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吉井 忍
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「野生設計」と中国描き文字コレクション(文・写真:吉井忍 写真提供:黄河山)
先月のロードサイダーズ・ウィークリーで上海のダンスホール・シーンを紹介してくれた吉井忍さん。今度は北京で「手描き文字」の話題を採集してきてくれた。ここ数年、日本では描き文字がちょっとしたブームだけど、漢字の本家、そして書の本家である中国では、いったいどんな描き文字がストリートを彩っているのだろう!
food & drink
Neverland Diner 二度と行けないあの店で 20「失恋レストラン」吉井忍 (フリーライター)
中国人と結婚し、日中間を行き来する生活を続けていた。数年前の冬、東京から北京に戻ると、夫の様子がおかしい。トイレが長い、目を見て話さない、年末に予約していた熱海旅行をキャンセルしたいと言い出す。日本文化センターの図書館から日本語の雑誌をわざわざ借りてきて、テーブルの上に目立つように置いている。その特集記事が「離婚」。「なんで?」と聞くと、「君、興味あるかと思って」。いや、ないです。1週間ほどしたある日曜日、夜9時ごろ。大気汚染物質PM2.5の濃度が高く、こういう日は早めに寝るに限るので、私はベッドに寝転がりながらノートパソコンで天気予報を見ていた。
book
Freestyle China 即興中華 膝の隙間から見えた“人間性” 『最後の猿まわし』著者、馬宏傑さんインタビュー (写真:馬宏傑 文:吉井忍)
街中に突然、銅鑼(どら)が鳴り響いて、次第に人垣ができる。その中心には数匹のサルと猿回し師の男性がおり、たまに犬を交えて芸を披露する。人々は笑ったり驚いたり、母親は子どもに「言うことを聞かないと、人さらいに連れていかれて皮を剥がれて、あのサルになる」と諭している。中国河南省出身の写真記者・馬宏傑(マー・ホンジエ)さんによると、こんな風景は1980年代ごろまでは中国のあちこちで見られたという。 馬さんの著書『最後の猿まわし』(みすず書房、2023年)は、猿回しで生きる最後の世代を20年にわたって追ったノンフィクションだ。中国での初版は2015年(原題:『最后的耍猴人』)、世代を超えて大きな反響を呼び、年間ベストセラーの上位にランクインした。このほど出版された日本語版は原著の翻訳に加え、コロナ後に至る最新の動向も記されており、非常に読み応えのある内容だ。
photography
Freestyle China 即興中華 山に向かって話すなよ:台湾写真家・黄煌智 (写真:黄煌智 / 文:吉井忍)
台湾の嘉義県にある阿里山。雲海と御来光、樹齢二千年を超える神木などで知られる自然豊かな国家風景区だ。台湾で原住民族に関する政策を専門に扱う行政院原住民族委員会によると、この一帯は古来から少数民族・ツォウ族の領地であり、彼らは今なお狩猟をしながら暮らしている。 写真家の黄煌智(ホワン・ホワンツー)さんは2022年から阿里山に幾度も赴き、そこで生きるツォウ族の若者たちの生活を撮り続けている。今回それを作品集『別向山説話:少年阿彬』にまとめた。タイトルにある“別向山説話(山に向かって話すなよ)”は、現地の若者たちが黄さんを戒めて口にした言葉による。
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Freestyle China 即興中華 曖昧さに浮かぶ、架空の島 (対談、写真:茅野裕城子、吉井忍)
金門島に行ってきました。小説家の茅野裕城子さん、そしてライターの吉井忍による二人旅です。台湾と中国大陸の間にあるこの場所は、最近の国際ニュースで何かと話題になっているので、耳にしたことがある方も多いと思います。予定を立てないまま金門島に着いてしまいました。茅野さんは台北から、わたし(吉井)は高雄から、それぞれ飛行機で。現地で決まっているのは、宿泊する民宿のみ。観光地図は、金門島の空港にある案内所でもらえました。残りは金門島に着いてから宿の女将さんを交え(というか無理やりお引き留めし)て、プランを組みました。結果、とても楽しい旅になったので、茅野さんとの対談形式でご紹介していきたいと思います。
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Freestyle China 即興中華 台湾「新伝統」タトゥーの彫り師たち (写真・文:吉井忍)
先日立ち寄った高雄市で「台湾タトゥーコンベンション(台湾国際紋身芸術展)」を見てきた。設置されたブース数は全部で500ほど、アジア最大級を謳うだけあり熱気に満ちていた。台湾ならではのタトゥー事情もうかがい知ることができたので、その一端をお伝えしたい。 高雄は台湾南部に位置する港町。コロナ禍前にも一度訪れたことがあり、タトゥー展『TATTOO刺青―身之印』を取材した。(2020年1月22日号『仏タトゥーの巡回展、台湾・高雄へ』)。その際に台湾ではタトゥー関連のイベントが盛んであること、高雄でも大規模な展示が毎年開催されていると聞いていた。 今回の会期は3月1日から3日間。2009年に始まり、今年で12回目を迎える。
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Freestyle China 即興中華 「僕が最後の砦なんだ」――中国唯一のセックス・ミュージアム「武漢達臨性学博物館」(文:吉井忍)
先週号の編集後記に書いたように、6月の終わりに中国湖北省・武漢でのトークに招かれて、中国内陸部屈指のメガシティを堪能してきた。すでに全日空が成田直行便を就航させているほど、日本企業にとっても重要な都市である武漢は、赤壁など三国志ゆかりの名所旧跡を擁する観光地でもあり、また北京、上海に次いで大学の数が多いというカレッジタウンの面もあって、トークにも学生たちがたくさん来てくれた。しかしまあ・・・三国志の話をロードサイダーズでしても場違いだし・・・と思っていたら、なんと「中国唯一のセックスミュージアム」があるという重要情報を入手! 本メルマガで「Freestyle China 即興中国」を連載中で、トークのお手伝いもしていただいた吉井忍さんに館長インタビューをお願いした。おそらく日本のメディアでは初紹介になるはず。いかにも中国らしい陶磁器から最新のチャイニーズ・ラブドールまで、幅広いコレクションを誌上でお楽しみいただきたい!
