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女性のようにオシッコできたら―― 岡田快適生活研究所の孤独な挑戦

松山空港に着いて外に出てみると、空気が煙って見えるほどの豪雨だった。とりあえずタクシーに乗り込み、グーグルの地図を見せると、ほんの10分ほどで指定された住所に着いたのだが・・そこは田んぼが広がる中の一軒家。ここがほんとにそうなの? タクシーの運転手さんも、「確かめるまで待っててあげましょうか」と心配顔だ。岡田快適生活研究所――いま性同一障害のひとや、女装子さんたちの注目を集める「ペニストッキング」をはじめとする、素晴らしく独創的なラインナップのスーパー特殊下着を次々に開発・販売しているメーカーが、東京でも大阪でもなく、松山の市中ですらなく、失礼ながらこんな場所にあって、こんなに普通の家から日本全国に送り出されているとは、だれが想像できようか・・。

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夏の終わりの絶叫体験

まだバブルの酔いから日本中が覚めきらなかった1992(平成4)年、後楽園ゆうえんち(現・東京ドームシティアトラクションズ)で『ルナパーク』というイベントが始まった。そのルナパーク内で異彩を放っていたのが、お化け屋敷だった。『麿赤児のパノラマ 怪奇館』と名づけられたそのお化け屋敷は、それまで常識だった場面ごと、部屋ごとに怖がらせるスタイルではなく、屋敷全体にひとつのストーリーを設定し、そのストーリーにお客さんが能動的に関わっていくという、考えてみればかなり現代演劇的なアプローチで、すごく新鮮だった記憶がある。

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捨てる神と拾う神――森田一朗すてかんコレクション

捨てられてしまうもの、忘れられてしまうものを集め、記録するようになってずいぶんたつが、その道の大先輩であるひとりが森田一朗さんだ。森田さんはフリー・カメラマンとして自分の写真を撮るとともに、昔の写真や絵葉書など、明治から昭和にかけてのヴィジュアル・ヒストリーの収集でも知られている。ずいぶん前に(調べてみたら1998年だった)、筑摩書房の『明治フラッシュバック』というシリーズで『サーカス』『ホテル』『遊郭』『働く人びと』という4冊の貴重な資料集を出していて(いずれも絶版)、そのテーマの選び方からも森田さんの、街とひとを見つめる目線が伝わってくる。

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欲望をデザインする職人芸  ――佐々木景のグラフィック・ワーク 前編

いまから10年以上前、『珍日本紀行』の文庫版をつくっているときに、僕は佐々木景という若いデザイナーに初めて会った。「東日本編」「西日本編」の2冊合わせて1100ページを超える膨大なデザイン作業を、数人の若いデザイナーにチームを組んでもらって進めたのだが、そのひとりが彼だった。ひょろっとしたからだに優しい笑みを浮かべて、でも会うたびにタトゥーが増えてシャツから透けて見えていて、人間的にも非常に興味深かった景くんは、それからずっと現在に至るまで「自分のビジュアルアート」と「ハードコア・パンク(バンドのグラフィック)」と「AVパッケージ」という3本の柱を軸に活動を続けてきた。

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レアグルーヴのリアリティ――佐々木景のグラフィック・ワーク 後編

2008年だから、いまからもう5年前になる。現地で撮影した写真で展覧会を、というグループ展に誘われて、インドネシアのジャカルタを初めて訪れた。短期間のうちに何度か通って撮影した写真は、展覧会以外にこれまで発表の機会がなかったので、近いうちに見せられたらと思っているが、「インドネシアといえば、バリ」みたいな薄っぺらい予備知識しかなかった僕にとって、そのころよく通っていたタイのバンコク以上に清濁併せ呑むというか、ブライトサイドとダークサイドが混沌となって交じり合うジャカルタの空気は、ものすごく刺激的だった。

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ふぐりのうた――妄想詩集『エロ写植』

「おりゃあ」「おおおおお」「つああああ」「べむっ」「ひぐっ」「いやあああああ」・・・喘ぎなのか絶叫なのか、絶頂なのか。言葉にならない言葉がページをびっしり埋めている。別のページを開いてみると、そこには「餞別ってこの刀のことだったのね!」「20本も咥えてきたんだーー」「なんであたしと同じなのよ」「これはまさしく俺好みのシチュエーション!!」「あなた本当はやさしい人だって」・・・わけのわからない自動筆記現代詩のような文章が、ずらりと並んでいる。このページだけを見せられて、これがいったいなんなのか、瞬時に理解できるひとがどれくらいいるだろう。

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世界を桃色に染めて――本宮映画劇場ポスター・コレクション1

去年8月、筑摩書房のウェブマガジン連載『独居老人スタイル』(12月19日単行本発売!)で取り上げた福島県本宮市の、奇跡の映画館・本宮映画劇場と、館主の田村修司さんの物語を、本メルマガ読者のみなさんはお読みいただけただろうか――。取材時に田村さんから見せてもらった秘蔵ポスター&チラシ・コレクションは記事中でたっぷり紹介したが、今年9月に開催された『アサコレ ASAKUSA COLLECTION』で、さらなる秘蔵コレクションの一部が公開された。「まだこんなにあったんだ!」と衝撃を受けた僕は、取るものもとりあえず本宮を再訪。去年の取材では見ることのできなかった、ウルトラディープなポスター・コレクションに対面し、しばし言葉を失いつつ、汗みどろで複写に没頭した。

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ショッピングバッグ・ダディ――BOOKS & PRINTS 紙袋展

かつての繁華街の一角に、築50年以上という古ぼけたビルが建っている。KAGIYA=かぎやビルと呼ばれるその建物は、2012年に地元の不動産会社がオーナーとなって、ギャラリーやセレクトショップの入るトレンディな場所として再生。その2階に入っているのが『BOOKS AND PRINTS』。浜松出身の写真家・若木信吾さんが経営する、ハイエンドなセレクトブック・ショップだ。いかにも昭和らしいビルの階段を上った2階にある店は、建物の躯体を露わにしたクールな内装に、かなりセレクトされた写真集や画集が並べられて、地元には失礼ながら代官山か表参道にありそうな雰囲気。そこで何冊か気になる本を買って、袋に入れてもらったら、白地の紙袋にチャーミングな手描きのイラストが描かれていた。

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頭上の建築から――「あなたと建築する」アーティスト 都築響子(文:イチゴドロボウ)

こんにちは。イチゴドロボウです。これまで80年代ファンシー絵みやげコレクター山下メロさん、手帳類収集家志良堂正史さんの紹介をさせていただきましたが、この度また、新しい表現に取り組む逸材に出会いました。今回は「建築」をメディアに表現するアーティストを紹介いたします。「建築」という言葉にはどんな印象があるでしょう。

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ソフビになったホームレス

特撮ヒーローや怪獣などとは別種の、変なソフビが目につくようになってきたのはここ数年の気がする。キモかわいい系だったり、ひたすら不気味なグロテスク系だったり、特撮怪獣みたいに一般的ではない、つまり大量には売れないであろう小規模生産の、いわばインディーズ・ソフビが、数千円から時に1万円を超すような値段でリリースされ、それがまた瞬時に完売というようなケースが、僕のような門外漢にも聞こえてきた。アート・ギャラリーの展覧会にソフビが登場することも珍しくなくなってきた。去年、上野のモグラグ・ギャラリーでトークをしたとき、ある作家から箱入りのソフビをもらった。それは怪獣でもキモかわいい生物でもなく、高知のカツオ一本釣り漁師のソフビだった。こんな、おっさんのソフビばっかり作ってるんですと彼は言う。それを持ってほぼ毎月、海外の展覧会やイベントに行ってるという彼の肩書は「フィギュア・イラストレーター」。デハラユキノリは、異端なひとが多い最近のソフビ業界のなかでも、とびきり異端な作家だろう。そのデハラさんがふたたびモグラグ・ギャラリーで展覧会を開く。

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「野生設計」と中国描き文字コレクション(文・写真:吉井忍 写真提供:黄河山)

先月のロードサイダーズ・ウィークリーで上海のダンスホール・シーンを紹介してくれた吉井忍さん。今度は北京で「手描き文字」の話題を採集してきてくれた。ここ数年、日本では描き文字がちょっとしたブームだけど、漢字の本家、そして書の本家である中国では、いったいどんな描き文字がストリートを彩っているのだろう!

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だれも知らなかった土方重巳

阪神間モダニズム、という言葉をご存じだろうか。大正から昭和初期にかけてのモダニズム文化のなかで重要な役割を果たした大阪と神戸の間の高級住宅地――いまで言う尼ヶ崎、西宮、芦屋市あたり――で育まれた、オシャレでありながら品の良いライフスタイル。いまでもなんとなくその名残が漂っている気もする香櫨園の住宅街にある西宮市大谷記念美術館で、いま『グラフィックデザイナー土方重巳の世界』を開催中だ。土方重巳という名前には、よほどデザイン史に詳しいひとでないと親しみがないかもしれないけれど、その作品には昭和の時代に育った日本人ならだれもが親しんでいるはず。そういう「知られざるトップ・デザイナー」の、これは貴重な回顧展である。

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不自由な国の自由なデザイン――ポーランド映画ポスター展を見て

とりあえずこのポスターを見てほしい。往年の日本映画のポスターなのだが……なんの映画かおわかりだろうか。 実はこれ、高倉健や千葉真一が主演したパニック映画の傑作『新幹線大爆破』(1975年東映)のポーランド版ポスターなのだ。世界のB級映画ファンにおなじみのこの作品、英語タイトルは「The Bullet Train Super Express 109」というので、たしかに題名のSUPER EXPRESSは入っているけれど……パニックの緊張感が1ミリもない、かわいらしいイラスト! あまりに独創的な解釈に、展示会場でにんまりしてしまったのは僕だけではないだろう。 東京京橋の国立映画アーカイブではいま『ポーランドの映画ポスター』展が開催中だ(3月8日まで)。日本・ポーランド国交樹立100周年を記念したというこの展覧会。100年前のポーランドはまだ共和国時代だったと思うが、第二次大戦のナチ占領時代を経て、戦後はポーランド人民共和国として共産主義国家となった。その後、1989年に共産党独裁体制が崩壊するまでの半世紀近いなかで生まれた映画ポスターが、今回は96点も集められて見応えある展覧会になっている。

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銀色人間の国

メルマガも9年目ともなると、新しい出会いとともに、以前に取材したひとの新しい作品や挑戦を教えてもらうことも増えてきた。2014年12月25日配信号で特集した『裸眼の挑戦――若生友見とragan books』。そのころはまだ比較的ゆったりだった東京アートブックフェア会場で出会って、クールでシャープなコンセプトとデザインに唸った「ragan books」の若生友見さんに会いに、宮城県七ヶ浜町まで出かけてつくった記事だった。 先日、久しぶりに会った若生さんから「これ、新作です」と渡された2つの小冊子。最初、どういう趣旨なのかよくつかめなくてボーッとしていたら解説してくれて、それがすごくおもしろかったので、今週はragan久しぶりの新作を紹介してみたい。

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垂直のヴェルサイユ

貧乏は底なし沼かもしれないけれど、金持ちの世界も青天井だ。オレサマがイチバン!と思う間もなく新しいイチバンに追い抜かれる。お山の大将だったはずが、いつのまにかもっと高いお山に別の大将がいる。超高層ビルは英語でスカイスクレイパー=「空をこするもの」だが、それを「摩天楼」と訳したセンスはほんとうに素敵だ。初めてケネディ空港に降り立ち、怖々乗ったタクシーの窓からマンハッタンのスカイラインが見えたときの感動はなかなか忘れられなくて、大自然の景色にはすぐに飽きてしまうのに、ニューヨークのビル景はそれからもずっと見飽きるということがなかった。最近またニューヨークに行くようになって気がついたのは、めちゃくちゃに細長い超高層ビルが増えていることで、それは新しい美しさというよりも、むしろ漠然とした不安感を醸し出す、巨大なトゲかささくれのように見えた。こちらが地震国から来たせいかもしれないけれど、なにかの拍子にポキッと折れてしまいそうな。

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ATGが遺したもの

ATG、と聞いて思わず遠い目になってしまうひとは、もはや70代だろうか。1970年に20歳だった青年が、いま70歳だし……。 ATG=アート・シアター・ギルドが遺した映画ポスター展が、6月から再開した鎌倉市川喜多映画記念館で開催中だ。 1961年に設立されたATGは海外のアート系作品の配給・上映から活動を始め、低予算実験映画製作へと幅を広げていって、後期には若手監督による娯楽作品路線にシフトしながら1992年まで存続してきた。今回の展覧会は初期の輸入作品から1970年代末までの製作作品をおもに、90点以上のポスターによってその活動を振り返る試み。同時に1960年代後期~70年代のイラストレーション/グラフィック・デザイン全盛期の、日本のクリエイティブ・センスを体感できる機会にもなっている。

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大阪で生まれたデザインやさかい・・・・・・

先週は芦屋市立美術博物館の『芦屋の時間 大コレクション展』を特集したが、今週はおとなり西宮の大谷記念美術館で開催中の『没後20年 今竹七郎展』を紹介する。両館のあいだは2キロちょっと、歩いても30分足らず。気になったら、ぜひふたつあわせてご覧いただきたい。 西宮市大谷記念美術館では、2018年に開かれた『グラフィックデザイナー土方重巳の世界』を、11月21日号「だれも知らなかった土方重巳」として紹介した。NHKの人形劇「ブーフーウー」のキャラクターや、佐藤製薬の「サトちゃん」の生みの親であり、だれもが知っているデザインを遺しながら、その名は一般的でないという意味でそんなタイトルにしたのだった。今回の展覧会もサブタイトルには「近代日本デザインのパイオニア」とあるものの、ポスターやチラシには「どこの誰だか知らないが。そのデザイン! 誰もがみんな知っている。」というコピーが大書されている。

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しめかざりをめぐる旅

我が家は皇居から徒歩数分の大通りに面しているが、そんな都心でも毎年、年末にはしめかざりの露店が出る。あのひとたちはいったいどこから来るのだろう? おでんやラーメンの屋台を出したら即座に警官が飛んでくるのに、あのひとたちはどうして許されてるんだろう? 年末年始となればみんな閉まるのに、無人のオフィスにしめかざりを飾ってるのはどういうわけなんだろう? 謎のまま毎年、しめかざりは視界の片隅にあらわれ、消えていく。 三軒茶屋の高層ビル・キャロットタワー内「世田谷文化生活情報センター・生活工房」でいま、しめかざりの展覧会が開かれている。『渦巻く智恵 未来の民具 しめかざり』と題された、絶妙のタイミングで開催中のこの展示、しめかざりも初詣もおせちも雑煮も、正月というものすべてに興味ゼロの僕にとって予想をはるかに超えて興味深い企画だった。

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血と汗と涙の石岡瑛子展

初めチョロチョロではないけれど、開始直後はがらがらで、後半になって大混雑、最終日近くは予約満員、というのが展覧会の「あるある」。先週日曜に最終日を迎えた東京都現代美術館の「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」も、終盤の長蛇の列をSNSで見て、最初のうちに観ておけば……と後悔したひとがたくさんいただろう。このメルマガでも展覧会開始にあわせて特集をつくろうと思ったが、展示すべて撮影禁止というポリシーを知り、それはそれで尊重すべきというか、記事だからといって無理矢理お願いするのもよくないかと思い、控えていたのだった。 去年11月14日に始まった展覧会の、終盤になって休館日に取材ができ、そこで撮影も許されたので、ちょうど展示が終わったタイミングではあるが、少しだけ石岡瑛子のことを書かせていただく。なお、これほど話題を集めた展覧会ではあるが、当初は富山県美術館に巡回する予定が新型コロナ禍で中止になって、あとはどこの美術館も手を挙げず、けっきょく巡回なし。あの金閣寺の印象的なディスプレーも壊されるという……。

