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2024年08月28日 Vol.610

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精神病院と巨大石顔彫刻庭園

2週間ほど間が空いてしまった「韓国江原道オン・ザ・ロード」、今週は東海岸の海辺の町・三陟(サムチョク)市郊外にある男根公園=海神堂(ヘシンダン)から一路内陸部にドライブすること約2時間、忠清北道陰城郡にある「ウムソン巨大石顔公園」へお連れする。 韓国のほぼ中央、江原道の南西に隣接する忠清北道(チュンチョンブクト、通称忠北/チュンブク)は、韓国唯一の海と接していない内陸道(なので山梨県と姉妹道県!)。その北部にある陰城(ウムソン)郡の町外れという・・・・・・前回の海神堂公園以上にアクセスのハードルがかなり高い、しかし異常なスケールと迫力の「巨大石顔」がおよそ千体、つまり政治・経済、社会、文化、宗教、芸能、スポーツなどあらゆる分野の世界的な著名人が千人も集結しているという、すさまじい石彫公園、それがこの巨大石顔公園なのだ。

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Freestyle China 即興中華  北朝鮮と烧烤とナイナイミャオ (写真・文:吉井忍)

せっかく中国のビザを取ったのに、まだ全然使えていない。もったいないので航空券が高くなる前に行ってこようと、サイトをのぞいてみた。羽田発の北京行きが思いのほか安く、即購入する。ただ、気になったのは北京の気温。私が調べた日にはちょうど高温警報が発令されていた。しかもホテル代がコロナ後に高くなり始め、お気に入りだったエコノミーホテルでさえ素泊まり400元くらいになっている(1元は約20円)。もっと北へ行こうと思った。 どうせ行くならそれなりの距離がある場所がいい。寝台列車で行けば一泊分の宿泊費が浮く。

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デザインの世間体 012 特別編  『カミオン』創刊40周年・記念連載 我が青春のバイブルよ永遠なれ!  第2回 独創性あふれる沖縄(うちなー)のアートトラック (写真・文:松吉 満 / 編集:若生友見)

映画『トラック野郎』は単発映画として撮影され、1975年8月30日に公開された。初日から大きな話題を呼び、翌日にはシリーズ化が決定された凄い作品である。当時は神奈川県横浜市にあるトラックアクセサリー専門店の塚本屋中村商店が劇中に登場するデコトラの装飾を手がけていた。自分のトラックを美しく飾るという文化は万国共通であり、映画『トラック野郎』をきっかけに日本全国の港町やダンプの世界にますます広まっていた。

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暗黒絵日記 のり子の夢は夜ひらく  48話 私の闇5 リストラ要員~自主退職後(画・文:新開のり子)

定年までいる夢もはかなく退職をすることにしました。 退職後は、ストレスでなってしまった円形脱毛症の治療のために病院に行きました。 頭皮にドライアイスのような冷たいものをあてながら、円形脱毛症担当の先生が「心のケアをするのがとても上手な先生がいるから紹介してあげる」と言ってきました。 「とても優しい先生だよ」というので後日、紹介された病院に行きました。 心のケアをしてくれる病院・・・ 中に入ると怖そうな風貌の女医。 高圧的な態度でのカウンセリング。 優しいと聞いていたのに病院を間違えたのかと思うくらいでした。私の体型を見るやいなや「あなたは過食症ね!」と診断されました。

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おいでよヘンタイの森  12 年上が好きという39歳のすごい秘密  文・イラスト:mimi(会社経営&フリー女王様)

これはつい先日の出来事なので、熱量があるうちに書きたいと思います  いつものように引き当ててしまった感じです  わたしがチャットではじめましてのお客様  入ってきていきなり 「年上が好きなんです」 という第一声 相手はマイクでわたしはチャット  どんなくらい年下なんだろうと思ったら  39歳 名はまさくん  ほぼ同世代・・・

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絶滅危惧映像の現在形――どっこい生きてるニッポン特殊AVコレクション  02 怪奇特集:あなたの知らないホラーAVの世界 ジャパニーズホラー編 (文:押スノ踏マズ)