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Freestyle China 即興中華 くだらなさというたからもの――「中国抗日ドラマ」の魔界を訪ねて(文:吉井忍)
数ヶ月前、中国から訪れた出版関係の方を東京の書店にご案内した。教養がありお金持ち、ワインをこよなく愛し、有名ブランドの服をさりげなく着こなすこの紳士が「これはいい!」と喜んで数冊買い込んだのが『中国抗日ドラマ読本』(以下、『読本』)だった。その場でページをめくりながら「中国では、こういう視点が欠けているんだよねぇ」と感心しきり。税関で没収されるのではとこちらは気をもんだが、何事もなく帰国され、友人たちに手土産として配られたそうだ。同書の副題は『意図せざる反日・愛国コメディ』。抗日ドラマとは、「日本に抗う」という名前の通り日中戦争(中国語では「抗日戦争」)時代に中国を侵略した旧日本軍(つまり敵役)と、それに対する中国の庶民や共産党側を描くドラマを指す。とは言っても、史実を無視し、現実離れしたトンデモストーリーに当局も怒り心頭。「英雄烈士保護法」(2018年5月施行)などで歯止めをかけようとしているほどだ。
photography
Freestyle China 即興中華 見てはいけない箱だった――写真家・劉錚に聞く中国(文:吉井忍 作品提供:Liu Zheng)
6月末に中国武漢を訪れたときのこと。アート系のお洒落な書店に立ち寄り、現代中国の写真家コレクションみたいな本を見つけてページをめくっているうちに、一群のモノクロ写真を載せたページから目が離せなくなった。アーティスティックな現代美術写真ではないし、ゴリゴリの社会派ドキュメンタリーでもない。被写体は普通の中国を生きるひとびとなのだろうけれど、どこか違和感が漂っていて、アウグスト・ザンダーやダイアン・アーバスや、ヴィヴィアン・マイヤーのポートレートを見せられているような気持ちになってくる。その写真家・劉錚(リュウ・ジェン)は調べてみると北京在住。さっそく、本メルマガで「Freestyle China 即興中国」を連載中の吉井忍さんにお願いして、インタビューが実現した。写真家であり、写真集出版者であり、写真キュレーターでもあるリュウ・ジェン。2010年代の中国写真はこんなにもエネルギッシュなのだった。
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Freestyle China 即興中華 ラブドールと作る世界観・中国の愛好家たち(写真:コンテスト参加者のみなさま 文:吉井忍)
少し前に武漢でセックスミュージアムを取材させていただいた際、様々な展示物の中で特に印象的だったのが入り口近くに置かれていたラブドールだった。確かに、これも「文化」であり後世への遺産となるものだなと気づいた次第。この時に都築編集長より中国ラブドール業界のオモシロ事例をご教示いただき、いつか書いてみたいとぼんやり思っていた折、今度は中国で初のラブドール写真コンテストがあると聞いて興味炸裂! さっそく主催側に連絡してみたところ、とても好意的に対応していただいた。今回はこの写真コンテスト「娃娃撮影大賽」を中心に、中国のラブドール愛好家たちが繰り広げるストーリーの数々をご紹介したいと思う。
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Freestyle China 即興中華 中国のスカリフィケーション・アーティスト、蛇肌の小愛(写真:都築響一、小愛/文:吉井忍)
先月末に渋谷ロフト9で伊豆のまぼろし博覧会・館主セーラちゃんを囲むイベントに参加したとき、身体改造をめぐる取材で知られるケロッピー前田くんが、異形の友人ふたりを連れてきてくれた。ひとりはテレビ番組「クレイジー・ジャーニー」にも登場したツノ男ラス・フォックス、そしてもうひとりが最近再始動した雑誌『バースト・ジェネレーション』で見た、全身にウロコのような筋彫りを施した美女。それが北京から来日中という「小愛」さんだった。さっそく取材をお願い、後日スタジオで写真を撮らせていただき、連載「即興中国」の吉井忍さんにインタビューしてもらった記事をお届けする。世界が憧れる刺青聖地の日本が「入れ墨したひとが温泉入っていいのか」なんて下らない議論にあけくれているうちに、身体改造という究極のボディアート最前線はこんなふうに進化しているのだった。
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Freestyle China 即興中華 儚い「いんちき」を記録したい 『どえらいモン大図鑑』著者インタビュー (写真:いんちき番長、パブリブ提供 / 文:吉井忍)
先日、中央線沿線にある「いんちき番長」氏(以下、敬称略)のご自宅を訪問する機会があった。出版社パブリブの人気シリーズ『いんちきおもちゃ大図鑑』(全3巻)で知られるおもちゃ研究家のお宅は、期待通り世界各国から収集されたおもちゃであふれていて、一足踏み込んだだけで並々ならぬエネルギーが感じられる。 いんちき番長の最新刊は『どえらいモン大図鑑』。“青い猫型ロボット”からインスパイアされたおもちゃ(=「どえらいモン」)計373種をまとめたものだ。台湾版が翻訳出版されるなど海外でも話題となった『いんちきおもちゃ大図鑑』のスピンオフ企画で、おもちゃ屋さんやぬいぐるみ屋、フィギュア屋、文房具屋、家電屋、時計屋などあらゆる場所に広がる「どえらいモン」を網羅する。 これらの膨大なサンプルが採取された場所の多くは中華圏とのこと、いんちき番長がどのようにしてパチモンを集めてきたのか、まずはそのきっかけからお話を伺った。
