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バックナンバー:2023年10月11日 配信号 収録

art 大道芸術館、1周年記念大増設報告!

先週末は3年ぶりになるロードサイダーズ・オフ会も開催できた向島・大道芸術館。昨年10月のオープンからちょうど1周年というタイミングで、先週は2日間かけて30点以上の作品を追加設置した。もともとかなりの圧縮展示だったが、日展やドンキホーテを見習って!とにかく空いてる壁面はすべて埋めたい!という決意で大量の作品を倉庫から持ち込み、設営スタッフたちのがんばりでそのすべてを展示することができた。

オフ会参加者のみなさまにはもうご覧いただけたが、今週は大道芸術館1周年で大幅増の(展示替えではなく!)作品展示空間にお連れしたい。これからリストをつくってプリント、開館時に制作した図録に付録として差し込む予定なので、機会があったらぜひ現場で見てほしいが、まずはこちらで予習していただけたら。

[1階]


玄関を入ると、引き戸の上にちょこっと乗っているのが塙将良の作品。塙さんは2022年10月19日号「駐車場の怪物たち」で紹介した。愛用の軽自動車が彼のアトリエだが、今年はあまりの猛暑に、初めて車内で熱中症になってしまったそう!



塙将良《MONSTER》2016年
塙将良(はなわ・まさよし)は1981年茨城県ひたちなか市生まれ。日本以外にフランスのアールブリュット/ロウブロウ・アート・シーンでも注目を集める作家である。制作はどんな大作でも、すべて愛車の車中。2014年ごろから現在までフライパン工場に勤務し、通勤用のクルマのなかで始業前の1時間と昼休み、それに仕事終わりには地元のケーズデンキ駐車場で照明がちょうどいいスポットに駐車して制作を続けている――「まず朝、1時間早く行くんです。始業が8時半なので、7時20分ごろ会社に到着して1時間やります。それからお昼が12時から45分あるので、そのあいだも描きます。昼はオニギリ2個と決めてるんで、5分以内に食べ終えて。あと3時に15分の休憩があるので、その時間も急いでクルマに戻って描きます。それで帰りにケーズデンキに寄って1時間。そうすると一日トータル3時間ぐらい、仕事しながら制作の時間が取れる。毎日がこの繰り返しで、それが心地良いんですよね。」


玄関正面には我が座右の銘でもある「the WHY CHEAP ART? manifesto」を額装して掛けてみた。



Bread & Puppet Theater 《the WHY CHEAP ART? manifesto》
ドイツ生まれの彫刻家ピーター・シューマンをリーダーとして、1963年ニューヨーク・ダウンタウンのロフトで旗揚げされた前衛人形劇団ブレッド・アンド・パペット・シアター。アメリカにおける現代人形劇の先駆的存在。1974年にカナダとの国境に近い田舎町グローヴァーの地に本拠地を移し、ミュージアムを兼ねたシアターを開いたのが74年。現在に至るまで、築百年を越す農場を改造しながら独特の人形(大きなものは数メートルにもなる)を制作したり、劇団員のトレーニングを続けている。夏の週末には広々とした草原を舞台に、ユーモアたっぷりな中にも政治風刺を織り交ぜた野外劇を上演する。初期のヒッピー精神を色濃く残す、いまとなっては貴重な前衛人形劇団でもある。
2002年夏にグローヴァーを訪れたときに買い求めたのが<the WHY CHEAP ART? manifesto=なぜアートはチープでなくてはならないか宣言>と題された一枚の小さなポスター。その短い文章には、四半世紀にわたって揺らぐことのなかった彼らの信条が簡潔に表現されている。「座右の銘」をひとつあげろと言われたら、これしかないというほど、僕にとっては大切な言葉だし、大道芸術館の水源もここにある。
「アートは美術館や金持ちだけに許される特権とされてきた、あまりにも長く。アートは金儲けじゃない!
銀行のものでも、おしゃれな投資家のものでもない、アートは食べものなのだ。アートを食べはできないけれど、アートは君を生き延びさせ、育ててくれる。アートはチープで、だれにでも手に入れられるものでなくちゃならない。アートはどこにでもあるべきだ。だってアートは僕らの生きる世界のうちにあるものだから」。
原文がすばらしく平明な原文のなかで繰り返される”チープ”は「安い」だけでも、「安っぽい」でもない。だれにでも、容易に手に入れられるべきものとしての、チープ。そういうものから、いまの現代美術は遠く離れてしまった。解説を読まないとわからない作品(だったら最初から文章にすればいいのに)、解説を読んでもわからない作品。ただの悪ふざけや内輪受け。漫画やアニメやグラフィティや、さまざまなポピュラー・カルチャーを薄めて、インテリっぽい味つけを施しただけの作品。そういうものに何千万円、何億円というプライスがついて、それがまた「そんな高価な作品には見えない、つまり価値のわからない自分」への劣等感と、その裏返しとしての「わからないアートへのむやみな尊敬」をかきたてる。「アートだから高い」のではなくて、「高いからアートなのだ」という皮肉なビジネス・モデル。それは寄付の金額が大きいほど、大きな罪も許された中世の免罪符システムと、なんとよく似ていることか。


