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2012年05月23日 vol.020
book
春の書評特集
身軽になりたい、モノに埋もれたくないと思っても、いつのまにか溜まってしまう本や雑誌。なかなか新聞や雑誌では紹介されない、でもみんなに知ってほしい新刊を、これから「書評特集」として、年に何度かまとめてレビューしたいと思います。だいたい500字とか1000字とかしかくれない新聞や雑誌の新刊紹介で、気に入った本のちゃんとした紹介なんてできるわけないし! というわけで、今回は4冊の写真集を選んでみました。
art
鞆の浦おかんアート紀行
今回の展覧会では、先週ご紹介した福山のアウトサイダー・ルポルタージュのほかに、鞆の浦で出会ったカリスマ・おかんアーティストたちとその作品群も展示される。アート・ギャラリーで「おかんアート」が、ファインアートに混じって展示されるのは、もしかしたらこれが初めてかもしれない。規模は小さいが、実家の茶の間やスナックのカウンターとかではなく、ギャラリーという展示空間でどう見えるのか、僕としても興味津々だ。
archive
オレサマ商店建築:ホストクラブ愛
いまだに電飾ギラギラ、そこだけエレクトリック・サーカスのごとく激しい夜のオーラを放っているのが、愛田武社長ひきいる愛田観光グループ。現存最古の老舗ホストクラブ『愛』本店を中心に『ニュー愛』、パブ『カサノバ』、おなべBAR『マリリン』など数店舗を歌舞伎町の一角に集中経営する愛田社長は、この町でもっとも知られた顔である。
2012年05月16日 vol.019
art
おとなしい顔の魔界都市:広島県福山市アウトサイダー・アート紀行
「占」「占」「占」「占」「ピタリ当たる」「神界」「大天国」「的あたーれ」・・・独特の丸文字と原色の描き文字看板で、初めて見るひとをギョッとさせ、見慣れたひとの目を伏せさせずにはおかない、あまりにインパクト充分な木造モルタル家屋が、サウナとパチンコ屋のあいだに挟まって、きょうも精一杯の自己主張を繰り広げている。ここが福山きっての裏名物『占い天界』(正式名称・新マサキ占術鑑定所)だ。
travel
街は千の目を持つ:鏡の国の路地裏紀行
江戸時代から明治・大正・昭和の建物が自然なかたちで混在する街並みは、景観保存条例などによって無菌培養のように残された街とはまたちがった、おだやかに時間が止まっている感覚がある。宮崎駿が2005年にこの街の一軒家を2ヶ月間借り切って滞在、そこで育んだ構想が『崖の上のポニョ』に結実したこともよく知られている。
archive
ニッポンの「性」を変えた目黒エンペラー
日本におけるモーテル第一号といわれる『モテル北陸』が、石川県加賀市にオープンしたのは1963年のこと。68年にはそれまでの簡素な造りから、贅沢な設備とインテリアをウリにした『モテル京浜』が開業、モーテルからラブホテル時代への架け橋となったが(いまも横浜新道脇にホテルニュー京浜として営業中)、それまでの暗いイメージを払拭する決定打となったのが、1973年に開業した『目黒エンペラー』である。
2012年05月09日 vol.018
travel
圏外の街角から:神戸市稲荷市場
三ノ宮からJR神戸線の下り電車に乗ると、数分で着いてしまうのが神戸駅。名前が示唆するように、東海道線の終点駅であり、山陽本線の始点駅である神戸駅は、かつて神戸の鉄道網の中心だった。しかし時は過ぎ・・神戸駅を南下したあたりにあった兵庫港から、神戸港に物流の中心が移ったのと同じく、ひとの流れが三ノ宮側に傾いてしまった現在、東京駅や大阪駅のような感覚で神戸駅に初めて降り立つものは、だれしもが「ここが神戸の中心!?」と絶句するはずだ。
archive
ついでに新開地にも足をのばしてみれば
かつては神戸随一の繁華街として栄えた湊川新開地商店街。昼間からシャッターを閉める商店が目立つ中で、歩道まで商品をあふれさせているのが松野文具店だ。 名前こそ文房具屋だが、店先にはカレンダーや扇子といった少々毛色のちがう商品ばかりが、商店というより屋台が壁に埋まった趣の極小空間にびっしり詰め込まれ、その真ん中にからだを丸めて座っているのが、ご主人の松野宏三さん。
lifestyle
ウグイス谷のゴム人間
深夜3時、日付が変わって5月6日になった鶯谷の「東京キネマ倶楽部」。舞台を埋めつくすのはピーコックのように、レインボーのようにカラフルなゴムの衣裳を着込み、というより全身に被せて、思い思いのポーズを決める60人近くの「ラバーフェチ」。そしてその足元に群がる、さらに多くのカメラマン、というよりカメラ小僧。なんでラバーなのかって? それは5月6日が「ゴムの日」だから。そしてここが月にいちどの『デパートメントH』だから!
2012年05月02日 vol.017
interview
コラアゲンはいごうまんの夜
このメルマガで、お笑いを取り上げることはほとんどありません。つまり、僕自身はそれほど現在のお笑いシーンに興味がないのですが、久しぶりに、このひとはすごい! と脱帽する才能にめぐりあいました。それが「コラアゲンはいごうまん」という、奇妙な芸名のコメディアンです。ご存じの方もいると思いますが、コラアゲンはワハハ本舗所属の「体験型ドキュメンタリー芸人」です。
art
三上正泰の、なんでもボールペン
昨年11月から今年2月まで、花巻の「るんぴにい美術館」という、小さなアウトサイダー・アート・ギャラリーのグループ展に参加しました。場所が岩手県なので、ご覧になれた方は多くないでしょうが、参加アーティストの中には初めて作品を見ることができた地元の作家もいて、僕としては興味津々。なかでも三上正泰さんの作品には目が釘付けになり、急いで模造紙を買ってきて、写真撮らせてもらいました。
archive
演歌歌手のオン・ザ・ロード
もともと彼女を取材した初めての機会は「カラオケファン」という月刊誌で、そのあとエスクァイア誌のために、営業の旅を追いかけて再取材、さらに去年出版した『演歌よ今夜も有難う』(平凡社刊)でも後書きに書き足しました。そして今回、写真をいっぱい足してもういちど・・しつこいけど・・それだけすごいひとが、ぜんぜん知名度ないままにがんばってるってことで、コラアゲンさんとペアで読んでいただけたらうれしいです。こういうひとたちが、ほんとは地球を回してるんだと信じつつ--。
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BOOKS
ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)
ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。
本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。
旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。
ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)
稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。
1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!
ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)
プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。
これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。
ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)
書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい
電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。
ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)
伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!
かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。
ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)
――ラブホの夢は夜ひらく
新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!
ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)
――秘宝よ永遠に
1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!
捨てられないTシャツ
70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。
圏外編集者
編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。
ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014
こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。
独居老人スタイル
あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。
ヒップホップの詩人たち
いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。
東京右半分
2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!