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AFTER HOURS
編集後記

2024年07月17日 Vol.605

今週も最後までお付き合いありがとうございました。ほんとは先週から始めた江原道オン・ザ・ロードの2回目をやるつもりだったのが、閉幕間近の展覧会があって急遽プログラム変更! 江原道には来週から戻ってビザールなスポットにご案内しますので、お楽しみに。

2015年の「旅姿浪曲娘——港家小柳一代記」をはじめ、ロードサイダーズでは浪曲について何度か語ってきました。すべて、もともとは僕の担当編集者だった現・玉川奈々福の影響なんですが。

その奈々福さんが、なんと自腹で映画祭をプロデュース! 小屋大、チラシ製作宣伝費、ぜんぶ自分が負担して7月28、29日の2日間、渋谷・ユーロスライブ(ユーロスペース内)で「浪曲で生きる映画祭」を開催します。

現代において、「絶滅危惧芸能」である浪曲を生業として生きる、とはどういうことか。
浪曲全盛期に活躍し、今からちょっと前に死んでしまった「浪曲で生きてきた」者たちと、その化け物みたいな芸にあおられてうっかり入門してしまった「浪曲で生きんとする」者たちの、日常と舞台を追ったドキュメンタリーを7作品上映する。
スゴ声、スゴ節、スゴ存在感。稚気あふれる化け物たちの、楽屋と舞台。
大汗かきながら修行する者たちの日々。
彼らは何を追いもとめてこの世界に身を投じたのか、
そしていま、投じ続けているのか。
(リリースより)




「絶滅危惧芸能」という言葉にギョッとしますが、明治から昭和30年代までの全盛期には全国に3,000人もいたという浪曲師が、いまや100人未満。浪曲専門のライブハウスというか定席も浅草・木馬亭が唯一残るのみ。そんな絶滅危惧芸能の世界に、70代、80代の現役浪曲師や曲師(三味線)もいれば、ライブハウスやクラブのフロアのほうが似合う20代、30代の若者が飛び込んでいったりする。その魅力というか、魔力を全7本の上映作品からぜひ体感していただけたら。

会期中には上映後のトークも予定されていて、29日の最終プログラムでは奈々福さんと僕の対談もあります。浪曲、たしかに古い芸能ではあるけれど、溢れ出すエネルギーに震えるときがあって、それは日本語の語り芸の極致である気もします。芸能ファンはもちろんだけど、僕としてはむしろ、いまどきのラッパーとか政治家!に観て、聞いてもらいたいなあと。会場でお会いしましょう!


「浪曲師物語~木馬亭の浪曲師たち」
ー浪曲全盛期を知るおじいちゃんたちの木馬亭 撮影/編集/監督:伊勢哲 2021年 93分
出演者/木村若友,四代目東家三楽,葵わか葉,沢村豊子,富士琴路,国本武春,玉川奈々福,玉川太福他。全盛期に全国的人気の浪曲師や旅回りの浪曲一座で地方の人気者だった浪曲師が、80〜90代後半を過ぎても舞台で唸る姿と証言、楽屋裏のエピソードで綴った記録映画。


「噂の玉川奈々福 キネマ更紗」
ー奈々ちゃん、死ぬまでのお付き合いだよ! 撮影/編集/監督:田島空 2018年 60分
出演者/玉川奈々福沢村豊子沢村美舟(現:広沢美舟)東家孝太郎他
絶滅危惧の浪曲界で気を吐く人気浪曲師玉川奈々福を支えるのは、親子ほど年の違う三味線名人、曲師・沢村豊子。一時 期は一緒に暮らしてしまったほどの、愛情あふれすぎる日々と、浪曲に新しい風を吹き込み続ける奈々福の怒涛の約3年を追う。(ナレーション:玉川太福)


「港家小柳IN-TUNE」
ー伝説の浪曲師と名曲師、圧巻の一席! 撮影/編集/監督:川上アチカ 2015年 33分
出演/港家小柳,沢村豊子,玉川奈々福他。旅芸人の浪曲師として40年もの間活動していたため、ほとんどその記録が残されていなかった港家小柳の、芸歴69年で初めて行った独演会の楽屋裏から舞台上の熱演までを追う。名人曲師•沢村豊子との圧巻の掛け合いが観客を圧倒する。


