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バックナンバー:2016年08月24日 配信号 収録

photography 女子部屋――川本史織と女の子たち


ずっと昔、こんなふうに中国が開ける前の北京に通っていた時期があった。そのころ北京でいちばん大きな書店に行くと、一冊の本に群がる男たちを仏頂面の店員がにらんでいて、いったいなにを見てるのかと思ったら、それはデッサン用の「人体ポーズ集」だった。なぜそれが?と手に取ってみると、小汚い白黒印刷のページには、ちょっとくたびれた全裸の白人モデルがいろんなポーズを取っていて、ようするに北京の男たちはそれをエロ本(というものは存在しなかったから)に代わる貴重なネタとして凝視していたのだった。

2013年1月に川本史織の『堕落部屋』という写真集を紹介したことがある(https://roadsiders.com/backnumbers/article.php?a_id=178)。「デビューしたてのアイドルだったり、アーティストの卵だったり、アルバイトだったりニートだったり・・・さまざまな境遇に暮らす、すごく可愛らしい女の子たちの、あんまり可愛らしくない部屋を50も集めた、キュートともホラーとも言える写真集」と書かせてもらったが、その川本さんの第二弾写真集が『作画資料写真集 女子部屋』というので、もう20年以上も前の北京の思い出が甦ったのだった。ちなみに「女子部屋」は「おなごべや」と読ませるそうだ。


地下アイドル、ネット配信者、歌手、モデル、ヘアメイク・アーティスト、主婦、劇団員、会社員、エステティシャン、バンドマン、ラジオDJ、テクノポップシンガー、現代美術家、漫画家アシスタント、メイドさん、ゲーム・デザイナー、魔法少女見習い、愛の天使、カレー屋店員etc…

作品作りのための資料集としても、今の時代を切り取る様々な女子職業図鑑としても、写真集としても楽しめる、ボリューム満点の一冊です。

女子たちの職業、年齢、家賃、趣味、出身地、嫌いな食べ物、将来の展望、各部屋の間取りをデータとして掲載。
(出版社サイトより)


「堕落」から3年経って、くくりは「女子」になったけれど、川本さんが女の子の部屋を見る視線はほとんど変わっていないようにみえる。「作画資料」とわざわざ銘打っている、つまりは部屋を素材に自分の作品をつくろうという、アート・フォトグラフィにありがちな強引さではなく、あくまでも一歩引いたスタンスで、その女の子の存在感や部屋の空気感を賞味しようという気分が、引き気味の画面から伝わってくる。


女の子の部屋を男の写真家が撮影するというのは(よく間違えられるそうだが、川本史織は男性写真家だ)、写真によって被写体と撮影者の関係をどれだけ強く表せるかが作家性だと思われていて、それはたとえば荒木経惟さんが筆頭にあげられるだろうが、川本さんはそういうみずからの作家性のために「女子部屋」を利用しようとはしないし、「ポーズ集」や「資料集」のような作為の見えなさこそが生み出す魅力を、よくわかっている。たとえて言えば、仲良くなった女の子の部屋に初めて招き入れられたときのような、そこはかとない緊張や好奇心や欲望や、そういう気持ちが混じりあった「気分」を画面に定着させることのほうに、川本さんはずっとこころを砕いているようにみえるのだ。


1973年に京都で生まれ、金沢で育ち、卒業後は京都でフリーカメラマンとして働いたあと、川本さんは東京にやってきたのだったが、上京して最初のころに手がけていたのが、秋葉原のメイドやアイドルの子たちを撮影すること。それを自分でジンにしていたのが出版社の目に留まって、最初は「アイドルによるポーズ集」ができないかと言われたのが、いつのまにか「堕落部屋の写真集」になったのだという。それが2012年だったが、すでにその時点で「作品集」ではなく「ポーズ集」が頭にあったというところに、川本さんのユニークな写真家としてのスタンスがうかがえる。


当時、川本さんは上野御徒町の古いビルにスタジオを持っていて、床にホットカーペットが敷いてあったのが、やけに印象的だった。

がらんとした部屋の片隅には姿見とホットカーペットが敷いてあって、「ここは冬、寒いんで、待ってるあいだに風邪引かないようにと思って敷いてるんですけど、このうえで寝ちゃう子とかいるんですよ」という、なんともフレンドリーな雰囲気だ。

こういう環境と、川本さんの明るいキャラクターが、ああいう写真を生み出しているのだろう。いやらしいけど過度にエロくはなくて。男の目をちゃんと意識しているけれど、媚びてはいなくて。明るく朗らかそうだけど、ちゃんと闇も抱えていて。

そうしてそれが、芸能界がずっと再生産しつづけてきた、男たちの手による幻想の産物とは根本的に異なる、21世紀型のアイドルというまったく新しい存在のありようであることは、もはや指摘するまでもない。
(2013年1月23日号より)


前回は50人、今回は102人の女子部屋が写真に撮られて、その中で女の子たちはやっぱり、ちゃんとカメラの、男の眼を意識しながら、媚びることも身構えることもなく、のびのびとそこにいる。いつもしているようにアニメを見たり、本を読んだり、お菓子を食べたり、押し入れの中で丸くなったりしながら。そこは、男が訪ねてくることもあるかもしれないけれど、ずっといることはできないような、女の城。


入るけど、入り込まない――そういう川本さんの「女子観察術」は、やっぱり男だからこその目線なのかな、とも思うのだ。

写真集発売を記念して、ただいま写真展も開催中(8月31日まで)。大判のプリントで見る「女子部屋」は、いったいどんな匂いがするのだろう。


川本史織「作画資料写真集・女子部屋」出版記念写真展
~8月31日(水)まで
開催時間:月・火 14:00~19:00 金・土・日 11:00~19:00
最終日8月31日(水)14:00~19:00
休廊日:水・木(最終日の水曜はオープン)
@高橋理子押上スタジオ 東京都墨田区業平4-11-2
TEL 03-6456-1624
http://takahashihiroko.com/


作画資料写真集・女子部屋(玄光社刊)

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)

ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。

本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。

旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。

特設販売サイトへ


ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)

稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。

1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!

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ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)

プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。

これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。

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ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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