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大須蔵人
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新連載 はぐれAV劇場 01 大阪の筋肉女装ホモ〜もうひとりのアタシ〜(文:大須蔵人)
男のオナニーのための道具、というのがAVの基本的な役割で、それはいまでも変わりないけれど、欧米のポルノビデオとは違って規制があるために、かえって独特な映像表現が発達したともいえる日本の(表)エロビデオ。そのなかには「オナニーツール」の役割を超えて、あるいは役割に足りないままに、シュールな映像作品になってしまったものが少なくない。アートでもなく、ポルノでもなく、伝統的な映画でもなく。そうした「ワケのわからないAV」は、当然ながら有名女優とも大ヒットとも無縁の商品だから、時を経て探すのがいちばん難しい作品でもある。大須蔵人さんはそんな、はぐれAVばかりをもう10年以上収集しているユニークなコレクター、というより大衆文化のフィールドリサーチャーだ。
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はぐれAV劇場 02 当たりハズレ付き まっ暗闇合同SEX 女5人vs男10人(文:大須蔵人)
「あんたんとこに柿の木あるの」「ハイ、あります」「よう実がなりますか」「ハイ、ようなります」「わたしが上って、ちぎってもよろしいか」「ハイ、どうぞちぎってください」「そんならちぎらせてもらいます」これは、反骨の民俗学者として知られる赤松啓介が、自身の実体験に基づいて記録した「柿の木問答」というやりとりからの一篇である。主に筆下ろしや、初夜に交わされたやりとりで、「要するに未知、未通の男女の初床入りの儀礼であった」(赤松啓介『夜這いの民俗学・夜這いの性愛論』筑摩書房)というように、初めて性交をおこなう男女が、この問答を通じてお互いの緊張、戸惑いを緩和し、初通をスムーズに達成するためのメソッドとなっていた。暗闇のなか、どんな相手かもわからないままに、作法の順番を柿の実取りに見立てて進んでいく。それが、性交の手引きであると同時に、コミュニケーションツールになるという、極めて合理的な役割をになっていたといえる。
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はぐれAV劇場 03 花公路夏男のSM放浪記(文:大須蔵人)
私が専門にしている「ヌケないAV」というのは、もちろんジャンルとして区分されている訳ではなく、何らかの理由(失敗、狙いハズレ、無計画)によって、いわば偶発的に世に送り出されたものといっていい。もちろんこれらは、別に「ヌケない」ために発売されたものではないので、他の多くのAVと同じように販売され、レンタルビデオ屋の棚に入り、時期を過ぎて廃棄され消えていくという過程で、たまたま拾われ、その収録内容によって不名誉にも「ヌケないAV」という称号のもとで世間に曝されるに至ったというものである。
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はぐれAV劇場 04 実録SEX犯罪ファイル(文:大須蔵人)
アダルトビデオの世界は、あらゆる人間に寛容だ。他の業界で失敗した人間や、行き場を失った芸能人、果ては犯罪者までもが特に差別をされることもなく受け入れられる。むしろ、そういった後ろ暗さをネタとして消費するような機構が確立されているといってもいい。今回紹介するのは、まさにそういった「犯罪」と「犯罪者」をテーマにした作品である。1998年に発売された『実録SEX犯罪ファイル』(BAZOOKA)の監督は高槻彰。平野勝之、井口昇といった個性的な映像作家を輩出し、90年代にAVの範疇に収まらない濃厚なドキュメント作品を量産した制作会社(現在はメーカー)、シネマユニットGASの代表である。高槻監督は、ドキュメントAVファンのなかでは知らぬ者のいない巨匠であり、なかでも今回の作品は、ビデオ情報誌『ビデオザワールド』(コアマガジン)で98年度上半期ベストワンを獲得するなど、名作として語られる機会も多い、いわゆる大ネタである。
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はぐれAV劇場 05 アニマルプリント(文:大須蔵人)
以前、南アフリカに行く機会があり、そこでサファリツアーに参加した。船で川を下りながら、岸辺に生息する自然の動物たちを眺めていると、象が水浴びをする横に、カバの親子がたたずみ、親カバの上には水鳥がとまり、その足下にワニがいる。そんな生き物の共生の場を目の当たりにして、ふと思った。人間は他の生物と、このようには共生できないではないかと。カバが、急に水に潜りだし、背中にとまっていた水鳥がビックリして飛び上がり、ワニはさっと道をあけるような、あの協力と無関心の、共生というよりもむしろ生物並存とでもいうべき平等状態のなかに人間が入ることができるだろうか? のんびりした動物の世界を見ていると、ああいう風に生活してみたいなと思うこともあるだろう。でも人間は動物と平等に生きることはできないだろうし、動物が自由に生きているように見えるのも、また人間からみた自然への憧れに過ぎないのだろう。そんなことを考えさせられるのが今回紹介する作品『アニマルプリント』である。監督はソフト・オン・デマンド(SOD)でハード系作品を多く手がけるモリタ寿(ことぶき)、本作も2001年にSODからリリースされたものである。