肝がキンキンに冷えること間違いなしの納涼AV第2弾いきます。今回は日本の伝統的な幽霊や巫女をモチーフにしたAVをご紹介したいと思います。 カルト映画が好きでよく見るのですが、ホラー映画が怖くて見れないんですよね。カルト映画祭などでは、よくホラーも一緒に上映されたりするんですが、怖すぎるホラーは混ぜないで欲しいと思ってしまう派です。特に日本のホラーって本気でビビらせに来てますよね?観ているだけで呪われそうで……。という体たらくなので、一般作のホラーは『リング』や『らせん』などの有名作でも観たことがありませんでした。 でもAVなら観れるかもしれない……!ということで、日本の怖いAVを観ていきたいと思います。果たして怖さとエロさという正反対に思える生体反応は両立するのか?鬱勃起ならぬ、ビビリ勃起は可能なのか?皆さまも一緒に検証していただければと思います。

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2024年08月21日 Vol.609

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『TOKYO STYLE』と『ゆびさきのこい』

まったくの偶然だが、8月に2冊の新刊がリリースされる。前号までにちょこっとお知らせしたが、一冊はデザイン関係に興味のあるかたならご存じのスペイン・バルセロナの「APARTAMENTO」(アパルタメント)による、1993年に京都書院から刊行された大判の『TOKYO STYLE』を、ほぼそのまま復刊した英語版『TOKYO STYLE』。いったいなぜ2024年になって、30年前の東京の安アパートの写真集を・・・・・・と、お話が来ていらい謎が深まるばかりだったけれど、ついに現実の分厚い写真集が届いて、あらためてびっくり。でも、とりあえずありがたい!

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堀内誠一 絵の世界

先週号では松江の島根県立美術館で開催中の『アンアン』『ポパイ』のデザイン 新谷雅弘の仕事・展を紹介した。予告どおり今週は同じ島根県の益田市にある島根県石見美術館で開催中の「堀内誠一 絵の世界」展にお連れする。先週書いたように、新谷雅弘は『アンアン』から『ポパイ』『ブルータス』『オリーブ』に至るマガジンハウス全盛時代の雑誌を、師匠にあたる堀内誠一とともにアートディレクター/デザイナーとして立ち上げてきたひと。「堀内誠一 絵の世界」展は生誕90周年を記念して2022年から全国を巡回中で、今回新谷展と同じ県内で重なったのはまったくの偶然ということだが、師匠と弟子の展示がこんなふうに同期するところに、なんだか運命的なものも感じてしまう。

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暗黒絵日記 のり子の夢は夜ひらく  47話 緊急入院編 退院 (画・文:新開のり子)

部屋のカーテンをガバッと開ける看護婦さん。 「先生の診察がありますよ!」 いつもの点滴を終え診察室に行くと、検査結果が良くなってきているのでもう少しで退院できるでしょう!と先生より嬉しいお言葉をいただきました。 静かに横たわり点滴が終わるのを待ちます。 しばらくすると昼食の時間がやってきました。 待ちに待った食事の時間です。 看護婦さんがそれぞれベットまで食事を運んでくれます。 私は、食事が運ばれてくるなり、勢い良く食べました。

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デザインの世間体 011 特別編  『カミオン』創刊40周年・記念連載 我が青春のバイブルよ永遠なれ! (写真・文:松吉満 / 編集:若生友見)

今月から12月まで、この連載「デザインの世間体」の中で特別編「我が青春のバイブルよ永遠なれ!」を開始します! 私は8年前からアートトラック(デコトラ)の月刊専門誌『カミオン』の編集に携わっています。 『カミオン』はおかげさまで今年の6月号で創刊40周年を迎え、8月号では通算500号に至りました。 私は現在フリーランスなのですが、それ以前は『カミオン』を発行する芸文社に数年勤めていました。私をカミオン編集部に採用してくれたのが今回から不定期で特別編を書いてくれる松吉満さん(前カミオン編集長)です。

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ニュー・シャッター・パラダイス 74  どっこいしょ尊い (写真・文:オカダキサラ)

