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AFTER HOURS
編集後記

2024年01月10日 Vol.579

今週も最後までお付き合いありがとうございました。硬軟イロイロ(おもに軟だけど)ありましたが、気に入ってもらえた記事あったでしょうか。

「KARAOKENATION」でお伝えしたゴールデン街ナグネの写真展、月曜夜が初日だったので、メルマガを書く合間にちらっと覗いてきました。


すっかりインバウンド観光客のワンダーランドとなったゴールデン街、ナグネは入口上の大きなサインが目印


1階カウンター席、飲んでいるのは渋谷の夜のストリート・シーンを撮り続けている鈴木信彦さん、うしろに立っているのが店主の田(でん)正彦さん


恐ろしく急な階段を上がった2階にも展示あり。1階のカウンターが満席になったり、グループで来店すると、こっちで飲むシステム

写真といえば篠山紀信さん、亡くなりましたね。僕は編集者としてお付き合いはなかったけれど、2000年から10年間ほど木村伊兵衛賞の選考委員としてご一緒した機会に、少しおしゃべりする時間を持てました。なにしろ篠山さんが写真家としてデビューしたのは日大芸術学部在学中の1961年なので・・・・・・僕が幼稚園の時。もう60年以上、篠山さんの写真に触れながら育ち、歳を取ってきたことになります。朝日新聞に短い文章を寄せたので、このメルマガが届くころには掲載されているかも。よかったらご一読ください。

篠山さんの写真についてはこれまで何度か書く機会がありました。生前、300冊以上の写真集を刊行したそうですが、2009年春には『NUDE by KISHIN』という豪華なヌード写真集を発表しています。

篠山紀信の50年にわたるNUDE PHOTOをリミックス編集した、400頁を越える大冊。
1959年から、2009年の「現在」まで撮り続けられた、膨大なNUDEPHOTOから、時代やモデルを縦断。アートとポルノ、デジタルとフィルム、聖と俗、欲望と精神、すべてがメルトダウン。280を越える美神の解き放たれた肢体が光を放つ。
NUDE PHOTOの極上の美しさ、究極のエロスを世界的レベルで発信する、これまでの常識を覆す画期的な写真集。独・シルマー/モーゼル社より同時刊行。
宮沢りえ、樋口可南子、高岡早紀、荻野目慶子、小島聖、葉月里緒奈、井上晴美、及川麻衣、月船うらら、かでなれおん、原紗央莉、明日花キララなど、日本を代表する女優の最高の作品を最高の品質で収めた最高級写真集。
(Amazonの説明より)

当時の雑誌『広告批評』に書評というか感想を書いたのがハードディスクの奥から出てきて、それが僕なりの「シノヤマ写真観」でもある気がしたので、少し手を入れてここに再録させていただきます。朝日新聞のテキストとあわせて読んでいただけたらうれしいなと。

篠山さんのご実家は北新宿の圓照寺(えんしょうじ)というお寺。実はうちから徒歩数分なので、この後記を書き終わったら門の外からそっとお参りしてくるつもり。昭和から令和までを駆け抜けた長い写真家人生、ほんとにお疲れさまでした!と手を合わせてきます。


ヌケないハダカ

篠山ヌードとは、ヌケないヌードである。ま、そんなことない!と言い張る諸君もたくさんいるでしょうが。

当代一の人気ポルノ・アクトレス、夏目ナナが丸坊主で仁王立ちになって、こっちを睨んでいる。すごいからだだな、とは思うけれど、ぜんぜん欲情しない。ホームグラウンドであるDVDでは『「超」ヤリまくり!イキまくり!24時間!!』『Gカップ美人巨乳秘書 10連発!野獣中出し』なんて作品をリリースしまくり、「チンポおいしい! もっとチンポちょうだい! ナナに精子かけて!」などと大阪弁で絶叫しまくり、「ほぼすべての出演AVでイッてる」と公言するセックス・クイーンであった彼女。その全身からしみ出すスケベ汁を、篠山さんのカメラはきれいに拭いとってしまっている。