art
Freestyle China 即興中華 逃げたサルが向かった先は――写真家・魏子涵インタビュー (写真:魏子涵、都築響一/文:吉井忍)
「動物園、よく行きますか。」 先日まで品川で展示されていた『情動の匂い』について、作者である魏子涵(ぎ・しかん/ウェイ・ズーハン)さんにお話を伺った日のこと。挨拶が済むと、彼女が先に口を開いた。 魏さんは中国山東省出身、メディア関連の名門・中国伝媒大学(北京市)で写真を専攻した後、2016年に来日。武蔵野美術大学大学院の写真コースで学んでいた2019年、キヤノンマーケティングジャパン株式会社が開催する写真家オーディション「SHINES(シャインズ)」に入選した。これに関連して2022年2月25日~3月29日まで「キヤノンオープンギャラリー1」(東京都品川区)で開催されていたのが『情動の匂い』だ。都築編集長に教えていただき、会期内に滑り込むことができた。
photography
Freestyle China 即興中華 「上海」の遺影 写真家・席聞雷インタビュー (写真:席聞雷 文:吉井忍)
上海市がコロナ防衛戦の勝利を宣言したのが6月末、入国者が集中隔離される期間も以前と比べればかなり短くなったけど、気軽に行けるのはまだ少し先みたい……そんな折、都築編集長からお誘いを受け、上海市在住の写真家・席聞雷(シー・ウェンレイ)さんに取材できることになった。 席さんは長年、表門の枠を石で築いた中洋折衷型の建築「石庫門(シークーメン)」など、古い建築物や上海の昔ながらの町並みを撮り続けている。Instagram(アカウント名:Gropius Xi)でも一連の作品「Shangha!」を発表しており、海外のフォロワーも多い。 コロナ前の活気ある風景もあれば、2カ月にわたるロックダウン期間中のもの、上海人の細やかな生活の息遣いを残したまま廃墟になっている建物、瓦礫の山と背景の高層ビルが痛々しい対比になっている風景など、上海という大都市が見せる豊かな表情はいくら見ても飽きない。
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Freestyle China 即興中華 路上の明るい白い世界:写真家・馮立(フェン・リ) | 写真:馮立、李弋迪(ギャラリー内部など一部) / 文:吉井忍
中国の写真家による二人展「閃境劇場(せんきょうげきじょう)」を鑑賞する機会をいただいた。場所は東京・新宿御苑の写真専門ギャラリー、Place M。参加アーティストは昨年本誌でも紹介した魏子涵(ギシカン)さん、そしてもう一方が成都市出身の馮立(フェン・リ)さん。魏さんは2022年に動物を写した写真展「情動の匂い」を東京で開催しており、今回の展示もその流れを汲んで動物をテーマにした構成となっていた。
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Freestyle China 即興中華 北朝鮮と烧烤とナイナイミャオ (写真・文:吉井忍)
せっかく中国のビザを取ったのに、まだ全然使えていない。もったいないので航空券が高くなる前に行ってこようと、サイトをのぞいてみた。羽田発の北京行きが思いのほか安く、即購入する。ただ、気になったのは北京の気温。私が調べた日にはちょうど高温警報が発令されていた。しかもホテル代がコロナ後に高くなり始め、お気に入りだったエコノミーホテルでさえ素泊まり400元くらいになっている(1元は約20円)。もっと北へ行こうと思った。 どうせ行くならそれなりの距離がある場所がいい。寝台列車で行けば一泊分の宿泊費が浮く。
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Freestyle China 即興中華 「逃げる人」の鶴崗+あかすりとダンスホール (写真・文:吉井忍)
今回も北京から列車で北へ向かう旅をした。出発は9月上旬、まだ東京が真夏の気温だったので、とにかく涼しいところに行きたい。旅程は9泊10日。前回訪ねた本渓(遼寧省)を再訪する以外は、長春とかハルビンを観光しようぐらいのぼんやりしたプランだったが、思いがけずロシア国境近くまで行くことになった。
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魔都は踊る――上海ダンスホール事情(写真・文:吉井忍)
2014年に写真家・任航(レン・ハン)をインタビューしてくれた北京在住の吉井忍さん。現在も日本と中国を行ったり来たりしながら、さまざまな取材を続けている。先日、久しぶりにお会いしたら「北京も上海も、いまはダンスがすごくて!」と言うので、クラブカルチャーの話かと思いきや、年配層の社交ダンス・シーンが熱いのだと。そういえば朝から公園で踊ってるひとたちとか、いるよなあ。運動になるだけでなく、異性と触れあうことでホルモンバランス改善にも効果的と言われ、我が国でも中高年層に人気が高まりつつあるけれど、日本よりはるかに盛り上がっているという上海のダンス・シーンを覗いてきてもらった。素敵な異性との触れあい、あったんでしょうか!
