどの場所にある山上町に、アートミュージアムでも取り上げられた事のあるかかしスポットがあります。
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案山子X 46:横山地区のかかし(石川)(写真・文 上迫愛)
こんにちは。上迫愛(うえさこあい)です。今までペンネームのai7n名義を使っていましたが、かかしに関する事は本名でやっていく事にしたので、今回から名前を変えます。今回は石川県珠洲市狼煙町横山地区のかかしを紹介します。狼煙町は石川県の能登半島最北端にあり、明治時代に作られ「日本の灯台50選」に選ばれた禄剛埼(ろっこうざき)灯台が有名な町です。毎年夏になると、禄剛埼灯台に向かう県道28号線沿いに沢山のかかしが立ち並びます。かかしを作っているのは、横山地区の住民で結成された「横山振興会」の皆さんと、金沢星稜大学の学生達。
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Back in the ROADSIDE USA 77 Rosemary's Texas Taco, Patterson, New York
マンハッタン中心部から100キロほど北にある町、パターソン。ルート22に面して、エキセントリックな内装と、健康的なメニュをそろえたレストランが、ローズマリーズ・テキサス・タコ。アーティストを目指して1969年ニューヨークにやってきた、テキサス生まれのローズマリー・ジェイミスンが始めた店である。
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Back in the ROADSIDE USA 78 Petrified Creatures Museum of Natural History, Richfield Springs, New York
ニューヨークシティからカナダ国境まで広がるニューヨーク州の真ん中へんにある、小さな町リッチフィールド・スプリングスは、マンハッタンから4時間ほどのドライブ。オープンが1934年というペトリファイド・クリーチャー・ミュージアムは、太古の恐竜と化石を観察しながら、自分で化石を掘り出せる体験型の学習観光施設だ。とはいえ最大の魅力は林のあちこちに配置された、手作り感あふれすぎのコンクリート製恐竜。午後の日差しを浴びて蛍光色のようにぎらぎら光る極彩色の皮膚は、科学というより現代美術の領域に足を踏み入れているような、ビザール感をにじませている。
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Back in the ROADSIDE USA 79 Spud Drive-In, Driggs, ID
ワイオミングとの州境にそびえるグランド・ティトン山系は、ロッキー山脈の最北端に位置し、登山家、スキーヤーに広く愛されている。ティトン山系のアイダホ側にあるベース・キャンプとなる町がドリッグス。町の南端には、アメリカでもなかなか見ることのできなくなったドライブイン・シアターが、いまだに営業中だ。週末ともなれば若者や家族連れがクルマで乗りつけ、道路脇にそびえる巨大スクリーンにクルマの中から見入りながら、評判のハンバーガーをぱくついたりしている。
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Back in the ROADSIDE USA 80 Shoshone Ice Cave, Shoshone, ID
「アイダホの鬼押出し」クレイター・オヴ・ザ・ムーンの、奇怪な溶岩台地を窓の両側に眺めつつ走っていくと、「アイス・ケイヴこちら!」と力強く主張する看板が。思わずハイウェイをそれ、砂利道をしばらく走っていくと、巨人インディアンや恐竜のあいだに、おみやげ屋をかねた入口がある。これがアイダホはもちろん全米でも有数の規模と、「アイス・ケイヴ」の名のとおり真夏でも氷の張るユニークな環境で知られる観光洞窟だ・・・が、緑色のコンクリート製恐竜の頭部にまたがる「原始人」の姿を見た時点で、そのチープな観光ビジネス感覚に期待が高まる。
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Back in the ROADSIDE USA 81 Earl's Art Gallery, Bovina, MS
ミシシッピ州ヴィックスバーグ。南北戦争のヴィックスバーグ包囲戦や、多数の黒人が殺されたヴィックスバーグ虐殺でもアメリカ史に名を残す都市だ。その郊外、ボヴィナの林と地味な住宅街が入り交じるあたりに『アールズ・アート・ギャラリー』がある。アール・シモンズと仲間たちが過去十数年間にわたって作り上げた作品を展示する、ここは美術館であり、直売店でもあるのだ。
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Back in the ROADSIDE USA 82 Gracelant Too, Holly Springs, MS
ミシシッピ北東部の小さな町ホーリースプリングス。エルヴィス・プレスリーの生地として名高いテュペロまでは1時間足らずである。町の中心近くにある住宅街、地味な平屋が連なる中に、真っ白い外壁と、目の覚めるようなブルーの木が異様に目立つ、2階建ての家がある。これがおそらく世界でもっとも熱狂的なエルヴィス・ファン、ポール・マクルードと息子のエルヴィス・アーロン・プレスリー・マクルード(そう、本物と同じ名前を、息子にもつけてしまったのだ!)が住む、『グレイスランド・トゥー』である。
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Back in the ROADSIDE USA 84 Musée Conti Wax Museum, New Orleans, LA
ニューオリンズ観光の中心、フレンチ・クオーターにあるワックス・ミュージアム。観光地によくあるタイプかと敬遠されがちだが、中身は意外に盛りだくさん。さすがニューオリンズならではの、カラフルな歴史に彩られたワックス・ジオラマが展開している。小学生の団体や、家族連れに占領させておくには惜しい充実ぶりだ。
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Back in the ROADSIDE USA 87 Clyde Jones's Zoo Garden, Bynum, NC
先日のハリケーン・フローレンスで大きな被害を受けたノース・カロライナ州。森と湖に抱かれ、信号のひとつさえない静かな村、バイナムをクルマで通りすぎようとすると、家々の前庭に木の幹や根で作られた、素朴な動物たちが飾られている。通りから奥に入ってみると、急に動物たちが増え、そして一軒の小さな家が見つかる。いったい何百匹の動物が、ここにはいるのだろう。シカ、牛、豚、キリン、ゾウ、イルカ、ゴリラ・・・数えきれないほどの動物たちで、平屋の家は隠れてしまいそうだ。この家の主、そして村の家々を飾る木彫の作者が、1938年か39年生まれのクライド・ジョーンズ(本人は細かいことに興味ないので覚えてないとか)。
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ディープ・コリアふたたび 17 ソウル(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
ソウル駅構内ならではの空気、といえるようなものは、もうない。おしなべて“大韓鉄道の駅の一つ”しかなくなってしまった大韓全国事情はいかんともしがたいことをここでも感じながら我々は夏の日曜日の午後、大韓民国何十回目かの再訪の初日に、これからどこへ行こうかとぼんやり考えていた。東のほうへ行った。北の方向はDK再訪という感じにはならず西の方へ行くならソウル駅はふさわしくなく、ならば南の方か。全羅北道/南道はなんとなくだがこのところ体になじみがいいことは確かだし、いくつかすでに再訪している。ということは、そこをまたぎ越すか。済州島で新婚さんがいるかどうか確かめるなら、また金浦へ戻らねばならない。あそこは日本から直に行ったほうがいいという気もした。
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案山子X 特別版1:かかし旅について(写真・文 上迫愛)
こんにちは。上迫愛(うえさこあい)です。先月案山子Xの連載が50回目を迎えました! 50回記念という事で、今回と次回の2回に分けて特別版を掲載させてもらう事になりました。今回は自分の事と、かかしを巡る旅の事について書きます。1981年、私は広島県の山間部のコンビニも無いようなど田舎に生まれ、のんびりと育った。特に興味がある事もなく、スポーツも勉強も苦手で、なんとなくボーッとしながら日々を過ごし、親からはよく「覇気が無い」と言われるような子供だった。中学生の時、さらに田舎の山奥に住んでいる祖母の家に行くと、近所の人の畑にかかしが立っていた。
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Back in the ROADSIDE USA 90 The Paper House, Rockport, Massachusetts
ボストンから約1時間、観光漁港としてにぎわうロックポートのはずれ、ピジョンコーヴと呼ばれる小さな入り江を見下ろす丘に、ペーパー・ハウスがある。その名のとおり「紙でできた家」、正確に言えば10万部以上の新聞紙を使って建てられた家なのだ。エリス・ステンマンという機械技師が、ロックポートに夏の家として建てたこの家。1922年に思いついてから、なんと20年間以上の時間を費やして作られたというペーパー・ハウスは、新聞紙を使い、しかもその新聞が「読めるように」デザインされたという恐るべき手業の集積である。
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Back in the ROADSIDE USA 91 New England Pirate Museum, Salem, Massachusetts
ボストンの北側に位置するセイラムを中心とした海岸線の一帯は、17世紀後半には「黄金海岸」と呼ばれ、海賊たちが跋扈していた。いったいどれくらいの船が沈められ、人が殺されたのか定かではないが、ここ数年だけでもマサチューセッツ沖合で、3千万ドル以上にのぼる財宝が海中から発見されたという。ニューイングランド・パイレート・ミュージアムは、大西洋を舞台にアメリカ、ヨーロッパ入り乱れて繰り広げられた海賊たちの戦いと冒険の物語を、ジオラマによって再現したユニークな展示館。もちろん海賊姿に扮装した威勢のいいガイドが、1シーンずつ丁寧かつ大げさに解説してくれる。
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テキーラ飲んでゾンビになろう!2018
10月24日配信号で、ワルシャワの激渋タトゥー・コレクション「ステイ・ロウ、ステイ・ベーシック――オールドスクール・タトゥーの教え」を特集したモーリシー・ゴムリッキ。ポーランド人ながらメキシコシティ在住のアーティストであるモーリシーくんは長い友人なのですが、本メルマガでは2012年11月21日号でメキシコシティの秋の風物詩!ゾンビ・ウォークを紹介してくれてます(テキーラ飲んでゾンビになろう!)。あれから6年、現在のメキシコはさらに物騒な国になってしまっているけれど、有名な「死者の日」の祭もゾンビ・ウォークも健在のようで、久しぶりに「今年のゾンビ・ウォーク便り」を送ってくれました。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 10 山西省(写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)軟体トラベラーの関上武司です。今回は山西省運城市の関羽にまつわる観光地や日本では見られない塩湖の魅力について紹介します。2017年12月28日。この日は中部国際空港から山東省煙台を経由して山西省太原市に到着。太原武宿国際空港には山西省各地の名所や歴史上の人物を紹介するパネルがお出迎え。
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Back in the ROADSIDE USA 92 The National Great Blacks In Wax Museum, Baltimore, Maryland
先週に続いてメリーランド州ボルティモアから。市街北部、窓ガラスの代わりにベニヤ板を打ちつけた廃屋が目立つ、思わず車のドアのロックを確かめたくなるエリアに、全米唯一のアフリカ系アメリカ人、つまり黒人の歴史と偉人だけを扱ったロウ人形館がある。人口の半分以上を黒人が占めるボルティモアに長年暮らし、アメリカにおける黒人の歴史を学ぶ場があまりに少ないことを危惧したエルマー&ジョアン・マーティン博士夫妻が、1983年に開いた小さな展示館がミュージアムの始まり。スクールバスを連ねて押し寄せる子供たちの多さに、すぐに手狭になり、寄付を募ってあらたに開館したのが、現在のグレート・ブラックス・イン・ワックス・ミュージアムだ。
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案山子X 52:東麻布商店会かかしまつり(東京)(写真・文 上迫愛)
こんにちは。上迫愛です。今回は東京都港区の「東麻布商店会かかしまつり」を紹介します。 かかし祭は田舎だけのものだと思っている人が多いかもしれませんが、東京都23区内の港区東麻布でも毎年かかし祭が開催されています。港区は東側が東京湾に面しており、六本木、青山、赤坂など高級な都会というイメージですが、東麻布は住宅街や小さな商店が立ち並ぶ落ち着いた雰囲気の街です。かかし祭を開催している東麻布商店会は、東麻布1丁目と2丁目の間にある商店街で、飲食店や地域に根ざした商店など様々な店舗が軒を連ねています。近くには観光スポットである東京タワーや、日本で最も古い公園の一つである芝公園があります。
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Back in the ROADSIDE USA 95 National Museum of American History, National Mall, Wahington DC
ワシントンを訪れる日本人観光客のほとんどは、スミソニアンがお目当てなのではないだろうか。美術、科学、歴史とあらゆる分野で、全米はもとより世界最高峰のコレクションを誇る、一大ミュージアム群である。その中でも足を向ける日本人が比較的少ないのが、アメリカン・ヒストリー・ミュージアム(国立アメリカ歴史博物館)。その名のとおり開拓時代から現在までの波乱に満ちたアメリカ史を、貴重な資料によって辿る歴史博物館だ。アメリカ史に親しんでいないと楽しめないと思われがちだが、昔懐かしいスタイルのジオラマが各所に散りばめられた展示スタイルは、気軽に見て回るだけでも価値あり。歴代ファーストレディ(大統領夫人)のドレス展示にうっとりのおばさんもいれば、黒人差別の歴史フロアで動かなくなるヒップホップにいちゃんもいたりと、客層もバラエティに富んでます。
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Back in the ROADSIDE USA 96 Big Texan Steak Ranch, Amarillo, TX
インターステート40号線沿いに走ると、「72オンスのステーキがタダ!」と大書されたビルボードが、やたら目につく。その下に小さく書かれた「1時間以内に食べきれたら」という注意書きまでは読めないのだが。アマリロ郊外に巨大な店を構える『ビッグ・テキサン・ステーキ・ランチ』は、アメリカ中の肉好きに知られた有名店だ。メインのレストランのほか西部劇ふうのモーテルを備え、夏のシーズンにはカントリー&ウェスタンのショーも頻繁に開かれる。2階の一角には、ハリウッド映画のコスチュームや小道具を集めた「ハリウッド・ミュージアム」まで店を開いている。
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Back in the ROADSIDE USA 98 Old West Wax Museum / Safari Club Restaurant, Thermopolis, WY
ワイオミング中部のサーモポリスは、「テルメ」(温泉)と「ポリス」(市)が合わさってできた名前が示すとおり、温泉で成り立っている町。熱海みたいなもんでしょうか。摂氏50度以上の温泉が毎分9700リットルも湧き出す巨大な湯池を囲むように公園が整備されていて、州営の無料公衆浴場(露天風呂つき)も一年を通して開いている。ちなみにワイオミングにはもう一ヶ所、サラトガに公営無料温泉があって、こちらは無料の上に24時間オープンなので、温泉マニアはチェックしておきたい州かもしれない。
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Back in the ROADSIDE USA 99 The Nelson Museum of the West, Cheyenne / Stagecoach Museum, Lusk, WY
先週に続いてワイオミング州のオールドウェスト・スポットをご紹介。シャイアンといえば自動的に思い出すのが西部劇だ。開拓時代のカウボーイ・タウンの賑わいと、牛成金たちの華麗なライフスタイルの余韻が、いまだ町のあちこちに残っている。歴史的建築物が並ぶダウンタウンの一角にあるのがネルソン・ミュージアム・オヴ・ザ・ウェスト。弁護士であり、熱心な狩猟家でもあったロバート・ネルソンのコレクションを一同に展示した、その名のとおり西部劇の世界を実物で味わえる、ウェスタン・ファンにはたまらないミュージアムだ。
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Back in the ROADSIDE USA 100 Devil's Rope Museum, McLean, TX
いにしえのルート66沿いに残る、ロードムーヴィーそのままのように美しく寂れた町、テキサス州マクリーン。5分も走らないうちに通りすぎてしまうようなサイズだが、町の中央に小さいながらユニークな博物館がある。『デヴィルズロープ・ミュージアム』は、入口にモニュメントのように飾られた巨大な「鉄条網の球」が目印。デヴィルズロープとは、鉄条網の別名なのだ。開拓時代、牧場主とカウボーイたちにとって、鉄条網は非常に大事なものだった。この博物館には、アメリカ南部、西部の開拓と運命をともに歩んできた鉄条網が、およそ2,000種類も展示されていて、鉄条網ファンにはたまらない〈そんなひと、いるのだろうか)。
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シカクたけしげの「ZINE世界紀行」第1回ZINEDAY TAIPEIレポート編(写真・文:たけしげみゆき)
初めて知ったころは梅田に近い中津商店街にあった小さなお店が、さらに下町感覚満載の此花区梅香に移転して、いまや大阪ミニコミ・リトルプレスの聖地として君臨する「シカク」。店長のたけしげみゆきさんが、台北のインディーズ出版シーンを案内する短期集中特別連載! さあ、どこに連れてってくれるんでしょう。
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シカクたけしげの「ZINE世界紀行」第2回 中山イケてるショップ巡り編(写真・文:たけしげみゆき)
【前回までのあらすじ】大阪でインディーズ出版物のセレクトショップ「シカク」を営む筆者たけしげ。イベント出店のために訪れた台北で、自分の店と同じようにインディーズの本(ZINE)やCDを扱うショップを巡ることに。台北の最先端カルチャーシーンは一体どんなことになっているのか!?
