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AFTER HOURS
編集後記

2013年05月22日 vol. 068

今週も最後までお付き合い、ありがとう! いかがでしたか。ご感想、ご批判、ぜひぜひFacebookページまでお寄せください。あそこに書いてもらうコメントが、いちばん元気をもらえるので。

先週は仙台に行ってきましたが、ちょっとだけ時間が空いたので、前から見たかったジョルジュ・ルースの展覧会を見に塩竈まで足を伸ばしました。

日本でもすごく人気が高いので、ご存知のかたも多いと思いますが、ジョルジュ・ルースは廃墟にさまざまな形象を描き、それを写真に撮って作品として展示する、とてもユニークな作風を特徴とするアーティスト。1980年代前半からずーっと同じスタイルで制作を続けていて、僕もずいぶん昔にプリントを購入したくらい、好きな作家です。

ルースは阪神大震災のときにも来日、多くのボランティアとともに作品を制作しましたが、去年は震災で壊滅的な打撃を受けた、松島のカフェ・ロワンという建物を舞台に、やはり多くのボランティアのちからを借りて作品を制作。完成した2枚のプリントが塩竈のビルドスペースという、小さなギャラリーで今週末の26日まで開かれています――。

風光明媚な松島湾を見渡せる高台に、Loin(ロワン)という名で親しまれてきたカフェ・レストランがありました。しかし2011年3月11日の震災後、この白亜のモダンな古い建築は地震によって傷み、使用することができなくなりました。現在、この建物を解体する計画が進行しています。

眺めがすばらしい憩の場として愛されてきた丘の上のカフェ・ロワンという場所は、松島湾を一望でき、湾で繋がる地域の繋がりと記憶を共有する場所です。そのロワンが取り壊される前に、フランスの著名なアーティスト、ジョルジュ・ルース(1947年パリ生まれ)を招聘し、阪神淡路大震災のとき同様、被災後に破壊され、解体予定の建物で絵を描き、写真を撮り、空間の記憶を残すプロジェクトを行います。


ジョルジュ・ルースの作品展は今週末まで

まずは、松島のロワンと塩竈のビルドスペースを拠点とし、松島湾を共有する地域(塩竈、松島、東松島)を現代アートで結ぶことで、湾で繋がる地域の心を育み、文化的連携を生み出すことを目的に、本プロジェクトは始動しています。

松島での制作過程において、被災地の人々が、ジョルジュ・ルースや阪神アートプロジェクトで関わってくれた人々とふれ合い、心を交わします。そして観光船に乗り、松島湾を堪能しながら、塩竈のbirdo spaceにて、ルースの創造性に出会う。本プロジェクトが、震災後の人々にとって、豊かな発想や心の繋がりを通し、希望を抱く手助けになれば幸です。

復興後18年を経た神戸の歩みを再確認しながら、現代アートとのふれあいを通して、3.11後の宮城県の新たな出発のきっかけとなる象徴的なプロジェクトとなるよう取り組んでおります。本企画に関わる人々はもちろんのこと、国内外からこの企画の実現にご協力いただける人々の心もつないでいきたいと願っております。
 (プロジェクト公式サイトより:http://www.birdoflugas.com/schedule/2013.html

非常に緻密なデザインが空間のなかに浮かび上がる、魔術的な視覚効果がジョルジュ・ルースの真骨頂。ボランティアという多くのひとびとの手が加わることで、デザインがシンプルなものになってしまうのには賛否両論あるでしょうが、そこにはまた、アーティストひとりの孤独な作業とは別種のエネルギーが働いている、と見ることもできます。


清楚なギャラリー内部

しかしそれにしても! 仙台から塩竈まではJR仙石線で30分かそこらとはいえ、東北一の都会である仙台ならともかく、静かな・・・というよりは寂しさばかりがどんよりたちこめる塩竈の、それも住宅街のまんなかで、このようなアートスペースがあるなんて! 正直言ってルースの作品よりも、場所のほうにびっくりしました。

塩竈で生まれ育ったというオーナーの高田彩さんが、カナダでの活動から地元に帰り、このスペースを開いたのが2006年のこと。もう7年目なんですねえ。これまでの活動記録を見てみても、とうてい片田舎の(すいません!)画廊とは思えない、先鋭的なセレクションが並んでいます。

スペースの一隅はショップになっていますが、そこにはアメリカ、カナダのZINEコーナーがあって、そのバラエティとチョイスにも驚いたり。こんなところが、こんな場所にあるから、東京だけにいちゃあマズイんですねえ。




ZINEコーナーの充実ぶりに驚く


塩竈の住宅街にたたずむビルドスペース

ビルドスペース
宮城県塩釜市港町2-3-11(仙台湾燻蒸株式会社・建物内)
080-3198-4818
http://www.birdoflugas.com/

なので仙台を訪れる予定のある方は、少し時間があったら塩竈にも足を伸ばしてみてください。塩竈は写真家の平間至さんの出身地でもあり、フォトフェスティバルや音楽のフェスティバルも開催されています(塩竈フォトフェスティバル、GAMA ROCK FES)。本塩竈駅から歩いてすぐの飲食街・尾島町には、仙台中心部からはほぼ姿を消してしまった、激渋スナックがひしめいていて、スナックショットが堪能できますし!


塩竈いちの飲食街・尾島町をそぞろ歩く




ソシアルビルがひしめいている


しかし「西少女」で「シャガール」って!


「魔女んな」と「ラブリー」


「しば楽」はともかく、「恋はなぞなぞ」って???






怒りが伝わってきます








なぜか尾島町には名前をそのまま使ったスナックが多い気がする


「姉妹」でも「兄弟」でもなく、「姉弟」というところに想像が膨らみ・・


「おばちゃん」と「ノンノン」。しかしノンノンのドアのほうが風格ある気が


「カツエ」と「直美」と、わかりやすすぎる2連投










「怪盗ルパン」に「チャップリン」、さらに「七七七」で「ナナミ」もいたが、


すぐそばには「73」の「なみ」も!


「舞歩魅」で「マイアミ」は、さすがに無理があるかと・・しかし「ステップハウス」というコンセプトにはあってるかも(中身はカラオケルームらしいが)

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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