玄関を入った左奥、レーザーディスクで唄えるVIPカラオケルームの入口には、1984年にニューヨークでキース・ヘイリングからもらったパーティ招待状のハンカチを。



キース・ヘイリング《THE PARTY OF LIFE》1984
ニューヨークのクラブ・シーンで伝説的な存在だったパラダイス・ガラージで、1984年にキース・ヘイリングとDJラリー・レヴァンが共催したパーティー・イベントのインビテーション・ハンカチ。ヘイリングの誕生日である5月4日に近い日程で1984年から86年にかけて連続開催された。当夜はデビューして間もないマドンナが2枚目のアルバム『ライク・ア・ヴァージン』からの曲もステージで初披露している。


VIPカラオケルーム入口、工藤正市が青森で撮った淡谷のり子の写真の下には、尾崎翔悟のドローイング。尾崎さんは2019年10月16日号「工房集の作家たち」短期集中連載のトップバッターで紹介。



尾崎翔悟《オリジナルバージョン》2011年
埼玉県川口市の障害者支援施設「工房集」で創作活動を続ける「仲間」(工房集では施設を利用する障害者をこう呼ぶ)のひとりが尾崎翔悟。1988年生まれ。ダウン症候群で2007年から工房に通うようになった。音楽が好きで、それ以上に楽器が大好き。名前、形状から音色まであらゆる楽器に詳しく、「エア演奏」も得意だったりする。愉快な動作で場を和ませる、根っからのエンターテイナー。工房ではおちゃらけキャラの人気者だそう。さまざまな楽器、それに高校時代は放送部に所属していたそうで、マイクやコードなど放送機材も時に描き込まれた尾崎さんの画面は、ひとりバンド、ひとりオーケストラのスタジオ録音風景のようだ。


カラオケルーム入口にはバンコク・チャイナタウンで見つけた激しい色彩のレンチキュラープリント〔見る角度によって絵柄が変化する印刷物〕を貼り込んでみた。変化の度合いがものすごいので、あまりに通俗的なモチーフと相まって悪酔いしそう・・・・・・。


カラオケルーム入口上部には、メルマガではおなじみ吉岡里奈の作品を開館時に飾ったが、今回はさきごろ吉原カストリ書房での展覧会(2023年7月12日号)で見つけたピンクチラシ絵画を並べた。



吉岡里奈(左から)《ピンクチラシシリーズ・にゃんにゃんチェンジ無料》《ピンクチラシシリーズ・上品な人妻・OL》《ピンクチラシシリーズ・女子大生・コールしてね!》すべて2018年
1階VIPカラオケルーム入口や階段に展示されている吉岡里奈による2018年に制作された《ピンクチラシシリーズ》。彼女の活動を初期からサポートしてきた吉原カストリ書房の、店舗移転に伴う旧店舗閉店記念個展「カストリ名所十景」で展示されたもの。


そしてデコトラをイメージしたVIPカラオケルームにふさわしく、モニターの下に写真家・田附勝の神々しいデコトラ・ナイトシーンを。



田附勝《Tenkamaru; In a Tunnel, Tochigi 2005》2005年
田附(たつき)勝は1974年、富山県生まれ。2007年、デコトラとドライバーのポートレートを9年間にわたり撮影した写真集『DECOTORA』を刊行。2006年から縄文以来のシャーマニズムが息づく東北の風土やこの地に暮らす人々の生活や文化を撮り続け、「東北」や「魚人」など多くの作品を発表してきた。2011年、写真集『東北』で第37回木村伊兵衛写真賞を受賞。最近は縄文土器を、発掘された当時にくるまれていた新聞ごと撮影するプロジェクトを続けている。




