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2018年05月23日 Vol.309
food & drink
Neverland Diner 二度と行けないあの店で 24『本当の洋菓子の話をしよう』石井僚一(歌人)
自分の話から始めるけれども、ちょうど一年くらい前に就職の関係で関東に越してきて、それまではずっと北海道の実家にいた(今は29歳)。バイトに精を出すタイプの学生ではなく、大学卒業後就職が決まらなかった時にはほとんど家に引きこもっていたから、実家暮らしと言えどもお金はそんなになくて、あったとしてもCDや本に費やすのが常だった。そもそも食べることにそんなに興味がないタイプの人間で(ついでに言うと僕が住んでいたのは北海道の江別というところ(いわゆる札幌市のベッドタウン)の住宅街で、関東みたいに昔からありそうなちょっと怪しげな個人経営の店のようなものはあまりなかった。周囲にあるのは飲食店というと基本的にはチェーン店だ。
photography
異界へお出でと笛を吹く――内藤正敏『異界出現』
いまから20年以上前、『珍日本紀行』という企画で地方の町や野山を走り回っていたころ。最初の2、3年はあちこちで出会う妙な風景や建造物を、とにかくなるべくきっちり写さないと、というだけで必死だったが、旅と撮影の生活に身体が少し慣れてくると、ときに白日夢のように眼前に広がる光景を、白日夢のように写せたらと思い始めて、行き着いたのが針穴写真(ピンホールカメラ)だった。だれもいない湖に浮かぶ白鳥型のボートとか、国道脇に立つ古タイヤを組み合わせた巨人とかの前に三脚を立てて、寒さに震えながらじりじり時計を見ているうちに、自分はいま写真を撮っているというよりも、この場所の空気と時間を木箱に封じ込めようとしているんじゃないかと思ったりもした。カメラというのは、単に目の前にあるものを視覚的に記録するための道具とは限らない、と気づいたのがその時だった――というような思い出が、東京都写真美術館で内藤正敏の『異界出現』を見ていて、ふいに甦ってきた。
photography
それからの北朝鮮
ドナルド・トランプと習近平と文在寅、金正恩をめぐる複雑怪奇な輪舞に、日本だけが入れてもらえないきょうこのごろ。北朝鮮をめぐる政治情勢が大きく動きつつあるタイミングで、初沢亜利の写真集『隣人、それから。 38度線の北』が発売された。2012年末にリリースされ、本メルマガでも2013年1月23日号で特集した『隣人。38度線の北』に続く、初沢さんの北朝鮮第2作品集だ。これまでイラク戦争、東日本大震災などの現場に飛び込んで長期間撮影を続けてきた初沢さんにとって、今回は『隣人。』以降、2013年から1年3ヶ月沖縄に移住して撮影した『沖縄のことを教えてください』(赤々舎刊)に続く写真集ということになる。『隣人、それから。』は2016年から18年にかけて3回の訪朝で撮影された写真で構成されている。前回の写真集のために4回、初沢さんはこれまで計7回にわたって北朝鮮を訪れているが、そこにはいつも「2500万人が暮らす隣の国の、普通の暮らしを隣人として知ることの大切さ」への思いがあった。
art
うろんな一族とお祭り人生
いつもたくさんのおもしろそうな展覧会のお知らせをいただいて、でも1週間とか10日間とかの会期で入れ替わってしまう展示を欠かさず見て回るのはすごく難しい。今週は急いで回った、小さな、でも見ないままスルーしてしまうにはもったいなさすぎる展覧会をふたつお知らせする。
travel
Back in the ROADSIDE USA 76 Outsider Art Town, Lucas, KS 2/2
カンザス州の小さな町、しかしアメリカが誇るアウトサイダー・アート・タウンであるルーカスを訪れたのは2006年のこと。充実したその取材の成果の、今週は後編をお送りする!