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シカクたけしげの「ZINE世界紀行」第3回 ディープな店が潜む台電大楼編(写真・文:たけしげみゆき)
【前回までのあらすじ】大阪でインディーズ出版物のセレクトショップ「シカク」を営む筆者たけしげ。出張で訪れた台北の中山エリアで洗練された独立系カルチャーショップ巡りを満喫した。が、台北には実はもっとドープな店がある!私は目の肥えた本メルマガ読者のために、「台電大楼駅」へと向かう電車に飛び乗った……
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赤線酒場×ヤミ市酒場 ~盛り場のROADSIDERS~ 第6回 岩手県・盛岡市(文・写真:渡辺豪+フリート横田)
酒場には、過去の記憶が閉じ込められている。遊廓家・渡辺豪と路地徘徊家・フリート横田が、かつての赤線とヤミ市で呑み、過去から湧いてきた言の葉の海に身を沈める。第6回は、初の東北地方。戦災を免れた遊廓、あるいは大陸からの引揚者が創ったソウルフード、国鉄時代の飲み屋街の残っていると聞きつけた2人は矢も盾もたまらず、春まだ浅い東北・岩手県盛岡市へ。 (3月下旬某日)
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Back in the ROADSIDE USA 104 Madonna Inn, San Luis Obispo, CA
LAからサンフランシスコを通ってオレゴンへと、北に伸びるハイウェイ101。旅行通は海沿いに絶景が続く1号線=パシフィック・コースト・ハイウェイを好みがちだが、お笑い名所は単調な風景の101号線のほうに集中している。LAとサンフランシスコとの、ちょうど中間にあるのがサンルイス・オビスポ。小さな観光港町だが、ハイウェイ沿いにある『マドンナ・イン』は、全米屈指の有名ホテル。と言っても歴史や格調ではなくて、キッチュを極めたラブリー・インテリアで、「アメリカ人が行ってみたいハネムーン・スポット・ナンバーワン」に輝いているのだ。とにかくピンク一色に固められた建物の、レストランからバーから、全室異なった内装のゲストルームにいたるまで、その極甘テイストには、理性も感性もメロメロ必至である。
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案山子X 57:里山&桃太郎かかしコンクール(愛知)(写真・文:上迫愛)
こんにちは。上迫愛です。今回は愛知県犬山市桃太郎公園の里山&桃太郎かかしコンクールを紹介します。 犬山市は愛知県の最北端に位置し、江戸時代には犬山城の城下町として発展しました。犬山城の天守は国宝指定されており、歴史的な建造物も多く「尾張の小京都」と呼ばれています。犬山市の木曽川沿いにある桃太郎公園では、毎年秋に「里山&桃太郎かかしコンクール」が開催されます。桜の名所としても知られる公園の敷地内には、子宝や子供の健康を願う桃太郎神社、昭和の雰囲気が残る土産物屋や飲食店があります。
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Back in the ROADSIDE USA 107 Dinosaur World, Beaver, AR
ダイナソー・ワールドを開いたのはオラ・ファーウェルという霊能者。もともと「世界最大のマッカーサー将軍像」(アーカンソー州出身)をぶち立てて観光客を集めようと思ったが、当局が難色を示したため、「世界最大のキングコング」に変更。コングのまわりに恐竜を配置して、コング・ランドに仕立てたというわけだ。キングコングって、恐竜の時代にいたんだっけ?などと野暮な疑問は胸にしまっておいて、広々とした敷地に点在する恐竜像を車窓から観察してみよう。ま、科学博物館みたいに正確じゃないかもしれないが、なんともユニークな彩色と表情は、それなりに可愛かったりする。
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案山子X 58:奥富かかし祭り(埼玉)(写真・文:上迫愛)
こんにちは。上迫愛です。埼玉県狭山市下奥富の奥富かかし祭りを紹介します。埼玉県の南西部に位置する狭山市。日本三大銘茶の一つと言われる「狭山茶」が有名です。新狭山駅から徒歩20分ほどの場所にある下奥富では、毎年10月下旬から11月上旬にかけて「奥富かかし祭」が開催されます。市内に唯一残る田園を活かして交流の場を作り町を盛り上げようと、1988年に始まった祭です。
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Back in the ROADSIDE USA 108 Josephine Tussaud Wax Museum, Hot Springs, AR
ロウ人形館ができるとその観光地は、なぜか2段階ぐらい、ぐっと品が落ちてダメな感じになる。アーカンソー州南西部のホットスプリングスは、百年以上前からにぎわう老舗観光地。エレガントなバスハウスが湯煙に霞む光景は、アメリカの熱海と呼びたい非現実感が漂う。温泉といえば「飲む、打つ、買う」というわけで、ホットスプリングスはかつて名だたるギャングたちが闊歩する、スリリングな土地でもあった。禁酒法時代にアル・カポネが本拠にしたのもここ。往時の残り香をとどめるアナクロ観光スポットが、いまでも街には生き延びている。そしてホットスプリングスにも、やっぱりロウ人形館があった。それもジョセフィン・タッソーなどという、いかにも正統派のロウ人形館らしい名前の。
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日本性祭紀行4 鹿島神社の「へいさんぼう」(写真・文:深沢佳那子)
男根崇拝の祭りが開催される目的は様々であるが、その中で圧倒的に多いのが「五穀豊穣」を願う祭りである。妊娠によって膨らむ腹を稲穂の実りに重ね合わせ、男根の持つ生殖能力を田畑に授かろうという考えによるものだ。かすみがうら市牛渡地区の鹿島神社では、そういった男根によって豊作を願う御田植え神事「へいさんぼう」が毎年5月5日に行われている。このへいさんぼうは田植えの一連の流れを儀式的になぞることで豊穣を祈る、「田遊び」「御田祭り」「御田植祭」などと呼ばれる祭りのひとつだ。
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日本性祭紀行5 福井県美浜町の八朔祭り(写真・文:深沢佳那子)
八朔、というのは旧暦の8月1日のことを言う。現在では9月1日に当てられることが多く、「八朔祭り」という名の祭りは全国で開催されている。この祭りは主に稲の豊作を祈る豊穣儀礼として、稲刈りの直前であるこの時期に行われるものだ。また台風の多い時期であることから、稲にとって強敵である風よけの祭りとしても機能しているらしい。全国で行われる八朔祭りはそれぞれ様々な特徴を持つが、福井県三方郡美浜町の八朔祭りは「福井一エッチな祭り」という誘い文句で町の観光HPが大々的に宣伝している。一応伝統的な祭りなのにエッチな祭りなどという文言は少々いかがなものか…?とも思うが、なんでも男根を持った天狗が追いかけてくる祭りだという。
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ディープ・コリアふたたび 23 密陽~慶州(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
駅前はありがちなちんまりとした整備のされた清潔風なたたずまいで、それに合わせるかのように新しめの雑居ビルなどが立ち並んでいる。釜谷からここ、密陽に来るのに駅近くで大きな河を渡って来たので、この町が河の両側に広がっているのであろうとは想像がつくが、鉄道の駅周辺もそれなりに人々が行きかっていて、かつてのような“おきざりにされた鉄道駅”の風景はない。暑い。大韓にしては湿気もある。気がつけばこの日、午後4時ごろであるのに、コーヒーを飲んでいなかった。駅前周辺にコーヒーショップが、あることはあるが、薄暗い店内がのぞけて、少々入るのがためらわれた。鉄道と平行に走るバス通りに出て探すことにした。5分ほど歩いて一軒見つかった。扉を開けると店内にはおばあさんから高校生らしい一団などまで、女性しか見あたらず、しかもほぼ満員だった。かき氷やアイスクリームが目に入った。こんな日にホット・コーヒーなど飲んでいる人間はいない。
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ディープ・コリアふたたび 24 慶州(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
寺の本堂にキーボードが置いてあるのを、25年ほど前に見かけたことがあった。それも何回か。中にはエレクトーンのような結構高価で立派なものがどんと設置されているところもあった。それはたとえば教会におけるオルガンを連想させた。「このキーボードは何に使うの?」「みんなで歌を歌うときの伴奏に使います」それだけか? そんなことのためだけにこんな立派なものを本堂に置くのか?と、そのときは思った。しかし、そもそも仏教で歌を歌うってどういうことなんだ。という疑問も湧いた。大韓の友人に問うと、お坊さんや信者の人たちで歌う会があるのです、という。お寺で歌の会をやっている。それはめずらしいことではない。どういう歌を歌うのかというと、仏教の歌だという。仏教にも賛美歌のようなものがあるらしい。
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ディープ・コリアふたたび25 慶州~蔚山(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
仏具屋を探せ。慶州2日目の我々のミッションのひとつがそれだった。仏心歌謡をさらに探りたいという一心だ。駅に戻る途中で一軒発見。若い女性が店番をしている。入っていくと、尼僧が一人いた。前日の老夫婦の店よりも店の奥が広く、品物も多い。それでいて小ざっぱり感がある。古いカセットはほとんどなく、CDが多めにある。風景や植物の写真をジャケットにした作品が多い。いわゆるヒーリング系とおぼしきものが多々見うけられる。あるいはニューエイジ系のものとか。仏心を伝えようとする若者デュオとかアイドル然としたジャケのものもある。若手の仏心ものである。僧でない人たちの作品もこうして仏具と一緒に売られている。あきらかにニューエイジ・ミュージック系のものも少なくない。この店には仏心はあるが、“歌謡”がなかった。むしろこのような“仏心ミュージック”のほうが現状主流というか裾野をひろげているものと考えられる。
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案山子X 61:榊原温泉秋の収穫祭 かかしコンテスト(三重)(写真・文:上田愛)
こんにちは。上田愛です。今回は三重県津市榊原町の「榊原温泉秋の収穫祭 かかしコンテスト」を紹介します。美肌の湯として知られる、三重県津市榊原町の榊原温泉。古くは「七栗の湯」と呼ばれ、清少納言の枕草子で三名泉の一つとしてうたわれた、歴史のある温泉です。榊原町では、毎年11月に「榊原温泉秋の収穫祭 かかしコンテスト」が開催されます。榊原町は米作りが盛んで、赤紫色の穂が実る古代米も栽培しています。2007年に古代米の収穫を祝おうと、秋の収穫祭が始まりました。米の収穫を祝うという事でかかしを制作し、翌年からかかしコンテストが始まりました。コンテストが始まった頃は竹を組んで作る昔ながらのかかしが多かったのですが、徐々にリアルなかかしや世相を反映したかかしに変わっていったそうです。
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案山子X 62:下吉田フルーツ街道案山子祭り(埼玉) (写真・文:上田愛)
こんにちは。上田愛です。今回は埼玉県秩父市の下吉田フルーツ街道案山子祭りを紹介します。埼玉県の北西部に位置する秩父市。山々に囲まれた自然豊かな地域です。標高1102mに鎮座する三峯神社や、真冬に見られる三十槌の氷柱(今年は暖冬で氷柱の状況が良くないのだそう)が有名です。秩父市の下吉田地区には、いちご・ブルーベリー・ぶどうの観光農園が並ぶ「フルーツ街道」があります。毎年7月下旬から9月下旬にかけて「下吉田フルーツ街道案山子祭り」が開催され、約3kmの街道沿いに世相を反映したかかしが立ち並びます。フルーツ街道に来るお客さんを楽しませようと、地域振興課と農協が共同で企画したかかし祭です。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 特別編:蘇州一席 (写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)軟体トラベラーの関上武司です。今回は当連載の特別編ということで、昨年10月に江蘇省蘇州市で開催されたイベントで中国遊園地について語ることになりました。 2019年9月。この月は本業以外のスペシャルミッションでかなりストレスフルでした。神経を使う作業が連日続き、1週間ぶりにメールを確認したところ、中国の「一席」というグループからイベントの招待というメールが届いていました。こ、これは・・・・・・。1週間も返信しなかった無礼をお詫びするメールを先方へ送りました。しかも一席に私を紹介したのは都築編集長ということで、イベントで使う写真の選択やトーク内容の中国語の文章を気合いを入れて作成。一席の担当者の楽さんとは1回、スカイプでやりとり。こちらの中国語が特に問題ないことを認識してもらってから、軟体技を披露。とんでもないものを見てしまったという反応でしたが、あちらにカメラがついてなかったので表情までは確認できなかったのが残念でした。 2019年10月25日の金曜日。私の本業は技術職のサラリーマンなので、有給を使って中国へ。
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案山子X 63:新庄かかし祭り(山形)(写真・文:上田愛)
こんにちは。上田愛です。今回は山形県新庄市の「新庄かかし祭り」を紹介します。山形県の北東に位置する新庄市。山形新幹線の終着駅である新庄駅があり、福島駅から青森駅を結ぶ奥羽本線、余目駅までを結ぶ陸羽西線、宮城県の小牛田駅までを結ぶ陸羽東線の3路線も乗り入れています。雪深い地域であり、雪に関する情報や歴史を展示する「雪の里情報館」や、雪崩などの雪氷災害を研究している「雪氷防災研究センター(新庄雪氷環境実験所)」があります。また、8月24日~26日の3日間開催される新庄まつりが有名で、豪華絢爛な山車行列を見ようと毎年多くの観光客が訪れます。2017年8月に、エコロジーガーデン・原蚕の杜で開催された「第15回 新庄かかし祭り」に行きました。
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日本性祭紀行8 三重県美杉町の「牛蒡祭り」 (写真・文:深沢佳那子)
牛蒡祭りは三重県の美杉町という山間部で行われている祭りで、「牛蒡祭り」と書いて「ゴンボ祭り」と読む。その名の通り主役は牛蒡であり、祭り当日は山椒味と唐辛子味の味噌で和えられた牛蒡が神前に供えられるのと同時に大量に頒布され、それを求めて多くの人が訪れる。なんでも牛蒡は精力がつく野菜だからという理由らしいが、その祭りの歴史は古く1598年より伝わるという。更に三重県の無形民俗文化財にも指定されており、その民俗学的価値は折り紙付きだ。そんな由緒正しい牛蒡の祭りであるゴンボ祭りだが、噂によると祭りのクライマックスになぜか男根と女陰を模した神輿が出るらしい。牛蒡と性器の関連性について探るべく、車で7時間以上かけて美杉町へ行くこととした。
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案山子X 64:おぐにかかしまつり(新潟)(写真・文:上田愛)
こんにちは。上田愛です。今回は新潟県長岡市小国町のおぐにかかしまつりを紹介します。周囲を山に囲まれた盆地・小国町。田園風景が広がる、コシヒカリの栽培が盛んな地域です。古くからの伝統を大事にしており、雪を利用して作る和紙「小国紙」や、翁と巫女の人形が踊る民俗芸能「巫女爺踊り」は、新潟県の文化財に指定されています。桜の名所として知られるおぐにせせらぎ公園では、毎年8月に「おぐにかかしまつり」が開催されています。元々は楢沢地域の方がかかしを作り、おぐに森林公園の中に設置したのが始まり。そのかかしが評判となり、おぐにせせらぎ公園に場所を変え、観光協会が主催する町の行事になりました。
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おもしろうてやがてかなしき済州島紀行7 映画と恐竜と国際平和
山下達郎の「棚からひとつかみ」ではないけれど、10年前に取材したものの、発表する機会がなかった珍スポット開陳シリーズ、済州島オマケ誌上旅行の第2回は、映画と恐竜と国際平和にご案内。3ヶ所とも現在まで営業中なので、コロナが終息したぜひ早めの来島を!
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日本性祭紀行9 新潟県長岡市の「ほだれ祭り」(写真・文:深沢佳那子)
新潟県長岡市(かつての栃尾市)下来伝地区で毎年三月第二日曜日に開催されるほだれ祭りでは、長さ2.2m、重さ600kgという数ある男根祭りの中でも特大級の男根神輿が担がれるという。そしてその上には初嫁さん、つまり新婚のお嫁さんが乗ることができる。夫婦円満や子宝を願う新婚の女性が参加することの出来る男根祭りは全国にいくつかあるが、今回はその中でも特に華やかなこの祭りを紹介しよう。現在は長岡市となったこの下来伝(しもらいでん)であるが、地元の多くの人はかつての地名「栃尾」を呼称としている。祭りが行われる広場には祠があり、そこに祀られるご神体が前述の巨大男根だ。
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ブイの町
ようやく外出規制緩和とはいえ、まだまだ気楽に遠くまで行けない日々。うずうずする気持ちをおさえるのが難しいけれど、もう少しだけ待つあいだに、これまでメルマガに未収だった小さな旅の記録をいくつか見てもらうことにした。2年ほど前、BOROの撮影ロケハンで、津軽半島を回ったことがあった。青森市で会った地元テレビ局のひとに、「BOROが似合いそうな寂しい風景を探してて」と話したら、「そんなのいっぱいありすぎて!」と言われ、それもそうだなとひたすらドライブ。陸奥湾に沿って伸びる国道280号(青森市から津軽海峡を渡って北海道函館市に至る)を走っていると、突然シュールなSF映画のセットに飛び込んだような、不思議な光景が広がった。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 17 浙江省前編 (写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)軟体トラベラーの関上武司です。今回は浙江省の諸葛八卦村やパリの街並みを巨大なスケールで再現したニュータウンを紹介したいと思います。 2014年1月1日。この日は安徽省の蕪湖市からバスで移動し、夜になって浙江省の杭州市北部のバスターミナルに到着。速8酒店というホテルで宿泊することにしました。
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渋谷の新恥部
こっぱずかしい、という言葉はもうほとんど使わなくなってしまったけれど、久しぶりに「こっぱずかしい~~」のひと言とともに脳がフリーズしてしまったのが、友人から教えてもらった渋谷ミヤシタパーク「渋谷横丁」内に今月オープンした「純喫茶&スナック 思ひ出」だった。 「いまスナック流行ってるよね」「昭和の純喫茶もよくね?」「じゃあそれ一緒にしちゃえば。新丸ビルの来夢来人も受けてるみたいだし」なんてクズ企画会議の様子が手に取るように・・・・・・笑 ちかごろ、さすがにこれほど安易・安直にして愛にもリスペクトにも欠けた、やっつけプロジェクトがあったろうか。
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新連載! 25年目の珍日本紀行 群馬編1 アダルト保育園
『珍日本紀行』から四半世紀が過ぎたと気づいて、ひとりで遠い目になった。 もともと1993年から98年まで週刊SPA!誌に連載したあと、写真集ができてもしつこく取材を続け、2000年に出版した東日本・西日本編の筑摩文庫版では計341件の「路傍の奇跡」を網羅している。インターネットの珍スポットまとめサイトどころか、ネット自体がほぼ存在せず、携帯電話もアナログでキャリアごとに通話エリアが限られ使い物にならず、カーナビもなく・・・・・・『るるぶ』の地図と方位計だけを頼りに、トランクにありったけのカメラとフィルムを積んで日本全国を走り回った日々。あのころの憑かれたような気持ちがいまでは懐かしいが、あれから20年以上経ったいま、もうなくなってしまったスポット、かろうじて生き延びているスポット、意外にもグレードアップしているスポット・・・・・・さまざまな運命のいたずらに翻弄された懐かしの場所を、あらためて訪ね歩きたくなってきた。新型コロナウィルスでもう半年近くも東京に閉じ込められているせいだろうか。それとも死を目前にした珍スポットに呼ばれているのだろうか。 かつて訪ね歩いた取材地を再訪しながら、『珍日本紀行』以降に生まれた場所や、新たな発見を盛り込みながら、これからなるべく頻繁に記事をアップしていきたい。いろいろ気をつけながら、久しぶりにドライブして回ったのは群馬県。猛暑の上州路で出会った新旧の珍日本を、数回にわけてご紹介する!
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お城のあとは裸の大将と温泉で!
作家と作品のギャップに驚くことは珍しくないけれど、それにしてもこれほど!とだれもが驚く筆頭格が吉岡里奈。ご存じ昭和のお色気宇宙を描いて、いま人気沸騰中のアーティストである。 その吉岡さんの、毎年恒例となった吉原カストリ書房での個展が10月31日からスタートする。前回は「民芸と風俗」という意表を突いたテーマだったが、今回はなんと「かつての繁華街や温泉場の路地裏でこっそり売買された怪しい茶封筒エロ写真」! 茶封筒エロ写真って・・・・・・僕ですらリアルタイムでは知らない、戦後場末風俗のあだ花なのに。もちろん、吉岡さんのお色気ムードには完璧にフィットしているけれど、それにしてもどうしてこんなに渋いテーマを選んだんだろう。さっそくお話を聞いてみた――。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 20 四川省前編 (写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)。中国に1年以上渡航できなくて、うずうずしている軟体トラベラーの関上武司です。今回で当連載も20回目になり、中国で個人的に強烈なインパクトだった四川省の東方佛都という観光施設と、国色天郷楽園というテーマパークのレポートをお届けします。 2012年8月11日。中部国際空港からの飛行機で夜に四川省の成都へ到着。ホテルの予約をしていなかったので、深夜になってようやく宿泊するホテルを決めて睡眠。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 05 静岡県1
珍スポットがありがちな場所というのは、ないようで、実はある。大都市には経済効率の面で存在が難しいけれど、あまりにも田舎、秘境と呼ばれるようなところは、見物客がいないからこれも存在しにくい。経験的にいちばん魚影が濃い、というか集まりがちなのは大都市からちょっと離れた遊び場所。それもなぜか半島がイイ。大阪や名古屋の人間が遊びに行く紀伊半島。首都圏だったら伊豆半島は昔も今も珍スポットの宝庫なのだ。
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ParadiseLost二度と行けない珍日本紀行 06 静岡県2
港を見おろす高台に、宇宙に届く城が立つ――下田駅を降りてすぐ、山の中腹にそびえる下田城は、珍スポット・ファンにおなじみだっただけでなく、UFOを呼ぶ儀式を定期的に開催していたことでもマニアによく知られていた。城主の景山八郎さんは幼い頃から宇宙に関心を持ち、16歳にして天体望遠鏡を自作。20歳にして、当時日本最大のロケットを建造。その後もガガーリンやユリ・ゲラーと面会するなど、宇宙への興味は留まることをしらず、バブル崩壊後、地元建築会社が建てた下田城を購入。美術館として運営するとともに、広場に巨大隕石を祀り、若山富三郎の「夢芝居」をBGMに、UFOを呼ぶ儀式を定期的に行っていた。 現在も東京・新宿にある宇宙村支部に常駐されているが、下田城(正式には下田城美術館」は残念ながら建物の老朽化に伴い2008年11月に休館。いまも城を仰ぎ見ることはできるが、内部の観覧はできないようである。
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ParadiseLost 二度と行けない珍日本紀行 07 静岡県3
駿河湾に突き出した三保は「三保の松原」で有名。ここには東海大学が運営する海洋科学博物館(もと水族館)、自然史博物館(もと恐竜館)があるが、かつては海洋科学博物館、人体博物館、三保文化ランド、自然史博物館の4館にプールまでを有する「三保文化ランド」という広大な教育観光施設群であった。 珍スポット・マニアにも愛されてきた人体博物館は1973年オープン。「口から入ってミクロの世界」をテーマにして、人体内部をめぐることによってからだのことを学んでもらおうという、当時としては画期的な体験型展示に、これも時代をやや先取りした生殖コーナーまで設けられていた。しかし開館から30年近く、ほとんどアップデートされないままに老朽化し、2000年10月30日に閉館となった。
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ParadiseLost 二度と行けない珍日本紀行 09 静岡県5
お客さん泊まってよ! 宿場町の活気がいま甦る――『東海道由比宿 おもしろ宿場館』は、江戸時代の宿場にタイムスリップした気分にさせてくれる」観光施設。由比本陣跡のすぐ脇にあり、2階には駿河湾を一望できる名物の桜エビ料理専門レストラン「パノラマテラス 海の庭(テラス)」が人気。レストランのついでに寄った観光客を、たくさんのユーモラスな人形が迎えてくれる意外な人気スポットだった。人形は由比出身の画家・松永宝蔵氏のデザインによるものだった(松永氏は幕末に山岡鉄舟をかくまい地下から逃がしたという、歴史の舞台となった茶屋のご主人、平成12年に逝去された)。残念ながらおもしろ宿場再現が閉館したのちも、2階のレストランは営業を続けていたが、「桜えびの記録的な不漁により、令和元年5月5日に閉店」となったそう。
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ParadiseLost 二度と行けない珍日本紀行 10 山梨県1