しゃがむ姿勢が好きではありません。立ち上がる時に必ず立ちくらみを起こすからです。 とはいえ、しゃがみながらの作業は制作につきもの。姿勢を元に戻すときは喝をいれるために「どっこいしょ」と掛け声をかけるのが習慣になってしまいました。 「どっこいしょ」はどこかの方言かと思っていたのですが、仏教の「六根清浄」が由来と知って驚きました。

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lifestyle

バンカラ女銘々伝 第10回  「ドーリー」と呼ばれた女 薩摩千代 (文:平山亜佐子)

 薩摩千代の夫、薩摩治郎八については獅子文六、瀬戸内寂聴が、また2010年代に至っては相次いで3冊の本が出版されているが、妻の千代に関する本は一冊も出ていない。  しかし、浮き沈みの激しい治郎八の人生の中でもっともいい時代をともに生きたこと、世が世なら会津のお姫様である千代が1920年代のパリでモダンガールとして名を馳せたことはとても興味深い。  その美貌から「ドーリー」(人形)とよばれた千代は、果たして中身も人形だったのだろうか。

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ユーラシア後ろ歩き 14  深く謎めいたラサの夜 (文・写真:多田麻美)

今はどうなのか分からない。だが、私が訪れた21世紀初頭のチベットは、まだまだ理性だけでは受け入れがたい、不可知な闇の世界への入り口があちこちにあるように見えた。 印象に残っている風景がある。今となっては幻のようだが、確かに目にした風景だ。 それはある町の、警察署のすぐ近くでのことだった。用事を終えた私は、食事でもしようと、裏通りの地味な喫茶店に入った。席を探しながら気づいたのは、店の空間が普通でないことだった。通り沿いの部屋は飲食用だが、奥にベッド付きの部屋があり、着飾った女性が座っていたのだ。 私ははっとした。ここって売春宿じゃないだろうか? 客が来たらきっと、奥の部屋に入れて、扉を閉めるのだ。

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編み物☆堀ノ内の「帰ってきた肖像編み物」 第9回 番外編 (元)鶴谷洋服店 岩船吾朗・洋子 (聞き書き:川上雅乃)

今週の「帰ってきた肖像編み物」は番外編。僕の編み物(ニットのバッグ)を売ってくれている(元)鶴谷洋服店の岩船吾朗さん・洋子さん夫妻に取材させていただきました。(元)鶴谷洋服店があるのは神保町書泉グランデの裏、向かいは小宮山書店、5秒歩けばすずらん通り。そんなバリバリの一等地で、売っているのは昭和の雑貨、古本、古着。ビジネスビジネスした店(おもに飲食店ですが)が増えてきた神保町で、ひょうひょうとマイペースを貫いています。なんで屋号が「洋服店」? 建物古そうだけど、奥や階上はどうなってるんですか? ずっと不思議に思っていたあんなことこんなことを聞いてきました。

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2024年08月14日 Vol.608

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『アンアン』『ポパイ』のデザイン 新谷雅弘の仕事・展

東西に細長い島根県の東端、おとなり鳥取の米子・安来市と中海を挟んで向かい合う松江市は、山陰地方最大の都市。しじみで有名な宍道(しんじ)湖のほとりに建つ島根県立美術館ではいま「『アンアン』『ポパイ』のデザイン 新谷雅弘の仕事」展が開催中だ。 デザイン好きのひとに新谷雅弘という名前がどれくらい知られているか、よくわからない。でも『アンアン』から『ポパイ』『ブルータス』『オリーブ』に至るマガジンハウス全盛時代の雑誌を、師匠にあたる堀内誠一とともにアートディレクター/デザイナーとして立ち上げてきたひとであり、個人的にも20歳で創刊間もない『ポパイ』でアルバイトとして働き始めたときから『ブルータス』を卒業するまで10年間にわたってお世話になったひとなので、この展覧会を見過ごすわけにはいかない。

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デザインの世間体  010 ハートに火をつけて (写真・文:若生友見)