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はぐれAV劇場 06 美女とわき毛(文:大須蔵人)
フェデリコ・フェリーニの『そして船は行く』(1983年)のオープニングは、豪華客船の出航準備をする波止場の風景を映した、白黒サイレントの映像ではじまる。そのぎこちない動きの映像にカタカタと映写機の動作音が重なり、それがやがてトーキーとなり、カラーになって、船が出港する本編へと繋がるという場面である。フェリーニはこの1シークエンスで映画の誕生からその発展の歴史を足早におさらいするという演出を試みているのである。作品の内容からすると、この演出は映画史へのオマージュであるとともに、映画へのレクイエムであるとも考えられる(ラストシーンでは歴史が逆行してサイレントへと戻っていく)。このように、作品のなかでその作品が成立する背景を反省的に捉え直すものは少なくない。とはいえ、それは映画や音楽といった豊かな「歴史」をもったメディアの話であって、AVでそういったものを目の当たりにする機会はほとんど無いといっていい。そもそもAVには正史と呼べるような発展史が存在するとも、それが周知のものであるともいい難いというのが実情ではないだろうか。今回紹介する作品は、AVにおいて、そのAVの歴史を再演するかのような極めて稀な作品である。今回は、この作品の紹介を通して、日本におけるAVの発展史をおさらいしてみたいと思う。
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はぐれAV劇場 07『特攻! 裏風俗ゲリラvol.9~完全体験潜入ルポ~』(文:大須蔵人)
ビデオには表と裏がある。ビデオは、もちろんメディアの名前だが、日本ではそれに「表」とくつと、アダルトビデオを意味し、「裏」とつけば非合法(わいせつ物頒布等の罪)の無修正エロビデオを意味する。したがって、基本的にAVと呼ばれるものは、いずれかの審査を経て流通している合法的なエロビデオの呼称であり、決して全てのエロビデオがアダルトビデオというわけではない。そういった意味で今回紹介する作品は、「裏」風俗の世界に迫った「表」ビデオ(AV)ということになるだろう。世の中には色々な表と裏があるが、私はこの作品で、街の裏をみたような思いがした。取り上げるのは、2004年にリリースされた作品『特攻! 裏風俗ゲリラvol.9~完全体験潜入ルポ~』(ATLAS21)。タイトルのとおり風俗産業の「裏」、というか裏風俗を、潜入盗撮という体当たり取材で迫ったサスペンスフルなリアルドキュメントである。
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はぐれAV劇場 08 バベルのビデオ館──中村企画訪問記(文:大須蔵人)
そこは、埼玉県志木市の住宅街にひっそりとたたずむ、倉庫のような建物だった。いつもシャッターが閉じられていて、外からでは中に何があるのかをうかがい知ることはできない。軒先に「中古ビデオ、DVD買います!! 中村企画」という看板が掲げられているのみだ。シャッター脇にあるインターホンを押すと、迎えてくれたのが中村企画の社長、中村友嘉さんだった。中村企画は、中村さんのほか数名のスタッフとともに、この倉庫兼事務所で、インターネットでのアダルトビデオの通信販売と買い取りをしている。事務所には大量のVHSデッキや空のビデオケースが並べられ、そこで日々、買い取ったビデオの検品、クリーニング、発送の作業をしている。
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はぐれAV劇場 09 ザ・スキャンダル:日本で一番有名人と寝た女(文:大須蔵人)
今に始まったことではなく、ずっと以前から芸能人や有名人のスキャンダルやプライベート情報の流出などが話題となり、世間の注目を浴びることが多くある。最近では現役アイドルやアナウンサーのプライベートエロ画像が流出してネットの話題をさらうことも、もはや珍しいことではなくなってしまった。海外に目を転じれば、現代の神とも呼ばれるセレブリティたちの存在は、パパラッチたちが暴露する、きわめて下世話なスキャンダルによって補完され、その地位と名声を強化するという共犯関係を築き上げているともいえるだろう。聖と俗、現代で崇められる者たちは、それと同時に大衆からの下世話な欲望に身をさらされ、「あの人、実はこんなんだよ」という悪意ある暴露の対象となるのだ。
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はぐれAV劇場 10 『ふるさと創性論 季実子の玉おこし』(文:大須蔵人)