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映画ポスターは「終わったメディア」なのか

12月中旬に出た本書、映画の本ではあるが名監督でもスターでもなく「広告図案士」、つまりポスターや新聞広告のデザイナーという、業界人しか知ることのない人物の作品を集大成した大判の分厚い作品集で、定価が9000円! なのに初版がもう売り切れ、増刷がかかっているという・・・・・・近頃の出版界ではめったにない現象を巻き起こしている。 2020年にデザイナー生活60周年を迎えた檜垣紀六さんは、1960年代から90年代まで、僕らのだれもが見てきた洋画ポスターを手がけてきた。本書にはそのうち約600本のポスター、チラシ、題字(日本語タイトルロゴ)、新聞広告が収録されているが、そのいくつかを懐かしく思い出さないひとはいないだろう。

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音の出ないアルバムから音楽が聞こえてくる ――syobon99さんの刺繍ジャケット・コレクション

Instagramのフィードを見ていたら、ずっと昔のニール・ヤングのアルバムを刺繍にした画像が出てきた。ずいぶん聴き込んで、それからすっかり忘れてしまったアルバムだけど、画像を見た瞬間に音が甦ってきた。でもその刺繍は写真のように精密で正確な再現ではなくて、レコードを聴きながら自由に糸を刺し進めていったように気楽な、当時の言葉でいえばレイドバックした気分が漂っている。70年代の、古びたジーンズの尻ポケットに貼ってあったら似合うような。 いったいどんなひとがこんな刺繍をつくったんだろう。気になってインスタの投稿主を辿ってみたら、「syobon99」さんというそのひとはどうやら日本人で、ビートルズにフランク・ザッパ、デヴィッド・ボウイ、リトルフィート……そんな洋楽アーティストはもちろん、あがた森魚からYMO、ムーンライダースに松任谷由実まで、ものすごく幅広いジャンルのアルバムを刺繍にしては、せっせとインスタにアップしているのだった。

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妖怪たちのいるところ――三次もののけミュージアム訪問記

広島市内から北東に向かって、クルマでも電車でも約1時間半。広島市と福山市を結べば三角形の頂点にあたる三次市。中国地方のほぼ真ん中にあり、江戸時代から浅野藩の城下町として栄えた三次を「みよし」と読めるひとがどれくらいいるだろうか。 日本全国、さまざまなかたちの町おこしプロジェクトがあるなか、三次市が目指したのが「もののけのまち」としての観光都市づくり。もののけ=妖怪である。 もともと三次には『稲生物怪録(いのうもののけろく)』と呼び習わされる、日本屈指の妖怪物語が伝わってきた。そのように豊かな歴史背景を持つ町に、日本屈指の妖怪コレクターである湯本豪一(ゆもと・こういち)さんの、30年以上をかけた約5千点におよぶ膨大なコレクションが寄贈されることになって、2019年に開館したばかりなのが湯本豪一記念 日本妖怪博物館、通称「三次もののけミュージアム」だ。

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B全の銀河系――アングラ演劇傑作ポスター展@寺山修司記念館

珍日本紀行の取材で青森県三沢市の寺山修司記念館を初めて訪れたのは1997年だった。それから何度か展覧会を観に行ってはいたけれど、いま「ジャパン・アヴァンギャルド ―アングラ演劇傑作ポスター展―」を開催中と知って、どうしても観ておきたくなった。 ご存じのかたも多いと思うが、寺山修司記念館はポスターハリス・カンパニーの笹目浩之さんが副館長をつとめている。東京中のお店に演劇や映画のポスターを貼ってまわる、というあまりにピンポイントな仕事を専門とするポスターハリス・カンパニーを立ち上げたのが1987年のこと。94年からは現代演劇ポスターの収集・保存・公開プロジェクトを設立し、渋谷にギャラリーも開いている。道玄坂裏のラブホテル街にひっそり開いていたポスターハリス・ギャラリーは残念ながらいま休館中だが、2014年にはご近所のアツコバルーと共催で『ジャパン・アヴァンギャルド ―アングラ演劇傑作ポスター展』を開催。このときはポスターハリス・ギャラリーが天井桟敷、アツコバルーで状況劇場、黒テント、自由劇場、大駱駝艦などと分けて展示されたが、今回は記念館の企画展示エリアで100枚以上のポスターを一挙に展示。しかも当時のチラシやチケットなど関連資料も並べられ、小川原湖畔ののどかな環境に、そこだけ60年代アングラ演劇の異様なエネルギーが渦巻いていた。

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あらゆる場所にいた和田誠

10月9日から始まっている初台・東京オペラシティアートギャラリーの「和田誠展」、もうご覧になったかたもいらっしゃるだろう。2019年10月に83歳で亡くなった和田誠の、これは初の大規模回顧展であり、東京のあと来年から熊本、新潟、北九州、愛知など各地への巡回がすでに予定されている。 この7月から10月までは和田誠と同時代に、正反対の作風でやはり圧倒的な影響力を持つグラフィック・デザイナー/イラストレーターだった横尾忠則の(画家としての)大回顧展「GENKYO横尾忠則」が東京都現代美術館で開催された。和田誠は1936年4月10日・大阪府大阪市生まれ、横尾忠則は同じ1936年の6月27日におとなりの兵庫県西脇市生まれ。2ヶ月違いの同年代であるふたりの展覧会が、期せずして同時期に開かれたことが、個人的にはすごく感慨深くもあった。ちなみに「GENKYO横尾忠則」は作品点数600点以上だったが、「和田誠展」のほうはなんと作品・資料あわせて約2,800点という……長時間滞在必至の大回顧展である。

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トランス島綺譚 ――インドネシア・アンダーグラウンドの現在 01 (文、資料提供:金悠進、泉本俊介)

ロードサイダーズのSNSはFacebookページがメインで、Twitterが少し、Instagramはそんなに使ってないけれど、1年ぐらい前だったろうか、摩訶不思議な動画が流れてきて、一瞬でこころを掴まれてしまった。 いわゆるファウンドフッテージというか、ネットやテレビから適当に見つけたとおぼしき映像に、ハードコア・トランス系の音が乗っていて、ものすごくビザールで、ものすごく魅力的でもある。かっこよすぎて、見ていて苦しくなる。 どうもインドネシアからの書き込みらしいことはわかったけれど、Gabber Modus Operandiというユニット名の読み方さえわからず(GMO ガバル・モドゥス・オペランディ)、そこから辿った発信者らしいICAN HAREM(イチャン・ハレム)という人物も謎めいている。

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大棍棒展 (文・写真:慶太田)

お久しぶりです、ケイタタです。ROADSIDERS’大阪特派員として今、Twitterで話題の大棍棒展行ってきました!ぴえええええい! 混雑が予想されるため平日のオープンすぐに会場へと足を運ぶ。大阪の北浜というハイソなエリアのKITAHAMA N GALLERY。真っ白な地下に棍棒が整然と並べられていた。 60樹種200本ほどの棍棒が展示されていたが、会期の3日を残してすでに70本ほど売れている状態であった。 「おさわりOK」ということで、実際に手に持ってみた。予想以上に重い。角材の5倍ぐらいの重さを感じる。しかし、持ち手はとてもなめらかで肌触り、木ざわりが心地よい。特にグリップの曲線がとても美しい。

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街にチラシがあったころ ――1985~90年代の日本のインディーズ・チラシとアンダーグラウンド文化 01 パンクとテクノとアイドルと演歌の夜 (文:浜里堅太郎)

いまから10数年前、スナック文化発掘に夢中になって、東京の夜の街をあちこち呑み歩き、『東京スナック魅酒乱 天国は水割りの味がする』を出版(2010年、廣済堂出版刊)。そのとき知り合ったのが浜里堅太郎さんで、お母様がママをつとめる西新宿のスナックで、ときどきカウンターに立ったり、ご自分のイベントを開いたりしていたのだった。 それから時は流れ……つい最近、浜里さんが「1985~90年代の日本のインディーズ・チラシ」というピンポイントな、ものすごく貴重なコレクションを入手したことをSNSで知り、急いで連絡を取ってみた。さっそくご自宅にお邪魔して往年のチラシの数々を見せてもらうと、当時の明暗さまざまな思い出が蘇り……これはどうしてもメルマガで紹介させてもらわないと!と、いきなり連載をお願い。これからだいたい月イチのペースでご紹介いただく。

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柄に溺れてシンガポール・スタイル

このメルマガは週刊というせわしないペースなので、展覧会の紹介記事だったらなるべく会期の早めに取材して、読んでくれたひとが足を運んでもらえるようにこころがけている……けれど、取り上げたい展覧会すべてをそんなふうに回れるわけもないので、閉幕まぎわに駆け込み、というケースも少なくない。今週紹介するのは、残念ながら先月末で終わってしまった展覧会。最終日に急いで観に行った福岡市美術館の「シンガポール・スタイル1850-1950」だ。

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街にチラシがあったころ ――1985~90年代の日本のインディーズ・チラシとアンダーグラウンド文化 02 東京グランギニョルとの出会い (文:浜里堅太郎)

チラシ、それはアンダーグラウンドな世界へ誘う宝の地図のようなもの…。 1984年、わたしは都立高の一年生だった。 「昨日、お芝居を見に行ったんだけどさあ、音楽に坂本龍一や細野晴臣、JAPANとかが使われているんだよ!それで漫画家の丸尾末広が出てるんだよ!丸尾末広って知ってる?」という話を、ある朝の教室で、突然同級生の女子に興奮気味に聞かされた。 こっそり隠し持っていた丸尾末広の漫画を親御さんに取り上げられてしまった文学少女のSちゃんと、YMOやRCサクセションが好きだった宝島オリーブ少女のKちゃんに「その演劇のポスターがデプトに貼ってあるんだけど浜里くんたぶん好きだと思うよ。学校の帰りに見に行こうよ」と誘われたのだ。

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ポップアートとしての玉井力三

すでに終わってしまった展覧会を紹介するのは心苦しいが、11月15日まで東京・千代田区日比谷図書文化館で開催されていた「学年誌100年と玉井力三――描かれた昭和の子ども」は、一般メディアからSNSまでずいぶん取り上げられたので、気になったひと、観に行った!というひともたくさんいるだろう。僕も最終日の閉館30分前!に駆け込み観賞できたので、観に行けなかったひとたちのためにその内容と感想をお伝えしたい。

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昭和が見た夢

梅田大阪駅からすぐなのに大阪屈指の下町感というか、庶民的なエネルギーあふれる天神橋筋商店街。全長2.6km、地下鉄2区間分の距離に600もの商店が軒を連ねる、日本一長いアーケード商店街である天神橋筋商店街が大好きというひとはたくさんいるだろう(僕もそのひとり)。『珍日本超老伝』で取り上げた食堂・宇宙家族も天神橋筋商店街を含む広大な繁華街・天満(てんま)の一角、天五中崎通商店街にあった。 出張では梅田周辺のビジネスホテルに泊まることが多いので、歩いても行ける天満はずっとなじみ深い場所だったが、これだけ通っていながら商店街の端の一端、阪急・天神橋筋六丁目駅と直結している「大阪市立住まいのミュージアム(愛称・大阪くらしの今昔館)」のことはまったく知らないでいた。「住まい」をテーマにした日本初の専門博物館として2001年に開館、もう20年以上経つというのに。

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ラブホテルの現在進行形

1970年のカップルが回転ベッドの部屋で感じたドキドキワクワク感を、2023年のカップルはどんなラブホのどんな部屋で味わってるんだろうと前から気になって、ラブホ街を通るたびに部屋紹介のパネルをちらちら見たりしていた。もしかしたら2050年には「令和レトロ~」なんて言われるかもしれないデザインの現在進行形を、今週は紹介する! SARAは関東圏を中心にラブホテルとビジネスホテル21軒を運営するグループだ。ラブホテルではゴージャスなSARA GRANDEにSARA、バリや沖縄などのリゾートホテルをテーマにしたバニラリゾートと3つのラインを擁し、今回は都心部にあるSARA GRANDE五反田とSARA錦糸町の2軒を見せていただいた。

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館長!これどうするんですか!?

すごく奇妙な展覧会を観た。目黒区祐天寺のアクセサリーミュージアムで開催中の「館長!これどうするんですか!?」。チラシには「所蔵品から私立美術館のこれからを考える」と副題が添えられているが、そこに考えが及ぶひとがどれほどいることか。難解な展覧会名は特に現代美術でよくあるけれど、これだけフランク(笑)なタイトルには滅多に・・・・・・。 アクセサリーミュージアムは2015年に『華やかな女豹たちの国』として「キャリアウーマンの愛した服~80’s パワーモード」展を取り上げていて、それはバブル時代のイケイケ・ファッションを特集した、しかも展示品はおもに館長の私物という楽しい展覧会だったが、今回はさらに! プライベート・ミュージアムならではの、プライベートの開陳がそのまま展示に直結している。

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建築家って、いったいなにさま?

つい先日ネットのデザイン関係ニュースで大きく取り上げられていたのが、ソウルの高層ビル(ツインタワー)が、ニューヨークの世界貿易センタービルに旅客機が突っ込んだところに酷似しているという報道。

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昭和のレコードデザイン集

レコードがCDになって音質はよくなったし、A面とB面をひっくりかえす必要もなくなったが、かわりに失われたものがある――ジャケットの魅力だ。あの、プラスチックのCDケースに封入された12センチ角のブックレットが、いかにお洒落にデザインされようと、30センチ角のLPジャケットや、シングル盤のビニール袋に入れられたペラのカバーにすら、とうていかないはしない。そして在りし日のLPを縮小した紙ジャケCDは、さらにもの悲しい。

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夢見る愛玩人形家具たち

本メルマガ読者の方々なら、すでにご存じの方も多かろう、上野御徒町に本拠を置くオリエント工業。『東京右半分』でも大きく紹介した、世界最高級のラブドール・メーカーである。そのオリエント工業が創業35周年を記念して発表した、とんでもない新プロジェクトがこれ、「愛玩人形家具=ラブドールファニチャー」だ。女体家具と言えば「家畜人ヤプー」を想起するひともいるだろうし、60年代ブリティッシュ・ポップの代表格アレン・ジョーンズの女体家具彫刻を思い出すひともいるだろう。

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反逆のタイムカプセル――暴走族ミュージアム訪問記(上野友行)

「暴走族グッズのすごい収集家がいるんで、取材してくださいよ」ヤンキー取材を長く続けていると、こうした話は珍しくない。一般的にはあまり知られていないものの、暴走族グッズやヤクザグッズを集めているマニアは少なからず存在するのだ。ところが、その日その場所に足を踏み入れた私は言葉を失ってしまった。ステッカー、特攻服、なめ猫、改造プラモ、写真集、カレンダー、ドキュメンタリービデオ――。

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オリンピック・デザイン・バトル

書きたい!という思いと、いろいろめんどくさいな~という躊躇で迷っていた新国立競技場問題について、今週は書かせていただく。ツイッターやFacebookのおびただしい書き込みからも察せられるように、この問題については賛成・反対、いろいろな考えのひとがいるだろう。あくまでも僕個人の心情、というていどに受け取っていただけたらうれしい。2020年の東京オリンピックに向けて、国立競技場の建て替えが決定し、デザイン・コンクールで優勝したイギリスの建築家ザハ・ハディドの案が公表されると、槇文彦、伊東豊雄など国内の建築家を中心に激しい反論が提起され、そこに建て替え反対の市民運動も加わって、ザハ案発表から1年半以上たったいまも、波乱含みの様相を呈しているのは、東京在住のみなさまならご存知だろう(しかし東京以外の地方ではどれくらい話題になっているのだろうか)。

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つつましさの美学――チェコの映画ポスター展

今年4月から8月まで開催された『日本映画スチル写真の美学』に続いて、東京・京橋のフィルムセンターでは現在、『チェコの映画ポスター』展が開催中だ(12月1日まで)。コアな映画ファン以外はなかなか足を運ばない場所で、展示されているポスターも82点ほどだが、これがいま僕らが目にする「映画ポスター」と名乗るシロモノとはケタ違いの芸術性と完成度を誇る作品ばかり。ひとりでも多くの方に見ていただきたく、今週はたっぷりスペースを取って紹介してみたい。

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世界を桃色に染めて――本宮映画劇場ポスター・コレクション2

先週に続いてお送りする、『独居老人スタイル』(12月19日単行本発売!)で取り上げた福島県本宮市の奇跡の映画館・本宮映画劇場館主・田村修司さんが、ひそかにコレクションしてきたピンク映画を中心とするポスター・ライブラリー。先週説明したように、ピンクとは基本的に独立系成人映画――つまり日活、東映、大映、東宝、松竹というメジャー5社に属さない小規模な制作配給会社によってつくられた、いわばインディーズのポルノ映画を指す業界用語だ。そのなかでも、これほどインディーズなプロダクション(当時は「エロダクション」とも呼ばれた)は・・・と驚かされた、内外フィルムの傑作ポスター群を先週は一挙掲載したが、今週はほかのエロダクションが残した異形のグラフィックを、たっぷりご紹介する。

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世界を桃色に染めて  ――本宮映画劇場ポスター・コレクション3

これまで2週にわたってお送りしてきた、福島県本宮市の奇跡の映画館・本宮映画劇場館主・田村修司さんのポスター・ライブラリー。先週まではピンク=独立系成人映画――日活、東映、大映、東宝、松竹というメジャー5社に属さない小規模な制作配給会社によってつくられた、インディーズのポルノ映画――を紹介してきたが、最終回となる今週は、ちょっとテイストの異なるふたつのジャンルをお見せする。すなわち、怪談と女湯!