そしてアクリルケースに閉じ込められたラブドールもお召し替え! 2階のドール陣と同様、コスチューム作家YOMIさんによる創作衣裳。こちらのテーマは「農家の新婚夫婦が稲刈り作業、あぜ道のおやつ休憩でムラムラと・・・・・・」。

[1階から2階へ]



1階から2階へ続く階段ホールにも多数の作品が追加された。まずは、すでに2点が展示されている新開のり子による今年の新作(2023年8月23日号「LIFE―ある家族(と犬)の情景」参照)がお出迎え。



新開のり子《ゴッド セイブ ザ クイーン》2023年





大竹笙子《月刊与太#001》2022年
1993年愛媛県宇和島市生まれ、ロンドン芸術大学テキスタイル学科卒業。2022年12月に乃木坂・ギャラリー・アートアンリミテッドで開催された個展『版響 PRINTED ECHO』に出品された木版画作品。大竹伸朗の次女であり、長女・彩子とのコラボレーション作品も積極的に発表している。







水野純子《The Last Course: Meat》2022年(上)、《Ravenous Delights: Cheese》2020年(下)
1996年にイラストレーターとしてデビュー、東京で活動したあと2009年からサンフランシスコに居を移し、アートギャラリーでの個展、グループ展、漫画制作、デザイナー・トイからロックバンドのポスターまで、幅広い分野で活動を続けている。



ロードサイダーズで初の電子写真集『わたしたちがいたところ』をリリースしたばかりの天野裕氏のプリントも展示。天野さんの作品を常設で観られるのはここだけかもしれない。



天野裕氏《Last Night》2019年
常に旅しながら写真を撮り続け、コンビニでプリントアウトし、自分で編集して一冊だけの分厚いポートフォリオとしての作品集をつくる。それをファミレスや喫茶店やホテルのロビーで、見料を取って一対一で披露し、その売上げで旅を続けていく・・・・・・たぶん写真家のだれもが憧れながら、だれもできていなかったスタイルで創作を続けている天野裕氏。対面のコミュニケーションにこだわってきたことから、プリントを額装して壁面に飾る通常の写真展も、印刷版の写真集もいままでいちども実現していない。彼の写真の噂は聞いていても、実際に作品を見ることができたのは幸運な少数に留まっている。
「種田山頭火を放浪の俳人と呼び、山下清を放浪の画家と呼べるならば、天野裕氏(あまの・ゆうじ)は放浪の写真家である。2017年に出会ったとき、彼は展覧会をせず、写真集の出版もせず、軽自動車に寝泊まりしながら日本中を走り回り、ツイッターで「きょうはこの町にいます」とつぶやき、喫茶店やファミレスやスナックや公園で「客」を待っていた。旅の時間のなかで撮影した写真をコンビニでプリントして束ねた「写真集」をテーブルに置いて。そうしてやってきた客に「一冊千円」で写真集を観てもらう。1対1で。その見物料で食費やガソリン代をまかない、また次の場所に行く。毎日が旅で、毎日が撮影で、毎日が一期一会の、極私的な展覧会。そういう生活を天野くんはずっと続けて、いまも続けている。愛車の走行距離が20万キロを越えて潰れてから飛行機や新幹線やバス移動に変わっただけで。
 寒そうな海、フロントグラスに滲むテールライト、パンツを下ろした女の子、ぼやけた花、散らかった部屋、からまる舌、闇、光……それは旅情などという甘い語感ではとうていあらわせない、圧倒的にリアルな旅の時間の集積であり、乾いた日常であり、いつまでも終わらない旅であり、でもたしかにその旅には「情」の気配もあるのだった。」
(2023年9月末にリリースされた初の電子書籍写真集『わたしたちがいたところ』解説より)