年末年始にかけて、多くの人たちがそれぞれの故郷へと里帰りしたことだろう。家族や親戚、地元の友人との再会を喜び、四方山話をして楽しい時間を過ごした人もいれば、「結婚はいつか」「早く孫の顔が見たい」などと小言をいわれてウンザリという人もいるかもしれない。いずれにしても、故郷には普段の生活とは全く違った人間関係があり、それは懐かしくもあり、また面倒だったりもするのではないだろうか。意外に思われるかもしれないが、AVには “里帰り”をテーマにしたドキュメンタリーの傑作が多い。それは女優の里帰りを追ったものから、監督やスタッフ、男優の里帰りを追ったものなど様々である。
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はぐれAV劇場 11 『男女13人! 地上20メートル空中ファック』(文:大須蔵人)
今年で35年を迎えるアダルトビデオの歴史の中で、その作品の殆どが人々の記憶からも、そして物理的にも消え去ってきたということは、この連載でもたびたびお伝えしてきた。しかし、そんな消尽カルチャーであるAVの中でも、忘れられることなく人々の記憶に残りつづける作品が、少ないながら存在する。例えば、村西とおる監督の『SMぽいの好き』(クリスタル映像、1986)や、代々木忠監督の「チャネリング・ファック」シリーズ(アテナ映像)などがそれに当たるだろう。歴史に残るAVが、だいたい「珍奇」な作品であるということについては、じっくり考えてみるべき問題だと思うが、今回紹介する作品は、これら名作に勝るとも劣らないインパクトと「珍奇」さを備えた、AVにおけるニューウェーブを代表する一作だ。
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『牡丹の囁き』完成記念上映会によせて
4月10日、渋谷アップリンクで一本の映画の完成記念上映会が開かれる。たった一日、2回の上映だけ。このあとの上映はまだ決まっていない。『牡丹の囁き』と題されたその映画は、緊縛師として活躍する奈加あきらを追ったドキュメンタリーである。監督はフランス人映像作家ヴァンサン・ギルベール。「外国人から見た日本のSM文化記録」という、ありがちな視点を大きく逸脱した、苦痛と陶酔の映像詩というべき作品に仕上がっている。今回は連載『はぐれAV劇場』でおなじみの大須蔵人さんに、急遽レビューを書いていただいた。今週末という慌ただしい上映会ではあるが、記事の末尾に触れられているように、ギルベール監督、奈加あきらさんによるトークや、「女性限定・奈加あきら緊縛パフォーマンス付き」という興味深い上映もあり。日本人によるSM緊縛映像とはまた別の視野からの、美のアンダーワールドを堪能していただけたらと願う。
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はぐれAV劇場 12 『最後の露出:ラバーペイント過激露出の巻』(文:大須蔵人)
街を舞台にしたAVの花形は「ナンパもの」だが、もう一つ、街を舞台にしたオルタナティヴなジャンルとして安定した人気を得ているのが、いわゆる「露出もの」だ。露出プレイというと、もともとSMの調教だったり、あるいは投稿雑誌に写真を送ってくるような好きものカップルの過激な戯れといった印象が強い。AVのジャンルとしても基本的にはそういった、SMやビザール的なカテゴリーのなかにあったもののように思える。このジャンルに特化したマニアも多く、ネットでも専用の批評サイトやブログが幾つもみられる。
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はぐれAV劇場 13『縄炎~美濃村晃の世界~』(文:大須蔵人)
叙情的な音楽をバックに、柱に縛られた女性の足。肉感的な大腿から肩にかけて色鮮やかな刺青が彫り込まれ、その足は畳敷きの床にギリギリの高さでつま先立ちしている。屈曲した足の指は、自らの重みに耐えて痙攣しているさまがありありと伝わってくる。これは、伝説の責め絵師・喜多玲子による絵画だ。その絵にオーバラップして、同じ片足吊りの体勢に縛り上げられた女性の姿が現れる。口には帯のような布を咥えさせられて苦悶の表情を浮かべている。陰影の強いその映像に唐突に2人の男性の会話が被さる。「いいですよね~」、「これ結局、彼女が苦しいから、口離しちゃったら全部見えちゃうという……」、「うん、これは本当に、美濃村晃の、美濃村晃十種の一つですよね、最もいいポーズの……」、「ああいいな~、すごい、喘ぎ始はじめてね」、「うん、これは口を離すと全部見えちゃうという」、「うん、見えちゃうね、見えたら恥ずかしいんだよ、彼女」、「うん恥ずかしいよ、これは」、
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短期集中連載:マニア本の著者に聞く 特別編 「ちろりん村顛末記」――広岡敬一と、はぐれものたちの国(文:大須蔵人)
先月からスタートした短期集中連載。今週は5月にちくま文庫から発売されたばかりの『ちろりん村顛末記』を取り上げる。しかし残念ながら、僕がもっとも尊敬する風俗ジャーナリストである著者・広岡敬一さんは、2014年に他界されてしまっている。そこで今回は、本メルマガの連載『はぐれAV劇場』でおなじみの大須蔵人さんに、じっくり書評していただくことになった。約7500字・・・ほんとは書評って、これくらいないと「評」にならないんだよなあ、と納得の力作。お読みいただいたあとは、すぐに書店に走るか、ネットでポチりたくなるはず!
