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AFTER HOURS
編集後記

2016年03月09日 Vol.203

今週も最後までお付き合い、ありがとうございました! 気に入ってもらえた記事、ありましたか。

今週は室矢憲治と金原みわ、おふたりの寄稿者をあらたにお迎えすることができました。こうやって少しずつ「ふつうの雑誌」に近づいていけるようで、なんだかうれしい。

ムロケンさんは僕がPOPEYE編集部にいたころからの先輩ライターであり、「ザ・カリフォルニア」を体現しているような眩しさがあったので、あれから40年近くの時を経てこんなふうに仕事を一緒にできるのは、ちょっと不思議なうれしさがあります。

そして関西珍スポ・マニア界の重鎮(可愛らしい女子だけど)の金原みわさんが参加してくれたのも、個人的にはかなりの喜びでした。お仕事のかたわら珍スポットや珍人類をめぐって日本中に足を伸ばし、さらにストリップの追っかけにも余念がないという・・・そのエネルギーだけでもすごいと思うのですが、僕はみわさんの書く文章がとても気に入ってます。単におもしろおかしい物件を見物して終わり、ではなくて、彼女特有の目線の暖かさが、そのまま文章に反映されていて、すごくいい。珍スポットや珍人類をこんなふうに描けるひとって、なかなかいません。

記事の最後にリンクを付けておきましたが、みわさんはブログを2つ持っています。「TIN.」のほうはB級スポット巡りが主なテーマになっていますが、もうひとつの「クズ薬剤師のクズログ」というのは、みわさんの本業が薬剤師なのでそういうタイトルになっている、エッセイのような呟きのような内容です。

記事の多くは薬や医療に関する話題なのだけれど、ときどきパーソナルな物語がアップされていて、それがかなり読ませる。死んでしまった愛犬の話、回転寿司屋でかかってるアンビエント系のBGMが気になって問い合わせてしまった話などなど・・・。そしていまは1月にアップされた『じっちゃんのちんちん』という話が読めるようになっていて、これはもう、そのまま静かで美しい映画になってしまいそうな、辛いけれど優しくもあるドキュメンタリー。みなさんにもぜひ読んでいただきたいです。

http://mozukuzu.blogspot.jp/2016/01/blog-post.html

金原みわさんの文章力はたいしたものですが、彼女はもちろんプロの書き手じゃない。このメルマガにはそんな、プロじゃない書き手のひともどんどん参加してもらっています。

それはひとつに、「文章術」なんてのよりも、なにをどう見て、どう感じるかのほうがはるかに大切だと思うのと、現代は歴史上もっとも、だれもが文章を書く「筆まめ」時代なので――だって「これについて思うところを140字で述べよ」というような問題があるとして、ツイッター書いてるひとだったら簡単でしょ――「いまの若者は本を読まない」とか「文章力がない」なんて、大ウソだってこと。

若者の書く文章がダメなのではなくて、文字の多くがもう活字ではなくディスプレーで読まれる時代にあって、文章の書きかた自体がすでに往年の「名文」とは異なる次元に突入しつつあるのではないかと、ウェブ上で自分の文章を発表しながら、つくづく思うわけです。

デジタルカメラやデザイン、イラスト、ペイントソフト(そしてもちろん映像や音楽も)がそうであったように、コンピュータとインターネットは「文筆」の高い敷居を一挙に無くしてしまいました。だれもが簡単に名文を書けるようになったわけじゃない。でも、立派な万年筆や原稿用紙や広辞苑を持っていなくても、何万字も漢字を知っていなくても、文章を書き始めて、それをひとに読んでもらうことは、もうだれでもできる。ただ、その先に続く奥が深いだけで。

SNSやブログサービスや、その他いろいろなデジタルメディアで、もうそんなことは当たり前になっているけれど、それってこれまであり得なかったことです。文章を書く、という行為は昔からだれでもできたろうけれど、それを「発表する」ことは、ほんの少し前までプロだけに許された特権だったから。

教養があること、メディアにコネがあったり、認知されていること――そういう特権の上に成り立っていたプロの書き手の優位性が、とっくに崩れ去っていることを、もしかしたらプロがいちばん認めたがらないのかもしれない。それは僕自身にとっても脅威だけれど・・・でも、そうやって背後にどんどん迫ってこられるもの、追い抜かれそうになったり、すでに追い抜かれてしまったもの、そういうプレッシャーを受けて、自分もよけいに速く、よけい遠くまで走れる気もする。

このささやかなメールマガジンが、そんな追いかけっこのための原っぱであったらいいと思います。

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編集後記バックナンバー

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

SHOPコーナーへ


ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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