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フクサコアヤコ

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新連載! 妄想ホテル (写真・文:フクサコアヤコ)

写真家のフクサコアヤコさんと出会ったのは数年前。あるフェティッシュ・イベントだったか、フェチ話で盛り上がった酒の席だったか記憶が定かではないけれど、その題材も本人の存在感もすごくセクシーで、でも卑猥というのもちがう、エロいけど、どこか爽やかな微風も感じられる……女が撮る女のイメージに魅せられた。 そのときはラブホテルで、モデルに志願した女の子たちを「ひとりひと部屋」で撮影するというシリーズを見せてもらったのだが、最近久しぶりにお会いしたら「男の子も加えてホテル・シリーズを再開してます」と言われて、その場でメルマガで連載をお願いした。これから毎月いちどずつ、ひとつの部屋で、ひとりの女や男とフクサコさんが出会い、交わり、別れていく物語をお送りする。さて、そのひとりめは……。

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妄想ホテル room 002「東京」をあきらめると彼女は言った (写真・文:フクサコアヤコ)

今年の桜は早咲きで、春を待たずに散ってしまうような気がして落ち着かない日々を過ごしていた。そんな3月の終わり、一通のメッセージが届いた。 「東京を離れることにしました。最後に撮ってもらえませんか」 浅葉爽香、ラッパー、ポエトリーリーディング、詩を纏うキメラ、文字と肉体の表現者からの依頼だった。 彼女とは数年前、劇団の撮影を通じて知り合った。そして去年の夏、彼女自身からの依頼で彼女のミュージックビデオ「無修正ポルノ」に挿入するスチール写真を撮り下ろしていた。

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妄想ホテル room:003「もうこれで死んだ後のことを頼まれなくてもいいんだね」と彼女は言った (写真・文:フクサコアヤコ)

今回は少しプライベートな話をしたいと思う。 私フクサコアヤコが、ここ数年体験したこと、そしてそれをおそらく一番近くで見守っていたであろうモデルの話である。 長い間コンスタントに撮り続けているモデルがいる。名前はテレジア、商業コスプレイヤーでもある彼女はれっきとしたプロのモデルだ。 そんな彼女との出会いは7年前。 撮影の現場で何度か顔を合わせてはいたが、言葉を交わすほどではなかった。 そんな中、彼女がネットで見かけた私の作品を気に入ってくれて、私の出版イベントに来てくれたり、撮影中もいろいろ話すようになったりと、2人の距離は徐々に近づいていった。

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妄想ホテル room:004 「ここにあなたは確かにいるよ」そういう気持ちでシャッターを押している (写真・文:フクサコアヤコ)

今年の東京は梅雨入りが遅く、始まりそうで始まらない雨の季節を待ちながら、私は少し焦っていた。 もちろん雨が降らないことに対する焦りではない。定期的に訪れる「自分の写真このままでいいのか問題」にぶち当たっていたのだ。それに伴ってこの連載のテーマにも悩んでいた。 私は世間的には「エロい写真を撮る女性カメラマン」と思われている。 自分ではことさら「エロ」を意識しているわけではないのだが、比較的多めな肌色の割合と写真から漂う湿度のせいでそのように認識されているように思う。 そのおかげで撮ってほしいと言ってくださる人も一定数いて、妄想ホテルシリーズが存続している。

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妄想ホテル room:005  誰もが曖昧なまま生きている (写真・文:フクサコアヤコ)

梅雨が明けた。 今年は毎日雨が続く梅雨らしい季節だったと思う。そんな中オリンピックを控えた東京では4度目の緊急事態宣言が発令された。 飲食店には時間短縮もしくは休業が要請され、私も7月後半に予定していたイベントの中止を余儀なくされた。 そのイベントとは私が主宰を務めるPhoto’sGateという団体で定期的に行っている写真交流会のことである。 Photo’sGateの写真交流会は写真を撮る人、撮られる人、写真を使って何かしたい人がゆるく集まって交流する会で、もう10年近く続いている(現在は不定期開催)。

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妄想ホテル room:006 人生はSM だけど今は少しだけハードモード (写真・文:フクサコアヤコ)

「人生はSM」。かつてそう語ってくれた女王様がいた。 新宿パラフィリアの女王、エリカ様だ。 日常のどんな出来事もSMに例えて「これはこういうプレイ」と割り切れば、人生は少しだけ楽しくなる、とそんな話をしてくれた。 私もなるほどなあと感心し、それからはちょっと大変なことやツラいことがあっても「これはそういうプレイ!」と自分に言い聞かせるようにした。そうしたらツラいことも少しは楽しめるようになった気がした。