2018年05月16日 Vol.308
food & drink
Neverland Diner 二度と行けないあの店で 23『呪いの失恋牛すじカレー』谷口菜津子(イラストレーター・漫画家)
店に行けないのならば作ればいい! 長年、あの味を思い出しながら牛すじカレー作りに挑戦し続けていた。牛すじを何度か湯こぼしし、柔らかになるまで3、4時間煮込む。店の棚に並ぶ食材の景色、味の印象の記憶を頼りにスパイスを選ぶ。バターで玉ねぎを飴色に炒め、トマトも煮詰まるまでよく炒め、牛スジを加えとろとろになるまで煮込む。完成したカレーは手間暇かけただけあってとっても美味しい。でもあの味ではない…。
photography
スラム街の記録者――佐々木さんのプノンペン・ライフ
4月の暖かい午後、待ち合わせの時間の少し前に郊外駅の改札を出ると、もう佐々木さんが待っていてくれた。会ってほしいとお願いしたのはこちらなのに、ちょっと申し訳ないというようなはにかんだ表情をして。正月にプノンペンで初めて会ったときのように。毎年プノンペンに通って、スラムで暮らす人々を撮影している日本人写真家がいる、と教えてくれたのは『シックスサマナ』の編集長・クーロン黒沢さんだった。スラムのすぐそば、それも小学校の建物のひと部屋に住みついて、毎日スラム街を歩きまわってるらしいと聞いて、その小学校を訪ねてみたのだった。佐々木健二さんは1966年八王子生まれ。いまも八王子の実家に住んでいる。ふだんは学校の行事や卒業アルバムの写真を撮るのが仕事。1年のうち10ヶ月はそうして働いて、2ヶ月間をプノンペンで暮らす生活を、2004年からずっと続けている。
art
江上茂雄の見た風景
2013年10月2日号で、熊本県荒尾市に住む101歳のアマチュア画家・江上茂雄の活動を紹介した。100歳を越えて初めて公立美術館で大きな展覧会が開かれるという画歴は劇的というほかなく、荒尾のご自宅でご本人にお話を聞けたのも幸運だったが、翌2014年2月、自宅に2万点以上の作品を残して江上さんは101歳の生涯を閉じている。その希有なアマチュア画家の、東京で初めての展覧会が5月26日から武蔵野市立吉祥寺美術館で開かれる。吉祥寺美術館といえば先月、展覧会カタログとして発表された『はな子のいる風景』を紹介したばかりだが、今回の江上展も「はな子」に続く連続展『カンバセーション_ピース』の第3弾として企画された。
art
Freestyle China 即興中華 庶民のチカラ:“不正経研究所”所長・徐騰(文/吉井忍 写真提供/徐騰、吉井忍)
中国で「面白いもの」を探してくるのは、今までは外国人が多かったが、最近は中国の人が自分で見つけてくることが増えた気がする。徐騰(シュー・タン)さんもその一人。清華大学建築科の博士課程に在籍する傍ら、中国各地の変わった建築物を観察し、その謎に迫る「不正経(=非正統派、まともでない)歴史研究所」なるものを立ち上げ、自ら所長を名乗っているという。早速、ぜひお目にかかりたい!と唐突な熱愛コールを徐さんに送ったところ、博士論文のご執筆でお忙しい中にもかかわらず取材を快諾してくださった。
travel
Back in the ROADSIDE USA 75 Outsider Art Town, Lucas, KS 1/2
カンザス州の小さな町、しかしアメリカが誇るアウトサイダー・アート・タウンであるルーカスを訪れたのは2006年のこと。充実したその取材の成果を、今回は前半後半の2週に分けて振り返る。――人口わずか436人、カンザス州北西部にあるルーカスは、車なら数分で走りすぎてしまう小さな町だ。“アメリカ的”なる壺中天のごときスモール・タウンが実は全米、というか世界有数のアウトサイダー・アートの震源地であることを、僕はうかつにも最近まで知らなかった。世にもまれなアート・タウンとしてのルーカスの歴史は、サミュエル・ペリー・ディンズムアというひとりの男とともに始まる。1843年オハイオ州に生まれたディンズムアは、教師、農夫などの職業を経て1907年、農地を売った金でルーカスの町の四つ角に面した土地を買い、風変わりな家と庭園を造りはじめた。
2018年05月09日 Vol.307
food & drink
Neverland Diner 二度と行けないあの店で 22『土曜夜 新宿 コマ劇近くで』永島農(2017年より荒木町にて紹介制ワインバー HIBANA開業)
その時は都心の高級老舗イタリア料理店で下働きをしていた。上司や先輩にタメ口で喋る一番年上の「M」さんと、僕も顔が濃いのだが、さらに顔が濃すぎて日本人に見えない「S」さんの下で働いていた。その日は土曜日で営業はあまり忙しくなく、Mさんが焼肉に行こうと言い出した。僕は都下の実家にいた為に先輩の誘いがあると必然的に始発まで時間を過ごさねばならない。レストランの営業後なので飲み始めは24時頃になるから。翌日の定休日の日曜は地元の先輩の結婚パーティーが六本木で昼頃からあるので断りたかったが、昔は先輩の誘いはそういうわけにもいかなかった。ま、多分奢ってもらえるし頑張って起きればよいかと思い3人で焼肉に出かけた。
lifestyle
ウグイス谷のラバーソウル 2018
