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2017年03月22日 Vol.253
art
小松家の大移動展
2014年12月17日号で、小松葉月という風変わりなアーティストを紹介した(『生きて痛んで微笑みがえし――小松葉月のパーソナル・アート・ワールド』)。1991年生まれの小松さんは当時、多摩美術大学の学生だったが、あれから大学院に進み、ちょうど院を卒業する時期を迎えている。そんなタイミングで「展覧会を開くので、見に来てください」とお誘いを受けた。どこの画廊か美術館かと思ったら、場所は「自宅」。3月12日から16日までの5日間だけ。それも招待客のみで、何人招いたのか聞いてみたら、「ぜんぶで4人」! 『小松家 大移動展』と題された、その風変わりな展覧会を拝見に、実家でもある湘南の瀟洒なお宅を再訪した。
travel
Back in the ROADSIDE USA 27 Laclede's Landing Wax Museum, St. Louis, MO
「セントルイスロウ人形館」とも呼ばれるラクリーズ・ランディングのロウ人形館、建物自体は1885年の歴史的建造物と由緒正しいが、内部はかなりなB級感覚満載。人形はロンドンで作られ、髪の毛はイタリア、ガラスの義眼はドイツからとうたっているが、とにかくあまりにもチープな出来で、かえって懐かしい場末感を醸し出している。ひとりひとりが似てないのはもちろん、たとえばサルバドール・ダリとハワード・ヒューズとか、人形同士の組み合わせもすごい。キリストの最後の晩餐は、メキシコの風景だし、月に降り立ったアームストロング船長は、なんと宇宙服の頭部がなく、しかも靴はスキーブーツ、手袋もスキー用というファンキーなスタイリング。汚れたガラスと安っぽい壁紙で仕切られた部屋に立つ人形たちは、もの悲しさを通り越したシュールな表情が感じられる。
music
追悼、チャック・ベリー
3月18日午後1時26分、ミズーリ州セントルイスの郊外、セントチャールズでチャック・ベリーが亡くなった。享年90歳の大往生だった。 死去の知らせはすでにニュースでご存じだろうが、本メルマガでは2014年に「音楽に呼ばれて」という連載がスタートした。アメリカ各地のロックにまつわる場所を訪れて撮影した写真に、音楽評論家の湯浅学さんが文章を書いてくれるセットだったが、その連載の第1回目がチャック・ベリーの生家のあった通りを訪れた記事だった。連載のほうは残念ながら、なかなか2回目以降が掲載できずにいるのだが、チャック・ベリーの死去に際して、ここに記事を再掲載させていただく。ロックンロールの創始者に、謹んで哀悼を捧げつつ。
movie
はぐれAV劇場 17 石垣章監督『奇妙な果実』(文:大須蔵人)
去年、創立30周年を迎えたV&Rプランニングという老舗AVメーカーがある。「タブーから社会を見つめる」という強力なコンセプトのもと、社長である安達かおる監督を中心に過激なドキュメント作品を連発し、メジャーにありながら挑戦的な企画を仕掛けた、まさに正統派異端メーカーといえるだろう。カンパニー松尾、バクシーシ山下といった個性的な作家を輩出したことでも、サブカルチャーとしてのAVを語る上で欠かせない有名メーカーである。V&Rの作品の中には、総集編にも残らず、人々の記憶からも消えてしまっていると思われる作品が存在する。特に社内監督による作品ではなく外注監督の作品にその傾向が強いように思われる。つまり関係者も「忘れちゃった」可能性の高い作品ということだ。今回紹介するのはそんな幻の作品、石垣章監督『奇妙な果実』(1991年、V&R)だ。この作品には、やはりジャンク屋の棚で“たまたま”目に留まって出会った(280円也)のだが、調べてみるとこの作品や監督にについて語るべきことは多い。
art
アウトサイダー・キュレーター日記 27 中條狭槌(写真・文:櫛野展正)
群馬県西部にある甘楽郡。近くには工場見学などが楽しめる無料のテーマパーク「こんにゃくパーク」があり、少し足を伸ばせば世界文化遺産に登録された富岡製糸場にも近い。そんな小さな田舎町に、ひときわ異彩を放つ不思議な場所がある。「アートランド竹林の風」「ナニコレ珍庭園」「ふれあいセンター銘酒館」「名勝楽賛園」などいくつものサイケデリックな手書き看板が掲げられ、周囲にはたくさんの廃品が並べられたその場所は、見所満載で眺めているだけでも時間を忘れてしまうほどだ。道路を挟んだ向かいの家には、「中條家」と大きな文字で書かれた同様の装飾が施されており、ここが作者の家であることは明らかだ。
photography
サンフランシスコの裏側で