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立体写経――荒井美波のトレース・オブ・ライティング

美大の学生や卒業生以外にはあまり知られていないと思うが、「三菱化学ジュニアデザイナーアワード」という公募展がある。現在の協賛企業である三菱化学、三菱ケミカルホールディングスの前に、タバコのラッキーストライクが協賛していた時代から数えれば、すでに十数年になるのだが、その審査員のひとりを、もうずっと務めさせてもらっている。デザイン関連の専門学校、大学、大学院の卒業制作を対象としたこのアワードは、大賞、佳作、それに審査員それぞれの特別賞を、数百点の応募作品のなかから選んで表彰するもので、僕も「都築響一賞」なんてのを毎年ひとりずつ選ばせてもらっている。

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ZINGという挑戦

立体迷路のようなかぎやビル内には、BOOKS & PRINTSのほかにもいろいろなショップやギャラリーが入居しているが、「ここはおもしろいですよ!」と教えられたのが、かぎやビルの並びにあった『ZING』。空き店舗を利用したZINE(ジン)の制作工房だ。自主制作雑誌、小冊子を日本でも「ジン」と呼ぶようになったのは、いつごろからだろう。たぶんここ数年かと思うが、『ZING』はさまざまな用紙やコピー機、プリンター、シルクスクリーン機材に小型活版印刷機まで備え、わずかな料金でだれでもジンを作ることができる、いわばレンタル印刷製本所だ。

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新宿2丁目にカッサドールがあったころ

会期終了直前のお知らせになって恐縮だが、西新宿でいま開催中の小さな写真展について、どうしても書いておきたい。『 ‘Cazador’ KURAMATA Shiro / TAKAMATSU Jiro Photographed by FUJITSUKA Mitsumasa』と題されたこの展覧会は、新宿2丁目にかつて存在していたサパークラブ『Cazador カッサドール』を記録した写真展である。カッサドールはデザインを倉俣史朗、壁画を高松次郎が手がけ、今回展示されるプロセスと竣工写真は藤塚光政によって撮影された。

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裸眼の挑戦——若生友見とragan books

この秋に開かれた東京アートブックフェア。ドキドキクラブや公園遊具の木藤富士夫など最近のメルマガで紹介した写真家、アーティストに何人も出会うことができたが、たくさんのブースのなかで、びっくりするほどシャープというか、クレバーなデザインのジンを並べているテーブルがあった。テーマは日本だけど、扱うセンスはむしろ欧米のクールな感性が漂っていて、もしかしたら東京在住の外国人デザイナーなのかも・・・とか思いつつ、店番をしていた若い女の子に尋ねてみたら、「これ、私が作ったんです」と言われてびっくり。それも東京ですらなく「仙台でやってます」というので、「仙台市ならよく行きます、デザイン事務所とか?」と聞くと、「いえ、仙台市じゃなくて七里ヶ浜・・・知らないですよね」。「えーっ、そこでデザインのお仕事を?」「いえ、学習塾で教えながら、これ作ってるんです」と言われて絶句。それが宮城県七里ヶ浜町在住の若きグラフィック・デザイナー、若生友見(わこう・ともみ)さんなのだった。

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ガイコツさんのシャレオツ

新幹線に乗って新大阪で降りたら、在来線に乗り換え尼崎経由で30分ほど。飛行機で大阪空港に降りれば、そこがもう伊丹。大阪空港のお膝元である伊丹市は、かつて伊丹城を擁した歴史遺産に恵まれる地だが、どことなくサバービア感が漂う茫漠とした雰囲気。関西人にとって伊丹とは、どんなイメージの町なのだろう。かつて酒造で知られていた町らしく、白壁の蔵のようなデザインの伊丹市立美術館。オノレ・ドーミエのコレクションなど、風刺やユーモアをテーマにした欧米・国内のコレクションを核とするユニークな美術館だが、現在開催中なのが『シャレにしてオツなり——宮武外骨・没後60周年記念』という、小規模だが見逃せない展覧会だ(3月1日まで)。

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失われたガラパゴス――バブルの遺産「ファンシー絵みやげ」を求めて(文:イチゴドロボウ)

昭和好きがいる。70年代サイケ好きもいるし、もっと昔が好きなひとや、いましか好きじゃないひともいる。でも、80年代が好き!というひとはめったにいない。2016年の日本でもっとも忘却された、あるいは封印されたデザイン、それは80年代に生まれた「ファンシー」という感性だろう。パステルカラーのポップな多幸感覚。それを知っているひとも、知らないひとも、だれもが一目見るだけで「恥ずかしい」「痛い」と思わざるを得ない、恐るべきプロダクト群。それがたかだか30年にも満たない、ほんの少し前の日本全土を覆い尽くしていたという事実。あらゆる土産物屋を、あらゆる家庭のお茶の間を。その「忘れたい過去」にこだわるひとがいた。今週はその孤独なデザイン発掘家をイチゴドロボウさんに紹介していただく。

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手帳類収集プロジェクト――名もなき誰かの記録を読み解く(写真・文:イチゴドロボウ)

こんにちは。イチゴドロボウです。前回取り上げたのは、80年代バブル期ファンシーキャラクターグッズにみられる文化を「保護」するためのコレクションでした。今回も引き続いて「コレクション」をテーマに記していきます。突然ですが、デジタルとアナログ、どちらがお好みでしょうか。スマホ依存が騒がれる?世の中ですが、ペンを持って紙に書くという行為は、なんだかんだいっても尚、生き残り続けている、そんな気がしませんか。その証拠にみなさんお持ちのカバンの中に、少なくともボールペン1本・メモ帳、或いはスケジュール帳などの類が1冊は入っていたりするのではないでしょうか。今ではアナログ的な手段となった、手帳などの「紙」類に、個人が私的に書き記す行為と記録がもたらす意味を考えるきっかけとなるような、「個人の記録」の数々をご紹介いたします。

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ロンドンの地下鉄書体

その都市をもっともよくあらわす書体、というのがあるのかもしれない。たとえばパリの地下鉄の、アールヌーボー・スタイルの駅名表示。ロサンジェルスのハリウッド・サインなんかもそうだろうか。それがロンドンでは「地下鉄書体」と呼ばれる、あの地下鉄の駅にある文字であることに、異を唱えるひとはいないだろう。世界初の地下鉄がロンドンに生まれたのが1863年(ちなみに日本最初の地下鉄・東京の銀座線開通は1927年)。アメリカや日本のように「サブウェイ」ではなく、「アンダーグラウンド」あるいは「チューブ」と呼ばれているのはご存じのとおり。

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メイド・イン・プリズン

毎年5月になるころ、立派な封筒に入った手紙が届く。裏には「法務省」とあって一瞬どきっとするが、6月初めに竹橋の科学技術館で開催される「全国刑務所作業製品展示即売会(全国矯正展)」のお知らせだ。いまから10年近く前、新宿駅西口地下広場とか、いろんな場所でバザーのように開かれている刑務所製品即売会に興味を抱くようになって、即売会のハシゴをしているうちに元締めの矯正協会ともお話できるようになった。そこで刑務所作業製品をデザインとして眺めて、一冊の本にできないかと思い始め、意外にもその突飛なアイデアを協会が受け入れてくれて、現場、つまり刑務所の内部にも取材に入れることになった。それはいろんな意味でスリリングな体験だったが、その結果は2008年の『刑務所良品』(アスペクト刊)という本にまとめることができた。

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劇的都市・新宿

早稲田大学の演劇博物館でいま、『あゝ新宿 スペクタクルとしての都市展』が開かれている(8月7日まで)。早大生でなくとも演劇博物館を訪れたことのあるひとは少なくないだろう。16世紀イギリスにあったフォーチュン座を模してつくられたというクラシカルな演博の建物と、ふんどし姿の唐十郎が新宿駅西口広場に立つイメージは異質に感じられるかもしれないが、早稲田があるのもまた新宿区なのだ。本メルマガではこれまで、新宿歴史博物館でシリーズ開催された昭和の新宿を振り返る企画を紹介してきたが、今回の展覧会では1960年代中頃から70年代までの――それはほとんど昭和40年代ということでもある――新宿という都市がもっとも混沌として、エネルギッシュであった時代をフィーチャーして、小規模ながら充実した資料展になっている。

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絶滅サイト 12「カイトと散歩」~「日本女子の髪型の歴史」(文:ハマザキカク)

いつどこで何発の花火が打たれてるのかを網羅――『花火大会データベース』(2005年~2009年 運営期間4年 絶滅期間10年)/日本全国のいつどこで花火大会が開催されているかを紹介したサイト。しかしこれは一見、何か人間の手で構築されたものではなく、機械的なbotの様なもので収集されたのかと勘ぐってしまうほど、無味無臭のサイト。トップページには各地域の花火大会の「名称」「時刻」そして「詳細が載っているだけ。また頭には日本全国の簡易地図が掲載されていて、そこからも飛べる様になっていた様だ。各花火大会の「詳細」に飛ぶと「開催日」や「玉数」「会場名」「交通」といった細かい項目も。「玉数」は門外漢からすると全く目安が検討も付かないが、ざっと見た限り少ないのは1000発で多いのになると2万だった。

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絶滅サイト 15「桜データベース」~「文化祭商店」(文:ハマザキカク)

1998年の時点で1000を越える文化祭を踏破『日本高等学校文化祭研究所』/1999年~2016年 運営期間17年 絶滅期間1年/筆者も高校の文化祭にはかなり燃えたタイプの為、とても興味があったサイトだ。このサイトは正確にいつ閉鎖されたのか突き止めにくいのだが、「文化祭見学校地区別一覧表」では「1998年2月末現在:1104校見学してます」とあるので相当な量である。単純計算で毎週行ったとしても20年掛かる。ざっと見た限りだと1991年頃から文化祭訪問を開始している様だ。そして訪れているのは北は北海道からなのだが、西方面は長崎が一校、高知が二校でそれ以外も中国地方や関西地方が僅かなので基本的には東日本が多い。FAQの「何が面白いの?」では「お金になるわけでもないのに、高校生が必死になって取り組む姿でしょうか。「ばか騒ぎ」をしているのを見ると、私も気分が高揚してきます」とある。

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失われた「童謡レコジャケ」世界

吉岡里奈展が開催される幡ヶ谷パールブックショップ&ギャラリーでは、その前週に吉岡さんの「発見者」とも言える山口“グッチ”佳宏による『Kawaii!! 童謡レコジャケの世界』展が開催されるので、こちらも紹介しておきたい。グッチさんのレコード・コレクションといえば、本メルマガ2012年2月15日号『昭和のレコードデザイン集』を皮切りに、「お色気レコジャケ」の記事や展示会など何度も紹介してきたので、おなじみのはず。2015年7月15日号では『目眩くナレーション・レコードの世界』と題して、1960年代から70年代にかけて徒花のように生まれ消えていった「お色気レコードジャケット」を大特集した。そのグッチさんが今回展示するのは「お色気」とは正反対の「童謡」! すでに著書『昭和のレコードデザイン集』などでもコレクションが掲載されているが、もしかしたら「お色気」以上に実物を目にすることが難しい、貴重な展示になるはずだ。

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博士の異常な記録愛――西山夘三のすまい採集帖

『TOKYO STYLE』に取りかかる直前、京都に2年ほど暮らしていた。1990年前後の京都はバブル絶頂期で、伝統的な街並みに「ポストモダン」という名の現代建築が乱立し、あまりの醜さに僕は『テレスコープ』というオルタナ系の小さな建築雑誌で『京都残酷物語』なる特集を作らせてもらい、それはのちに抜き刷りの小冊子にもなった。京都の南北を分断する巨大な壁のごとき駅ビルが、設計コンペで原広司案に決まったのも1991年のことだった。当時、バブルに踊る京都土木&建築界の片隅で、昔ながらの街並みを保存しようという運動も地道に展開していて、京都に来たばかりの僕が知ったのは、西山夘三という左派建築論客の象徴のような、元気なおじいさんがいるということだった。

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おみやげから日本が見える

千葉・佐倉の国立歴史民俗博物館で『ニッポンおみやげ博物誌』が7月から開催中。今月17日までと気がついて、急いで行ってきた。昨年末は1960年代後半の学生運動・市民運動に焦点を当てた『「1968年」-無数の問いの噴出の時代-』が出色だったが、今回もその着想に唸らされる。展覧会は「アーリーモダンのおみやげ」と題された江戸時代からスタートする。参勤交代や、伊勢神宮のおかげ参りなど庶民の旅も活発になるにつれて生まれてきたおみやげ文化。それが明治以降の「名所」づくりや国立公園の誕生を経て、戦後の世界遺産ブームなどに象徴される「観光地のブランド化とおみやげへの波及」。おみやげ自体のさまざまな性格を見る「現代におけるおみやげの諸相」と「旅の文化の多様化とおみやげの創造」。そして最後におみやげがどう使われ、どう残っていくのかを探る「おみやげからコレクションへ」と、5つのパートに沿って膨大な数のおみやげが陳列されている。

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手描き映画ポスターのモダン・タイムス

映画ポスターに手描きや人工着色の風合いが残っていたころの存在感が好きで、これまで日本映画のポスター集や、ピンク映画ポスターのコレクションを本にしてきた。でも、ポスターが簡単に印刷できるようになる前の時代、いま上映している作品や次回の上映作を告げる手描きの映画館用ポスターがあったのは知らなかったし、見たこともなかったのが、京都立命館大学の一室で展覧会が開かれていると聞いて、驚いて駆けつけた。あと数日しか会期が残っていないけれど、ひとりでも多くの方に見てほしくて、急遽特集させていただく。『手描き映画ポスターと看板の世界』と題されたその展覧会は、立命館大学のアート・リサーチセンター閲覧室で開催中(9月28日まで)。たった1週間と少しの小ぶりな展示だけれど、こんなふうに手描きの映画ポスターをこれだけまとめて見られる、たぶん初めての機会だろう。

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マッチ箱のエキゾチシズム

姫路駅から姫路城にまっすぐのびる大手前通りに君臨してきた老舗デパート・ヤマトヤシキが閉店したのは今年(2018)2月のこと。裏手の商店街に面した一角は「みゆき通りステーション」という観光拠点に活用されていて、そこでひっそり開催中なのが『マッチラベル展』。姫路の地元民にすらあまり知られていない地味な展示のようで、こちらも「いちおう」ぐらいの気持ちで寄ってみたら、意外な充実内容! 今週は知られざるマッチ・デザインの世界をじっくりご覧いただこう。なぜに姫路でマッチ展かといえば、実はマッチ生産は姫路の地場産業。展覧会を主催する日本燐寸(マッチ)工業会によれば、日本全国のマッチの9割は兵庫県でつくられ、姫路市だけで8割を占めているのだそう。