フェン・メンボー(馮夢波)《GAME OVER》1993年ごろ
1966年北京生まれ。1991年中央美術学院デザイン科卒業。中国で最も早くからデジタル技術に着目し、活用してきたアーティストのひとりであり、1990年代には早くもニューメディア・インタラクティヴ・アートの実験を開始。 ニューメディアやテクノロジーを駆使して中国の文化的シンボルや歴史を探求・研究することに長けており、特にビデオゲームを使った作品で知られている。創作活動の初期、1993年に発表した一連の絵画作品『Game Over: The Long March』は、任天堂のゲーム『スーパーマリオ』を参照し、ゲームのスクリーンショットの形で赤軍兵士の冒険を描いている。その中で、スーパーマリオは毛沢東の戦略的な動きを指し示し、毛沢東が当時の権力を獲得するのに貢献した(本作は当時、北京で作家本人から購入したもの)。2008年には同じテーマをさらに追求し、同じ主人公のゲーム『長征:再起動』(2008年)を制作。来場者は、ギャラリーの壁に投影された24m×6mのデジタル・スクロールを通して、ジョイスティックを使って赤軍を操作することができる。その作品は2015年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で展示された。





大竹伸朗《メタ郎/ブルーギター》1991年
宇和島で拾った黒板に油彩、オイルスティック
1991年の誕生日に大竹くんからプレゼントされた作品。あのころはふたりともまだ30代・・・・・・。

[2階]

「茶と酒 わかめ」と名づけた、長いバーカウンターがある2階。もともと料亭の座敷だった空間は、畳はすべて取り払ったものの、床の間は残してある。そこに今回は川本史織(2013年1月23日号「可愛くて、やがて恐ろしき堕落部屋」の3枚のプリントを飾らせてもらった。

川本史織《The “LUCK” room 堕落部屋》シリーズ

主にオタク属性の女子の部屋を撮影したシリーズ。
秋葉原のとあるライブバーで働く女の子達は、その業務形態から生活環境が不規則でした。
それゆえに部屋が荒れつつあり、その荒れた様子を自ら「堕落部屋」と呼ぶようになりました。
それが始まりです。
部屋は英気を養い、次に繋げる場所であると考えられます。
好きなものに囲まれて元気を充填したら、明るい未来に向かって生きて行く。
それが堕落部屋。


《The “LUCK” room_ nanai room》2012年


《The “LUCK” room_ isami room》2017年


《The “LUCK” room_ sakurako room》2015年

2013年に発表された写真集『堕落部屋』は、デビューしたてのアイドルだったり、アーティストの卵だったり、アルバイトだったりニートだったり・・・さまざまな境遇に暮らす、すごく可愛らしい女の子たちの、あんまり可愛らしくない部屋を50も集めた、キュートともホラーとも言える写真集だ。50人の登場人物はそれぞれ室内の全景と数カットのディテール、それに本人のポートレイトというセットで、さらに巻末には名前と年齢、職業、好きなキャラや趣味、給料、「自分を食べ物にたとえると」、「嫌いな動物」なんてリストまで掲載されているので、読者は部屋主のキャラクターと、部屋のありようを正確にリンクして把握できるようになっていた。撮影した川本史織はという名前は1973(昭和48)年生まれの男性カメラマン。金沢、京都で写真の仕事をしたあと32歳で上京した。
「秋葉原は大好きで遊びに行ったりしてたんですが、当時はメイド喫茶の出始めで、いつかメイドを撮りたいとか思ってたんですね。そのうちディアステージ(秋葉原にある、アイドルのライブスペース&喫茶)と知り合って、そこのアイドルの子たちを撮るようになったんです。もともと僕はメイドやアイドル文化自体には、ほとんど興味はないんですよ。でも、撮影に来てくれる子がみんなおもしろくて。それでアイドルというより、ひとりの女の子として応援したくなる。そうやって写真が貯まってきて、自分でジンとかも作ってたんですが、やっぱり写真集にしたくなりますよね。そのときに出版社から、ポーズ集をアイドルでできないかというお話が来たんです。打合せの席で、アイドルの子たちが堕落部屋っていうのに住んでて・・という話をしたら、いきなり編集さんが盛り上がってくれまして(笑)。それで「ポーズ集はどうせいっぱいあるから、堕落部屋の写真集にしましょう!」と。こで「3か月で50人撮影してください」ってなったんですね(笑)。」
上野御徒町の裏手、古いビルの上階に川本さんはスタジオを構えている。がらんとした部屋の片隅には姿見とホットカーペットが敷いてあって、「ここは冬、寒いんで、待ってるあいだに風邪引かないようにと思って敷いてるんですけど、このうえで寝ちゃう子とかいるんですよ」という、なんともフレンドリーな雰囲気。こういう環境と本人の明るいキャラクターが、こういう写真を生み出しているのだろう。いやらしいけど過度にエロくはなくて。男の目をちゃんと意識しているけれど、媚びてはいなくて。明るく朗らかそうだけど、ちゃんと闇も抱えていて。そうしてそれが、芸能界がずっと再生産しつづけてきた、男たちの手による幻想の産物とは根本的に異なる、21世紀型のアイドルというまったく新しい存在のありようであることは、指摘するまでもない。

