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リーサル・ウエポン金本

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新連載! 蒲田リハビリ日記 第1回 色のない街 ザ・蒲田のファンキー障害者 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

「圏外雑誌GON!回想録」を絶賛連載中の比嘉健二さんから「昔からの仲間で、おもしろいライターがいるから」と紹介されたのがリーサル・ウエポン金本さん。「あまり遠出ができないからだで……」と言われて地元の蒲田にうかがったら、脳梗塞のリハビリ中で、それこそリーサルになりかねない、なかなか深刻な状況。なのに「蒲田って、自分も含めて障害者や変人が多くて飽きないんですよ!」と、いたってポジティブ。おしゃべりがすごく楽しかったのでさっそく、いろいろ書いてください!とお願いした。これからしばらく隔週でお送りする「蒲田リハビリ日記」。ご自分のリハビリ記録というよりも、街全体がリハビリ中みたいな、蒲田というパラレルワールドの空気感を味わっていただけたらうれしい!

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蒲田リハビリ日記 第7回  ゆきゆきて、路地裏の零細企業  それなりに楽しい低層貧民街生活 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

「○○が不味いって言ったのは誰なんだよ。あんな美味いもんねぇぞ。だけどな、みんなが食いたいって思ったらヤバイから、そーゆーデマを国の偉いヤツらが流したんだ!!」と老人が絶叫すると、「はいはい。私の○は食べないでね」と中年女性が受け流す。酔いにまかせた老人の暴言はとどまることを知らず、夜になっても商店街のバカ騒ぎは延々と続いた。 数年前、ボランティア活動の一環として、蒲田周辺の商盛連合会が主催する祭りの設営を手伝ったことがある(2020年夏、コロナの影響で蒲田地域の祭事は一斉に中止された)。当時はまだ脳梗塞の後遺症で文字の読み書きができなかったため、チラシやポスターの作成は手伝えなかったが、俺のようなクズでも地域のお役に立てればと思い、ふたつ返事で参加させてもらったのだ。

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蒲田リハビリ日記 第11回  デリヘル仕事術に学べ! 社長の金言――「腹でなにを思おうが自由ですが、この職場では誰に対しても、嘘でかまわないので、徹底して“感じのよい人”を演じてください」 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

15年以上も署名原稿を書いていなかったため、誰も俺のことなど憶えていないだろうと思ったが、「蒲田リハビリ日記」の連載を始めた昨年の夏、一応、反響をチェックするため、遅ればせながらTwitterを立ち上げた。 といってもTwitter内をざっと巡回しただけで、しばらく放っておいたが、今日、空いた時間にどうでもいいことをつぶやいてみた。時間潰しにはなるのだろう。ただ不特定複数の人びとと仲良くできるのだろうか、社交性ゼロのこの俺(52歳)が…。

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蒲田リハビリ日記 第16回  求職迷走録 2021「怪しく胡散臭い」夏の終わりから初秋へ (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

深夜2時。小5から「怪しく胡散臭い人(や物事)」を追求してきた俺(今年53歳)だが、あれから40年余…いったい誰がNo.1だったのだろうか? と思い返す。真っ先にフルネームで名前をあげられるのは3人。みな甲乙つけがたいスリートップだ。彼らはどんな劣等感を抱え、どんな反動や裏返し作用から怪しく胡散臭い人物になっていったのか。ふとんのなかで、そんなことをあれこれ考えていたら眠れなくなった。内実を知れば知るほど、夭折した昔の作家が「桜の樹の下には屍体が埋まつてゐる!」といった《本当の意味》が浮かびあがってくる――。

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蒲田リハビリ日記 第20回  遊廓の童  故郷・名古屋市北区に「城東園」があった頃 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

2014年に脳梗塞を患って以降、脳外科で常用薬を調整してもらってきたため、その12年前(2002年)に心臓病(大動脈解離)を患っていたことを、忘れていたわけではないが…、どこか二の次になっていた。昨年の暑い夏、ふと思い立ってエコー検査を受けたところ、数日後、主治医から直々に、こういった内容の電話連絡が入る。「そろそろ入院できるようになってきたので、ぜひ再検査してほしい!」と。自覚症状は特になかったが、嫌な予感がしないでもない。すぐに死ぬことはないと思うが、つい我が人生を振り返ってしまう。 地方(愛知県名古屋市北区)の低層貧民街で生まれ育った俺だが、思えば中3の終わり頃から20代後半まで、ずっと周囲の人に恵まれて毎日がとても楽しかった。感謝しかない。悪趣味雑誌『GON!』の末席ライターとしてスタートした俺だが、その25年後には都築響一さん主筆のメルマガ"ROADSIDERS' weekly"でも連載(不定期)を持たせていただき、もはや人生に思い残すこともない。

