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AFTER HOURS
編集後記

2015年09月09日 Vol.179

今週も最後までお付き合いありがとうございました! 気に入っていただけた記事、あったでしょうか。

この後記を書いているのは月曜深夜(というか火曜早朝)午前5時(涙)。ちょっと前だったら、そろそろ空が白んでくる時間なのに、だんだん日が短くなりますねえ、なんてしみじみしてる場合じゃないけど。

この7月に紹介した福岡市美術館の『肉筆浮世絵の世界』展、見逃すわけにはいかないので、切羽詰まったタイミングではありましたが、出張パックで福岡に行ってきました。日曜午後に羽田を発って、月曜夕方に戻り。おかげでこんな時間になってるわけですが、でも行ってよかった!

前の記事を読んでいただいた方はご承知のとおり、これは版画とはまたちがう魅力にあふれた肉筆浮世絵とともに、国内の公立美術館で初めて春画をまとめて展示する、画期的な展覧会。日曜ということもあってか、会場は予想以上の観客で大賑わいでした。


展覧会入口


会場の中心部に設けられた春画展示室。「これより先、春画にて、十八歳未満の入室を禁ず」――浮世風呂みたいなしつらえのエントランス。


さすがに「ゲヘヘ」なんて笑うひとはなく、みなさん真剣に観賞中。


北斎、歌麿など、大家の春画に「こんなの描いてたんだ!」と驚くひとも多数。


春画以外の展示も、もちろん充実。個人的にノックアウトされたのはこれ、河鍋暁斎が明治13年に描いた「新富座妖怪引幕」。約4x17メートルの大作で、早稲田大学演劇博物館の所蔵だが、演劇博物館でもこんなふうに展示されたことはなかったろう。




浮世絵の名品、珍品にお腹いっぱいになって展示室を出たら、向かいの部屋で開催中だったのが『奥田敬介展 和と洋の世界』(入場無料)。福岡のグラフィックデザイナー/画家だそうで、伝統的な日本画のモチーフの中にウルトラ・ファミリーがいたり、着物姿の女の子がガラケーをいじってたり。緻密な描写力と、あまりにシュールなモチーフの結合に、しばし唖然。日曜が最終日だったようなので、いいものを見せてもらいました!

福岡市美術館:http://ukiyoe-paintings.jp/


旅先の月曜日は、美術館がだいたいお休みなので困るけれど、福岡ではアジア美術館が水曜休館なので、月曜に福岡にいるときはかならず立ち寄る。広い美術館ではないけれど、ときどきすごくシャープな企画があるので、見逃せない。今回は『一粒の希望――土地は誰のもの?』という、社会的なメッセージを込めたアジアの美術作品を集めていて、かなり興味深かった。




本メルマガでたびたび紹介してきたインドネシアの「ジャカルタ・パンク」に通じる、ジョクジャカルタを本拠地とするタリン・パディの版画セレクション。タリン・パディは「アート、アクティビズム、ロックンロール」をモットーに掲げるアーティスト集団で、ジャカルタのマージナルと同じく、版画やポスター制作を通じて、虐げられた民の闘争を支援し続けてきた。




美術館のコレクションも幅広く、見ていて楽しい。これは「キッチュ」をテーマにした所蔵作品展示。仮想のコンピュータ・ゲームを描く中国のフェン・メンボーからバングラデッシュのリキシャまで、バラエティ豊か。




その最後のコーナーに、ツェン・クウォン・チの写真シリーズが展示してあり、意表を突かれた。香港生まれ、ニューヨークで活動していたェン・クウォン・チと僕は、キース・ヘイリングを通じて知りあい、すぐに親友になって、ずいぶんたくさん一緒に仕事をしたし、「Art Random」シリーズの中にも彼の作品集を入れさせてもらった(1990年刊、vol.14)。そして1990年に39歳で死んでしまったクウォン・チは、僕がエイズで失った最初の親友でもあった。

初期のニューヨーク・グラフィティの記録は、クォン・チの写真なしにはありえないし、彼は僕のイーストヴィレッジ探検の案内人でもあった。人民服を着て、世界のいろいろな観光名所に立つセルフ・ポートレートに専念したクォン・チの作品は、もちろん政治的なメッセージでもあるけれど、四半世紀の時を経て対面してみると、とてもピースフルなイメージにも見えてくる。R.I.P. Tseng Kwong Chi.



福岡アジア美術館:http://faam.city.fukuoka.lg.jp/home.html

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