2015年4月8日号で弓場井宜嗣(ゆばい・よしつぐ)という写真家を紹介した(『テンダーロインをレアで』)。サンフランシスコのアンダーグラウンドの最底辺まで、広島県福山市出身の若者が降りていったことがまず驚きだったし、そのハードエッジな画面にみなぎる「ITバブル」以前のサンフランシスコの空気感が、懐かしくもうれしくもあった。その弓場井宜嗣が2年ぶりに新宿の写真ギャラリー「PLACE M」で、『SAN FRANCISCO #2』と題した個展を開催、同時に写真集もリリースする。
2017年03月15日 Vol.252
lifestyle
古くて新しい古い家
今年2月8日号で紹介した、北九州市若松のグランドキャバレー・ベラミの物語には、予想以上の反響をいただいた。記事中ではベラミのステージを飾ったダンサーや芸人たちの写真と共に、もともとキャバレーの従業員寮だった「ベラミ山荘」を紹介したが、そのオーナーが文中で「Fさん」と書かせてもらった古家さんだ。と子供3人の家族を支える主婦であり、パートでも働きつつ、古い家を買っては貸している「古家商」を名乗るその活動は(なので「古家」は仮名です)、僕らが抱く「大家さん」の先入観からかけ離れたユニークなスタイルだし、これからの都市型生活への重要な啓示でもある。今週は「古家業」という、文字どおり古くて新しい生活のプラットフォームづくりを紹介させていただく。
travel
Back in the ROADSIDE USA 27 Elvis Is Alive Museum, Wright City, MO
地図を見ると、アメリカ合衆国の真ん中近くに位置しているミズーリ州。別名「ハートランド」と呼ばれる所以だ。ちなみにアメリカの人口の約半分が、ミズーリ州を中心とした半径800km内に住んでいるという。ミズーリ州は東と西の端に、セントルイスとカンザスシティという2大都市を擁し、そのあいだは広大な自然というか、非常にスカスカな大空間が横たわっている。つまりミズーリを旅しようというものはたいがい、セントルイスとカンザスシティを真横に結ぶインターステート70号線を軸に、ときたま脇にそれたりしながらドライブするということになる。スカスカなようでいて、しかしあふれんばかりのロードサイド・アトラクションが隠れるミズーリは、珍スポット・ハンターにとっては外せない重要ステートでもある。
art
監禁されたラブドール
去年の夏、渋谷アツコバルーで開いた展覧会『神は局部に宿る』。関連企画として同じビルの地下にあるサラヴァ東京で開催したイベントで、可愛らしいラブドールと一緒に登場した女の子を覚えているひともいるだろう。その展覧会の最終日近く、車椅子にラブドールを乗せて、自分もウェディングドレスに身を包んで展覧会場に突然乱入、「響一さんの子供よ!」と叫んで暴れた寸劇?を目撃してしまったひともいるだろう。あのときの女の子が「ひつじちゃん」だ。ちなみにラブドールのほうは「ましろ(魔白)ちゃん」。製造元のオリエント工業も、「おそらく唯一の女性ドール・オーナーでしょう」と太鼓判(?)の、エキセントリックな「自称・永遠の13歳」である。
2017年03月08日 Vol.251
art
ここにも板極道あり――藤宮史の木版漫画
いま、漫画家のデジタル化はどれくらい進んでいるのだろう。紙にペンで描くひとと、タブレットを使うひとはどれくらいの割合なのだろうか。激変する漫画の作画環境のなかで、というか外側で、なんと木版画で漫画を描き続ける作家がいる。藤宮史(ふじみや・ふひと)、52歳。昨年秋に2冊目の商業出版による作品集『木版漫画集 或る押入れ頭男の話』を発表。その原画(つまり版画)を抜粋して展示する展覧会が、いま中野区新井薬師前のギャラリー「35分」で開催中だ。まずコンテを描き、それをトレーシングペーパーに写し、それを版木に写して彫り、摺り、できあがった版画にテキストを貼り込んでようやく版下が完成、印刷に入るという、まるで時代に逆行する「コストパフォーマンスの悪い」(本人談)やりかたで、もう10年間も漫画をつくってきた藤宮さんとは、いったいどんなひとなのだろう。今年で22年目という阿佐ヶ谷のはずれのアパート(六畳と台所、風呂無し)に訪ね、お話をうかがうことができた。
music
IDOL DOMMUNE ―― 地下アイドルとヲタのプラトニック恋愛譚
2月9日に配信されたDOMMUNEスナック芸術丸「IDOL STYLE連載30回突破記念/ヲタの細道」、楽しんでいただけたろうか。アイドル雑誌「EX大衆」での連載が30回を超えた記念番組だったが、その前回のユーロビートほどではないにしろ、地下アイドル、それもアイドルよりもヲタに焦点を当てた2時間。音楽にシビアなDOMMUNEの視聴者がどれだけついてきてくれるのか不安だったが、結果としてはかなり盛り上がってもらえたようで、ひと安心。今週は例によってDOMMUNEのご厚意により、再視聴リンクをプレゼントする。後半のベルリンからのDJタイムを含め5時間強。メルマガ読者限定なので、ひそやかに、たっぷりお楽しみいただきたい。
travel
Back in the ROADSIDE USA 26 Weeki Wachee City of Mermaids, Weeki Wachee, FL
