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AFTER HOURS
編集後記

2012年04月18日 vol.015

今週号でもヒップホップの記事をふたつ書きましたが、いまヒップホップやダンスミュージックを支えるクラブが、全国各地で激しい取り締まり、というより「クラブ狩り」に遭っているのをご存じでしょうか。

たぶん一昨年の年末あたりに大阪で始まった動きですが、大阪ではアメリカ村や心斎橋エリアのクラブが次々に摘発を受け、ダンスフロアをやむなく潰したり、閉店に追い込まれる事態も続出。京都や福岡でも老舗クラブが摘発にあってますし、東京では『夜露死苦現代詩2.0』のためにずいぶん通った池袋の老舗クラブBEDで、去る2月11日、警察のガサ入れがあり、イベント関係者、出演者、すべての観客あわせて150人を渋谷警察に連行し、全員に尿検査を実施、しかしなにも出ず・・という、とんでもない事件もありました。

橋下、石原というような剛腕市長、知事のせいかと思いきや、これほど全国規模に、それもタイミングを合わせたように摘発が広がっているのは、いったいだれの、どんな思惑が働いているのでしょうか。テレビやラジオは警察発表を垂れ流すだけですし、週刊誌も読者年齢層が高すぎるのか、クラブ・カルチャーには無関心なようで、謎が深まるばかりです。

クラブが摘発される理由は、そのほとんどが風俗営業許可を取らず、飲食業として営業しているから。この点、メディアの「無許可でクラブ営業」という報道は、すごく事実を誤解させる表現でしょう。

僕もラブホテルの取材を進めるなかで知ったのですが、戦後すぐの1948年に制定された風営法は、現在8つの業種に分類されていて、クラブは3号(ディスコ、ナイトクラブなど)、4号(ダンスホールなど)という種類になります。

この風営法3号、4号の営業許可を取れば、客を踊らせるクラブ営業は可能なのですが、ここには大きな障害があります。まず、夜12時~1時で店を閉めなくてはならないこと。そして店の床面積(客室部分)が66平米以上、しかもダンスフロアがその5分の1以上なくてはならないこと。されに店内の照明の明るさにも細かい規定があるのですが、このフロア面積の部分で、ほとんどの小箱クラブは営業許可が取れないことになります。もともと戦後のキャバレー時代にできた法律ですしねえ。

というわけでほとんどのクラブは、風俗営業の許可が取れないので、深夜もアルコール類の提供が可能な深夜営業許可を取った飲食店として営業しているのが実情です。なので、夜12時、1時を過ぎて客が踊っていれば即・違法ということになるし、先ごろ経営者らが逮捕された大阪noonの場合は、摘発が入ったのが夜10時前。つまり時間なんて関係なく、いい音楽が鳴っていて、お客さんがそれにあわせてからだを揺らしたりしてるだけで、逮捕されても文句言えない、という異常事態がありえるわけです。いまや中学校でダンスが必修科目という時代に、「踊ったら(踊らせたら)逮捕」というのは、あまりなブラック・ジョークですよね。

こないだツイッターで、「アメリカではいまエレクトリック・ダンス・ミュージックが大ブレイク中で、超人気DJはひと晩のセットでギャラ100万ドル(円じゃないですよ!)、ラスベガスの人気クラブのレジデントになれば1000万ドル(8億円!)のギャラ・・」なんてツイートを書きましたが、それと較べてなんたるありさま・・。

しかし実を言うと、アメリカでもクラブ営業、というか酒類の販売にはけっこう厳しい時間規制があり、2時ごろで閉めているところがたくさんあります。イギリス、フランスなどのヨーロッパ諸国(オランダ、ドイツはたしか緩かったかと)もそう、タイのバンコクも12時、1時でクラブやバーは終わり、あとは路上屋台か非合法店で・・ということになってます。日本でもかつての大箱ディスコ時代は、みんな12時で終わってたし。

「クール・ジャパン」とか言っておきながら、若者のクリエイティビティをはなはだしく損なうようなこの動きには呆れるばかりですが、これでクラブ・ミュージック、ヒップホップ・カルチャーが死滅することはないと思うし、日本ではアンダーグラウンド・スペースに活路を見いだすことも難しいでしょう。

実を言えば、日本にはこうしたクラブが結束して、権力に立ち向かったり、世論に理解を求めるような組織というのが、いままでまったくありませんでした。いま、京都では「京都ダンス規制法見直し連絡協議会」というのが発足しようとしているらしいし、大阪ではアメリカ村周辺のクラブや深夜営業飲食店が、周辺住民との定期的なミーティング、IDチェックの強化、店外の清掃などを共同で始めているそう。全国規模のこうした業者団体を設立して、早急に意思統一と、法改正へのアピールを計るのが急務だと思います。

実は先週、ある大きなクラブ(というかディスコ)イベントをお手伝いしたのですが、渋谷の大きなクラブを借り切って、夜8時から12時過ぎまで開いたそのイベントには、650人を超えるお客さんが来てくれました。それも、もうずっと前にクラブやディスコ通いをやめてしまった、年配の遊び人たちが。

いま、ヒップホップの取材をしていると、お目当てのラッパーが登場するのが深夜3時、4時なんてことが珍しくありません。終電で街に繰り出して、始発で帰るという若いクラバーにとっては問題ないでしょうが、これでは「明日も朝から仕事なんですけど」というひとには、参加はとうてい無理。そういう「次の日寝てても大丈夫」なひと限定の時間帯が音楽を、作品をアピールするチャンスを狭めてるのでは、と思ってしまうことがよくあります。

かつてのように、早めのご飯のあとに繰り出して、10時か11時ぐらいにいちばん盛り上がって、終電に間に合うように帰れる・・そんな大箱クラブを、だれか復活させてくれないでしょうか。ぜったい流行るのに!

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)

ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。

本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。

旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。

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ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)

稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。

1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!

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ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)

プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。

これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。

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ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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