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本当に住みやすい街とは――深圳建築ビエンナーレ散歩(写真・文:吉井忍)
新大久保や池袋に広がる外国人エリアを歩いていて、ふと懐かしい気分になることがある。雑多でバイタリティあふれる空気や、密度の高い建築群、知らない者同士がとても薄い連帯感でつながっている感覚。何かに似ていると思っていたが、昨年(2017年)12月に中国南部の大都市・深圳でスタートした建築関連のビエンナーレを訪れて、「ああ、コレか!」と気づいた。この建築展の正式名称は「深港城市/建築双城双年展(BI-CITY BIENNALE OF URBANISM/ARCHITECTURE)」、略してUABB。今回のテーマは「都市共生」、つまり出身地やお金のあるなしにかかわらず、皆に住みやすい街づくりを探るということだ。
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Freestyle China 即興中華 “素人”上等!中国のアウトサイダーアート(作品写真提供:劉亦嫄 文:吉井忍)
「素人芸術」という文字から、皆さんはどんなものを思い浮かべるだろうか。普通、“素人(しろうと)”といえば「未熟で経験が浅い」とか「必要な技能や知識をもっていない」人をイメージするが、中国語の“素人(スウレン)”には「素朴で飾り気がなく、自然体の人」、「ある文化や教育制度の影響を受けずにいる独立した存在」という意味合いがある。今夏、798芸術区(北京市)でアウトサイダー・アート展「素人芸術節/ Almost Art Project」の代表を務めた劉亦嫄(リュウ・イーユエン。以下、英語名のサミーで表記)さんによると、アウトサイダー・アートを指す「素人芸術」という呼び方は、まず台湾で使われ始めたようだ。貧しい漁村で暮らし、50歳を過ぎてから絵を描き始めた洪通(ホン・トン、1920-1987)氏の色彩豊かな作品はその代表的存在で、70年代から台湾で大人気だった。
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Freestyle China 即興中華 「普通の人の話に救われたんです」(音声データ:故事FM提供 文:吉井忍)
中国ではひと昔前まで『知音』や『故事会』という薄い雜誌がよく売れていた。いずれも隔週刊で読み切り、定価は5元(1元は約16円)。1985年創刊の『知音』は、感情のもつれですごいことになってしまった人間関係やスキャンダルなど「実話」的コンテンツが多く、若い女の子たちが座席で読み回しているのを列車でよく見かけた。『故事会』(1963年創刊)は、いわば読み切りショートストーリー集。日常生活でのホロリとするいい話や、日本人とはツボが異なるチャイニーズジョークが満載で、一時期は760万部という驚異の発行部数を叩き出したこともある伝説の雑誌だ。質の悪い紙に印刷された文字と、ラフなイラストで作られた紙面から立ち上るストーリーにはねっとりした現実味があり、読んだ後はなんとなくお隣に住むおばさんの顔などを思い浮かべたりしていた。中国で人気だというネットラジオ番組「故事FM」を聞いて、久しぶりにこれらの雑誌を思い出した。近所にいそうな、ごく普通の人たち自身が語る経験談を録音した番組で、アップルのPodcast、中国のオンライン・ミュージック・ プラットフォーム「網易雲音楽」、WeChat(微信)や蜻蜓FM(ネットラジオのプラットフォーム)で週3回配信。2017年6月にスタートした新しい番組ながらも順調に視聴者を増やし、現在の登録リスナー数は総計30万近くにのぼる。
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Freestyle China 即興中華 楽しんだもん勝ち! 成都のタトゥー展(写真:子弾、吉井忍 文:吉井忍)
パンダと三国志で知られる中国・四川省は、昔から美人の産地としても有名だが、今でも省都・成都市を歩いていると、ふとすれ違う女の子のかわいさに「えっ!」となることがある。男性も負けず劣らず、何より人当たりがいい。四川の男は気立てがよく料理も掃除もできて奥さんを大事にする一方、女は美人で気が強い、というのが中国における大方の見方らしい。尻に敷かれるタイプと男を尻に敷くタイプ。よくできていると思う。ちなみに、四川省は中国でも特に地元人同士のカップルが多いらしい。さて、そんな四川の若者たちを眺めていて気がついたのが、タトゥーを入れている人の多さだ。季節が夏だったこともあり、腕や肩に入れられた絵柄がよく見えて、なんともカッコよかった。さらにタトゥー展もあると聞いて行ってみたらすごい熱気だったので、それをみなさんにぜひお伝えしたい。
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Freestyle China 即興中華 緊縛する私たち:写真家・許曉薇(シュウ・ショウウェイ)(写真:許曉薇 文:吉井忍)
今世紀に入ったばかりの数年間、台北にいた。「治安がいい」、「人が優しい」、「食べ物が安くて美味しい」人気の街で楽しい日々を送っていたはずなのだが、なぜか思い出せるのは、あっけらかんとした人々の裏側に性が迷走する細切れの風景ばかりだ。最初に滞在した宿の近くにあった二二八和平公園(ハッテン公園として有名)、日本のプロレス試合と『ギルガメッシュNIGHT』を流しつづけるケーブルテレビ局「Zチャンネル」(ブレイク当時の飯島愛さんとTバック!)、最高学府である台湾大学にほど近いLGBT向けの「晶晶書店」(ゲイコミュニティを描写した小説『孽子』※とはここで出会った)、街角の本屋にさりげなく置かれたレインボーグッズ、裏通りの壁に貼られた「ベトナムに行ってお嫁さんを買おうツアー」のポスター、そして1年以上住んでいた汚いホテルで夜な夜な聞こえてくるフィリピン人女性の喘ぎ声。
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Freestyle China 即興中華 始まりと究極が見える街・西川口(文・写真:吉井忍)
「西川口」がチャイナタウンのようになっていると聞いて、昨年からたびたび訪れていた。埼玉県川口市北西部にある、JR西川口駅周辺のことだ。かつての風俗街の印象を一新する勢いで多くの中華料理店が出現し、テレビや雑誌でも何度も紹介されているので、もう行ったよという方も多いと思う。この場所について書いてみようと考えたのは、店主さんたちの話がとても面白かったからだ。「中国人オンリー」で、「中国化」がすごい街と言われているものの、では一体どんな「中国人」がどんな気持ちでこの街に住み、店を構え、異国での人生を歩んでいるのか。今回は普段は店の奥にいるご主人たちが、仕事の合間を縫って教えてくれたストーリーを少しご紹介したいと思う。