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蒲田リハビリ日記 第2回  場末のマンション整体院をめぐる心の旅 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

「人間は最終的に他人との信頼関係とか、感謝とか、そういう心のつながりを求めてしまうよね。他人をだましてカネを稼いでも、得るものはなにもない。歳をとって、ようやくわかった。遅いけど……」とYさん(現在65歳)は語る。 蒲田には指圧マッサージや中国整体などを含む整体院が数多く存在する。昨今どこの街にも多いが、蒲田には特に多い。マンション整体院も多々ある。15年ほど前、俺は仕事でこの街を何回か訪れている。マンション整体院とは業界内の隠語だが、それはいったいどんなものだろうか。

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蒲田リハビリ日記 第3回  殺風景の向こう側に見えた景色  検査入院とおじいさんのキネマ通り商店街 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

生まれ育った団地の屋上から見えたのは、中京工業地帯の無機質な工場群が建ち並ぶ灰色の風景だった。下請け町工場の金属を切削する非楽音が耳をつんざく。光化学スモッグを形成する微粒子が時折鈍く光っては弾け飛び、風景のなかへ溶けていった。微粒子が弾け飛ぶたび、下手くそな自作マンガの登場人物たちが勝手に動き出すことが度々あった。 俺(現在51歳)は6年前に脳梗塞を患って以降、今日まで再発や検査(年2回)などで計11回入退院を繰り返している。蒲田へ移り住んでから、ずっと同じ病院へ通っているが、その病院には9割以上、近所の患者しかいない。

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蒲田リハビリ日記 第4回  医療リハビリテーションと認可外ゴミ回収の基礎知識  再発入院と多摩川大花火、そしてホームレス小脱走 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

脳梗塞を患って病院近くの蒲田へ移り住み、初めてその音を聴いた。毎週決まった曜日(資源ゴミ回収日)の早朝、ホームレスたちが自転車やリヤカーを走らせ、競うように空き缶を拾い集めてゆく。その際に生じるアルミ缶のこすれ合う音、その音のことだ。 正規の廃品回収業者がやってくる前にアルミ缶のみを回収し、はやてのように去ってゆくホームレスたち。ゴミ捨て場を散らかすためか苦情もあるようだが、大田区(蒲田周辺だけか?)がそれを許しているのは、資源ゴミが彼らの生活の糧だと知っているからだろう。大目に見ているのだ。

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蒲田リハビリ日記 第6回  移住失敗 多摩川河口の猫と名もなき小さなユスリカ (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

蒲田へ引っ越し、今年11月で丸6年になる。もう6年になるのかと思う一方、まだ6年しか経っていないのかと思うこともある。脳梗塞を患って俺の生活は一変したが、6年前に考えていたことと、6年後のいま考えていることには大きなへだたりがある。病院近くの蒲田へ連れてこられ、いま俺は本当によかったと運命に感謝しているのだから。 だが6年前は、そんなこと露ほども思っていなかった。その3年前、三浦半島の片田舎へ移住した俺は、平日の昼間から近隣を散策し、特にいいことはなかったが、それなりに日々を謳歌していた。18歳で上京し、24年8カ月間東京で暮らしてきたものの、根が田舎者ゆえ人混みや満員電車に耐えられなくなり、42歳にして移住を決断したのだった。

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蒲田リハビリ日記 第10回  蒲田発!! 世界屠音紀行 ノイズアーティスト GOVERNMENT ALPHA 吉田恭淑――「好きなことを全うするしか、自分の人生に満足する道は開けないと思っているから」 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

吉田恭淑(51歳)は、俺の高校の同級生である。彼はノイズアーティストとして世界的に評価され、音響のみならず美術の領域にまで足を踏み入れている。自由奔放な彼のセンスや発想力、やりたい放題の悪ふざけをすべて受け入れてくれるのが、ノイズアートという現代芸術の世界なのだ。彼の生き様は魅力に満ちあふれていると、20代のころから強く思っていた。好きなことに身も心も捧げる人生、彼ほど幸せな男を俺は知らない。2020年11月14日(土曜日)、女性と暮らす都内の自宅マンションを訪ね、話を聞かせてもらうことになった。ところどころ郷土の方言が飛び交う和やかな雰囲気のなか、あらためてノイズアートの奥深さを知る貴重なインタビューとなった。

