機械仕掛けの見世物小屋――ジルベール・ペールのアトリエから
先週まで2週にわたって、パリのアル・サンピエールで開催中の展覧会『HEY! ACT III』についてお伝えしてきた(『モンマルトルのベガーズ・バンケット 前・後編』)。60名以上によるビザールでエネル…
art 人形愛に溺れて・・妖しのドールハウス訪問記 |
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昨年末から今年初めにかけて、恵比寿のアートブックショップNADiffで『暗夜小路 上野~浅草アンダーグラウンド・トリップ』という小さな写真展を開いた。今号でも紹介する新刊『東京右半分』がテーマの写真展で、特別展示として上野御徒町にショールーム、葛飾区に工場を持つ、日本最高級のラブドール・メーカー「オリエント工業」のシリコン製ラブドールを展示させてもらったのを、御覧いただいた方もいらっしゃるだろう。
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その場で「これ、自分で作った作品集です」と手渡されたラブドール写真集の粘度とクオリティに驚愕、ぜひお話聞かせてくださいとお願いしたところ、「家に来てくれれば人形部屋もありますから」と言われて大興奮。日を改めて葛飾区内のアパートにお邪魔してみると・・・そこは予想を超えた驚愕のドール・インスタレーション空間だった。おまけにドールのうちの一体は動いてるし! よく見るとそれは「みーな」ちゃんという、そのスジでは有名な「着ぐるみアイドル」。兵頭さんはこちらの来訪にあわせ、そんなサプライズ・ゲストまで用意してくれていたのだった。 |
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兵頭 喜貴(ひょうどう よしたか)さんは活動、コレクションと同様、その半生もまたどうしようもなくドラマティックである。まずはご本人による略歴をお読みいただこう―― |
1973年、愛媛県 東宇和郡 野村町に生まれる。家業は建設業、祖父は県会議員副議長、父親は町議会議員を務めるような家庭に育ったために、少年時代は、暴力団との抗争、右翼団体による執拗な嫌がらせ、露骨な汚職、選挙違反、不正入試、恐喝、といったありとあらゆる悪徳にまみれて生き抜くことを余儀なくされる。未熟さから発生した描くことへの限界から、地元の県立高校入学と同時に、本格的に写真の世界にのめり込む。高校卒業後、陰惨な世界と関わりを絶つことだけを目的として、東海大学 工学部 建築学科に入学、大学時代は、映画サークルの会長を務め、主に8mm自主映画の製作に勤しむ。
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生まれたのは、いまは西予市という名前になってる、愛媛の田舎です。けっこう内陸部に入ったところですね。子供時代は漫画じゃなくて、むしろテレビアニメに夢中でした。小学校に入る前、物心つくと同時にガンダムとゴレンジャーが流行って。
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僕は小学校のころから人工生命体フェチというか。小学4年生でしたか、ボトムズというアニメがあって(装甲騎兵ボトムズ 83~84年放映)、アンドロイドの女戦士にときめいたのが、始まりかなあ。それで東海大に進学しまして、特撮研という特撮系の映画サークルに入るんです。そこにはかなりやばい先輩がいっぱいいて、教育されましたねえ。自分の見たいアニメが映画館にかかると朝イチに行って、5連続で見てるとか。
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大学院は2年間でしたが、学校と自分の考えはぜんぜん合わなかった。自分のやりたいことと校風というんですか、それがまったく合わずに。日芸はかつて学生運動のすごく激しいところでしたから、その反動で学生を抑えすぎてたんですね。
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「ところで」と、インタビューが一段落したところで、兵頭さんが奥から分厚いアルバムの束を持ってきた。聞いてみると、数年前にものすごく変わったオッサンと出会い、それが実は超・下着マニアで兵頭さんと意気投合(笑)。で、オッサンが死去したあとに、残された膨大で役に立たないコレクションを持てあました息子さんから、「オヤジの趣味を理解できるのは兵頭さんしかいないので・・」と、コレクションのすべてを託されたと言うのだ。
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大震災の翌日、新宿の自宅でUのオヤジが息を引き取りました。享年61。便所に入ったら、急に具合が悪くなり、そのままあっと言う間に亡くなったそうですから、比較的楽な死に方だったようです。 5年程前に肥大化した心臓を半分にブッタ切る大手術を受け、以後半分廃人みたいな感じだったんですけど、やはり長生きは出来ませんでした。マッドドクターに「余命3ヶ月を3年に伸ばすだけです」と言われて「金も無いし、痛い思いはしたくないのでこのままでいいです」と駄々こねながらも手術したんですが、本当に医者に言われた通りになりました。
Uのオヤジは、はっきり言えばキチガイでした。高校の修学旅行で酒盛りやって、翌年の修学旅行を中止にしたとか、人生で勤労した経験がほとんど無く、この四半世紀は完全にニートだったとか(奥さんも子供もいるのに)、子供の頃から目茶苦茶三昧の乱暴者で、趣味に生きる大騒がせ野郎だったそうですから、わざわざ、世間が大騒ぎしている真っ最中に死ぬというのは、いかにもあのオヤジらしかったようにも思います。
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この度、一周忌の供養を兼ねて、遺品の一部と膨大な量の下着写真ファイルを公開することに致しました。Uのオヤジの生き様に触れてみたいという方は、是非ご観覧下さいます様よろしくお願い致します。