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Freestyle China 即興中華 網戸のメッシュが散らす命:写真家・仇敏業(チョウ・ミンイエ)(写真:チョウ・ミンイエ/文:吉井忍)
中国に『城市画報(City Zine)』という月刊のカルチャー誌がある。国内最大級のメディア企業「南方報業伝媒集団」を母体としていることもあり、他誌が出版不況を背景に停刊になったりオンラインに移行する中、なんとか耐え抜いて今年20周年を迎えた。個人的には10年以上前に北京のカフェで見つけたのが出会いで、その日は店にある同誌のバックナンバーを夢中になって読み漁った。音楽やアートに本屋さんなど、中国の若者の身近な話題に焦点を当てた誌面が、その頃はまだ珍しかったのだ。以来、新聞スタンドで見つけると買うようにしていたのだが(当時は隔週発行だった)、ある時ページをめくっていたらふと気になる文章を見つけ、切り取ってノートに挟んでいた。その文章を書いたのが、今回お話を伺った広州市在住の写真家、仇敏業(チョウ・ミンイエ)さんだ。
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Freestyle China 即興中華 人気沸騰の中国8D都市――『重慶マニア』著者・近堂彰一氏インタビュー(写真:近堂彰一 文:吉井忍)
中国内陸部の大都市・重慶について、日本人が中国に先駆けて取材した書籍『重慶マニア』がこのたび出版された。版元は、昨年『中国抗日ドラマ読本』(著者:岩田宇伯氏)を出して日本のみならず、中国の読者をも唖然とさせた合同会社パブリブ(東京都、代表:ハマザキカク氏)。たぶん今、中国当局が一番気にしている日本の出版社ではないだろうか。パブリブさんは『重慶マニア』を「地方都市マニア」シリーズ第一弾と位置付けておられるらしいので、これからもどんどんほかの都市と人々の実態が明るみに引きずり出されること思われる。さて、さっそく『重慶マニア』を開いてみると、ただの工業都市だと思っていた重慶が、なんだかものすごい独自の発展を遂げていることが分かる。今月発売されたばかりの本書は、18万文字超に加え、ほぼ全てのページに画像ぎっちりというかなりのボリューム。都築編集長のご紹介により著者の近堂彰一氏にお話をうかがうことができたので、重慶でしか見られない風景の数々も交えてみなさんにご紹介したい。
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Freestyle China 即興中華 仏タトゥーの巡回展、台湾・高雄へ (文・写真:吉井忍)
台湾南部の高雄市で大規模なタトゥー展『TATTOO刺青―身之印』が開催中だ。高雄市立美術館とフランスのケ・ブランリ美術館による初コラボレーションによるもので、人類に長く寄り添ってきたタトゥーを俯瞰的に見渡しつつ、台湾のローカルな内容も加えた作品200点を展示している。台湾といえば、毎年いくつかの国際タトゥーコンベンションが開かれているし、現地のタトゥー・アーティストのレベルも相当高いとか。ならば中国大陸とはまた違った発見があるはず!そんな期待を抱きつつ、高雄へ向かった。
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Freestyle China 即興中華 愛を誓ったその後は 写真家・劉貞伶インタビュー(写真:劉貞伶 文:吉井忍)
「写真を撮る」ことの特別感がだいぶ薄らいでいる現在だが、例えば結婚写真は一生に一度(できれば)のチャンス、なるべくちゃんと撮って残しておきたいと思うのが人情だろう。台湾や中国大陸などの中華圏では「婚紗照」(※)と呼ばれる前撮りが盛んで、化粧に衣装、背景やポーズに日本とは桁違いの気合いを入れて撮る。撮った後は大きく引き伸ばし、結婚式当日にはウェルカムボードのように利用、個々の写真はアルバムにまとめて自分たち用だけでなく双方の両親にもプレゼント、さらにブロマイドのようなカードにして来賓に配る。引き伸ばした写真は結婚式の後も仕舞い込んだりはせず、新居の寝室やリビングの壁に掛けてお客さんや友人、子どもたちにも堂々と見てもらう。
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freestyle China 即興中華 “老百姓”ワールドにようこそ:中国のZINE『吃的ReallyWant』 (写真提供:大瓜/文:吉井忍)
一年ほど前、広州にあるギャラリーでふと目に止まったZINEがあった。写真がてんこ盛りの小冊子、『吃的ReallyWant(ツーダ・リアリィウォント)』だ。タクシー運転手が愛用するレストラン、北京に住む大家族にまつわる食べ物の思い出、無数のゴミ箱の記録、そして魚料理“松鼠桂魚”のバリエーション研究。次にいつ中国へ行くことができるのか全く見通せない今、このZINEをめくっていると、遠くなってしまった宝物を見ている気分になったりもする。 どれも決して「映える」写真ではないし、レイアウトもちょっと見づらい。でも、読み込むと内容はとびきり面白くて、実はキレキレのセンスで日常を切り取っていることがうかがえる。素材がどれも庶民の生活に根ざしているので、背伸びせずに共感できるのもいい。中国のZINEにはびっくりするほど高いものもあるが、こちらはかなりお手頃で、ギャラリーでの販売価格も25元(約400円)ぐらいだった。作り手は北京在住の女性二人組、今回はそのうちの一人、大瓜(ダーグワ)さんにWechat通話で取材させていただいた。
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Freestyle China 即興中華 絵画の海に浮かぶ希望 中国の美術教師、画家・施海兵 (画像提供:施海兵 文:吉井忍)
