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AFTER HOURS
編集後記

2020年04月22日 Vol.401

今週も最後までお付き合いありがとうございました。新型コロナウィルスでちっとも取材に出歩けず、メルマガもネタ不足に陥るかと思いきや、延期や中止が増える展覧会情報などが続々舞い込み、ふだんよりストックが増えつつあるかも! 

そして自宅引きこもりのみなさまへのささやかなプレゼントとして、第5水曜にあたる来週29日も、ふだんならお休みさせていただくところ、通常号を配信させていただきます! お楽しみにお待ちください。また、この機会に読み残し記事をバックナンバーのページから掘ってもらえたらうれしいです。記事総数、もうすぐ1,800点です!

https://roadsiders.com/backnumbers/

先週は尊敬するアーティストであり、写真家であり、冒険家でも稀代のプレイボーイでもあったピーター・ビアード死去のニュースを知り、しみじみしました。認知症を患い、3週間ほど前からニューヨーク州ロングアイランド東端にある岬の町モントークの自宅を出て行方不明になっていたのが、森の奥深くで死んでいるのを発見されたそう。きっと、家の中で死にたくなかったんだろうなあ。ピーター・ビアードは長くケニアに通い、野生動物たちの素晴らしい写真と文章を独特にミックスした「日記」に仕上げてきました。そのスタイルに大きな影響を受けたひとがたくさんいますが、だれにも見つからない墓場に向かうゾウのように、森のなかにひとりで分け入っていったのかと思うと、それも素晴らしくビアードらしい最後だなあと思わずにいられず。死ぬときまで、なんとかっこいいひとだったんだろう。

ピーター・ビアードはず〜〜っと前に渋谷でも展覧会を開いたことがあり、そのときにインタビューしたのだったか忘れたけど、とにかくオープニングで僕は彼のそばにいたのですが、そこで発見したのはピーター・ビアードが僕の知るかぎり「世界でいちばん丁寧にサインするアーティスト」だという事実でした。

新刊作品集を持って並ぶファンのひとりひとりに、まず名前を聞いて、それから本のタイトルページに絵を描き始めるのです。ひとりについて、短くても5分はかけていたでしょう。そんな調子なので、サインを求めるファンの列はものすごいことになって、でも、だれも文句ひとつ言わずに待っていたのがいまでも印象に残っています。

有名アーティストも、お金持ちもイケメンのアーティストにもたくさん会ってきましたが、あんなふうに「ひとたらし」のアーティストって、彼だけかもしれない。冥福を祈ります。


ピーター・ビアード公式サイト:https://peterbeard.com/

さて、今週号ではただいま休館中の広島市現代美術館から、誌上展「式場隆三郎:脳室反射鏡」をお送りしました。

ピーター・ビアードの美しい思い出のあとにナンですが、その広島現美をめぐる醜い話題をひとつ。


式場展の前に、広島現美では「アカルイ カテイ」というグループ展が開催されました(メルマガで紹介したアマチュア画家・江上茂雄さんなども参加)。広島現美では展覧会の広報として、巨大な垂れ幕を広島のいちばんにぎやかな商店街に掲げています。僕の展覧会「HEAVEN 都築響一と巡る社会の窓から見たニッポン」のときも広島太郎をフィーチャーした巨大垂れ幕のおかげで、「都築響一って、広島太郎だったんだ」とか、うれしいフェイクニュースがSNSに流れたりしましたが、今回使われたのは、展覧会のフライヤーなどにも選ばれた写真家・植本一子の作品。男女3人が公園のブランコで思い思いに寛ぐ、しごく平和な情景なのですが・・・・・・これがなんと、広島市の担当者の劣情を誘ったらしく! 美術館に変更を求めてきたという、なんともダサい事件が勃発したのでした・・・・・・涙。

展覧会PR懸垂幕に広島市が難色 主観で「公序良俗害する」 
美術館、抗議の「白塗り」掲出

広島市現代美術館(広島市南区)で昨年12月~今年2月に開催された美術展のPR用懸垂幕について、使用された少女の写真を巡り市の担当者が個人の主観で「公序良俗を害するおそれがある」と判断し、美術館側に変更を検討するよう求めていたことが分かった。美術館は抗議の意味を込め、該当の写真を白塗りにして商店街に掲出した。専門家は「自己規制がエスカレートし、『表現の自由』以前の問題」と指摘している。
美術展は、明治以降の11作家の作品を通じて日本の家庭像の変遷を探る「アカルイ カテイ」展。会期中、同市中区の金座街商店街に掲出された懸垂幕には、出展作から2作品がデザインされた。うち1点は写真家の植本一子さんの作品で、足を上げてブランコをこぐ幼い少女が写っていた。
(毎日新聞2020年4月13日 東京夕刊)


ロードサイダーズでは独自のルートで(笑)、美術館担当者の怨念が込められた白塗り垂れ幕画像を入手! もはやよくわからない現代美術のようですが・・・・・・しかしいったい、どうやったらこれが「公序良俗を害する」ことになるんでしょう。植本さんもさぞや絶句したろうと。

文句をつけたのは広島市の都市計画課だったそうですが、毎日新聞の取材に対して「課内でも意見が割れたが、最終的に課長の判断で変更の検討を求めた」「素朴な助言だった」などと答えたそう。意見が割れたって・・・・・・スケベごころがあるからスケベに見える、という典型的な例証でしょうか。


ま、課長の目がブランコを漕ぐ生足の奥しか見ていなかっということですが、ふだん公園を散歩してても、無邪気に遊んでる女の子たちが課長さんはそんなふうに見えちゃうんでしょうねえ、かわいそう。

こうなったら広島市現代美術館には、社運(じゃなくて館運)を賭けて、大々的なバルテュス展でも開催してもらいたいものです!

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編集後記バックナンバー

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)

ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。

本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。

旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。

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ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)

稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。

1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!

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ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)

プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。

これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。

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ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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