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イメージの散歩者、杉浦非水

これからずいぶん騒がしくなりそうな皇居に面して、しかし周囲は気の早い桜が蕾をほころばせつつある、のどかな竹橋の国立近代美術館でいま開催中なのが『イメージ・コレクター 杉浦非水展』。大正から昭和にかけて和風アール・ヌーボーのスタイルで一世を風靡、ポスターや雑誌の表紙、書籍の装幀など多くの商業美術作品で優美なデザインを展開した、日本におけるグラフィック・デザイナーの草分けの大規模回顧展である。多摩帝国美術学校(現:多摩美術大学)の創設に参加し、美術教育家としても多くの業績を残したが、いまどれほどのひとがその名を知るだろうか。

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ガウディを測った男

東京天王洲の「建築倉庫」という奇妙なミュージアムをご存じだろうか。2年前には東京アートブックフェアの会場ともなった寺田倉庫が所有するビルの一部が、建築模型に特化した展示・保管施設となっている。1階のミュージアムでは建築系の展覧会が開催され、上階の保管倉庫には巨大な空間にずらりと内外建築家による模型が並び、「照明を限りなく落とした倉庫で懐中電灯を片手に倉庫空間をお楽しみください」というユニークな観賞体験ができるようになっている。その建築倉庫でいま開催中なのが『ガウディをはかる』という、これもかなりユニークな展覧会。ガウディの主要作品があるスペイン・バルセロナに住む建築家であり「実測家」でもある田中裕也さんによる、実測によるガウディ研究の成果を紹介する、初の包括的な展示である。

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サーカスがいたころ

埼玉県東松山市、のどかな風景が広がる都幾川のほとりに建つ丸木美術館。正式名称を「原爆の図丸木美術館」というように、画家の丸木位里(いり)・俊(とし)夫妻が共同制作した『原爆の図』シリーズを常設展示する美術館である。すでに開館50年を超えて、いまも反戦・反原発など社会性を強く打ち出した企画展を開いている。アクセスがいい場所ではないけれど、その不便さがまた孤高の立ち位置を象徴しているようでもあり、熱心なファンに支えられて、公立美術館では実現できない先鋭的な展覧会を続けている。すでに告知でもお知らせしたとおり、4月頭から開催されているのが『サーカス博覧会』。18日には僕もギャラリー・トークをさせていただくので、その告知を兼ねて、今週は誌上展覧会にお連れしたい。

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針と糸でつづる香港愛

抗議活動が13週目を迎え、いよいよ臨界点に近づきつつある香港情勢を、世界が固唾を呑んで見守っている。そんなタイミングで、「香港を忘れないために」先々週はふたりの香港在住写真家を紹介したが、今週はこれもきわめてユニークなかたちで「香港愛」を表現し続ける日本のアーティストを紹介したい。鈴木久美子さんと知り合ったのはもう20年近く前で、そのころ彼女は『SWITCH』という雑誌の編集者だった。仕事でも、夜の遊び場でもよく会うようになって、でも彼女が「編集者のかたわら家でチクチク刺繍をしている」ことは数年前になって初めて知ったのだった。2011年ごろから「macaroni」という活動名で作品を発表している鈴木さんは「刺繍作家」ということになるけれど、大げさな現代美術インスタレーションとかではなく、ハンカチやトートバッグ、ポーチのようなかわいらしいサイズの布地に自分の好きなものを、絵を描くように刺繍している。

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BORO、世界をめぐる 1(写真・文:辰巳清)

メルマガ読者にはすでにおなじみの「BORO」。前に書いたように浅草のアミューズミュージアムが今年3月末でいったん閉館したあと、そのコレクションはオーストラリアから中国へ、そしてこのあとニューヨーク、さらにまだ未発表だがストックホルム、モスクワへとワールドツアーが続いている。コレクションとともに海外の展示会場をめぐっているのが、ミュージアム館長を2009年の開館以来務めてきた辰巳清さん。せっかくなのでこの機会に、BOROが海外のアート・ファン、デザイン・ファンにどう受け止められているのか、リポートしていただくことにした。第1弾となる今回はオーストラリア編。シドニー~メルボルン~キャンベラと続く旅を前後編にわけてお送りする。音楽・演劇のスペシャリストとして働いてきたのが、ある日突然ミュージアムの責任者に抜擢されて、否応なしにBOROとだれよりも関わるようになっていく、そんな辰巳館長のパーソナルな挑戦の物語も、あわせてどうぞ!

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新連載! nobunobuと歩く東京ビル遺産 01 (写真・文:鈴木伸子)

雑誌『東京人』の編集者だった鈴木伸子=nobunobuさんと出会ったのは、もう15年以上前。職業柄もあるけれど、東京生まれ育ちの鈴木さんはさすがにこの都市の隅から隅まですごく詳しくて、得意分野は「都市・建築・鉄道・町歩き、食べ歩き」。フリー・ライターになってからもいろんな雑誌の記事や著書を読ませてもらっていたが、2016年に『シブいビル ― 高度成長期生まれ・東京のビルガイド』(リトルモア刊)を発表。有名建築家の作品とはまたちがう、無名の建築物のいとおしさをたっぷり教えてくれた。正直、先を越された悔しさもあったし・・・・・・。 鈴木さんはそれからも熱心に都内のあの街、この街と日々歩きまわり、見つけた「シブビル」をInstagramで積極的に紹介しているのを最近発見。僕のほうが長く東京に生きて、東京を歩いてきたはずなのに、完全に負けてる! というわけでさっそく連載をお願いした。これからだいたい月一のペースで、もしかしたら知ってるはずなのに見えてなかった東京のビル遺産を案内していただく。

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nobunobuと歩く東京ビル遺産 02 高田馬場かいわい (写真・文:鈴木伸子)

日々変化し、新しいものが現れ続けている東京の都心ですが、改めてじっくりと見回してみると、山手線駅前などという超一等地にも、1960年代から70年代頃に建てられた築50年前後の“シブいビル”が案外残っていたりするものです。新橋、有楽町、そして新宿駅西口などもそうなのですが、私の家からほど近い高田馬場駅前も、1960年代後半から70年代前半にできた築50年前後の“シブいビル”に取り囲まれているということに、ある日気が付きました。 「稲門ビル」「名店ビル」「FIビル」といった大型ビルはみな1969年築。馬場のランドマークである「BIG BOX」は1974年築。今年、それらと共に並んでいた「菊月ビル」(69年築)、「ゆう文ビル」(68年築)が解体され、それに続いて隣りの「東京三協信用金庫」のビルも解体中。そんなことで、「いつまでも あると思うな シブいビル」という危機感を抱き、今回はこれら駅前のビル群を改めて見つめ直してみることにしたのです。

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nobunobuと歩く東京ビル遺産 03 秀和レジデンス物語 前編 (写真・文:鈴木伸子)

都心、それも港区や渋谷区を歩くとよく出会うのが「秀和レジデンス」というマンションです。この秀和レジデンスがヴィンテージマンションなのかどうかは、nobunobuにとってもやもやとして答えの出ない疑問でした。 従来のnobunobuの見解は、「秀和レジデンスなんてどこにでもある。ライオンズマンションと同じようなマンション・ブランドの一種なのでは」というものだったのです。しかし、60~70年代のビルが築50年前後経って「シブいビル」に見えてきたのと同様に、同じく築50年前後の青瓦で白いモコモコ壁の和製スパニッシュ・コロニアルみたいな外観の秀和レジデンスが、それこそ「ヴィンテージ感」を得て、妙に可愛らしく見えてきたような気もする。

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nobunobuと歩く東京ビル遺産 04 秀和レジデンス物語 後編 (写真・文:鈴木伸子)

今回も引き続きnobunobuは秀和レジデンスについて追求していきます。 64年に、一号物件である“秀和青山レジデンス“が建設分譲されて以降、都内の山の手地区、高級住宅街を中心に秀和レジデンスは増殖し、高級マンションとしてのブランドを確立していきました。 屋根やエントランスには青い瓦、モコモコした質感の白壁、ヨーロピアンなバルコニーのデザインといった南欧風の外観が特徴的で、可愛らしさと高級感を併せ持つその姿は、ひと目見て「秀和レジデンスだ!」とわかる特徴となっています。 60年代築の東京23区内の秀和レジデンス28件を踏破したところ、一件一件でそれぞれデザインが異なり、ヨーロッパのシャトー風のものもあったり、当初は青い屋根だったのかもしれないけれど、オレンジ色や黒い屋根の秀和があったり。

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私の特別な人を編んでください!――編み物★堀ノ内の「肖像編み物」 第3回 森田童子/三上完太 「森田童子を支持する会」主宰・プランナー/ライター (文:三上完太、川上雅乃 写真:久富健太郎)

お客様のご紹介:「1993年放送のテレビドラマ『高校教師』の主題歌『ぼくたちの失敗』(1976年発売)で知られるシンガー・ソングライター森田童子。今週のお客様の三上完太さんはひとりで「森田童子を支持する会」を主宰し、森田の三回忌だった昨年(2020年)には、森田の世界観を描いた映画『夜想忌』(高橋伴明監督)を自主制作した気概のひと。劇団員時代には森田童子からじきじきに、歌の指導を受けたご経験もあるそうです! 編み物のオーダーはtwitter経由で、映画『夜想忌』のクランクアップのタイミングでした。この記事が配信される4月21日(水)の3日後の24日(土)は、森田の4回目の命日「夜想忌」だそうです」

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私の特別な人を編んでください!――編み物☆堀ノ内の「肖像編み物」 第9回 車 寅次郎/鳥谷貴子(ブティック「ジェーンマープル福岡店」経営)(聞き書き:川上雅乃)

【編み物☆堀ノ内よりお客様のご紹介】 ガーリーでロマンティックだけどパンクでもある伝説的ブランド「ジェーンマープル」(https://www.janemarple-stmm.co.jp)のブティックを1人で切り盛りする鳥谷さん。和洋問わずノスタルジックな音楽や世界観を好み、趣味はウクレレやスウィングダンス。渋い酒場や老舗バーも大好き。そんな鳥谷さんが「心の太陽」と敬愛する寅さんの肖像を編みました。

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nobunobuと歩く東京ビル遺産 08 文春VS.新潮 ザ・シブいビル対決!! 築55年。出版界を代表する文藝春秋と新潮社ビルの本館ビルは、奇しくも1966年という同年に竣工していた! (写真・文:鈴木伸子)

日本を代表する文芸出版と雑誌ジャーナリズムの牙城、文藝春秋と新潮社。 毎週木曜日発売の週刊文春と週刊新潮は、スクープ合戦と部数で数十年来年しのぎを削ってきたライバル。そのほかの雑誌、文芸書、文庫本などでも日本の出版界をリードする存在です。 その文藝春秋と新潮社の社屋、本館の建物がどちらも1966年築だということをごく最近知りました。高度経済成長時代だった当時は、雑誌や書籍、全集の売り上げも右肩あがり。その時代に新たに事業拡大するという意味合いもあって新社屋を建てたということなのでしょう。 nobunobuが新卒社員として出版界に身を置いたのが今から数十年前、それ以来、文春、新潮の編集者の方々には何かとお付き合いいただき、その会社にお邪魔したこともたびたび。今回は、その社屋の60年代築のシブいビルとしての味わいをじっくりと堪能させていただきいというお願いを両社に申し上げてみたところ、なんと太っ腹なことに双方ともにご快諾いただきました。 ふだんあらゆる事件、事象に夜討ち朝駆けの取材で挑んでいらっしゃるところ、いきなり「お宅の会社、シブいビルなので取材させてください」と言われて、ワケが分からずとも門戸を開いてくださったということ。その懐の深さに感じ入りました。

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nobunobuと歩く東京ビル遺産 09 「シブいビル」を彩る大理石モザイク画の巨匠、矢橋六郎の作品の魅力に迫る 前編 (写真・文:鈴木伸子)

1960年代から70年代の日本の高度経済成長期に建設され、築50年ほどを経た味わいのある「シブいビル」を愛するnobunobuが、とりわけ心を奪われているのは、それらビルの内外に設えられたモザイク画作品です。 モザイク画は、その時代、無機質な存在と思われたビルや建造物の装飾として数多く用いられ、建物のエントランスホールなどの人通りの多い目立つ場所に設置されてきました。最近の、より大型化したビルでは、その役割は現代美術の立体作品などにとって代わられているようですが、それだけに、築50年前後を経てシブい輝きを放っているビルにおけるモザイク画の歴史的な価値は高まっているとも思えます。

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MONDO 映画ポスターのオルタナティブ

映画作品上映と並んで興味深い企画展示を続けている京橋・国立映画アーカイブではいま、映画ポスター展シリーズの9回目となる「MONDO 映画ポスターアートの最前線」を開催中だ。猟奇好きのみなさまは「モンド映画!」と勘違いしてしまうかもだけど、こちらはテキサス州オースティンのアート集団「MONDO」によるオリジナル映画ポスターのこと。旧作から新作までさまざまな映画の、配給会社がつくる公式ポスターとは別の、さまざまなアーティストやイラストレーターによるオリジナル・ポスターを制作してきた。今回、国立映画アーカイブでは71点のポスターが展示されているが、熱心な映画ファンには知られた存在とはいえ、MONDOの作品がこれだけまとまって国内で見られるのは初の機会であるはずだ。

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nobunobuと歩く東京ビル遺産 11  高度経済成長期、ビルの上で回転し続けていたスカイラウンジは今 (写真・文:鈴木伸子)

1960-70年代に流行したものに、ビルの屋上に設えられた円形の回転スカイラウンジというものがあります。 東京都内に現存しているのは紀尾井町のホテルニューオータニ、有楽町駅前の東京交通会館にある銀座スカイラウンジの2つ。 首都圏では、埼玉・大宮や千葉・柏のそごうデパート、松戸の旧ホテルニューオータニなどにもありますが、いずれも今は回転していません。 私の子ども時代であった60~70年代には、そういった360度回転する室内から周囲の景観を楽しむことができるレストランが大いなる集客効果を発揮していたようで、そんな場所に連れていってもらうことが、当時とても特別感のある“楽しいおでかけ”であったことを印象深く記憶しております。

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nobunobuと歩く東京ビル遺産 12  古書にカレーに純喫茶、江戸東京の中心  神田神保町古書店街にはシブいビルがまだまだ健在!! (文:鈴木伸子 写真:都築響一)

日本一、いや世界一の古書店街と言われる神田神保町。 古書店だけでなく新刊書店、出版社、大学や専門学校なども数多く集まり、カレー、中華料理、レトロ喫茶などの名店が多いのも街の魅力となっています。ひと昔前は古書マニアや学生、研究者などが目的の本を探しにくる場所というイメージでしたが、今では食べ歩きや雑貨感覚で古本探しにくる若者や女子などにまで客層も広がっています。 nobunobuが神保町の街と親しむようになったのは、新卒で雑誌「東京人」を編集する会社・都市出版に入ってから。飯田橋にある会社から神保町は徒歩圏内で、同僚で、後に文筆家になった故・坪内祐三さんに古書店街の巡り方をガイドしてもらい、神保町一人歩き、すなわち目指す古本探しが一人でもできるようになりました。

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街にチラシがあったころ ――1985~90年代の日本のインディーズ・チラシとアンダーグラウンド文化 03  東京グランギニョルとの出会い、その後 (文:浜里堅太郎)

チラシ、それはアンダーグラウンドな世界へと誘う、みちしるべ…。 1985年、テクノやニューウェーブに夢中だった高校一年生のときに見に行った東京グランギニョルの「マーキュロ」という舞台に衝撃を受け、チラシ裏の「劇団員随時募集中!」を見たわたしは、気づいたらアンケート用紙に「劇団に入れてください」と書いていた。 数日後、座長の飴屋さんから電話があった。新宿駅東口改札で待ち合わせし、新宿アルタ近くの喫茶店の二階席で面接をすることになったのだが、舞台でしか見たことがなかった飴屋さんを目の前に、無知で浅はかな高校生は固まってしまい、演劇の世界に飛び込むことに二の足を踏んでしまったのだ……。 それから数ヶ月が経ち、高校二年生になったある日、一通の葉書が届いた。東京グランギニョルの新作公演「帝都物語・ガラチア」の案内葉書であった。プリントごっこで印刷された丸尾末広のイラストの横には「また見に来てください。飴屋」と手書きで記されていた。

