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AFTER HOURS
編集後記

2014年11月26日 Vol.141

最後までお付き合い、ありがとうございました。いろいろありましたねえ・・・今週も。こんな組み合わせでいいのかと、書いてるほうもドキドキでした!

一昨日(24日)の朝日新聞に、日展への長いコメント記事が掲載されましたが、とても言い足りなくて、今週は日展についても書いてみました。いかがだったでしょうか。まあけなすのは簡単なんだけど、でも見てみないと話にならないので、会期中にぜひぜひ足を運んでみてください。地方展もありますが、会場によって出品点数がずいぶん減ったりするようなので。

ちょうど先週は上野の芸大でも、友人の授業に招かれてトークをしてきたのですが、出席した学生に聞いてみたら、今年の日展に行ったひと、ゼロ! いまどきそんなもんだろうけど、芸大―日展―芸術院というのが日本の美術界における、ここ半世紀以上の最強エリートコースですからねえ。学長を筆頭に、出品者も学内、OBにいっぱいいるわけだし。

むかしから美大、特に芸大の「多浪生」に興味があって、いつか取材記事を作りたいと思ってます。でも、世の中かわってきてるわけだし、往年のような名物多浪生は減ってるんだろうとスタッフの学生に聞いてみたら、「わたしのクラスにも10浪のひとがいます」と言われてびっくり! 10浪っていったら、入学時ですでに28歳だし・・・。

医学部とか司法試験ならともかく、美大にも何年間も入試に挑戦し続ける多浪生がけっこういることは、美大生以外にあまり知られていません。でも、そこまでして目指さなきゃならないアートスクールって、なんなんだろう。

よく話すのですが、僕がバンドやりたかったら楽器買って練習するだけで、音大受験は目指さない。ラッパーや詩人になりたかったら、ノート買ってリリック書くだけで、文学部国文科は目指さない。でも美術の世界だけは、いまだに美大に行くのが「アーティストへの道」だと信じられていて、だから美大の予備校があって、100年前から変わらないような授業を、美大生や院生がバイトで教えていて・・・という、絶句するほど時代遅れの感覚が、業界だけの常識として通用しています。

そうやって階段を上っていって、先生やボスに認められて展覧会に出せるようになって、賞をもらって、当然ながらお返しに届け物をして・・みたいな人生の末に、今回の日展スキャンダルみたいな事件が表面化するわけです。そんなの、当たり前ですよね。僕だって賞もらったり、事前に審査員から「こうしたら受かる」とか指導してもらったら、御礼持っていく(と思う、笑)。

狭い業界で生きていくというのは、そういうことでもあります。美術業界においては、美大に入って先生に認められて、会派に属して・・・というコースを取らないと、展覧会すら開けない、絵を売ることもできないという時代が長くありました。それは出版業界でも同じで、どんなにいい小説を書いても、出版社に認められなければ本を出して全国の書店で売ることはできなかったのだし、音楽業界でもレコード会社に拾われなければ、自主制作盤を手売りするしかない、そういう時代が長かったわけです(インディーズ演歌なんて、いまだにそうだし)。

でも、いまのアート・シーンはちがう。音楽や出版が辿ってきた道のように、いまでは自分でギャラリーを探して交渉することも、自分でギャラリーを作ってしまうことさえ可能だし、美術メディアに取り上げられなくても、ネットの力のほうがはるかに強い。いままでのレールに乗らなくても、いくらでも走っていける道は開かれている。

今回取り上げた写真家――木原悠介とドキドキクラブ――は、ふたりとも別の仕事をしながら、好きな写真だけを撮り続けている若者です。世のオトナたちはとかく、そういう「アマチュア」をバカにして、「筆一本でがんばる」みたいな、売れないプロという生きかたを賞賛する傾向にあります。

自分の信じる仕事に賭ける、というのは美しく耳に響く生きかただけど、その業界が狭くて古くて、ようするに日本の美術界みたいだったりしたら、そこで生きていくためにはどうしても、日展問題のような軋みがかならず出てくる。そうして知らないうちに、その渦の中に巻き込まれていく。

中心から遠くにいること。自分ひとりでいること。そんな立ち位置の大切さを、いずれも写真で食えていないし、食っていこうとも思ってないだろうふたりの若者は、黙って示してくれているようにも感じました。

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編集後記バックナンバー

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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