「国本武春の丹波浪曲道中記」
——天才•国本武春、旅先で浪曲論を語る 撮影/編集/監督:伊勢哲 2022年 110分
出演/国本武春,沢村豊子,春野恵子,丹波の人々,ナレーション:玉川奈々福。
2015年に急逝した浪曲界の風雲児国本武春。その2008年の地方公演に密着した口—ドムービー。1泊2日の旅公演で 出会う丹波の人々との心癒される交流と、浪曲を生業とする武春の浪曲愛が炸裂する。


「浪曲師になってしまった」
ー大人気浪曲師の、弟子入り直後の貴重映像 撮影/編集/監督:伊勢哲 2020年 100分。出演/玉川太福,大利根勝子,斎藤高次,玉川桃太郎,玉川祐子,国本武春,玉川みね子,玉川奈々福,本村若友,五月一朗,富士琴路,根岸京子他
入門直後に師匠を亡くした玉川太福。古参浪曲師たちと向き合いながら、閑古鳥泣く客席に向かい唸りを上げ修行する。一方、5歳で失明、11歳で旅回りの浪曲一座に加わって生きて来た波瀾万丈の大利根勝子。このふたりが融合する。


「浪曲師葵わか葉リターンズ」
ー浪曲全盛期を生きた女流の在り方 撮影/編集/監督:伊勢哲 2022年 91分
出演/葵わか葉沢村豊子真山隼人国本はる乃他。ナレ-ション:玉川大福
今年4月、闘病生活の末、亡くなった芸豪•葵わか葉。類い稀な高音美声と所作で浪曲ファンを魅了。熟練した芸を聴かせる口演2篇とインタビュー、写真で昭和30年代から平成を駆け抜けた葵わか葉の浪曲人生を辿るシネマ浪曲。


「絶唱浪曲ストーリー」
ー泣くんじゃないよ 撮影/編集/監督:川上アチカ 2023年 111分
出演/港家小そめ,港家小柳,玉川祐子,沢村豊子,港家小ゆき,猫のあんちゃん,玉川奈々福,玉川大福ほか。
伝説の芸豪・港家小柳に惚れ込み弟子入りした港家小そめが、浪曲定席本馬亭で、晴れて名披露目の日を迎えるまで。その 裏では、さまざまな人生が交錯し、ベテランから若手へと芸が継承されていく。
(作品説明はユーロライヴ公式サイトより:https://eurolive.jp/#000362

7月28日(日)
11:00 「浪曲師物語~木馬亭の浪曲師たち」+伊勢哲監督トーク(聞き手:玉川奈々福)
13:35 「噂の玉川奈々福 キネマ更紗」「港家小柳 IN-TUNE」+田島空監督トーク(聞き手:玉川奈々福)
16:20 「国本武春の丹波浪曲道中記」
18:40 「浪曲師になってしまった」+若手浪曲師トーク(天中軒すみれ 東家三可子 東家千春 三門綾 沢村まみ


浪曲師になってしまった

7月29日(月)
12:00 「浪曲師葵わか葉リターンズ」
14:00 「浪曲師物語~木馬亭の浪曲師たち」+対談:杉江松恋×玉川奈々福
16:40 「噂の玉川奈々福 キネマ更紗」
18:50 「絶唱浪曲ストーリー」+対談:都築響一×玉川奈々福


絶唱浪曲ストーリー

詳細、タイムスケジュールはこちらから:https://eurolive.jp/
こちらで予約前売り中:
https://euro-ticket.jp/eurospace/schedule/indexPre.php?dsType=pre

玉川奈々福の活動はこちらのチャンネルでたくさん観られます!
奈々福チャンネル:
https://youtube.com/channel/UC0NnqeAAsGgwd9Qp6lKnIzw

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)

ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。

本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。

旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。

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ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)

稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。

1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!

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ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)

プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。

これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。

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ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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