花火大会シーズンですね。 花火と聞いてまず何を思い浮かべますか?  大玉の打ち上げ花火、繊細な線香花火、火薬のにおい、親しい人との思い出、夏まつり……などいろいろあるかと思います。 夜空いっぱいに尺玉が花開くスペクタクルはやはり圧巻ではありますが、こちらも負けないくらいのビジュアルインパクトがあるのではないでしょうか。

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妄想ホテル room:041  夏休みの自由研究 写真家うつゆみことラブホテル (写真・文:フクサコアヤコ)

7月、蝉の第一声とともに私の長い夏休みが始まった。 私は写真を撮っている一方でフリーランスのOLとしても働いているのだが、業務の繁忙期が秋冬春のため夏は比較的ヒマなのだ。フリーランスなのでここ数年は夏にも別案件を受注して通年OLとして働いていたが、少しつまらなくなってきたため今年は久しぶりに2か月夏休みをとることにした。 平日の昼から空いている映画館に行ったり、昼酒を決めてほろ酔いになってみたり、平日料金のフリータイムでラブホテルにしけこんだり、ぜいたくな時間を使って大人の夏休みを満喫するためだ。 その日も昼からビールを片手に何か面白いことはないかとSNSをさまよっていると、とある投稿が目に入った。 「気がついたら100枚位のワンピース、その他たくさんの服があり… 『服があった(仮)』というジンを制作したく、写真を撮っていただける方を募集します!! スタイルが確立している、個性のある写真を撮って下さる方だと大喜びです!! 遊び心のある方もお待ちしています!!」 写真家うつゆみこさんの投稿だった。

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おいでよヘンタイの森 11  ちんこがこの世と思えないM男さん  文・イラスト:mimi(会社経営&フリー女王様)

わたしが衝撃を受けたナンバー1ちんこがある  人よりは多めのちんこを見てきたと思うんですが、多種多様にちんこもあるわけで  大きい小さい、曲がり具合、長いの短いの太いの細いの  色だって人それぞれ  やたらちんこだけピンクだったり  今まで見ていたどんなちんこも、衝撃度ナンバー1ちんこからしたら  すべてがノーマル! THE普通  そのナンバー1ちんことの出会いはわたし主催のオフ会です  物腰やわらかなM男さん  既婚者の川端さん 50歳 

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ROADSIDE CHINA  中国珍奇遊園地紀行 38 遼寧省前編 (写真・文:関上武司)

大家好(中国語で皆さん、こんにちは!)。近所で30年近く営業していた書店&レンタルビデオ店が閉店し、ショックを受けております。今回は胃腸風邪による腹痛に苦しみながら敢行した遼寧省の中国遊園地の取材の様子をご覧ください。 2016年5月5日。この日は早朝から、高速鉄道で吉林省長春市から遼寧省瀋陽市へ移動。赤レンガでレトロな外観の瀋陽駅です。

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暗黒絵日記 のり子の夢は夜ひらく  46話 緊急入院編 奇妙な音 (画・文:新開のり子)

同室の私の向かい側から聞こえる大きくハキハキした声の女性 「え?何?」といって看護婦さんと会話にならないようです。 看護婦さんは、「今日は、飴を何個食べたんですか?」と聞きます。 その後、看護婦さんの問いかけに一切答えません。 看護婦さんは諦め行ってしまったようです。 そのあと、カシャカシャと音がしますが、それが飴だったとは、その日はじめてわかりました。 看護婦さんがまた戻ってきたようです。 名前を呼んでも返事もしません。 寝てしまったのでしょうか?