なんと5回にわたった静岡編を終えて、今週からお送りする山梨編。山梨県には韮崎の「食堂アメリカヤ」、「光の楽園」という2大重要珍物件があったが、2019年8月7日号「アメリカヤの記憶」でたっぷり紹介しているので、そちらをご覧いただきたい。 あの上九一色村が、巨人と小人のおとぎの国に大変身!――富士山麓きっての珍スポット、というより閉園後の大型廃墟&心霊スポットとして、日本どころか海外のマニアにも知られてしまったのが「富士ガリバー王国」。1997年に開園、2001年には早くも閉園という、おそろしく短命なテーマパークだった。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 22 広東省前編 (写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)。この記事を執筆している際に長年、書籍を購入していたヴィレッジヴァンガードのイースト店が閉店。近年、私のお気に入りスポットの閉鎖、閉店が続き、非常に残念です。気を取り直して、今回から3回に渡って、発展著しい広東省から驚愕&脱力スポットのレポートをお届けします。
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ParadiseLost 二度と行けない珍日本紀行 12 愛知県1
ホルマリンに浮かぶ生命の神秘に驚愕――巨大男根をかついだ男たちや小ぶり男根を抱えた巫女たちが練り歩く田縣(たがた)神社の「へのこ祭」で、全国のお色気ファンに知られる愛知県小牧市の、もうひとつの珍名物だったのが・・・・・・秘宝館ではないものの、中部地方きってのビザールなコレクションで知られた「性態博物館」。会社経営者である石川武弘氏が開いた、「性器コレクションを通して動物と人間のいのちの尊さを学ぶ」(たぶん)学術的な目的を持った施設だったと思うが、なにしろその奇妙なセンスとテイストで、数多の珍スポット好きを喜ばせてきた。
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ParadiseLost 二度と行けない珍日本紀行 14 愛知県3
しゃち丸くんのお船に乗って、今日のデートはベイクルーズ――ある年代以上の名古屋市民ならだれもが知っている遊覧船「金鯱(きんしゃち)」号。名古屋港をめぐる遊覧船として1986年に初代金鯱が就航、1995年には2代目金鯱がデビュー。合計14年間にわたってギラギラの金色を名古屋湾に映していたが、2006年に遊覧船事業が終了、金のシャチは名古屋湾から姿を消してしまった。名古屋湾に面した工業地帯を30分以上、船上から眺めるという遊覧船体験は、「工場萌え」なんていう言葉が存在しなかった時代に、ちょっと早すぎる存在だったのかもしれない。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 16 愛知県5
ニッポン国イタリア村――名古屋市民なら、なんとなく記憶の片隅にあるかもしれない「名古屋港イタリア村」。2005年の愛知万博入場者を当て込んで急遽オープン、しかし3年間であえなく閉村……ということで、実は『珍日本紀行』出版のあとになってできた(そして消えた)短命観光施設である。当時、ANAの機内誌『翼の王国』の連載「ニッポン国世界村」で取材していたので、今週はその記録をご覧いただく。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 17 新潟県1
日本の裏玄関に花開いたロシア王朝の栄華――今週の「二度と行けない珍日本紀行」は、ある意味もっと「パラダイス・ロスト」な新潟県の2物件をまとめて紹介する。阿賀野市の「新潟ロシア村」、柏崎市の「柏崎トルコ文化村」。どちらもバブル末期の徒花B級観光スポットだ。新潟ロシア村は1993年に開園、珍日本紀行で取材に訪れたのは1996年だったが、2003年に閉園。柏崎トルコ文化村は1996年開園で、こちらは2004年に閉園し、市民公園として開放されていた2005年に週刊朝日で連載して単行本化された『バブルの肖像』で取り上げるために訪れている。「二度と行けない珍日本紀行」では今年2月10日号で山梨県上九一色村の「富士ガリバー王国」を紹介したが、ロシア村、トルコ村もガリバー王国とともに、乱脈融資で悪名を轟かせた新潟中央銀行頭取・大森龍太郎による無謀プロジェクトなのだった。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 22 兵庫2
数ある珍スポットのなかで、サイズ的には小ぶりながら妙にこころに残る場所というのがいくつかある。そのひとつが淡路島の「静の里」(しずのさと)公園だ。 バブル期に日本全国の弱小市町村を舞い上がらせた「ふるさと創生基金」によって、淡路島の津名町は1億円の金塊をゲット(購入でなくリースだったそうだが)。それを「見て触ってみよう!」という金塊見物館をつくってみたところ、全国各地から数百万人のお客さんが押し寄せ,予想外の大人気。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 27 大阪3 パンダからタヌキまで400体! 総額10億円! 盗まれないうちに岸和田へ急げ
『珍日本紀行』に関していちばんよく聞かれるのが「どうやって珍スポットを見つけたんですか?」という当然の質問で、クルマにありったけのカメラとフィルムを積んで日本中の下道を走り回っていた1990年代前半には、インターネットなんて便利なものは普及してなかったので、「珍スポ・ガイド」なんてホームページを見るわけにもいかず。それどころか携帯電話もアナログ時代でたいして役に立たず。結局、いちばん役に立ったのは電柱にくっついてる「純金大仏、あと5キロ!」なんていう看板だったし、あとは駅の観光案内所やホテルのフロント脇のパンフレット・コーナー。それに『るるぶ』で、これは全国すべての『るるぶ』を家に揃えていた。大阪・岸和田の東洋剥製博物館は、たしか『るるぶ』の小さな記事で見つけたと思うが、もう25年以上前のことなので、記憶が定かではない。 どちらにしろ、たいして期待もせずに道路地図を見ながら博物館を目指し(もちろんgoogle mapなんてなかったし、カーナビも出たばかりで手が届かなかった)、探し当てた建物はおよそ「博物館」という単語にはふさわしくない……ただの商店みたいな外観だったので、さらに期待値を落としつつ、恐る恐るガラス戸を開けてみると……いきなり岸和田のハッピを羽織ってだんじりを引くタヌキの剥製がお出迎え。うれしい驚きに頬が緩んだのを覚えている。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 28 京都1 笑って歩いて京の都で駅前世界旅行
長引くコロナ禍で大変なことになっている京都の観光業界。つねに高止まりだったホテルの宿泊費は軒並み半分以下になって、こちらはありがたいが。 ついさきごろ、6月30日には京都駅前にそびえる京都タワーの大浴場が、新型コロナウィルスで利用客激減のため営業終了というニュースが大きく報道された。かつては早朝から営業していた大浴場。夜行バスで京都駅に着いたエコノミー・トラベラーのオアシスだったのを、懐かしく思い出すひともいるのではないか。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 29 京都2 山下清の、というより芦屋雁之助の裸の大将記念館
1980年に第1回が放送され、1997年まで17年間にわたるロングランとなった『裸の大将放浪記』シリーズ(関西テレビ制作)。主人公の設定はもちろん山下清だが、主演は芦屋雁之助。実際の山下清の放浪人生とはずいぶん異なる人情ストーリーだった。 番組の人気にあやかって京都の土産物販売会社が、京福電鉄嵐山駅から北に約1キロ、嵯峨野にあった木造家屋を改装して1994年に開館したのが「裸の大将記念館」。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 30 京都3 涙なくして見られない、お嬢の世界にどっぷり浸る
涙なくして見られない、お嬢の世界にどっぷり浸る――前回の「裸の大将記念館」に続いて、嵐山観光エリアの栄枯盛衰を物語る「失われた観光スポット」が「美空ひばり館」。20世紀日本歌謡史最大の歌手であった美空ひばりの輝かしい業績を振り返る、「珍スポット」扱いにはあまりに畏れ多い記念館だった。美空ひばり館が開館したのは1994年。当時の嵐山では屈指の人気を誇り、初年度は12億円以上の売上高だったが、しだいに来館者数が落ち込み(ファンも高齢化してきたし)、2008年に「京都嵐山美空ひばり座」としてリニューアルオープン。しかし収入増加にはつながらず、2013年5月31日に残念ながら閉館。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 31 香川1 260体のロウ人形が演じる800年前の立体歴史絵巻
四国どころか日本最大級のロウ人形館だった高松平家物語歴史館が2019年3月24日で閉館というニュースが、多くの珍スポット・ファンと、日本に何人いるかわからないロウ人形ファンを震撼させたのは記憶に新しい。 全国各地に残存するロウ人形館のなかでは、かなりの集客があったと思っていたが……。ちなみに閉館の3月24日とは、1185年に壇ノ浦の合戦で平家が滅亡した、その日にあたる。まさしく盛者必衰、諸行無常……。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 33 香川3 小豆島に燃えるギリシャの火
昔は「二十四の瞳」とオリーブぐらいしか印象がなかった小豆島。いまや意識高い系のひとたちの移住先として、長野と並んで人気急上昇中だ。 その小豆島の名勝・寒霞渓に近い山中に1973(昭和48)年オープンしたのが「太陽の丘ピースパーク」だった。パーク内にはギリシャ風神殿が建てられ、アテネから運ばれた聖火がともされ、さらに芝生広場からは播磨灘を望む絶景も楽しめたが……2004年に残念ながら閉園。そのまま廃墟となって久しいようで、Googleの航空写真を見ても、建物がそのまま残っている。 まあ、いまでは瀬戸内芸術祭の舞台でもあるし、おしゃれなカフェやナチュラル系食堂もいっぱいあるしで、寒霞渓まで足をのばす観光客も減ってるだろうし……。しかし建物(神殿)はそのまま残っているので、芸術祭に参加するアーティストに甦らせてほしいものだ。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 35 徳島2 日本最大の喫茶で瀬戸の世紀末を満喫
徳島と香川を結ぶ瀬戸内海沿いの国道に面して、偉容を誇っていた「カフェ・ギャラリーレストラン・UZU珈(うずか)」。残念ながら2006年ごろに閉店してしまったようで、更地になったあと現在では太陽光発電施設になっている(このパターン、多い気が)。 あらためて調べてみると、「UZU珈」をつくったのは赤松健一さん。店のあった島県鳴門市北灘町大須字長浜から、県境を越えてすぐの香川県東かがわ市引田に昭和3年生まれ、農家の長男だった。しかし家業を継ぐことなく産経新聞大阪本社に就職。カメラマンとして働き始める。社には福田さんというやけに博学の先輩がいて、それが実はのちの司馬遼太郎であった。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 26 新疆ウイグル自治区中編 (写真・文:関上武司)
大家好(中国語で皆さん、こんにちは!)。最近は近所の古本屋で山田風太郎の忍法帖シリーズを大人買いしている軟体トラベラーの関上です。新疆ウイグル自治区で撮影していた際は、ほぼ毎日、長距離を移動していた記憶が…。今回はタシュクルガンからカシュガルにもどり、ウルムチを経由してトルファンへ到着したレポートをお届けいたします。 2015年8月12日、北京時間07:00頃起床。この日は忘れもしない、新疆ウイグル自治区地獄旅の開幕です。人間、時には己の尊厳を守るためにたった1人でも闘わなければいけない場面があります。などと大げさに書きましたが、下痢です。起床早々、腹痛でホテルの部屋のトイレに3回、かけこみました。マジで下痢する5秒前。前日に食べたピラフか羊肉串に問題があったのでしょうか? それでも、同じ部屋で寝ていた公務員の張さんからもらった梨を食べてから早朝のタシュクルガン撮影のため、歩き出します。タシュクルガンは広大な中国の西の果てといっても差し支えのない街で、07:00くらいでも星が見えるくらい真っ暗。07:30くらいになって、ようやく夜が明けようとしています(中国は最東端から最西端まで経度約60度の国土が広がるが、時差を設けず北京時間で統一しているため――編集部注)。前日に目撃した大きい犬3匹は道路の脇で眠っていました。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 37 北海道1 雪降る町のレコード・サンクチュアリ
レコードを買うようになってもう半世紀を越え、これまでずいぶんいろんなレコード屋のドアを開けてきたが、伝説的中古レコ屋「札幌リズム社」は国内有数の魔窟と呼んで差し支えないだろう。 ビルが建ち並ぶ札幌中心部にポツンと残る、崩れ掛けの木造住宅。触るだけで壊れそうなドア。一瞬で指が黒くなるほど汚れたビニール袋(買うと新しい袋に入れてくれる)。レコードにはすべて値札がついておらず、いちいち店主に聞くしかないというドキドキ感。しかも営業時間は気まぐれで、だいたい夕方にならないと開かない。気になったまま、ついに入店できずに終わった地元の音楽ファンもたくさんいたはずだ。
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博多の衛生博覧会
福岡の名所、ではもちろんないけれど、奇所として一部に名高い「不思議博物館」。本メルマガでは10年前の2012年10月24日号での特集以来のご縁であり、館長であるアーティスト/造形師の角孝政さんが天神の駅から徒歩1分という場所に開いた分館「喫茶/ギャラリー サナトリウム」も2015年07月01日号で紹介させてもらった。サナトリウムのほうも華やかな福岡市天神の街なかに隠されたブラックホールのようなおもむきで、マニアの憩いの場となっている。 そのサナトリウムで今月初めからスタートしているのが「福岡衛生博覧会」。衛生博覧会、という単語だけで反応してしまうかたも、メルマガ購読者のなかにはきっといらっしゃるかと。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 #04 ワット・スラケット วัดสระเกศ (写真・文:椋橋彩香)
2016年8月22日 昨日の初調査で疲れた身体に鞭を打ちつつ、この日向かったのはバンコクにあるワット・スラケット。 「黄金の山」の異名をもつ、黄金に輝く大きな仏塔が有名な寺院である。 頂上までのぼってみると、バンコクの街並みを一望できた。風が気持ちいい。長い階段はキツかったが、のぼる価値は十分にあると感じた。 しかし本来の目的は地獄なので、即下山した。常に頭の中は地獄でいっぱいなのである。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 #06 ワット・パークボー วัดปากบ่อ (写真・文:椋橋彩香)
2016年8月24日 この日はバンコクにある小さな寺院、ワット・パークボーへ向かう。 と、その前に。 ワット・パークボーへ行くにはBTS(スカイトレイン)オンヌット駅で下車するのだが、その一駅前にプラカノーンという駅がある。タイに詳しい人、とりわけホラー映画に詳しい人は、プラカノーンと聞けばすぐにピンと来るであろう。そう、タイの国民的幽霊譚『メー・ナーク・プラカノーン』の舞台である。 『メー・ナーク・プラカノーン』(別称『ナーン・ナーク』)は、口頭伝承をもとに生成された幽霊譚で、バンコクにあるマハーブット寺院が舞台とされる。その初出は100年以上も遡り、1912年には演劇化、1936年には映画化がなされた。特に映画はこれまでに少なくとも20本はリメイクされていて、タイのピー(おばけ)イメージの一端を担うものとなっている。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 #休獄日~シラパコーン大学 มหาวิทยาลัยศิลปากร (写真・文:椋橋彩香)
2016年8月26日 この日は3日ぶりの休獄日(地獄寺へ行かない日)。 私が下宿しているナコンパトム県には、タイを代表する美術大学・シラパコーン大学の別キャンパスがある。そこにタイ人の友達が通っているので会いに行くことになった。 シラパコーン大学は日本でいう東京藝術大学にあたるような大学で、美術分野ではタイ最高峰の大学である。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 #休獄日~ラーチャブリーとカンチャナブリー ราชบุรีาและกาญจนบุรี (写真・文:椋橋彩香)
2016年9月4日~5日 パタヤとサメット島を満喫し、3日ぶりにナコンパトム県の下宿先へ帰宅した。 久々に帰ってみるとどこか安心感があり、この家はすでに我が家となりつつあることに気づく。 翌朝、この日は家族で少し遠くまで出かけると聞き、私ももれなくついて行くことになった。 家族が言うには「タンブン(積徳する)」らしいのだが、詳細はよく聞き取れず。どうやら寺院の催し物に参加するみたいだった。 この「タンブン」は、タイにおいて欠かせない習慣のひとつである。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 31 天津市前編 (写真・文:関上武司)
大家好(中国語で皆さん、こんにちは!)。私の連載では基本的に一人で訪中した旅行記になっていますが、今回を合わせて3回に渡って、中国二人旅のレポートをお届けいたします。一緒に同行した斎藤君は私よりも10歳以上若いのですが、いたみわけ.com (itamiwake.com) という珍スポット系サイトの管理人でもあり、私自身のブログ開設の際には、アドバイスをもらっています。斎藤君とは愛知県周辺の珍スポットや廃墟を一緒に探索していたこともあり、「セッキーさん、今度、中国取材に同行させて下さいよ」と依頼されます。それにしても、初めての海外旅行が私の中国取材同行でいいのか?とちょっとだけ考えたものの、面白そうという理由で、斎藤君にはパスポートを取ってもらいました。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 # 16~17 ワット・カオソムポートとワット・チャイヤプームピタック วัดเขาสมโภชน์และวัดชัยภูมิพิทักษ์ (写真・文:椋橋彩香)
2016年9月7日~8日 この日向かったのは、宿泊しているナコンラーチャシーマー県の隣、ロッブリー県にあるワット・カオソムポート。本堂の壁画の一部に地獄が描かれているという情報を得ている。 ナコンラーチャシーマー県の中心部から、さっそくロッブリー県行きのロットゥー(乗り合いバン)へ乗り込む。隣県だし、今日の調査はそんなに時間はかからないだろうとふんだ。 ワット・カオソムポートは1937年に建立された寺院で、「カオ(=山)」の名前からもわかるように周囲を山々に囲まれている。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 # 18 ワット・トゥンセンティー วัดทุ่งเศรษฐี (写真・文:椋橋彩香)
2016年9月9日 この日向かったのは、宿泊地のナコンラーチャシーマー中心部から200km先にあるコーンケーン県の地獄寺。名前はワット・トゥンセンティー(ワット・トゥンセーティー/ワット・トゥンセッティーとも)。まずはナコンラーチャシーマーからコーンケーン行きのロットゥーに乗車。その後、20分くらいタクシーに乗り寺院前で下車した。この時点で朝の10時ごろ。有名寺院なので割とスムーズに到着できた。とはいえ決してアクセスのよい場所ではないのだが、前2か所の移動時間があまりにも長すぎたので距離感覚がバグってきている。 寺院に着くと、そこが有名観光地であることがすぐにわかった。 一般的なタイの寺院建築とは明らかに異なっている。敷地もかなり広そうだ。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 33 山東省前編 (写真・文:関上武司)
大家好(中国語で皆さん、こんにちは!)。中国二人旅レポート3回目ということで、山東省前編になります。予想以上に斎藤君が楽しんでもらえたスポットも紹介します! 2017年8月15日。前回、洛陽市のタクシードライバーから強烈な反日発言をくらいました。日本では8月15日は終戦記念日ですが、中国では日本が投降した日で、なぜかこの日に抗日撮影所へ行く予定……。一波乱ありそうな予感がしてきました。
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中華街を行ったり来たり 07 チャイナタウン、路地裏の美味しいもの紀行 後編 (文:アーバンのママ)
サワッディーカー! アーバンのママです。 いまわたしはウズベキスタンの首都タシケントから深夜便で仁川空港に早朝到着、ソウルに移動して仮眠を取ってからこの原稿を書いています(頭の中は原稿を書き終えたら近所のマンドゥ鍋の店に行くことでいっぱい)。 さて今回は朝ごはんハントにぴったりなローカル朝市、バンコク最古の喫茶店など、前回につづきチャイナタウン周辺の美味しいものをお届けします。 届け、胃袋に!
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地の橋、人の橋 ――イラン定住旅行記 06「最も深い夜を明るく照らすペルシャの儀式」 | 写真・文:ERIKO(定住旅行家・モデル)
古い歴史を持つイランには、イスラム国家となるはるか前からイスラムとは無縁の行事や儀式がある。長いペルシャの歴史をみれば容易に想像できるはずなのに、近年のイスラム国家という強烈なイメージがそれをかすめてしまう。 現在のイランでも昔からの慣わしは大事なものとして継承されていて、むしろイスラム教の催事よりも重要視されているのは意外なことの一つだった。3月21日の春分の日に行われるノールーズ(正月)と、12月22日に行われるヤールデー(冬至)は特に盛大に祝われる。双方ともゾロアスター教の流れを汲んだ儀式である。
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ユーラシア後ろ歩き 4 バラエティ豊かな出会い (写真・文:多田麻美)
その日の夕方、私は滞在したホテルのフロントで頼んでおいた車で、空港に向かった。来るときに迎えを頼んだ運転手に会えるのを期待していたが、現れたのは、例のロシア語の解るホテルのマネージャーだった。さすがに、予約をすっぽかした運転手に頼むのは気まずかったのかもしれない。 フライトは夜だったが、万全を期すために、私は早めにホテルを出た。都心の渋滞から逃れた車は、深まっていく夕闇の中を静かに走っていった。空が暗くなると明るさが際立つのは商店の看板だ。とくにコンビニの照明が明るくて目に留まる。
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ユーラシア後ろ歩き 6 幻想のハルビンからカシュガルへ (写真・文:多田麻美)
レーリヒについてあれこれ考えを巡らせた後、私の意識はふたたびハルビン行きの夜行列車に舞い戻った。思えば、北京からハルビンに向かう列車では、他にもじつにいろんな人たちと出会った。 その昔、中国の長距離列車は、とても賑やかだった。車内放送で流行歌が頻繁に流れていたし、「周囲へのサービス」とばかりに、勝手に持参のラジオのスイッチを入れて音楽を流す人もいた。人々のおしゃべりや持参した食べ物の分け合いも盛んだったので、私は勧めを断りきれず、いろいろな食べ物を賞味することになった。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 37 吉林省前編 (写真・文:関上武司)
大家好(中国語で皆さん、こんにちは!)。先日、愛知県岡崎市のわんわん動物園で犬活に励み、ブルドッグのゴンザレス君(名前がナイス!)と仲良くなれました。そういうわけで、今回も現地のワンコが登場、2日連続の反日発言に凹み、なぜか女性に親切にされるというわけのわからない展開になりました。 2016年5月3日。『中国遊園地大図鑑 北部編』の遊園地取材のため、黒竜江省ハルビン市から吉林省長春市へやってきました。まずは朝食です。ハルビンで食べていなかったのか、この日は長春駅構内のファーストフード店へ。屋号が「K.F.G 麦楽基」とあり、マクドナルド(麦当労)とKFC(肯徳基)と足して2で割った感じです(前回の麦肯基と似た展開でまたかよ!)。創業者の顔が全面に出ているのが中国の企業らしく、好事家の評価ポイントが高くなります。
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地の橋、人の橋[ウクライナ特別編] 06 日常の中に取り入れられたボランティア 写真・文:ERIKO(定住旅行家・モデル)
皆さんはボランティアと言うと、どんなイメージを持つだろう。日本では学校機関などでオーガナイズされることも多々あるし、日本人は往々にしてボランティアに積極的だとも感じるので、多くの人が一度は経験したことあるだろうと思う。私も成人してから何度か、知人の会社が催すビーチの清掃活動に参加したことがある。海岸のゴミをひたすら拾ったのだが、漁具から一般ごみ、どこかの国から流れ着いたゴミまであって、ゴミがそこに至るまでのいろんなストーリーを辿るような気分だった。何袋にもなったゴミを見て、どことなくいいことをしたような気持ちになったのを覚えている。ボランティアというと、誰かのために手助けをしたり、時間に余裕のある人が善意で行うようなイメージがあった。 目下、戦時中のウクライナでは、このボランティア活動が国民の生活の一部と化している。
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ユーラシア後ろ歩き 16 祈りの湖、ナムツォからバイカル湖へ (文・写真:多田麻美)
五体投地をする人々の姿、一心にラサへと進む無我の境地に触発され、ひとしきり祈りの形について思いを馳せているうちに、バスはダムシュンに着いた。ラサで出会ったおじさんが「当雄」と呼んでいた場所だ。 そこからナムツォまで車をチャーターすると、かなり高くつくので、私は翌日に定期バスが走ることを願いつつ、ダムシュンで宿をとった。 今はどうか分からないが、私が訪れた時のダムシュンの町は、舗装道路の両脇に一列に店が並んでいるだけで、とくに印象に残る建物などもなかった。ダムシュンを特徴づけているのは、町そのものより、周囲を囲む雄大な山々だった。それらは夏でも所々で雪をかぶっていた。 集落自体は日本の田舎と同じで、店の品ぞろえは少ないが物価は高く、ホテルの宿泊料もどこも高めだった。その一つに部屋をとると、テレビのチャンネルが2つしかないところまで、昔の日本の田舎を思い出させた。一つだけ大きく違ったのは、携帯の電波ばかりはきちんと届いたことだ。
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フィールドノオト 02 女木島(by 畠中勝)
大竹伸朗作品『女根』に音響を設置するため女木島へやってきた。自然環境が豊かな島で多くの植物が密生する。中でも島の所々でみられる巨大な椰子は、植物園でもお目にかかれないほどの存在感があった。『女根』を取り巻く環境を知るため、空き時間を見つけては、周辺を探索していった。
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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 14 撮る人(ケイタタ)
