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AFTER HOURS
編集後記

2017年02月22日 Vol.249

今週も最後までお付き合い、ありがとうございました! 今週も百数十点の画像込みでお送りしましたが、どれか気に入ってもらえたでしょうか。

アドルフ・ヴェルフリは僕がアウトサイダー・アート/アール・ブリュットという領域に興味を持ち始めた高校生のころからの偏愛作家なので、今回紹介できてほんとうにうれしい。当時はアウトサイダー・アートとかアール・ブリュットなどという単語がまったくない時代で、単なる「精神病院の作家」扱いでした。でも、いまのようにジャンルが確立してしまうと、かえって狭苦しい枠に収まりがちなところもあるわけで、「ひとりの変人アーティスト」として珍しがられてた時代のほうが、自由に観賞できたのかもしれないですね。

今週は福山クシノテラスの櫛野展正くんによる「武装ラブライバー」も、すごいっことになってました。少し前に写真を見せられて楽しみにしていたのですが、送られてきた写真の数々を見ていて、唐突かもしれないけれど、僕の頭に浮かんだのはタイ・プーケット島の奇祭「ベジタリアン・フェスティバル」でした。






「ベジフェス」は以前、『HELL 地獄の歩き方』という写真集でたっぷり紹介した、まさしく「奇祭」で、その優しげな名前とはうらはらに、参加者がホッペタに穴を開け、そこに長い串やら鉄棒やら、ライフルやら自転車やら(スポークの三角のところをホッペタに入れ込む)差し込んで、炎天下を延々練り歩くという・・・ほんとうに狂った祭り。沿道の観衆は、なるべく奇抜なブツをホッペタに差し込んだ参加者に声援を送るので、年々ブツの大きさもバリエーションも増大。ひとり(というか1ホッペタ)だけでは支えきれないサイズのブツもあるので、そういう場合は家族や友人がブツを両側で支えながら、行進を続けるわけです。ホッペタの皮膚がブツにくっつかないように、ときどき食用油を穴に注しながら・・・。


武装ラブライバーの「異形」感が僕にベジフェスを思い起こさせたのは、その「ひとりでは歩くことも動くこともできない」ほどに肥大化していく装飾感覚でした。周囲の介助なしでは動けないということは、装飾に縛り付けられたということ。つまり「磔刑=はりつけ」に他ならない。自分の信じる宗教に捧げられた身体がベジフェスであり、2次元のアニメアイドルに捧げられた身体が武装ラブライバーなのだと言ったら、言い過ぎでしょうか。でも、どちらの「飾られた身体」から強く放射しているのは、ある種の法悦感であるように僕には見えたのでした。

その櫛野くんは今週末から根津のギャラリー・マルヒで『空想キングダム』展を開催。26日の日曜にはトークイベントも開催されるので、現実と非現実のはざまで生き、創作し続ける人々に興味あるかたは、ぜひ足を運んでみてください。

http://kushiterra.com/gallery/2017/03/149.html

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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