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はぐれAV劇場 14『全裸チャレンジャー108人:松本和彦・MVGスペシャルディレクターズバージョン』(文:大須蔵人)
今回紹介する作品は、おそらくAVが最もテレビを志向した動きの只中で、「AVの本質とは何か」を問うた作品といえる。しかもこの作品は、AVではかなり珍しいと思われる、ディレクターズ・カット版という代物だ。作品は、1998年にソフト・オン・デマンド(SOD)からリリースされた『全裸チャレンジャー108人:松本和彦・MVGスペシャルディレクターズバージョン』。そして、このディレクターズ・カット作品の監督であり、主役でもあるのがM's ビデオ・グループ(MVG)を率いた松本和彦だ。本作の経緯を簡単に説明すると、もととなっているのは、108人の全裸女性が集結し、賞金獲得をめざして体育からアトラクション、大食いまであらゆるエクストリームな競技を繰り広げる『全裸チャレンジャー108人』(監督:鎗ヶ崎麿羅、1998年)という、SOD設立以来の目玉作品だった「全裸シリーズ」初期の集大成といえる作品だ。
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はぐれAV劇場 15『松野行秀の堕落論』(文:大須蔵人)
スキャンダルは一度利用したら最後まで押し通せ! このテロップとともに作品は始まる。画面には派手な衣装に身をつつみ、マイクを持って話す1人の男。その背後にはタイガー・ジェット・シンのポスターが貼られていて、どうやらプロレスラーの試合後会見のようだ。そこで満身創痍のまま、ピエロのような白塗りの顔で会見をしているのが、本作の監督であり、主演男優でもある、ゴージャス松野こと、松野行秀だ。今回紹介する作品は、2002年に制作された『松野行秀の堕落論』。上記のように監督と主演を、AV初出演となる松野行秀が担当し、松野さんが「AVに出演すること」そのものがテーマとなっている、類まれな珍作だ。
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はぐれAV劇場 16 本橋信宏著『全裸監督──村西とおる伝』+村西とおる監督『マリンの妖精 PART 2』(文:大須蔵人)
「お待たせいたしました、お待たせしすぎたかもしれません。前科7犯、借金50億、昭和最後のエロ事師、村西とおるでございます。」これが伝説のAV監督・村西とおるがメディアに登場するときに自ら発する啖呵であり、彼の壮絶な人生を凝縮したプロフィールとなっている。今年の10月に刊行され、すでに多くの話題を呼んでいる、本橋信宏著『全裸監督──村西とおる伝』(太田出版、2015)は、この稀代のエロ事師・村西とおるの生い立ち、全盛期〜凋落、そして現在にいたるまでを徹底的に描きあげたルポルタージュだ。まず驚かされるのが、700頁超えという長大さ、そしてその分厚いボリューム感に決して引けを取ることのない、迫力に満ちた村西監督のポートレートであり、帯に書かれた「人生、死んでしまいたいときには下を見ろ! おれがいる。」というコピーのインパクトだ。この本はにわかには信じ難いような激動の人生を経験し、そして今もなお歩み続けている男の「裸一貫=全裸」の物語といえる。
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はぐれAV劇場 17 石垣章監督『奇妙な果実』(文:大須蔵人)
去年、創立30周年を迎えたV&Rプランニングという老舗AVメーカーがある。「タブーから社会を見つめる」という強力なコンセプトのもと、社長である安達かおる監督を中心に過激なドキュメント作品を連発し、メジャーにありながら挑戦的な企画を仕掛けた、まさに正統派異端メーカーといえるだろう。カンパニー松尾、バクシーシ山下といった個性的な作家を輩出したことでも、サブカルチャーとしてのAVを語る上で欠かせない有名メーカーである。V&Rの作品の中には、総集編にも残らず、人々の記憶からも消えてしまっていると思われる作品が存在する。特に社内監督による作品ではなく外注監督の作品にその傾向が強いように思われる。つまり関係者も「忘れちゃった」可能性の高い作品ということだ。今回紹介するのはそんな幻の作品、石垣章監督『奇妙な果実』(1991年、V&R)だ。この作品には、やはりジャンク屋の棚で“たまたま”目に留まって出会った(280円也)のだが、調べてみるとこの作品や監督にについて語るべきことは多い。
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はぐれAV劇場 18 葵マリー監督『SM調教24時間 折檻雪化粧』(文:大須蔵人)
夜、みるからに寂れた田舎の駅。ホームには雪が厚く積もっている。そこに電車が入ってくる。窓からのぞく車内に乗客の姿はほとんど見られない。それでも電車が到着すると駅の改札からは続々と人が出てきた。その中に突然異様な一行が姿を現す。先頭の女性は軍服(ナチスの腕章!)にティアドロップのサングラス、手には手綱を持っている。その手綱で引かれているのはなんと、半裸の男女だ(しかも、男は女装している)。この状況から考えると、一行はこんな格好のまま、電車に乗ってきたということだろうか?