9日の日曜日は大阪オフ会でした。いやあ、濃かったです。翌日、もうへろへろで有給休暇とってしまいましたもの。とはいえ読者の方々の生な感想をいただき元気になりました。「ネタ切れにもめげずがんばってね」とのありがたいエール。というわけで、がんばっていきましょう。今回は『撮る人』です。
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フィールドノオト21 あきる野市(畠中勝)
都心から一時間ほど電車を乗り継ぐと、都内有数の水田地帯、秋留台地へたどり着く。田園風景は地方に浮かべるイメージのひとつだが、実際は、地方においても都市化の影に、こういった風景も珍しくなっている。田舎っぽい田舎、日本らしい日本、そういったイメージは、この国では歴史とともに様変わりしていく。水田は横田基地に近いため、低空飛行していく軍用機を五分おきに見た。静寂な夜の田んぼに地鳴りのように轟く重低音は、自然愛好家が聴き惚れる、心安らぐサウンドイメージとはほど遠いものがあるだろう。囀るものを掻き消す風景、異質なものによって作られていく未知の風景。これらはまぎれもない今の日本の風景であり、サウンドスケープでもある。
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隙ある風景 ROADSIDERS' remix 25(最終回)BEST 100(写真・文 ケイタタ)
今号は「BEST100」。今までの締めくくりとしてのテーマを選びました。連載が始まってちょうど1年。なんとかがんばってきたのですが、しばらく充電させてもらいます。まあ、ネタ切れですよ、ネタ切れ! もともと1年を目標で原稿を書いていました。目標が達成できたので満足です。またネタが集まれば投稿させていただきたいです。しかし! 『隙ある風景』ではない、また新たな切り口の新連載も準備中です。というわけでちょいとお待ちくださいね。それでは行ってみましょう『隙ある風景 BEST 100』
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フィールドノオト29 上海〜蘇州(録音、文、写真 畠中勝)
上海に外灘(ワイタン)という地区がある。名の由来は『外国人の河岸』と聞く。ゆるやかに上海を縦断する黄浦江、その西岸約1キロばかりの街のことだ。租界時代に作られた西洋式高層建築物は今もその姿を留めており、まるで欧州にある都市のひとつを、地表ごと運んできたかのような奇妙な世界観だ。ゴシック様式の大聖堂を始め、各国のメガバンク、軒並みには、レストラン、ホテル、ファッションブランドの旗艦店。『外国人の河岸』と呼ばれるように、ここだけを見ると、もはや中国文化はまるで感じられないアミューズメント感がある。杭州にパリに似せた広廈天都城という街があるが、活気を別とするならそれに近い印象だ。一軒のラウンジバーへ入ったが、欧米人、インド人、アラブ系の客で賑わい、知的な印象の中国人の店員以外には、黄色人種はほとんど見られなかった。
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案山子X 17:信政卓雄さん、君田かかしまつり、城田貞夫さん(広島)(写真・文:ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。 今回は広島県3本立てで、信政卓雄さんのかかし、君田かかしまつり、城田貞夫さんのかかしを紹介します。案山子家を名乗るようになっていろんな方からかかしについての情報をいただくのですが、一番情報を提供してくれるのが広島の実家に住む両親だったりします。今回も「三次をドライブしてたらかかしがいた。天気の良い日にかかしが立っているらしいよ。」と教えてくれたので、2014年10月の晴れた日に見に行ってきました。
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フィールドノオト37 大久保~下落合(録音・写真・文 畠中勝)
6月は肌寒い日が続いた。おかげで二日酔いの頭は、はっきりし、耳や目も冴えた。いつものようにアパート近くの公園でくつろいでいると、心地よい虫の羽音がすんなり耳に入ってくる。普段、スピーカーからばかり音を耳に入れているので、定位の広い自然環境の音像には心底ほっとさせられる。静かな公園ではあるが、やはりここはTOKYO、新宿。夜空に星がみえることは少ない。それでも晴れていれば、ひとつくらいは星をみつけることができる。じっくり眺めると、瞬いていることまで分かる。リズミカルな虫の羽音と星の瞬きは、どんな因果か、原始的なシンクロナイズがある。
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案山子X 24:中新田かかしまつり(神奈川)(写真・文 ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は神奈川県海老名市中新田の「中新田かかしまつり」を紹介します。JR海老名駅隣の厚木駅から徒歩5分ほどの場所に中新田コミュニティセンターという建物があり、その近くの田んぼで毎年9月に「中新田かかしまつり」が開催されています。1993年に始まったこのお祭りは、地域活性化と住民の親睦を深める為に中新田営農組合が中心となり始まりました。最初は有志でかかし作りを始めたのですが、回数を重ねて行くうちに参加者が増えていき、思い出作りにと地元の小学生や幼稚園児もかかし作りに参加する事になりました。2014年に訪れた際には田んぼの中のあぜ道に約50体のかかしが展示されていました。
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タナベ昭和館のこと
羽田から松山行きの飛行機に乗って、空港からバスでJR松山駅へ。そこから特急宇和海に乗って1時間ちょっと過ぎたころ、トンネルを抜けた先にいきなり海が広がる。また宇和島に来れたな、としみじみ思う。大竹伸朗くんのアトリエがあるので、宇和島には1年か2年にいちどは訪れるが、全国的に宇和島はどれくらい知られているのだろうか。「フェリーで行くんですか?」と、宇和島を島だと思ってるひとにも、これまでずいぶん会ってきた。人口9万人近い宇和島には「伊達十万石の城下町」というキャッチフレーズがついているが、例によって駅前商店街の疲弊ははなはだしい。
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案山子X 26:山田のかかしコンテスト(高知)(写真・文 ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は高知県香美市土佐山田町の山田のかかしコンテストを紹介します。香美市土佐山田町は高知県の中東部に位置し、伝統工芸品・土佐打刃物発祥の地として知られています。毎年10月中旬の土日に「刃物まつり」が開催され、土佐打刃物の展示即売会、無料刃物研ぎ、伝統工芸士による鍛造体験教室等が行なわれています。様々な出店やイベントも開催され、多くの来場者で賑わっています。この刃物まつりのイベントとして開催されているのが「山田のかかしコンテスト」。2014年に24回目を迎えました。土佐打刃物は包丁やナイフだけではなく農業に使う鎌や鍬等も作っている事から、農業のシンボルでもあるかかしのコンテストを開催する事になったそうです。
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ジワジワ来る関西奇行 06 高槻オール・ザット・ジャズ!(写真・文 吉村智樹)
東京にお住いの方が、もしなんらかの事情で大阪へ転居しなければならなくなったならば、僕は高槻市からスタートしてみることをお勧めする。というのも高槻市街は、関東の「住みたい街ランキング」で例年トップに輝く人気の「吉祥寺」にひじょうによく似ているからだ。東京の人が、良くも悪くも濃厚で香辛料たっぷりな大阪市内でいきなり暮らし始めてしまうと、ハマれば病みつきだが、そうでなければアレルギーを引き起こす可能性がある。そうならぬためにも吉祥寺に似た高槻市街でじょじょに身体を大阪に慣らし(これを“阪身浴”という)、次第にディープ&キッチュな大阪市内へと駒を進めてゆくのがよいかと思う。
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案山子X 31:深川かかしコンクール(東京)(写真・文:ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。いつも自然豊かな場所に佇む田舎のかかしばかりを紹介していますが、今回は都市のかかしを紹介します。今回ご紹介するのは、東京都江東区三好にある深川資料館通り商店街で毎年開催されている「深川かかしコンクール」。2015年に18回目を迎えました。東京メトロもしくは都営地下鉄の清澄白河駅から徒歩3分ほどの場所にある深川資料館通り商店街。現代美術館へと続く800メートル程の道中に約100店の店舗があります。近くには深川江戸資料館、清澄庭園、東京都現代美術館等があり、昔ながらの商店が多く残る街です。
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ジワジワ来る関西奇行 07 伝統工芸の街・京都西陣で出会った歌う畳職人(写真・文:吉村智樹)
再婚を機に大阪から京都へ移り住んで4年になる。しかし、いまだに僕は京都についてなにも知らない。ある日、僕はキッチンのダイニングテーブルで、ぱらぱらと週刊誌のページをめくっていた。ページがちょうど藤原紀香と片岡愛之助の入籍を伝える記事に留まったところで、妻がこう言った。妻「藤原紀香ってむかし、『西陣織会館』の着物ショーのバイトをやっとったんやで」
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案山子X 32 伊平屋かかし祭り(沖縄)(写真・文:ai7n)
今回紹介するのは沖縄県島尻郡伊平屋村のかかし祭りです。沖縄県の最北端に位置する有人の離島である伊平屋村。沖縄本島から約41km離れた場所にあり、田名、前泊、我喜屋、島尻、野甫の5つの集落からなる島です。古くからの伝統行事や伝説が数多く残り、エメラルドグリーンの海に囲まれた自然豊かな島です。伊平屋村はサトウキビ、米、もずくの生産が盛んで、沖縄では石垣島についで2番目の米の産地です。30~40年前は田んぼの中に種をまいて苗を育てており、苗が育つ迄害鳥に荒らされないように人やかかしが田んぼを見守っていました。かかし祭は毎年4月下旬から5月下旬に開催。2016年に5回目を迎え、210体のかかしが田名地区の田んぼや道路沿いに立ち並びました。
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Back in the ROADSIDE USA 03 Dinosaur Gardens, Ossineke
『Dinosaur Gardens(ダイナソー・ガーデンズ』=その名のとおり「恐竜庭園」。実はアメリカ各地で恐竜は昔から人気者で、たくさんの恐竜庭園がある。博物館が監修した学術的に信頼できるものから、正確さより楽しさのほうが先に立つインディーズ系まで、もうさまざま。僕としては当然ながら、インディーズ系のほうに興味が惹かれるわけで、東海岸から西海岸までオススメの「恐竜環境」がいろいろあるけれど、こちらオシネクの恐竜庭園も、その渋~いたたずまいでかなりの好感度。しかもこちらの恐竜庭園は、ポール・ドンケというひとりの恐竜好きが、1930年代から60年代までかかって造りあげた、生粋のインディーズ・ダイナソー・パークなのだ。
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Back in the ROADSIDE USA 03 Amargosa Opera House, Death Valley Junction
ネヴァダ州ラスヴェガスから北上すること約3時間、州境からほんの10キロかそこらカリフォルニアに入った荒野に、デスヴァレー・ジャンクションがある。住人はいまや20人以下、その独特な景観で名高いデスヴァレーへの入口にあたる、信号もない小さな集落だ。1980年代までは電話局も手差し交換機で、外部からはまず局に電話して、つないでもらわないとならなかったという。夏には気温50度を記録し、冬は雪が積もることも珍しくない過酷な気候の中を走っていくと、ジャンクションという名のとおり、373号線と190号線がまじわる交差点のすぐそばに、平屋建ての地味なモーテルが見つかるだろう。コの字型をした建物の北端に、ほかより少しだけ大ぶりな一角がある。近づいてみると、強い日差しに照らされた白壁に、「アマルゴサ・オペラハウス」と書かれている。オペラハウス! デスヴァレーに? アマルゴサ・オペラハウスは、たぶん世界でいちばん奇抜な場所にある、奇妙な、そして美しい誕生秘話に彩られた手作りのオペラハウスだ。
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Back in the ROADSIDE USA 05 Bible Walk, Morgantown
ジョン・デンヴァー最大のヒット『カントリー・ロード』の歌い出しは、「オーモスト・ヘヴン ウェストヴァージニア」だった。ウェストヴァージニアは州の8割が森林という、アメリカでも有数の自然に恵まれた州だ。愛称だって「マウンテン・ステート」だし。州丸ごとがアパラチア山脈に沿ったかたちになっているので、よく言えば美しく起伏に富んでいて、物流の厳しさから産業が発達しにくかった側面もある。ワシントンDCの西側に位置し、歴史的にはもともとヴァージニア州の一部だったのだが、南北戦争の際に合衆国から離脱を宣言して南軍側に加わったヴァージニアに反対した州西部の郡が、まとまって新しい州を作ったのがウェストヴァージニア。なのでおとなりヴァージニアとは、いまでも微妙に温度差があるような気もする。
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Back in the ROADSIDE USA 06 Mel Gould's Sculpture Garden, Cheyenne
ネイティブアメリカンの言葉で「大平原」を意味するというワイオミング。アメリカでいちばん人口の少ない州で、鳥取県とほぼ同じなのだとか・・・。ロッキー山脈に抱かれた雄大な風景は、イエローストーンやグランドティトンといった国立公園でも有名だ。そろそろ夕方、きょう泊まるモーテルを探しながら、州都シャイアンからネブラスカに抜ける州間高速80号線を走っていると、北側に突然現れた奇妙な屋外彫刻群。巨大な風車が名物の強風に勢いよく回っている横では、スプリング製の台座に乗った人形がぶらんぶらん揺れている。思わず次の出口で高速を降りて、脇道を戻ってみると「ビジターズ・ウェルカム」の心強いサイン。ほっとしてクルマを乗り入れると、いきなり元気いい犬3匹に飛びかかられ、そのあとから自家製ゴルフカートみたいな乗物にまたがったおやじが出てきた。
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Back in the ROADSIDE USA 08 Shenandoah Caverns, Shenandoah
「ヴァージニアで唯一エレベーターで降りていけて、階段の昇り降りがいらない」のが売りというシェナンドー・キャヴァーンズは、1922年から公開されている観光洞窟として老舗中の老舗である。そのシェナンドー洞窟の持主であるハーグローヴ社の本業が、実はパレード用のフロート製作。アメリカ人は、もしかしたら世界でいちばんパレード好きな人種かもしれないと思うのだが、野球チームの優勝パレード、フットボールのパレード、政党の大会のパレード、大統領就任式のパレード・・・ディズニーランドで毎日見られるようなパレードが、なにかにつけてはきょうもアメリカのどこかのメインストリートで、にぎやかに繰り広げられてるわけだ。パレードの華であるフロートは、日本語では山車となるんだろうが、そこはアメリカだけにサイズがスーパー。ひとつのフロートが、大きいもので長さ30m以上。だいたいどれも25mプールぐらいはあると言ったら、そのボリューム感を想像していただけるだろうか。
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Back in the ROADSIDE USA 09 The Buckhorn Saloon & Museum, San Antonio
州としてもアメリカ有数の大物、B級珍名所の数でもアメリカ有数であるのがテキサス。とにかく大きくて、たくさんあるのが大好きというお国柄なのはご存じのとおり。テキサス随一の観光名所、名高いアラモの戦いの舞台となった砦があるサンアントニオのダウンタウンに、なんともキッチュで楽しい寄り道スポットがある。『ザ・バックホーン・サルーン&ミュージアム』は創業1881年という、サンアントニオきっての歴史を誇る「居酒屋兼博物館」。アルバート・フリードリックなる人物が最初に年に店を開いたのだが、客集めのために「仕留めたシカの角を持ってきたら、ビールかウィスキーが1杯タダ!」と宣伝したところ、あれよというまにものすごい量の角が集まってしまった。
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Back in the ROADSIDE USA 10 Bedrock City, Custer
アメリカの地図のやや左上、つまり中北部にどっしり控えるノース&サウスダコタ両州。ノースダコタはアメリカにおける「ど田舎」の代名詞的存在だが、南半分のサウスダコタのほうは東端のスーフォールズ、西端のラピッドシティを中心に、けっこう見所が少なくない。それでも州の面積が全米で17番目なのに、人口は46番目と、すばらしくスカスカな土地ではあるのだが。ラピッドシティ周辺の西側には、全米屈指の観光スポットであるマウントラシュモア(あの大統領4人の顔が、岩山に彫ってあるやつ)をはじめ、バッドランズ国立公園など有名どころがひしめいてる。「白人の聖地」であるマウントラシュモアをいだく町カスターには、「ベッドロック・シティ」という楽しいレクリエーション・パークがある。名前でわかってしまうひともいるかと思うが、ここはあの『原始家族フリントストーン』をテーマにした観光スポットであり、キャンプ場でもある。
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Back in the ROADSIDE USA 12 UFO Museum & Research Center, Roswell
アラスカ、テキサス、カリフォルニア、モンタナに次いで全米5番目の広さを誇るニューメキシコは、北のコロラドから、リオグランデ河を挟んで南のメキシコまで、大ざっぱに言えば北から南に向かってなだらかに下っていく長方形の州。4000mを越える高山から砂漠まで、たいへん変化に富む自然が楽しめる。サンタフェやタオスで、土着のアドービ(土煉瓦)を使った建築を観賞したり、プエブロ、ナバホ、アパッチ族などの生活に触れたり、アウトドア・スポーツに挑戦したりと、いろんな遊び方があるわけだが、観光地だからこそ、ヘンなロードサイド・アトラクションも選り取りみどり。中でも「UFOで町おこし」をはかるロズウェルは、マニアにとっては聖地とも言える存在だ。
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Back in the ROADSIDE USA 13 The Oasis Bordello Museum, Wallace
東海岸のボストンから西海岸のシアトルまでをノンストップで結ぶ、90号線という州間高速道路がある。1990年代初めまで、このスーパーハイウェイにたったひとつだけ信号があった。アイダホ州ウォレスという鉱山町に。いまでこそ時代に取り残されてしまったような小さな町だが、ウォレスはかつて世界最大の銀山を擁する、活気に満ちた鉱山町だった。人口1万人以上、もちろんそのほとんどがヤマで働く男たちで、最盛期には男対女の割合が200対1に達したという。そこで、売春宿の登場となる。町の一角にかつては5軒の売春宿が並び、華やかなネオンサインを競っていたが、当然ながらいまは存在しない。とはいえ最後まで営業を続けていた『オアシス・ルーム』がその扉を閉じたのは、意外にも1988年のこと。つい最近ではないか。
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Back in the ROADSIDE USA 14 The Enchanted Highway, Regent, ND
ダコタ・・「ど田舎」の代名詞のように使われる単語である。アメリカの地図を広げてみてほしい。真ん中からちょっと西側の、いちばん北にあるふたつの大きな四角。それがノース・ダコタとサウス・ダコタだ。1889年にノースとサウスに分かれたダコタ。ノースのほうは日本の約半分という広い土地に、たった65万人しか住んでいない。200万頭いるという牛のほうが、ずっと多いくらい。そういう、はっきり言って見所の多くないノース・ダコタで、いまや特選名所となっているのが『エンチャンテッド・ハイウェイ』。日本語にすれば「魅惑の道」という感じだろうか。どこまでも広がる草原を突っ切って走る舗装路の、数キロおきに現れる巨大な彫刻群。それは馬にまたがるルーズベルト大統領であったり、ブリキの家族であったり、バッタであったり、モチーフはさまざまだが、どれも共通しているのはとてつもないサイズだということ。
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Back in the ROADSIDE USA 16 The Last Train to Nowhere, Solomon, AK
ようやく東京も本格的な冬模様なので、というわけではないけれど、今週と来週の2回は北の大地アラスカからお送りします!――ベーリング海に突き出たスワード半島にあるノーム。冬の最低気温がマイナス50度を超すこともあるという、準北極圏の小さな町だ。1893年、偶然ノームにたどり着いた3人のスウェーデン人によって金鉱が発見され、ノームはアラスカ屈指のゴールドラッシュの舞台になった。ジョン・ウェインの『アラスカ魂』にそのありさまが描かれているが、最盛期には人口が2万人にまでふくれあがり、酒場だけで100軒を越えていた。1911年までに採掘された金の量は、総額6000万ドルに達するという。
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Back in the ROADSIDE USA 16 Samovar Café, Nikolaevsk, AK
先週に続いてのアラスカは、奥地に隠れたロシア村。今年3月の連載『旅のあはれ』でも少しだけ触れたけれど、たくさんの写真とともにもういちどお楽しみいただきたい。ロシアの皇帝からアメリカがアラスカを購入したのが1867年。当時は「巨大な保冷庫を買っただけ」とバカにされたが、金鉱が発見されて結果的に史上最高のバーゲンセールとなったのはご存知のとおり。アラスカはたった150年ほど前までロシアの一部だったのだ。深い森の中にロシア人たちの隠れ里があると聞いて、行ってみることにした。アンカレッジから約370キロ、キーナイ半島の突端にあるホーマーという港町から、さらに20キロほど離れたニコラエフスク。「ロシアン・ヴィレッジ」と呼ばれるこの村は、ロシア正教徒のうちでも厳格な、いわば原理主義的な一派であるオールドビリーバーが移り住む場所である。
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ジワジワ来る関西奇行 10 奈良県吉野へ。尼僧アイドル「愛$菩薩」(あいどるぼさつ)に会いに行く(写真・文 吉村智樹)
今回は関西を拠点に活躍する、ひとりの異色アイドルを紹介したい。異色アイドルといっても、昨今よく採りあげられる「地下アイドル」とは違う。地下アイドルという言葉になぞらえるなら、彼女はむしろ正反対な、極楽のありかを歌う“天上アイドル”と言えるだろう。緑豊かな奈良県吉野の山あいに二十三代に渡って受け継がれる由緒あるお寺「西迎院」。こちらの女性副住職である中村祐華さん(34歳)には、実はもうひとつの顔がある。彼女は25歳で「愛$菩薩」(あいどるぼさつ)の名でデビューし活躍する本邦唯一の“現役尼僧アイドル”なのだ。
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Back in the ROADSIDE USA 18 Sioux Empire Medical Museum, Sioux Falls, SD
1803年ジェファーソン大統領は、欧州戦争での戦費調達に苦しんでいたナポレオンから、ミシシッピ河以西、ロッキー山脈にいたる134万平方キロの広大な植民地を、わずか1500万ドルで買い取った。世に名高い「ルイジアナ購入」である。これによってアメリカ合衆国の領土は一挙に倍増したわけだが、同時に「未知の地」だった内陸部を探査し、東と西海岸をつなぐルートを早急に確立する必要に迫られることになった。
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Back in the ROADSIDE USA 19 George S. Eccles Dinosaur Garden, Ogden, UT
迫害を受けたモルモン教徒たちが苦難の道程を経て、ユタ州に移民してきたのは1847年のこと。日本では江戸末期、黒船が現れる直前という時代で、それから現在まで、たった170年ほどしか経っていない。純白の大地が見渡すかぎり広がるグレート・ソルトレイクの奇観から、パークシティに代表される全米最良のスキーリゾート、南部の広大な国立公園群まで、これほどバラエティに富んだ自然を抱く州は、他に例を見ないだろう。農業、鉱業、それに航空・軍需産業が伝統的に盛んだったユタ州だが、いまや観光ビジネスがトップに躍り出る勢い。アメリカ屈指の人気観光スポットなのだ。
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Back in the ROADSIDE USA 25 Myrtle Beach National Wax Museum, Myrtle Beach, SC
先週のKKKミュージアムに続いて、サウスカロライナ州きってのビザール観光スポットをもうひとつご紹介。マートルビーチの『ナショナル・ワックス・ミュージアム』であります。サウスカロライナ最大、というより北部の大都市からフロリダにかけての東海岸で最大のビーチリゾートであるマートルビーチは、フロリダ州デイトナビーチと並んで、アメリカの大学生のスプリングブレイク(春休み)でも有名。スプリングブレイクはただの春休みではなくて、とにかく酒とナンパに明け暮れるクレイジー・バケーションとして映画などでもおなじみ。数十キロに及ぶ砂浜の海岸線に面して、ずらりとホテルやコンドミニアムが並ぶさまは、イーストコーストの熱海というか。ワイキキを10倍大きくして、100倍下品にした感じといえば、雰囲気がわかってもらえるだろうか。
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Back in the ROADSIDE USA 32 Sanfilippo Cress Funeral Service, Madison, WI