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妄想ホテル room:007 ハトが見たヒトの世界はロストコミュニケーション (写真・文:フクサコアヤコ)

子どものころ、フランスではハトを食べるということをテレビで知って、翌日公園のハトを捕まえて家に持ち帰ったことがある。 今考えたら諸々アウトだが、子供のすることである。もちろん親にこっぴどく怒られた。 流石に大人になった今では、公園でのんきにえさをついばんでいるハトは食べれたもんじゃないと理解しているが、それでもお腹がすいているときなどにはぎらぎらした目で見てしまう時もある。 そんな私とハトとの関係だが、偶然にも私にはハトの友人がいる。 たまにパフォーマンスに出てたりするが普段何をしているのかはよく知らない。そういえばヒッチハイクでNYへ行ったりもしていたな。 友人であるハト、豆山はハト目ハト科、学名はmameyama。

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妄想ホテル room:008 二足のわらじで駆け抜けろ!人生を2倍楽しむ方法 (写真・文:フクサコアヤコ)

突然だが私はこう見えて(?)仕事人間である。 仕事と言っても写真の方ではなく、通常のオフィスワーカー、いわゆるOLというやつである。 私は専業カメラマンではない。写真を初めて20年以上になるが、常に写真活動と並行して写真とは別のフルタイムの仕事に従事してきた。 時には正社員として時には契約社員として、雇用形態を問わず基本的には月曜から金曜の日中はいわゆる「会社員」として写真とは関係のない仕事をしながら過ごしているのである。 このように昼はOL、夜はカメラマンとして常に二足のわらじで歩いてきた私であるが、常々仕事について思うところがあり、今回はそれについて語ってみたいと思う。 少々堅苦しい話にはなるかもしれないので、その分今回のモデル、謎のラバー美女ナマダメタボさんのクールなラバー姿とファニーな表情のギャップをお楽しみいただきながら読んでいただけると嬉しい。

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妄想ホテル room:009  闇から光へ。進化したきのことポリアモリーの話 (写真・文:フクサコアヤコ)

2021年も終わろうとしている。 4月にこの連載が始まり9人の方(ハト含む)とラブホテルの一室で濃密な時を過ごさせていただいた。 イケメンモデルとの疑似恋愛から始まり、ラッパー、アイドル、女王様、ハト、といろんな被写体を撮影させていただいた。実にバラエティ豊かな交流だったと思う。 そんな今年のラストを飾ってくれる被写体はきのこである。しかもただのきのこではない。闇から光へと進化を遂げたきのこである。 しかもこのきのこには恋人が複数いる。何のことだかわからないかもしれないが、今回も最後までお付き合いいただけたら嬉しい。

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妄想ホテル room:010  女の一生とセルフポートレート (写真・文:フクサコアヤコ)

2022年が始まった。新しい年になり連載も10回目となった。 今年もラブホテルの一室で、カメラのレンズを通して人の人生をそっと覗いていきたいフクサコです。 そしてその濃密な空気を記録し、少しでも皆様にお届けできれば。そんな想いで今年もがんばってまいりますのでお付き合いのほどどうぞよろしくお願いいたします。 さて、新年一発目のテーマはセルフポートレート。 実をいうと私自身はセルフポートレートというものが大の苦手である。 元々は写真に写るのが苦手すぎて撮る側に回っているうちに写真が人生の一部になってしまった人間である。そんな私から見るとセルフで撮れる人ってすごいなと常々思っていたし、どういう心持ちで撮っているんだろうという単純な興味もあった。

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妄想ホテル room:011  女優という生き方~心の中に小さな女優を (写真・文:フクサコアヤコ)

ところで、皆さんには生まれ変わったらなりたいものはあるだろうか。 私にはある。私は生まれ変わったら女優というものになってみたい。 少女時代「ガラスの仮面」という漫画に夢中になった。北島マヤという天才的に演技の才能がある少女が様々な苦難を乗り越えて女優になる物語だ。 日本少女漫画史に燦然と輝き、今なお続いている驚異の演劇大河ドラマ。そう何を隠そう私はガラスの仮面世代のど真ん中である。 だが、少女ながらに自分は女優にはなれないとうすうす気づいてしまった私は、女優は無理でもせめて別の形で演劇の世界にかかわりたいと脚本(のようなもの)を書き始め、友達と演劇部の真似事をしたりしていた。 時は流れ大人になった私は案の定女優にはなれず、脚本も書けなかった。だが幸運なことに私には写真があった。舞台やイメージビジュアルの撮影などで夢であった演劇や舞台そして夢だった女優と関わるようになった。