「わかめ」に入室する入口のカーテン脇にはスズキエイミ(2018年3月14日号)のコラージュ作品を。



スズキエイミ《Multi venus II》2022年
スズキエイミは1993年生まれ。ヨーロッパの古典絵画の断片―骸骨、欠損、皮膚病、奇形、など、相反するグロテスクな―を組み合わせたコラージュや、金属と動物の剥製を結合させた立体作品などをつくる作家。本作は2022年12月に四谷三丁目KIYOSHI ART SPACEで開催された個展「Piece of Venus」で披露されたもの。この世界に数多に存在する様々な女神の欠片を、パズルのように組み合わせた新作シリーズのひとつ。ちなみに「好きな食べ物は、紅茶・お茶・豆類・チョコ、好きな色は、黒・赤・ダスティピンク、好きな動物は毛の生えていないネコ・ネズミ」とのこと。

そしてカウンターの背後、見世物小屋絵看板を背にした雛壇に並ぶラブドールたちもお召し替え。本人いわく「衣装制作者/モデル/アートワーク/未亡人な現代魔女」のYOMIさんによるオリジナル衣裳。これが開館以来3度目のお召し替え。毎回すべて彼女のイメージにお任せしていて、毎回予想を超えたコスチュームをつくってきてくれるのがすごく楽しみ。
















[2階から3階へ]



こちらの階段ホールも多数の作品をあらたに投入。2018年1月10日号「日常版画家」で紹介した重野克明の、今春発表されたドライポイントから。



重野克明 《コミュニケーション》 2023年
重野克明(しげの・かつあき)は1975年生まれ、水戸の住宅街に見つけた一軒家に陶芸家の奥様と、3匹の猫と暮らし制作を続ける版画家。2023年3月、銀座77ギャラリーでの個展で発表された本作は、「女性客が来るとさりげなくヌードの絵を見せようとする画廊マネージャー」がテーマとのこと。



伊賀美和子 《Love is like a cucumber, sweet and bitter》 2023年
現代美術家/学校教師。一緒に並べられている《Cucumber》2006年と同作家。女子校で英語を教えながら、主にミニチュアを使ったセットを撮影した写真作品をつくり続けている。館内に展示されている鉛筆画家・新開のり子の姉でもある。本作は母・信子と長女・美和子、娘のジュエリー・デザイナーRURI、次女・のり子の女系4人家族によって、2023年8月に世田谷美術館・区民ギャラリーで開かれた「LIFE 92歳の母が率いるファミリーアート集団 PART4 のぶこ みわこ のりこ るりこ」で発表された作品。





宮崎甲子男《100W》1998年
珍スポット好きにはよく知られた福島県いわき市の「喫茶ブルボン」(2012年8月1日号「みちのく路の特殊美術喫茶」)。1階駐車場から2階の広々とした喫茶室まで、おびただしい数の平面・立体作品で埋め尽くされた店の主が宮崎甲子男(かしお)氏。東京は本郷の生まれ、東京工大に進んで理論物理学の仁科芳雄博士(門下生に湯川秀樹、朝永振一郎らがいる)のもとで原子爆弾の研究に従事する。おかげで学徒出陣しないで済んだものの、終戦後にはGHQから「3級戦犯」(C級?)とされて、「東北を逃げ回ってるうちに、いわきに来ちゃった」。手先の器用さをいかしてミシンの修理をしながら東北地方を転々としたのち、昭和47~48年に、海水浴場として知られるいわき市新舞子に『喫茶ブルボン新舞子店』を開業。しかし東日本大震災の2年ほど前に「なんだかイヤな予感がしまして、新舞子から移ってきたんです」。
宮崎産は2016年に911歳で亡くなり、現在は孫の会田勝康さんが引き継ぎ、友人の協力を得て不定期で営業しているそう。



