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AFTER HOURS
編集後記

2015年09月16日 Vol.180

今週も最後までお付き合い、ありがとうございました! 気に入ってもらえた記事、ありましたか。都合により今週は集中連載『詩にいたる病――平川病院と東京足立病院の作家たち』をお休みさせていただきましたが、来週は復活しますので、お楽しみにお待ちください。

今週の告知でパリの『HEY!』展について書きましたが、そのもととなったのは2014年11月に南仏マルセイユとセットで開催された『MANGARO』『HETA-UMA』展。本メルマガ2014年11月12日号のリポートを読んでくれたかたも多いと思います。

その仕掛け人であり、ディレクションを担当したのがマルセイユの出版芸術集団「ル・デルニエ・クリ」を主宰するパキート・ボリノ。キュレイターというよりも「ドライビングフォース」と呼びたい、精力的なパンクおやじです。

そのパキート・ボリノとル・デルニエ・クリが、7月から8月にかけて開催した展覧会が「幼児性愛を助長している」という理由で、マルセイユの極右勢力から激しい攻撃を受け、いま存続の危機にあるというニュースが飛び込んできました。

『MANGARO』『HETA-UMA』展を共同キュレーションした中野タコシェの中山亜弓さんが、タコシェのウェブサイト内で状況を詳しく説明してくれているので、ここに転載させていただきます。


パキート・ボリノとLe Dernier Cri、およびアーティストStu MeadとReinhard Scheibnerへの支援の呼びかけ


タコシェと関わり深いアーティストたちがひとつの展示をめぐって活動の危機にあります。

90年代から、タコシェにシルクスクリーンの刺激的なグラフィックブックを届けくれる、フランスはマルセイユの出版芸術集団Le Dernier Criの主宰者パキート・ボリノ。昨年の南フランスでのHeta-Uma/Mangaro展では共同キューレーションをつとめ、50人近い日本の作家と作品を現地で紹介してくれました。

もう一人は、2012年にタコシェで個展を開いてくれた、在独アメリカ人アーティストStu Meadです。


7月から8月27日まで、La fricheというマルセイユの複合芸術施設内のLe Dernier Criのアトリエで、Stu MeadとReinhard Scheibnerの在独アーティストの二人展が開催されました。これはいつも行っているアトリエ展示で、Le Dernier Cri(LDC)はすでに何冊かのStuの本を出し、ここで作品展示もしており、アトリエは何ごともなく500人ほどの来客を迎えていたようですが、一方で、作品がエログロであるとの理由から(特に幼児性愛が問題され)、18禁などの対応はとったものの、電話やメールでパキートやLDC、会場となるla friche、マルセイユ市の文化芸術関係の部署に、不特定の脅迫が執拗に繰り返され、ネット上にパキート(および関係者)の個人情報まで晒されました。


(2012年のStu Meadの展示の際に、Le Dernier Criが作ったカタログ)

8月末には、地方選を控える極右政党国民戦線(FN)のネガティブキャンペーンの材料になり、PACA(プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏)の助成を受けたla fricheが幼児性愛ポルノを公開しているといった非難がSNS上で展開され、アトリエ閉鎖を求める抗議も起こり、極右に近いキリスト教集団まで加勢。

8月28日のla friche内の新施設Art-O-Ramaの開館式を考慮して、展示は27日に繰り上げ終了しましたが、開館式に際してウルトラカトリックが(すでに終った)展示の打ち切りを叫ぶ事態に。作家たちのフランスでの活動禁止を求める署名も進行中で、これに対して表現の自由に基づくパキート・ボリノとLDCならびにStu MeadとReinhard Scheibnerを支持する署名もはじまりました。

La fricheは争いを避けながらも、表現の自由を守りLDCを支持するスタンス、脅迫と炎上の渦中のパキートは、「年頭にシャルリ・エブドが攻撃され、自分までもが20年間やってきたことを今さら非難され、中世に戻ったみたい」と困惑しながら、なおアトリエで印刷を続けています。



『MANGARO』展オープニングで、参加アーティストの「ダンス祝福」を受けるパキート・ボリノ

マルセイユはル・デルニエ・クリのようにパンキッシュなカルチャーを育む街であると同時に、フランスでも有数に極右勢力が台頭している地域でもあります。たった1件のクレームで作品撤去か、なんて騒ぎが起きる日本の現代美術館に比べて、それはどれだけ危険と苦難を伴う表現活動であることか。

すでに署名キャンペーン・サイトの「change.org」内に、パキートおよびLDC、Stu MeadとReinhard Scheibnerを支持するサイトが設けられ、5000人以上の署名を集めています。もし賛同いただけたら、みなさまもぜひ署名にご参加ください!

change.org 署名サイト:Un Dernier Cri contre la censure
(フランス語のあとに英語のメッセージもあります)

タコシェ・支援メッセージサイト:http://tacoche.com/?p=11707

Le Dernier Cri:http://www.lederniercri.org/

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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