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AFTER HOURS
編集後記

2022年08月10日 Vol.512

今週も最後までお付き合いありがとうございました。まあいろんな話題が出てきましたが、気に入ってもらえた記事、あったでしょうか。

タコシェの中山亜弓さんが書いてくれたデルニエ・クリをマルセイユに初訪問したのは2014年。そのときの記事「ヘタウマの現在形」(2014年11月12日号)を読み返してくれたらうれしいですが、マルセイユと、同じ南仏のセットの2会場で『MANGARO』『HETA-UMA』と名づけられた、日本のサブカルチャーをまとめる重要な展覧会のオープニングに立ち会う旅でした。

同時開催された2箇所の展覧会には日本人作家51名、フランスを中心とする海外作家44名、計95人ものアーティストが参加したうち、日本から17名の作家が現地で制作・展示作業に関わりました。

その17名に中山さんらサポート・スタッフを加えた30名近くが、数日間から1週間以上、マルセイユとセットに滞在。中には海外旅行初めて!パスポート持ってなかった!というひともいて、まあかなりの珍道中でしたが、たいした予算がないのにそれだけの数のアーティストたちを日本から呼ぶ!という心意気に感激して、そのときの記事にこんなふうに書きました――


セットの会場にて(最後列中央がパキート)

アーティストの選択もユニークだが、まず驚かされたのが30人近い作家、関係者を日本から呼ぶという意欲。(セットの)MIAMは市立美術館だし、渡航費の一部は国際交流基金の援助もあったようだが、それにしても旅費だけで大変な金額になるはず。当然ながら、全員をちゃんとしたホテルに泊めるだけの予算はない。そこで今回は数人ずつのグループに分かれて、パキート・ボニートをはじめとするデルニエ・クリのスタッフや、ボランティア、友人たちの家に民泊(!)ということになった。

それぞれの家の空き部屋や居間のソファ、地下室までマットレスや寝袋を敷いて宿泊。マルセイユといえばブイヤベースの本場だし、セットは牡蠣の産地としても有名だけど、そんな高級シーフード・レストランで豪遊する予算も、もちろんない。夕方まで働いたら、それぞれの家でビールや安ワインや、南仏ならではのパスティスで喉を潤し、ポテトチップでだらだらおしゃべり。夜も更けたところで、じゃあそろそろ……とか言って簡単なパスタとか、煮込み料理をつくってみんなで食べる、その繰り返し。地中海らしくも、フランスらしくすらない1週間を過ごしたのだった。

こんなことを書くと「これだからあっちのやつは適当で……」と、せせら笑う美術関係者もいるだろう。でも、それでも彼らは僕らを呼ぶ。これがたとえば、日本のどこかの美術館で「フランスの若手作家30人展」みたいな企画があったとして、予算が足りなかったら「ほんとは全員呼びたいけど、3人に絞ってください」となるのが当然だ。

でも、そうじゃなくて全員呼びたい! だからホテルの予算がなければ自分たちの家に泊めるのだし、レストランに連れて行くカネがないから、家の台所でパスタを茹でて食わせる。それだけのことで、その情熱に僕は(そしてたぶん参加者のだれもが)深く打たれたのだった。「予算ないけど来てほしいから」、自分の家にアーティストを泊める美術館学芸員が、日本にどれだけいるだろうか。

実は音楽の世界では、こういうやりかたは普通だったりする。ビッグなアーティストはともかく、小さなライブハウスでしかできないハードコア、ノイズバンド、ラッパーやDJ……そういう人間たちはみんな主催者が自分の車で空港まで迎えに行って、自分たちの家に泊めて、そのかわり自分たちが彼らの国に行ったときも泊めてもらう。そうしないと公演が成り立たないし、それでも来てほしいからそうするのだし、それでだれも文句はない。音楽の世界の風通しのよさが羨ましくなるのは、こんなときだ。

あれからもう8年経ちましたが、「スピリットの温度差」はたいして変わってないと思います。中国と日本以外はもう入国時PCR検査もほぼなくなったみたいだし、ほぼ門戸がふたたび開き始めた世界中の国々に、今回の記事をつくりながらすごく行きたくてたまらなくなりました。少しでも早く、また海外の旅行記事をお届けできるようがんばります!

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編集後記バックナンバー

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)

稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。

1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!

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ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)

プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。

これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。

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ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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