タンパから2時間ほどのウィキーワチーには、『シティ・オブ・マーメイド』なる、一種のプール遊園地がある。ま、大きなプールのまわりにちょとした遊戯施設やピクニック・エリアがあるだけの田舎遊園地だが、ここでは全米唯一となった「人魚の水中バレー」が見られるのだ。かつては日本でも南紀白浜や、東京の読売ランドでもやっていた水中バレーだが、いまではたぶん、世界でここシティ・オブ・マーメイドだけだろう。『シティ・オブ・マーメイド』の生みの親はニュートン・ペリー。第二次大戦中は海軍であのネイビー・シールズの潜水教官を務めたあと、当時は「人間よりワニのほうが多かった」ウィキーワチーにやってきた。ゴミだらけの水中をきれいにして、圧縮空気をホースで送って水中で呼吸しながらパフォーマンスするテクニックを磨き、美少女たちを集めて特訓。1947年10月13日に『シティ・オブ・マーメイド』を開園したのだった。
design
絶滅サイト 14「面白い日本」~「稜堡式城郭」(文:ハマザキカク)
スチュワーデスの服装の変遷とそれを着ていたOBが登場『CA制服ギャラリー』/2000年~2001年 運営期間1年 絶滅期間16年/スチュワーデスの制服の時代ごとの写真と、当時その制服を着ていたスチュワーデスのOBが「制服の思い出」としてショートインタビューで登場している。なぜ閉鎖してしまったのかよく分からないほど魅力的なコンテンツ。個人によるサイトではなく、ANAの公式サイトの一部だったので組織編成などで消滅してしまったのだろうか。もしかしたらANAのサイトのどこか別のURLに同じコンテンツがあるのかもしれないが。時代は等間隔ではなく1955、1958、1966、1970、1974、1979、1982、1990に別けられているがこれはデザインが変わった年。1990年のものは肩幅が広がっておりバブリーなイメージ。1974年のものはオレンジ一色でパンタロンを履いており、可愛らしく見える。1966年のものはとてもシンプルで清楚で個人的には一番好みだ。1979年のものがバブル期でもなく、レトロっぽさもなく一番ダサく感じる。
2017年03月01日 Vol.250
photography
食に淫する女と男
先日、早稻田大学に呼ばれて、トークのあと学食の一角に机を並べて、居残ってくれた学生たちと話していたとき、「こんなの作ってるんです」とZINEを渡してくれた子がいた。イチゴをくわえた唇が大写しになった表紙には『食に淫する』というタイトルがついていて、ページをめくるとケーキや果物を頬張って、ぐちゃぐちゃになった口中がアップになっていたりして、非常に汚く、どぎつく、美しくもある。ウェット&メッシーと言ってしまえばそれまでだけど、それだけでは片付けられない、視覚と触覚と味覚を混ぜ合わせた複雑な快楽のような、甘みと深みがとろとろと画面から流れ落ちている。
photography
追悼 レン・ハン
すでにSNSなどでニュースを知ったかたもいらっしゃるだろうが、2月24日、中国の写真家・任航 (Ren Hang=レン・ハン)が亡くなった。レン・ハンは本メルマガの2014年12月10日配信号で特集した、中国写真界の若きスターだった。記事中で書いたが、その秋の東京アートブックフェアで、台湾から参加したブースでレン・ハンの写真集『SON AND BITCH』を見つけ、衝撃的な内容に驚愕。さっそく北京在住のジャーナリスト、吉井忍さんにお願いしてインタビューしてもらったのだった。それから2年と少し、レン・ハンはヨーロッパ各地で大きな展覧会を続けざまに開催。タッシェンから分厚い作品集が発売され、いまこの時もストックホルムの写真美術館フォトグラーフィカで個展が始まったばかりである。それなのに自殺してしまった彼は、まだ30歳の若さだった。
photography
「ハナヤ勘兵衛の時代デェ!!」追補
先週お伝えした、兵庫県立美術館でのアドルフ・ヴェルフリ展と同時に開催されている『小企画 ハナヤ勘兵衛の時代デェ!!』展。「収蔵品によるテーマ展示」室のひとつで開催されている写真展だ。ヴェルフリ展は先週末で終了してしまったが(3月7日より名古屋市美術館に巡回)、ハナヤ勘兵衛ののほうは3月19日まで開催中。ここに掲載した以外にも、特に戦後期のスナップがたくさん見られるので、この機会にぜひご覧いただきたい。
travel
『中国遊園地大図鑑・中部編』、早くもリリース!
今年1月11日配信号で紹介したばかりの、珍スポ・ハンター関上武司さんによる中国遊園地大図鑑 北部編』。それから2ヶ月弱でもう、新刊『中部編』が発売されてしまった。前回書いたように、ふだんは「中小企業のサラリーマン」として働きながら、休みだけを使って取材に駆け巡る日々。この正月も「香港、マカオ、広東省、貴州省、湖南省、湖北省、江西省、浙江省、江蘇省、上海市を9日間で巡るという、かつてない超ハードな日程」をこなしたそうだが、さっそくその成果がまとまったということでもある。
