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2024年07月03日 Vol.603
design
デザインの世間体 005 テプラで本が作れるか?(前編) (写真・文:若生友見)
私はテプラ(キングジムのラベルライター)でなにか作品が作れないかとしばらく考えていました。 必要最低限の存在感でありながら、使用方法によってはなにかと話題になるテプラ。 テプラが気になっている人は私以外にもたくさんいて、テプラのイメージを使用したグラフィックデザイン、テプラで作ったスローガンステッカー、テプラに自作の短歌を印字している人、テプラデコ……などなど、テプラを利用したクリエイティブは思いのほかすでにあるものです。 では自分ならどうするか??? テプラでできることを整理すると、データ作成(保存・読み出し)、装飾、印字、自動テープカット。もちろんラベルなので強めの粘着力がある。 ということは、執筆、編集、デザイン、印刷、断裁、製本という、本を作るひととおりの工程がテプラ1台でできるのでは? そんなアイデア一発からできあがったのが豆本シリーズ「テプラ本」です。
art
暗黒絵日記 のり子の夢は夜ひらく 41話 私の闇③ リストラ要員 (画・文:新開のり子)
私にしては長く働いていた会社での衝撃な出来事をお話します。 仕事中に突然、上司から呼び出しがありました。 良からぬ事だろうとすぐ察しました。 隣の席の人がさっき呼ばれて戻ってきてますが、ずっと下を向いて泣いています。 次は、私が確実に呼ばれる気配です。 そう思っていたら、2秒後に呼ばれました。 下っ端2人だけの呼びだしでした。 個室に入り、上司の斜め前に座りました。 上司は、「早速なんだけど」と切り出し、淡々と業績不振と今後についての説明をしてきました。 肩を落とした私をみて上司は、「頑張ってきたよねー よく頑張ったと思うよ」となんだか終わりを告げるようなことを言ってきます。 物腰の柔らかい言い方ですが心にぐさっと突き刺さる言葉です。 「早期退職の募集をする」というのです。
travel
地の橋、人の橋[ウクライナ特別編] 07 戦地へ戻った女 写真・文:ERIKO(定住旅行家・モデル)
ウクライナでの最終滞在地、首都キーウに来た。戦争がはじまる前は「キエフ」とロシア語発音で呼ばれていたが、現在はウクライナ語で「キーウ」と呼ばれるようになった。はじめの頃は違和感があってついついキエフと言う癖が抜けなかったが、それが懐かしく感じるほど今では定着してしまった。 広くて、潤沢。これがキーウへ来たときの印象だった。たっぷりとした水を湛えたドニプロ川、街の半分以上を覆う緑地がそう思わせたのかもしれない。街を歩けば、歴史の匂いがして、ここが1000年以上も前から、文化、政治、芸術の中心だったことに納得する。都市としての機能を果たしながらも、健康的な街をわたしはすっかり気に入った。
design
編み物☆堀ノ内の「帰ってきた肖像編み物」 第8回 モコゾウ オーダーした人/臼井良子(編集者/みうらじゅん事務所勤務) (写真:久富健太郎 / 聞き書き:川上雅乃)
編集者でみうらじゅん事務所でも働いている臼井良子(よしこ)さんの愛犬モコゾウを編みました。「このワンちゃん、どこかで見たことある!」と思うひとが多いのではないでしょうか? それもそのはず。モコゾウは、おもしろ可愛いルックスと行動がInstagramで話題をさらい、グッズやフィギュア、さらには広告や雑誌のモデルとして大人気のアイドル犬です。オーダーしてくださった臼井さんの夫は、イラストレーター本秀康さん。本さん収蔵のレコードやモコゾウさんをモチーフにしたアート、そして本さんのキャラクター・レコスケのフィギュアでいっぱいのご自宅でお話を聞きました。
photography
ニュー・シャッター・パラダイス 71 廊下のロッカー (写真・文:オカダキサラ)
私が通っていた高校は生徒の自主性を重んじる校風のため、自由度がかなり高く、授業の妨げにならなければ、漫画や携帯電話、ゲーム機などの持ち込みが許可されていました。 漫画が大好きな私は、友人同士で頻繁におすすめの作品の貸し借りをしていました。 私たちはそのうち漫画を家に持って帰るのが億劫になり、空いているロッカーに一時的に預けるようになりました。みんなそれぞれ持ち込むので、ロッカーはほぼパンパン。ラインナップも定期的に更新されていました。読みたい本があれば、利用メンバーにひと声かけて持ち出し、読み終わったらロッカーに戻す。そんなレンタルシステムが自然と生まれていました。
travel
ユーラシア後ろ歩き 11 ヨーグルト祭りとインドの中のチベット (文・写真:多田麻美)
ラサでの滞在は、夢心地だった。 まず、頭痛や息苦しさや眩暈といった、高山病の症状を抑えるため、深呼吸をしながら、夢遊病者のようにゆっくり歩かざるを得なかった。 夏のチベット高原の異様に明るい陽射しと、雨傘として手にしていた傘が数分後には日傘として役立ってしまうような気まぐれな天気も、初めて訪れる者には「非日常」そのものだった。 朝、寝不足のまま目を醒ました私は、まだ頭痛はしたものの、無理のない範囲で外に散歩に行くことにした。早くラサの街を見てみたいという気持ちと、前の日はリンゴ一つしか食べていなかったことによる空腹が原動力だった。
lifestyle
バンカラ女銘々伝 第7回 「千人斬り」伝説の女 松乃門三艸子(まつのと みさこ) (文:平山亜佐子)
「千人斬り」とは、もともと願掛けや腕試しに刀で千人斬ることを指したが、転じて俗に千人の異性と関係することをいう。 幕末生まれの歌人、松乃門(または松野門、松の門)三艸子(または三草子)が後者の意味での「千人斬り」を行なったと知ったとき、なぜ歌人が千人斬りを? とまずは不思議に思った。調べてみると芸者でもあって、しかも勝手に芸者を名乗って個人営業をしていたというではないか。一体、そんなことができるのか? というわけで、今回は謎多き松乃門三艸子を深堀りしてみた。
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カテゴリ別バックナンバー
BOOKS
ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)
ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。
本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。
旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。
ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)
稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。
1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!
ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)
プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。
これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。
ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)
書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい
電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。
ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)
伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!
かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。
ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)
――ラブホの夢は夜ひらく
新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!
ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)
――秘宝よ永遠に
1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!
捨てられないTシャツ
70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。
圏外編集者
編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。
ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014
こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。
独居老人スタイル
あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。
ヒップホップの詩人たち
いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。
東京右半分
2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!