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AFTER HOURS
編集後記

2016年02月03日 Vol.198

今週も最後までお付き合い、ありがとうございました! 記事の本数から言うと、今週はいつもよりひとつ少ないのですが、ボリュームはいつも以上かも! 気に入っていただけたでしょうか。

先週はトーク巡業・第二弾。いろんな場所で、いろんなことを話させてもらいましたが、29日の金曜日には渋谷HMVブックスで大竹伸朗くんとのトークがありました。満員すし詰めのなか最後までお付き合いいただいたみなさま、どうもありがとう!

トーク&サイン会のあとは新宿ロフトでの「テレビマンズ」トークライブに参加するため、すぐ離脱してしまいましたが、1時間のトークでは「ぜんぜん話し足りないよね」ということで、深夜に新宿のバーで再集合。で、「もっと時間あったら、あれもしゃべりたかった!」と意見が一致したのが、「SMAP」と「ベッキー」問題でした。

SMAPとベッキーが話題になっているころ、僕はロシアにいたのでまったくニュースを知らず、日本に帰ってきたらメディアは難民問題でもISISでもなく、SMAPとベッキーのスキャンダル(?)一色だったのに、唖然としました。

いまだに詳細は知らないし、興味もないけれど、しかしSMAPはひとりが事務所に留まりたくて、ほかの4人が独立したがったんですよね(ちがう?)。なのに記者会見で全員、地味なスーツ姿で並んで謝罪。あの場で、あれこれお詫びするひとりを残して、あとの4人が黙って退出しちゃうとか、一言もしゃべらないでそっぽ向いたままだったら、どんなに爽やか(!)だったことでしょう。

もう、テレビには出れないかもしれない。CM契約もなくなるかもしれない。でも、4人で新しいユニット組んで、新しい名前をつけて、日本中のライブハウスでコンサートして回ったら、最高にかっこよかったろうに。もう、貯金だって充分あるんだろうし。

でも、やらなかった。それはSMAPという一時代のカリスマが、芸能界と芸能メディアという醜いオトナたちに頭を下げた瞬間でした。

ベッキーは妻子持ちの男性と不倫したと。それだけですよね(ちがう?)。それで仕事全部干されて、全メディアからめちゃくちゃに攻撃されて。「もってのほか!」なんて書いてる記者は、テレビ局に抗議電話かけまくる視聴者は、いちども不倫も浮気もしたことないのだろうか。偉そうにベッキー叩きの記事を1面に載せてるスポーツ新聞は、その同じ紙面で風俗記事だの、浮気がテーマの官能小説とか載せているのを、どう言い訳するんだろうか。

浮気のもういっぽうであるゲスの極み乙女。の川谷さんは、すごくしっかりした音楽をつくるひとで、今月号のギターマガジンにも特集されているくらい。だから、ほんとうにふたりが愛し合っているのなら、家庭もテレビもCMも捨てて、ふたりでユニット組んで、夜の道端で歌えばいいのに。でも、やらなかった。

SMAPもベッキーも、そうやってオトナに負けて、頭下げたわけです。もしも彼らが芸能界を飛び出して、自分の音楽に飛び込んでいったら、仕事場でも学校でも、オトナに頭を下げて生きることしかできないでいる若者たちに、どれほど勇気を与えられたかを思うと、胸が痛みます。

地上波の凋落ぶりを見ても、芸能界や芸能メディアが落ちるところまで落ちた感があるのは、多くの人の共通認識でしょう。独立したいだけで、妻のいる男を愛しただけで、ここまで叩きのめされる。それはメディアの質の低下なんていうレベルでは、もはやない。単なる「オトナのいじめ」であり、売り上げのために集団ヒステリーを煽ってるだけにすぎない。そうしてこの国には集団ヒステリーに踊って(踊らされて)喜んでるひとたちが、まだけっこういるってことです。

「ベッキー崩壊寸前」なんて記事を書いてるライターは、きっと「仕事だから書いてるだけ」と言うんでしょう(そして自分は浮気も不倫も風俗遊びもしたことがないんでしょう)。ヘイト本をつくって儲ける出版社や、売ってる本屋は、「お客様が欲しがるから」と言うんでしょう。でもそれは、「仕事だから原爆つくった」科学者と、なんにも変わらない。「ほしがるひとがいるから」というのは便利な言い訳だけど、実は自分が判断停止してることの言い訳にすぎない。

ほんとうに「ゲスの極み」なのはだれなのか。僕らの多くが、もうそれをわかってしまっていることを、ゲスだけがわかってないのかもしれません。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

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1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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