私の特別な人を編んでください!――編み物☆堀ノ内の「肖像編み物」 第2回 手塚治虫/手塚るみ子(プランニングプロデューサー) (文:手塚るみ子、川上雅乃 写真:久富健太郎)
編み物☆堀ノ内からお客様のご紹介: 今週のお客様の手塚るみ子さんはマンガの神様・手塚治虫先生のご息女です。プランニング・プロデューサーとして、治虫先生にまつわる企画展など、さまざまな企画を手掛けてお…
design 裸眼の挑戦——若生友見とragan books |
|
新国立競技場問題でいま話題の神宮外苑の一角で(日本の建築家オヤジって、自分たちは海外でさんざん好き放題やっときながら、よく言うよな~)、この秋に開かれた東京アートブックフェア。ドキドキクラブや公園遊具の木藤富士夫など最近のメルマガで紹介した写真家、アーティストに何人も出会うことができたが、たくさんのブースのなかで、びっくりするほどシャープというか、クレバーなデザインのジンを並べているテーブルがあった。 |
|
仙台市の郊外とも言える七ヶ浜は、松島のすぐ南側に位置する、ウィキペディアによれば「東北地方の市町村のうちで最小の面積」を誇る町。事前に若生さんに「どこでお会いしたら?」と伺うと、「町内にカフェとかないので、公民館内の生涯学習センターで」と言われたほど、まあひなびた場所ではある。七ヶ浜も震災で大きな被害を被ったが、若生さんの実家はすぐそばまで津波が来たものの、わずかな差で九死に一生を得たという。インタビューのあと、被害を受けた海沿いを案内してもらったが、そこにはいまだガレキを片付けただけの、荒涼とした空き地が見渡すかぎり広がっていた。 |
小さいころから、絵を描くのは好きだったんです。それもあったのと、あと制服を着るのが嫌で、高校は仙台の宮城野高校美術科に行きました。お母さんも、「自分は会社勤めのときにやりたいことがやれなかったから」って応援してくれて。 |
|
そのあと・・・東京には行きたくなかったんです(笑)。理由は、ゴキブリのいるところが嫌で! それで七ヶ浜の実家に戻ってきて、昔のテキストを引っ張りだして勉強しなおして、学習塾の先生になっていま2年目。毎日、学校が終わる4時ごろから、10時ごろまで英語を教えてるんです。 |
若生さんが運営するragan booksのウェブサイトには、その趣旨がこう書かれている―― |
色眼鏡をはずして、もう一度よく見てみよう。 |
|
たとえば開店祝いや葬式の花輪とか、道路上のサインやお惣菜のプラ皿や、日常生活のなかで出会う異様なデザインはたくさんあるのに、それがあまりにも日常的であるために、僕らにはもうそれが「異様」には見えなくなっている。日本にしか存在しないものであるとも、認識しなくなっている。大学院在籍当時の研究発表で、若生さんはそれをこんなふうに表現していた―― |
デザインと離れた世界にいる一般の人々は、世界のあらゆる物に人の手が加わっているということを、ほとんど意識せずに生活をしているのではないか?と思う瞬間が今までに何度かあった。 |
「慣れ」という色眼鏡。それを裸眼で見たらどうなるかと問いなおす試み、それが ragan books の挑戦なのだった。 |
それで大学院に在籍していた2010年から、当時2回めだった東京アートブックフェアに出すようになりました。それが秋なので、あとゴールデンウィークにあるイベントと、年2回は出展するようにして、それにあわせて新作をつくるようにこころがけてます。 |
|
これまで20冊ほど発表された若生さんの作品集は、しかしブックフェアなどのイベントと、あとは本人のウェブサイトでしか購入することができない。 |
一冊ごとにだいたい20~30部ほど、オンデマンドで制作しまして、それを700~1000円で販売してます。つくってるのは自宅の6畳間、それが倉庫兼寝室兼作業場ですね(笑)。 |
|
テーマの設定から始まって、撮影、デザインから販売サイトの構築、受注発送まで、若生さんはragan booksのすべての作業をひとりで、七ヶ浜の自宅でこなしている。学習塾での授業の合間に。それは個人の情熱とセンスと、コンピュータとインターネットというテクノロジーの、もっとも幸福な結合の一例でもある。 |
|
[ragan books no.01~20 一挙紹介ギャラリー] |
|
ragan books 公式サイト:http://raganbooks.net |
[一緒にこちらも!:manifesto] |
|
七ヶ浜町で山と積まれたragan booksを見せてもらいながら、「実は前にこんなのも・・・」と、若生さんはひとつのファイルを見せてくれた。2011年に展覧会のかたちで発表された、『manifesto』と題されたインスタレーション作品。42枚のポスターと、一冊のミニブックからなる展示なのだが、それはなんと、選挙ポスターとピンクチラシにぼかし加工を施すことによって、両者がほとんど同一のセンスと美学(のなさ?)によって生まれたことを示す、恐るべきデザイン・サーベイだった! |
|
5年ほど前、酒田市で出会った市議選の掲示板が、制作のきっかけになりました。一度に多くても10名くらいの候補者ポスターしか見たことのなかった田舎育ちの私にとって、この立候補者数は衝撃だったのです。 |