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Once upon a time ~もうひとつのカリフォルニア・ドリーミン 12  LAバンドとミュージックシーン  ブルース・オズボーン(写真家)

Art center college of Design in Los Angelsでの最後の年、The Band, Ray Charles, Tina Turner, Rolling Stones, Frank Zappaなど、数々のレコードアルバムを撮影する超売れっ子のNorman Seeffに会いに行ったところ、友人が立ち上げたばかりの音楽雑誌社が写真家とエディターを探していると、その雑誌社の編集長を紹介してもうという幸運に恵まれた。70年代後半に、僕がメインで写真の仕事をしていたのが、この時にNorman が紹介してくれたPhonographic Record Magazine (PRM)という音楽雑誌だ。ロックミュージックに関するニュースや情報を紹介するグラビア中心のフリーペーパー。ロサンゼルスの音楽シーンに興味があった僕にとっては絶好の仕事だった。新しいレコードアルバムの情報や、クラブで新しいバンドを取材することで、たくさんのミュージシャンや制作関係者に会って写真を撮り、話を聞く機会に恵まれた。

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神戸で桃色映画に浸る3日間!

2018~19年の連載「桃色の罠――日本成人映画再考」から文庫化、先日は大道芸術館で刊行記念イベントも開催した鈴木義昭さんが、「ピンク映画に興味あるけど観る機会がない!」という声に応えて8月30日から9月1日までの3日間、神戸市長田区の神戸映画資料館で特別上映プログラム「桃色映画・パンデミック‼ 2024夏 失われた映画、失われつつある映画、失われるかもしれない映画の3日間」を開催する!

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2024年08月07日 Vol.607

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追悼 宮間英次郎

“帽子おじさん”宮間英次郎が6月13日に逝去された。1934年12月17日生まれ、89歳の大往生だった。 宮間さんに出会ったのは2004年から06年にかけて月刊誌『サイゾー』で連載した「珍日本超老伝」の取材で、畸人研究学会の海老名ベテルギウス則雄さんにお願いして横浜寿町のドヤを訪ねたとき。「珍日本超老伝」は2007年に双葉社から単行本に、11年にはちくま書房で文庫化されたし、ロードサイダーズ・ウィークリーでは2014年の鳥取アール・ブリュット展にあわせて9月10日号から3週連続で「宮間英次郎物語」を掲載。海老名さんとふたりで聞き書きした、これまでだれにも明かしてこなかった人生の光と闇を語り尽くしていただいた。

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韓国江原道オン・ザ・ロード 2 海神堂公園

韓国東海岸、北朝鮮と国境を接する江原道をめぐる旅。先月の江陸(カンヌン)にある「チョンジョン彫刻公園」(という名前の男根ドライブイン)に続いてご案内するのは、江陸から海沿いに50キロほど南下した三陟(サムチョク)市郊外にある海神堂(ヘシンダン)公園。そう、知ってる人は知っている、名高い「男根公園」だ。

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新連載! 絶滅危惧映像の現在形 ――どっこい生きてるニッポン特殊AVコレクション  01 怪奇特集:あなたの知らないホラーAVの世界 妖怪・UMA編 (文:押スノ踏マズ)

ずっと昔、廃墟や秘宝館の取材で知り合ったひとと久しぶりに再会したら、彼女の本業がなんと当時からAVメーカーで、いまも制作を続けていると知ってびっくり。「AV新法とかで現場はいま大変でしょう」と聞いたら、「大変だけど、それでもいろんな作品がいまも出てるし、昔ほどじゃないけど変わったのもときどきあるんですよ」と教えられた。ポルノハブやマイファンズみたいな産直?配信にすっかり押されていると思いきや、いまもAVはDVDやブルーレイ、配信まで含めて、毎月およそ2千タイトル以上の新作が出ている。毎年じゃなくて毎月ですよ! 総務省統計局によると、1年間に出版される本が書籍・雑誌などあわせて約7万冊(2019年)、1ヶ月に約6千冊というから、AVはその1/3から1/2近くに迫っているわけで……もはや発表されるAVをすべてチェックするのはなんびとたりとも不可能! ちなみに新人AV女優は年間3千人がデビューしているとか。日本はいまでも屈指のAV大国だったのだ。

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シブメグの人生小劇場 38  プライスレス (写真・文:シブヤメグミ)