「恋」と「変」の字ははよく似ている。「変態」を読み間違えたら「恋態」。変態とはもしかしたら、このどうしようもない日常に恋していられるための、きわめて有効なサバイバル・ツールなのかもしれない――長いこと世の変態さんたちを取材してきて、そんな思いが強くなっている。先週土曜日、5月5日の「こどもの日」から日付が変わった6日の深夜1時、とってもオトナのイベント「デパートメントH」が幕を開けた。場所は鶯谷の東京キネマ倶楽部。先週はグランドキャバレーのお話をしたが、ここはもともとワールドという名の大箱キャバレーだった場所。通算回数2百数十回となるデパHは、もう10年以上前からキネマ倶楽部で毎月第1土曜に開催されていて、5月6日は「ゴムの日」というわけで、今夜は毎年恒例の『大ゴム祭』なのだ。
travel
Back in the ROADSIDE USA 74 Mummers Museum, Philadelphia, PA
フィラデルフィアの正月を彩る『ママー』。へんな名前だが、ニューオリンズのマルディグラのように、あるいはリオのカーニバルのように、絢爛豪華な衣裳で着飾った人々がフィラデルフィアの中心街を元日に練り歩く、アメリカでもっとも古い歴史を誇るお祭りだ。ニューオリンズのように気候はよくないというか、フィラデルフィアの冬はものすごく寒いのだが、雪にも雨にもめげることなく、毎年1万5000人にものぼる参加者たちが参加するというのだから、なかなかシリアスなお祭りである。
travel
案山子X 46:横山地区のかかし(石川)(写真・文 上迫愛)
こんにちは。上迫愛(うえさこあい)です。今までペンネームのai7n名義を使っていましたが、かかしに関する事は本名でやっていく事にしたので、今回から名前を変えます。今回は石川県珠洲市狼煙町横山地区のかかしを紹介します。狼煙町は石川県の能登半島最北端にあり、明治時代に作られ「日本の灯台50選」に選ばれた禄剛埼(ろっこうざき)灯台が有名な町です。毎年夏になると、禄剛埼灯台に向かう県道28号線沿いに沢山のかかしが立ち並びます。かかしを作っているのは、横山地区の住民で結成された「横山振興会」の皆さんと、金沢星稜大学の学生達。
lifestyle
かなりピンボケ 11(番外篇)ピンパブ専門の呼び込み――亀戸の夜に20年以上立ち続ける“小さいおじさん”こと田中さんの自堕落半世記(文:比嘉健二 写真:福田光睦)
すっかりご無沙汰。あれだけ好きだったフィリピンパブの話もすっかり書く気力さえなくなり、そのグータラなところは、仕事嫌いで遊ぶ事が何より大好きな、フィリピン人男性化しつつあると、やや不安を覚えてる今日この頃なのだ。もっとも、書くという作業は放棄しているけど、相変わらず週に2、3回はピンパブで遊んでいるのだから、不安は見事に的中している。おそらくDNA鑑定したら、俺の血液は半分フィリピン人になっているはずだ。ところが今回、これは書かずにおけないというテーマに遭遇した。それはピンパブ専門の呼び込みを生業として、30年以上の人生をだいなしにした田中さん(たぶん仮名)。通称“小さいおじさん”という、こっちの世界ではそれなりに有名な人物の話を聞き出す事に成功したからだ。といっても他のメディアはどこも注目してないから、実際インタビューのオファーを出したら、意外にも即OKの返事が来た。もちろん舞い上がったのは俺ぐらいなものだろうけど。
2018年05月02日 Vol.306
food & drink
Neverland Diner 二度と行けないあの店で 21「どん感がすごい」コナリミサト(マンガ家)
「Neverland Diner 二度と行けないあの店で」というこちらのコラムのタイトルを聞いたときぽんと思いついたお店がある。実家から車をぴゅんと走らせたところにある「ステーキのどん」だ。「ステーキのどん」は関東を中心に幅をきかせているステーキチェーン店で看板の「どん」の表記のとこがほんとに勇ましく「どん」としているので看板をみるたび「どん感がすごい」と感服していた。小学校の頃の家族4人揃っての外食はもっぱらここの店で、父が仕事を納めたのであろう日は小祝いを兼ねてなのかぴゅんとこの店に行くといった流れだった。
book
人生はキャバレーだった――『キャバレー、ダンスホール 20世紀の夜』刊行に寄せて
今年1月に銀座の『白いばら』が閉店してからというもの、ちょっとしたキャバレー再評価ブームが起きているようで、ロードサイダーズにもPDF版電子書籍『キャバレー・ベラミの踊り子たち』の写真貸出依頼がけっこう来たりする。書店に行けば往年の有名キャバレーのオーナーや支配人、名物ホステスさんの回想録などが数冊見つかるが、それではキャバレーという空間そのものを記録した書籍がどれくらいあるかというと、ほとんどない。だって、キャバレーそのものがもう、ほとんどないから。なくなってから惜しまれる秘宝館や見世物小屋やオールド・スタイルのラブホテルと同じように、キャバレーもなくなってから惜しまれつつある昭和のポピュラー・カルチャーの仲間入りを果たしたのだろう。「ライフ・イズ・ア・キャバレー」と歌ったのはライザ・ミネリだったが、キャバレーのことも過去形で語らなくてはならない時代がもうそこまで来ている、そういうタイミングでこの3月に『キャバレー、ダンスホール 20世紀の夜』という写真集が出版されたのには驚いた。
music
DOMMUNE スナック芸術丸・第四十七夜、購読者限定公開!