|
それぞれの選挙ポスターは、ぼかして情報量を減少させることによって、にわかにひとつのデザイン・フォーマットとして立ち現れる。候補者の名前も、顔かたちも漠然となった平面に配置される、写真と文字と色彩の組み合わせ。それは日本全国でこれまで何十年、何千何万枚と繰り返され、強化されてきた、もっともポピュラーなローカル・デザインだ。そしてもちろん、同様の処理を施されることによって、劇的なまでに選挙ポスターと似通ってくるピンクチラシもまた。 |
|
候補者は我々市民の目につくようにインパクトのあるポスターを制作しますが、一定のフォーマットの中で作られている物がまだ多く、更に私たちの目は「選挙ポスターはこういうものである」という認識でもって見ているので、フォーマットから大きく逸脱しない限りは、風景の中で調和を乱す存在になろうと、特に疑問にも思わずに見ることが出来てしまう、という点が以前から気になっていました。 |
「パロディやジョークに見られたくなかったから、ベニヤの掲示板には貼らなかった」と、若生さんは当時のメモを見せてくれた。風刺でも批判でもなく、疑問を喚起すること。そのままragan booksに受け継がれるこのアティチュードによって、若生友見というデザイナーは、きわめて戦闘的な挑発者でもあり続けるのだ。 |
|
編み物☆堀ノ内からお客様のご紹介: 今週のお客様の手塚るみ子さんはマンガの神様・手塚治虫先生のご息女です。プランニング・プロデューサーとして、治虫先生にまつわる企画展など、さまざまな企画を手掛けてお…
吉岡里奈展が開催される幡ヶ谷パールブックショップ&ギャラリーでは、その前週に吉岡さんの「発見者」とも言える山口“グッチ”佳宏による『Kawaii!! 童謡レコジャケの世界』展が開催されるので、こちらも…
高校二年生の頃だった。 ブレザーの制服を着て、世田谷の都立高校にむかう通学電車。いつものように吊り革につかまっていると、隣町の制服を着た見知らぬ少女に背後から突然声をかけられた。 「あなた、東…
今月から12月まで、この連載「デザインの世間体」の中で特別編「我が青春のバイブルよ永遠なれ!」を開始します! 私は8年前からアートトラック(デコトラ)の月刊専門誌『カミオン』の編集に携わっていま…
千葉・佐倉の国立歴史民俗博物館で『ニッポンおみやげ博物誌』が7月から開催中。今月17日までと気がついて、急いで行ってきた。昨年末は1960年代後半の学生運動・市民運動に焦点を当てた『「1968年」-無…
ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。
本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。
旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。
稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。
1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!
プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。
これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。
書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい
電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。
伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!
かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。
――ラブホの夢は夜ひらく
新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!
――秘宝よ永遠に
1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!
70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。
編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。
こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。
あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。
いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。
2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!