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AFTER HOURS
編集後記

2017年06月28日 Vol.265

今週も最後までお付き合い、ありがとうございました! 三重県津市からパリの公園まで、いろんな場所からいろんな話題をお届けしましたが、気に入ってもらえた記事、あったでしょうか。

先週末から『捨てられないTシャツ』関西トーク・ツアーがスタート。この後記を書いている月曜深夜は、大阪心斎橋スタンダードブックストアでのトークを終えて、ビジネスホテルでパソコンに向かってます。

ツアー初日の6月24日土曜日は、神戸稲荷市場「サロンI’ma」でしたが、いま稲荷市場全体が再開発中ということで、市場に隣接した自治会館で、畳に座布団敷いてのトークとなりました。






ふだんは地元老人会のチルアウトスペースとしてもっぱら活用されているらしく、壁に貼られた標語類も激渋! 入口脇にさりげなく貼ってあったポスターは、地元の地図かと思いきや、よく見たら「兵庫区老連クラブマップ」! 兵庫県じゃなくて、兵庫区だけでこんなに老人クラブがあるんか!

神戸の浅草的存在として、かつて栄えた新開地の、さらに国道を海側に渡ったエリアにある稲荷市場。昔は新開地と並ぶ神戸きっての繁華街だったと言いますが・・・いまや見る影もない寂れようだったのを、このメルマガでも2012年にリポートしました。














2012年の稲荷市場の様子。オイルショックのころから衰退が始まり、1985(平成7)年の阪神淡路大震災がとどめを刺した。工場労働者が減り、工場も減り、店も減り・・2012年時点で営業していた店舗はわずか6軒だった。

サロンI’maは、そんな稲荷市場の衰退に心を痛めた若手建築家やアーティストたちが、市場内に住居も移し、そこで暮らしながらなんとか市場を活性化していけたらという試みで、僕も何度もトークに呼んでもらってきました。




こちらは最盛期、市場の先の川崎重工などで働くひとたちで大賑わいの様子。1915(大正4)年に市場の前身ができて、戦後まもなく稲荷市場として創設されたという全長約200メートルの商店街は、神戸駅や新開地駅と川崎重工などの大工場への徒歩ルートという立地条件から、戦後の景気回復と歩調を合わせるように発展。1970年代の最盛期には百軒近い店がひしめきあった。毎朝、新聞と手袋とタバコを売るだけで生活できたひともいたぐらいだという。

去年も『圏外編集者』発行記念トークをやらせてもらい、久しぶりに訪れた市場の、いっそうの寂れぶりに哀しい気持ちになったのですが、それから1年経った先週末、神戸駅からタクシーに乗った時点で運転手さんから「あそこはもうないよ」と言われ、着いてみたらほんとになかった! かつてのアーケードは完全に消え去り、商店街も半分以上は更地になって、聞けば跡地にワンルームマンションが建つ予定だそう。いかにも昭和の匂いを振りまいていた肉屋さんも総菜屋さんも豆腐屋さんも、みんないなくなってしまいました。


ここ数年ですっかり仲良しになった神戸のひとたちが来てくれて、トークはあいかわらず楽しかったけれど、正直言ってこのまま、もとからの住民がギブアップした場所にこだわる必要があるんだろうか・・・と、心配せずにいられなかったのですが、稲荷市場に家を借りて引っ越してきた建築家たちは、すでに家を買い取って、これからもここに住み続けると言われ、感嘆。


いま、日本のあちこちでシャッター商店街が増殖し、その活性化に外から若いひとたちが入ってきたりしています。メディアにはそんな「もとからの住民」と「新しい住民」が力を合わせて再建、みたいなちょっといい話が垂れ流されてますが、僕が日本全国のシャッター商店街を歩いて実感するのは、そんな「ちょっといい話」はごくレアなケースだということ。実際は、外から志に燃えて入ってきた若者たちが、もとからの住民のかたくなな態度や、やる気のなさにぶちあたって苦戦しているという状況が、いちばんよくあるケースだと感じます。


だからこそ「みんなで盛り上げる」じゃなくて、ひとりひとりが勝手に、淡々と、自分の好きなこと、やらなくちゃならないと思うことをやって、そういうひとが少しずつ増えていって、気がついたら楽しい町になっていた、そうふうにならないと、ほんとうの「再興」はないんじゃないかとつくづく思う。

神戸稲荷市場のサロンI’maはただいま工事中、年内には新スペースとして甦る予定だそう。楽しみに待ちましょう!


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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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