こないだ借金した。 それも私から100万円盗った昔の男のために。 それは33歳の、いわゆる「女の厄年」と呼ばれる年齢の時。 一緒に住んでた男が別れる時の荷物の整頓のどさくさに紛れて、勝手に私の預金通帳から100万円を引き落とした。 せめて半分にしてくれよ。 なんで残高388円になるまで掻っ攫っていきやがってよ。 全財産7000円くらいになって気が狂いそうになった私は、親友2人に雄叫びのようなメールを何通も何通も送りつけた。 ガラケーの、小さい画面から溢れんばかりの狂気を受け取った親友2人は、仕事を早退して駆けつけてくれた。 2人の胸を文字通り借りて泣き叫び続けた私は、そのまま、気絶したかのように眠り込んだ。

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デザインの世間体  009 レモンエロウの企み (写真・文:若生友見)

2019年に製作した「ragan No.026 wipe out」は梶井基次郎の『檸檬』を使用した文庫サイズの作品です。 イラストを中心としながら、文庫本として成り立つようレイアウトしています。『檸檬』は著作権が切れた作品のため全文引用しています。 私は修士時代に大学近くの書店でアルバイトをしていました。レジでヒマなときにしていた妄想というのが、「全国各地の書店に並ぶ『ザテレビジョン』が一斉に爆発する」というものでした。 これは表紙を飾るタレントが(ほぼ)必ずレモンを持っている雑誌『ザテレビジョン』と、梶井基次郎の著作『檸檬』のラストシーンの妄想を合体させたものです。

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暗黒絵日記 のり子の夢は夜ひらく  45話 緊急入院編 病室の様子 (画・文:新開のり子)

はっきりかたをつけてよ♪ もたもたしているうちに 部屋は埋まり「この部屋で我慢してください!」選ぶ選択肢もなくなりピシャリと言われてしまいました。 やってられないわ♪と歌いたくなります。 仕方なく諦めて、90代の方の痰取り時間になると素早く部屋を出ることにしました。 部屋を変えて欲しいと言ってから、隣のおばあさんの痰の回復がみられてきました。 薬が効いているようです。 しかしまだ熱が下がらないという事なので私は、なるべく部屋にいる時間を減らし誰も居ない談話室で一人座ったりしています。

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ニュー・シャッター・パラダイス 73  別になくてもいい、私の特技 (写真・文:オカダキサラ)

私の特技のひとつに、水ものを飲む速さがあります。特技といっていいか微妙な技ですが、驚くほど多く、早く水を飲めるのです。 学校の給食でのちょっとした定番イベント、「牛乳の一気飲み」では、さぞかしいい成績を残していただろうと思う人もいるでしょうが、残念ながら、この特技が開花したのは社会人になってからです。 お酒の席で「一気飲みコール」で鍛えられたわけではありません。業務内容のほとんどが屋外でウロウロすることだったからです。

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ユーラシア後ろ歩き 13  大地の母神のふもとで (文・写真:多田麻美)

実入りの悪い客を、上前を撥ねた上で、他の業者の団体客の中に押し込む。 もちろん輸送効率は良くなるのだろうが、高いチャーター料金を取られながら団体客の中に押し込まれた側からすると、理不尽だ。乗車料金がいくらかでも払い戻されるのなら、我慢できるしむしろ大歓迎だが、すでに成立してしまった値段交渉をやり直すのは、中国ではとても難しい。 すべてはチョモランマのためだ、とぐっと耐えた。

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バンカラ女銘々伝 第9回  「軍艦女史」と呼ばれた女 阿部銀子 (文:平山亜佐子)

  興味を持った女性を言い表す際によく「教科書に載らない女性」と言ったりする。教科書に載る女性、つまり学校を作ったり弁護士になったり事業を起こして成功したり高名な作家になったり、国家、文化に寄与した「偉い」女性にはあまり興味を持てない。男性がしていることを「女だてらに」したことで認められたにすぎないように思うからだ。  しかしここに、教科書に載るような事業をしたのにやりすぎて、或いはやり方が突飛すぎてまったく知られていない女性がいる。  その名は阿部(樫尾)銀子、日本に据置貯金という概念を広め、郵便法にも影響を与えた人物である。

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)

ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。

本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。

旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。

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ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)

稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。

1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!

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ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)

プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。

これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。

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ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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