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蒲田リハビリ日記 第12回  デリヘル現地調査Tour JR南武沿線(神奈川県川崎市内分)紀行 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

「南武線の矢野口駅から川崎駅まで、そうだな6日間くらいかけて一緒に歩こうか」と提案してくれたのは、「第8回」にも登場したゴーストライターSさん(56歳)だった。南武沿線に職場(デリヘル)があるため、「マーケティング調査というほど大それたものじゃないけど、川崎市全域を事細かに観てまわりたい」と俺がいうと、街歩きをライフワークとするSさんがこう乗ってきたのだ。Sさんの自宅は、南武線と京王相模原線が交差する稲田堤駅周辺にある。そのひとつ先の矢野口駅から川崎駅まで散歩すれば、「南北に広がる川崎市を、ほぼ全域捉えることができる」とSさんは嬉しそうに付け加えた。Sさんは顔が小さいため、巨大なマスクを装着していると誰だかわからないほどだ。 数日前、川崎市内で手広くデリヘルを経営するB社長(64歳)から、実はこう誘われていた。「副店長として新店舗を開発してみないか?」と。「コロナ禍だけど、人間に性欲がある以上、性風俗産業が滅びることはないから」とB社長は滑舌美しく語った。入ってまだ1カ月半だったが、この種の職業では抜擢が速い。そのことは整体業界で慣れていた。中学生程度の日本語が話せれば誰でも役に立てるのが、この種の職業の特長だといえよう。まだ他のスタッフには内密だったが、コロナの影響で、すでに3店舗の閉鎖が決まっていた。そのうち1店舗を解約せずに残し、なにか付加価値を乗せて新店舗(デリヘル)を始める予定だったのだ。

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蒲田リハビリ日記 第13回 田園調布に家がない! (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

大田区田園調布は世田谷区成城とならぶ東京・最上層の高級住宅街だが、昨今どういうわけか異変が起きている。更地や空き家が、そこかしこに増え続けているのだ。住民の多くは経営者や著名人、もしくはそのご子息だが、不況とコロナのダブルショックで、それぞれの事業が立ちゆかなくなってしまったのだろうか。 最上層と最下層でありながら、田園調布と蒲田は同じく東京都大田区に属し、東急東横(・目黒)線と多摩川線を乗り継ぐものの、わずか15分程度の近距離にある。以前は東急目蒲線が直通運行しており、移動時間はもっと短かった。2000年8月に行われた東急線の路線再編により、目蒲線は目黒線と多摩川線に分割されたのだ。

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蒲田リハビリ日記 第14回 ルポ・デリヘル―最終章 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

リーサル・ウエポン金本(現在52歳)とは25年前、本名のほか、もうひとつ名前が必要になり、ジャンクカルチャー雑誌『GON!』の入稿間際に慌てて名付けたペンネームである。金本というのは小学生のころ、いつも一緒に遊んでいた年上の友人ふたりがともに在日韓国人で、それぞれ日本名を「金田」「金石」(本名はどちらも「金=キム」)と名乗っていたことに端を発する。もっとふたりと仲良くなれるよう、「じゃ俺、金本!」と口走ったのが金本の始まりだった。リーサル・ウエポンとは最終兵器という意味だが、なぜそんな呼称を掲げたのか、四半世紀たったいまでも、よくわかっていない。

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蒲田リハビリ日記 第5回  猛暑とコロナ第2波  左腕の血種と自主制作コミックエッセイ「脳梗塞患者手記」 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

頭が弱く、そのうえ血管も弱い。俺(現在51歳)のことだ。 33歳のとき、心臓の血管が裂けたため、心臓病(大動脈解離)を患った。45歳のとき、頸部(首)の血管が裂けたため、脳梗塞を患った。もともと血管が弱いのだが、病気になるほど悪化したのは、やはり長年の食生活がいけなかったのだろう。しかし、今回は大病に発展する部位ではないため、ただただ内出血の痛みに苦しむだけの日常を過ごした。 2020年8月31日(月曜日)午後1時ごろのことだ。突然の立ちくらみに見舞われ(小さな血栓が飛んだのか、ごくごく軽い脳梗塞が再発していた)、自宅で横になっていると、次第に左腕の内出血が広がり、痛みが増してゆく。原因がよくわからない。なぜ、こんなことになってしまったのか…。

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蒲田リハビリ日記 第8回  B級民俗学ミーティング 東京都大田区蒲田周辺  下層ゴーストライターズ@ブックカフェ羽月(通称=羽田プリン) (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