最近、中国から届くイベントのお知らせを眺めていると、ライブに映画祭、文学フェアにアートブック展などが目白押し、すっかり日常の様子が戻ったようにも見える。ただ、北京の知人によれば「本格的に寒くなれば、きっとコロナの第二波、第三波が押し寄せる。その前に急いで楽しんじゃおう」という考えらしい。そんな色とりどりのイベントの中でふと目を引いたのが悦・美術館(Enjoy・Art Museum)における施海兵(シー・ハイビン)氏の個展『吹一口気(Blow a breath)』だ。 同美術館は北京市の著名アートスポット、798芸術区に位置する。煉瓦造りの古い工場をリノベーションした3階建ての建物で、総面積は2600平方メートル。シー氏の展示は4つある展示会場の一つで行われたのだが、とにかく作品の数が多い。のちに本人に聞いてみると「持ってきたのは約300枚。実際に展示したのはそのうちの100枚ぐらい」とのこと。丁寧に見ていけば、きっと軽く1時間以上は過ごせそう。一見抽象的、実はとても現実に即した人物画が多い。虚空を見つめるような目の描き方にもやわらかさがあり、全体的に温かな印象を与える作品群だ。 シー氏については情報を探しても、大量の作品と過去数年分の展覧会情報が見つかるだけで、江蘇省の小さな街に住んでいること、普段は美術の先生をしていること以外の経歴を知ることはできなかった。そんな不思議さにも惹かれて、今回zoomでお話を伺った。
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Freestyle China 即興中華 ご近所の「師匠」を探す旅 『上海師傅』著者・周祺(ジョウ・チー)インタビュー (写真:周祺 / 文:吉井忍)
近年は成都や重慶、杭州などトレンド入りする都市も増えてきたが、それでも上海は中国でトップクラスのおしゃれな街だと思う。海外の人間と文化を早くから受け入れてきただけあって情報に敏感で、道を歩く人のファッションを見てもかなりコーディネートに気を遣っているのがうかがわれる。例えば首都・北京は、もちろんインフラはどこにも引けを取らないのだが、まだどこかのびんりしていて、「文化的事業は北京、ファッションとビジネスは上海」という住み分けが今でもうっすら残っている。 そんな上海でも大通りを離れて小さな通りに入ると、また違う世界が広がる。靴を洗って修理してくれるお店、包丁を研ぐ人、せいろで蒸しあげたシュウマイが飛ぶように売れている風景。もう行けなくなって1年経つけれど、今はどんな風なんだろうと思っていたら、都築編集長から意外な展示があると教えていただいた。 この展示会『上海師傅(Shanghai Shifu)』は生粋の上海っ子、周祺(ジョウ・チー)さんが企画したものだ。彼女は今夏に同名の書籍を出版しており、展示会ではこの書籍で取り上げた上海ならではの手作りの日用品を紹介。 “師傅(シーフー)”は日本語に訳すと「師匠」に近く、英語では「master」。特定の技能に長じた年長者への呼びかけに使うことが多いが、決して大仰な言葉ではなく、例えばタクシーの車内で運転手に話しかける時などにも「師傅、ここで右折してください」のように気軽に使われている。書籍『上海師傅』では60人の“師匠”たちのストーリー、そして彼らが作り出す合計100種類の日用品や工芸を収録。およそ8年をかけたというこの『上海師傅』の背景について周さんにお話を伺った。
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Freestyle China 即興中華 写真の辺境:台湾写真家・彭一航 (写真:彭一航 / 文:吉井忍)
暗闇の中に佇むライオン、鳥、犬の群れや龍。台北市在住の写真家・彭一航(ポン・イーハン)さんが撮るこれらの「生き物」は、よく見ればすぐにニセモノだと分かるのだが、それでも息づかいまで聞こえてきそうで、しかもちょっと怖い。そう伝えると彭さんは頷いて、それは「ラブドールとかでよくある“恐怖谷”のようなもの」だと言った。日本語では「不気味の谷現象」、リアルな再現がある一線を越えると、私たちは不気味さや嫌悪感、恐怖などのネガティブな感情を抱くようになる。その臨界点に似たようなものを、彭さんはこの『幽霊公園/The Ghost Park』(2017-2022)において作り出そうとしたしたのだ。 少し前に、台湾から戻られた都築編集長から現地の写真家の方々をご紹介いただいた。何回かに分けて取材記事をお送りしたいと考えている。今回はその第一弾として彭一航さんにお話を伺った。
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Freestyle China 即興中華 ラブホがあぶり出す台湾 (写真:陳淑貞、黄郁修/文:吉井忍)
台湾の街を歩いているとたまに見かける「汽車旅館」の看板。米国のモーテル(motor+hotel)の直訳だが、必ずしも「自動車で旅する人向けの宿泊施設」を指すわけではなく、意味としては日本の「モーテル(つまりラブホ)」に近いことが多い。一部屋ごとにテーマが異なり、リゾート地のヴィラを模したものや回転木馬で優雅に遊べるタイプ、さらにはジュースやコーヒー、お菓子、カップラーメンなどが無料で提供されるお得なサービスも後押しし、2000年代初頭には爆発的な流行を見せたという、この台湾ラブホ。これらを一軒ずつ訪ね歩いて撮影を続けた陳淑貞(チェン・スウチェン)さんという写真家がいる。
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Freestyle China 即興中華 公園の性張力:孫一氷「公園奇譚」より (写真:孫一氷 / 文:吉井忍)
友人に「公園に行こう」と誘われたら、あなたはどんな場所を思い浮かべるか、何を準備するか。それが日本と中国では大きく異なる。北京在住の写真家・孫一氷(ソン・イービン)さんの個展「公園奇譚」を訪ねて、改めてそれを意識した。 孫さんはコロナ期間中、北京にある公園を訪ね歩き、そこで体を鍛える高齢者たちを撮影していた。鉄棒や雲梯、健康遊具を巧みに使いこなし、抜群の身体能力で華麗なポーズを決める高齢者たちは中国でも話題を集め、2023年には写真集『在公園』(孤独図書館)が出版された。原宿のギャラリー・SOMSOCで行われた今回の個展(8月11日終了)は、孫さんにとって日本初の個展で、これに合わせて中国版に未掲載の作品も収録した写真集『公園奇譚 SAGA IN THE PARK』(研美株式会社、2024年)を制作。
art
新連載! Freestyle China 即興中華
北京と東京を行き来しながら、中国でいま、まさに起きていることを本メルマガで書いてくれているライターの吉井忍さん。今年もたくさん報告できそう!ということなので、不定期連載にしていただくことに。題してフリースタイル・チャイナ=即興中華。ちなみに中国のヒップホップ・シーンではフリースタイルのことを「即興」と言うのだそう!