ウィスコンシンと聞いて「あー、あそこね」と、明確なイメージが浮かぶ人は少ないだろう。チーズの生産高が全米一位という酪農州で、ビールやソーセージも有名だし、アメリカン・フットボールではグリーンベイ・パッカーズがNFLのトップチームなのだが・・・。しかし! ウィスコンシンは実のところ、珍観光名所においては質・量ともに全米有数の豊富さを誇る、超実力州だ。なにしろウィスコンシンはエド・ゲインとジェフリー・ダーマーという、アメリカ最強の連続殺人鬼を生んだ州だし、自分の名前を「エルヴィス・プレスリー」にかえた人間がふたりもいる州でもある。1972年からずっと毎日、ビッグマックを食い続けている男がいる州でもある(すでに1万5000個を突破―2001年現在)。ハーレー・ダヴィッドソンとヘアー・ドライヤーを生み、マスタードとハンバーガーと天使と蜂蜜とチーズの殿堂がある州でもある。
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Back in the ROADSIDE USA 33 Cermak Plaza, Berwyn, IL
ミシガン湖を吹き抜ける強風から「ウインディシティ」の別名を持つシカゴについては、いくつでも記事ができそうだが、アート方面でよく知られているのが、全米三大美術館に数えられるシカゴ美術館・・もそうだけど、ここで紹介したいのが、シカゴ郊外のバーウィンにある、いささかくたびれた感じのショッピングモール。ショッピングモールと現代美術というのはかなり奇妙な組み合わせに聞こえるが、サーマック・プラザはおそらくシカゴでいちばん有名な屋外インスタレーション・アートが観賞できる現代美術ギャラリーでもある。
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Back in the ROADSIDE USA 38 Cadillac Ranch, Amarillo, TX
おそらくテキサスでいちばん有名な観光名所である『キャデラック・ランチ』は、かつてのルート66に並行して走るインターステート・ハイウェイ40号線の脇に、西を向いて陽を浴びている。地元の億万長者であり、現代美術のパトロンとしても名高いスタンリー・マーシュ3世が、サンフランシスコのアーティスト・グループ、アント・ファームをアマリロに招いたのが1974年のこと。所有する広大な麦畑を見せたところ、「風にそよぐ麦穂を見ているうちに、まずフィン(ひれ)が思い浮かんだ。たなびく麦の海にジャンプするイルカのひれを。それから自動車のフィンに連想が広がった」。
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Back in the ROADSIDE USA 41 Unclaimed Baggage Center, Scottsboro, AL
唐突だけど、ハードディスクがいつかはクラッシュするように、空港で預けた荷物はいつかなくなる日が来る・・・。飛行機は無事に着陸したけれど、いくら待っても荷物が出てこない・・ロスト・バゲッジの恐怖は、旅行慣れした人ならいちどは経験する悪夢だ。ほとんどの場合は当日か翌日に見つかるけれど、中には持主不明のまま空港の片隅に取り残される、哀れな荷物もある。そんなスーツケースやもろもろの携行品が、最後にたどり着くのがここ、アラバマ州北東部の小さな町スコッツボロにあるアンクレイムド・バゲッジ・センター(UBC)だ。
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Back in the ROADSIDE USA 44 Witch Dungeon Museum, Salem, MA
東京がニューヨークなら、京都にあたるのがボストン。アメリカでもっとも古い都市を有するのがマサチューセッツ州だ。ボストンから北に約1時間、セイラムは大西洋に面する古都。『緋文字』で有名なナサニエル・ホーソンの出身地でもあるが、セイラムの名を全米に知らしめているのが『セイラム魔女裁判』である。イギリスからの移民が1626年に開いたセイラムは、アメリカで最も古い歴史を誇る町のひとつ。セイラムといえばもっと有名なのがセイラム魔女裁判と呼ばれる、1692年に起こった奇怪な事件。当時セイラムに暮らしていた女の子たちがある日突然、集団ヒステリーを起こした。のたうちまわり、絶叫し、四つん這いになって走り回りながら、少女は自分たちが魔女に取り憑かれていると主張し、魔女の名前を次々と口にするようになる。それはいずれも少女たちの身近にいる村人であった。そして13ヶ月にわたる裁判という名の魔女狩りで、156人が投獄され、19人と2匹の犬(!)が縛り首となり、ひとりが拷問のため圧死した。という、アメリカ史上に残る暗黒の出来事だ。
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案山子X 39 春日川沿いのかかし(香川)、望月かかし祭り(大分)(写真・文 ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は香川県高松市池田町春日川沿いのかかしと、大分県臼杵市望月地区のかかし祭りを紹介します。時々両親がテレビや新聞で得たかかし情報を提供してくれる事があるのですが、実家に帰った時に「NHKの火野正平さんの自転車の番組にかかしが出てたよ」と教えてくれました。手がかりは両親の記憶だけなのですが、父親がこの辺ではないか?と目星をつけてくれたのが高松市池田町でした。池田町は高松市街地から14キロほどの場所にあり、住宅地と田んぼに囲まれた穏やかな町です。現地の人に聞いたりしながら到着したのが、この春日川沿いに設置してあるかかしです。
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Back in the ROADSIDE USA 50 Museum of York County, York, SC
ノースキャロライナ州境に近い、ヨークという小さな町。3分もあれば通りすぎてしまうサイズの、なんの変哲もないカントリータウンだが、町はずれにあるヨーク郡の博物館に、実は世界でも有数のアフリカ哺乳類コレクションが眠っている。地元のサファリ愛好家が、何度もアフリカに通っては撃ち殺した動物たちが、みんな剥製になって地味な博物館を埋め尽くしているさまは壮観。キリン、アフリカゾウ、ライオン・・・とにかく数えきれない剥製動物たちが、ガラス玉の眼をきらりと光らせながら、薄暗い照明の中にたたずんでいる。書き割りジオラマの平板さとあいまって、見ようによってはかなり現代美術的でもあり。杉本博司さんに撮影してほしい・・・。
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Back in the ROADSIDE USA 54 Big is beautiful
今週のロードサイドUSA再訪はちょっと趣向を変えて、アメリカの路傍に「でかいもの」を探してみた。9月20日号ではサウスキャロライナ・ギャフニーの「ピーチョイド」=桃型給水塔を紹介した。巨大人間、巨大生物、巨大記念碑・・・ハイウェイを降りて町に乗り入れるとき、まず目に入るのが「巨大なるなにか」であることがよくある。それは町のランドマークであったり、商業施設の広告塔であったり、モチーフも目的もさまざまだが、共通しているのは事物が極端に拡大されることから生まれる、シュールな存在感だ。今回お目にかけるのは、7年間に及んだアメリカ裏街道の旅路で見つけた「無駄にでかいもの」の、ほんの一部にすぎない。
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Back in the ROADSIDE USA 55 Don Q Inn, Dodgeville, WI
アメリカにも「ハネムーン用」と名づけられたラブホテルがある。「テーマホテル」と呼ぶこともある。日本のラブホのようにポピュラーな存在でも、あからさまでもないが、考えることはやっぱり同じ。ウィスコンシン州ドッジヴィルのハイウェイそばにある『ドンQイン』は、ホテルの前に置かれた目印がわりの巨大な飛行機と、全室異なるオモシロ・インテリアで一部のマニアに知られた存在だ。
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Back in the ROADSIDE USA 56 F.A.S.T. Corporation, Sparta, WI
ウィスコンシン州スパルタという力強そうな町のはずれにある、小さな工場。ここはファイバーグラスで巨大な人形や動物を作る技術で、全米最大のシェアを誇る会社だ。F.A.S.T.は「ファイバーグラス・アニマルズ・シェイプス&トレイドマークス」の略。工場前の広い芝生には、出荷を待つ製品が並べられていて、ロードサイド・ミュージアムの趣。裏の敷地には、成型に使われてすでに用済みになった型が打ち捨てられているのだが、これまた独特な雰囲気である。胴体が半分に割られたゾウとか、頭だけの巨人とか、なんだか滅亡した古代ローマの遺跡の現代版とでもいうべき、不思議な無常感が草原にただよって物悲しい。そして見方によっては、かなり現代美術っぽくもある。
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案山子X 42 古中尾地区のかかし祭り(熊本)(写真・文 ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は熊本県葦北郡津奈木町津奈木古中尾地区のかかし祭りを紹介します。葦北郡津奈木町は熊本県の南部に位置し、温暖な気候を利用した甘夏みかんやデコポンの栽培が盛んな地域です。 八代海に面した海側ではタイやフグ等の養殖も行われています。 肥薩おれんじ鉄道の津奈木駅から約3kmの場所にある古中尾地区で、毎年9月上旬〜下旬にかけてかかし祭りが開催されています。 2000年に活性化協議会が何か地域おこしをしようと考えていた時に、田んぼに立っていた雀おどしのかかしを見て、かかし祭をする事を思いついたそうです。 最初は20体程しかいなかったかかしですが、年々増えていき、現在は80~90体ほど展示されています。
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Back in the ROADSIDE USA 62 Mueseum of Religious Arts, Logan IA
ミズーリ河を挟んだ2大都市カウンシルブラフスとネブラスカ州オマハに近い、アイオワ州ローガンの町はずれ(人口1454人/2016年)。見渡すかぎりのトウモロコシ畑の中に、真新しい倉庫風の建物がある。これが1995年にオープンしたミュージアム・オヴ・レリジャス・アーツ。その名のとおり、キリスト教にまつわるさまざまな収集品を展示する、私設の宗教美術館だ。ミュージアムを設立したのはローガンの住人、ポール・ローヴェル。敬虔なカトリックだったローヴェルは、アイオワやネブラスカの古いカトリック教会が次々と姿を消していくのを惜しみ、私財を投じてこのミュージアムを設立した。
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Back in the ROADSIDE USA 63 Hobo Museum, Britt, IA
2017年7月5日号で紹介した驚異の宗教空間『グロット・オブ・リデンプション』があるアイオワ州ウェストベンドから30分足らず、ハイウェイ18号線沿いに現れ消える小さな町のひとつがブリット。2、3分で走りすぎてしまうようなサイズだが、年にいちど開かれる『ナショナル・ホーボー・コンベンション』の開催地として知られている。なにしろはじめて開催されたのが1974年というから、かなりの歴史を誇るイベントだ。貨物列車に只乗りしてアメリカを北に南に、東へ西へと流れつづけたホーボーは、アメリカ人にとってある種のロマンチシズムを喚起させる存在だった。
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Back in the ROADSIDE USA 64 Loony Lagoon, Bath, ME
アメリカ最大の造船基地として名を馳せたメイン州バース。ヨーロッパのような古い町並みを訪れる観光客でにぎわっているが、高速道路の裏手にひっそり花咲く、通称ルーニー・ラグーンまで足を伸ばす人は少ない。道路脇の窪地にある池の周囲に、あたかも路傍の花のように点々と配された立体作品。メイン州名物のロブスター、ヘラジカ、木の枝に吊された飛行機。池に釣り糸を垂れる男。すべてがフィリップ・デイという老人ひとりの手によって生み出されたものだ。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 03 広西チワン族自治区(写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)軟体トラベラーの関上武司です。中国には5つの自治区がありますが、今回紹介する広西チワン族自治区とは中国最大の少数民族のチワン族(壮族)の原住地で、桂林という有名な観光地があります。2015年12月30日。この日は海南省三亜市から空路で広西チワン族自治区の首府である南寧市で移動。三亜の空港からの便が2時間近く遅れましたが、最近は中国国内を飛行機で移動する際には割と高い確率で遅延が発生するのである程度は覚悟します。冬でも半袖で生活できる三亜から1時間以上移動した南寧市の空港に到着するとかなり肌寒かったので、長袖を着用。
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案山子X 44 リアルかかしの里山(広島)(写真・文 ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は広島県広島市佐伯区湯来町のリアルかかしの里山を紹介します。湯来町は広島市中心部から車で1時間ほどの閑静な山あいにあります。1500年前に発見されたとされる湯来温泉があり「広島の奥座敷」として親しまれる場所です。渓谷の側では毎年初夏に自然繁殖した多くのホタルが鑑賞でき、豊かな自然に囲まれています。湯来温泉街から8キロほどの場所にある上多田地区に、人間そっくりのリアルかかしが大勢いるとの事で見に行きました。
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ディープ・コリアふたたび 14 東海~江陵(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
茫漠とした空気は大韓の多くに漂っているが、そこに山と山にぶつかって吹き乱れる寒風が加わるのが東海岸~江原道流だ。厳しい中にも笑いありの大韓だが、ここもそうではあるものの、どこか笑いよりも痛々しい感のほうが多くあるように思えてくる。東海は先ごろ朝鮮民主主義人民共和国の美人様たちだか楽団だかを載せた船が着岸した墨湖港のあるところとして一部でちょこっと有名になった。鉄道の駅と海岸の間には商店と民家がバラバラに広がっていて畑も少なくない。のどかで静かな町だ。人の姿もさほど多くなくアジュマが1人でやっている小さなコーヒー屋もあるし、古い文房具屋もあるが、本屋やレコード屋などはない。夜が明けて宿の周辺を見てみると、宿も数軒しかなく、つぶれてしまったままになっているモーテルも2軒ほどあった。海に近い駅であることは確かなのでせっかくだから、と海岸へ行ってみることにする。
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Back in the ROADSIDE USA 68 Spam Museum, Austin, MN
アイオワとの州境に近いミネソタ州オースティンの町に本拠を構えるのが、世界有数の食品会社ホーメル。あのスパム(Spam)を作ってる会社だ。沖縄料理好きにはおなじみのスパム。ハワイで「スパム・スシ」に出会ってびっくりした人もいるだろう。ホーメル社が設立されたのは1892年だが、スパムが世の中に登場したのは1937年のこと。スパムとは「spiced ham」の略。スパイシーなハムというわけではないが。2002年には通算60億缶目が出荷された(!)という、たぶん世界でいちばんポピュラーな缶詰である。
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Back in the ROADSIDE USA 70 Nun Doll Museum, Indian River, MI
ミシガン中部の町インディアンリヴァー。州間高速75号線を降りてすぐ、木立に隠れるように『クロス・イン・ザ・ウッズ』と呼ばれる教会がある。高さ55フィート、16mあまりの巨大な十字架(キリスト付き)で有名な教会だが、もうひとつ名物なのが礼拝堂地下に展示されている『ナン・ドール・ミュージアム』。その名のとおり尼さんの人形ばかりを525体も集めた、珍しいコレクションだ。40年ほども前のこと、サリー・ロガルスキーという女性が感謝祭のおりに、家にあった人形に尼僧の服を着せてみたのが、その始まり。サリーは結婚してからも尼さん人形を趣味で作りつづけ、できた人形をクロス・イン・ザ・ウッズに寄付するようになった。
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Back in the ROADSIDE USA 72 National Firearms Museum, Fairfax, VA
かつてはマイケル・ムーアの『ボウリング・フォー・コロンバイン』で、いまはトランプ大統領の最有力後援団体として、日本でもすっかり名前が知られるようになったNRA(全米ライフル協会)。アメリカ銃文化の総本山であるNRAは、ワシントンDCからポトマック河を渡り、ペンタゴンを過ぎた先にある郊外の町フェアファックスに本部を構えている。大企業の本社みたいな建物の1階には『ナショナル・ファイアアームズ・ミュージアム』が、数千丁のピストルやライフルを取りそろえて、マニアのお越しを待っている。銃砲の領域では世界最大のコレクションだそう。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 05 重慶市前編(写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)軟体トラベラーの関上武司です。今回紹介する重慶市は北京、天津、上海と同じ直轄市で、面積は北海道よりも広い世界最大の都市です。2013年8月9日。愛知県から上海を経由して23時過ぎに重慶市に到着。重慶市は内陸にあるので飛行機でも移動時間がかかります。空港からのバスで市内へ移動して、7天連鎖酒店という全国展開しているチェーンのホテルで宿泊することに。翌日は世界遺産の大足石刻へ行きたかったので、ホテル近くで夜中でも営業していた旅行会社で現地ツアーの申し込みをしました。私は基本的に1人旅を好むのですが、必要であれば現地ツアーに参加することもあります。
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Back in the ROADSIDE USA 75 Outsider Art Town, Lucas, KS 1/2
カンザス州の小さな町、しかしアメリカが誇るアウトサイダー・アート・タウンであるルーカスを訪れたのは2006年のこと。充実したその取材の成果を、今回は前半後半の2週に分けて振り返る。――人口わずか436人、カンザス州北西部にあるルーカスは、車なら数分で走りすぎてしまう小さな町だ。“アメリカ的”なる壺中天のごときスモール・タウンが実は全米、というか世界有数のアウトサイダー・アートの震源地であることを、僕はうかつにも最近まで知らなかった。世にもまれなアート・タウンとしてのルーカスの歴史は、サミュエル・ペリー・ディンズムアというひとりの男とともに始まる。1843年オハイオ州に生まれたディンズムアは、教師、農夫などの職業を経て1907年、農地を売った金でルーカスの町の四つ角に面した土地を買い、風変わりな家と庭園を造りはじめた。
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Back in the ROADSIDE USA 76 Outsider Art Town, Lucas, KS 2/2
カンザス州の小さな町、しかしアメリカが誇るアウトサイダー・アート・タウンであるルーカスを訪れたのは2006年のこと。充実したその取材の成果の、今週は後編をお送りする!
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 06 重慶市後編(写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)軟体トラベラーの関上武司です。重慶市のレポート後編となる今回は地獄巡りスポットで有名な豊都の鬼城や、中国でもトップクラスのマッドなテーマパークの美心洋人街を紹介します。2013年8月12日。早朝6時に四公里バスターミナルへ足を運び、豊都県(中国の行政区分は県よりも市の方が大きい)へ向かうワンボックスカーに乗り込みます。真夏でも中国奥地の重慶ではまだ夜明け前。現在は重慶から豊都まで高速鉄道で1時間くらいだそうですが、車では片道約3時間かかりました。
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案山子X 48 人間かかしコンテスト in 羽村(東京)、夕やけ小やけふれあいの里 かかしまつり(東京)(写真・文 上迫愛)
こんにちは。上迫愛(うえさこあい)です。今回は東京都の「人間かかしコンテスト in 羽村」と「夕やけ小やけふれあいの里 かかしまつり」を紹介します。最初に紹介するのは東京都羽村市の「人間かかしコンテスト in 羽村」。羽村市は、都心から電車で約1時間の場所にある緑が多く残る街です。2016年9月25日、羽村市内唯一の水田地帯である根がらみ前水田で「人間かかしコンテスト in 羽村」が開催されました。根がらみ前水田では稲作が行なわれる他、冬から春にかけてチューリップを栽培しています。毎年春になると約40万本のチューリップが咲きほこる「チューリップまつり」が開催され、多くの人が訪れます。しかしその他の時期は人が訪れる事が少ない為、秋にも何か催し物をしようという事で始まったのがこの「人間かかしコンテスト」。2016年で2回目を迎えました。
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Back in the ROADSIDE USA 83 Blaine Kern’s Mardi Gras World, New Orleans, LA
日本人が沖縄に感じるエキゾチックな印象を、もしかしたらアメリカ人はルイジアナに感じるのかもしれない。人生でいちどは行ってみたい場所を聞くと、多くのアメリカ人はニューヨークでもロサンジェルスでもなく、ニューオリンズとサンフランシスコとアラスカを挙げるという。もともとフランスやスペインの植民地として栄えたルイジアナ。史跡や観光名所に不足はない。全米から観光客が押し寄せるニューオリンズをはじめとして、州都バトンルージュ、北部の中心都市シュリーヴポートまで、見所充実の重要州である。なかでもニューオリンズといえば、まずはマルディグラ、魚介類を中心としたクレオール料理に、毎晩夜更けまで盛り上がるバーボン・ストリートのジャズ・シーンということになろうか。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 07 福建省(写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)軟体トラベラーの関上武司です。今回は福建省アモイ市の撮影所やテーマパーク、世界遺産の福建土楼について紹介します。2014年12月30日。この日は早朝から深圳北駅発の高速鉄道で福建省アモイ北駅まで2~3時間かけて移動。福建省アモイ市は高崎空港や繁華街のある島内とアモイ北駅などがある島外に分けられ、島外から島内は複数の橋や海底トンネルで結ばれています。島内に入り、昼食として「煎餅菓子」という名前の中国各地で見られる屋台料理を頬張ります。クレープに似た製法でB級感が非常にたまらなく、日本でもブレイクしてほしい逸品!
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Back in the ROADSIDE USA 86 Voodoo Spiritual Temple/New Orleans Historic Voodoo Museum, New Orleans, LA
先週はニューオリンズらしい墓地めぐりにお連れしたが、死とともにニューオリンズに独特の陰影を与えているのがヴードゥー。奴隷がもたらしたアフリカの民俗信仰が、カトリックの教義と混交して生まれた、神秘的な教えである。かつて奴隷たちが唯一、日曜日に集まって歌い踊り、祈ることを許された(ゆえにジャズ発祥の地とも言われる)コンゴ・スクウェアと道を隔てて向かい合うのが、ヴードゥー・スピリチュアル・テンプル。女司祭ミリアムに案内されるまま店の奥深く進んでいくと、そこには簡素な外観からは想像もできない、濃密な祭儀空間となっている。仄暗い部屋に腰をおろし、彼女の説く現実と霊の世界に浸れば、ひととき遠い世界へと連れて行ってもらえるだろう。
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Back in the ROADSIDE USA 88 Yogi Bear Graveyard, Halifax, NC
ノースカロライナ北部、州間高速95号線脇の古びたトラック・ストップ。ディーゼルの給油機が並ぶ奥に、あぶらぎったカフェテリアがある。駐車エリアの端を見ると、往年のアメリカ漫画の主人公ヨギ・ベアが芝生の上に立っている。長年の風雨ですっかり塗装が剥げ落ち、そこはかとない哀愁を周囲に漂わせている。裏の草地を歩いてみたら、かつては駐車場を飾っていたであろうキャラクターたちが、無造作に放り出されていた。
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ディープ・コリアふたたび 19 木浦~群山(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
木浦に長居するつもりはなかったので、さっさと鉄道に乗る。西の方へ行くことにしたので、群山(クンサン)方面に近づく方向で考えた。翌日の移動を考えるとあまり小さな駅には降りられない。以前光州へ行ったとき、乗り換えで通った光州松汀へ投宿することにした。大きく変貌を遂げて立派な地方都市として見た目と、おそらく内実も整えた光州の中で、光州駅は立地のせいもあって、周辺は今も旧市街然としていたが、光州松汀のほうはKTXの停車する至便な駅のある町として隆盛しているように思えた。実際どうなのか確かめようということになったのである。
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ディープ・コリアふたたび 20 大川~道高温泉(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
駅のまわりが殺風景なのは、新築である証し、とでもいうように、大韓西海岸の駅のいくつもが同じような様相を見せつけてくる。かつては小さな町の小さな駅ばかりだったが、大川駅も高架の大きな駅へと変貌を遂げていた。駅のまわりには町らしい町はない。以前は町の真ん中にあった。こじんまりとしていたが周囲には商店と民家がひしめきあい活気があった。新しい駅周辺には新築のモーテルが一軒、後はコーヒーショップのある小さめのバスターミナルのビルがひとつあった。おそらく鉄道とバスの駅を近くに設置できる土地を探して、現行の場所になったのだろう。旧市街のほうへ行かないと、宿にも飯にもありつけないようだった。