「北海道や沖縄の人びとはもちろん、東北と九州とか、世界的に見れば狭くても日本は広いし、そもそも単一民族であるはずがない」とSさん(56歳)は熱っぽく語る。Sさんは大学院で社会学を専攻していたが、思うところあって中退し、フィールドワークと称して全国の低層地域を巡回している。国内には凡そ6~7種の民族が混在し、その集合体を日本人と呼んでいるに過ぎないというのがSさんの持論だ。 Sさんとは23年前、ゴーストライター派遣会社の養成所で知り合った。株主総会招集通知を改変する際、ともに1カ月間、都心にある証券専門の印刷会社で軟禁された間柄である。個性をいっさい出さないゴーストライター仕事は機械のように振る舞え、精神的にラクなので俺はけっこう好きだった。 その後、俺は零細企業を転々とする道(労働時間こそ長いが、給与+賞与で、こちらのほうが若干多く稼げた)を選んだが、Sさんは現在もゴーストライターを続けている。お互いにB級民俗学を追求しており、一昨年再会して以降、それぞれの活動(零細企業はB級民俗ネタの宝庫だった)を通じて知り得た情報を定期的に交換しているのだ。

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蒲田リハビリ日記 第9回  生活保護と不法投棄の廃地~ルポ森ケ崎 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

犯罪者は現場へ戻るというが、戻りたくなくても長い年月を経て、否応なく戻されてしまうこともある。ロス疑惑の三浦和義がそうだったように。俺はそんな大物ではなく、笑ってしまうような小物だが。 見渡すかぎり色のない景色が、ただ漠然と横たわっていた。森ケ崎には、曇り空がよく似合う。曇り空しか似合わない、といっても過言ではない。生活保護のKさん(54歳)に連れられ、なんとなくこの地を訪れたが、そこには人の神経を高ぶらせ、緊張を強いるものしか転がっていなかった(としか最初は思えなかった)。

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蒲田リハビリ日記 第15回  失業見聞録 2021夏 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

血管障害でボロボロになった身体を抱え、これからどう生きてゆこうかと考える。今年53歳になる俺は、生涯を通じて「怪しく胡散臭い人や物事」を追求してきた。低次元の人や物事に偏ってしまったのは、俺自身の知的能力がひどく劣っているからだろう。スラム団地で生まれ育ち、焼肉屋とパチンコ屋に囲まれ、落ちこぼれとして小中高時代(中3二学期の内申書は「国語2」以外オール1)を過ごし、18歳上京後、日雇い労働者、クズネタ放送作家見習い、エロ本編集部アルバイト、悪趣味雑誌『GON!』の末席ライター、ブラック零細企業のコピーライターやダイレクトマーケター、低層貧民街の飲食店や非ヌキ系整体院の店舗開発と、世の中の最下層ラインを這うように生きてきたのだから。

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蒲田リハビリ日記 第17回  2021秋冬「最低・最下層・負け組」コレクション  突然のスカトロジー・ダンディズム (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

ついに自前ノートPCが故障した。数カ月前からキーボードとタッチパネルに不具合が生じており、反応したりしなかったりだったのだが、一昨日、完全に壊れてしまったのだ。ゴーストライター仕事で通っているリハビリ専門学校の共用ノートPCを借り、スマホと併用しながら、この日記を書いている。スマホにも不具合が生じており、もはや時間の問題といっていい。どちらも長く使い込んできたため、そろそろ買い換える時期なのだろう。原稿料が振り込まれるまでの辛抱だ。ただ、こうも思う。果たして理事長の自伝・自費出版本は無事、完成するのだろうか? と。

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蒲田リハビリ日記 第19回  花 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

新宿(都築響一さんの新拠点)には様々な思い出がある。南新宿や新宿御苑の近くで働いたこともあれば、花園神社の酉の市で大騒ぎしたこと(コロナ前)もある。だが俺にとって最も忘れられないのは、1988(昭和63)年5月からの2カ月間だ。当時、日雇い労働中の自損事故でアキレス腱を断裂した俺は仕事を失い、先輩AV監督の紹介で初めて特殊ビデオの撮影現場へ足を踏み入れた。肩書きは撮影助手、19歳のときのことである。都下山間部(なぜか東京都!)の商業施設を改装するため、徒歩2分のところにあった寮に転居したばかりだった俺は、職を失い、9月末日までに退去するよう命じられていた。そんななか生活費を稼ぐため、左足を引きずりながら、片道40km以上の道程を原付で東新宿の撮影現場まで通っていたのである。19歳だから出来たのだろう。53歳で半病人の現在、とてもそんな体力はない…。