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妄想ホテル room:012  不倫とは何か 愛の過剰供給説 (写真・文:フクサコアヤコ)

既婚者の約4割が不倫しているといわれている現代、私の周りにも夫以外の男性と関係を持っている女性は少なくない。 そして仕事がらなのか、単に話しやすいのか、そういうことを話しても大丈夫な人と認定されやすいのか、不倫話を聞かせていただくことが多い。 そんな中で前々から不倫には2パターンあると感じていた。 現状に不満があって現実逃避として不倫に走るケースと、何の不満もなく幸せな暮らしを送っているうえでさらにもっと刺激を求めてしまう恋愛欲(性欲も含む)が強いケースだ。 私はこれらのケースを前者を不幸型、後者を幸せ型と呼んで区別していた。

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妄想ホテル room:013 「かわいい」の秘密 (写真・文:フクサコアヤコ)

季節はすっかり春。 春と言えば出会いと別れ、そして何といっても恋の季節である。 普段恋とは無縁の私でさえ風に散る花びらを見ながら移ろいゆく人間模様に思いをはせる、そんな季節が今年もやってきた。 春になると私には花粉症とともにもう一つ発症する発作のようなものがある。それは無性に「かわいい」が欲しくなるという発作だ。 こうなるとかわいいもの、かわいい人、かわいい服、かわいい食べ物…と、とにかくかわいいものに目が行くようになる。心と体が全力で「かわいい」成分を欲するのだ。

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妄想ホテル room:014  たまにはラブではないホテル (写真・文:フクサコアヤコ)

「○月○日 ○○ホテル、どうですか?」という短いメッセージが届く。 私は予定を確認してOKの返事をする。 たったこれだけのやり取りでここ数年撮影を続けている人がいる。 特にどう撮ってほしいとも、撮った写真が欲しいとも言われない。ただ「撮ります?」と連絡をくれるのだ。 ヒルトン、プリンス、マリオット、ハイアットリージェンシー、シェラトン、アンダーズ、椿山荘…彼女が宿泊するのはラブではない普通のホテル。しかも一度は泊まってみたい憧れのホテルばかりだ。

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妄想ホテル room:015  妄想ホテル出張編~どこにでも行くよ、撮ってと言ってくれる人がいる限り (写真・文:フクサコアヤコ)

その日、私は甲府へ向かう特急かいじの中にいた。 ゴールデンウィーク終盤ということもあり下りの車内はそこそこすいていた。電車で食べる用に買ったお菓子を立川あたりで早々に食べ終わってしまった私はすっかり手持ち無沙汰になり、今回の撮影依頼のメールを読み返した。 「フクサコさんに撮ってもらわなきゃ自死するな、と焦燥感に駆られながらメッセージを打っています(いつもお願いするタイミングが重めですみません)。交通費もろもろお支払いするので、山梨で撮っていただけませんか」 昨年4月、「東京をあきらめる」と言って地元山梨へ帰ったラッパー、浅葉爽香からの依頼だった。

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妄想ホテル room:016  彼女の失踪 (写真・文:フクサコアヤコ)

土曜日の朝、こんがりと焼けたトーストとウインナーを、買ったばかりの小鳥の絵柄の皿に盛りつけた。記録のために写真を撮っておこうと携帯に手を伸ばして、メッセージが届いていることに気づいた。 「今日の撮影よろしくお願いします」。その日午後に撮影予定のモデルさんからだった。 2度のリスケを経ての今日の撮影である。しかし彼女を撮影するにあたって、撮影の中止やリスケは織り込み済みのことだった。 なぜなら彼女のプロフィールには、被写体をやっていることに加え、クローン病で体調が安定しないこともあると併記されていたからだ。 クローン病……調べてみると「大腸及び小腸の粘膜に慢性の炎症、または潰瘍をひきおこす疾患」とある。原因は不明、難病に指定されている。

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妄想ホテル room:017  夏の始まり、ラブレター (写真・文:フクサコアヤコ)

ラブレターをもらった。 それは春の終わりのことだった。 そのころの私は定期的にやってくる「自信喪失期」に突入していて、もう写真など撮っても意味がないのだと毎日くよくよして過ごしていた。 そんな私にまるで救いの手を差し伸べるようにある日ラブレターが届いた。 それは、とある詩人から送られてきたメッセージだった。 そのラブレターには、「お忙しい中ただのラブコールですいません」という前置きの後、作品のファンであること、いつか撮られてみたいとひそかに憧れていたこと、そしてそんな気持ちだけでも伝えようと連絡してみました、と綴ってあった。 詩人ノミヤユウキ。彼女とはかつてある企画を通してコラボしたことがあった。 その企画で私は写真を、彼女は詩を担当していた。会ったことがあるのはたしか一度だけだったが一緒に作り上げたものが私たちの間には確かにあった。