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Back in the ROADSIDE USA 91 American Dime Museum, Baltimore, Maryland
大西洋から深く切れ込んだチェサピーク湾に面するメリーランド。全米50州のうち42番目の小さなステートだが、隣接するワシントンDCと主要都市ボルティモア(州都はアナポリス)を結ぶ巨大な経済圏は、全米有数の豊かな消費市場でもある。というような公式見解は置いといて、メリーランドは実に奥行き深いおもしろステート。とりわけボルティモアは、あのジョン・ウォーターズ監督のホームタウン。女装の怪人ディヴァインを起用した『ピンク・フラミンゴ』をはじめとする、米国B級ポップ・カルチャーの歴史に残る傑作を生みだした、キッチュ&トラッシュ・マニアの聖地なのだ。
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赤線酒場×ヤミ市酒場 ~盛り場のROADSIDERS~ 第4回 北海道釧路市(文・写真:渡辺豪+フリート横田)
第4回は首都圏から離れ、北の大地・北海道へ。釧路市、人口約17万。道内自治体の人口順位で第5位。1981年に23万人のピークを迎えた釧路市の人口は、微減傾向が長年続き、2018年ついに苫小牧市の人口を下回り、第5位に転落してしまった。 かつてアイヌの地だった釧路の近代化は、明治19年に安田善次郎がアトサヌプリ(硫黄山)から産出する硫黄の輸送を目的として、釧路鉄道(道内2番目の鉄道路線)を敷設開始したことに始まると言われる。 明治32年には釧路港が開港し、さらなる発展を遂げる。かつては漁業が盛んだっただけでなく、炭鉱、製紙業も勢いがあり、当然街には大勢の男たちが汗を流していた。街には彼らを癒す盛り場があったわけだが、現在はどうなっているのか? 早速北国の夜へと入ってゆこう。道東の黄昏地帯、釧路を飲み歩く。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 11 陝西省前編(写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)軟体トラベラーの関上武司です。今回は陝西省の西安市と中国の名峰・華山の紹介という私の連載にしては比較的まともなスポットのレポートですが、変化球も仕込んでおきました。2017年12月30日。この日は山西省運城市から高速鉄道で陝西省西安市へ移動。西安はかつて長安と呼ばれ様々な王朝の首都として機能し、交通の要衝ということもあり、正直、何回訪問したのか覚えていません。郊外にある兵馬俑は2回行っているので、今回はパス。高速鉄道駅の西安北駅から地下鉄で市中心部へ向かい、以前宿泊した速8酒店(英語ではSUPER HOTELと表記されていますが、日本のスーパーホテルとの関連は不明)のあるビルを目指します。
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Back in the ROADSIDE USA 101 Old West Miniature Village, Cody / Elkhorn Arch, Afton, WY
イエローストーン国立公園の西側からの入口として訪れる人の多いコーディ。画家のジャクソン・ポロックの出身地でもあり、町の中心部には年間20万人以上が訪れるというバッファロー・ビル・ヒストリカル・センターが世界最大、最良のウェスタン・コレクションを誇っている。コーディという町の名前自体、この地の開発に力を尽くしたウィリアム・“バッファロー・ビル”・コーディの名をとったものだ。
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赤線酒場×ヤミ市酒場 ~盛り場のROADSIDERS~ 第5回 東京都台東区・浅草(文・写真:渡辺豪+フリート横田)
第5回を迎えた今回は、東京都・浅草。訪日外国人が多く訪れる日本を代表する観光地。今も賑々しい印象は強いが、雷門前~仲見世通り界隈から、六区ストリートへ目を転じてみれば、閑古帳が鳴いて久しい。浅草は観光地であると同時に大歓楽街であったはずだが、歓楽的な要素は絶無ではないにしろ、往時からすればあまりにも寂しいのが、現状の姿。今回は、長年“暴力”をテーマに第一線で取材活動を続け、昨年『サカナとヤクザ』を上梓した鈴木智彦氏をゲストにお招きした。同著帯文「食べてるあなたも共犯者!」が放つ強いメッセージ性を記憶している読者も多いのではないだろうか。昨年2018年には、戦前の浅草における象徴・凌雲閣の土台とみられるレンガも出土した、ひさご通り界隈で飲む。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 12 陝西省後編(写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)軟体トラベラーの関上武司です。今回は陝西省の法門寺というハイパーゴージャスなお寺での初詣と史跡にあったビザールスポットの悲しい末路についてご報告します。2018年1月1日。西安の宿を早朝にチェックアウトし、西安名物の肉夾饃(ロージャーモー)というパンに肉を挟んだバーガーを頬張り、陝西省の古刹の法門寺へバスで向かいます。
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案山子X 54:登米市豊年かかし祭り(宮城)(写真・文:上迫愛)
こんにちは。上迫愛です。今回は宮城県の登米市豊年かかし祭りを紹介します。登米市は宮城県の北東部に位置し、豊かな水と平野に恵まれた田園地帯が広がる街です。県内有数の米どころであり、ササニシキやひとめぼれ等の生産地として有名です。登米市の迫町で、2016年10月9日に「登米市豊年かかし祭り」が開催されました。会場である佐沼大通り商店街を盛り上げようと、2006年に始まったお祭です。米どころの登米市をPRしようと、田んぼの象徴であるかかしが作られ、約50体が商店街に立ち並びました。
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Back in the ROADSIDE USA 103 Shoe Tree, Beaver, AR/Milltown, IN
オザークと呼ばれるアーカンソー州北西部の山林地帯。紅葉が美しい森の中を抜ける快適なドライブの最中、突然あらわれた不思議な大木。これがアメリカのみに生息する非常に珍しい樹木、シューツリーだ。路肩に車を停めて、じっくり観察してみよう。オークとおぼしき大木の枝に、靴ひもを結んだ数百足のスニーカーや革靴が、見事な(?)花を咲かせている、というか実をつけている。「南部には黒人がなる(吊される)木がある」と唄ったのはビリー・ホリディだったが、こちらアーカンソーの「奇妙な果実」は、ユーモラスなアメリカン・ライフの象徴だ。言い伝えによれば昔々、ある男が妻と喧嘩したあげく家から叩き出され、悔しまぎれに自分の履いていた靴を脱いで、木の上に放り投げたのが始まりという。
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案山子X 55:明日香村稲渕かかしコンテスト(奈良)(写真・文:上迫愛)
こんにちは。上迫愛です。今回は奈良県高市郡明日香村稲渕のかかしコンテストを紹介します。石舞台古墳から約2キロの場所に、日本の棚田百選に選ばれた「稲渕の棚田」があります。毎年8月下旬頃から11月下旬頃まで、棚田のかかしロードに多くのかかしが立ち並びます。稲渕は棚田のオーナー制度があり、その活動の一環として地域おこしをしようとかかしコンテストが始まったそうです。かかしを作っているのは、棚田のオーナーと一般募集した人達。毎年50〜60体程が立ち並び、ジャンボかかしが話題になっています。コンテストのテーマは毎年変わり、私が訪れた2016年のテーマは「棚田 de オリンピック」。50体のかかしがコンテストにエントリーし、9月18日に開催された「彼岸花まつり」の来場者の投票で入賞者が決まったそうです。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 13 甘粛省前編(写真・文:関上武司)
大家好(中国語で皆さん、こんにちは)! 軟体トラベラーの関上武司です。今回は甘粛省天水市の麦積山石窟という断崖絶壁に建立された寺院、温泉、蘭州市の遊園地についてのレポートです。中国の地図を見ればわかるのですが、中国の数ある省の中でも西北に位置する甘粛省はやたらと細長い形状をしています。甘粛省天水市は省内でも南側にあり、陝西省宝鶏市とも接し、古来より交通の要衝だった模様。2011年の年末に陝西省西安市郊外で撮影中に食べた昼食の激辛料理の香辛料が強烈すぎて、お腹の調子がかなり悪い状態で真夜中の天水市に到着。この年の大晦日は珍しく朝寝坊をしてしまい、目覚めたら10時過ぎに・・・。慌ててホテルをチェックアウトし、天水駅前の食堂でワンタンスープを荒れた胃に流しこみます。
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案山子X 56:町家のかかし巡り(奈良)(写真・文:上迫愛)
こんにちは。上迫愛です。今回は奈良県高市郡高取町の町家のかかし巡りを紹介します。飛鳥時代の古墳が数多く残り、山城「高取城」の城下町として栄えた高取町。高取城へ向かう土佐街道には、昔からの町家が多く残っています。古くから薬草などが豊富にとれ、置き薬を行商して全国を歩いた「大和の薬売り」が有名です。現在も医薬品の製造や卸売が町の主要産業であり、薬の町と呼ばれています。毎年3月に開催される「町家の雛めぐり」では、約80軒の町家に雛人形が展示されます。秋にも町家巡りのイベントをしようと考えていた時に、徳島県名頃の人間そっくりなリアルかかしの事がテレビで放送されました。それを見て、かかしがいる町巡りを開催する事になったそうです。私が訪れた2016年に8回目を迎え、街道沿いや建物の中に人間そっくりなリアルかかしが多く展示されました。
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日本性祭紀行2 伊豆稲取の男根祭り・後編〈おめんさん〉(写真・文:深沢佳那子)
最後のどんつく祭りが幕を閉じた翌日、2018年6月4日。伊豆稲取の観光協会でどんつく祭りのことを聞いた帰り道、わたしは稲取のオシャレなカフェに立ち寄った。そのカフェの気さくな店員さんと話しているうちにどんつく祭りの話になり、ついでに先ほど聞いたばかりの「夏祭りに出る“本来のおめん”」のことを尋ねてみた。すると、店員さんの口から衝撃的な言葉が飛び出した。「あー、夏祭りのおめんさんね、あんなん今なら準強姦罪だよね」40代の彼女はあっけらかんとそう言う。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 14 甘粛省後編(写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)軟体トラベラーの関上武司です。今回は甘粛省蘭州市で寒さに震えながら撮影した野良犬や巨大すぎるトランスフォーマーの頭部についてのレポートになります。2018年1月2日。この日は陝西省宝鶏市で撮影し、夜になって高速鉄道で甘粛省蘭州市の蘭州西駅に到着。冬の蘭州市は気温が-10℃以下まで下がり、私が居住する愛知県の生活圏内は雪が年に2、3回くらいしか積もらないので、寒さがこたえます。蘭州西駅から蘭州駅まで移動して、ホテルで宿泊手続きをとっていると、宿泊客が「蘭州市民は朝から麺を食べるんだって」と言っていました。湖北省武漢市の住民も早朝からソウルフードの熱干麺を食べますが、中国全体では朝から麺を食べる地域は確かに少ないはずです。部屋に荷物を置いて寒い街中へ。遅い夕食は過橋米線(雲南省名物)のお店にしました。
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Back in the ROADSIDE USA 105 アメリカ音楽に呼ばれて・前編
ちょっと間が空いてしまった「Back in the ROADSIDE USA」、ひっそり終わったわけではありません! というわけでいよいよ夏休みシーズンに突入した今週は、旅の途中で立ち寄った「アメリカ音楽ゆかりのスポット」シリーズを2週にわたって一挙掲載! この企画、実は2014年に湯浅学さんの文章で、チャック・ベリーの生家があるミズーリ州セントルイスのグッド・アヴェニューと(この通りの名前から名曲『ジョニー・B・グッド』が生まれた、2014年3月19日号)、オールマン・ブラザーズ・バンドのデュアン・オールマンがバイク事故で亡くなったジョージア州メイコンの交差点(2014年4月23日号)を掲載したけれど、残念ながらそのあとが続かないまま時が経ってしまったので、ここでまとめてご覧いただくことにした。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行・特別編! 激渋にして激熱! 木曽岬温泉の営業再開を祈願するレポート(写真・文:関上武司)
こんにちは!軟体トラベラーの関上武司です。2019年7月7日、私のお気に入りの木曽岬温泉の休業が判明し、ブログで嘆いていたらちょっとバズってしまい、都築編集長から本誌でレポート執筆の依頼がありました。三重県桑名郡木曽岬町にある木曽岬温泉は知る人ぞ知る名湯・激渋温泉で、今ではレアな昭和時代の歌謡ショーが残っていました。木曽川河口では東側が愛知県、西側が三重県と認識している方も多いと思いますが、木曽岬町は木曽川東側にあっても、三重県です。木曽岬温泉は地元の温泉紹介雑誌でもまず取り上げられない温泉で、大部分の三重県民にも認識されていたか正直、不明。『八画文化会館』という雑誌の創刊号にも紹介されていたくらいなので、本誌読者なら間違いなくそそられる物件だと確信しています。
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Back in the ROADSIDE USA 109 Closers' Zoo with IQ / Alligator Farm, Hot Springs, AR
先々週「ジョセフィン・タッソーロウ人形館」にお連れしたアーカンソー州ホットスプリングス。アメリカで最初に国立公園に指定された景勝地であり、由緒正しきリゾートである。しかし、かつては上流階級の紳士淑女や、禁酒法時代には有名なギャングたちで賑わったメインストリートも、いまはかなり庶民的な雰囲気。ちょっと前の熱海といった感じが、意外に心地よかったりする。Tシャツ屋やお土産屋、アンティーク・ショップなどが軒を連ねる一角に店を開くのが『ズー・ウィズ・IQ』。「頭のいい動物たち」を集めた、私設屋内動物園だ。
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Freestyle China 即興中華 “ニセ雑誌”を通じてみる中国写真の今――假杂志(Jiazazhi)代表・言由さんインタビュー(写真・文:吉井忍)
中国の本屋で写真集を見たり、知人におすすめの写真家を紹介してもらっているうちに、アートブックを専門に扱うインディペンデント出版社「Jiazazhi Press」という存在に気がついた。調べてみると、同社は日本を含む海外でもよく知られているようで、TOKYO ART BOOK FAIRやパリフォト、アルル国際フォトフェスティバルなど海外フェアの常連でもあるようだ。このJiazazhi Pressが中国浙江省・寧波(ニンポー)市に図書室、ギャラリーと書店を備えた複合施設Photobook Libraryを設け、そこで初の展示を行なっていると聞いてさっそくお邪魔することにした。
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ディープ・コリアふたたび 22 成田~釜谷(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
成田空港に向かうスカイライナーの中に美人がいた。スッキリとした容姿はCAだろうと想像させた。小さなキャリーバッグを自分の隣の席に置いていた。チャコール・グレーのスーツでタイトスカートがスタイルをより美しく伝えていた。朝8時の日暮里駅ホームにはさまざまな肌の色の人がいた。帰国するのだろうラテン系の人たち、日本人のおばさん二人はサンドウィッチを食べながら笑っている。おにぎりを駅中のコンビニで買ったほうが良かったか。腹が減ってきた。
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アーバンママの(どうでもいい)旅行の話「プノンペン~香港編 day1&day2」(写真・文:スナック・アーバンのママ)
友人で脚本家の向井くんがひとつ大きな仕事が終わるというので、どこか旅行でも行くかねという話になった。疲れ気味のわたしたちは、なんとなく温かい国でダラダラしたいという気持ちが強く、ああ、そうだ、あるじゃん、ちょうどいいところがということで、10日ほど休みをとってプノンペンに行くことにした。わたしは1年と少しぶりで、向井くんは初めてのプノンペンだ。
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アーバンママの(どうでもいい)旅行の話「プノンペン~香港編 day3~day6」(写真・文:スナック・アーバンのママ)
プノンペンにきて、3日目。今日は藤原さんに会いに行く日だ。まさか人生でもういちど藤原さんに会う日がくるとは思っていなかった。今回はTさんという、藤原さんの仲良しのおじさんが一緒に来てくれることになって、近くのカフェで待ち合わせをした。Tさんは1990年代の後半からプノンペンに住んでいるそうで、植物から作る糸の話とか、それで作る織物の話とか、フィリピンに移住しようとしているという話とか、なくなった愛猫の話とか、安物の香水みたいな異臭しかしない備え付けのベッドマットが1年たったら無臭になったから使っている話とか、地元の尼崎の話とか、いろいろな話をしてくれた。
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アーバンママの(どうでもいい)旅行の話「プノンペン~香港編 day6~day10」(写真・文:スナック・アーバンのママ)
カンボジアに来て6日目、2泊したカンポットからプノンペンに戻る日だ。カンポットにはカンボジアン・スペース・プロジェクトの創設メンバーでもあるジュリアン・ポールソンのカフェ「KAMA(KAMPOT ARTS & MUSIC ASSOCIATION)」がある。開店時間のタイミングが合わなくて行けなかったのだけど、ベジ&グルテンフリーにも対応している気持ちのよさそうなカフェ&ライブスペースでありつつ、いまそこで生まれているカンボジアン・メイドな音楽と文化を発信する拠点にもなっているそう。
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ヨモギの精霊ヨモダンちゃん降臨祭!
いまはほぼ消滅した秘宝館を惜しがるひとは多いけれど、「なければ自分で作ればいいでしょ!」と、自宅を秘宝館にしてしまった怪人・兵頭喜貴の「八潮秘宝館」。すでにロードサイダーズではおなじみのミステリー・スポットであります。で、そろそろ外出規制緩和というタイミングで「初夏の臨時開館」のお知らせが館長より届きました。テーマは「ヨモギの精霊ヨモダンちゃん降臨祭」。なんとハルクみたいな緑色の、異色肌のラブドールをフィーチャーした特別展です!
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Freestyle China 即興中華 爆走!中国カーミーティング@名古屋 (画像、動画提供:岩田宇伯/文:吉井忍)
コロナに続いて大雨と洪水と心配な案件が続く中国。そんな中、意外にもクルマ関連における中国独自の技術と現象が日本のカーマニアたちの注目を集めていることが分かった。 名古屋市にある書店・Bibliomania(ビブリオマニア)で先月末に行われたイベント「中国car Meeting」では、中国事情に詳しい岩田宇伯氏が膨大な中国クルマ情報で会場と画面前の人々を圧倒。同氏は2018年刊行の書籍『中国抗日ドラマ読本』で日本の読者のみならず、中国の政府関係者らをも驚嘆(もしくは激怒)させたことで知られるが、実は大のクルマ好きでもあり、ご自身もよくカーイベントに顔を出しておられるとか。 今回は岩田氏にzoomで取材をさせていただき、同イベントで紹介された中国の「名車」などを振り返りつつ、日進月歩の電気自動車、街を縦横自在に走る老人車、そして中国ヤンキーと彼らの愛車などについてお話を伺った。
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Freestyle China 即興中華 淘宝網の本当の“お宝”『Wow Taobao』 (写真:ルーベン・ルンドグレン/文:吉井忍)
最近、ちょっと異色のフォトブックを見つけてしまった。名前は『Wow 淘宝(Wow Taobao)』、中国で最大規模を誇るショッピングサイト「淘宝網(タオバオワン、通称タオバオ)」で売られている奇想天外な品々を紹介したものだ。版元は浙江省・寧波市にあるインディペンデント出版社「Jiazazhi Press」なので、中国人写真家の作品集かと思いきや、作者は北京市に長く在住する外国人だった。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 18 石川県1
日本海を見つめ、なに思う竜のアタマとスフィンクス―― 今年2月17日配信号・山梨県2「富士のふもとのジュエリー・フォレスト」で取り上げた「河口湖宝石の森」。宝石と観光という思いがけないミックスで庶民を驚かせた甲府市の英雅堂グループが、1991年に開館させたのが能登の「七福神センター」だった。 巨龍とピラミッドという外観からして異様な七福神の森は、2010年12月28日をもって残念ながら閉館。その後廃墟化されて一部のマニアを喜ばせてきたが、2015年に解体。現在は更地となっているようだ。
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柴犬のルーツは島根県益田市にあった! ――石号の里・巡礼記
先週号で紹介した「ファッション イン ジャパン」の取材で島根県益田市の石見美術館を訪れたときのこと。たいてい美術館にはロビーの脇とかに他の美術展のポスターが貼られたりフライヤーが置かれていて、それがけっこう有益な情報源だったりするが、美術館が入るグラントワは複合文化施設ということで、美術展のほかに島根県および石見エリアの観光案内パンフレットを集めたコーナーがあった。 『珍日本紀行』で全国を巡っていたころはインターネットというものが存在しなかったので、そういう観光チラシがもっとも重要な情報源だったが、いまだにチラシ・コーナーは欠かさずチェックする習慣がついている。で、温泉案内とかグルメ・ガイドをチラ見していくうち、ちょっと異質のオーラを放つ三つ折りチラシが目に入った。 ここは 柴犬の聖地 「石号の里」 ん? 石号ってなに? 益田市って、柴犬の聖地だったの?
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 23 広東省中編 (写真・文:関上武司)
大家好(中国語で皆さん、こんにちは!)。実は私、使い古した下着や靴下を中国で履きつぶし、処分しているのですが、昨年は訪中できなかったので、下着がたまる一方です…。遠出をする機会が激減したので気分は鬱屈しておりますが、発展著しい広東省のレポート2回目をお届けします。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 21 兵庫1
淡路の海にニラミをきかすタワーリング・ブッダ――「淡路島の世界平和大観音、6月から解体開始」というニュースを先週見て、ついに……とシミジミした珍スポット・ファンもいらっしゃるだろう。こんなものが(といっては悪いが)思いのほか大きく取り上げられたことに、僕もちょっと驚いた。『珍日本紀行』で世界平和大観音を取材したのは1994年のこと。当時はまだけっこう観光客で賑わっていた記憶がある。大阪のビル経営企業オクウチグループの創業者、奥内豊吉氏が生まれ故郷の淡路島に私財を投じて1977年に建立したのが世界平和大観音。大阪湾を一望する絶好の立地にそびえ立つ「世界最大の像」(当時)は、あまりのスケールに平和というより周囲から浮きまくる異様な存在感が際立っていたが、1988年に奥内豊吉氏が死去。遺志を継いだ奥様も2006年に死去したのを機に閉館。遺族が相続を放棄したため、ゆっくりと廃墟化していった。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 23 大阪1
ジャマイカは遠いけど、大阪なら近いぞ――かつて釜ヶ崎あいりん地区、新世界エリアと並んで大阪市内の「足を踏み入れてはいけない場所」と言われていた天王寺公園。1980年代からホームレスたちのブルーシートや段ボールハウスが並びはじめ、90年代にはカラオケ機材を持ち込んだ「青空カラオケ屋台」が週末ごとにずらりと店を出すようになった。最初の青空カラオケが出現したのは1967年と言われているが、爆発的に増加したのは90年代後半のこと。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 25 大阪2 ヤキメシ食べてユッフォ(UFO)体験、下町のメシアに宇宙真理を学ぶ
大阪中心部、梅田と京橋のあいだというロケーションにありながら、昔ながらの下町の空気感を色濃く残す天神橋商店街。天神橋から天神橋筋七丁目まで、全長約2.6キロにわたって伸びる、日本一長い商店街と言われている。その一角で異様なオーラを放ち、地元マスコミにもたびたび登場していた『食堂・宇宙家族』。「下町のメシア=メシヤ」を自称する店主・福田泰昌さんのただならぬ存在感に惹かれて、『珍日本紀行』では1997年に初取材。そのあと月刊『サイゾー』誌に連載していた『珍日本紳士録』であらためて取材したのが2004年だった(文庫版『珍日本超老伝』筑摩書房刊に収録)。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 32 香川2 純金トイレでウンをつけよう
瀬戸大橋を岡山側から渡った四国側のゲートウェイが宇多津(うたづ)町。言わずと知れた(?)ゴールドタワーのそびえ立つ地だ。 ある意味、もっともバブルらしいモニュメントのひとつ、ゴールドタワーには珍日本紀行で1994年に、そのあと『バブルの肖像』のために2008年に再取材に訪れている。 そもそもゴールドタワーが瀬戸内海を望む宇多津の地に降臨したのは1993年のこと。1988年の瀬戸大橋全面開通にやや遅れての開業だった。ゴールドタワーを建てたのは愛媛に本店を置くユニチャーム。生理用品、紙おむつなど衛生用品でアジア1位のシェアを誇る大手企業である。なのでゴールドタワーに隣接して「チャーム・ステーション 世界のトイレ館」という、たいへんユニークな便器のミュージアムをつくったのだった。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 34 徳島1 巨大ウナギからデンキウナギまで、ヌメリものならおまかせ!