高橋ひかる《無呼吸》2017年
銀座ヴァニラ画廊が主催した第6回ヴァニラ大賞(2017年度)での奨励賞受賞作品。作品説明によれば――「海月をモチーフに人間の不安定さや狂気をイメージして描きました。(応募作品2連作のうち)こちらの無呼吸では静かながらも内に秘めている狂気を表現しています」。



ジョニー・エース《Kahlo/Beatles》1998年
同じく館内に展示されている《Life in Wartime》と同作家。ジョニー・エース(Johnny Ace)についてはほとんどわかっていないが(ブルースマンのジョニー・エースとは別人)、1930年代初頭にテキサス州東部で生まれ、少年時代にトラブルに巻き込まれて以来、旅の生活を送ってきた。窃盗によりオクラホマで刑務所生活を経験、1954年にセントルイスに移住して、ナンパ師生活を始めたらしい。絵を描くのが好きで、有名なロックンロール・シンガー、デュアン・エディのファーストアルバムのアートワークを手がけたという。何回かの刑務所生活を送りながら、1970年代から「ボード」と呼ぶコラージュ・アートを作りはじめ、アメリカ南部を旅して回る生活を一生続けた。

[3階]

2000年に閉館した鳥羽国際秘宝館のSFインスタレーションをメインに据えた3階展示空間。秘宝館セットは動かしようがないが、ここでも脇の小部屋や洗面所に作品を追加している。



覗き込むと木馬責めにあう美女の蝋人形。背後にはガーナの手描き映画ポスターが立つ小部屋。その入口に、大道芸術館で唯一(!)の僕の写真作品を飾らせてもらった。







都築響一《俺のエロシリーズより、ひつじ&いおり気高い》2018年
古くからの友人カメラマンたち3人で何度か開いたお遊びグループ展「俺のエロ」のために撮り下ろしたシリーズ。モデルは「ひつじ」と「いおり気高い」のふたり。着用した衣裳はすべていおりちゃんの手づくり。



洗面所にはすでに根本敬の小品がひとつあるが、今回もうひとつ追加。



根本敬《脱走!サイボーグ村田藤吉》2003年ごろ
約20年前、表参道ビリケン・ギャラリーでの個展で発表された作品。



男子用小便器がある個室には、新開のり子による「Shaggs」があり、その両脇に2023年度の新作2点を追加した。





新開のり子《制服シリーズ1》(上)《ランジェリーズ》〔下〕いずれも2023年
前掲の「LIFE 92歳の母が率いるファミリーアート集団」で発表された作品。

[3階から4階へ]

大道芸術館は3階建ての建物で、4階が屋上。スカイツリーが至近距離で、夜のライトアップ風景はなかなか迫力満点。これまで屋上は閉めていることが多いこともあり展示は3階までにしていたが、今回とても収まりきらなくなったので、屋上への扉ギリギリまで活用することに。





戸谷誠
三連作《無題》(2003~2010年)(左)
三連作《無題》(2006~2010年)(中)
三連作《無題》(2006~2010年)(右)




《無題 2010~2014年》
2023年7月末から9月まで近江八幡ボーダレスアートミュージアムNO-MAで開催された二人展「並行世界の歩き方」でフィーチャーされた戸谷誠。2014年に出版した『独居老人スタイル』でも紹介させていただいた。

品川区西大井。シャッターを閉めたままの薬局の薄暗い店内が、おびただしい数の絵画を広げたアトリエになっている。店の中央で、描きかけの絵を前に静かに座っているのは戸谷誠さんだ。
戸谷さんは1944(昭和19)年生まれの絵描き。でもいまどきの現代美術作家ではないし、古典的な伝統絵画を描くわけでもない。自分だけの絵を半世紀以上描きつづけてきて、何年かにいちど小さな展覧会を画廊で開くだけ。
もちろんそれで生活はできないから、早朝から昼まではビル掃除の仕事で生活費を得て、午後に絵を描く。描く気にならなければ、三分の一ぐらい開けたシャッターから鉢植えの植物越しに、道行く女たちの尻や足を眺めたり、絵筆を握ったまま寝込んでしまったり。「なんで続けてんだか、自分でもわからないんですよ」と言いながら、それでも毎日、絵の前にいる。
(2014年、メールマガジンROADSIDERS' weeklyでの紹介記事より)