去る4月3日にDOMMUNEスタジオから生配信したばかりの『スナック芸術丸・第四十七夜』が、さっそく購読者限定視聴リンクからご覧いただけるようになりました。宇川直宏くん、どうもありがとう! 当夜のDOMMUNEは「赤ちゃんとオトナとカンボジアの夜」と名づけましたが、配信直前に『独居老人スタイル』でもフィーチャーした孤高のパフォーマー、首くくり栲象さんの訃報が飛び込んできたので、生前に記録させていただいた「庭劇場」でのパフォーマンス動画を交えたトリビュート・コーナーを設け、あわただしく4部構成でお届けしました。「1 首くくり栲象追悼特集」「2 カンボジアン・スペース・プロジェクト、リードシンガー交通事故死追悼特集」「3 『キャバレー、ダンスホール 20世紀の夜』発売記念トーク」「4 おきあがり赤ちゃん トーク&ライブ」そう、今週号で掲載した『キャバレー、ダンスホール 20世紀の夜』も、編集の西村依莉さんを招いてお話してもらったので、今週は文章と映像で「キャバレーこぼれ話」を満喫していただけます!
music
78回転でミャンマーは廻る――忘れ去られたレコードを探して(写真・文:村上巨樹)
小学生の頃には既にCDの世の中に変わっていた世代の僕だけど、レコードの面白さや味わい深さは知っている。盛岡でのレコードフェアに足を運んだり、国道沿いでリサイクルショップを見つけた時は積極的に寄り道をする。どんなレコードを買い集めているかと言うと、まずは資料性の高い盤、次に好きな歌手の盤、と言う順だ。僕はギターの演奏と作曲をやっているので、より参照元になりえる盤を集めている。ミャンマーのレコードも例外ではない。むしろ僕のレコード棚の中でも飛び抜けて資料性/希少性が高いジャンルだ。と言うのも、ミャンマーでレコードを探すのは至難の技だから。LPやEPの生産は無くSP盤のみ作られたそう。それらは50~70年ほど前に作られており、そのほとんどはカセット文化への移行時に捨てられてしまったと聞く。それでも少しは現地に残っているが、現存するSP盤はとにかく傷がひどい。それでも当時の音を真空パックした貴重なものなので、毎年ミャンマーに行ってはレコード探しを行っている。
lifestyle
肉筆――ゆきこの日々これ風俗 05 韓国美容整形旅行(文:ウズメゆきこ)
包帯グルグル巻きでうまく呼吸ができず息苦しい。少しでも動くと、顎に激痛が走る。看護師さんが2時間おきに様子を見に来るのだが、ここは韓国。言葉が通じないから、のどが痛くて水を飲ませてくれとせがむこともできない。私は江南の夜中の道路からひっきりなしに聞こえる救急車だか消防車だかの音を、ベッドの上で呆然と聞いているしかなかった。包帯グルグル巻きの私がなにをされたかって? 暴行? いやいや(笑)、整形の中でもっとも大掛かりと言われる輪郭手術の美容整形である。グロテスクな画像が苦手な方はここで回れ右、これは私が自分に好かれるための、自意識との格闘の記録なのだ。
movie
桃色の罠――日本成人映画再考 03 半世紀を経て発見された『幻日』と「ピンクの巨匠」武智鉄二(文:鈴木義昭)
神戸映画資料館館長の安井館長から、下記のような内容のメールが突然あって、驚いた。一昨年の初夏のことだった。「売りに出ていたので買ったのだが、大変なシロモノものでした。武智鉄二については詳しいと思うので映像を見て欲しい。近々、特別に簡易のテレシネを作って送るから確認してくれないか」そんな簡単なメールだった。だいたい、安井館長は、何か人に言えないようなトンデモない物を買うと僕に連絡をくださる傾向がある。近年、海外からの研究者やジャーナリストらの訪問があるほど世界的にも知られている神戸映画資料館。安井館長も、自他ともに認める日本有数のフィルムコレクターである。
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BOOKS
ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)
ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。
本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。
旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。
ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)
稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。
1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!
ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)
プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。
これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。
ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)
書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい
電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。
ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)
伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!
かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。
ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)
――ラブホの夢は夜ひらく
新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!
ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)
――秘宝よ永遠に
1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!
捨てられないTシャツ
70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。
圏外編集者
編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。
ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014
こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。
独居老人スタイル
あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。
ヒップホップの詩人たち
いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。
東京右半分
2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!