travel
Back in the ROADSIDE USA 25 Myrtle Beach National Wax Museum, Myrtle Beach, SC
先週のKKKミュージアムに続いて、サウスカロライナ州きってのビザール観光スポットをもうひとつご紹介。マートルビーチの『ナショナル・ワックス・ミュージアム』であります。サウスカロライナ最大、というより北部の大都市からフロリダにかけての東海岸で最大のビーチリゾートであるマートルビーチは、フロリダ州デイトナビーチと並んで、アメリカの大学生のスプリングブレイク(春休み)でも有名。スプリングブレイクはただの春休みではなくて、とにかく酒とナンパに明け暮れるクレイジー・バケーションとして映画などでもおなじみ。数十キロに及ぶ砂浜の海岸線に面して、ずらりとホテルやコンドミニアムが並ぶさまは、イーストコーストの熱海というか。ワイキキを10倍大きくして、100倍下品にした感じといえば、雰囲気がわかってもらえるだろうか。
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カテゴリ別バックナンバー
BOOKS
ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)
ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。
本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。
旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。
ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)
稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。
1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!
ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)
プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。
これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。
ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)
書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい
電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。
ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)
伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!
かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。
ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)
――ラブホの夢は夜ひらく
新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!
ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)
――秘宝よ永遠に
1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!
捨てられないTシャツ
70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。
圏外編集者
編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。
ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014
こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。
独居老人スタイル
あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。
ヒップホップの詩人たち
いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。
東京右半分
2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!