戸谷誠のメインの作品は障子紙のロールをまるごと使った、長さ20メートルにもなる絵巻物。それもいちど完成した作品に幾度も手を入れ、また本人が「透き写し」と呼ぶ、手製のライトボックス的な装置で過去の作品を写し取り、加筆修正を好きなだけ繰り返して倦むことがない。それは年老いたミュージシャンが、若いころの音源をひたすらリミックスやリマスターする作業に熱中しているようでもある。









砂漠と女、犬(タイトル、作者、制作年不詳)
バンコクの北西に接するノンタブリー県、ゆるやかに広がる首都圏の一部であるノンタブリーにあるワット・スアン・ケオ(Wat Suan Kaew)は、境内から周囲一円にありとあらゆる古物やチープな電化製品、骨董店などが集合して、巨大なジャンク・アンティーク市場と化している。その一軒で見つて持ち帰った3枚の作品はすべてタイトル、制作年とも不明。犬は作者も不明だが、砂漠とセクシー女性を組み合わせたオリエンタリズム風の2枚は「フランスで描かれたもの」だそう。







金昌裕《無題》2021年
大阪・平野の三軒長屋を拠点に1994年から続いている障害者支援施設「アトリエひこ」。2023年1月にアトリエの利用者たちの作品を集めて築80年近い長屋で開催された「UPPALACE~暇と創造たちの宮殿~」(2023年2月1日号)。その中で披露された金昌裕のドローイング。常に、長くても30秒ほど、短いと数秒で一枚を仕上げるという。2023年9月には豊田道倫によるソロ・ユニット「パラダイス・ガラージ」のベストアルバム『ポップロックパンクノイズスカムフォークスウィート』のジャケットにも使用された。





谷岡ヤスジ《YASUJI COMIX EXHIBITION》1983年
破天荒な作風で一世を風靡しながら、1999年に56歳で死去した漫画家・谷岡ヤスジ。1983年に青山のギャラリーOVERARTで開かれた個展で発表された、貴重なシルクスクリーン・プリント。おそらく唯一のシルクスクリーン作品だと思われる。エディション50枚限定、左下に筆でのサインが入っている。



山本英子(タイトル不詳)2015年ごろ
2015年、取材で訪れた札幌市内で偶然立ち寄った、ビルに囲まれた築百年以上の民家をそのまま展示室とカフェにしたギャラリー犬養。そこで「これが初個展」という山本英子の作品に出会った(2015年07月08日号「84歳の新人アーティスト」)。ギャラリーのすぐ裏にある高層マンションにお住まいで、長年つくりためてきた手芸や絵画作品を、ギャラリー・オーナーにすすめられて「恥ずかしいけど、みなさんに見てもらうことにしました」という。結婚、子育てを終えて、ご主人が亡くなったあと60歳を過ぎてから、近所の老人ホームで開かれていた絵画教室に通い始める。結婚してからずっと続けてきた手芸と絵画を組み合わせた多彩な表現を展開、札幌を中心に若いファンを増やしている。展示のなかには細長い巻物のようなモノクロのドローイングが広げられていて、それは「レシートにアイロンで描いた」作品なのだという。レシートは感熱紙なので、熱を当てるとその部分が黒くなるという、レシート・アイロン・ドローイング!



川上四郎(タイトル、制作年不明)
一緒に並べられている《喫茶店にて》と同作家。『独居老人スタイル』のカバーアート(ゴッホ自画像)を提供いただいた川上さんは、数年間の施設生活を送ったのち、惜しくも死去された。この場にお招きしたかった・・・・・・。



よでん圭子《薔薇の恋人》
愛知県豊明市で絵画教室を開きながら、自身も団体系の太平洋美術会に属し運営委員として活動しながら、定期的に地元のギャラリーやデパートで展覧会を開いてきた。短歌作家として歌集も出版している(2013年09月18日号「裸女の溜まり場」)。



そして階段ホール中央には2階と同じく、伝説の見世物小屋絵看板絵師だった小倉の志村静峰による迫力満点の大型絵看板を設置。



Museum of Roadside Art 大道芸術館
墨田区向島5丁目28−4

https://museum-of-roadside-art.com/
https://twitter.com/MoraTokyo
https://instagram.com/daidougeijutsukan/

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本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。

旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。

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ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)

稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。

1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!

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ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)

プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。

これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。

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ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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