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街にチラシがあったころ ――1985~90年代の日本のインディーズ・チラシとアンダーグラウンド文化  07 80年代のYMOとその時代~高橋幸宏さんを偲んで(前編) (文:浜里堅太郎)

高橋幸宏さんが亡くなられた。2020年に手術をされた後、復帰に向けてリハビリする姿をSNSなどで拝見する度に、回復することを切に願っていたのだけれど… 当連載「街にチラシがあったころ」では「K林さん」という方から譲り受けたインディーズバンドチラシを紹介していますが、実は同時に、80年代前半のYMO関連の新聞記事切り抜き、チラシ、ファンクラブ向け印刷物なども譲り受けていました。とくに音楽雑誌に比べて、ほぼ残らないであろう新聞記事の切り抜きは、YMOが社会現象だったことを実感できる大変貴重なものでした。そして1982年の高橋幸宏さんが自ら死生観を語った珍しい記事も見つけることができました。これらはインディーズチラシ紹介の番外編として、いずれ紹介するつもりだったのですが…

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一緒にこちらも!「昭和のモダンガール展」@細辻伊兵衛美術館

祇園、四条、京都駅など京都に数店舗をかまえる手ぬぐいや風呂敷の永楽屋。江戸時代初期の元和元年(1615年)に創業した日本最古の綿布商であり、京都の地で400年あまり商いを続け、現在は十四代目の当主・細辻伊兵衛が継いでいる。 その永楽屋が去年(2022)5月にオープンしたばかりなのが中京区室町通三条上ルの細辻伊兵衛美術館。烏丸通のすぐ西側に位置する室町通は江戸時代に呉服問屋街として発展し、現在でも老舗が軒を連ねるイトヘンの街。僕が初めて京都に住んだのも室町通のマンションだったので、ちょっと懐かしい。

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編み物☆堀ノ内の「帰ってきた肖像編み物」 第1回 大竹伸朗  オーダーした人/竹之内大輔(株式会社わたしは CEO) (写真:久富健太郎 / 文:川上雅乃)

竹之内大輔さんは1981年生まれの42歳。2016年に「株式会社わたしは」を創業し、ユーザーが送ったチャットにボケを返してくれるAIサービス『大喜利AI』を始めとする、笑いに特化したサービスやコンテンツを開発しています。また今年の11月からは早稲田の理工学部でAIや芸術、フェイクドキュメンタリーについての講義をするそうです。編み物の注文をいただいたのは、日本橋三越でのオーダー会でした。近鉄バッファローズ(オリックスではない)のキャップを被って現れた竹之内さんは、明るく歯切れよく感じのいい、まさに「快男児」という印象。「大喜利のAIをつくってます。LINEで大喜利できますよ!」と教えてくれて、「頭いいのに変わったことやってるひとだなぁー」と好感をもちました。

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街にチラシがあったころ ――1985~90年代の日本のインディーズ・チラシとアンダーグラウンド文化  09 YMOとグランギニョル (文:浜里堅太郎)

『今まで僕が受けた影響で大きな物は、YMOとグランギニョル。YMOは小学生の頃に聞いて以来、音楽はその関連一筋という感じ。芝居も同じみたいで、それ以外はちょっといく気が…みたい。高校生で芝居を見に行くって変な人、というのがいまだに頭にあるし…。でもマーキュロは、その変な人に誘われて行った割に影響を受けてしまった。影響を受けたとたん、捨ててしまいやすい高校生の私にとってグランギニョルは珍しい存在なのです。』 これは1987年に発行された演劇専門誌「演劇ぶっく」の東京グランギニョル解散時の特集「東京グランギニョル全記録」に寄せた高校三年生のときのわたしのコメントだ。

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空飛ぶ絨毯の絵師

子供のころは分厚い時刻表の鉄道地図を見るのが大好きで、オトナになると道路地図を見ながらクルマでさまよう生活になって、それがいつのまにかカーナビやグーグルマップにすっかり頼り切りになって、地図を見るという機会すら失われつつ今日このごろ。名古屋駅に貼ってあったチラシにひかれて、時間潰しのつもりで立ち寄った名古屋市博物館の特別展『NIPPONパノラマ紀行〜吉田初三郎のえがいた大正・昭和〜』には、ひさしぶりにウズウズさせられた。名古屋エリアには美術館もいくつかあるけれど、尾張の歴史資料を展示する名古屋市博物館は、その性格からしても、地下鉄桜山駅という中心部からちょっと離れたロケーションからしても、かなり地味な印象のミュージアム。地元ですら、学校の課外授業ぐらいでしか行ったことないというひとが多いかもしれない。その目立たないミュージアムで、目立たないまま7月末から展示が始まり、今月15日(月・祝)に終わってしまう今回の展覧会。実は大変興味深い「ジャパン・オリジナル」のグラフィック・デザイン展である。

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エロ手帖・誕生秘話

オヤジ道の正しいあり方を、笑いと涙で教えてくれる本メルマガの人気連載「かなりピンボケ」の比嘉健二さんと、年末に「今年の大晦日もピンパブでカウントダウンですかね」などと茶飲み話していたときのこと。「そういえば都築さん、エロ手帖って知ってる?」と言われて驚いた。ずっとむかしに古書店で見つけて驚愕、デザイン雑誌『アイデア』で2000年に記事を書いて、その後『デザイン豚よ木に登れ』にも収録したのだが、比嘉さんも神保町の古書店で見つけて、当時編集長をしていた雑誌『GON!』で特集したことがあるという。さらに「そのころは温泉街とかで売られてるのかと思ってそう書いたんだけど(僕もそうだった!)、それからいろいろ調べてみたら、ぜんぜんちがったんだよね」と、意外な真相を教えてくれた。ピンボケでもおなじみの粘り腰を存分に発揮しての調査結果を、以下にお読みいただこう!

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絶滅サイト 05「AV年表」~「幼児ペダルカー・コレクション」(文:ハマザキカク)

『白髪三千帖のフライングサーカス』という個人サイトの1コーナー。他は『シベリア超特急』や音楽のレビュー、個人の日記など他愛もないものだが、この紙ナプキンコレクションのコーナーだけ異彩を放っている。サイト上でも「当サイトのメインコンテンツ」と明記されている。喫茶店やファーストフード、中華料理屋、アミューズメント、洋風レストラン、和風レストラン、とんかつ屋など細かいカテゴリーに別けられている。残念ながら画像の復元は全く出来ないが、文章のレビューが詳しく記されている。また肌触りやデザイン、使いやすさ、希少性、総合評価などの項目で5点満点の評価を下し、オマケにトイレットペーパーに転用可能かどうかというジャッジも。

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絶滅サイト 07「怪しい国巡り」~「おもしろ絵馬」(文:ハマザキカク)

今更だが世の中には変わった物を集めるコレクターがいるものだ。バナナのラベルを集めている人は結構いるのだが、アボカドのラベルはかなりレアではないだろうか。ラベルだけを集めている訳ではなく、アボカドに関する事なら何でも大好きな様だ。ホームページでは他にアボカドの選び方、成分、カロリー、国産アボカドなどアボカドに関するありとあらゆる切り口のテーマが設けられている。料理方法も充実しており、グアカモレというメキシコ料理、サラダ、アボカド納豆、台湾のアボカドジュース、アボカド茶漬けなど珍しいものが紹介されている。自宅でアボカドを栽培する方法まで紹介されている。アボカドの語源はアステカ人のナワトル語で「睾丸」を意味するらしい。英語では別名「Soldier's Butter」とも言われるとの事。ちなみに日本では「アボカド」ではなく「アボガド」と言ってしまっている人が1.6倍いるらしいので、要注意だ。

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絶滅サイト 13「シャチハタに認められたい名字」~「モスクワ1990」(文:ハマザキカク)

意外にメジャーな名字も登録されていない『シャチハタに認められたい名字』(2000年~2016年 運営期間16年 絶滅期間1年)/ギャグサイトではないのになんとなくギャグに感じられる。シャチハタとは実は会社名で、朱肉が一緒に付いているハンコの事。既製品で買える名字は2100氏名で、それ以外は特注する必要がある。冒頭には登録されている2100名字が掲載されているが、その下には「メジャーな名字なのに」というコーナーで、意外と取り扱われていない名字が羅列されている。驚いたのが「荻野」「中嶋」「矢部」「高梨」「茂木」「皆川」などがないという事。しかもこれらは名字の多さランキング「名字博士」で1位~500位に入っているとの事である。そう考えると多い順から2100位まで作ればいいのではないかと思うのだが、駄目なのだろうか。「シャチハタに加えて欲しいランキング」というのもあり、クリックしてみたのだが何と文字化け(文字コードを調整すれば見られるのかもしれないが)。ある地方にだけ多い名字というのもあり、2100種全部置いてない店舗では無料で取り寄せられる様だ。

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絶滅サイト 17「バッタもん」~「悪徳商法」(文:ハマザキカク)

ボディビルと怪事件とCGのサイト『ラウンジピュア』(1996年~2011年 運営期間15年 放置期間6年)ここまで無関係な内容が1つにまとめられた混沌とした個人サイトは珍しい。サイトトップページの右上に漫画調の女性ボディービルダーの絵が掲げられている。メインコンテンツとされるのが「ボディビルとフィットネス」で「ボディビル選手権大会・結果レポート」などのコンテンツが設けられている。第二のコンテンツが「事件・ミステリー」。筆者がこのサイトを知った切っ掛けもこの中のコンテンツにある「世界の怪事件・怪人物」だった。「異星人に誘拐され、身体を検査されたヒル夫妻」「隕石の中から出てきた異星人のミイラ」などのトンデモ話の中に「「八つ墓村」のモデルともなった、津山33人殺傷事件」「大韓航空機をソ連戦闘機が撃墜」など歴史上の事実も混在しているのでどうしてもこういったサイトも検索すると出てきてしまうのである。そして第三のコンテンツが「コンピュータグラフィック」。サイト運営者は1063年生まれの吉田浩貴氏である。

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絶滅サイト 19「電車通勤士」~「マルフク看板コレクション」(文:ハマザキカク)

ダジャレというより単に音が似てるだけ『もし中国語をダジャレで覚えたら?』(https://jackal.blog.jp/ 2011年~2016年 運営期間5年 放置期間1年)――筆者が最近編集した本でブレイクしているのが『エロ語呂世界史年号』と『エロ語呂日本史年号』である。エッチな言葉で受験世界史の年号を覚える暗記本である。語呂合わせのテーマは数多くあり、類似企画をやろうと思って色々集めていた時に知ったサイトだったかもしれないのが、本サイト。文字通り中国語を日本語のダジャレにして覚えようというもの。例えば最終更新の「星座」はピンインでは「Xīngzuò」と表記し、発音は「シンズオ」である。したがってダジャレの暗記法として「安倍晋三の星座」が掲載されている。「价格」は「値段」といった意味でピンインは「Jiàgé」で発音は「ジャガー」。そこから導かれるダジャレは「ジャガーの値段」で実は何の捻りもない。2011年から開始され、既に300語以上開発された様なのだが、ただ単に発音が二言語間で似ているというだけだと、結びつきの関連性が乏しく、自然に覚えられる訳ではないのではないだろうか。

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チェコ・デザイン100年の旅

チェコとデザインという言葉が僕の中で結びついたのは、1984年7月に渋谷パルコ・パート3で開催された『チェコスロバキア・キュビズム展 建築/家具/工芸の世界』だった(チェコスロバキアが現在のチェコとスロバキア共和国に分かれたのは1993年のこと)。それまでチェコがデザインという視点で頭に浮かんだことはなかったし、キュビズムが建築や家具や工芸にもあったことも知らなかった。35年前のパルコは、こんなに革新的でエレガントな展覧会もやっていたのだった・・・・・・。そんなことを思い出しながら名古屋駅から名鉄で東岡崎駅まで行って、バスに乗り換えて向かったのが岡崎市美術博物館。中央総合公園というものすごく広い公園の中にあって、マインドスケープ・ミュージアムなる微妙な愛称を持つこの美術館では、いま『チェコ・デザイン100年の旅』展が開催中。ここで僕は久しぶりにチェコ・キュビズム・デザインに再会することができた。

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円盤の上のヴィーナス

和物セクシー・ジャケット・アルバムのコレクションを電子書籍にまとめたロードサイド・ブックス新刊『BED SIDE MUSIC めくるめくお色気レコジャケ宇宙』を先々週号で紹介したばかりだけれど、6月末には洋楽(おもにUS)アナログ盤の「美女ジャケ」をまとめた単行本『Venus On Vinyl 美女ジャケの誘惑』が、偶然にも時を同じくして発売された。旧知の編集者の担当書籍だったが、おたがいの企画をまったく知らず、ふたりでびっくりしたのがまだ1ヶ月かそこら前のこと。『美女ジャケの誘惑』はグラフィック・デザイナーの長澤均(ながさわ・ひとし)さんによる渾身の一冊。長澤さんと言えば本メルマガでは2016年9月7日号「ポルノ・ムービーの映像美学――長澤均の欲望博物学」で登場していただいた。

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文様化する身体

日本のトライバル・タトゥーの新しい試みとして昨年11月13日号で特集した「1万年の時を超えて——縄文タトゥーのプリミティブ・フューチャー」は予想以上の反響を得て、タトゥー・カルチャーへの関心が高まっていることを実感させられた。タトゥー・アーティストの大島托と、ジャーナリストのケロッピー前田による「縄文の文様を現代人の身体に彫りこむことで蘇生して未来に伝える壮大なアート・プロジェクト」。その視覚的な衝撃とともに、他人の身体をキャンバスに描くという、きわめてハードコアな美的挑発が、見るもののこころを揺さぶるのだろう。阿佐ヶ谷TAV GALLERYで開催された11月の展覧会「縄文族 JOMON TRIBE 2」に続いて、早くも3月1日から新宿ビームスジャパンで展覧会が開催され、縄文族として初の記録集『縄文時代にタトゥーはあったのか』も刊行される(3月19日発売)。

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木呂とマメとBOROの一幕劇

ダダカン展の首謀者として紹介した上原木呂さん。出会ってしばらくしたころ、新潟から上京したついでに、浅草アミューズミュージアムで開催していた写真展『BORO 美しいぼろ布展 ~都築響一が見たBORO~』を見てくれて、「そういえばうちにもBORO、たくさんあるから撮りませんか」と誘っていただいた。 上原木呂(本名・誠一郎)さんは1948(昭和23)年生まれ。新潟市の南西部、海を隔てて佐渡島と対面する西浦区の巻町(現・竹野町)に生まれた。家業の上原酒造(現・越後鶴亀)は明治23年創業という老舗蔵元。木呂さんが五代目に当たる。 「蔵元だから、それこそぼろぼろになった布袋とかいっぱいあって、それを自分で縫ったり羽織ったりして遊んでるんですよ」ということで、去年の春、撮影させていただくことになった。

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Freestyle China 即興中華  ご近所の「師匠」を探す旅 『上海師傅』著者・周祺(ジョウ・チー)インタビュー (写真:周祺 / 文:吉井忍)

近年は成都や重慶、杭州などトレンド入りする都市も増えてきたが、それでも上海は中国でトップクラスのおしゃれな街だと思う。海外の人間と文化を早くから受け入れてきただけあって情報に敏感で、道を歩く人のファッションを見てもかなりコーディネートに気を遣っているのがうかがわれる。例えば首都・北京は、もちろんインフラはどこにも引けを取らないのだが、まだどこかのびんりしていて、「文化的事業は北京、ファッションとビジネスは上海」という住み分けが今でもうっすら残っている。 そんな上海でも大通りを離れて小さな通りに入ると、また違う世界が広がる。靴を洗って修理してくれるお店、包丁を研ぐ人、せいろで蒸しあげたシュウマイが飛ぶように売れている風景。もう行けなくなって1年経つけれど、今はどんな風なんだろうと思っていたら、都築編集長から意外な展示があると教えていただいた。 この展示会『上海師傅(Shanghai Shifu)』は生粋の上海っ子、周祺(ジョウ・チー)さんが企画したものだ。彼女は今夏に同名の書籍を出版しており、展示会ではこの書籍で取り上げた上海ならではの手作りの日用品を紹介。 “師傅(シーフー)”は日本語に訳すと「師匠」に近く、英語では「master」。特定の技能に長じた年長者への呼びかけに使うことが多いが、決して大仰な言葉ではなく、例えばタクシーの車内で運転手に話しかける時などにも「師傅、ここで右折してください」のように気軽に使われている。書籍『上海師傅』では60人の“師匠”たちのストーリー、そして彼らが作り出す合計100種類の日用品や工芸を収録。およそ8年をかけたというこの『上海師傅』の背景について周さんにお話を伺った。

