日常の切断面
先週は車中泊で日本中を移動しながら写真を撮り、コンビニでプリントアウトした「写真集」を喫茶店やファミレスやスナックで見せ、その「見料」で制作/生活する写真家・天野裕氏を紹介した。「移動し続けること」が…
photography 可愛くて、やがて恐ろしき堕落部屋 |
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今週あたり全国の書店に行き渡っているだろう、話題の写真集がある。先行販売している一部書店やネットでは、すでにかなり盛り上がっているその一冊は『堕落部屋』という。デビューしたてのアイドルだったり、アーティストの卵だったり、アルバイトだったりニートだったり・・・さまざまな境遇に暮らす、すごく可愛らしい女の子たちの、あんまり可愛らしくない部屋を50も集めた、キュートともホラーとも言える写真集だ。 |
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『堕落部屋』とはもともと、アイドル予備軍の女の子たちが共同生活する寮の、すさまじい状態を自分たちで名づけたものだという。半分自虐的で、半分それを楽しんでいるような、陽性のヲタク感覚が、堅い漢字の輪郭から滲み出ているようだ。 |
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オビ裏の記述によれば、それは「ゲーム機器と珍味が同居する、歌って踊れるゲームアイドル」「手作りの仮面が散乱するデザイナー」「楽屋が本日のマイルーム、ゴスっ娘大衆演劇役者」「男根がインテリア、豪邸に住む主婦」「ホラーゲームの研究をする東大院生」「お宝は、潰れたティッシュ箱の劇団員(社畜)」「大阪の馬好きポニー娘」「BL好きOL」「蒐集癖が止まらないパティシエ」「服に埋もれるアイドル」・・・と、あまりなバラエティに富んでいるのだが、こんなに興味深い女の子たちの生活空間を、顔と体の写真付きで覗き見できる! というのが本書の最大の魅力であることは間違いない。そうしてその覗き見感覚にドキドキウキウキするのは、意外に女性読者のほうが多いんじゃないかという気もする。 |
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川本史織という名前は女性と間違われそうだが、1973(昭和48)年生まれ、今年40歳のれっきとした男性カメラマンだ。生まれたのは京都、大学に入るまでは金沢で育ち、卒業後は京都でフリーカメラマンとして働いたあと、いまから7年前に上京。浅草に住み暮らしながら、撮影の仕事を続けている。 |
うちは父親の仕事が染色で、母も織物をやっていたので、小さいころから嫌がる僕を美術館に連れて行く、みたいな美術環境の充実した家庭でした(笑)。両親は金沢美大の同級生だったんですね。 |
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高校は工業高校の工芸科に進学しまして、そこでガラス・陶芸・染色と、伝統工芸をひととおり勉強しました。あと、当時はめちゃくちゃ釣りが好きで、ブラックバスがブームになる前だったんですが、一時はバスプロになろうと思ったぐらい。それで大学は、琵琶湖が近い京都精華大学を選んだんです(笑)。 |
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でも、(金沢美大には)通いはじめてすぐ、違和感があって。自分がしたいのは制作であって、勉強じゃなかったから。それであっというまに休学・・自分の気持ちとしては退学ですね。 |
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でも、師匠についてたわけじゃないから、師匠の仕事のおこぼれもないでしょ。それで大変でしたが、最初からフリーで、おもにブライダル写真とか、東京の雑誌の京都特集の写真とか撮ってました。 |
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最初の半年はひたすら営業で。仕事はぜんぜんなくて、貯金の取り崩し生活で焦りましたが、徐々に仕事をもらうようになって。そこで大きな転機になったのが、台東区がクリエイティブ系の起業支援でやってる、デザイナーズビレッジというのがありますよね。その第2期に入って2年間いまして、そこで一気に人脈が広がったんです。 |
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そうやって写真が貯まってきて、自分でジンとかも作ってたんですが、やっぱり写真集にしたくなりますよね。そのときにいまの出版社(グラフィック社)から、ポーズ集をアイドルでできないかというお話が来たんです。 |
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だからもう、決まってからは必死でした。交渉から撮影まで、ぜんぶひとりでやったので。11月の半ばになって、やっと目処がついたぐらいです。発売が1月なのにギリギリで・・。 |
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上野御徒町の裏手、古いビルの上階に川本さんはスタジオを構えている。がらんとした部屋の片隅には姿見とホットカーペットが敷いてあって、「ここは冬、寒いんで、待ってるあいだに風邪引かないようにと思って敷いてるんですけど、このうえで寝ちゃう子とかいるんですよ」という、なんともフレンドリーな雰囲気だ。 |
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先週は車中泊で日本中を移動しながら写真を撮り、コンビニでプリントアウトした「写真集」を喫茶店やファミレスやスナックで見せ、その「見料」で制作/生活する写真家・天野裕氏を紹介した。「移動し続けること」が…
写真ファンならご存じだろうが、東京新宿一丁目あたりには写真専門のギャラリーが何軒か集まっている。中にはひとつのビルに複数のギャラリーが入っていることもあるので、ついでに覗いてみた展覧会で予期せぬ出会い…
最近、街の若い子たちがよく着ているコーディネートに、既視感を覚えています。私が高校生の時に流行ったスタイルだからです。流行は繰り返す、を実感しています。このままいくと、次は「エビちゃん」ルックが来るか…
ペットショップに行くと、犬種による性格の特徴が紹介されているのを見かけます。 トイ・プードルは温厚で友好的。柴犬は忠誠心が強く、飼い主にしか懐かない。ダックスフンドは甘えん坊、などなど。 こんな説…
1982年生まれ/旭川市出身/札幌市在住/アーティスト。取材日:2020年10月19日/写真とインタビュー:池田宏/インタビュー構成:浅原裕久。…
ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。
本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。
旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。
稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。
1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!
プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。
これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。
書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい
電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。
伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!
かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。
――ラブホの夢は夜ひらく
新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!
――秘宝よ永遠に
1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!
70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。
編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。
こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。
あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。
いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。
2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!