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妄想ホテル room:018  ハッピーエンドは終わらない (写真・文:フクサコアヤコ)

その日私は渋谷にいた。 人でごった返すハチ公広場を横切り道玄坂方面に向かう。 この日は夜から雨の予報だったが、スクランブル交差点上空の雲はギリギリのところで持ちこたえていた。 今日は外でも撮るだろうから、何とか最後まで持ってくれるといいな。 私は祈るような気持ちで暗い雲を睨むと振り切るように丸山町のラブホテル街へと足を進めた。

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妄想ホテル room:019  人妻逃避行 世界旅行みたいなランデブー (写真・文:フクサコアヤコ)

「逃避行」という言葉には魔力があると思う。 人はいつだって逃げたい現実と向き合いながら生きている。 そんな生活に疲れ果てた時、ふと、すべてを捨ててここではないどこかへ行きたい衝動にかられたことが誰にでもあるのではないだろうか。 今回はそんな衝動に駆られた人妻の秘密の逃避行のお話。

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妄想ホテル room:020  女体持ちのオートガイネフィリアと町田デート (写真・文:フクサコアヤコ)

新宿から快速で30分。 思っていたより遠くないのだなと思いながら、私はその日初めて町田の地に降り立った。 駅前は栄えており、その賑わいは神奈川県に間違えられる立地でありながらも確実に東京の郊外都市としての気概を感じるものだった。 さらに町田は宇宙人多発地帯でもあるらしく、行政による注意喚起のポスターなどが掲示されていた。不思議な街だなと思いながらも好感を持った私は待ち合わせのJR町田駅の改札へ向かった。 「撮影の日は女装していきますね!」という事前のメッセージ通り、待ち合わせ場所にはガーリーな服に身を包んだ彼女が立っていた。 それは私が知っていた彼女とはあまりにもかけ離れていたため、声を掛けられるまで彼女と気づけなかったほどだった。 女性なのに女装?と不思議に思っていた私だが、後に彼女がその言葉を用いた真意を知ることになる。 果たして人形のような彼女と合流した私はラブホテル街へと向かった。

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妄想ホテル room:021  「はだかは普通」ラブホテルの一室で全裸の人と友達になった話 (写真・文:フクサコアヤコ)

その日フクサコは悩んでいた。 私には年に数回、どうしようもなく写真を撮りたくなる時期がある。それはまるで発情期のように唐突にやってきて私を撮影へと突き動かす。そんな時は軽い気持ちでネットで相手を探したりする。今回も欲望のままにSNSに「軽率に撮影に誘ってください」と投稿したところ、本当に数名の方が軽率に誘ってくださった。 今回のモデルさんはその中の一人。圭子さんといって福岡で被写体活動をされている方だ。 今度東京に行く予定があるので、撮影しませんかー?とお誘いいただき、いいですねーしましょう!しましょう!とあっさり撮影が決まったのだ。 そしてここで私はある問題に突き当たった。 実はこの圭子さん、「はだかは普通」というスローガンを掲げて活動されている、裸多めのモデルさんである。いや、裸多めというか、むしろ裸が基本のナチュ裸リストさんなのである。 一方の私、エロとその界隈を取り扱う作家でありながら、基本的に全裸は撮らない作風。厳密に言うと全裸はOKだが乳首とヘアーはNGというマイルールがある。

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妄想ホテル room:022  人との出会いは不思議 ホテルの部屋でお菓子のような甘い夜 (写真・文:フクサコアヤコ)

とある夜。ここは渋谷のラブホテル。 いつものように連載用の撮影のはずだった。 なのになぜ、私は今シャンパングラスを片手に、全身生クリームまみれで笑っているのだろう。 しかも私はいつの間にか見覚えのないTシャツ一枚という姿になっていた。下着はつけていない。 Tシャツと皮膚との間で人肌に温められた生クリームが行き場を失ってさまよっている。 そして私の目の前には同じく色とりどりの生クリームを身にまとい、私の肌に生クリーム越しに触れている女性。いったい彼女は誰なのだろう。目が合うと彼女はにっこりと笑って「キモチイイデショ?」と言った。 バスルームの赤いタイルに照明が反射して、視界がとろりと溶けた。

