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AFTER HOURS
編集後記

2012年06月20日 vol.023


駅前にそびえるのは、1992年のドクメンタのためにつくられた、ジョナサン・ボロフスキーの「Man walking to the sky」、最高にかっこいいです!

6月9日、ドクメンタ13が公式にスタートした夜、盛大なオープニング・パーティが開かれました。会場に選ばれたのは旧中央駅。「旧」といっても、まだローカル線には使われてる現役の駅舎で、パーティの時間も電車を利用するひとたちがいるんですよね。でも、そういうのにはかまわず、どーんと照明と音響を入れて、肉とパンも大量に積み上げて、招待客と電車利用客が入り乱れる異様な、しかしリラックスしたパーティになってました。こういうの、こんどオープンする東京駅丸の内口とかでもやったらいいのに。




で、その駅のすぐそばには、地元のパンク・キッズや元キッズが集う、新宿ゴールデン街のミニ版みたいな場所があります。数軒のバーが連なって、壁はライブとかのポスターがべちゃべちゃに貼り込められ、奥にはビアガーデン。そのさらに奥の空き地には、車椅子を並べた「65歳以上限定公園!」。当然ながら、ドクメンタのパーティ招待客はこっちに来ませんし、こっちで飲んでる地元の若者たちは、ドクメンタなんて関係ないって感じ。もちろん、こっちのほうが、はるかになごみます。


カッセルと言えばドクメンタ。それはそうだけど、せっかく来ても、明らかにハイソサエティとしての現代美術だけ見ていると、知らないうちに失っていくものがありますよね。夜は現代美術よりテーブルサッカーに夢中な兄ちゃんとビール酌み交わしたり、昼間はレンブラントやルーベンスの素晴らしいコレクションを有するヴィルヘルムスヘーヘ城(カッセル州立美術館)で、難解な現代美術漬けの眼を洗ったり。そういうふうに、意識的にバランスを取らないと、こころがどんどんイビツになっていく気がします。




ある晩、飲んだあとに乗ったタクシーの運ちゃんが、「ドクメンタに来たのかい?」と聞くので、「そうだよ」と言うと、「俺はここで生まれ育ったけど、小学生のとき以来、ドクメンタには行ってないよ。難しくて、わけわかんないからね。楽しくないし」と、きっぱり言ってました。どっちがいいとか、どっちが優れてるとかじゃなくて、どっちの見方もあるということをわかってないと、人間はどんどん視野が狭まってきます。

僕としては、どっちにつくかと言われたら、世界中の専門家より、地元の兄ちゃんやオッサンに喜んでもらえるなにかをつくりたいですけど。


車椅子のブランコまである、65歳以上限定・夜の公園。こっちをドクメンタに出したい、最高のジョークです!

来週号ではまた、ちょっとちがうテイストのアート話をお送りできる予定。お楽しみに!

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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