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AFTER HOURS
編集後記

2020年01月22日 Vol.389

今週も最後までお付き合いありがとうございました。ほんとにいろいろな記事が並びましたが、気に入ってもらえたの、あったでしょうか。

先週は駆け足で中国旅行、重慶と成都を回ってきました。北京や上海を抜いて常住人口が3千万人、中国一の重慶と、常住人口1億6千万人の成都(中国4位)。どちらも東京を上回るメガシティですが、あたかも大阪と京都のように(!)両市のキャラはまったく異なっていて、ものすごく興味深かったです。本メルマガではかつて写真家・菊地智子さんによる重慶のドラァグクイーンたちや、最近も吉井忍さんによる『重慶マニア』著者・近藤彰一さんインタビューをお届けしたばかり。近堂さんが教えてくれた「8D立体都市」、世界最強のブレードランナー・シティの真髄は、数日の滞在ではとうてい味わい尽くせなかったけれど、その片鱗だけは囓ることができて、激辛火鍋の痺れとともにがっつり後を引いている。近々、旅行の成果もお見せできると思うので、ご期待あれ!


重慶のナンバーワン観光名所となった、ビルの腹に電車が出入りする様子を飽かず激写するひとびと。銀座渋谷駅も惜しかったなあ……

さて、いろいろ記事をつくるにあたって、購読者のみなさまからの「こんなのやってるよ!」という情報がいつもすごく役に立っているのですが、長く購読してくれている「ikaremix」さんが、おもしろい展覧会リポートを送ってくれました。残念ながら会期は先週末まででしたが、せっかくなのでここに掲載させていただく。こうした投稿、いつでも大歓迎なので、「こんなのやってる」「こんなこと書きたい」というみなさまは、ぜひご連絡ください。しかしトヨダノリコさん、いいなあ。次回はぜったい見ないと!


昨年末から先週土曜までKaikai Kiki Galleryでは「バカな家族の狂詩曲(ラプソディ):村上福壽郎、隆、裕二」という3人展が開催されていた。元タクシー運転手の父・村上福壽郎、現代美術家の兄・村上隆、日本画家の弟・村上裕二という男家族の展示だ。著名なアーティストの家族展ということで注目されているようだが、それに先駆ける昨年8月に5日間だけ、世田谷美術館区民ギャラリーBで「女系家族展 パート2」という展示が行われていたのをご存知だろうか。








母・豊田信子さんの作品










姉・伊賀美和子さんの作品










妹・豊田昇子さんの作品

村上家が「父・兄・弟」であるのに対し、こちらはその名のとおり「母・姉・妹」の作品が並んでいた。

姉の伊賀美和子さんはプロの写真家として1999年には「キャノン写真新世紀」優秀賞を受賞し、2007年には作品集「Madame Cucumber」を出版したり、昨年11月には人形町ヴィジョンズにて行われた「百人一首って」に作品を出展するなど、精力的に活躍するアーティスト。ただし、母・豊田信子さんと妹・豊田昇子さんは元々はまったくの素人だった。


「Madame Cucumber」grambooks刊、2007年

しかし2年前、美和子さんの号令一下、自由が丘のDIGINNER GALLERYで「女系家族展」を開催することに。


【The Family of Women -女系家族- 】Group Exhibition by 豊田信子・豊田昇子・伊賀美和子

定年後60歳から趣味で描き始めたという信子さんの絵は、おかんアートと呼ぶにはタッチもテイストもハイクオリティだ。

そして昇子さんの独特のバイブスを放つスケッチは、パッと見はバッドアートかアウトサダーアートかという、なんともいえぬ魅力を放っている。

※先日聞いたところ2年前には母・信子さんをスケッチした「母」という作品で、第4回 宮本三郎記念デッサン大賞展で「鴻池朋子賞」を受賞されていた(https://kcm.gr.jp/miyamotosaburo/photo/5-2.pdf)!

そこに美和子さんの王道ポップアート作品が挟まれて展示されることによって、とても素晴らしい空間となり、特にその絵の力でtwitterで静かに話題になっていたのが昨年の「女系家族展 パート2」である。(私はしまおまおさんのRTで知った)

その妹・昇子さんがこのほど、最初の「女系家族展」が行われた自由が丘の「DIGINNER GALLERY」で「【カオス ドローイング】トヨダノリコ個展」を開催した(1/10~1/19)。新作も並び、購入も可能。今後、さらに人気が出る前にぜひ、生で見ておきたい展覧会だった。


個展会場にて










トヨダノリコ個展【カオス ドローイング】
2020年1/11~1/19まで開催
@自由が丘DIGINNER GALLERY

豊田昇子:https://twitter.com/norikotoyoda_
伊賀美和子:https://twitter.com/madcucumber5

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)

ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。

本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。

旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。

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ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)

稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。

1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!

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ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)

プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。

これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。

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ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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