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はぐれAV劇場 19 バクシーシ山下監督『ラブ・ドール~高級ダッチワイフが女優になっちゃいました~』(文:大須蔵人)
本メルマガでは、もうお馴染みのラブドール。渋谷のアツコバルーで開催されたオリエント工業40周年記念「今と昔の愛人形」展が大きな話題となり、入場規制がかかるほどの盛況ぶりで、会場外には入場待ちの人々が長蛇の列を作っていたのも記憶に新しい。こんなに多くの人々の関心を引くとは誰が予想していたかと驚くばかりだが、それはラブドールが従来の「高級ダッチワイフ」というイメージを超えて、精巧で美しいオブジェ、つまり美的鑑賞の対象として認知されたことを意味しているのだろう。
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はぐれAV劇場 20 特別編 安達かおる著『遺作―V&R 破天荒AV監督のクソ人生』(文:大須蔵人)
AV界には、その時代を作ってきたといえる監督たちが、少なからず存在する。その代表的な人物といえば、まず代々木忠と村西とおるが挙げられるだろう。一方で、時代を作ってきたという意味での重要度に比して、これまでその活動が伝えられてきたとはいい難い人物の代表が、V&Rの安達かおるだろう。もちろんアンダーグラウンド、サブカルチャーの世界では有名で、あの「カンパニー松尾、バクシーシ山下の師匠」として知られるわけだが、これまで安達かおる自身の人となりについては謎の部分が多かったし、もっと注目されていいのではないかというのが本音だった。それが今回紹介する安達かおる自身による初の単行本『遺作―V&R 破天荒AV監督のクソ人生』(メディアソフト)が刊行されたことによって、それまで謎に包まれた安達監督について包括的に知ることができるようになったのだ。
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はぐれAV劇場 21 代々木忠監督『チャネリングFUCK 悪霊と精霊たち』(文:大須蔵人)
この作品は、おそらくメジャーAV史上最も「不穏」といえる、以下の警告文で幕を開ける。「次の方は、この作品をご覧にはならないで下さい・心臓に障害のある方・妊娠中の方及び妊娠していると思われる方・高令者及び虚弱な方」さらに、観るものの不安を煽るように以下のテロップが続く。「この作品は、出演する女性たちの意識を異次元にシフトさせ、波長の法則に基き人間の出す波動同志のSEXを試みた極めて実験的なビデオであるが…トランス状態の中での異次元体験は結果としていわゆる霊界レベルと同調することとなり、我々は撮影中山崎麻美に憑依していた五百数十年昔の怨念霊との戦いを強いられる結果をまねいた。結果的に極めて貴重な現象をビデオに収録することが出来たのだが本作品中の出来事は我々人類に対する宇宙意識からの警告なのかも知れない。」
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はぐれAV劇場 22 さいとうまこと監督『廊下は静かに』(文:大須蔵人)
今年の9月に『PLAYBOY』の発刊者であるヒュー・ヘフナーが91歳で亡くなり、世界中のメディアで報じられたことは記憶に新しい。しかし、そのひと月前の8月、かつて「日本のヒュー・ヘフナー」と呼ばれた男の足跡を辿った書籍が刊行されたことは、あまり知られていないのではないだろうか。その名も『裸の巨人――宇宙企画とデラべっぴんを創った男 山崎紀雄』(阿久真子著、双葉社、2017)だ。
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はぐれAV劇場 23『ケンちゃんVSコンバット』(文:大須蔵人)
「さて本日は、かつて日本中の若者たちの人気を博しました、あの幻の『洗濯屋ケンちゃん』(……あ、これ違う)、失礼致しました。あの幻のグループ、サザンオールスターズ~」と、キャスターに扮した桑田佳祐が、ニュース原稿を取り違えるコントが繰り広げられていたのは、『東京シャッフル』(1988)のMVだった。私はまだ幼く、当時の状況を知るよしもないが、この映像を観た世の男たちは、ついニヤっとしてしまっただろうことは想像に難くない。『洗濯屋ケンちゃん』。それは、まさに「かつて日本中の若者たち」から中年層にいたるまで、世の男たちに絶大な衝撃を与えた“裏ビデオ”のタイトルにほかならない。
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はぐれAV劇場 24『シーメールEVE 両性具有』(文:大須蔵人)
「シーメール」という言葉をご存知だろうか? ロードサイダーズ・ウィークリー読者には、こういった領域に関心のある(あるいは親しみ深い)方も多いと思うのでもはや愚問かも知れないが、これは女性の身体的特徴を備えた男性を表す言葉だ。一般的には性別適合手術前のニューハーフ、つまり「サオつきオカマ」ということになるだろう。そして今回紹介するのは、日本のAVでこの「シーメール」という存在を知らしめたパイオニアといえる、山本竜二監督によって1989年にリリースされた『シーメールEVE 両性具有』(新東宝)という作品だ。