art
Freestyle China 即興中華 庶民のチカラ:“不正経研究所”所長・徐騰(文/吉井忍 写真提供/徐騰、吉井忍)
中国で「面白いもの」を探してくるのは、今までは外国人が多かったが、最近は中国の人が自分で見つけてくることが増えた気がする。徐騰(シュー・タン)さんもその一人。清華大学建築科の博士課程に在籍する傍ら、中国各地の変わった建築物を観察し、その謎に迫る「不正経(=非正統派、まともでない)歴史研究所」なるものを立ち上げ、自ら所長を名乗っているという。早速、ぜひお目にかかりたい!と唐突な熱愛コールを徐さんに送ったところ、博士論文のご執筆でお忙しい中にもかかわらず取材を快諾してくださった。
music
Freestyle China 即興中華 アツい中国メタルを一気に紹介!『デスメタルチャイナ』著者インタビュー (文:吉井忍)
中国の人は普段、どんな音楽を聴いているのだろうか。もちろん地域や世代で好みは分かれるだろうが、この原稿を作成している8月時点では、『楽隊的夏天(=バンドの夏)』が再び話題になっている。昨年夏に中国最大の動画サイト「愛奇芸(iQIYI.COM)」上で配信されたオーディション番組で、今年はその第二弾が7月からオンエア中。1990年代の北京で隆盛を極めたハードロックバンドがお目見えしたり、やんちゃなインディーズバンドが会場を沸かせたりと飽きない構成も魅力で、この番組の大ヒットによりバンドブームが再燃していると言っても過言ではない。 このほか人気ドラマの主題歌など流行音楽は数多く挙げられるが、ストリーミング型の音楽配信サービスで音楽を楽しむ形態が普及しているため、皆がそれぞれに国内外の好きなジャンルを聴きまくり、たまにCD屋やネットショップでアルバムを漁ったりジャケ買いをしたりというのが現状だ。日本とそれほど変わらないとも言える。ほんの十数年前までは新しい音楽に触れるためには海賊版を買うか、または海外に遊びに行くチャンスを得た友達もしくは留学生からCDをもらうしかなく、欲しいアルバムを半年待ってやっと手に入れる状況も珍しくなかったことを考えれば、今の状況は夢のよう。ネットで気軽に最新の情報とサウンドに触れられるようになった今、中国各地では様々な音楽とミュージシャンが急成長している。
photography
すぐそこにある汚部屋と台湾 『Hoarders』黄郁修インタビュー (写真:黄郁修 文:吉井忍)
コロナのために延期となっていた「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭(KG)』が現在、京都市内で開催されている。今年で第8回目を迎え、会期は10月18日まで。新人写真家やキュレーターの発掘を目指した公募型アートフェスティバル「KG+」も同時開催されているのだが、ここからさらに審査をくぐり抜けた10組を展示するプログラム「KG+SELECT」があり、都築編集長によると、なんと台湾の”汚部屋”シリーズ『Hoarders』が選出されているという! これは行かなくては。 Hoarders(ホーダーズ)とは耳慣れない響きだが、実は我々にも身近な言葉で「物を過剰に溜め込む部屋で暮らす人たち」を指す。hoardは「貯蔵する」の意味、いわゆる汚部屋のような状態になるまで物を溜め込んでしまう行為はhoardingと呼ばれる。そしてこの『Hoarders』シリーズは、若き写真家・黄郁修(ファン・ユウシュウ)さんが、台湾各地を巡って見つけた汚部屋を撮影した作品だ。つい最近まで京都に住んでおられたが、現在は台湾に帰省されているとのことでzoomを通じて取材をお願いした。
photography
Freestyle China 即興中華 世界を纏うステージ:沈昭良『STAGE』から (写真:沈昭良 / 文:吉井忍)
台湾の写真家、沈昭良(シェン・チャオリャン/Shen Chao-Liang)といえば、本誌でも何度か取り上げられている『STAGE』がまず思い浮かぶ。10年ほど前に発表されて台湾に一大“ステージブーム”を巻き起こした写真集だ。この沈昭良と同書について考察した論文『世界を舞台化する:異文化間の理解もしくは無理解、および台湾における移動式ステージ現象と沈昭良の作品について(※)』を、都築編集長から送っていただいた。 『STAGE』が台湾の人々に与えた影響を分析しつつ、あの華やかなステージトラックには彼らの世界観が凝縮されているとする内容だ。『STAGE』は海外でも評価が高く、私たちも外国人としてその作品を堪能することはできるが、この論文にある台湾の内部での受け止め方という視点は新鮮だった。
photography
Freestyle China 即興中華 公園とホルモン:写真家・孫一氷 (写真:孫一氷 文:吉井忍)
コンビニに朝食を買いに行くついでに、近くの公園でラジオ体操に参加している。高齢者が圧倒的多数で、東京の片隅にある狭い公園を埋め尽くす勢い。お互いきちんと距離をとって体を動かし、「第二」が終わるとすぐ解散。静かに散り散りになっていく。しめやかな儀式のようだ。彼らに混じって公園を出る時、ふと中国の喧騒を思い出したりする。 中国の公園はいつも人が多かった。水を含ませた巨大な筆で地面に字を書く人、踊る人や走る人、昼はお手伝いさんが連れてくる子供たちで賑やかだし、夜は西瓜を食べたり機材持参で歌ったり、とにかく朝から晩まで勢いがある。読書や瞑想には向かないが、あの賑やかさも魅力ではあった。 北京在住の写真家・孫一氷(スン・イービン)さんによる作品『在公園(in the park)』には、そんな風景が地元民の目線で捉えられていて、懐かしくもあり新鮮にも思えた。
art
Freestyle China 即興中華 ロードサイドの夢話 台湾アーティスト・丁柏晏さんインタビュー (画:丁柏晏 / 文:吉井忍)
台湾で活躍中のアーティスト、丁柏晏(ディン・ボーイェン)さんの個展「沿路的夢話」が現在、東京都中野区にある本屋「タコシェ」で開催中だ。会期は今月15日まで。台湾では10年近いキャリアがある人気作家でありながら、日本での個展はこれが初めてという丁さん。都築編集長からご本人が来日されているとの情報といただき、急遽インタビューをお願いした。 今回の個展のタイトルは、今年発売されたばかりの丁さんの画集『沿路的夢話:丁柏晏畫集』(Mangasick刊)から。先日大盛況のうちに終了したPABF=プアマンズ・アートブックフェアでも紹介されており、かっちりしたタイトルの文字と、ページをめくった時に広がる不思議な雰囲気の絵のギャップがとても印象的だった。
photography
『公園奇譚』孫一氷写真展 (文:吉井忍)
2022年9月7日号の連載「Freestyle China 即興中華 公園とホルモン」で写真家・孫一氷を紹介してくれた吉井忍さんから連絡があり、孫一氷(ソン・イービン)がいま原宿のギャラリーで個展を開いているという。急いで行ってみたSOMSOC Galleryは原宿の表通りから入ってすぐ、2周年を迎えたばかりの新しいギャラリーとアートショップだった。運営しているのは中国人と日本人の若者たちによるユニットで、展示のテイストも、場所柄も、いわゆる現代美術のギャラリーよりもぜんぜん風通しのいい、ポップな空気感が際立っている。ちなみにSOMSOCとは宇宙を意味するCOSMOSを反転させた造語、「人間は無限に広がる大宇宙の中では、ちっぽけな存在です。そんな小さな存在でも自分の「内なる宇宙」、つまりSOMSOCを原宿という特異点から全世界へ発信できるという希望が込められています」(ツイートより:@Somsocgallery)。会期中には吉井忍さんなどが登壇するトークイベントもあるので、今回は吉井さんに展覧会紹介を寄稿していただいた。