高知県との県境に近い徳島県南東部の海部町(かいふちょう 現・海陽町)にあった「大ウナギ水族館 イーランド」。天然記念物のオオウナギをフィーチャーした、世にも珍しいウナギ専門水族館だった。ちなみにオオウナギは蒲焼きにして食べてるウナギとは別種、種名なので大ウナギではなく「オオウナギ」と書くのが正しいそう。 開館は1989年だが年々来館者が減少、赤字運営が続いて、ついに2005年に閉館となった。閉館時の累積赤字が5613万円だったという……。「全国水族館ガイド」という水族館を網羅したサイトには、こんなヒトコトも―― 展示規模を考えると、入館料の割り高感はいなめない。それを解消するためには、ぜひ、ウナギつかみを試したい。自由につかめるコーナーがあって、初めての体験だとしたらけっこう興奮する。 イーランドの名物としては「日本一のオオウナギ・うな太郎」がいて、なんと体長2メートル、体重27キロの巨体を誇ったが、2003年4月に死去(というのか)。それから2年ほどで閉館となったわけで、うな太郎を失ったのが致命傷だったのかもしれない。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 36 高知1 街の魚屋の店頭ギャラリー
安芸市で偶然見つけた西沢鮮魚店も、いまは探しても見つからないので、おそらく閉業されたのだろう。あの見事な流木オブジェはどこに行ったのだろうか。なお、平成8(1996)年には地元の熱心な誘致運動が実を結んで『男はつらいよ』第49作、『寅次郎花へんろ』の高知ロケが決まっていたが、渥美清の死によって映画はまぼろしに。しかし寅さんの偉業をたたえてつくられた「寅さん地蔵」が、伊尾木洞のすぐ近くに現存している。フーテン人生に憧れる諸氏は、いちど拝みに行くといいかも。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 特別編 『中国抗日博物館大図鑑』 (写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)軟体トラベラーの関上武司です。今回は当連載の特別編ということで、昨年末に上梓した拙作『中国抗日博物館大図鑑』について紹介させていただきます。 2018年の盆休みに書籍の取材とはまったく関係なしの旅行目的で、中国の東北地方へ向かう寸前でした。突如、パブリブ社のハマザキカク氏から本書執筆の打診があり、慌てて計画を変更。合計4回、中国で取材し、2019年8月に撮影が完了しました。コロナ禍もあって、出版するタイミングを見計らっていましたが、2021年が中国共産党結党100周年だったこともあり、なんとか2021年12月に出版。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 29 貴州省後編 (写真・文:関上武司)
大家好(中国語で皆さん、こんにちは!)。先日、胃腸風邪で久しぶりに傷病有給を使い、職場の同僚からも「珍しい」と驚かれた関上です。さすがに新型コロナのワクチンの副反応による発熱では病欠していますが、私はかなり頑丈な体なので、著作の中国取材もなんとかなっています。連載29回目は通常どおり、中国遊園地についてのレポートをご覧ください! 2016年12月29日。この日は広東省広州市での遊園地を撮影し、高速鉄道で貴州省貴陽市へ移動。貴州省は基本的に山地で、経済的にあまり発展した地域ではありません。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 #05 ワット・スタット วัดสุทัศน์ (写真・文:椋橋彩香)
2016年8月22日(続き) ワット・スラケットからタクシーで十数分、次なる目的地ワット・スタットへ到着した。 ワット・スタットには、サオ・チンチャーと称される巨大な建造物がある。鳥居のようなこの建造物はジャイアント・スイングとも呼ばれ、巨大ブランコとして街のシンボルにもなっている。 ちなみに、このブランコを使用した祭祀行事の際に死亡事故が相次いだことから、ワット・スタットは餓鬼や霊魂が集まってくる心霊スポットにもなっているらしい。
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韓国、うっかり美味しいもの紀行 前編 (写真・文:アーバンのママ)
ヨロブン、アンニョンハセヨ~! アーバンのママです。 先週の「タイ、ついでの美味しいもの紀行」が意外にも好評だったので(ありがとうございます!)、調子に乗って去年の11月、うっかり遊びに行った韓国の美味しいもの紀行をお届けいたします~。 ちなみにわたしが韓国に行きだして10年すこし。最初はちょうどLCCが日本に参入してきたころで、キャンペーンとして韓国便がめちゃ安、それこそ980円とかの投げ売りセールをしていました。燃油・諸経費は発生するけど、それでも合わせて1万円ちょっと&2時間で外国に到着! 国内旅行よりも安く知らない場所に行けることが楽しくて、あの頃はほぼ毎月渡航してたんです。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 #休獄日~パタヤとサメット島 เมืองพัทยาและเกาะเสม็ด (写真・文:椋橋彩香)
2016年8月31日(続き)~9月2日 前号#13ワット・セーンスックで寺院の人にアンケート用紙を託すと、我々(私&珍スポット好きな知人2名)は、次の目的地・パタヤにある「サンクチュアリーオブトゥルース」へと向かった。 この神々しい名前の場所は、タイ人実業家であったレック・ビリヤファント氏によって創設・設計された巨大木造建築。見た目はワット(寺院)のようだが、公式ではミュージアムとのこと。タイ語では通称プラサート・サッチャタム、プラサートは城の意だ。 その最大の特徴は、1981年より現在も建設が進められていることで、「タイのサグラダファミリア」と呼ばれている。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 #14 ワット・バーンプリーヤイグラーン วัดบางพลีใหญ่กลาง (写真・文:椋橋彩香)
2016年9月5日 この日はバンコクの隣県、サムットプラーカーン県にある寺院へ。 チャオプラヤー川の河口の位置しているサムットプラーカーンは、タイの玄関口スワンナプーム国際空港がある県。バンコクからスカイトレイン(BTS)が伸びていて、また日系企業の工場が広がっていることから、日本人居住者も多い地域である。 調査の日の朝は必ずコンビニに寄るのだが、この日はなぜか人生で初めてプロテインを買った。 タイのコンビニはほとんどがセブンイレブンなので、タイの人々はコンビニのことを「セウン(セブン)」と呼んでいる。
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地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記 #15 ワット・パーヤップ วัดพายัพ (写真・文:椋橋彩香)
2016年9月6日 前日、ワット・バーンプリーヤイグラーンの調査を終えて下宿先へ帰宅。 この日の夜から念願のタイ東北、イサーン地方へ入ることになっていた。なので下宿先ともしばしお別れ。おばさんたち家族に見送られながら、荷物をバックパックに詰めて、夕方ふたたびバンコクへ向かった。 バンコクに着いて、バスターミナルからイサーン地方の玄関口、ナコンラーチャシーマー県へ向かう高速バスに乗り込む。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 32 河南省後編 (写真・文:関上武司)
大家好(中国語で皆さん、こんにちは!)。中国二人旅レポート2回目ということで、河南省後編になります。はたして、取材に同行した斎藤君が楽しんでもらえたのでしょうか? 前回の記事で2017年8月17日に天津到着となっていましたが、12日の間違いです……。2017年8月13日。天津市から河南省洛陽市へ高速鉄道で向かいます。日本では信じられないのですが、3、4時間くらい高速鉄道で移動して、トンネルと通過したのがほんの数回。高速鉄道駅の洛陽龍門駅へ到着前に車窓から遊園地が見えたので、撮影。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 34 天津市後編 (写真・文:関上武司)
大家好(中国語で皆さん、こんにちは!)。2023年8月には新型コロナに疾患し、こちらの原稿執筆中も後遺症なのか喉に痛みを感じます。今回は天津市後編ということで、2017年と2019年の天津取材について、レポートします! 2017年5月7日。この日は内モンゴル自治区フフホト市の遊園地の撮影を完了し、空路、天津市へ向かいました。天津市の上空から眺めたこちらのマンション群は、立地的に入居者がいるのだろうかと思いながら撮影しました。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 35 山東省後編 (写真・文:関上武司)
大家好(中国語で皆さん、こんにちは!)。今回の原稿執筆中に中国を題材とした小説作品を書かれていた酒見賢一さんが59歳で他界という訃報が入り、愕然とさせられました。面識はないものの、私の母校の愛知大学の先輩で、一ファンとしては、非常に残念です。 今回は山東省後編ということで、2016年と2019年の山東省取材、現地の衝撃的なワンコについて、レポートします!
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地の橋、人の橋 ――イラン定住旅行記 07「イランのキッチン」|写真・文:ERIKO(定住旅行家・モデル)
「ちゃんと食べてるの? 今日は何を食べたの?」イラン全州の母が子どもへの挨拶代わりとして使うこのことば。いや、全世界の母に共通するかもしれない。母親は何かと家族においしいものをたくさん食べさせたいという思いが強い。ここテヘランで滞在しているショジャエイ家のママン、ソヘイラさんもその一人だ。イラン料理というのは、イタリアンやフレンチなどと比べると日本ではほとんど浸透していなく、イメージが湧きづらい。私もイランへ来るまでほとんど聞いたことも口にしたこともなかった。
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ユーラシア後ろ歩き 3 ウランバートルの悪夢と極楽 (写真・文:多田麻美)
これは夢なんじゃないか? そうならば抜けだせるはず……そう思いながらもがいているうちに、目が覚めた。背中が湿っているのを感じた。冷や汗か寝汗をかいたのだろう。 草原を走り抜ける馬たちを映していたテレビ画面は、いつしかパオの中で民族衣装を着たおばさんがインタビューを受けているシーンへと変わっていた。昔と違い、最近はマイクを向けられても緊張したり口ごもったりする人は少ない。それはモンゴルでも同じらしく、そのおばさんもまるでテレビ慣れしているかのように、よどみなく自然な口ぶりで言葉を発していた。本業は物売りだろうか。言葉が分からないのが本当に残念だった。 理解できない言葉の羅列は、人を眠りに誘う。頭がひどく重たい、何だか頭の中に粘土がぎっしり詰めこまれたみたいだ。
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スリープウォーキング・チャイナ 07 中国の奇祭、春の死神パン祭り 写真・文:無常くん(副書記)
今回レポートするのは、無常くんの専門中の専門、「無常」について。詳しくない方のために簡単に説明すると、無常とは「中国の死神」である。私は学生の頃、この無常に取り憑かれ、以降、人生を棒に振りながら無常の研究に邁進してきた。おかげで、「世界一無常に詳しい男」という誰にも尊敬も嫉妬もされない無用の称号を獲得することとなったが、そんな私でさえ無常についてはまだまだ知らないことだらけ。現に昨年、『中国の死神』なる無常の研究本を出版して以降も、続々と新たな発見をしている。 例えばつい先月、私は中国のとある田舎町で無常を憑依させるシャーマンを取材することに成功した。多くの方にはピンとこないだろうが、それはなかなか画期的な発見だった。というのも、「無常を憑依させるシャーマンは東南アジアにしか存在しない」というのが、従来の定説だったからである。しかし、その定説とは裏腹に、大陸にも無常シャーマンが確かに存在したのである。いや、存在したどころか、私はその田舎町で、無常シャーマンがまるでロックスターのように崇め奉られる、はなはだ異様な光景を目の当たりにすることとなったのだった──。
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ユーラシア後ろ歩き 8 タクラマカン砂漠の満天の星 (文:多田麻美 写真提供:張全)
やがて私は、カシュガルを出て、東へと向かった。今思えばそれは、トルファン経由でウルムチに行くという、かつてレーリヒ一行がたどったのと同じルートだった。 東に行くにつれ、漢族の人口の割合がふたたび増え始め、トルファンに戻る頃には7割ほどになり、街にも漢族の営む商店やレストランが目立つようになった。 帰りのバスで、私は青年4人組と出会った。彼らは新疆の油田で働いている若者たちだった。みな山東省出身で大学を出たばかりだと言う。彼らは計画経済のもと、国家が卒業生に自動的に職をあてがう「統包統配」の制度を適用された最後の世代だった。石油関連の学問を修めていた彼らは、ごく自然な成り行きとして、新疆の油田の仕事をあてがわれたのだ。 山東省から新疆ウイグル自治区……私はまた目の眩む思いがした。ハルビンから新疆ほどではないとしても、東の果てから西の果てまでの、4,000キロはある移動だ。中国は就職のための移動もスケールが大きい。
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ニュー・シャッター・パラダイス 69 右足の靴紐 (写真・文:オカダキサラ)
彼氏が彼女の靴紐を結び直している姿を、見かけたことがあります。多くの場合、男性はアジア系の外国人。日本人の男性があまりやらないように思うので、ちょっと驚きます。 そういえば、漫画でこれに似たシーンを読んだことがあります。 舞台は着物が普段着だった時代の日本。鼻緒が切れて歩けずにいた女性を、通りがかりの青年が見かねて手助けする…、恋の始まりに繋がるエピソードとして描かれていました。
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スリープウォーキング・チャイナ 08 大黒天の逆輸入(前編) ──中国で流行する大黒さま信仰を追って 写真・文:無常くん(副書記)
以前、本連載にて、中国の仏具展に大黒天(耳たぶのデカいおっさんが打出の小槌と福袋を持ったアレ)が大量に陳列されているという奇妙な光景をレポートした(「驚異の仏具展覧会──今年のトレンドは「大黒天の逆輸入」!?」)。 ピンとこない方のために簡単に解説すると、我々がよく知る大黒天というのは、もともとマハーカーラという名のインドの厳めしい神さまだった。それが、チベットに伝わり、中国に伝わり、日本に伝わり、最終的に「大国主命(おおくにぬしのみこと)」と習合することで、例の優しそうなおっさんの姿に変容することとなった。まさにその日本オリジナルの大黒天(以下、「大黒さま」と呼ぼう)が、どうしたわけか中国の仏具展にて大量販売され、さらには中国各地の寺廟や個人宅にて盛んに祀られ始めているというのである。これを奇妙と言わずしてなんと言おうか。 好奇心がムクムクと湧いてくるのを感じた私は、さっそくこの珍現象を「大黒天の逆輸入」と命名し、今なぜ中国で大黒さまが大人気なのか、その謎を追ってみることにした。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 38 遼寧省前編 (写真・文:関上武司)
大家好(中国語で皆さん、こんにちは!)。近所で30年近く営業していた書店&レンタルビデオ店が閉店し、ショックを受けております。今回は胃腸風邪による腹痛に苦しみながら敢行した遼寧省の中国遊園地の取材の様子をご覧ください。 2016年5月5日。この日は早朝から、高速鉄道で吉林省長春市から遼寧省瀋陽市へ移動。赤レンガでレトロな外観の瀋陽駅です。
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フィールドノオト27 東京の動物(写真・録音・文 畠中勝)
2011年7月。都内では「今年はまだ蝉が鳴かないね」と、放射能による危険を危惧する話が飛び交った。その後、本格的な夏が到来。例年のように鳴き始める蝉がいたるところで見られるようになり、ほっと胸をなでおろしたり、「何だかいつもと鳴き声が違うのでは」と耳を疑ったり、新たに巡ってきた疑惑的な季節を受け入れた想いがある。
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案山子X 30:平田のかかし(広島)、君田かかしまつり2015(広島)(写真・文 ai7n)
こんにちは。ai7n(アイン)です。今回は広島県三次市吉舎町の平田のかかしを紹介します。広島県の北部に位置する三次市吉舎町は、人口約5000人の自然豊かでのどかな町です。この町に「平田のかかし」と呼ばれるかかしスポットがあります。かかしがいる吉舎町平田地区は、現在住人が7名の山に囲まれた小さな集落です。最寄り駅であるJR備後安田駅から山の方に向かって2キロ程歩くと、かかしが出迎えてくれます。
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Back in the ROADSIDE USA 04 Goldwell Open Air Museum, Rhyolite
ラスヴェガスから北上すること約200キロ、有名なデスヴァレーの玄関口にあたる374号線から奥に入ったあたりに、ライオライトというゴーストタウンがある(ライオライトとは流紋岩の意)。ライオライトの町に入る砂利道をそろそろ進んでいくと、入口前の荒地に不思議な物体があるのに驚かない人はいないだろう。『ゴーストバスターズ』に出てきそうな、シーツを被ったお化けのような『最後の晩餐』、ピンクのボディがなまめかしい、巨大なレゴを重ねたふうの女体(身長8m近い)、そしてやはり巨大な鉄製の男と、脇にはかわいいペンギン・・・。
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Back in the ROADSIDE USA 43 Cross Garden, Prattville, GA
アラバマの2大都市モンゴメリーとバーミングハムを結ぶ、州間高速65号線に面した小さな町プラットヴィル。町はずれの丘に『クロス・ガーデン』と呼ばれるアウトサイダー・アート空間がある。今年で74歳になるW・C・ライスが1976年以来ずっと書き続け、作り続けてきた数百の十字架と、洗濯機やエアコンの廃品を使った「メッセージ・ボード」が、剥き出しの地面に林立する、なんとも過激な「作品」だ。「ユー・ウィル・ダイ!」「ヘル・イズ・ホット・ホット・ホット!」などと、素晴らしく簡潔な言葉が大地に、頭上に踊るさまは立体の現代詩のよう。
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Back in the ROADSIDE USA 52 Pinball Hall of Fame, Las Vegas, NV
今週号を書いているいま月曜の午後、点けっぱなしのテレビからラスヴェガス銃乱射事件のニュースが流れてきた。アメリカでいちばん好きな場所のひとつで、こんなにも残虐な事件が・・・。これまでこの連載ではラスヴェガス・エリアでネオン・ミュージアムや、砂漠の彫刻庭園ゴールドウェルを紹介してきた。今週は別の州のスポットを取り上げるつもりだったけれど、喪に服すラスヴェガスに哀悼の意を表して、これもラスヴェガスらしいストレンジ・ミュージアムをご覧いただきたい。紅白歌合戦の美川憲一のような奇抜すぎる衣裳とパフォーマンスで一世を風靡し、キッチュ好きのあいだでは名高い「ミスター・ラスヴェガス」とでも呼ぶべきリベラーチェのミュージアムは、ヴェガスの意外な名所である。カジノ・ホテル街を離れた住宅街であるエリアに足を伸ばし、リベラーチェ・ミュージアムを訪れる観光客は少なくないが、そのそばのショッピング・センターの一角にある『ピンボール・ホール・オヴ・フェイム』にまで足を伸ばそうという物好きはそれほど多くない。
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Back in the ROADSIDE USA 53 Enchanted Castle Studios/Natural Bridge, VA
18世紀、19世紀にはヨーロッパ人にとって、新大陸の2大名勝といえばナイアガラ瀑布とナチュラルブリッジという時代があったという。そんな老舗観光地ではあるが、ナチュラルブリッジも近年はもっと派手な後発観光地にすっかり客を取られ、寂れるいっぽうというありがちな末路を辿っていた。そこに登場したのが若きエンターテイナー兼ファイバーグラス・アーティストという珍しい肩書きを持つ男、マーク・クラインである。高校を卒業後、職も住処もなくうろついていたところをファイバーグラス工房に拾われたのが縁で、この世界に入ったというクラインは、ナチュラルブリッジに『エンチャンテッド・キャッスル』と名づけた工房を開き、アメリカ各地の遊園地やミニゴルフ場、その他さまざまな顧客のために怪獣に猛獣、ドラキュラからスーパーマンまで、ありとあらゆる立体作品をファイバーグラスで作ってきた。工房は一般に公開され、だれでも制作のプロセスを見学できるようになっていた。
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幼児に還るお正月@八潮秘宝館
秘宝館の絶滅を嘆くひとは多いけれど、「なら自分でつくればいいじゃん!」という単純明快な真理に則って、自宅を秘宝館にしてしまった兵頭喜貴の『八潮秘宝館』。すでに本メルマガではおなじみだが、その「第5回一般公開」が年明け1月1日元旦!より約1ヶ月間(仕事が休みの日のみ)、にわたって開催されることが決定した。今回のテーマは『幼児プレイルーム・未熟園再稼働』・・・かつて高円寺でひっそり営業していた伝説の幼児プレイルームを、「独自解釈で再現し、再稼働させる」という、これまでに増してビザールな試みとなる。ロードサイダーズ読者に「幼児プレイ」をどう説明したらいいのか・・・僕自身よくわかってないので、プレイルーム「未熟園」営業時に見学の経験を持ち、その閉店にも立ち会った兵頭館長に、僕ら初心者のための解説をお願いした――。
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ディープ・コリアふたたび 12 清州~水安堡温泉(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
ソウル南部の高速バスターミナルの2階は寝具屋だらけだった。何故だろう。あそこで買ったらすぐバスに積み込めるでしょう? その日から使えますよ。日本にこんなバスターミナルがありますか? と訊かれている気分にはもうならない。中にはそのような大韓人もおられるのでしょうね、もちろん日本にはそんな気のきいた寝具屋街付バスターミナルはありません。“気のきいた”店だの人だの物体が、大韓では数多く生み出されてきた。それは気が配られた結果なのだろう、と想像させるもの、ということであって、実際それが便利だとか使いやすいとか心地いいとか、そういうものであるわけではない。むしろその逆であることがほとんどである。何故そんなことに・・・と思うもの、人、ことのほうがたいへん多い。しかし、それは日本人が勝手にそう感じているだけだ、といわれれば、そうですね、というしかない。むしろ合理的快楽、ということを日本人は考慮しすぎだぞ、と大韓の人々のなさる“気のきいた”こと/もの/人その他は諭してくれているのだと、我々はしばしば思う。
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Back in the ROADSIDE USA 66 Zimmerman Lawn Ornaments, Langworthy, IA
イリノイとの州境に近いアイオワ州東部。ジョーンズ郡の郡庁所在地アナモサからハイウェイ151号線を北上すると、まもなくあらわれるのがラングワーシー。町といっても数ブロックの商店や住宅が集まっている程度だが、町はずれのハイウェイ沿いに突然、スカイブルーのゾウが鼻を振り上げていている。庭の飾りにつかう、大小さまざまのセメント製の彫像や装飾を製造販売するジンマーマン・ローン・オーナメンツだ。
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ROADSIDE PHUNOM PENH 電線都市プノンペン
いつもの「ロードサイドUSA」をお休みして、今週は特別編の「ロードサイド・プノンペン」!プノンペンの街を歩き始めて、だれしもまず気づくのが頭上に蜘蛛の巣のごとく張り巡らされた、おびただしい電線の束だ。「I sing the body electric」と詠ったのはウォルト・ホイットマンの『草の葉』だったが、これはもう「プノンペン・シングス・ボディ・エレクトリック!」と言いたい、一種芸術的な「電線都市」の姿であろう。電線を地中に埋めるインフラ整備がまったく進んでいないだけのことだが、何十本もの電線がからみあい、まとまりほぐれつつ建物と建物をつなぎ、空を横切るさまは、なんだかプノンペンという巨大生物の黒い血管のようにも見えてくる。
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キャバレー現代の思い出
先週末、新宿RED Photo Galleryで開催中の『おんなのアルバム キャバレーベラミの踊り子たち』展会場でトークイベントを開いたのだが、スタート間際になって突然、ずっと昔『珍日本紀行』で日本の隅っこを巡っていたころ、伝説的なキャバレーを北海道の小樽で取材したことを思い出した。1995年に撮影したその店『キャバレー現代』のフィルムを引っ張り出し、急いでスキャンしてトーク会場に持参。来てくれたお客さんに楽しんでもらった。いまは文庫版になっている『珍日本紀行 東日本編』には小さく載っているが、せっかくなので、スキャンし直した写真をここでご覧いただきたい。キャバレー現代の話を初めて耳にしたのは、1995年に取材する少し前だったと思う。小樽に「おばあさんホステスがいるキャバレー」じゃなくて、「おばあさんホステスしかいないキャバレー」があると聞いて、それは行かねば!とさっそく足を運んでみたところが、運悪く定休日。
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Back in the ROADSIDE USA 71 M.T. Liggett’s Roadside Sculptures, Mullinville, KS
西部劇で有名なカンザス州ダッジシティから遠くない、マリンヴィルという農村を通り過ぎると、国道400号線沿いにいきなりあらわれる奇妙な彫刻というか、トーテムポールのような作品群。1930年にこの地で生まれ、一家の所有する農場で育ったM.T.リゲットは、空軍に長く従軍したあと、1987年に退役して生まれ故郷に戻ってきた。農作業の合間にコツコツ作っては自分の農地の柵沿いに並べ立てて、ドライバーたちを当惑させたり楽しませたりして、すっかり地元の名物だ。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 08 江西省(写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)軟体トラベラーの関上武司です。今回は江西省南昌市の巨大観覧車や九江市で建設中だった大仏様、名峰・廬山(ろざん)について紹介します。2015年元旦は福建省アモイ市から乗車した寝台列車で目覚め、江西省南昌市へ向かいます。列車は山間部を走っていたのか、車窓からは昔ながらの木造住宅、廃工場とかを眺めていました。この日の13時過ぎに南昌駅に到着し、タクシーで目的地の南昌之星遊楽園へ。こちらの遊園地には中国最大の観覧車の威容を遠くからでも確認できます。
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案山子X 50:里美かかし祭(茨城)(写真・文 上迫愛)
こんにちは。上迫愛です。今回は茨城県常陸太田市大中町の里美かかし祭を紹介します。常陸太田市は茨城県の北東部にあり、茨城県の自治体で最大の面積を持つ自然豊かな街です。常陸太田市大中町にある里美ふれあい館で、毎年10月末から「里美かかし祭」が開催されます。祭の期間中に様々なイベントが開催され、1ヶ月以上かかしが展示されます。今年で31回目を迎える歴史のあるかかし祭です。市町村合併前は里美村という名称だったこの地域。最初は商工会が中心となり里美かかし祭が始まりました。里美村が米どころであり、かかしが農業のシンボルである事から、かかしをモチーフにした祭になったそうです。
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案山子X 特別版2:私の好きなかかしベスト60(写真・文:上迫愛)
こんにちは。上迫愛(うえさこあい)です。前回に引き続き50回記念の特別版ということで、「私の好きなかかしベスト60」の発表します。私が今まで見てきたかかしは1万体位なのですが、その中から自分のお気に入りのかかしを紹介します。全てのかかしが好きなのだけど、特に好きだったり思い入れのあるかかしを選んでいるので、かなり偏っていると思います。
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Back in the ROADSIDE USA 102 RV/MH Hall of Fame, Elkhart, IN
アメリカ中西部の中心に位置するインディアナ州。人口600万人あまり、シカゴから飛行機で1時間、車でも州都インディアナポリスまで3時間ほどと、近所の田舎という感じだ。全米最大のカー・レース『インディ500』あり、レジー・ミラーやジャーメイン・オニールを擁するバスケットボールの最強チームのひとつ、インディアナ・ペイサーズありと、アメリカン・スポーツ・ファンにはよく知られた存在。でも行く人は少ない。インディアナの公式なキャッチフレーズは「アメリカの十字路」。1937年にこの呼称が定められた当時、アメリカでもっとも人口が多かったことと、いまでもアメリカのどの州よりもハイウェイが集中・交差している州であることによるが、アメリカ人がインディアナ州民を呼ぶ一般的な呼称は「フージャー(Hoosier)」。
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Back in the ROADSIDE USA 106 アメリカ音楽に呼ばれて・後編
先週に続いて、旅の途中で立ち寄った「アメリカ音楽ゆかりのスポット」シリーズを2週にわたって一挙掲載する「アメリカ音楽に呼ばれて」、今週は後編を! 1005 St. Peter Street, New Oreans, LA――1991年4月23日、ニューオリンズ中心部のセントピーターハウス・ホテル(St. Peter House Hotel)37号室で、元ニューヨーク・ドールズのジョニー・サンダースが死亡しているのが発見された。死因はヘロインの過剰摂取。その月の初めに日本公演を終えたばかりのジョニーは、まだ38歳の若さだった。ホテルは現在も営業中、37号室はパンクロック・ファンの聖地として、いまも人気の一室である。
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ディープ・コリアふたたび26 蔚山~大邱(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
かつてこの町には捕鯨の拠点港があった。そのため今でも鯨料理の店がたくさんある。鯨を食わせるところなら釜山にもいくつもあるが、店の数の多さ、料理の豊富さと質の良さでは蔚山に軍配が上がるだろう。我々が入った店には往時の捕獲の様子や港の風景を写した写真が壁に飾られていた。店の娘さんは自分の叔父が捕鯨をやっていたのだ、と胸を張りはしなかったが少し誇らしげに我々に告げた。蔚山は大きな町で、多くの会社や工場を有している。特別市だ。人口も多い、税収も多い、太和江駅が旧蔚山駅だからといって、昔の人々が暮らしているわけではない。そんなことは当たり前だろう、と駅前に長々と幅広く延びる道路の歩道を歩きながら、町自体に教えられた。右側も左側もモーテルとホテルだらけ。それも10階建てやそれ以上の大型のものがやたらに多い。こんなに人が泊まるのか。そんなにたくさんの人が一時に番うことがあるのか。そういうことがあるかもしれないからこそ、こうして態勢を整えているのです。備えよ常に。という声も聞こえてくる。
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日本性祭紀行7 宮城県石巻市の「名振のおめつき」 (写真・文:深沢佳那子)
「名振のおめつき」は宮城県石巻市雄勝の名振地区で行われる火伏せの祭りだ。火伏せの祭りというのは、つまり火災・火事除けの祭りのことである。このおめつきは1783年にこの地で大きな火災が起きたことをきっかけに始まったものだという。男根崇拝はこれまで紹介してきたように五穀豊穣や子宝祈願の祭りによく見られるものだが、火伏せとの関係もしばしば見られる。特に福島県の南会津地方では火伏せの男根として家を建てるときに屋根裏に木彫りの男根を奉納するという習俗があるという。一般にこれらは男根の持つ呪力によって火災を除けるという信仰であると考えられている。さて、名振のおめつきが開催されるのは毎年1月24日だ。名振地区は石巻市の中でも特に海岸沿いの地域であり、真冬はとてつもない寒風が吹きすさぶ。わたしが初めておめつきを訪れたときも気温はマイナス5℃を記録し、更に雪と強風で体感温度はかつて感じたことがないほどの寒さであった。
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おもしろうてやがてかなしき済州島紀行8 石のいろいろ
10年前に取材したものの、発表する機会がなかった珍スポット開陳シリーズ、済州島オマケ誌上旅行の最終回となる第3回は、「石関係」の観光施設を3つご紹介。済州島は韓国最大の島であり、火山島でもある。島の中心に存在する漢拏山(ハルラサン)は標高1950m、韓国最高峰の名山で、数多くの小火山が主峰を取り巻いている。というわけで済州島には石の文化が古くから伝わってきた。今回ご紹介する「済州彫刻公園」「済州石村公園」「耽羅木石苑」(現在は済州石文化公園に改称)とも3ヶ所とも現在まで営業中のようなので、コロナが終息したぜひ早めの来島を!