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私の特別な人を編んでください!――編み物☆堀ノ内の「肖像編み物」 第1回 妻による家庭内インタビュー (写真:久富健太郎 文:川上雅乃)

「編み物☆堀ノ内」という奇妙な名前のニット・アーティストと知り合ったのは数年前。それまでも橋本治とか男性による編み物は見聞きしていたけれど、その編みの緻密さと、モチーフの破天荒さ――シド・フィシャスとかクラフトワークとかディバインとか!――のマッチングに爆笑、そしてめちゃくちゃ欲しくなってしまったのだった。 いまでは「編み物☆堀ノ内」の名前はトレンディ界隈に知れ渡り、展示会はいつも大人気。いまでも欲しいけど。で、今年になって久しぶりにお会いしたら、年内に作品集の刊行を考えていると聞いて、そのウォーミングアップ!として「編み物☆堀ノ内」によるオーダーメイド作品の数々を、依頼主のインタビューを交えて短期集中連載していただくことにした。

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私の特別な人を編んでください!――編み物☆堀ノ内の「肖像編み物」 第2回 手塚治虫/手塚るみ子(プランニングプロデューサー) (文:手塚るみ子、川上雅乃 写真:久富健太郎)

編み物☆堀ノ内からお客様のご紹介: 今週のお客様の手塚るみ子さんはマンガの神様・手塚治虫先生のご息女です。プランニング・プロデューサーとして、治虫先生にまつわる企画展など、さまざまな企画を手掛けておられます。とてもチャーミングな方で、治虫先生のマンガに出てくる女の子みたい。髪の色や帽子、服に靴、ひとつひとつに個性があって、おしゃれが好きなんだろうなーと思いました。

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私の特別な人を編んでください! ――編み物★堀ノ内の「肖像編み物」 第6回 ジョナサン・リッチマン/上野広子(美容室経営・着付師) (聞き書き:川上雅乃)

【編み物☆堀ノ内よりお客様のご紹介】 いつお会いしてもおしゃれで音楽や映画やサブカルにも詳しい広子さんは、博多の美容室「ビーハイブ・デラックス」(https://beehivedeluxe.com/)の経営者(ご自分では女将と言ってます)。2015年、編み物を始めて間もない僕の作品展「狂い編みサンダーニット展覧会」を開いてくれた恩人でもあります。肖像を編んだのはジョナサン・リッチマン。夫のBOSS達也さんと義理の兄のよしみ(イラストレーターの上野”Billy”よしみ)さんの影響で聴き始め、広子さんの人生に大きなインパクトを与えたミュージシャンの1人だそうです。

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私の特別な人を編んでください!――編み物★堀ノ内の「肖像編み物」 第8回 スティーヴィー・ニックス/ユカ・クワントリル(カスタムケーキ職人) (聞き書き:川上雅乃)

【編み物☆堀ノ内よりお客様のご紹介】 アメリカ西部のワイオミングからインスタのDMでオーダーくださったユカさん。どんなひとなんだろう?とインスタを覗いたら、ものすごいケーキをひとりでつくっていました。キャプションを読むと、本物にしか見えないバラやシャクヤクやボタンの花は、どれも砂糖で出来ていて。ケーキ側面のテクスチャーも大理石や鉱物風、レースやドレープだったり。タダ者ではないユカさんのご注文で、フリートウッド・マックのスティーヴィー・ニックスを編みました。

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私の特別な人を編んでください! ――編み物☆堀ノ内の「肖像編み物」 第10回 アフリカ・バンバータ/井出 靖(音楽プロデューサー) (聞き書き:川上雅乃)

【編み物☆堀ノ内よりお客様のご紹介】 音楽にアート、ファッションとジャンルを跨ぎ、国内・国外も問わず「面白い」と思った人にガシガシ声かけて企画を立ち上げ形にし、販売まで一気通貫でやってしまう人。1980年にいとうせいこうさんと音楽制作会社「エムパイヤスネークビルディング」を設立し、90年代にはオリジナル・ラヴ、Bonnie Pink、クレモンティーヌ、小沢健二を手がけ、現在は音楽レーベル「GRAND GALLERY」とギャラリー+ショップ「Grand Gallery」を運営されてます。昨年(2020年)夏、僕の展示会を開いてくださった井出さんにアフリカ・バンバータ、それからチェット・ベイカーの肖像を編みました。

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nobunobuと歩く東京ビル遺産 07  60~70年代、マンション草創期に都心に現れた最先端物件  中銀マンシオンと中銀カプセルタワー (写真・文:鈴木伸子)

メタボリズム建築の傑作、黒川紀章設計の「中銀カプセルタワー」(1972年築)が、解体されるか保存再生されるか。この問題にはここ20年ほどの間注目が集まっています。 60~70年代に建てられたシブいビルを愛するnobunobuも、この建物は日本の建築史上の傑作と認識し、新橋、築地、汐留方面に用がある時は、ちょっと遠回りしてでもカプセルタワーの絶好のビューポイントである海岸通りに架かる歩道橋上まで建物を眺めにいくのが定番コースとなっています。周辺では、建築マニアとみられる方や外国人観光客など見物の人を見かけることもたびたび。

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私の特別な人を編んでください!――編み物☆堀ノ内の「肖像編み物」 第14回 スペースインベーダーズ/杉谷一隆(振付稼業air:man) (聞き書き:川上雅乃)

【編み物☆堀ノ内よりお客様のご紹介】 CMやMV、ステージや舞台のダンスから、犬やロボット(「ペッパーくん」他)の動作までも振付。自ら掲げる「動くものならなんでも振り付けます」のキャッチフレーズに偽りなしの振付職人集団「振付稼業air:man」を主宰する杉谷一隆さんです。ユニクロのウェブ広告「UNIQLOCK」とOK Goの『I Won't Let You Down』で、「カンヌやMTVのすごい賞をいっぱい獲ったすごい振付師」と認識してました。初めてお会いしたのは2015年、僕の編み物を展示してくれていた高円寺の古着屋「マウス」で。博多育ちで九州パンクを愛する杉谷さんに、80年代の伝説的パンク・ラップグループ「スペースインベーダーズ」の肖像を編みました。

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私の特別な人を編んでください! ――編み物☆堀ノ内の「肖像編み物」 最終回 シロクマと犬/山本一力(作家) (文:山本一力/写真:久富健太郎/聞き書き:川上雅乃)

【編み物☆堀ノ内よりお客様のご紹介】 最終回のお客様は作家の山本一力さんです。高校を卒業して旅行の企画や添乗、広告営業や制作、雑誌の編集、デザイン事務所やビデオ制作会社の経営など10数回転職したのち46歳で作家になろうと決め、新人賞の応募原稿を書き始めました。 そこから7年後の2002年、53歳11か月で時代小説『あかね空』(文藝春秋)で直木賞を受賞。19年経った今も時代小説や歴史小説、エッセイに新聞の悩み相談までガシガシ執筆を続けてます。そんな山本さんは僕の20年来の恩人で、いちばん最初に編み物を注文してくださったひとでもあります。

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BORO、世界をめぐる 06  スウェーデン(ストックホルム&ヴァーナム)編 (写真・文:辰巳清)

2019年から20年にかけて5回にわたって掲載されたBOROコレクションの海外巡回展報告。コロナ禍を挟んで3年ぶりに、スウェーデンでの展示リポートが辰巳清さんから届いたので、さっそくご覧ください! *BOROのワールドツアーの過去記事はこちら: 2019/11/06号 東京編(アミューズミュージアム開館から閉館まで) 2019/11/13号 オーストラリア編(シドニー、メルボルン、キャンベラ) 2020/03/04号 中国北京編 2020/04/22号 中国深圳編 2020/05/20号 米国ニューヨーク編 ROADSIDERS’weekly2020/05/20号のBORO米国ニューヨーク編に続けて、スウェーデンのストックホルムとヴァーナムでの展覧会をレポートさせていただく。

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編み物☆堀ノ内の「帰ってきた肖像編み物」 第5回 蟹食う祖母 オーダーした人/Mao(大学院生・レゲトンDJ) | 写真:Mao/聞き書き:川上雅乃

僕に編み物を注文してくれるお客さんは、女性も男性もだいたい僕と同世代(50代前後)。20代のひとはたぶん初めてです。当時Maoさんは大学を卒業したばかりの22歳。東京駅のそばにある会社で働き、人生初のボーナスで注文してくれたのは、一心不乱に蟹を食べるおばあちゃんの肖像! 今はポルトガルの第二の都市ポルトの大学院で勉強中というMaoさんにお話を聞きました。

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シャッター通りのポスター・ギャラリー 前編

シャッター商店街でアート・イベントを開いたり、若者を招いて「祭り」をやったりすれば、それはその期間だけはひとが集まるだろうが、終わればまた元のまま。それでは意味がないだろうと痛感したケイタタさんは、実は気鋭の広告マンでもある。そこで社内の若手たちに声をかけて、有志でプロジェクトを立ち上げたところ、予想を上回るリアクションを得て、現在も拡大続行中だ。そこでロードサイダーズ・ウィークリーでは今週・来週の2回にわけて、その楽しくも挑戦的なプロジェクトの全貌を、ケイタタさん本人から報告していただくことにした。

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シャッター通りのポスター・ギャラリー 後編

先週の誌上ポスター展「新世界市場編」に続いて、今週は「文の里商店街編」をお送りする。文の里商店街があるのは大阪市阿倍野区。最近は「あべのハルカス」の開業でちょっとだけ話題になったが、そのにぎわいはここ文の里商店街までは届いてこない、新世界市場に負けず劣らずの寂しい商店街だ。2013年秋、日下さんたちがこの文の里商店街を舞台に繰り広げたポスター・プロジェクトが、ネットはもちろんテレビ、新聞を始めとするさまざまなメディアに取り上げられて、本人たちの予想をはるかに超えるリアクションが広がった。日下さん自身も書いているように、「制作したポスターの23%が広告賞を受賞、キャンペーン全体も2つの賞を獲得、ぼくも佐治敬三賞という今年関西でもっとも活躍した広告マンに与えられるとても立派な賞をいただきました」という評価を得て、プロジェクトはいま全国のシャッター通りに広がろうとしている。今週はその全貌を、52店舗201作品におよぶ全作品とともに紹介しよう!

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史上最大のデザイン・レイヴ

1970年、僕は中学2年生だった。修学旅行は京都大阪で、そのハイライトが大阪万博見学だった。「万国博覧会」というものが輝ける存在だった、もしかしたらあれが最後の晴れ舞台だったのかもしれない。大阪万博は6ヶ月で6421万8770人の観客を集め、これはいまだに日本のイベント史上破られていない記録だが、2015年のいま、「エキスポ見物のために旅行」しようという人間が、どれくらいいることか(5月1日から「食」をテーマにしたミラノ万博が始まるの、知ってました?―日本館は建築が北川原温、特別大使がハローキティ・・・)。世界のひとびとの多くが「人類の進歩と調和」を信じていられた、あの時代のあの場所は、いま振り返ってみればクレイジーでポジティブな、アートとデザインの壮大な実験場だと見えなくもない。

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新連載! 絶滅サイト 01「人工言語野」~「長崎ちゃんぽん」(文:ハマザキカク)

ハマザキカクという編集者がいる。硬派の出版社に勤務しながら、みずから書いた『ベスト珍書 このヘンな本がすごい!』を刊行したり、『アイラブユーゴ3』『ココロピルブック』『絶対に解けない受験世界史』『超高層ビビル4』など数々の奇書を手がけてきた、稀代の「珍書プロデューサー」であり、さらに「辺境デスメタル・ヒップホップ愛好家」でもある。前から気になっていたハマザキカクさんとじっくり話す機会が最近あって、おしゃべりしているうちに話が盛り上がり、いきなりメルマガでの連載をお願いすることになった。今回のテーマは「絶滅危惧種のウェブサイト」。これから月にいちどのペースで、とてつもないワールドワイドウェブの徒花たちをご紹介いただく。気になるサイトがあったら、ぜひ飛んでみていただきたい。絶滅危惧種たちは、いつまでそこにいてくれるのか、だれにもわからないのだから。

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絶滅サイト 02「自作大腸カメラ」~「台湾軽便鉄路」(文:ハマザキカク)

先月からスタートした珍書プロデューサー・ハマザキカクさんによる新連載「絶滅危惧種のウェブサイト」。今回もまた、とてつもないワールドワイドウェブの徒花たちをご紹介いただく。気になるサイトがあったら、ぜひ飛んでみていただきたい。絶滅危惧種たちは、いつまでそこにいてくれるのか、だれにもわからないのだから。

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絶滅サイト 10「超長髪女性」~「ナチズム」(文:ハマザキカク)

超長髪女性の専門サイト『Long Hair Magazine』――このサイトは何度か本気で出版の依頼メールを出そうか迷った事があるので、正直この『絶滅サイト』で紹介するには躊躇いがある。超が付くほどのロングヘアーの女性達の写真を沢山掲載したサイトである。1997年から開始しているので相当な老舗サイト。閉鎖された訳ではないのだが、最後に確認出来る更新日は2013年で、それも2回のみで2009年以降はあまり目立った動きがない。ブログへのリンクがあるのだが、それの最終更新は2012年。ただロングヘアだったら良いわけではなく、染めていないのも必須条件だ。ロングヘアの女性の写真集にはインタビューも掲載されており、手入れの仕方やいつから伸ばしているのかなどを聞いてる。他に「ロングヘアの有名人」や「ロングヘアとファッション」「ビューティフルヘア」などのコラムも多種多様に設けられていて、コンテンツ作成能力が高い。こうやって説明を書いていると、また依頼したくなってきてしまった。

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絶滅サイト 11「航空機事故」~「カレーライス研究会」(文:ハマザキカク)

『全翼機の世界』(1997年~2004年 運営期間7年 放置期間12年)――全翼機とは胴体がなくて、全身が翼の形をした飛行機のこと。見た目がブーメランの様で異様だ。ノースロップのステルス機と言えば分かるだろうか。その謎めいた全翼機に特化したサイト。それだけで貴重なテーマだと言える。実際に今まで日本では本や雑誌のトピックとして取り上げられる事はあっても、全翼機に特化した書籍は全く出版されていないようだ。全翼機の解説から始まり、「全翼機図鑑」「日本の無尾翼機」「全翼機 Link」「全翼機おもちゃ箱」などコンテンツがバリエーションに富んでおり、ホームページ自体のクオリティは高い。ノースロップだけでなく、ホルテンやそれ以外のメーカーの全翼機を紹介している。おもちゃコーナーではプラモデルだけでなくワッペンや、全翼機が出てくる映画やビデオまで集めている。難点なのは図鑑で掲載されている写真が他の出版物からの転載で、一切著作権を有していないと宣言している事だ。

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絶滅サイト 14「面白い日本」~「稜堡式城郭」(文:ハマザキカク)