travel
Freestyle China 即興中華 “ニセ雑誌”を通じてみる中国写真の今――假杂志(Jiazazhi)代表・言由さんインタビュー(写真・文:吉井忍)
中国の本屋で写真集を見たり、知人におすすめの写真家を紹介してもらっているうちに、アートブックを専門に扱うインディペンデント出版社「Jiazazhi Press」という存在に気がついた。調べてみると、同社は日本を含む海外でもよく知られているようで、TOKYO ART BOOK FAIRやパリフォト、アルル国際フォトフェスティバルなど海外フェアの常連でもあるようだ。このJiazazhi Pressが中国浙江省・寧波(ニンポー)市に図書室、ギャラリーと書店を備えた複合施設Photobook Libraryを設け、そこで初の展示を行なっていると聞いてさっそくお邪魔することにした。
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Freestyle China 即興中華 爆走!中国カーミーティング@名古屋 (画像、動画提供:岩田宇伯/文:吉井忍)
コロナに続いて大雨と洪水と心配な案件が続く中国。そんな中、意外にもクルマ関連における中国独自の技術と現象が日本のカーマニアたちの注目を集めていることが分かった。 名古屋市にある書店・Bibliomania(ビブリオマニア)で先月末に行われたイベント「中国car Meeting」では、中国事情に詳しい岩田宇伯氏が膨大な中国クルマ情報で会場と画面前の人々を圧倒。同氏は2018年刊行の書籍『中国抗日ドラマ読本』で日本の読者のみならず、中国の政府関係者らをも驚嘆(もしくは激怒)させたことで知られるが、実は大のクルマ好きでもあり、ご自身もよくカーイベントに顔を出しておられるとか。 今回は岩田氏にzoomで取材をさせていただき、同イベントで紹介された中国の「名車」などを振り返りつつ、日進月歩の電気自動車、街を縦横自在に走る老人車、そして中国ヤンキーと彼らの愛車などについてお話を伺った。
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Freestyle China 即興中華 淘宝網の本当の“お宝”『Wow Taobao』 (写真:ルーベン・ルンドグレン/文:吉井忍)
最近、ちょっと異色のフォトブックを見つけてしまった。名前は『Wow 淘宝(Wow Taobao)』、中国で最大規模を誇るショッピングサイト「淘宝網(タオバオワン、通称タオバオ)」で売られている奇想天外な品々を紹介したものだ。版元は浙江省・寧波市にあるインディペンデント出版社「Jiazazhi Press」なので、中国人写真家の作品集かと思いきや、作者は北京市に長く在住する外国人だった。
book
Freestyle China 即興中華・番外編 東京のバーピンミー (写真:都築響一、吉井忍/文:吉井忍)
風呂なし四畳半での生活を綴った小さな中国語の本を上梓した。タイトルは『東京八平米』。“四畳半(スーディエバン)”を使おうとも考えたが、“八平米(バーピンミー)”の方が語呂がいいこともあり、こちらに決めた。面積もだいたいそれぐらいだ。 編集者との雑談から生まれたこの本、コロナやら何やらで思うように進まず、予想を超えてかなり難産だった。企画当初は2年足らずだった四畳半生活も、気がつけばもう5年目。いつもは中華圏の人々を紹介させていただいている「Freestyle China 即興中華」だが、今回は番外編として拙著と四畳半について書いてみたい。
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BOOKS
ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)
ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。
本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。
旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。
ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)
稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。
1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!
ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)
プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。
これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。
ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)
書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい
電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。
ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)
伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!
かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。
ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)
――ラブホの夢は夜ひらく
新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!
ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)
――秘宝よ永遠に
1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!
捨てられないTシャツ
70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。
圏外編集者
編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。
ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014
こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。
独居老人スタイル
あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。
ヒップホップの詩人たち
いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。
東京右半分
2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!