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妄想ホテル room:023  高校教師がヌードになる。それくらい世界は自由で楽しいと知ってほしい。 (写真・文 フクサコアヤコ)

ある日一通のメッセージが届いた。 「来月東京へ行きます。また撮っていただけませんか」 地方都市で高校教師をしている女性からのメッセージだった。 彼女との撮影はこれが初めてではない。以前、学校の夏休みを利用して上京した彼女をラブホテルで撮影したことがある。その時も今回と同じように彼女はきっぱりと「ヌードでお願いします」と言った。 なぜ高校の教師がヌードになるのか? 不思議に思いつつも高校教師という言葉に甘い背徳感を覚えつつ撮影したのを覚えている。 話を聞いていくうちに彼女がなぜヌード撮影をしようと思ったのか知ることができた。 「高校教師がヌードを撮られるということ」にはAVのシチュエーションとは違う教育現場に立つ彼女なりの思いがあったのだった。

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妄想ホテル room:024  タトゥー奇譚 女は海をさまよう小さな舟 (写真・文:フクサコアヤコ)

新宿ゴールデン街。その日私は難航していた仕事が少し進んだことに気をよくして、久しぶりに知り合い(と言っても毎週水曜日にカウンターに立っているという情報以外何も知らない)の店へと足を向けた。 週の中日とあってか22時を過ぎた店内に客は少なかったが、ゴールデン街においてはこれくらいが通常営業だろう。もっとも7~8人も入れば満席になる小さな店だ。仕事帰りのサラリーマンらしき人々が一人入ってきては一人出ていくといった様子をカウンターの隅でぼんやりと眺めながらグラスを傾けていた。 3杯目のグラスを受け取ったその時、一人の女が入ってきた。外は雨が降り始めたのか女は湿った空気を纏っていた。

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妄想ホテル room:025  懺悔 歌舞伎町やさぐれシスターへの告解 許されたい罪と揺れる真っ赤な嘘 (写真・文:フクサコアヤコ)

大都会東京、人々の欲望渦巻く歌舞伎町のはずれに、時折現れる懺悔バーがあるのをご存じだろうか。 そこはシスターアンネの懺悔バー。罪を背負った人々の前に気まぐれに扉を開くその店ではやさぐれシスターがあなたの告解を聞いてくれる。 懺悔したい人は懺悔をしてその罪を少しでも軽くすることもできるし、もちろんなにもせずだまって酒を飲むだけでも構わない。もちろんノンアルコールでもOKだ。 そこではただやさぐれシスターが静かに微笑んであなたの罪に優しく寄り添ってくれるのだ。

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妄想ホテル room:026  喪失とヌード 遺族として生きていくこと 彼女がヌードになる理由 (写真・文:フクサコアヤコ)

皆さんは親しい人を失ったことがあるだろうか。 それも突然に。続くと思っていた日常が、ある日突然ぷっつりと途切れる形で。 近しい人の喪失は大きな悲しみと同時に混乱をもたらす。自分の人生の意味を覆すほどの。 今回はそんな経験をした一人の女性の話だ。 私は初めて撮影するときに必ずする質問がある。それは「なぜヌードを撮られようと思ったのか?」という質問だ。 今回の被写体であるひかるさんの答えは想像をはるかに超えるものだった。 そこには生と死にまつわるリアルな物語があった。

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妄想ホテル room:027  愛人という生き方  (写真・文:フクサコアヤコ)

何がきっかけだったかは覚えていないが子どものころから「愛人」という生き方にあこがれていた。 結婚というものに今一つ夢を持てなかった私は、将来誰かの愛人になって暮らすのも悪くないと自分の器量を棚に上げてぼんやりと夢想していた。 果たして大人になった私は、愛人になるほどの器量もないと身の程を知り、さらに愛人というものはどうやらそこまで楽な稼業ではなさそうだと気付き、愛人になるという夢は潰えた。けれど「愛人」という言葉の持つ甘やかな響きだけはかつての憧れとともに私の中に残っていた。 どうやら自分は愛人にはなれそうにないと気付いてしまった私であったが、忘れられない2人の愛人との出会いがあった。 いつかそのことについて書きたいと思っていたところ、ちょうどテーマにぴったりの方を撮影する機会があったので事情を話してモデルを引き受けていただいた。 前々から私が「こんないい女を愛人にしたい人生だった」と思ってやまないモデルのこのゑさんである。

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妄想ホテル room:028  旅する写真。砂漠へと続く物語 (写真・文:フクサコアヤコ)