スチュワーデスの服装の変遷とそれを着ていたOBが登場『CA制服ギャラリー』/2000年~2001年 運営期間1年 絶滅期間16年/スチュワーデスの制服の時代ごとの写真と、当時その制服を着ていたスチュワーデスのOBが「制服の思い出」としてショートインタビューで登場している。なぜ閉鎖してしまったのかよく分からないほど魅力的なコンテンツ。個人によるサイトではなく、ANAの公式サイトの一部だったので組織編成などで消滅してしまったのだろうか。もしかしたらANAのサイトのどこか別のURLに同じコンテンツがあるのかもしれないが。時代は等間隔ではなく1955、1958、1966、1970、1974、1979、1982、1990に別けられているがこれはデザインが変わった年。1990年のものは肩幅が広がっておりバブリーなイメージ。1974年のものはオレンジ一色でパンタロンを履いており、可愛らしく見える。1966年のものはとてもシンプルで清楚で個人的には一番好みだ。1979年のものがバブル期でもなく、レトロっぽさもなく一番ダサく感じる。

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絶滅サイト 16「煎餅」~「デパート屋上観光案内」(文:ハマザキカク)

英語の解説まで充実『盆踊りの世界』/2003年~2017年 運営期間14年 放置期間0年/全国には500以上の伝統的な盆踊りがあるらしいのだが、そのうち200近くを紹介したサイト。「詳細ガイド」で各地域に別けられており、例えば東京だと「佃島盆踊り」がある。中を見ていくと、盆踊りの写真や歴史、起源伝承、歌、歌詞、動画、日程、プログラムなどが詳しく記されている。雨天の場合中止するかどうかやアクセス方法、駐車場の有無まで記録されており、データベース中のデータベースサイトと言ってもいいだろう。近年『ニッポンのマツリズム 祭り・盆踊りと出会う旅』や『盆踊り 乱交の民俗学』など、盆踊りの書籍が沢山出版されているが、このサイトでは盆踊りの「動画」が豊富にあり、この点は書籍よりも優位性があると言える。サイトの構造が若干分かりにくいのだが、サイトマップを見るとなんと英語のページまで設けられており、それもほんのお情けでなく、かなりのページ数。盆踊りデータベースというより盆踊り大全と言ってもいいかもしれない。

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絶滅サイト 18「ヘヴィメタル」~「風呂」(文:ハマザキカク)

「日本コソボ友好協会」――紛争国の友好協会で紛争が勃発したのだろうか(2011年~2015年 運営期間4年 放置期間2年)/コソボは2008年にセルビアから独立を一方的に宣言した新興国だが、日本を含める西側諸国が承認している。ユーゴ紛争の最後の頃に揉めていたが、情勢が落ち着いてきたのか最近日本で話題になることはほとんどないだろう。この協会はコソボと日本の友好を育む目的で2011年に発足した。平成22年の会長はミッキー・ハクシスラミで顧問が中村恭一文教大学教授だ。知らない人も多いかもしれないが、コソボの住民はアルバニア系でアルバニアとの統合を望んでいるものが多い。筆者は2009年に『アルバニアインターナショナル』という本を編集し、共産趣味者達から好評を博した。

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絶滅サイト 21(最終回)「フィギュアスケート」~「地ビール瓶」(文:ハマザキカク)

積雪地方出身者にとっては懐かしい『消火栓写真館』(2013年~2016年 運営期間3年 放置期間1年)――2013年に始まったと見られる消火栓を集めたサイト。日本全国が対象だが、北海道だけ更に「道北」「道央」など細かい地域に別けられているので、北海道出身によるサイトと見られる。九州は福岡、長崎、大分、熊本だけなので沖縄など全国を制覇した訳ではない。消火栓以外に防火水槽も集めている。防火水槽は貯水槽になっているものが多く、地下式の場合、マンホールのような蓋がはめられている。また近くに位置を示す標識が設置されている。地上式は冬季に雪に埋もれてしまう積雪地に多いらしく、北海道出身者がこうした消火栓に惹かれたのも理解ができる。すぐに見つかる必要がある為、景観を損ねるほど目立ったデザインのものが意外と多く、よく見てみるといずれも個性的だ。近年ではマンホールや赤いポストの本も出版されているぐらいなので、消火栓の本が出ても良いかもしれない。サイトは更新が止まっているが、管理人のTwitterは健在。

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BORO、世界をめぐる3 中国北京編(写真・文:辰巳清)

ROADSIDERS' weekly2019/11/06号と11/13号に掲載していただいたBOROのワールドツアーレポート。11/06号では浅草に田中忠三郎コレクションのBOROを展示の核としたアミューズミュージアムが、2009年に開館して2019年3月末に閉館するまでの経緯を、11/13号ではそのBOROが知らない間に世界各国のアート・ファン、テキスタイル・ファンの間で話題になっていて、各地の美術館から招聘を受けてのワールドツアーが2019年オーストラリア(6月シドニー、7月メルボルン、8月キャンベラ)から始まったことを書かせてもらった。各国での展示は休む間もなく続いて、今回は中国(北京・深圳)の展覧会をレポートさせていただく。コロナでたいへんな今の時期だからこそ、中国でBOROがどれほど暖かく受け入れられたか、ぜひご一読いただきたい。

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BORO、世界をめぐる 5 米国ニューヨーク編 (写真・文:辰巳清)

ROADSIDERS’ weekly2020/04/22号のBORO中国深圳展に続けて、米国ニューヨークでの展覧会をレポートさせていただく。 2020年1月3日、大好評のうちに深圳画院美術館での展覧会が閉幕。撤収、梱包作業を経てBORO約100点を載せたトラックは深圳から北京経由で東京に向かった。東京の倉庫でニューヨーク展用に出展作品50点を再梱包して、またもや航空輸送。この頃はまだコロナ禍の影響はなく、無事2月18日にJFK空港を通関。展示作業開始までの4日間、僕はニューヨークの美術館を巡った。

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夜の白熱教室――プラモデガタリ紙上再現!

子どものころ以来プラモデルは触ったことがないし、フィギュアより生身の肉体が好みなオトナだったけど・・・・・・2016年07月20日配信号「我々は如何にして美少女のパンツをプラモの金型に彫りこんできたか――廣田恵介とセンチメンタル・プラモ・ロマンス」で、人気モデラーの廣田恵介さんと知り合い、2019年8月末には阿佐ヶ谷ロフトでのトークに呼んでいただいた。 『プラモデガタリ』というシリーズの最終回だそうで、トークのテーマは「文化・風俗としてのガールズプラモ」。いや、ガールズプラモとか知識ゼロなんですけど、と固辞しかけたが、「そういうひとがいいんです!」と言われて登壇。

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nobunobuと歩く東京ビル遺産 05  昭和30年代の池袋の面影を西武、PARCOに見出す (写真・文:鈴木伸子)

池袋という町は実は東京ではなく、埼玉の都なのではと思っている人も多いらしい。しかし、ここは東京都豊島区の中心繁華街、JR池袋駅の鉄道乗降客数は新宿駅に次いで第2位という巨大ターミナルシティなのです。 池袋の隣町である豊島区目白出身のnobunobuは、この池袋で精神を形成されてきた筋金入りのイケブクラー。千代田区麹町出身の都築響一氏は、幼少期、少年時代に池袋に赴くなんてことは皆無だったでしょうが、ほぼ地元民であるnobunobuは、家から歩いて行ける池袋の西武とパルコと東武デパートを子どもの頃から常に徘徊し、それらをつなぐ地下道と池袋駅前の街路を往復しながら今日までを過ごしてきたのです。

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私の特別な人を編んでください!――編み物☆堀ノ内の「肖像編み物」 第3回 中銀カプセルタワー/声(特殊コスプレイヤー) (写真:声 聞き書き:川上雅乃)

(編み物堀ノ内からお客様のご紹介) 「今週のお客様の声(こえ)さんは元まんだらけコスプレ店員で、アートアイドル声ちゃんとしても有名な方。会田誠、根本敬、笠間しろう、町野変丸によるボディペインティング『アートアイドル声ちゃんの変躰ランド』でお名前を知りました。小6の男の子と小1の女の子の母となった今もバリバリの現役コスプレイヤー。ジャングル黒べえやスペル星人、ニャンまげなどのコスプレをしたり、 アニソン特撮ソングのDJ をするなどの活動をされてます」

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私の特別な人を編んでください!――編み物★堀ノ内の「肖像編み物」 第4回 ジョニー・デップ/國方麻紀(フリーランス・エディター) (文:國方麻紀 聞き書き:川上雅乃)

編み物★堀ノ内からお客様のご紹介:國方さんは映画や海外ドラマなどのエンタメ系が得意な編集者。今から20年前、25歳のときにELLE ONLINE編集部のアシスタントとして編集修業を始め、その後、職場を変わり女性向けWEBメディアの編集長を経てフリーに。今はおもにNetflixが運営する「ネトフリ」編集部(https://note.com/netflix)で映画評やインタビューを手掛けています。國方さんは、僕が編み物活動を始めて間もない頃から「編み物☆堀ノ内の勝手応援団」を名乗り、メディアやSNSでせっせとPRしてくれています。

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nobunobuと歩く東京ビル遺産 06  60年代東京に誕生した“輝く都市”、新宿駅西口の街並みは2020年代に失われるのか?! (写真・文:鈴木伸子)

新宿駅西口の再開発が進んでいるようです。 先日、久しぶりに新宿駅西口を歩いていたところ、私がこのエリアで一番カッコいいシブいビルだと見込んでいた明治安田生命ビル=旧安田生命ビル(1963年築)が解体されつつあるのを発見して、驚くとともにガッカリ。コロナでステイホームしていた間にnobunobuに断りもなく、ここでも都市改造が進んでいたのでした。跡地には23階建てのビルが建つのだとか。

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私の特別な人を編んでください!――編み物★堀ノ内の「肖像編み物」 第7回 上野達也/サトコ・ラモーン(遠藤聖子・会社員) (聞き書き:川上雅乃)

【編み物☆堀ノ内よりお客様のご紹介】 先週お話を聞かせていただいた博多の上野広子さんが経営する美容室「ビーハイブ・デラックス」(https://beehivedeluxe.com/)の美容師だったサトコ・ラモーンさん。その名の通り、パンクにメチャ影響を受けて大人になったそうです。闘病中だった上野BOSS達也さん(ビーハイブ・デラックスの経営者で美容師)の笑いをとって病魔を退散させようと、BOSS達也さんの肖像編み物をオーダーくださいました。

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私の特別な人を編んでください!――編み物☆堀ノ内の「肖像編み物」 第11回 シウマイ弁当/會田茂一(ギタリスト) (聞き書き:川上雅乃)

【編み物☆堀ノ内よりお客様のご紹介】 お名前を知ったのは「渋谷系の裏番長」エルマロ時代の30年前。そこから現在までずっと第一線のギタリストでソングライター・音楽プロデューサーでもあるアイゴンさんです。映画・CM音楽の制作や、木村カエラなど数多くのアーティストへの楽曲提供やプロデュース、最近ではあいみょんが5月にリリースしたシングルにギターで参加するなど、幅広く活躍。すごいギタリストなのに、初めてお会いしたときから気さくで優しく楽しいひとで、仕事と人柄ともに尊敬してます。アイゴンさんが大好きな、崎陽軒の「シウマイ弁当」を編みました。

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私の特別な人を編んでください!――編み物☆堀ノ内の「肖像編み物」 第13回 やついいちろうとこぶし/松嶋初音(タレント)(撮影:久富健太郎/聞き書き:川上雅乃)

【編み物☆堀ノ内よりお客様のご紹介】 2018年に『ナポレオン・ダイナマイト』のセーターをお買い上げいただいたのがご縁の始まり。本名でのご注文だったので最初は誰なのか気づかず、松嶋さんがインスタに着画をあげてくれて初めて、「わ、松嶋初音さんだったんだ!」と知りました。高校生のときにグラビアアイドルとしてデビューされたそうですが、趣味はゲーム(大会に出るレベル)、カメラや怪談、マンガ、フィギュア、車。結婚して8年になるという夫・やついいちろうさん(エレキコミック)と愛犬こぶしちゃんの肖像を編みました。

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編み物☆堀ノ内の「肖像編み物」第15回 【特別編】俺の特別な人を勝手に編みました! 町田町蔵(INU)/町田康(小説家) (文:町田康/写真:久富健太郎/聞き書き:川上雅乃)

連載第15回となる今回は特別編。僕が肖像を勝手に編んだ伝説のパンク・ロッカー町田町蔵、現在は小説家の町田康さんご本人に登場いただきました。モチーフは1979年結成・1981年解散のパンク・ロックバンド「INU」の1stアルバム『メシ喰うな!』のレコジャケです。 『メシ喰うな!』は詞と曲、歌唱、演奏、それから写真も含めたデザイン、どれをとっても完成度が高いレコードだと思います。針を落として聴いていた頃の、青臭い記憶への郷愁もコミコミのパッケージとして『メシ喰うな!』は特別で、しかもこの黄色の地にモノクロの町蔵がこちらを睨みつけているジャケは、ある年代以上でロックが好きな人なら、おそらく誰でも知っている。編み物を始めてセーターを完成させることができるようになってすぐ、「次の戌(INU)年の年始には『メシ喰うな!』を編もう」と決めてました。

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私の特別な人を編んでください!――編み物☆堀ノ内の「肖像編み物」 第16回 ココ・シャネル/内海恵美香(編集者) (写真:久富健太郎/聞き書き:川上雅乃)

【編み物☆堀ノ内よりお客様のご紹介】 内海さんが大学生だった1981~1984年はサーファーブーム。横浜育ちの内海さんはバリバリのサーファーになり、大学時代は湘南で波乗り三昧。新卒でサーファー雑誌『Fine』(日之出出版)の編集部員になり、その後、フリー編集やOL向け情報誌『Caz』(扶桑社)編集部、ふたたびフリーを経て、現在は女性向けの雑誌とデジタル・メディアにかかわっています。雑誌編集者として昭和の終わり・平成・令和を生きてきた内海さんが55歳の誕生日の記念にオーダーしてくれたのは、ココ・シャネルの肖像でした。

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Facebook顔認識の末路

今年のメルマガも今週が最終号、なにか年忘れっぽい記事を…・・と考えて思い出したのがFacebook顔認識をめぐる話題。テクノロジーによる監視社会への突入で、世界の至る所に取り付けられた防犯カメラから個人のデータが政府に吸い取られる危惧が叫ばれるようになった今日この頃。中国の顔認識システムはすでに国内のほぼすべての市民を記録し、そのなかには生後9日の赤ちゃんまで含まれている…・・というような、ダークSFもどきの現実がすでにそこにあるわけですが、この11月にひっそりIT関係のニュースで流れたのが「Facebookは顔認識機能を停止した」という発表。アメリカではプライバシーや人権上の懸念が高まってFacebookの決断に至ったわけで、すでに10億人以上のデータを削除したそう。 たしかに顔認識技術がもたらす利点もあるけれど(犯罪の抑止や捜査など)、プライバシー侵害も深刻な問題なので、IT企業もますます難しい舵取りを迫られることになりますが、しかし! 各国の公安機関が活用する本格的な顔認識システムはともかく、Facebookの顔認識技術ってそんなに高度だったのか???と疑いを持つひと、いませんでしたか。

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nobunobuと歩く東京ビル遺産 10  「シブいビル」を彩る大理石モザイク画の巨匠、矢橋六郎の作品の魅力に迫る 後編  モザイク制作の本拠地だった岐阜・大垣の矢橋大理石本社を訪問!! (写真・文:鈴木伸子)

前回は、1960~70年代築の築50年ほどのシブいビルに数多く設置されている矢橋六郎作の大理石モザイク作品の素晴らしさについて書きました。 画家でありモザイク作家としても活躍した矢橋六郎(1905-88)は、岐阜県大垣の国内有数の建築石材会社・矢橋大理石の一族に生まれ、東京美術学校(現在の東京藝術大学美術学部の前身)で西洋画を学び、卒業後はフランスに留学。 帰国後は画家として活躍しながら家業の石材会社の経営に従事し、その一方で、1960年前後からはビルや公共空間のために大理石モザイクの壁画や床面の作品を数多く制作するようになりました。 60~70年代建設のビル建築には、エントランスまわりなどの人通りの多い目立つ場所にモザイク壁画が設えられ、それは、鉄筋コンクリートの無機質なビルに華やかな装飾空間が必要とされたからとか。なるほど、納得のいく理由です。

