ハダカのこころ、ハダカの眼 04 絵描きの日田さん(写真・文 牧瀬茜)
「ストリップが新聞で取り上げられるなんて摘発のときだけですからね。画期的なことだと思います。素晴らしいことです」少し興奮した様子の日田さんは、胸の内ポケットから手帳を出し、その中から丁寧に折りたたまれ…
lifestyle 新連載! 新宿区立総合天然宙屯地 1 埴輪ハウスの思い出 (画・写真・文:小指) |
「小指」と名乗るアーティストと出会ったのは1年ほど前だった。音楽の印象を絵にするというシリーズの展示で、その奇妙な美しさに惹かれつつ、自費出版でつくってきたイラスト入りの旅日記には、淡々とした文章のなかに、若さに似合わぬつげ義春的な昭和の哀愁が隠れていて、すっかり感心してしまった。こういうひとがメルマガに参加してくれたらいいな~と思い、喫茶店でおしゃべりしているうちに、むかし住んでいたという新宿のアパートの話にこころをつかまれ、寄稿をお願い。それからしばらく連絡が途絶えてしまい、どうしたんだろうと思っていたところ、友人の展覧会場で偶然再会。「あれからいろいろ書いてみたんですけど、書きたいことがありすぎてまとまらなくて……」と言うので、まとめなくていいからとにかく送ってください!と強くお願いしたら、4万字近い長編原稿を届けてくれた。 |
|
埴輪の家 |
大学を卒業し、ろくに就職もせずフリーターをしていた頃、私は歌舞伎町から徒歩数分のところにあるほったて小屋のような木造一軒家に住んでいた。 |
|
そして、この家の一番変わっているところは、家の周りに沢山の謎の「埴輪」が置かれていたことだった。それも、1体や2体ではないのだ。玄関先や家の前の私道にはいつも10体近い埴輪が並べてあり、多い時には30体近くもある時さえあった。しかも、それは夜になると忽然と姿を消し、朝になると出てくるのでなお不気味だった。 |
|
ちなみに、大家いわく、この家の契約期間は「下の階に住むじいさんが亡くなるまで」ということだった。この時は「また大袈裟に言っているな」とは思っていたが、大家は内心この家を早く建て替えたいらしく、とはいえ1階のじいさんがいる間は追い出すわけにもいかないので、その間だけ空き部屋だった2階を私に貸してくれたらしい。だからあながち冗談でもないようだが、それが本当であれば、もしじいさんの身に何かあった時は私もまた引っ越しをしなければならないということだった。 |
なぜここに住み始めたか |
子供の頃から憧れていた作家のように、私も学生時代のうちにデビューしたり、なにかしらの活動の足掛けのようなものが見つけられたらと思っていたが、どうやら自分はそっち側の人間ではないらしいとやっと自覚した頃にはもう大学卒業が間近に迫っていた。すっかり勘違いしていた私はもちろん就活などもしておらず、この先どうしようかなとやっと考えだした時に東日本大震災がきて、世の中の混乱に乗じて私はところてんが押し出されるようにぬるっと社会に出ることになった。 |
|
その時、ちょうどよく美大時代の同級生から電話が来た。その子のバイト先のスナックが人手不足で、暇なら一緒に働いてみないかという誘いだった。きっとどこかで私がまだフラフラしてると聞いて連絡をくれたのだろう。「時給は安いけど楽だよ」なんて言うが、聞くと普段の私のバイトの2倍の時給だった。 |
|
翌日、内見のため教えてもらった住所へと足を運んだ。歌舞伎町から日清食品の本社のある通りを渡ると、急にそれまで騒がしかった街の雰囲気がガラッと変わり、古い家屋がポツポツと目立ち始めた。新宿は世界堂へ画材を買う時によく降りていたが、ここまで奥の方へ歩いたのは初めてだった。途中、青いビニールシートがかけられたゴミ屋敷とも廃墟とも見分けのつかない家があったり、最近では珍しい共同玄関のアパートがあったりと、新宿にもこんな一帯があるんだなあと感心しながら周辺を歩いた。 |
|
そうして私は、早速この家に住み始めるようになったのだが、いざ住んでみるとあんなに疑ったのが申し訳ないくらい埴輪のじいさんは普通にいい人だった。変わっているところは、ただ異常な量の埴輪を所持しているだけのようである。 |
|
「ストリップが新聞で取り上げられるなんて摘発のときだけですからね。画期的なことだと思います。素晴らしいことです」少し興奮した様子の日田さんは、胸の内ポケットから手帳を出し、その中から丁寧に折りたたまれ…
犯罪者は現場へ戻るというが、戻りたくなくても長い年月を経て、否応なく戻されてしまうこともある。ロス疑惑の三浦和義がそうだったように。俺はそんな大物ではなく、笑ってしまうような小物だが。 見渡すか…
4月のワイドショーの主役は例の神奈川の中学の元校長。1万人以上のフィリピン女性とやりまくり、しかもご丁寧にその相手との「思い出のアルバム」を年代順にファイルしていたというから、そこらへんのエロ本編集者…
首くくり栲象さんが亡くなった。『独居老人スタイル』で取り上げたので、ご存じのメルマガ読者もいらっしゃるだろう。1947年生まれだからまだ70歳だろうか、いかにも早すぎる。首くくり栲象(たくぞう)さんの…
AVという世界。素人といっても企画女優が出ていることもあるし、どこまでが本当でどこまでがフィクションなのかは分からない。だが、私が知る限りこのRYU氏、「RUBY」の「ジゴロRYU氏の秘蔵映像コレクシ…
ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。
本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。
旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。
稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。
1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!
プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。
これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。
書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい
電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。
伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!
かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。
――ラブホの夢は夜ひらく
新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!
――秘宝よ永遠に
1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!
70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。
編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。
こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。
あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。
いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。
2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!