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はぐれAV劇場 25『完全保存版~モザイクの彼方より~平成ニッポンAV大全』(文:大須蔵人)
さっそくだが、今回紹介するのはAVの歴史を真正面から扱った作品だ。その名も『平成ニッポンAV大全』。平成が終わり、次の時代を迎えようとするいまの時期に紹介するにはふさわしいタイトルのようにも思えるが、実際のところこの作品が制作されたのは1994年で、平成も始まったばかりという頃のお話だ。AVが誕生した1981年から本作が作られた1994年までのAV史上の主だった出来事を、当事者へのインタビューを交えながらまとめられている。
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はぐれAV劇場 26『妄走犯2~笠木忍を捕まえて本番しませんか?~』(文:大須蔵人)
イベントが開かれようとしていた。そのイベントとは、一言でいえば「AV女優によるファン感謝祭」だが、それは憧れのAV女優と、そのファンたちが現実空間で出会い、語らう、といった生易しいものではない。このイベントは、AV女優とセックスできる権利を得るために新宿の街を舞台に繰り広げられる、「24時間耐久鬼ごっこ」なのだ。これは、「ファン感謝祭」であり、「鬼ごっこ」であり、そしてその過酷で無謀なこのイベントをドキュメントした、「AV作品」なのだ。その過酷さはなかなかハンパないもので、まずネットを通じて募集された今回の素人参加企画の、応募者の見た目も、素性も把握していない。
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はぐれAV劇場 27 北極SEX探検隊(文:大須蔵人)
ダイヤモンド映像編集室に座り作業をする若者と、その後ろに立つ男を映し出す。手前の若者が「じゃあ監督! 編集始めましょうか」と声をかけると、「ウシ!」と気合を入れて編集デスクに座る男。彼が本作の監督、小路谷秀樹だ。そして、監督に声をかけた若者が、現在ではソフト・オン・デマンドの代表取締役会長を務める日比野正明の若かりし頃の姿だ。ふたりが編集を始めようとしたところに、「監督~、私も一緒に見ていいですか?」と、ひとりの女性が割って入ってくる。「徹夜になるけどいい?」「私、明日休みなんで大丈夫です」といった会話に続いて、監督が「よ~し、じゃあ行きますか……北極セックス探検」の掛け声に続いて、女性の張り切った声で「スタート!」こうして始まるのが、今回紹介する作品、『北極SEX探検隊』(ダイヤモンド映像、1990)だ。冒頭の編集室のくだりでは、この作品が一体何なのかが皆目伝わってこないのだが、タイトルが示すように、これは日本のアダルトビデオで初めて、「北極圏」に降り立った作品なのだ。
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はぐれAV劇場 28『痴漢』『誘惑』(文:大須蔵人)
今回は、一気に2つの作品を紹介する。というのもこれらの作品は、別個のものというよりも、それぞれが姉妹編というべき作品となっている。紹介するのは、いずれも1985年にスワンビデオからリリースされた、青木祐子主演の『痴漢』と『誘惑』という作品だ。当時、AVやピンク映画で活躍していた人気女優、青木祐子を起用した連作だ。しかし、なぜこの人気女優の主演作品が「はぐれAV」として紹介されるのか。それはこの2作を監督した人物にある。本作の監督は周防正行。今年の12月には新作『カツベン!』の公開が待たれる、言わずと知れた有名映画監督だ。
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はぐれAV劇場 29 弁護士夫妻を知りませんか?(文:大須蔵人)
『全裸監督』のインパクト――もう少し前になってしまったが、今夏にNETFLIXで配信された『全裸監督』が、その内容や宣伝方法なども含めて大きな話題を呼んだ。まさに規格外の男である村西とおるの存在が再び(前回は80年代)メジャーシーンに大きなインパクトを与えることになったのは、当時を知らない私にとってもなんだかとても嬉しい。本作の原作本である本橋信宏さんによる巨編ルポルタージュはこの連載(はぐれAV劇場16)でも紹介した。ドラマの方は、好評を受けて早くもシーズン2の製作が決定したということだが、たしかにシーズン1で描かれたのはだいたい1986年の黒木香『SMぽいの好き』から、同年末のハワイでの逮捕劇、司法取引で帰国するあたりまでなので、まだまだ栄枯盛衰の村西物語は多く残されている。以前も引用した、『全裸監督』で描かれた村西とおるダイジェストは下記のようになっている。
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はぐれAV劇場 30 原発ピンク列島:スケこまし、出した後は綺麗にしてね(文:大須蔵人)