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街にチラシがあったころ ――1985~90年代の日本のインディーズ・チラシとアンダーグラウンド文化 04 吊るされる少年 (文:浜里堅太郎)

「一幕 "鉄のペニス"――女の声がする。奇妙な叫び声。SPKのイントロだ。」 1985年12月東京グランギニョル第4回公演「ライチ・光クラブ」(作:K・TAGANE(鏨汽鏡)補作・演出:飴屋法水)の台本はこんなト書からはじまっている。 「SPK」とは精神病院に勤務していたグレアム・レベルを中心に1978年にオーストラリアで結成され、スロッビング・グリッスル、キャバレー・ボルテール、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンなどと並ぶ80年代の代表的なインダストリアル系バンドのひとつで「ライチ」の冒頭では、SPKの12インチ「Dekompositiones」(1983年)の「Culturcide」という曲が使われた。

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nobunobuと歩く東京ビル遺産 13  「秀和レジデンス」的な建物の存在理由に関しての一考察 (写真・文:鈴木伸子)

今回久しぶりにご報告したいと思いたちましたテーマは、その日々の探索の結果の一つなのですが、高度経済成長期に都内に数多く建設された高級マンション「秀和レジデンス」についてなのです。 実は以前、この連載では秀和レジデンスの成立過程について二度にわたって記事を執筆させていただきました(2021年2月3日号、3月3日号)。そして、その後もしつこく秀和レジデンスに注目し続けてきたところ、「一見して秀和レジデンスに見えるけれど、本物の秀和レジデンスではないという物件がこの世にはあまりにも多く存在している」という問題に直面することになったのです。 街角で、「あ、秀和レジデンスだ!」と思ったものの、近寄ってマンション名を確認すると、そこには秀和という名称がない。ディテールを観察すると、微妙に異なっている建物が膨大に存在しているのです。

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nobunobuと歩く東京ビル遺産 14  都心駅前のシブいビルがサラ金タワー化しがちなことに関する一考察 (写真・文:鈴木伸子)

昨年、新書大賞を受賞した本に『サラ金の歴史』(中公新書)という本がありました。東大大学院経済学研究科准教授の先生が書いた本で、書店で一目見てなんだかおもしろそうと読み始め、そのテーマと資料へのアプローチ、新聞や雑誌の記事からの引用などは、まるで高度経済成長期の一般的な日本人の生活と人生がドラマか映画になったような内容で、新書にしては結構厚い本なのにあっという間に読み終えてしまいました。 実際、「犬が歩けば棒に当たる」というほど、街を歩くとサラ金の看板が目につくもので、様々な理由で今まさに手元に現ナマが必要な人がこの世に溢れていることを実感します。

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編み物☆堀ノ内の「帰ってきた肖像編み物」第3回 富野由悠季 オーダーした人/山口洋三(学芸員) (写真:久富健太郎 / 聞き書き:川上雅乃)

山口洋三さんは福岡市美術館の学芸員です。仕事の内容は作品の収集、管理、展示、研究、それから企画展をつくること。いまは福岡アジア美術館学芸課長になって、実作業をすることはなくなったそうです。山口さんは子どもの頃からのガンダムファン。そんな山口さんが敬愛するアニメーション映画監督・富野由悠季さんの肖像を編みました。

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編み物☆堀ノ内の「帰ってきた肖像編み物」第4回 りく(フレンチ・ブルドッグ) オーダーした人/関根優子(会社員) (写真:久富健太郎、関根優子/聞き書き:川上雅乃)

関根さんは音楽業界のいろいろな現場を長く渡り歩いてきたひと。アーティストのファンクラブの運営や音楽プロダクションのデスク業、レコーディングスタジオのブッキングマネージャー、ドラマ制作会社のデスクなどを経て音楽業界を卒業し一転、葬儀社の社員に転身! 音楽、筋トレ、服、英会話と好きなことがたくさんあって、いつも楽しそうな関根さんの愛犬、フレンチブルドッグのりくさんを編みました。

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絶滅サイト 03「誤訳映画字幕」~「有名人死亡時年齢リスト」(文:ハマザキカク)

安保・全共闘世代にファンが多い趣味「プロレタリアの歌」――筆者は2011年に『世界軍歌全集』という本を編集したが、その頃、他に似たようなテーマのものも複数見つけていた。北朝鮮の軍歌、ソ連の軍歌を集めているサイトなどがあったが、革命歌・労働歌を集めているのがこれ。残念なことにWayback Machineでも復元できないリンクがほとんどだが、色々な曲が紹介されていた。「「安保」粉砕」や「群馬共産党事件革命歌」などの曲名がインパクトある。「プロレタリアの歌を聴こう!」というコーナーでは、確か曲も聴けたはずだ。

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絶滅サイト 06「特殊特許」~「ミスターピーナッツ」(文:ハマザキカク)

ハゲ応援サイト「SkinHeads Web」サイトの一番上に「LAST UPDATE」で今日の日付が表示されているので、久々に更新されているのかと思いきや、機械の誤作動で最終更新日は2001年。実に15年以上も期間放置されているのである。スキンヘッドと言い換えれば格好いいが、ハゲを集めたサイトである。ただ確かに欧米では髪が薄くなるぐらいだったら、剃り上げた方が格好良いという雰囲気で、実際にバンドマンでもスキンヘッドで格好いい人は大勢いる。メタルの世界でも長髪ではなく敢えてスキンヘッドにしている人もいるので、市民権を得てきていると言えるだろう。ちなみに極東の日本、中国、韓国では欧米に較べて中年男性のカツラ着用率が突出して高い様だ。歴史上の有名なスキンヘッドを紹介していて、シェークスピアや親鸞、ナポレオン、レーニン、東条英機、ムッソリーニなどが挙げられている。要するハゲオヤジ列伝という事だ。現代の人でもロバート・デ・ニーロやショーン・コネリーなど。

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絶滅サイト 08「逆レイプ情報」~「珍車の街角」(文:ハマザキカク)

「お漏らし」をした時の体験談を集めたサイト。「おもらしウェブリング」なるものが一番上に掲載されおり、お漏らしに関するウェブサイト達に参加を呼びかけている。今となってはどういうサイトが加盟していたのかは不明。Web1.0時代はリンク集やウェブリングが流行っていた。ホームページの真ん中に「おもらしで繋ぐ友情!!」という言葉が記され、それとは関係あるのかよく分からない日本人女性と外国人が笑顔で映る写真が掲載されている。サイト運営者のプロフィールでは「女性のおもらしに興味があり、当サイトを開設しました」とある。それぞれのエピソードでは「高校生の時学校へ行く途中で 体験者:なっちさん 記載日:3月16日」などというタイトルが記載されており、中を見ると女性と運営者がどういうシチュエーションでお漏らしをしたのか語っている。こんな事をわざわざ他人に打ち明ける女性がいるとは考えにくいので、全て自作自演の可能性がある。

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絶滅サイト 09「雅子さま」~「旧ソ連のエアライン」(文:ハマザキカク)

「スポーツセックス推進委員会 (SportSex)」――『珍スポーツ』という企画を考えた時に、それはそれで色々あるのを知ったのだが、一石二鳥になると思ったのがセックスとスポーツを融合させたもの。汗も掛けるし、子作りにも励めるし、ダイエットにもなるし、気持ちが良い。そんな事を考えている人がいないかな?と探したら、ドンピシャで出てきたのがこのサイト。しかしこれは見れば分かるが何かのアフィリエートサイト。この「Sport-sex」というドメインを確保しておくために「子宮頸がんについて」や「ノードラッグ!」という適当に無関係のコンテンツを乗っけているのが明らかだ。スポーツという訳ではないのだがドルショック竹下著『セックス・ダイエット』という本が出ていて、実際にセックスで痩せる方法を指南している。こうなったら『オナニースポーツ』という本を出して、自家発電しながら筋トレも出来る様なマニュアルを作るしかないのかもしれない。

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絶滅サイト 20「メンズウォッチング」~「担々麺」(文:ハマザキカク)

ニッチトップを目指せたかもしれないのに、写真や解説が貧弱『担々麺ブログ』(2007年~2011年 運営期間4年 絶滅期間6年)――世の中には無数のラーメンブログやラーメンサイトがあるが、そうしたレッドオーシャンから一歩距離を置いた担々麺や焼きそばなどのジャンルに移るだけで、ニッチトップになれそう。しかしこのブログはグルメブログとしては相当物足りない。訪れた地域が一覧になって右に掲載されているのだが、ほとんどの件数が1件のみ。合計しても50は超えないだろう。それぞれのレビューを見てみると、提供された担々麺を椅子に座った目線から移動することなく撮影しているので、いずれも斜め上な上に、器がフレームから外れていたり、そうでなかったりと不統一で、ピンぼけやフラッシュによる反射が酷く、10年前に撮影されていたものとして見てみても劣悪。レーティングも「おいしさ」と「辛さ」の二項目のみで、「スープ」「コスパ」「雰囲気」「サービス」といった指標はなく、ほとんど参考にならない。感想文もTwitter程度の長さで何の捻りもなく、面白みに欠ける。

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自作大腸カメラからチンコ看板まで――「絶滅サイト」連載終了記念対談

約2年間にわたって続いた連載『絶滅サイト』が先々週号で終了した。Webサイトのホームページをひたすら羅列した、見かけこそ地味にも感じられる記事だったが、個人的には他に類例のない貴重なアーカイブだったと思う。今回は連載終了を記念して、著者のハマザキカクさんと連載を振り返り語り合ってみた。あわせてハマザキさんによる現時点での「特選絶滅サイト」もご紹介するので、その絶滅・放置ぶりをお楽しみいただきたい!

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BORO、世界をめぐる 2(写真・文:辰巳清)

先週に続いてお送りする、浅草アミューズミュージアム館長・辰巳清さんによるBOROワールドツアー・リポート。浅草のミュージアム閉館までの軌跡を記した前回に続く今週は、いよいよBOROが海を渡ってオーストラリアに上陸する!

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隙ある風景と山ぐるみ

本メルマガに登場してくれている作家たちの展覧会を、ふたつまとめて紹介させていただく。まずはもうおなじみ、『隙ある風景』のケイタタ写真展。こちらは大阪のビジュアルアーツギャラリーで、すでに始まっている(1月12日まで)。そしてもうひとつは2016年11月16日号「手芸のアナザーサイド」で紹介した、山さきあさ彦による「山ぐるみ」の東京展。

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BORO、世界をめぐる 4 中国深圳編(写真・文:辰巳清)

3月4日号のBORO中国北京展に続けて、中国深圳での展覧会をレポートさせていただく。12月3日、大好評のうちに国立北京服装学院民族服飾博物館での展覧会を終えたのち撤収、梱包作業を経て、BORO約100点を載せたトラックは北京から深圳画院美術館に向かった。5日後に深圳で開梱が始まるまで僕はオフになる。深圳は初めて行く都市なので、早めに深圳に向かった。北京からのフライト時間3時間半。深圳は人口1300万人、街全体で1000以上の高層ビルが建ち並ぶ。世界で最初に5Gを実用化した電脳イノベーション都市で、中国政府が金融、IT、デザイン産業の集積地として開発を進めてきた「アジアのシリコンバレー」である。

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私の特別な人を編んでください! ――編み物☆堀ノ内の「肖像編み物」 第12回 レイチェル(映画『ブレードランナー』より)/増子直純(怒髪天 Vo.) (撮影:久富健太郎/聞き書き:川上雅乃)

【編み物☆堀ノ内よりお客様のご紹介】 2019年に結成35周年を迎えたバンド「怒髪天」のヴォーカル。映画やゲーム、おもちゃにも造詣が深く、世界レベルのヘドラソフビ人形のコレクターでもあります。若き日の数々の武勇伝が有名ですが、じっさい会うと、とても紳士的なひと。とにかくお話がメチャクチャ面白く、それも相手に対する増子さん流のもてなしなんだろうなと思ってます。そんな増子さんいわく「中2病男子が好きな物全部盛り映画」、『ブレードランナー』(1982)の登場人物レイチェルを編みました。

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ラブソングみたいなデザイン ――真舘嘉浩レトロスペクティブ

ROADSIDERS' weeklyによるPDF電子書籍シリーズ第6弾『BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙』刊行を記念して、東京駅前新丸ビル9階・現バーで2019年11月にスタート……したものの2020年に入って新型コロナウィルスにより途中終了してしまった悲運のレコード・ジャケット展が「ノーチェ・デ・マルノウチ めくるめくお色気レコジャケ・コレクション」だった。 そのグラフィック・デザインを担当してくれたのが真舘嘉浩(まだち・よしひろ)さん。お色気レコジャケ・コレクションを提供してくれた山口'Gucci'佳宏さんの盟友でもある。

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街にチラシがあったころ ――1985~90年代の日本のインディーズ・チラシとアンダーグラウンド文化  05 ワルプルギスとミニコミ(前編) (文:浜里堅太郎)

「大塚ジェルス・ホール。舞台と客席は、例によって幕で仕切られている。薄いブルーの客電。ちょうど無菌室のような印象。…………………適当な音楽が流れている。」 1986年10月。大塚ジェルス・ホールで開催された東京グランギニョル第6回公演「ワルプルギス」の台本の冒頭。客入れ状態を記したト書である。 「適当な音楽が流れている。」実際に客入れでかかっていた音楽はその年の春に発売されたMINISTRYの2nd「TWITCH」だった。

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街にチラシがあったころ ――1985~90年代の日本のインディーズ・チラシとアンダーグラウンド文化  06 ワルプルギスとミニコミ(後編) (文:浜里堅太郎)

高校二年生の頃だった。 ブレザーの制服を着て、世田谷の都立高校にむかう通学電車。いつものように吊り革につかまっていると、隣町の制服を着た見知らぬ少女に背後から突然声をかけられた。 「あなた、東京グランギニョルの人でしょ? わたしも演劇をやっているの。」 振り返ると端正な顔立ちの少女がニコニコと立っていた。 「わたし、横町慶子ってゆうの。劇団健康って知ってる?」 たしか、こんな感じで話しかけられたと思う。

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街にチラシがあったころ ――1985~90年代の日本のインディーズ・チラシとアンダーグラウンド文化 08 80年代のYMOとその時代~高橋幸宏さんを偲んで(後編) (文:浜里堅太郎)

今週も先週に引き続き高橋幸宏さん追悼特集をお届けします。 本稿では80年代前半の高橋幸宏さんがデザインした衣装レプリカの一部や、YMOブームに拍車をかけたフジカセットキャンペーン関連アイテム、細野晴臣さんと高橋幸宏さんが発足したYENレーベル関連の印刷物などから当時を振り返ってみたいと思います。そして先週の原稿を入稿した直後に飛び込んできた悲しいニュース…高橋幸宏さんに深い関わりをもつ唯一無二のギタリスト鮎川誠さんがご逝去されました。YMOファンにとってもシーナ&ロケッツは切っても切り離せない大切なバンドのひとつでした。そこで今回は以前ご紹介したシナロケのチラシも再掲しつつ、偉大なミュージシャン高橋幸宏さんと鮎川誠さんを偲びたいと思います。

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編み物☆堀ノ内の「帰ってきた肖像編み物」 第2回 オトン  オーダーした人/マ.マカロン(刺繍家) (写真:久富健太郎 / 聞き書き:川上雅乃)

マ.マカロンさんのことを知ったのは2018年頃。福岡で美容院を経営していた上野広子さんが何かのときに、「ウチの近所にすっごく素敵な刺繍家さんがいるんですよ~」と教えてくれました。その後、広子さんが主催してくれた編み物の受注会で、初めてマ.マカロンさんにお会いしました。マ.マカロンさんの第一印象は、明るくおおらか、それから話が早いひと。ずっと仕事を頑張ってきた女の人がもっているさばけた感じと貫禄があり、マ.マカロンさんが刺す刺繍の繊細で陰影のある作風と人柄とのギャップが意外(とても良い意味で!)でした。2011年に44歳で亡くなったというだんなさんが20歳のときの肖像を編みました。

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)

ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。

本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。

旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。

特設販売サイトへ


ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)

稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。

1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!

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ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)

プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。

これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。

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ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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