このあいだ写真の賞の選考会でご一緒したときに、デジカメがいかに高感度に強いかという話になって、夜の屋外でヌードを撮る最近のシリーズ、あれはデジカメのおかげだよ、と篠山さんは話されていた。なじみ深い東京の、あちこちの街角で、いかにもかわいい女の子たちが大胆に全裸になって、立ったりしゃがんだりしてる。彼女たちの目に怯えはひとかけらも見あたらない。カメラをファッションモデル風に睨んだり、無邪気に笑いあったり、夜の街に女の子がいて、たまたま全裸だった、それだけのことという感じだ。

最近はもう、発売日を待ちかねて買う雑誌はなくなってしまったけれど、楽しみで毎月買っているのは素人投稿露出写真誌だ。これは読んで字のごとし、全国各地のシロウト・カップルさんたちが、思い思いの場所で全裸になって、思い思いの相手とからみあったりしている投稿写真を、これでもかというばかりのボリュームで掲載している。あられもない撮影フィルムを写真屋に出さなくてもすむようになった、デジタル写真時代になって花ひらいた、新しいメディアともいえる。

デジ・キシンの野外露出写真も大半はゲリラ撮影なのだろうけれど、素人投稿はもう100%ゲリラ撮影だ。そして彼らの作品は、デジ・キシンより、はるかにいやらしい。モデルの質も、カメラの値段も、撮影技術も、はるかにデジ・キシンのほうが高いのに、ヌードとしてどちらが扇情的かといわれたら、それは素人投稿のほうがはるかにエロなのだ。なぜだろう。

芸術としてのヌードと、エロとしての女体。この、まったくジャンルのちがっていた“女のカラダの観賞方法”を、初めて両立させようと写真の世界で試みたのが、1953年に創刊されたアメリカ版PLAYBOYだったのかもしれない。それ以来、世界中の女性専科カメラマンたちが、芸術とエロのあいだのいろんな位置に自分を置いてきた。

今度の写真集『NUDE by KISHIN』は、1959年から2009年までの篠山紀信によるヌード写真が意図的に混ぜ合わされ、どの写真がどの年代に撮られたのか、わかりにくく編集されている。僕も本業が編集者なのでその意図は理解できるけれど、この写真集だけ見ていると、篠山紀信という写真家が、長くヌードを撮り続けるうちに、女のカラダをどう表現(というか料理)するようになってきたのか、その進化がよくわからない。

1959年に篠山紀信が最初のヌードを撮ったとき、すでに世の中では高尚な芸術としてのヌード・フォトグラフィが認知されていたし、温泉街では汚いプリントのエロ写真を売る男が電柱の陰に立っていたはずだ。そういう中で“美しいヌード”を目指して、カメラを抱えて女体の海に飛び込んでいった篠山青年が、男性誌のヌード・グラビアとか、屋外全裸とか、“もろにエロ”な媒体とスレスレな場所にいながら、“もろにエロ”であることから逃げつづけてきた、50年間の軌跡。オッパイをさらし、股を開いた女体から、スケベ汁を拭いとる、そのテクニックが50年間でいかに磨かれてきたのか、それをページを繰ることで体験できるのが、僕にとってはいちばん興味深いところなのだが。

篠山紀信の写真とは、あるいは篠山写真の進化とは、たとえばアラーキーが被写体の女をいかにスケベな目線で舐め回しているか、それをプリント上に再現することによって、観るものと劣情を共有する”淫写”として成立させているのと対照的だ。つまり自分がどういう目線でこの、目の前で全裸になっている女を眺めているのかを、どうにかして読者に憶測させない、その技術の洗練である。

それがわかっているからこそ、時代を代表するタレントや女優さんたちが彼の前では、ためらいなく服を脱ぎ捨てる。篠山紀信がいちばんのビッグネームだからではなく、カメラを通して自分のことをどう見ているか、彼女たちにはちゃんとわかっているからだ。女だから。

初出:広告批評 2009年

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)

ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。

本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。

旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。

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ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)

稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。

1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!

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ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)

プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。

これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。

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ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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