今回は旅する写真について書く。旅をするのは私ではない。写真である。 地球規模の災禍も収縮の兆しを見せ、人も物も再び動き出した世界。 街を歩けばそこここで見かける外国人観光客にインバウンドの戻りを感じ、SNSではちらほらと旅行の投稿を目にする日々。気づかないふりをして抑え込んでいた私の中の旅行欲がむずむずと騒ぎだすのを感じていた。 そんな中、私の写真を旅に連れていきたいという申し出があった。行先は砂漠。 この夏、どこかに行きたくてむずむずしている本人を差し置いて、私の写真だけが海を渡って砂漠へと旅に出るようである。 「ようである」と書いたのは、すでに写真は私の手を離れ、旅の準備に入っているからである。これからどうなるのかは写真が持つ自らの運命次第。

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妄想ホテル room:029  真夏のヌード・ラブホテル。被写体モデルの未来について思うこと (写真・文:フクサコアヤコ)

盛夏である。連日「酷暑」と表示されている天気予報に、酷暑って天気だったっけ?と首をかしげたくなる日々が続いている。 こんな季節はロケを避けて涼しいスタジオかラブホテルでしっぽり撮影するのが良い。 というわけで、今回のタイトルは「真夏のヌード・ラブホテル 被写体モデルの未来について思うこと」なのだが、キーワードを盛り込んだらさっぱり意味の分からないタイトルになってしまった。 まず「被写体モデル」という単語、最近よく見かけるが意味が重複していて違和感を持っていた。同じ意味じゃん!と。まあそれは今回は置いておくとして、このような謎タイトルになったのには訳がある。 今回モデルを引き受けてくださったのはRitaさん、実は前々からツイッターで拝見して素敵だなと思っていたモデルさんだ。

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妄想ホテル room:030  あの日あの時のメロウェイビー (写真・文:フクサコアヤコ)

ありがたいことに写真を撮ってくださいという依頼をよくいただく。 撮影依頼というのは面白い。 当然だがそこには写真に撮られたい誰かがいて何かしらの「写真に撮られたい理由」がある。 そしてその理由は人によって実に様々だ。 私の撮影は基本ラブホテルでのヌードもしくはそれに近しい写真で、「エロ」が前提となってくる。 そんな自分のエロい写真をラブホテルで撮られたいと思う動機とはいったいどのようなものだろうか。 これまでの経験から言わせてもらうと、その動機には2つのパターンがある。

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妄想ホテル room:031  『私をどエロく撮ってください』 人妻からの依頼で思いがけずエロの原点に立ち戻った話 (写真・文:フクサコアヤコ)

ある日いつものようにSNSを通じて撮影依頼のメッセージが届いた。 北関東在住の人妻からだった。顔出し、乳首、ヘアもOK、撮影していただけるならば有休をとって都内へ赴きますとのこと。話が早い、もちろん喜んで快諾した。 詳細を確認しつつ、どのような撮影をご希望ですか?と聞いたところ、「どエロく撮ってほしいんです」と言う。 「どエロく…ですか?」「はい、どエロく」。こうして「人妻どエロ撮影」が決まった。

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妄想ホテル room:032  エロコンプレックス ~エロ業界の力士にぶつかりげいこを挑んだ話 (写真・文:フクサコアヤコ)

秋も深まってきた10月。 今年もまた金木犀の香りが漂う街角でふと、わけもわからぬ不安に立ちすくむ季節がやってきた。 毎年この季節になると、今自分の立っている場所が分からなくなるというか、自分という存在のちっぽけさに動けなくなってしまうことがある。 しかし安心してほしい、これは定期的に訪れるスランプめいたものである。いや実際にはスランプですらない。スランプとは日ごろインプットもアウトプットも精一杯がんばっている人のみに許される言葉である。

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妄想ホテル room:033  私に推しができた日 (写真・文:フクサコアヤコ)

その日私はとある古びたビルの前にたたずみ、上へと延びる急な階段を見上げていた。 階段の壁に貼られた写真から、踊り子たちが微笑みをたたえてこちらを見つめている。ここは大和ミュージック。 今や日本に残る数少ないストリップ劇場のひとつだ。 今日ここで私の「推し」が躍る。私はそれを見るためにここまで来たのだった。 急な階段を登り、受付で「女性一名です」と告げると自動的に女性・早割りと書かれたチケットを渡される。これで一日中めくるめく裸の芸術が楽しめる。私は大人の夢の国へのチケットを握りしめ薄暗いホールに足を踏み入れた。

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妄想ホテル room:034  開かれた結婚 オープンマリッジという選択 (写真・文:フクサコアヤコ)