気がつけば、おかげさまでこの連載も今回で30回を迎えることとなった。連載開始時の打ち合わせで、都築さんから「何回くらいできそうですか?」と問われたときに、少し背伸びしたつもりで「20回くらいですかねー」と応えたら、「エッ、そんなにできるんですか?」と驚かれたので、背伸びした私の心を見抜かれたのかと内心ビビったことを覚えている。でもまだ続けられていて本当によかった。そんな感謝の意を込めて、今回は「はぐれAV」史上もっとも「はぐれ」た作品といっても過言ではない、1990年にリリースされた伝説の怪作『原発ピンク列島:スケこまし、出した後は綺麗にしてね』(ビックマン)を紹介したい。
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はぐれAV劇場 31 『素人花婿募集ビデオ 結婚してみませんか?』 (文:大須蔵人)
「マリアージュ」といえば、おもにフランス料理のなかで、ワインと料理のマッチングによって、お互いの潜在的な魅力を引き出し、それぞれ単体のときでは味わうことのできなかった力を発揮した状態をいう。この語源はもちろん「結婚」からきている。つまり結婚には、それぞれ一人ではできないことも、二人でならプラスアルファの力をもって成し遂げられる、という意味が備わっているのだと思う。 今回紹介するのは、AVというフォーマットにおいて、まさにこの「結婚」に正面から向き合ったドキュメンタリー作品だ。ただし、この作品は「結婚」を扱うだけにとどまらず、人間を追ったドキュメンタリーとして、別の意味で見事な「マリアージュ」を果たしているのだ。それはいかなる意味においてか……。
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はぐれAV劇場 32 『ダンス・ミュージック』 (文:大須蔵人)
「平和は怖い。地獄を隠し持っているようだ」 黒い画面に浮かび上がるこの警句。そこに少し不穏な雰囲気を醸し出すシンセサイザー音楽が重なる。なんとも不可思議な文章のオープニングは、以前紹介した『原発ピンク列島』(第30回)と同じだ。厳密にいうと音楽は微妙に異なり、文字の色が違っているのだが、少なくともこの時期に共通したオープニングを使っていたことがわかる。 今回紹介するのは1990年に発売された、その名も『ダンス・ミュージック』という作品だ。 本作の監督は、『原発ピンク列島』と同じく伊勢麟太郎監督。メーカーはビックマンで、発表年も『原発ピンク列島』と同じと共通点が多い。 とはいえ、原発銀座をめぐる“ガチ”のドキュメンタリーだった『原発~』に対して、『ダンス・ミュージック』は、かなり綿密に作り込まれたサスペンスドラマだ。
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はぐれAV劇場 33 『ブルーフィルム』 (文:大須蔵人)
今年の3月に、俳優の田中邦衛さんが亡くなられた。大俳優の死に、メディアは彼の代表作とされる「北の国から」シリーズの話題を中心に取り上げて故人を偲んでいた。だけど僕にとって田中邦衛は黒板五郎でも青大将でもなく、勅使河原宏の『他人の顔』(精神病患者!)や、「仁義なき戦い」シリーズ(インテリヤクザ!)で、みるものに妙なインパクトを与える名脇役としての姿だったりする。そして何より山田洋次監督『学校』のイノさんか。 田中邦衛さんが主演した映画に、森崎東監督の『黒木太郎の愛と冒険』(1977)という作品がある。小心者でありながら、ジープのボンネットに日本国旗を掲げて、軍モノのジャケットを羽織った“右翼っぽい”格好をして、国家機関の施設を挑発して回るという変な趣味をもったスタントマンを演じている。 この作品の冒頭、映画を志す青年三人がカメラに向かって自身の話をする場面がある。そのなかでひときわ声が低く、滑舌の悪い青年が語る。 「オレは、主に俳優をやった伊藤銃一です。オレらは素人で、こんなことやらされるのは初めてだけど、映画は好きで、オレはそのうち映画監督になるつもりでいます。〔後略〕」
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はぐれAV劇場 34 『監督ノート』 (文:大須蔵人)
今年の6月末から配信がスタートし、そのプロモーション方法も含めて前作にも引けを取らない大きな話題となった『全裸監督2』だが、もうご覧になった方も多いことだろう。 今回の目玉は、やはり一時市場シェアの40%ちかくを占めていた(本橋信宏『全裸監督』488頁)とまでいわれるダイヤモンド帝国の崩壊と、その凋落のなかで登場する乃木真梨子(後の村西とおるの妻)がどのように描かれるかというところだろう。原作のファンならば、どの部分を描いて、どういった脚色がなされているかという点を確認することも楽しみの一つだ。 僕も公開後すぐに鑑賞し、そのなかである場面にとても目がいってしまった。それはストリップの殿堂「浅草ロック座」でダイヤモンド映像の女優陣がショーをするというシークエンスなのだが、なぜそこが気になったかといえば、「あ、このビデオ持ってる」となったからだ。
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はぐれAV劇場 35『みやびやかなあげまん』 (文:大須蔵人)