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ちなみに展覧会の会場となる「どっきん実験室」とは、コスプレ・ダンサー&パフォーマーとして、そのスジでは知らぬもののない井原秀和円奴S(イハラヒデカズまるやっこスーパー)らが主催する、よくわからないけどすごそうなスペース。 |
世界的なカメラマン篠山紀信、蜷川実花などの試写体でもあり、東京クラブカルチャーの夜明け[芝浦GOLD]や[西麻布Yellow]などで数々の伝説を産み、現在、[新木場ageHa]が産んだダンサー代名詞とも言える《東京☆キャバニー 》の"おきてヤブリの可愛い娘ちゃん" = YaCcOこと、変身変化変体芸術家=井原秀和円奴S(イハラヒデカズまるやっこスーパー)a.k.a. MARU-YaCcO(円奴 まるやっこ)と、大手ゼネコンで人生労働を学び、渡米後Artの本場ニューヨークと東京で《芸術市場の喜びと苦しみ》を長年に渡り体感してきた樋脇“丁稚奉公”康介が発信する、どっきん個性が強すぎ、独創的すぎてイキすぎる…そんな奇才的でやり過ぎであり、様々の偏見を飛び越えた、これからの新生ニッポンの芸術界に希望を願い、求め、始めてみる実験室。どんな形であれ、人に愛される、愛くるしい作品達を発表し続ける所存。個性溢れるアーティストをフューチャーし、繰り広げられるこだわりオープニングレセプションパーティ(毎月第2土曜日)は世界の芸術界(宇宙)に向け、あの軍艦ビルより発進!! |
僕もまだ実験室には行ったことないけれど、会場がある新宿歌舞伎町の通称「軍艦ビル」(ニュースカイビル)は、異端の建築家・渡邊洋治によるビザールな傑作集合住宅であり、いまでも海外の建築家が東京に来ると、いちばん見に行きたがる作品のひとつ。今回は軍艦ビルの内部に入れる貴重なチャンスでもあるので、変態に興味あるかたも、建築に興味あるかたも、ぜひ足を運んでみるべし!
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Uのオヤジ遺品展 —— オカマになれなかったオッサンの夢の残骸 |
先週まで2週にわたって、パリのアル・サンピエールで開催中の展覧会『HEY! ACT III』についてお伝えしてきた(『モンマルトルのベガーズ・バンケット 前・後編』)。60名以上によるビザールでエネル…
最近ではテレビ番組『クレイジージャーニー』や雑誌『BURST』の復刊でも知られるようになったケロッピー前田さんは、いつも興味深いことや恐ろしいことやおぞましいことをいろいろ教えてくれるのだが、ここ数年…
美味しそうじゃない食事が、美味しそうに見えない容器に盛られている。 箸をつけたくないな~という気持ちのあらわれのように、ご飯におかずを載せて雪だるまみたいな顔をつくってみたり。バナナの皮を皿から伸ば…
10月16日にDOMMUNEスタジオから生配信したばかりの「スナック芸術丸/第五十一夜 アウトサイド・ジャパン」が、メルマガ購読者限定でアーカイブ公開になりました。以下からご視聴いただけます。メインゲ…
まったくの口コミだけで、静かに読みつがれている旅行記がある。前編が2015年、後編が翌16年に、大阪のギャラリーが版元となって刊行された自費出版・少部数の文庫2冊組。いずれも130ページそこそこのコン…
ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。
本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。
旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。
稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。
1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!
プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。
これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。
書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい
電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。
伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!
かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。
――ラブホの夢は夜ひらく
新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!
――秘宝よ永遠に
1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!
70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。
編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。
こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。
あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。
いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。
2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!