• TOP
  • 編集後記

AFTER HOURS
編集後記

2012年07月04日 vol.025

新聞、雑誌にも取り上げられ、大きな反響を呼んでいる多田裕美子さんの『玉姫写真館 山谷の男の肖像』展。先月配信したメルマガ記事でも、予想以上に多くの反響が寄せられました。

去る6月30日の土曜日には、展覧会場である浅草・鈴楼にて公開対談を開催。満員のお客さんを前にして、ウーロンハイ片手の多田姐(ネエ)トークが爆裂! 「人前でしゃべったことなんてないし、どうしよう・・」と開始前はかなり引き気味でしたが、いざ始まってみれば会場は笑いの渦。ほとんどの東京人が存在すら知らないであろう早朝の「山谷泥棒市」事情から、浅草寺がもくろむ浅草再開発の裏話まで、めちゃくちゃ興味深い2時間たっぷりのトークセッションでした。あんまりおもしろかったので、現場で撮影した動画をただいま編集中。近いうちに、購読者特典としてお見せできると思います。見たら、現場に行きたくなりますよ~~。

トークのあとで辿り着いた3次会(笑)の居酒屋では、隣に座ってたイキなじいさん――「オレっちは15のときから香具師やってきたんだよ」――に、仕入れ原価2000円のゴマちゃんぬいぐるみをお祭り屋台で300円で売って、いかに儲けるか! なんて秘話を披露してもらったり。やっぱり深夜の浅草って、最高ですね。




トークで多田さんが言ってました――いまのホームレスは人間嫌いのひとも多いけれど、昔の山谷は東北地方から出稼ぎに上京して、いろんな事情で帰れなくなってしまった、みたいなひとが多くて、そういうひとはみんな人恋しかったんだと思います。だから私みたいなのに写真を撮らせてくれたり、手伝ってくれたりしたんじゃないかと。

浅草で生まれ育ち、ご両親が山谷で食堂を経営していた多田裕美子さんは、そういう意味ではまさしく「いいときにいい場所にいた」写真家なのでしょう。でも、たとえば「山谷にコネがあったから」「若い女だったから」、こういう写真が撮れたと思ってしまうのは、大きな勘違いです。

「いいときにいい場所にいる」こと。これは単なる前提なのであって、そこから一歩先の「怒鳴られ、脅かされながらカメラを構え、フトコロに飛び込んでいく」パワーを、どうやって自分の内側からひねり出すか――それだけが勝負の分かれ目であることは言うまでもありません。そして「いいときにいい場所にいる」ことを、運だのツキだのと思ってしまうひとは、フットワークの大切さをまったく理解していないだけのこと。その場に飛び込まなくては、「いいときにいい場所にいる」ことすらできないのですから。

いまは山谷もすっかりクリーンになってしまいましたが、毎夏恒例の夏祭りは、あいかわらずエネルギッシュ。マスコミの垂れ流す東京イメージとは正反対の、東京のもうひとつの顔が見られます。近くなったらスケジュールを告知しますので、ぜひご参加ください! そしてもちろん、その前に写真展でウォーミングアップをお忘れなく。

  • TOP
  • 編集後記

AFTER HOURS BACKNUMBERS
編集後記バックナンバー

FACEBOOK

BOOKS

ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

SHOPコーナーへ


ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

SHOPコーナーへ


圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

amazonジャパン


ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

amazonジャパン


独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

amazonジャパン


ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

amazonジャパン


東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

amazonジャパン


東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

amazonジャパン