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AFTER HOURS
編集後記

2012年09月19日 vol.035

今週も最後までお付き合い、ありがとうございました! ロボットレストラン、気に入っていただけましたか。

先週末は裏原宿のVACANTで、ブルース・ダヴェンポート・ジュニアというニューオリンズ出身のアウトサイダー・アーティスト展にあわせてのトーク。ご来場いただいたみなさま、どうもありがとう! 

ダヴェンポートについては先週の告知で触れましたが、今回のキュレーションを手がけたディエゴ・コルテスは、長くニューヨークで活動しているキュレーターで、もともと1970年代末に伝説的なクラブ「Mudd Club」を開いた男です。

当時、注目を集めていたソーホーのさらに先、トライベッカと呼ばれ始めたマンハッタンの辺境にあったマッドクラブは、ニューヨーク・パンクのベースでもあり、POPEYE編集部で海外取材を始めていた僕も、ドキドキしながら通ったものでした。ディエゴ・コルテスはその後、伝説となった1981年の「New York/New Wave」(P.S.1)をキュレーションし、一気にアートシーンで注目されるようになっていきました。

そのコルテスが今回寄せた文章には、こうあります――「バスキアがストリートとスタジオを、ウォーホールが写真と絵画を独自の方法で融合させた様に、ダベンポート・ジュニアの作品はフォーク・アートやアウトサイダー・アートの境界を飛び越えてコンテンポラリー・アートの中で新たな文脈を切り開いていく絶対的な力強さがあります」。

それはそのとおりだろうけれど、こうやってアウトサイダー・アートが現代美術の潮流の中に、いつのまにか取り込まれていくのは、僕にとってかなり違和感があります。ずいぶん前に、それまで警官に追いかけられる「犯罪」だった地下鉄のグラフィティが、いつのまにか画廊の壁にかけられて「現代美術作品」になりかかったみたいに。

専門教育を受けた「インサイダー」のアーティストは、トレンドに乗ろうと反抗しようと、かならずや美術界の歴史や潮流を意識せざるを得ません。描くこともそうだし、画廊や美術館と商売することもそうだし。

でもアウトサイダー・アーティストにとって、過去の美術史とか、いまのアウトサイダー・アートのトレンドとか、そういうものはまったく関係ありません。だいたいトレンド自体が存在しないし。あくまでもひとりひとりが、孤独に存在する作り手であること――それがアウトサイダー・アートのひとつの本質でもあると思います。進歩もなく、発展もなく、退化もなく、流行廃りもないこと。あるのはただ、無限のバリエーションだけ。これがアウトサイダーであるということです。

これだけ難解になって、行き詰まりの閉塞感がおおう現代美術業界にとって、ナマのエネルギーを表出するアウトサイダー・アートは、もしかしたらかっこうのカンフル剤なのかもしれません。ビジネス的にも。

でも、アウトサイダー・アートは、コンセプチュアルな2000年代の現代美術の、次の展開として出現したものでないことだけは、意識しておく必要があると思います。昔も、いまも、アウトサイダーはあくまでも「アウトサイド」にいたのだし、いるのであって、彼らはけっして時代が生み出したものではないこと。そもそもアウトサイダー・アーティストとは、生まれるものではなくて、発見されるものであること。それを忘れてしまうと、「いまアウトサイダー・アートがきてるよね!」みたいな、恥ずかしい展開になったりして。気をつけたいですねえ。

すでにツイッターなどでも流れていますが、10月5日から仙台市で『ROADSIDE SENDAI 都築響一の メガもりみやこ丼 + ワタノハスマイル』という展覧会を開催します。来週号からは、このところ通って取材を続けている仙台ネタをフィーチャーする予定。お楽しみに!




ロボットレストランの記事を書いて家の外に出たら、ちょうどロボットレストランの車列に遭遇! ハマーにトレーラーのセットがずらりと、スターバックス前に並んでました。巨大女性ロボットも異様だけど、ブルーシートでくるまれた姿も異様。これはこれで現代美術っぽいかも!? ちょうどレストラン休業日の日曜だったので、もしかしてロボット入れ替えなのか・・気になる!

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編集後記バックナンバー

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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