• TOP
  • 編集後記

AFTER HOURS
編集後記

2014年05月21日 Vol.116

今週も最後までお付き合いありがとうございました! 感想、ぜひFacebookページまでお寄せください。ほんのひと言が、来週号のエネルギー源になりますので!

この後記はソウルのホテルで書いてますが、今回は告知ページを作ってて自分でも冷や汗。木曜がDOMMUNEで、金曜が爆音カラオケで、日曜が鞆の津ミュージアムのトークで、火曜日にドイツに飛んで、水、木がベルリンでトーク・・・だいたい毎週末にこのメルマガは原稿を仕上げるのですが、来週号はいったいどうしたらいいんでしょう・・・涙。ま、それでもなんとかなっちゃうから(たぶん)、仕事って続けてられるんですねえ。


しかし毎週、つくってておもしろくてしょうがないので、これだけ続けていられるわけですが、先週と今週は日下慶太さんのシャッター商店街ポスター・プロジェクトを、2週にわたって紹介。あわせて300点以上の作品を掲載できました。ほんとはこういうの、デザイン雑誌とかでやるべきだと思うのですが、自分のメルマガで取り上げることができて、うれしかったです。

日下さんも書いているように、ロードサイダーズ・ウィークリーで広告表現の分野を取り上げることはあまりありません。でもそれは、僕が広告業界を嫌ってるわけでもありません。いままで広告の仕事をしたことはほとんどいちどもないと思いますが、それはなにも避けてるわけじゃなくて、避けられてるだけだし・・・涙。実際、個人的な友人関係から言えば、現代美術業界とかより広告業界のがずっと多かったりもするし。

最近はFacebookやYouTubeに、たとえばNIKEやアディダスのめちゃくちゃかっこいい広告が出ていて、家のテレビに映ってる日本の広告と比べてがっくり、みたいなことありますよね。僕自身は70年代の資生堂とかJUN&ROPEとか、芸術よりもむしろ広告が表現の先端だった時代に育ったので、最近の日本の広告業界の体たらくと、今回のシャッター商店街ポスター・プロジェクトのインパクトには、いろいろ考えさせられました。なので、今回はこちらから日下さんにお願いして、2週連続の特別記事をつくってもらったのが掲載にいたる経緯です。

記事中にもあるように、今回の大阪のプロジェクトを推進したのは、電通関西支社の若手たちでした。とうぜん、関西広告業界では超エリートですよね。だから、その1点1点に好き嫌いはあっても、クオリティの高さは一目瞭然。前述のNIKEとか、いま世界のトップを走る広告制作を手がけている人たちも何人か知り合いですが、彼らに比べて、大阪の若手たちがそんなに実力差があるかといえば、そんなことはないと断言できます。ま、予算には大きな差があるけど。

では大阪の彼らがふだん、そこまで実力を発揮できていないのだとしたら、それはなぜかといえば、つまるところクライアントの差でしかないと思います。世の中には広告業界というものがあって、そこで実力の優劣というものがあって、それは写真やイラストやデザインやコピーの上手下手だと思われています。だからそれだけいろんな賞があるのだし。でも、そこでもうひとつ大切な「クライアントの優劣」が語られることは、けっしてありません。「大小」ではなく。

自分の商売を広告したいひとがいて、それを広告してあげたいひとがいる。その距離が近ければ近いほど、広告は「誠実」になります。野暮ったい広告は、よく「クライアントのセンス」のせいにされますが、僕が外から見るかぎり、そのほとんどはセンスの問題というよりは、広告主と制作者のあいだに挟まれる、会議の数の問題です。

先週の新世界市場、今週の文の里商店街。どちらも広告のつくり手が、クライアントにみずから取材して、話を聞いて、写真を撮って、見せに行って、文句を言われたり喜んでもらったり、そうして世に出たものでした。そういう、広告制作における「原初の表現」みたいなものを、今回ははからずも露わにしてもらえました。

仕事なんだから、儲からなくちゃいけない。ボランティアじゃいけない、というのもごもっとも。でも、儲からなくちゃ続けていけないけれど、何十階建ての高層ビルを建てるほど儲けなくちゃならないかといえば、もしかしたらそうじゃないかもしれない・・・。

バブル期のように「広告代理店勤務」という肩書が錦の御旗じゃなくなって、長引く不景気でどんどん仕事の環境は厳しくなって。そういういまの時代に、いま広告制作の最前線で苦しみ、もがいている30代の表現者たちから、実はいろんな動きが出てきていること。それはすごく注目に値すると思うし、なのに世間では「広告業界」というだけで色眼鏡で見られている部分もあると思うので、ロードサイダーズ・ウィークリーではこれからも、アウトサイダー・アートやインディーズ演歌と同じように! 血の通った広告表現も伝えていけたらと願っています。

来週は台湾のさらにディープな話題。そしてほかにもいっぱい準備中。お楽しみに! そしてよろしければ、トーク会場のどこかでお目にかかれること、楽しみにしています。

  • TOP
  • 編集後記

AFTER HOURS BACKNUMBERS
編集後記バックナンバー

FACEBOOK

BOOKS

ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

SHOPコーナーへ


ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

SHOPコーナーへ


圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

amazonジャパン


ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

amazonジャパン


独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

amazonジャパン


ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

amazonジャパン


東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

amazonジャパン


東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

amazonジャパン