オープンマリッジという言葉を知っているだろうか。 結婚相手の合意のもと、婚外恋愛はもちろん、夫婦以外で性的な関係を持っても良いという開かれた関係のことをいう。 性の革命の時代と呼ばれる1970年代に多く試みられ、1973年にはアメリカの社会学者の著書「オープンマリッジ」によって提唱されている。著名人ではウィル・スミス夫妻がオープンマリッジであることを公言していることなどで知られている。 このように夫婦が所有欲、独占欲、嫉妬心に妨げられず、自由に愛人を作れる、社会的、性的に独立した個人を認め合う結婚のスタイルは、結婚しても自由に恋愛を楽しみたい、一人の人に縛られたくないと思う人には理想的に思えるかもしれない。 けれど現実には、どうなのか。

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妄想ホテル room:035  性癖という部屋をのぞく時 (写真・文:フクサコアヤコ)

「人の性癖を見るのが好きなんですよ」 今日もラブホテルの一室。シャッター音の合間にそんな会話が漂う。 「前の撮影の時もそう言ってたね。それで今はM性感で働いてるんだよね」 レンズを除いたままで私が承ける。 今回のモデルであるフジちゃんを最初に撮ったのは昨年の春。 彼女の人生で初めてのセミヌード撮影だった。 「単純にエロが好きっていうのもあるんですけどね」 そう言って彼女は笑う。 エロへの好奇心旺盛な彼女。ラブホテルで写真を撮られるようと思ったのもそんな興味からだった。 そして今、「人のエロい部分が見たい」という欲求を満たすため、彼女はM性感で働いている。 望み通り人の様々な性癖を目にし、本当に人の性癖って多種多様なんだなと実感する日々だと言う。

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妄想ホテル room:036  裸の仮面 (写真・文:フクサコアヤコ)

2月だというのにその日は春をすっ飛ばして初夏のような陽気だった。ダッフルコートを着てきたことを激しく後悔しながら私は待ち合わせのアルタ前に立っていた。 今日は初めてのモデルさんとの撮影だ。少し前にSNS経由で連絡をくれて本日の撮影となった。 初対面なので待ち合わせの目印にと、グレーのダッフルコートを着ていますと送ってしまったため、コートを脱ぐに脱げず私の体はじっとりと汗ばんでいた。もう限界だ、コートを脱いでも手に持っていればわかるだろう、それとも脱ぎましたとメールを送りなおそうか、そう逡巡しているうちにモデルさんが私を見つけてくれ無事に合流することができた。

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妄想ホテル room:037  失恋ランジェリー (写真・文:フクサコアヤコ)

春は恋の季節、と同時に別れの季節でもある。 今年もどこかで小さな恋が始まり、どこかで別の恋が終わろうとしている。 始まってしまった恋には必ず終わりがやってくるとわかっていても、その悲しみに慣れることはない。 それが突然であればなおさら。 今回の妄想ホテルはまさに終わろうとしているひとつの恋に寄り添った記録である。

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妄想ホテル room:038  いかに社会に溶け込みながら人からかけ離れるか  (写真・文:フクサコアヤコ)

そういえば写真を始めて今年で30年になる。 専業カメラマンではないものの「昼はOL、夜はカメラマン」というスタイルでとりあえずどんな時も撮り続けた。 写真の師匠からの唯一の教え「死ぬまで撮り続けること」を心に誓い、対象が風景から人、そしてエロへと移り変わっても辞めることなく今に至っている。 初個展は写真を始めた地である京都にて。寺町三条の同時代ギャラリーに併設された小さなギャラリースペースだった。 当時の私の作品はモノクロの風景写真で、押し入れを改造して作った暗室で夜な夜な焼き上げていた。個展前などは会社から帰ると徹夜で暗室作業をし、また朝から会社へ行くという毎日だった(若かった)。

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妄想ホテル room:039  はじまりのダンスを踊ろう (写真・文:フクサコアヤコ)

いつものラブホテルの受付、部屋を選ぶパネルの前で私は不思議なパワーを感じていた。 古く廃れたこのラブホテル、昨年壊れたボイラーはまだ直らないらしく「バスタブは使えませんがよろしいですか?」と毎回確認される。 そんな有様なので少し前までは平日の昼であれば部屋は選び放題だったのだが、インバウンドの波かコロナの反動かここ最近は満室が続いていた。 なのに今日は5室ほど空室を示すランプが点灯している。そしてその中に蝶をモチーフにした部屋があった。 「あ、ここ!蝶のお部屋がありますよ!」その部屋を見つけた彼女は嬉しそうに振り返った。 彼女はミラ・スワロウテイル、蝶の名前を持つバーレスクダンサー、今回のモデルである。 彼女自身が自分の名前に所縁のある部屋を引き寄せたのかもしれない。彼女の笑顔にはそう思わせる不思議なパワーがあった。 私たちは受付を済ませると蝶の舞う部屋へと向かった。