現場の大変さをありありと見せつけてくれる作品が、今回紹介する『みやびやかなあげまん』だ。1990年にダイヤモンド映像からリリースされたこの作品の主演は公称1107(イイオンナ)ミリメートルのGカップで巨乳ブームの火付け役となった松坂季実子。この連載でも以前(第10回『ふるさと創性論 季実子の玉おこし』)紹介した伝説級の人気女優だ。 そして本作の監督は大村文武。若い読者はまずご存知ないとは思うが、「月光仮面」の主演として知られ、昭和の時代に多くの映画・テレビ作品に出演した俳優だ。
movie
はぐれAV劇場 36 『裸だよ全員集合!!』 (文:大須蔵人)
“はぐれAV”をわざわざコレクションして紹介するという活動をしていると、たまに「どういう基準で作品を選ぶんですか?」とたずねられる事がある。 そのことを改めて考えてみると、おそらく僕がセレクトの基準としてきたものは、まず1に「ヌケない」、2に「ドキュメンタリー性」、そして3に「作品性」が挙げられる。これは僕なりに確固とした基準といえるもので、このいずれか、あるいはいくつかを満たす作品を“はぐれAV”として評価しているのだと思う。 でも、もちろん実際には人の数ほど性癖があるわけだから、「ヌケない」の基準とは何だ?ということになってくる。というのも、僕が紹介するようなヘンテコな作品のほかにも、実際のところフェチ系・ビザール系のマニアAVには、一般的にすごく変に見えるものもが結構普通にあったりする。つまり、一見“はぐれAV”に見えるものも、その筋のマニアの方々にとってはたまらなく「ヌケる」作品だったりもするのだ。
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BOOKS
ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)
ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。
本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。
旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。
ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)
稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。
1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!
ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)
プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。
これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。
ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)
書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい
電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。
ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)
伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!
かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。
ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)
――ラブホの夢は夜ひらく
新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!
ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)
――秘宝よ永遠に
1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!
捨てられないTシャツ
70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。
圏外編集者
編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。
ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014
こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。
独居老人スタイル
あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。
ヒップホップの詩人たち
いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。
東京右半分
2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!