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AFTER HOURS
編集後記

2024年09月25日 Vol.614

今週も盛りだくさんのメルマガに、最後までお付き合いありがとうございました。気に入ってもらえた記事、あったでしょうか。

9月中旬になってもぜんぜん残暑がおさまらない東京に嫌気がさして、先週は涼しい札幌にいました(東京と10度ぐらいちがう!)。いやいや帰る間際に気がついて、札幌から旭川に移動、1泊して東川町で沈昭良写真展「環流・帰還」を観て、旭川空港から東京に帰りました。東川町から旭川空港まではタクシーで10分かそこら。空港も新千歳の大混雑とは無縁の、こじんまりと快適なサイズなので、オススメです!

ご存じのかたも多いと思いますが、旭川市からすぐの東川町は「写真の町」。1985年に「写真文化首都宣言」を発表して以来、東川町国際写真フェスティバルや写真甲子園など、写真にまつわるさまざまな活動をもう40年も続けています。まだいちども呼んでもらったことないけど・・・・・・涙。

今回、展覧会を開いた沈昭良はロードサイダーズではおなじみ。2014年の「移動祝祭車――沈昭良の『SINGERS & STAGES』をはじめとして、何度も取り上げてきました。2023年2月22日号では「漁師町とタイワニーズ・キャバレー」と題して、台湾東海岸・宜蘭(イーラン)県の羅東(ルオドン)で開催された展覧会を観つつ、長く撮影に通ってきた漁村・南方澳(ナンファンアオ)の街歩きまで付き合っていただいた。

東川町の「環流・帰還」は沈さんの初めての写真プロジェクトである「築地魚市場」、おなじみステージ・トラックを追った「STAGE」、それに最新作である「漂流」の3シリーズで構成されています。

30年前の1993年、東京に留学中の私は人生で初めての写真プロジェクト「築地魚市場」シリーズに取り掛かっていた。その後、台湾にもどり新聞社に入社してからも、毎年のように東京へ赴いては撮影を続け、1995年より「映像・南方澳」(Reflections of Nan-Fang-Ao)シリーズに着手した。南方澳漁港は日本の植民地時代、台湾東部に造られた有数の港町である。2001年からは「玉蘭」に焦点を当て、それに連なる花き産業、民俗、土地や生命をイメージで繋ぎ合わせた。2005年から開始した「STAGE」、「SINGERS & STAGES」や「台湾綜芸団」という3つの異なる形態をもつ作品シリーズでは、多様な文化を体現する台湾娯楽産業に迫った。

あのころの台湾では、写真分野における教育や制作、展示の環境、働き方について抱くイメージは、自分自身も含めてかなり限られたものだった。写真を志す多くの人にとって、写真に近づける唯一の方法は、カメラを背に現場へ駆けつけることだった。現像タンクに自らを浸し、おのれの姿を現像するような努力を重ねたものだ。

2008年以降は、《玉蘭》(YU LAN Magnolia Flowers/ 2008)、《築地魚市場》 (Tsukiji Fish Market/ 2009)、《S丁AGE》(舞台車/2011)、《SINGERS & S丁AGES》(歌手輿舞台車/2013)、《台湾綜芸団》(Taiwan- ese Vaudeville Troupes/ 2016)といった長編写真集を立て続けに出版した。そしてまた、近い将来の出版計画として、薬物依存症のための民間リハビリ施設を撮影した「晨喝―来自戒毒村」(Dawn-from the drug rehabilitation village/ 2018)、かつて独裁体制下にあった台湾で政治/思想犯を投獄し拷問した場所を記録した「暗夜幽光威櫂歴史遺址―安康接待室/新店軍人監獄」
(Shimmering Lights in the Dark Historical Sites from the Authoritarian Period - Ankang Reception House / Xindian Military Prison / 2020)、歴史・事件・社会問題や紛争といった文脈を礎に台湾自身の経験をナラティブ・ランドスケープとして紡いでいく「漂流」(Drifting/ 2015-2024)といったシリーズがある。

思い出は人を溺れさせるし、言うことは容易い。とはいえ、来た道を振りかえり、30年にわたって異なる現場を行き来するなかで保ちつづけだ情熱と初心を確認し、自らへの励ましとしたい。まず、今回の東川町文化ギャラリーの個展では、古典的リアリズムともいえる「築地魚市場」、暗く華やかな「STAGE」、また、混沌と叙情の交じり合った「漂流」という3つのシリーズを展示する。消え去った築地の風清や台湾のステージトラックなどの庶民文化を記録した一方で、台湾の過去・現在・未来の可能性をも導き出せればと思っている。そうして、スタートから転機、また、そこに繋がる今において地理的、時系列的、精神的および感情的に異なりつつも重なりあってきた、自身の表現や方法論の移り変わりを検証したいと思う。それはつまり、写真の啓蒙的な原点に立ち返ることでもある。イメージのめくるめく時代、真の意味において自在な境地へと少しずつでも近づき、自分と写真との関係が堅固に結びついていくことを期待したいと思う。
(文:沈昭良 公式リリースより)


展覧会入口


展示は「築地魚市場」から始まる。

これまでの、いくつものスパンにおける写真制作のなかでも、築地魚市場はもっとも早く、もっとも長期にわたるテーマである。1993年末ごろから現在まで、公私にかかわらず毎年のように東京に出向けば決まって、ごったがえす築地の朝の人混みに紛れている。だからわたしにとって築地とは“つかず離れず”、遠くて近い故郷にも似る。こうした長年のモチベーションは、いったいどこから来るのだろう? 外なる体感と体験、文化の違い、視覚的な驚き、産業の規模、あるいは?
(展示に添えられたメッセージより、以下同)




間もなく信号が青に変わった。
わたしは、知らず知らずのうちに足を踏み出して、
人の群れの中に埋もれ、記憶の中に埋もれていった。
そうまるで、渡り鳥が飛び立つときのように。


「STAGE 舞台車」展示室


夜の色がだんだんと低く垂れ込むにつれて、水田のさざ波に映る光と影が、
夕暮れの色を吸い込み続け、ステージカーの豊満なきらびやかさをより強く映し出す。
あれは、発射台の上で出発を待つスペースシャトルだろうか?
真実と幻があべこべに置き換えられているのか?
夢想と現実のあいだの距離か?それとも真夜中に夢から醒めながら放つ、
単なる寝言なのか?シャッターを押すその瞬間まで、
私はぼんやりとそんなことを考え続けていた。


台湾の近代史の舞台となった地を巡り歩いた最新シリーズ「漂流」展示室




国家の歴史や状況を視覚的に結びつける「絶景」に身を置くたび、
気持ちの高まりと感動を抑えられない。
というのも、あまたの挫折を経て成り立っている国家とそれを構成する人々が、
これほどまでに精神を磨きあげ、広い視野を備えるまで、
内なる対立や問題に向き合ってきたのか。より強い共感をもって、
その困難と希望を感じることができるのだ。






「環流・帰還 沈昭良写真展」
~10月15日まで開催中
@東川町文化ギャラリー
https://higashikawa-town.jp/bunkagallery

※10月12日には沈昭良・天野太郎(東京オペラシティアートギャラリー、チーフキュレーター)、瀬戸正人(写真家・清里フォトミュージアム副館長)によるトークショーも予定されている。

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)

ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。

本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。

旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。

特設販売サイトへ


ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)

稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。

1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!

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ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)

プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。

これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。

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ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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