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妄想ホテル room:040  妄想エンドロール (写真・文:フクサコアヤコ)

歌舞伎町のはずれ、寂れたラブホテル。その一室にいる二人の女。 一人は手にカメラを持ち、一人は下着姿、どうやら何かの撮影をしているらしい。 そんなシーンからこの映画は始まる。 「今の感じいいね、もうちょっとひねってみて」カメラマンの独り言のような指示にポージングで応えるモデル。 ホテルの部屋に積み重なっていくシャッター音と衣装を脱ぎ落す音と、そして二人の呼吸。 淡々と続く撮影シーンにオープニングクレジットが重なる。 モデル:春乃ミア  カメラマン:フクサコアヤコ  タイトル…

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妄想ホテル room:041  夏休みの自由研究 写真家うつゆみことラブホテル (写真・文:フクサコアヤコ)

7月、蝉の第一声とともに私の長い夏休みが始まった。 私は写真を撮っている一方でフリーランスのOLとしても働いているのだが、業務の繁忙期が秋冬春のため夏は比較的ヒマなのだ。フリーランスなのでここ数年は夏にも別案件を受注して通年OLとして働いていたが、少しつまらなくなってきたため今年は久しぶりに2か月夏休みをとることにした。 平日の昼から空いている映画館に行ったり、昼酒を決めてほろ酔いになってみたり、平日料金のフリータイムでラブホテルにしけこんだり、ぜいたくな時間を使って大人の夏休みを満喫するためだ。 その日も昼からビールを片手に何か面白いことはないかとSNSをさまよっていると、とある投稿が目に入った。 「気がついたら100枚位のワンピース、その他たくさんの服があり… 『服があった(仮)』というジンを制作したく、写真を撮っていただける方を募集します!! スタイルが確立している、個性のある写真を撮って下さる方だと大喜びです!! 遊び心のある方もお待ちしています!!」 写真家うつゆみこさんの投稿だった。

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妄想ホテル room:042  夏の終わり 卒業写真 (写真・文:フクサコアヤコ)

「被写体をやめることにしました。最後に写真を撮っていただけませんか」 そんなメールをもらったのは夏の始め、今年最初の蝉の声を聞くころだった。 『被写体という仮面を捨てて「ただの女」になる今こそ、フクサコさんに撮っていただきたいんです』とそのメールには綴られていた。 被写体の「始まり」と「終わり」、私はなぜかその両方に立ち会うことが多い。 被写体を始めるのにはそれぞれにその人だけの理由があって、私はその物語をなるべく記録したいと思いながら撮影に臨んでいる。そしてそれは「終わり」も同じ。

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妄想ホテル room:043  ここにいる誰かが私であること (写真・文:フクサコアヤコ)

例えば電車に乗っていて遠くの知らない街を通りかかった時、その街に住んでいるもう一人の自分の存在を感じたことはないだろうか。 駅前のだだっ広い駐車場、車窓から見える大きなマンションの窓、長閑な川沿いの土手。そこで生活している別の自分を見かけたことはないだろうか。 そしてそんな時いつも思うのだ。今ここにいる私もまた、誰かの別の自分なのだと。

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photography 妄想ホテル room:044  猫と承認欲求 (写真・文:フクサコアヤコ)

急に肌寒くなった。 もはや日本から秋と春という季節は消えてしまったのではないかと思うほどの急激な変化だ。 今日は30度近くあった最高気温が、明日には最低気温11度まで下がるとニュースが告げている。私は急いで押入れの奥から冬用の毛布や上着を引っ張り出した。南方の生まれ故、寒さにはめっぽう弱いのだ。 私が家で使用する毛布やシーツ、ブランケット、部屋で羽織るカーデガンなど、ぬくもりを提供してくれるグッズはすべてふわふわ、もこもこした素材でできている。暖かさよりもむしろ手触りを重視しているふしすらある。 昔はそれほど素材にこだわりはなかった。暖かければ多少ゴワゴワしていてもなんでもよかったはずだ。 いつから、なぜこんなにもふわふわな手触りにこだわるようになったのか。おそらくそれは今の私の生活に猫がいないからだ。私は失った猫のぬくもりと手触りをいつだって求め続けている。

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)

ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。

本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。

旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。

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ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)

稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。

1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!

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ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)

プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。

これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。

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ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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