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 19 石川県2
総大理石の宮殿は朝市通りのオアシスだった――能登半島の突端近く、奥能登と呼ばれる地域の核である輪島。高級漆器の代名詞・輪島塗で知られ、朝市通りと呼ばれる商店街で毎朝開かれる朝市は平安時代から続く歴史を持ち、千葉県勝浦市の勝浦朝市、岐阜県高山市の宮川朝市と並ぶ、日本三大朝市に数えられるそう。 その朝市通りに異様なオーラを放つ白亜の宮殿(だった)、イナチュウ・コスモポリタン。創業・昭和4年の老舗である輪島塗大手生産者・稲忠が1992年、つまりバブル末期に開館させた美術館だ。白亜のバロック建築はヴェルサイユ宮殿を模したものという。
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Paradise Lost 二度と行けない珍日本紀行 20 石川県3
仏教テーマパークで心も体もリフレッシュ――北陸きっての珍スポットとして長く親しまれた?「ユートピア加賀の郷(さと)」。日本中がバブル祭に踊り始めた1987年に開園、「仏教テーマパーク」というハイブリッドすぎるコンセプトが斬新だったが、年々入場者が減っていき、親会社の関西土地建物も経営不振に陥り1998年に破産宣告。翌99年に遊園地部分のユートピアランドが閉園したのを皮切りに、順次閉鎖されていく。そこまでなら普通(?)のバブル遺産として忘れられるはずだったが、ユートピア加賀の郷には劇的な第二章が待っていた。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 24 広東省後編 (写真・文:関上武司)
大家好(中国語で皆さん、こんにちは!)。コロナ禍の影響もあってか、よく利用していたり、注目していたりした建物、店舗がなくなってゲンナリしております…。今回は広東省のレポート3回目ということで、個人的に中国国内でも最も勢いを感じる遊園地と、8割以上廃墟化して従業員が自給自足に励む!遊園地を紹介します。 2016年12月28日。この日は香港、マカオを経て、広東省珠海市へ。マカオと珠海の境界にあるゲートを越えると、印象的だった看板は深海魚刺身。東シナ海、南シナ海、ニュージーランドの他に、周辺諸国と領有権で揉めている南沙諸島(スプラトリー諸島)、西沙諸島(パラセル諸島)、の深海魚を扱っているとのこと。ご存知のように、中国は周辺の様々な国と領土問題を抱えていますが、どうなるのか予測不能です。この日の昼食は刺身ではなくて、近くの牛肉麺を食べていました。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 27 新疆ウイグル自治区後編 (写真・文:関上武司)
大家好(中国語で皆さん、こんにちは!)。ロシアがウクライナへ侵攻し、様々な物価が上昇。コロナ禍もあって、いつになったら中国で撮影できるのかわからない状況の軟体トラベラーの関上です。中国政府は日中戦争の日本軍の行為を批判しているので、ロシアのウクライナ侵攻についても「それはおかしいだろう」と積極的に止めてほしいところです。今回は新疆ウイグル自治区後編ということで、灼熱のトルファンと涼しい気温ながらもピリピリした空気だったウルムチ市のレポートをお届けいたします。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 特別編 (写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)軟体トラベラーの関上武司です。今回は当連載の特別編ということで、2022年11月に上梓した拙作『中国遊園地大図鑑 西部編』について紹介させていただきます。 2013年からブログ「軟体レポート」で中国の人があまり行かない観光地とかを紹介していたところ、2016年1月にパブリブ社の濱崎氏から書籍出版の依頼がありました。当初は上下巻の予定だったのが、4冊目の『西部編』でようやく完結。本業技術職のサラリーマンの処女作が4部作になるとわかっていたら、書籍化は躊躇していたかもしれません。まさかこんな狂ったテーマで中国全地域制覇を達成(日本で訪問していない県も複数あるのに)、感無量です。
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中華街を行ったり来たり 06 チャイナタウン、路地裏の美味しいもの紀行 前編 (文:アーバンのママ 写真:アーバンのママ、都築響一)
バンコク・チャイナタウンをめぐる旅の6回目。おなじみアーバンのママによる「路地裏の美味しいもの紀行」をお届けする。 チャイナタウンだから食は充実に決まっているが、行ったひとはわかるとおり観光客向けと地元の華人向けのレストランが入り乱れすぎて、なかなかベストの選択肢を探すのが困難でもある。今回はチャイナタウンの形成に大きく関わった潮州人(中国広東省東部の潮州・汕頭地域にルーツを持つ)が伝えた潮州料理の路地裏名店を食べ歩き、満腹したところで暗い路地の奥に突然トレンディなバーが集まるソイ・ナナにお連れする。バンコクの風俗事情に詳しいかたならソイ・ナナという名前で遠い目になってしまうかもだが、あれは西側スクンビットのソイ・ナナ。こちらとは別なのでお間違えなく。ただしヤワラートの大通りとかは観光客で溢れてるので大丈夫だけれど、暗い裏道は治安が悪い場所もあるので、くれぐれもお気をつけて。
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スリープウォーキング・チャイナ 05 驚異の仏具展覧会 ──今年のトレンドは「大黒天の逆輸入」!? 写真・文:無常くん(副書記)
民俗学と言えばフィールドワーク、フィールドワークと言えばインタビュー、インタビューと言えば、人との対話。現に、本連載でとりあげた「広場舞」にしろ「お盆フェス」にしろ、そこにいたのは人、人、人。そう言えば、そもそも本連載のテーマが「中国のフツーの〈人〉」でしたね。人は面白い。人間っていいな。私もそう思います。でも、本音を言わせてください。人間っていいけど、正直ときどき面倒くさくないですか? ウザくないですか? 今、私はそんなモードです。 私はそんなモードに陥ると、人と関わるのは一旦お休みします。そして、その分なるべくモノとの対話に時間を割くようにします。「モノとの対話」なんてキザな言い方をしましたが、要するに私の場合は、趣味の仏像鑑賞に出かけます。仏像をながめて、ただニヤニヤするだけ。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 36 黒龍江省前編 (写真・文:関上武司)
大家好(中国語で皆さん、こんにちは!)。令和5年は転居して、転居先で多くのワンコと知り合うことができて結果オーライです。私は犬の飼育経験がないくせに、犬依存症という自覚症状があり、数日、犬との交流がないと、禁断症状で手がぷるぷる震えているかもしれません。そういうわけで、今回も現地のワンコが登場します。 2016年1月、自分のブログの「軟体レポート」に中国や愛知県の珍スポットの記事を投稿していたところ、パブリブ社のハマザキカクさんから「中国遊園地」での出版依頼がありました。ひゃっほぉぉぉっ!この年のゴールデンウィークから本格的に中国遊園地の取材を始めることになります。が、出発前日にどうやら胃腸風邪に疾患。ハマザキカクさんにもピンチと電話で伝えておきます。
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ユーラシア後ろ歩き 5 ハードでスリリングな国境越え (写真・文:多田麻美)
「け、K―ETAは取得できた? 」 息を切らせながら、航空会社の青年は言った。 「できました。ただ、さっきのフライトのキャンセルがうまくできなくて。次のフライトのチケットは見つかったんですが……」 「ああー、よ、良かった! キャ、キャンセルしなくていい! 新しいチケット、買っちゃた? まだ? ああ良かった! それも買わなくていい! 飛行機が故障しているんです。修理が必要なので、まだ何時間かは飛べない。だから今から乗る手続きをしても間に合います!」 まさに奇跡だった。 私の手際がもっと良くて、すぐさまキャンセルなどができていたら、この奇跡はむしろ残念な出来事に変わってしまっただろう。いわば私は、自分の不器用さに救われたのだった。
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ユーラシア後ろ歩き 10 チベット高原での修羅場 (文・写真:多田麻美)
私や他の旅行客たちが期待とともに思い描いていたチベットのイメージ、つまり人間がまだ汚していない、清らかで崇高な最後の秘境というイメージは、排せつ問題という、きわめて卑近で切迫した問題によって、押し流され、かき消えそうになっていた。それは夜行バスという古びた殻の中で、混濁の度を増し、人の心の闇のどす黒さのみならず、ある種のきな臭さまで帯び始めていた。 正式なチケットを買っていない、定員オーバーの乗客をたくさん載せていたバスは、検問所が近づくと、いったん停まり、定員オーバーの客を降ろした。
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ユーラシア後ろ歩き 11 ヨーグルト祭りとインドの中のチベット (文・写真:多田麻美)
ラサでの滞在は、夢心地だった。 まず、頭痛や息苦しさや眩暈といった、高山病の症状を抑えるため、深呼吸をしながら、夢遊病者のようにゆっくり歩かざるを得なかった。 夏のチベット高原の異様に明るい陽射しと、雨傘として手にしていた傘が数分後には日傘として役立ってしまうような気まぐれな天気も、初めて訪れる者には「非日常」そのものだった。 朝、寝不足のまま目を醒ました私は、まだ頭痛はしたものの、無理のない範囲で外に散歩に行くことにした。早くラサの街を見てみたいという気持ちと、前の日はリンゴ一つしか食べていなかったことによる空腹が原動力だった。
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Back in the ROADSIDE USA 07 Rock City Gardens, Lookout Mountain
テネシー州南東部、ジョージア州境に近いチャタヌガ。19世紀から南部の主要工業都市だったこの都市は、名前こそエキゾチックだが、1970年あたりには全米でもっとも大気汚染のひどい都市という、ありがたくないお墨付きをもらうほどに汚れきっていた。ダウンタウンでは、昼間でも自動車のヘッドライトをつけないとならない日が年間150日以上。呼吸器系の病気発症率はアメリカ平均の3倍以上だったというから、事態は非常に深刻だったのだ。それから30年あまり、現在のチャタヌガは美しく再開発された模範都市として、全米から観光客を集めている。チャタヌガといえばグレン・ミラーの『チャタヌガ・チューチュー』を思い出す人が多いだろうが、実はチャタヌガでいちばん、というよりテネシーでいちばん、というより南部一帯でいちばんの観光名所として全米にその名を轟かせてきたのが、ルックアウト・マウンテンにある『ロック・シティ』。音楽じゃなくて岩のほうのロックです。
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Back in the ROADSIDE USA 35 Gene Cockerel’s Yard Art, Canadian, TX
ルート66上に位置するテキサス州マクリーン。人口2000人ほどの小さな町のはずれにジーン・コクレルと彼の家族が住む家がある。庭にはイエス・キリストやバッファローや宇宙人や、ダラスカウボーイズのチアガールが立っている。ジーン・コクレルが「コンクリートの彫刻」を作りはじめたのは7、8年前のこと。「毎日ハンティングやフィッシングにでかけるわけにもいかないんで」、なんとなくコンクリートで作りはじめたのが、いまでは20体以上。さらにハイウェイ沿いの丘の上には、巨大な恐竜まで設置されている。いずれも素朴なタッチと表情が楽しい。
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赤線酒場×ヤミ市酒場 ~盛り場のROADSIDERS~ 第2回 神奈川県川崎市(文・写真:渡辺豪+フリート横田)
酒場には、過去の記憶が閉じ込められている。遊廓家・渡辺豪と路地徘徊家・フリート横田が、かつての赤線とヤミ市で呑み、過去から湧いてきた言の葉の海に身を沈める。第ニ回に訪れた地は、日本の重工業、もっと言って戦後の高度経済成長を支えた京浜工業地帯の中心都市、川崎。川崎駅周辺には、かつて大工場で汗を流した男達が集った色街や古酒場が残り、その蠱惑的風景は今も人を惹きつける。今回からは各分野のオーソリティをゲストとしてお迎え。語り、飲んだ第一回ゲストは、ベストセラー『ルポ川崎』の著者、音楽ライターの磯部涼氏。音楽を核にして、この街・人を見つめてきた気鋭のライターと語り尽くす。
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ディープ・コリアふたたび 18 永登浦~珍島(画・写真・文:幻の名盤解放同盟)
目が醒めると窓の外は曇っていた。ねずみ色、といってもどういうねずみなのか、そこのところを避けられない。二十日ねずみではなく、ドブねずみともちがう。想像の中にプリセットされている家ねずみの色ということになる。むしろ、幼稚園のときに渡された灰色のクレヨンの巻紙のところにねずみ色と書いてあり、そのクレヨンの色をそのまま、ねずみと結びつけたまま今まで生きてきたことが、ねずみ色のイメージとして保持されている、ただそれだけのことに思えてきた。大韓民国でねずみを見た記憶はあるか。己に問うてみる。釜山のタワーの下方周辺で20年ぐらい前に見たことがある。ソウルの鐘路の路地で25年ぐらい前に見たような気がする。そのぐらいのものだ。ねずみは灰色ではなく黒に近い茶色だった。
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ユーラシア後ろ歩き 9 読経に守られた難所越え (文・写真:多田麻美)
神聖なるチベットの大地は、はるか遠くにあってこそ、人に強い憧れを抱かせるのだろう。そうは思っても、自由な個人旅行が好きな者にとって、現在のチベットはあまりにも遠すぎる場所となってしまった。聞いた話では、限られた移動手段で入境し、数の限られたツアーに参加して、高い外国人向け料金を支払いながら旅行する以外に選択肢がないと言う。安全なことは安全かもしれないが、あまりにもパターン化されていてまるでファーストフードの何とかセットみたいだ。自由な旅が好きな者にとっては不粋この上ない。 だが幸い、私が訪れた2004年頃のチベットはもうちょっと緩かった。もちろんそれも、私自身が少し鈍く、向こう見ずだったからだが。
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ユーラシア後ろ歩き 12 いざ、チョモランマへ (文・写真:多田麻美)
花で彩られていたのは、花壇だけではなかった。 ノルブリンカ宮殿では、色とりどりの花を植えた植木鉢があちこちに並べられていて、その鮮やかで華やかな色合いは、建物や公園全体に色のアクセントを添えつつ、お祭りの楽し気な雰囲気をも彩っていた。 私は宮殿などの建物もくまなく見て回った。それらは息をのむほど素晴らしかった。ダライラマ14世の宮殿、クテン・ポタンでは、随所に精緻な文様と洗練された家具があり、軒の装飾なども、変化とバラエティに富んでいて、見応えがあった。
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ユーラシア後ろ歩き 14 深く謎めいたラサの夜 (文・写真:多田麻美)
今はどうなのか分からない。だが、私が訪れた21世紀初頭のチベットは、まだまだ理性だけでは受け入れがたい、不可知な闇の世界への入り口があちこちにあるように見えた。 印象に残っている風景がある。今となっては幻のようだが、確かに目にした風景だ。 それはある町の、警察署のすぐ近くでのことだった。用事を終えた私は、食事でもしようと、裏通りの地味な喫茶店に入った。席を探しながら気づいたのは、店の空間が普通でないことだった。通り沿いの部屋は飲食用だが、奥にベッド付きの部屋があり、着飾った女性が座っていたのだ。 私ははっとした。ここって売春宿じゃないだろうか? 客が来たらきっと、奥の部屋に入れて、扉を閉めるのだ。
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ユーラシア後ろ歩き 15 天の湖、ナムツォへ (文・写真:多田麻美)
ナムツォに行こう、と決めたものの、私は肝心の行き方をおじさんに聞くのを忘れていた。外国人に人気の観光地であれ、地元の人の間で有名な巡礼地であれ、きちんとアップデートされた正確な情報がないと、なかなかたどり着けないどころか、かなり無駄足を踏みかねないということを、私は身に染みて知っていた。どこかにきちんと辿り着きたければ一番確実なのは、そこに最近行ったことある人に話を聞くこと。数人に聞いて比較できれば、さらに安心だ。 次の日、私は散歩をした後、私は恐る恐る例の店を覗いてみた。情報を得たいという気持ちやおじさんの恋愛への応援より、怖いもの見たさの気持ちの方が若干、勝っていた。
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ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行 09 湖南省(写真・文:関上武司)
大家好!(中国語で皆さん、こんにちは!)軟体トラベラーの関上武司です。今回は湖南省長沙市で目撃したかなり衝撃的だったパレードやお化け屋敷について紹介します。2015年1月3日。この日は江西省九江市から南昌市を経由して高速鉄道で湖南省長沙市へ。「長沙世界の窓」という何やら面白そうなテーマパークがあるとのことで行ってみると、到着した時点で午後1時過ぎに。入場ゲート付近の屋台で長沙名物の臭豆腐(強烈な臭いなので一般的な日本人は敬遠するはずですが、私にとっては貴重なカロリー補給源)を昼食としました。
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ユーラシア後ろ歩き 13 大地の母神のふもとで (文・写真:多田麻美)
実入りの悪い客を、上前を撥ねた上で、他の業者の団体客の中に押し込む。 もちろん輸送効率は良くなるのだろうが、高いチャーター料金を取られながら団体客の中に押し込まれた側からすると、理不尽だ。乗車料金がいくらかでも払い戻されるのなら、我慢できるしむしろ大歓迎だが、すでに成立してしまった値段交渉をやり直すのは、中国ではとても難しい。 すべてはチョモランマのためだ、とぐっと耐えた。
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- ハマザキカク (21)
- 金原みわ (4)
- 室矢憲治 (1)
- 茅野裕城子 (3)
- イチゴドロボウ (4)
- 四方宏明 (1)
- 菅原養史 (2)
- 菊地智子 (4)
- 幻の名盤解放同盟 (27)
- 中山亜弓 (6)
- 鈴木里子 (1)
- 石川次郎 (6)
- 吉井 忍 (45)
- 薮下“YABBY”晃正 (2)
- 関上武司 (43)
- ウズメゆきこ (11)
- 平松洋子 (1)
- パリッコ (1)
- いしいしんじ (1)
- 矢野優 (1)
- 水野阿修羅 (2)
- 俵万智 (1)
- 向井康介 (1)
- 玉袋筋太郎 (1)
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- 村上巨樹 (10)
- 江森丈晃 (1)
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- 鈴木義昭 (12)
- 土岐麻子 (1)
- スナック・アーバンのママ (31)
- 安田謙一 (1)
- 林雄司 (1)
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- 遠山リツコ (1)
- 髙城晶平 (1)
- 内田真美 (1)
- 山崎幹夫 (1)
- 小山ゆうじろう (1)
- コナリミサト (1)
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- 谷口菜津子 (1)
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- 佐藤健寿 (1)
- 鴻野わか菜 (1)
- 和知徹 (1)
- 九龍ジョー (1)
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- ツレヅレハナコ (1)
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- Mistress Whip and Cane (1)
- 佐久間裕美子 (1)
- 吉岡里奈 (1)
- 渡辺豪+フリート横田 (9)
- 松永良平 (2)
- 劔樹人 (1)
- 堀江ガンツ (1)
- 見汐麻衣 (1)
- 小宮山雄飛 (1)
- 朝吹真理子 (1)
- スズキナオ (1)
- 益子寺かおり/ベッド・イン (1)
- 中尊寺まい (1)
- 小谷実由 (1)
- 川田洋平 (1)
- 向田麻衣 (1)
- 呉(ゴ)ジンカン (2)
- 小石原はるか (1)
- 兵庫慎司 (1)
- YOSHI YUBAI (1)
- ヴィヴィアン佐藤 (1)
- とみさわ昭仁 (1)
- 波磨茜也香 (23)
- 伊藤宏子 (1)
- 理姫 (1)
- 大井由紀子 (1)
- 古賀及子 (1)
- たけしげみゆき (4)
- いぬんこ (1)
- 飯田光平 (1)
- 逢根あまみ (1)
- 椋橋彩香 (24)
- アツコ・バルー (10)
- マキエマキ (1)
- 村上賢司 (1)
- くまがいはるき (7)
- 桑原圭 (1)
- 直川隆久 (1)
- 深沢佳那子 (10)
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- 高橋洋二 (1)
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- 若生友見 (14)
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- 押スノ踏マズ (3)
- 松吉満 (3)
BOOKS
ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)
ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。
本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。
旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。
ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)
稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。
1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!
ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)
プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。
これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。
ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)
書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい
電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。
ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)
伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!
かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。
ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)
――ラブホの夢は夜ひらく
新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!
ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)
――秘宝よ永遠に
1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!
捨てられないTシャツ
70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。
圏外編集者
編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。
ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014
こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。
独居老人スタイル
あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。
ヒップホップの詩人たち
いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。
東京右半分
2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!