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蒲田リハビリ日記 第22回  続・遊廓の童 カストリ書房から色街写真家・紅子さんの個展へ (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

大病とコロナ禍を乗り越えた2024年の俺は、首都圏であれば、どこへでもイベントや取材へ出向こうと決めた。昨年、比嘉健二編集長の出版イベントや我らが都築響一さんを迎えたトークライブへ参加し、「全然、大丈夫じゃね?」と味を占めたからである。まずはカストリ書房店主・渡辺豪さんのご著書に署名サインをいただき、その足で新進気鋭の色街写真家・紅子さんの個展にも足を運んだ。そこでもご著書2冊にサインをいただいたのだが、「俺、ただのファンじゃね?」と思いつつも、よくよく考えれば俺はただのファンでしかなく、それ以外の何者でもなかった。現在55歳の元気な身障者だ。身体障害者3段である。頭も相当弱いが、身体も相当弱いのだ。

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蒲田リハビリ日記 第18回  ポルノ映画館の上映ポスターで大人になった (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

子どもの頃から現在まで「エロ」への強い思い、愛情がある。地方の低層貧民街に生まれ育ち、肉体を売ってでも強く生きてゆこうとする女性陣に圧倒されてきたからだ。彼女たちや、彼女たちを取り巻く胡散臭い男性陣の生き様を、生きた証を面白おかしく、魅力的に書き記すことこそが、俺の唯一の存在意義であり、人生のテーマだと思っている。路地裏で怪しげな光彩を放つポルノ映画館や国鉄高架下の非合法性風俗店、密かに蠢く複数の主婦売春グループ、売春で何度も補導される女子中高生たちに囲まれて俺は成長し、その街の薄汚れた団地の悪ガキとして18歳までを過ごしたのだから。

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蒲田リハビリ日記 第21回  30年後の雑誌狂時代  都築響一×比嘉健二著『特攻服を着た少女と1825日』 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

2023年は比嘉健二編集長の出版記念イベントや、我らが都築響一さんを迎えたトークライブが開催され、アッという間の一年だった。気づいたら俺も55歳だ。高卒37年目の身体障害者として様々な痛みを抱えつつ、日々、何とかギリギリ生きている。都築さんとは3年前に一度お会いしたきりで、当然といえば当然だが、俺の顔は完全に忘れられていた。マスクを外し、すぐさまご挨拶するべきだったが、社交性ゼロの俺は会釈だけし、そのまま無言で立ち去ったのである。我ながら呆れてものがいえない。コミュニケーション能力が大切であることは、経験上、頭ではよく分かっている。だがある日突然、瞬時に対応するのは難しい。

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蒲田リハビリ日記 第23回  夜露死苦哀愁都築響一著夜露死苦現代詩 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

エロ本編集部アルバイトから悪趣味雑誌『GON!』の末席ライターになった俺は、ライターになってから文章の書き方を勉強した。通常は専門分野があり、すでに問題なく文章を書ける人がライターになるのかもしれないが、俺の場合は高卒(偏差値35)の日雇い労働者出身で、読めない漢字も多く、知識・教養もなければ専門分野もなかったため、本当の意味でゼロからのスタートだったのだ。 諸先輩方(青山正明氏や村崎百郎氏など)の文章を何度も繰り返して書き写し、構成パターンを足りない頭(俺)に叩き込んでゆく。起承転結に分けて文字数を勘定し、どこでどう工夫されているのかを分析した。その結果、青山氏も村崎氏も、同じ単語を何回も使わないように配慮されていることや、簡潔な表現になるよう、随所で「通分」されていることなどに気づいていった。文章の上手下手は国語力の問題だと思っていたが、実は数学的なセンス(の優劣)のほうが大きいと分かったのである。

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蒲田リハビリ日記 第24回  底辺のエロ事師たち 人間として最低の夏 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

いまからちょうど4年前の2020年6月、都築響一さんと蒲田の喫茶店で初めてお会いした。長年お世話になっている悪趣味雑誌『GON!』比嘉健二編集長の紹介で、記事を書かせていただけることになったからだ。持病のことや、現在、自分の置かれている状況について話すと、その場で「蒲田リハビリ日記」というタイトルを付けていただいた。自分は白夜書房(現在のコアマガジン)出身で、編集作業中、なぜか冷たい風が吹いてきたので顔を上げると、座席の横を、あの村西とおる監督が通り過ぎて行ったという話をしたと記憶している。

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)

ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。

本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。

旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。

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ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)

稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。

1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!

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ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)

プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。

これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。

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ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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